説明

建設機械のDPF強制再生回路

【課題】PDFの強制再生を行う際に、低負荷・無負荷業時であって、エンジンダウンを発生させることなくPMを完全に燃焼除去させる。
【解決手段】排気系にDPFが設置されたエンジンにより油圧ポンプを駆動する建設機械のDPF強制再生回路において、前記建設機械の作業負荷状態を検出する作業負荷検出手段と、前記油圧ポンプのセンタバイパス油路の最下流側に介設されたブリードオフ用のカット弁と、該カット弁を前記作業負荷検出手段の結果に応じて切換え制御するコントローラとを備え、該コントローラは、低負荷又は無負荷作業時に前記カット弁を徐々に切り換えるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械のDPF(Diesel Particulate Filter。DPD:Diesel Particulate Defuserともいう)強制再生回路に関するものであり、特に、エンジンの排気系に堆積した粒子状物質を焼却除去する建設機械のDPF強制再生回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の建設機械にはエンジン(ディーゼルエンジン)が搭載されているとともに、該エンジンの出力軸には油圧ポンプが連結されている。図5に示すように、前記エンジン(ディーゼルエンジン)12の排気系には、ディーゼルパティキュレート処理装置として機能するDPF28が設置されている。このDPF28は、エンジン12の排気管12A内の排ガス中に含まれた粒子状物質(Particulate Matter、以下「PM」という)を捕集し、DPF28に担持された酸化触媒にてPMを連続的に酸化除去できるように構成されている。
【0003】
しかし、エンジン12の負荷が低いときは、排ガスの温度が十分に上昇しないため、DPF28の内部にPMが漸次堆積する。そして、PMの堆積量が所定値以上になると、エンジン12の排気系の圧力が上昇するため、燃費悪化などを招来してエンジン12本来の性能が得られなくなる。
【0004】
これを防止するためには、例えば、DPF28の上流側の圧力を検出器30によってセンシングし、機体コントローラ(以下「コントローラ」という)46又はエンジンコントローラ52を介して、エンジン12の負荷又は可変容量型の油圧ポンプ10の負荷を前記圧力に調整することにより、前記PMを除去すべくDPF28を定期的に強制再生する必要がある。
前記DPF28の強制再生においては、エンジンピストンの上昇による爆発工程の直後に、燃料をポスト噴射(後噴射)することにより、エンジン12の排気管12Aから燃料をDPF28内の酸化触媒に供給している。
【0005】
この場合、燃料の燃焼(酸化反応)で発生した熱によって、前記酸化触媒の温度が上昇する。その結果、DPF28に堆積したPMの温度も上昇するため、該PMの燃焼による酸化除去が促進される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−357140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、DPF28の強制再生処理の進行具合は、建設機械の作業時における負荷状態によって大きく異なる。たとえば、高負荷作業時には、エンジン負荷の大きさに応じて排ガス温度が十分に上昇するので、PMの燃焼除去が効率良く進行する。しかし、低負荷作業時や未作業時(無負荷作業時)には、エンジン負荷も軽くなり、排ガス温度が十分に上昇しないので、PMを完全に燃焼除去させることが困難になる。
【0008】
そこで、低負荷又は無負荷作業時には、エンジン12の運転を制御するエンジンコントローラ52から前記コントローラ46に、油圧負荷増大の要求信号を出力することにより、油圧ポンプ10の吐出圧力又は吐出流量を強制的に上昇させる技術が提案されている(例えば、本出願人による特願2008−249088号参照)。
この技術によれば、油圧負荷の増加に伴いエンジン負荷も増大するため、排ガス温度が上昇してPMの燃焼除去を促進させることができる。しかし、低負荷又は無負荷作業時に、油圧負荷を急激に増加させた場合には、エンジンダウンが発生し易いという問題があった
【0009】
そこで、低負荷又は無負荷作業時に、エンジンダウンを防止しつつPMを完全に燃焼除去させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、排気系にDPFが設置されたエンジンにより油圧ポンプを駆動する建設機械のDPF強制再生回路において、前記建設機械の作業負荷状態を検出する作業負荷検出手段と、前記油圧ポンプのセンタバイパス油路の最下流側に介設されたブリードオフ用のカット弁と、該カット弁を前記作業負荷検出手段の結果に応じて切換え制御するコントローラとを備え、該コントローラは、低負荷又は無負荷作業時に前記カット弁を徐々に遮断位置に切り換えるように制御することを特徴とする建設機械のDPF強制再生回路を提供する。
