説明

建設機械

【課題】尿素水タンク内の尿素水とバッテリの温度が上昇することを抑えると共に、車体の高い安定性を確保することができる建設機械の提供
【解決手段】前方にフロント作業機4が設けられた旋回体3の後部に配置されたカウンタウェイト6と、カウンタウェイト6の前方のエンジンルーム5内に配設されたエンジン5aと、エンジン5aの熱交換を行う熱交換器15と、エンジンルーム5の外装に形成された吸入口5bからエンジンルーム5内へ外気を取り入れて熱交換器15を冷却するファン16と、エンジンルーム5の外装に設けられた尾管20と、エンジン5aから排出された排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンク12と、エンジン5aに電力を供給するバッテリ13a,13bとを備えた小旋回型油圧ショベル1において、熱交換器15よりも外気の流れの上流側に尿素水タンク12とバッテリ13a,13bを共に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出された排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、エンジンに電力を供給するバッテリとを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ショベル等の建設機械は、履帯等を有して走行する走行体と、この走行体の上方に旋回フレームを介して連結され、左右方向に旋回する旋回体と、この旋回体の前方に設けられた作業装置、例えば各アクチュエータを有して掘削等の作業を行うフロント作業機とを備えている。また、建設機械は、旋回体の後部に設けられたカウンタウェイトと、このカウンタウェイトの前方に配置されたエンジンルームとを備えている。
【0003】
このエンジンルームは、エンジンと、このエンジンの熱交換を行う熱交換器と、エンジンルームの外装に形成され、外気を吸入する吸入口と、この吸入口からエンジンルーム内へ外気を取り入れて熱交換器を冷却するファンと、エンジンルームの外装に設けられ、エンジンから排出された排気ガスを外部へ放出する尾管とを有している。
【0004】
ここで、エンジンから排出される排気ガスには、有害な窒素酸化物が含まれているので、この窒素酸化物を還元することによって水と窒素に分解し、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度を低減してから排気ガスを大気へ排出する必要がある。そのため、建設機械は、排気ガス中に含まれる窒素酸化物を還元して浄化する排気ガス浄化装置をエンジンルーム内に備えている。
【0005】
この排気ガス浄化装置は、例えば尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、排気管に設けられた還元触媒と、排気管のうち還元触媒よりも上流側に配設され、尿素水タンクから供給された尿素水を排気管内へ噴射する噴射装置とを有している。そして、噴射装置によって噴射された尿素水が排気ガスの熱で加水分解され、生成したアンモニアが還元触媒において排気ガス中に含まれる窒素酸化物と還元反応することによって窒素酸化物を無害な水と窒素に分解して浄化している。
【0006】
上述した排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクは、尿素水の性質や尿素水タンクの大きさ等を考慮して建設機械の使用場所や用途等に応じた種々のレイアウトが提案されている。例えば、尿素水の融点は約−11度であるので、外気の温度が低下することによって尿素水タンクに貯蔵された尿素水が凍結しないように、尿素水タンクがエンジンルーム内のエンジンや油圧ポンプ等の熱を発生させる機器の近傍に配置されたり、あるいはエンジンルーム内のスペースを確保するために、尿素水タンクがカウンタウェイト内に配置されたものがある
具体的に尿素水タンクを備えた建設機械の従来技術の1つとして、尿素水タンク内の尿素水が高温にならないように、熱交換器と、この熱交換器に対面して配置され、熱交換器の放熱を促進させるための冷却風を生起させるファンと、NOx還元触媒に供給される液体還元剤、すなわち尿素水を貯留する尿素水タンクとを機械室に備え、この尿素水タンクが、冷却風の流れ方向における熱交換器よりも上流に配置された建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。この建設機械では、熱交換器を通過する前の冷却風に対して尿素水タンクが放熱するので、尿素水タンク内の尿素水の凍結を防止すると共に尿素水の温度上昇が抑えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−138526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、一般的に油圧ショベル等の建設機械は、エンジン等の機器に電力を供給するバッテリを備えており、このバッテリは旋回体の内部に搭載されるが、上述した特許文献1に開示された従来技術の建設機械の尿素水タンクと同様にバッテリも高温となる部分、例えばエンジンや油圧ポンプ等の熱を発生させる機器の近傍に設置することは好ましくないので、旋回体内においてバッテリの配置を考慮する必要がある。
【0009】
特に、上述した従来技術の建設機械のように、エンジンルーム内において尿素水タンクが冷却風の流れ方向における熱交換器よりも上流に配置されている場合には、バッテリを車体前部の工具箱に設置することが考えられる。しかし、中型以上の建設機械であれば車体前部の工具箱にバッテリを設置することもできるが、小旋回型油圧ショベル等の小型の建設機械における車体前部の工具箱には既にコントロールバルブ等の機器が設置されているので、バッテリを工具箱に設置することが困難となっている。
【0010】
