説明

建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置

【課題】建設機械のコネクタの金属端子部に生じる絶縁被膜を除去し、コネクタにおける導通不良を防止して誤動作を防止しうる導通不良防止装置を提供する。
【解決手段】建設機械に用いられる電気配線同士を接続するコネクタ38を、通常作業時に接続される回路と、付加回路との間で切換え接続する切換回路40,41を設ける。切換回路40,41を付加回路側への接続を指令するキースイッチ50等の切換指令手段とを備える。切換指令手段からの指令信号により切換回路40,41を電源42や抵抗46を含む付加回路側に切換えてコネクタ38内の金属端子部に一時的に通電する。これにより、金属端子部に発生した絶縁被膜を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械において、電気配線同士を接続するコネクタに発生する絶縁性の被膜による導通不良を防止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルにおいては、例えば特許文献1に記載の電気操作レバーとアクチュエータの組み合わせ変更装置のように、電気配線同士の接続を行なうためのコネクタが使用される。このように電気操作レバーを使用した場合、電気操作レバーの操作態様と対象となる油圧アクチュエータ(走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)との組み合わせがメーカーによって異なることを考慮し、異なるメーカーの油圧ショベルであっても、オペレータの慣れ親しんだメーカーと同様の電気操作レバーの操作態様で他のメーカーの油圧ショベルの操作も可能となるように、接続設定を行なうものである。
【0003】
また、近年においては、電気操作レバーとアクチュエータ用コントロール弁のパイロット弁との間に制御用コントローラを介在させ、電気操作レバーをコントローラに接続し、コントローラの演算処理により油圧アクチュエータを駆動制御している。この場合、圧力センサ等のセンサ類とコントローラとの間のケーブルをコネクタによって接続することが行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−312430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような油圧ショベル等の建設機械は、風雨や粉塵等に曝される環境で稼動するため、電気配線の接続を行なうコネクタとして、防水型のコネクタが使用される。また、これらのコネクタの防水用パッキンとして、シリコンゴム系のものが使用される。このように防水用パッキンとしてシリコン系ゴムを使用する場合、パッキンから放出されるシリコン系ガスであるシロキサンがコネクタ内部の金属端子部に絶縁被膜を生じさせ、結果として電気的な導通不良を生じ、誤動作を起こすことがあるという問題点がある。また、湿度の高い環境で長時間休車すると、コネクタの金属端子部に酸化被膜を生じ、これが導通不良を生じることがある。
【0006】
また、圧力センサ等のセンサ類とコントローラとを接続する電気配線は、コントローラ内部において、高い抵抗値の入力回路に接続されており、微弱な電流が流れることになる。そしてこの微弱電流によりコネクタの金属端子部に酸化物からなる絶縁被膜を生じ、この絶縁被膜が電気的な導通不良を生じ、誤動作を起こすことがあるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、建設機械のコネクタの金属端子部に生じる絶縁被膜を除去し、コネクタにおける導通不良を防止して誤動作を防止しうる導通不良防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置は、
建設機械に用いられる電気配線同士を接続するコネクタ回路に設けられ、前記コネクタを建設機械の通常作業時に接続される回路と、コネクタの金属端子部の絶縁被膜を除去可能な電流を流す付加回路との間で切換え接続する切換回路と、
前記切換回路を前記付加回路側へ接続する指令を発する切換指令手段とを備え、
前記切換指令手段からの指令信号により前記切換回路を前記付加回路側に切換えてコネクタ内の金属端子部に一時的に通電し、前記金属端子部に発生した絶縁被膜を除去することを特徴とする。
【0009】
請求項2の建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置は、請求項1に記載の建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置において、
前記切換指令手段として、建設機械を起動するキースイッチの投入状態検出信号を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、スイッチ等の切換指令手段によってコネクタにつながる切換回路を付加回路側に切換えることにより、コネクタの金属端子部に生じている酸化被膜などの絶縁被膜を除去することができ、コネクタにおける導通不良を解消することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、切換指令手段として、建設機械を作動可能状態とするキースイッチからの信号を用いるため、オペレータはコネクタの導通状態について考慮する煩わしさなく導通不良を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のコネクタ端子部の導通不良防止装置を適用する建設機械の一例を示す側面図である。