【0011】
この構成によれば、建設機械の低負荷又は無負荷作業時に、コントローラはカット弁を徐々に遮断位置に切り換えるので、センタバイパス油路の回路圧も徐々に上昇し、油圧負荷が急激に増加するおそれがない。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記作業負荷検出手段がエンジンの回転数を検出する回転数センサであることを特徴とする請求項1記載の建設機械のDPF強制再生回路を提供する。
【0013】
この構成によれば、回転数センサにより検出されたエンジンの回転数が所定値以下である場合には、コントローラは、建設機械が低負荷又は無負荷作業状態であると判断してカット弁を徐々に切り換える。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記作業負荷検出手段がエンジンのブースト圧を検出するブースト圧センサであることを特徴とする請求項1記載の建設機械のDPF強制再生回路を提供する。
【0015】
この構成によれば、ブースト圧センサにより検出されたエンジンのブースト圧が所定値以下である場合には、コントローラは、建設機械が低負荷又は無負荷作業状態であると判断してカット弁を徐々に切り換える。
【0016】
請求項4記載の発明は、上記コントローラは、上記カット弁を遮断位置に切り換えた後に、排ガス温度が所定温度になるように、上記油圧ポンプの負荷を制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械のDPF強制再生回路を提供する。
【0017】
この構成によれば、カット弁を遮断位置に切り換えた後に、排ガス温度が所定温度、即ち、PMを燃焼除去するのに適した排ガス温度になるように油圧負荷を制御するので、最適な排ガス温度を維持しながら、DPFに堆積したPMの燃焼除去が促進される。
【0018】
請求項5記載の発明は、上記コントローラは上記DPFの強制再生開始信号と強制再生終了信号を上記エンジン側から受信し、該強制開始信号の受信時点における上記油圧ポンプの負荷を、前記強制再生信号の受信時点まで保持するように制御することを特徴とする請求項1又は4記載の建設機械のDPF強制再生回路を提供する。
【0019】
この構成によれば、DPFの強制再生開始信号を受信した時点の油圧ポンプの負荷は、強制再生終了信号をコントローラが受信するまで保持されるので、油圧負荷が変動しない状態でDPFの強制再生が実施される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明は、低負荷又は無負荷作業時に、油圧負荷が急激に増加することなくDPFの強制再生が可能になるので、エンジンダウンを未然に防止しつつPMを完全に燃焼除去させることができる。
【0021】
請求項2記載の発明は、エンジン回転数に基づいて低負荷又は無負荷作業状態を正確に判断してカット弁を切り換えるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、エンジン回転数が急激に変動した場合でも、カット弁の切換え制御をより確実、且つ、適時に実行して、エンジンダウンを一層確実に防止することができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、DPFの強制再生を行う際、エンジンのブースト圧が所定値以下の場合には低負荷又は無負荷作業状態であると判断してカット弁を切り換えるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、エンジンのブースト圧が急激に変動した場合でも、カット弁の切換え制御をより正確、且つ、適時に実行して、エンジンダウンを一層確実に防止することができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、所定の排ガス温度の下でPMの燃焼除去を促進させることができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、効率の良いDPFの強制再生を安定的に行うことができる。
【0024】
請求項5記載の発明は、油圧負荷が変動しない状態でDPFの強制再生を実施できるので、請求項1又は4記載の発明の効果に加えて、エンジンダウンを一層確実に防止しつつ、高いPMの燃焼除去効果を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る建設機械の一例としての油圧ショベルを示す側面図。
【図2】本発明の実施例1を示し、建設機械のDPF強制再生を説明する油圧制御回路図。
【図3】本発明の実施例2を示し、建設機械のDPF強制再生を説明する油圧制御回路図。
【図4】本発明の実施例3を示し、建設機械のDPF強制再生を説明する油圧制御回路図。
【図5】従来例を示し、建設機械のDPF強制再生の要部を説明する構成図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、低負荷作業時や未作業時にPDFの強制再生を行うに当たり、エンジンダウンを発生させることなくPMを完全に燃焼除去させるという目的を達成するために、排気系にDPFが設置されたエンジンにより油圧ポンプを駆動する建設機械のDPF強制再生回路において、前記建設機械の作業負荷状態を検出する作業負荷検出手段と、前記油圧ポンプのセンタバイパス油路の最下流側に介設されたブリードオフ用の開閉切換弁であるカット弁と、該カット弁を前記作業負荷検出手段の結果に応じて切換え制御するコントローラとを備え、該コントローラは、低負荷又は無負荷作業時に前記カット弁を徐々に切り換えるように制御することによって実現した。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明の好適な実施例を図1及び図2に基づいて説明する。尚、図5の構成部分
と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略するものとする。1は建設機械として油圧ショベルを示し、下部走行体2上に旋回機構3を介して上部旋回体4が旋回自在に搭載されている。前記下部走行体2には走行モータ5が設けられ、走行モータ5によってクローラ6が駆動される。又、前記旋回機構3は旋回モータ7により駆動され、該旋回モータ7の駆動により上部旋回体4が旋回する。
【0028】
前記上部旋回体4の前方中央部にはブーム8が俯仰動可能に取り付けられ、更に、ブーム8の先端部にアーム9が上下回動自在に取り付けられているとともに、該アーム9の先端部にバケット10が取り付けられている。
【0029】
図2は上部旋回体4に搭載されたディーゼルエンジン12におけるDPF強制再生回路を示す。なお、本実施例に係るDPF強制再生回路は、ネガティブコントロールシステムをベースとして構成されている。
【0030】
同図において、52は、ディーゼルエンジン12の運転を制御するエンジンコントローラであり、ディーゼルエンジン12に接続した排気管12Aの下流側にはDPF28が設置されている。又、ディーゼルエンジン12の出力軸には斜板式の吐出量可変型の油圧ポンプ10が連結され、該油圧ポンプ10の流出側に接続したセンタバイパス油路32の最下流側には、ネガコン絞り36を介して油タンク40が接続されている。
【0031】
ネガコン絞り36の上流側と油圧ポンプ10とはネガコン回路50を介して接続され、該ネガコン回路50における油圧ポンプ10側には傾転角調整用のレギュレータ14が設けられている。前記油圧ポンプ10の吐出量は、レギュレータ14によってネガコン圧を負帰還して制御される。例えば、ネガコン圧が高いときは、レギュレータ14の作動によって油圧ポンプ10の傾転角が小さくなるため、該油圧ポンプ10の吐出量が低下する。
【0032】
センタバイパス油路32の途中には、油圧ポンプ10からの吐出油の流れを制御する第1方向切換弁22、第2方向切換弁24及び第3方向切換弁26が介設され、これら第1方向切換弁22、第2方向切換弁24及び第3方向切換弁26は、この順番で下流方向に向かってタンデム接続されている。
【0033】
そして、第1方向切換弁22、第2方向切換弁24及び第3方向切換弁26には夫々油圧アクチュエータが接続されている。例えば、第1方向切換弁22及び第3方向切換弁26には夫々ブーム、アーム又はバケットなどの作業機械用の駆動シリンダ16,20が接続され、また、第2方向切換弁24には油圧モータ18が接続されている。
【0034】
前記センタバイパス油路32の最下流側、即ち、前記第3方向切換弁26とネガコン絞り36との間にはカット弁34が介設され、カット弁34はブリードオフ用の開閉切換弁として機能している。該カット弁34はスローリターン弁54を介して電磁切換弁44に接続され、更に、電磁切換弁44のソレノイド44aは信号線56を介してコントローラ46に接続されている。カット弁34は平時には開通位置Aに設定され、センタバイパス油路32を流れる圧油の一部を油タンク40に戻す。
【0035】
コントローラ46からカット弁切換指令信号(遮断信号)が電磁切換弁44に送信されると、該電磁切換弁44はノーマル位置Cから切換位置Dに切り換る。これにより、油圧源42の圧油が、スローリターン弁54を介してカット弁34のパイロットポート34aに供給される。その結果、カット弁34は開通位置Aから遮断位置Bに切り換り、センタバイパス油路32における油圧負荷が増大する。
【0036】
この場合、圧油がスローリターン弁54を通過する際に圧油の移動速度が遅延するので、その分だけ油圧負荷の上昇速度が遅延し、油圧負荷の急上昇が防止される。