【図2】本発明のコネクタ端子部の導通不良防止装置の一実施の形態を示す電気油圧回路図である。
【図3】図2の回路の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明のコネクタ端子部の導通不良防止装置の他の実施の形態を示す電気油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明のコネクタ端子部の導通不良防止装置を適用する建設機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。この油圧ショベルは、下部走行体1上に旋回装置2を介して旋回フレーム3aを設置し、旋回フレーム3a上に油圧パワーユニット4、運転室5およびカウンタウエイト6等を搭載して上部旋回体3を構成する。下部走行体1は、左右のサイドフレーム1aの各後端に走行モータ(図示せず)により回転される駆動輪1bを取付け、前端に従動輪1cを取付け、駆動輪1bと従動輪1cに履帯1dを掛け回して構成する。
【0014】
旋回フレーム3aには作業用フロント7を取付ける。作業用フロント7は、旋回フレーム3aにブームシリンダ8により俯仰可能に取付けたブーム9と、ブーム9の先端にアームシリンダ10により回動可能に取付けたアーム11と、アーム11の先端にバケットシリンダ12およびリンク13,14により回動可能に取付けたバケット15とにより構成する。
【0015】
図2は本発明によるコネクタ端子部の導通不良防止装置の一実施の形態を示す電気油圧回路図である。18は旋回フレーム3a上に搭載されたコントローラである。20A,20Bは油圧パワーユニット4に含まれる主油圧ポンプであり、エンジンにより駆動されるものである。21は同じく油圧パワーユニット4に含まれ、エンジンにより駆動されるパイロット油圧ポンプである。
【0016】
22A,22Bはそれぞれ主油圧ポンプ20A,20Bの吐出回路に設けられた走行モータ(図示せず)用のコントロール弁であり、一方が右側走行モータ、他方が左側走行モータに対応する。23A,23Bはブームシリンダ8用のコントロール弁である。24は旋回装置2に備える旋回モータ(図示せず)用のコントロール弁である。25はアームシリンダ10用のコントロール弁である。26はバケットシリンダ12用のコントロール弁である。27は必要に応じて設けられる油圧アクチュエータ(図示せず)用のコントロール弁である。これらのコントロール弁22A,22B,23A,23B,24〜27は、中立位置から作動位置に切換えることにより、対応する油圧アクチュエータに作動油を送り、作動させるものである。
【0017】
28〜31はそれぞれコントロール弁23A,23B,24〜26の電磁操作式パイロット弁であり、コントローラ18からの制御信号によってパイロット油圧ポンプ21からのパイロット圧油のコントロール弁23A,23B,24〜26への操作室への供給を切換え制御することにより、コントロール弁23A,23B,24〜26の切換えを行なうものである。この例と異なり、パイロット弁28〜31とコントロール弁23A,23B,24〜26との間に油圧パイロット弁を介在させる場合もある。
【0018】
33はブームシリンダ8を操作するための電気操作レバー、34は旋回装置2の旋回モータを操作するための電気操作レバー、35はアームシリンダ10を操作するための電気操作レバー、36はバケットシリンダ12を操作するための電気操作レバーである。実際には、電気操作レバー33,36は共通の操作レバーにより構成され、操作方向(左右方向であるか前後方向であるか)によって操作対象を変更するものである。電気操作レバー34,35も同様に共通の操作レバーにより構成され、操作方向(左右方向であるか前後方向であるか)によって操作対象を変更するものである。
【0019】
38は電気操作レバー33〜36と油圧アクチュエータ(旋回装置2の旋回モータ、ブームシリンダ8、アームシリンダ10、バケットシリンダ12の組み合わせ変更装置を構成する防水型コネクタである。このコネクタ38は、電気操作レバー33〜36の操作態様と対象となる油圧アクチュエータとの組み合わせがメーカーによって異なることを考慮し、異なるメーカーの油圧ショベルであっても、オペレータの慣れ親しんだメーカーと同様の操作態様で他のメーカーの油圧ショベルの操作も可能となるように、接続設定を行なうものである。
【0020】
40,41は図示の通常状態から導通不良解消のため、電源42よりコネクタ38の金属端子部に通電するための回路に切換える切換回路である。これらの切換回路40,41はリレーにより構成され、コントローラ18から信号線43を介して通電されるリレーコイル44,45と、各リレー44,45の可動接点44a〜44d、45a〜45dからなる。46はコネクタ38の金属端子部に流す電流を制限する抵抗である。電源42、抵抗46およびこの抵抗と切換回路40,41に接続される回路47およびグランドに接続される回路48により、コネクタ38の金属端子部の導通不良を解消するための付加回路が構成される。
【0021】
50は油圧ショベルを起動するキースイッチであり、その投入状態が信号線51およびディジタル入力回路18aを介してコントローラ18に加えられる。18bはコントローラ18から信号線43を介してリレーコイル44,45に励磁電流を流すディジタル出力回路、18cは電気操作レバー33〜36のアナログ出力をコントローラ18に入力するアナログ入力回路である。コントローラ18は、電気操作レバー33〜36からのアナログ入力信号をディジタル信号に変換した後、パイロット弁28〜31へのアナログ出力である制御信号を演算し、再度アナログ信号に変換してアナログ出力回路18dからパイロット弁28〜31のソレノイドに出力する。なお、図2において、走行モータ用のコントロール弁20A,20Bおよび予備アクチュエータ用のコントロール弁27は、不図示の別の操作手段により操作される。