【0037】
尚、コントローラ46は、マイクロコンピュータからなり、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェース等を備えている。そして、ROMにはDPF28に堆積するPMを焼却除去すべく、強制再生処理を行うための制御プログラムと、該制御プログラムの実行時に使用する各種データが記憶されている。
【0038】
また、コントローラ46にはモニタ48が接続され、該モニタ48はコントローラ46の各種作動状況、例えば、DPF28の強制再生状況や各種センサ類の検出データなどを画面表示する。
【0039】
本実施例に係るエンジンコントローラ52には、作業負荷検出手段として機能する回転数センサ61、ブースト圧センサ62及び差圧センサ63が接続されている。回転数センサ61はディーゼルエンジン12の一端部に取り付けられ、ディーゼルエンジン12の回転数を検出する。又、ブースト圧センサ62はディーゼルエンジン12の他端部に取り付けられ、ディーゼルエンジン12のブースト圧を検出する。更に、差圧センサ63はDPF28に取り付けられ、DPF28の前後の圧力差を検出する。
【0040】
これら回転数センサ61、ブースト圧センサ62及び差圧センサ63の検出値はエンジンコントローラ52に送信される。そして、前記検出結果が予め設定した基準値と比較されることにより、油圧ショベル1の作業負荷状態が低負荷又は無負荷作業状態(エンジン負荷状態)であるか否かが判断され、この判断結果は、エンジンコントローラ52からコントローラ46に送信される。なお、符号38と64はリリーフ弁である。
【0041】
本実施例では、コントローラ46がエンジンコントローラ52から低負荷又は無負荷作業状態の判断信号を受信すると、電磁切換弁44に油圧増加指令信号を出力してカット弁34を遮断位置Bに切り換えるが、この場合、電磁切換弁44の出力ポートP3とカット弁34のパイロットポート34aとの間にはスローリターン弁54が設けられているので、カット弁34が遮断位置Bに徐々に切り替わる。その結果、油圧ポンプ10の出力側(負荷側)の回路圧が徐々に上昇するため、油圧ポンプ10の出力トルクの上昇が緩やかになり、エンジンダウンが防止される。
【0042】
前記カット弁34の切換えが終了した後に、エンジンコントローラ52からDPF28の強制再生の開始信号がコントローラ46に送信されて、DPF28の強制再生処理が開始される。この後、予め設定した時間を経過するまで、或いは、差圧センサ63の検出圧が所定値以下になって、エンジンコントローラ52からDPF28の強制再生の終了信号がコントローラ46に送信されるまで、カット弁34の切換え状態が継続して保持される。
【0043】
本実施例によれば、DPF28の強制再生を行うに当たり、コントローラ26は、エンジン負荷が所定値以下のときには、カット弁34が遮断位置Bに緩慢に切り換わるように制御する。斯くして、低負荷・無負荷作業時であっても、エンジンダウンを未然に防止しつつPMを完全に燃焼除去することができる。
【0044】
本実施例では、エンジンの回転数又はブースト圧が所定値以下のときでも低負荷・無負荷作業状態をモニタ48にて監視・把握しつつ、カット弁を徐々に切り換えることができるので、エンジン回転数又はブースト圧が急激に低下した場合でも、エンジンストを未然に防止しながら、DPF28の強制再生処理を円滑に実行できる。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の実施例2を図3に基づいて説明する。なお、前記実施例1と同一の構成部分については、同一符号を付してその説明を省略するものとする。本実施例は前記実施例1とは異なり、カット弁34とコントローラ46の間には電磁比例弁60が設置されている。即ち、カット弁34のパイロットポート34aには電磁比例弁60の出力ポートが接続され、且つ、該電磁比例弁60の信号入力部はコントローラ46の出力部に接続されている。依って、カット弁34の切換え動作は、コントローラ46からの切換指令信号に基づき電磁比例弁60を介して制御される。
【0046】
本実施例では、DPF28の強制再生を行うに際して、電磁比例弁60によるカット弁34の制御方式としては次の3つの何れかを採択できる。即ち、第1の制御方式では、予め設定した時間でカット弁34を徐々に切り換えて制御する。また、第2の方式では、回転数センサ61によりエンジン回転数を検出し、該エンジン回転数の変化状況をモニタ48等にて把握しつつ、エンジンダウンが発生しないように、エンジン回転数の大きさに応じてカット弁34を徐々に切り換えて制御する。
【0047】
更に、第3の制御方式では、ブースト圧センサ62によりディーゼルエンジン12のブースト圧を検出し、該ブースト圧の変化状況をモニタ48等にて把握しつつ、エンジンダウンが発生しないように、ブースト圧の大きさに応じてカット弁34を徐々に切り換えて制御する。