【0022】
次に図2の回路の動作を図3のフローチャートにより説明する。コントローラ18はキースイッチ50の操作信号により起動され、コントローラ18の持つタイマを起動する(S1)と共に、リレーコイル44,45に通電(S2)して、可動接点44a〜44d、45a〜45dを接点a側から接点b側に切換える。これにより、電気操作レバー33〜36がコネクタ38を介してコントローラ18に接続された状態から、電気操作レバー33〜38から離れ、抵抗46を介して電源42に接続された状態となり、コネクタ38の金属端子部に電源42から通電される。
【0023】
コントローラ18はタイマの設定時間を監視し(S3)、タイマの設定時間が経過するとリレーコイル44,45への通電を停止し(S4)、可動接点44a〜44d、45a〜45dを接点b側から接点a側に戻す。
【0024】
なお、通常、コネクタ38の金属端子部に流れる電流は10μA〜20μA程度であり、起動時にコネクタ38の金属端子部の酸化被膜等の除去に好適な電流値は好ましくは1mA以上であり、さらに好ましくは50mA以上である。また、この金属端子部を通して前記付加回路を通して電流を流す時間は好ましくは0.1秒ないし5秒程度であり、より好ましくは1〜2秒である。
【0025】
図4は本発明のコネクタ端子部の導通不良防止装置の他の実施の形態を示す電気油圧回路図である。図4において、図2と同じ符号は同じ機能を発揮する部分、部品を示す。54は例えば油圧を検出する圧力センサ等のセンサであり、このセンサ54には、通常の作業状態においては、コントローラ18に含まれる入力回路の抵抗55を介して10μA前後の電流がコネクタ38を介して流され、センサ54の出力は、コントローラ18で演算処理するためにA/D変換回路56に入力される。このように、コネクタ38の常時微弱電流が流れるため、金属端子部には酸化被膜からなる絶縁被膜が発生しやすく、この絶縁被膜がコネクタ38の導通不良を発生しやすい。
【0026】
このようなコネクタ38における導通不良を防止するため、前記実施の形態と同じく切換回路40,41を設け、キースイッチ50が操作されると、コントローラ18からリレーコイル44,45に励磁電流を前記所定時間流し、可動接点44a,44bおよび45a,45bを固定接点a側からb側に切換える。これによりコネクタ38の金属端子部に発生する絶縁被膜を除去する。
【0027】
このように、スイッチ等の切換指令手段によってコネクタ38につながる切換回路40,41を電源42側に切換えることにより、コネクタ38の金属端子部に生じている酸化被膜などの絶縁被膜を除去することができ、コネクタにおける導通不良を解消することができる。
【0028】
本発明を実施する場合、切換指令手段としてオペレータが操作するスイッチを用いてもよいが、上記実施の形態においては、建設機械を起動するキースイッチの切換指令手段として用いるため、導通不良が自動的に解消され、オペレータは導通不良を解消することについて煩わされることなく、常に良好なコネクタの導通状態を保つことができる。
【0029】
なお、本発明を実施する場合、建設機械の稼働、休車状態を記憶しておき、休車時間が長い場合には付加回路による通電時間を長くするかあるいは電流を大きくする等の変更を加えるようにしてもよい。その他、本発明を実施する場合、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、3a:旋回フレーム、4:油圧パワーユニット、5:運転室、6:カウンタウエイト、7:作業用フロント、8:ブームシリンダ、9:ブーム、10:アームシリンダ、11:アーム、12:バケットシリンダ、13,14:リンク、15:バケット、18:コントローラ、20:主油圧ポンプ、21:パイロット油圧ポンプ、23A,23B,24〜26:コントロール弁、28〜31:電磁操作式パイロット弁、33〜36:電気操作レバー、38:防水型コネクタ、40,41:切換回路、42:電源、44,45:リレーコイル、44a〜44d、45a〜45d:リレー可動接点、46:抵抗、50:キースイッチ、54:センサ、55;抵抗、56:A/D変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に用いられる電気配線同士を接続するコネクタ回路に設けられ、前記コネクタを建設機械の通常作業時に接続される回路と、コネクタの金属端子部の絶縁被膜を除去可能な電流を流す付加回路との間で切換え接続する切換回路と、
前記切換回路を前記付加回路側への接続を指令する切換指令手段とを備え、
前記切換指令手段からの指令信号により前記切換回路を前記付加回路側に切換えてコネクタ内の金属端子部に一時的に通電し、前記金属端子部に発生した絶縁被膜を除去することを特徴とする建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置において、
前記切換指令手段として、建設機械を起動するキースイッチの投入状態検出信号を用いることを特徴とする建設機械用コネクタ端子部の導通不良防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227001(P2012−227001A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94016(P2011−94016)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】