【0048】
上記3つの何れかの制御方式により、カット弁34を切り換えた後は、排ガス温度センサ(図示せず)による検出温度が設定温度を保持するように、電磁比例弁60によりカット弁34のストロークを最適量に調整する。この場合、排ガス温度が所定値以上に達しているときに、カット弁34でブリード回路を完全に閉鎖することは、燃料の無駄な消費を招くので、これを回避すべくカット弁34の弁開度を適切に制御するものとする。
【0049】
前記カット弁34の切換え後に、DPF28の強制再生を開始すべく、エンジンコントローラ52から強制再生開始信号がコントローラ46に出力される。この時点におけるコントローラ46から電磁比例弁60への電流値の出力は、エンジンコントローラ52から強制再生終了信号がコントローラ46に送信されるまで一定に保持される。
【0050】
本実施例においても前記実施例1と同様に、DPF28の強制再生を行う際、コントローラ46は、エンジン負荷が所定値以下のときには、カット弁34を遮断位置Bに徐々に切り換える。斯くして、低負荷・無負荷作業時であっても、エンジンダウンを未然に防止しつつ、PMを完全に燃焼除去することができる。
【実施例3】
【0051】
次に、本発明の実施例3を図4に基づいて説明する。本実施例は、ネガティブコントロールシステムをベースとした前記実施例1,2とは異なり、ポジティブコントロールシステムをベースとする。例えば、センタバイパス油路32の回路圧が高くなると、コントローラ46からの指令信号に基づき、レギュレータ14を介して油圧ポンプ10の吐出量が増加する。
【0052】
図4に示すように、レギュレータ14とコントローラ46の間には電磁比例弁65が設置されている。即ち、レギュレータ14のヘッド側油室14aには電磁比例弁65の出力ポートが接続され、且つ、電磁比例弁65の信号入力部はコントローラ46の出力部に接続されている。依って、レギュレータ14の設定圧は、コントローラ46からの指令信号に基づき電磁比例弁65を介して制御される。
【0053】
又、第1方向切換弁22にはリモコン弁66が接続され、第1方向切換弁22はリモコン弁66により操作される。さらに、リモコン弁66のパイロット油路にはパイロット圧センサ67が設置され、前記リモコン弁66のパイロット操作圧はパイロット圧センサ67により検出される。更に、該パイロット圧センサ67はコントローラ46に接続されている。依って、リモコン弁66のパイロット操作圧は、パイロット圧センサ67を介してコントローラ46に入力される。
【0054】
通常、リモコン弁66を操作すると、その操作量はパイロット圧センサ67で検出され、リモコン弁66の操作量に見合った流量の圧油を吐出するように、電磁比例弁65をコントローラ46が制御する。本実施例では、DPF28の強制再生を行う際、エンジンコントローラ52からコントローラ46に油圧負荷増大要求信号が出力された場合、カット弁34の制御方式としては、次の3つの何れかを採択できる。
【0055】
即ち、第1の方式では、前記実施例2と同様に、電磁比例弁60によりカット弁34を予め設定した時間で徐々に切り換えて油圧負荷を上昇させる。そして、油圧負荷が不十分な場合には、コントローラ46は電磁比例弁65を介して、油圧ポンプ10の吐出量を徐々に増加させて、油圧負荷を緩慢に上昇させる。
【0056】
また、第2の方式では、回転数センサ61によりエンジン回転数を検出し、該エンジン回転数の変化状況をモニタ48等にて把握しつつ、エンジンダウンが発生しないように、カット弁34を電磁比例弁60により徐々に切り換えて油圧負荷を上昇させる。そして、油圧負荷が不十分な場合は電磁比例弁65により、油圧ポンプ10の吐出量をエンジン回転数の大きさに応じて徐々に増加させながら、油圧負荷を緩慢に上昇させる。
【0057】
更に、第3の方式では、ブースト圧センサ62によりディーゼルエンジン12のブースト圧を検出し、該ブースト圧の変化状況を把握しつつ、エンジンダウンが発生しないように、ブースト圧の大きさに応じてカット弁34の切換え制御時間を変化させて油圧負荷を上昇させる。そして、油圧負荷が不十分な場合には、電磁比例弁65により、油圧ポンプ10の吐出量をエンジン回転数の大きさに応じて徐々に増加させながら、油圧負荷を緩慢に上昇させる。
【0058】
上記3つの何れかの切換え制御方式により、カット弁34を切り換えた後、或いは、油圧ポンプ10の吐出量が増加した後に、排ガス温度センサ(図示せず)による検出温度が設定温度を保持するように、電磁比例弁60によりカット弁34のストロークを最適量に調整する。このことはポンプ吐出流量についても同様であり、排ガス温度が設定温度を保持するように、電磁比例弁65により油圧ポンプ10の吐出流量を調整する。
【0059】
又、排ガス温度が所定値以上に達しているときに、カット弁34でブリード回路を完全に閉鎖することは、燃料の無駄な消費を招くので、これを回避すべくカット弁34の弁開度を適切に制御するものとする。
【0060】
叙上の如く本発明によると、DPFの強制再生を行うに際し、コントローラは建設機械の低負荷又は無負荷作業時には、カット弁を徐々に遮断位置に切り換えることにより、センタバイパス油路の回路圧を急激に上昇させることなくDPFの強制再生を実施できる。斯くして、低負荷又は無負荷作業時であっても、エンジンダウンを未然に防止しつつ、DPFに堆積したPMを完全に燃焼除去させることができる。
【0061】
また、カット弁を遮断位置に切り換えた後に、排ガス温度が所定温度になるように油圧負荷を制御することにより、所望の排ガス温度を維持しながらPM焼却作用を促進できるので、DPFの強制再生処理を安定的に実行できる。
【0062】
更に、DPFの強制再生開始信号を受信した時点の油圧ポンプの負荷は、強制再生終了信号をコントローラが受信するまで保持される。従って、油圧負荷を一定に保持した状態でDPFの強制再生が実施でき、エンジンダウンを一層確実に防止しつつ、高いPMの燃焼除去を効率良く行うことができる。
【0063】
前記コントローラは、カット弁を切り換えた後に、排ガス温度が所定温度になるように、油圧ポンプの負荷を制御した場合は、フィルタにおけるPMの燃焼除去が一層促進される。その結果、フィルタにおけるPMの堆積をより確実に防止することができる。
【0064】
特に、コントローラは、上記DPFの強制再生開始信号と強制再生終了信号をエンジン側から受信し、強制開始信号を受信した時点の油圧ポンプの負荷は、強制再生終了信号がコントローラに送信される時点まで保持すべく制御される。従って、DPFの強制再生が実施されている間は、油圧ポンプの負荷を所定値に安定して調整できるので、PMの燃焼除去効果を更に高めることができる。
【0065】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、エンジンの排気系にDPFが設置され、エンジンにより油圧ポンプを駆動する建設機械(作業機械)のDPF強制再生回路であれば全て適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 油圧ショベル(建設機械)
10 油圧ポンプ
12 ディーゼルエンジン
12A 排気管
14 レギュレータ
28 DPF(フィルタ)
32 センタバイパス油路
34 カット弁
36 ネガコン絞り
44 電磁切換弁
46 コントローラ
52 エンジンコントローラ
54 スローリターン弁
60 電磁比例弁
61 回転数センサ(作業負荷検出手段)
62 ブースト圧センサ(作業負荷検出手段)
63 差圧センサ
65 電磁比例弁
66 リモコン弁
67 パイロット圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系にDPFが設置されたエンジンにより油圧ポンプを駆動する建設機械のDPF強制再生回路において、前記建設機械の作業負荷状態を検出する作業負荷検出手段と、前記油圧ポンプのセンタバイパス油路の最下流側に介設されたブリードオフ用のカット弁と、該カット弁を前記作業負荷検出手段の検出結果に応じて切換え制御するコントローラとを備え、該コントローラは、低負荷又は無負荷作業時に前記カット弁を徐々に遮断位置に切り換えるように制御することを特徴とする建設機械のDPF強制再生回路。
【請求項2】
上記作業負荷検出手段が上記エンジンの回転数を検出する回転数センサであることを特徴とする請求項1記載の建設機械のDPF強制再生回路。
【請求項3】
上記作業負荷検出手段が上記エンジンのブースト圧を検出するブースト圧センサであることを特徴とする請求項1記載の建設機械のDPF強制再生回路。
【請求項4】
上記コントローラは上記カット弁を切り換えた後に、上記エンジンの排ガス温度が所定温度になるように上記油圧ポンプの油圧負荷を制御することを特徴とする請求項1記載の建設機械のDPF強制再生回路。
【請求項5】
上記コントローラは上記DPFの強制再生開始信号と強制再生終了信号を上記エンジン側から受信し、強制開始信号の受信時における上記油圧ポンプの油圧負荷を強制再生終了信号の受信時まで保持するように制御することを特徴とする請求項1又は4記載の建設機械のDPF強制再生回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−261340(P2010−261340A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111478(P2009−111478)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】