また、小旋回型油圧ショベル等の小型の建設機械におけるカウンタウェイトに尿素水タンクを収納する凹部を設け、このカウンタウェイトの凹部に尿素水タンクを設置することにより、エンジンルーム内にバッテリを設置するスペースを確保することも考えられる。しかし、小旋回型油圧ショベル等の小型の建設機械は、狭い場所でも作業を行えるように後端半径を小さくしており、カウンタウェイトの厚みが大きくないので、カウンタウェイトに尿素水タンクを収納できる体積の凹部を確保することが難しくなっている。
【0011】
さらに、小旋回型油圧ショベル等の小型の建設機械では、後端半径を小さくするために高比重の鋳物のカウンタウェイトが採用されている。そのため、仮にカウンタウェイトに上記凹部を設けて尿素水タンクを当該凹部に設置することができた場合でも、比重が異なる尿素水タンクがカウンタウェイトの凹部に搭載されることによって車体が不安定になることが懸念されている。このように、上述した特許文献1に開示された従来技術の建設機械では、バッテリの配置が考慮されておらず、特に小旋回型油圧ショベル等の小型の建設機械において尿素水タンクとバッテリの配置の重要性が高くなっている。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、尿素水タンク内の尿素水とバッテリの温度が上昇することを抑えると共に、車体の高い安定性を確保することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の建設機械は、前方に作業装置が設けられた旋回体と、この旋回体の後部に配置されたカウンタウェイトと、このカウンタウェイトの前方に配置されたエンジンルームと、このエンジンルーム内に配設されたエンジンと、このエンジンの熱交換を行う熱交換器と、前記エンジンルームの外装に形成され、外気を吸入する吸入口と、この吸入口から前記エンジンルーム内へ外気を取り入れて前記熱交換器を冷却するファンと、前記エンジンルームの外装に設けられ、前記エンジンから排出された排気ガスを外部へ放出する尾管と、前記エンジンから排出された排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、前記エンジンに電力を供給するバッテリとを備えた建設機械において、前記熱交換器よりも外気の流れの上流側に前記尿素水タンクと前記バッテリを共に配置したことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、エンジンルームの外装に形成された吸入口からエンジンルーム内へ外気が吸入されるので、熱交換器よりも外気の流れの上流側の温度は吸入された外気によって大気の温度に近くなっている。そのため、熱交換器よりも外気の流れの上流側に尿素水タンクとバッテリを共に配置することにより、エンジンルーム内において高温となる部分、例えばエンジンや油圧ポンプ等の熱を発生させる機器の近傍に設置しても尿素水タンクとバッテリが吸入口から吸入した外気によって冷却されるので、尿素水タンク内の尿素水とバッテリの温度が上昇することを抑えることができる。
【0015】
また、尿素水タンクとバッテリが共にエンジンルーム内に設置されているので、カウンタウェイトが車体のバランスを保つのに十分な重量を確保することができる。これにより、建設機械が尿素水タンクとバッテリの双方を備えても車体のバランスを維持することができる。このように、尿素水タンク内の尿素水とバッテリの温度が上昇することを抑えると共に、車体の高い安定性を確保することができる。
【0016】
また、本発明に係る建設機械は、前記発明において、前記バッテリを前記尿素水タンクよりも前記作業装置側に配置したことを特徴としている。このように構成すると、バッテリの後方、すなわちバッテリよりもカウンタウェイト側に尿素水タンクを設置するためのスペースが確保される。ここで、小旋回型油圧ショベル等の小型の建設機械に備えられるカウンタウェイトは、所定の重量を確保するために内側に複雑な凹凸形状を有している。また、尿素水タンクは、例えば耐食性の高い合成樹脂材で成形されたり、あるいはステンレス等で成形されることによって形状に自由度があるので、尿素水タンクが配置される上記スペースにおけるカウンタウェイトの凹凸形状に合わせて尿素水タンクの形状を設定することができる。これにより、尿素水タンクとバッテリを共に熱交換器よりも外気の流れの上流側に配置することに伴って新たにデッドスペースが生じることを抑えることができ、エンジンルーム内のスペースを有効に活用することができる。
【0017】
また、本発明に係る建設機械は、前記発明において、前記尿素水タンクと前記熱交換器との間に前記バッテリを配置したことを特徴としている。このように構成すると、尿素水タンクがバッテリよりも外側、すなわちエンジンルームの外装に近い側に配置されるので、例えばエンジンルームの外装のうち熱交換器よりも外気の流れの上流側に形成されたメンテナンス作業用の開閉扉を開くことにより、尿素水タンクの補給口に容易に手を伸ばすことができる。これにより、尿素水タンクにおける尿素水の補給等のメンテナンス作業にかかる手間や時間を省くことができる。
【0018】
また、本発明に係る建設機械は、前記発明において、前記バッテリを前記尿素水タンクの上方に配置したことを特徴としている。このように構成すると、尿素水タンクとバッテリを並べて配置した場合に比べてバッテリの大きさのスペースを旋回フレーム上に新たに確保することができるので、例えば旋回フレーム上に確保したバッテリの大きさのスペース分だけ尿素水タンクの容量を大きく設定することができ、尿素水タンク内に十分な量の尿素水を貯蔵することができる。
【0019】
また、本発明に係る建設機械は、前記発明において、2個の前記バッテリを備え、これらの2個の前記バッテリのうち1個の前記バッテリの上方に他の1個の前記バッテリを配置したことを特徴としている。このように構成すると、尿素水タンクと2個のバッテリを旋回フレーム上に並べて配置した場合に比べて1個のバッテリの大きさのスペースを旋回フレーム上に確保することができ、例えば旋回フレーム上に確保した1個のバッテリの大きさのスペース分だけ尿素水タンクの容量を大きく設定することができる。これにより、尿素水タンク内に十分な量の尿素水を貯蔵することができる。さらに、2個のバッテリを尿素水タンクの上方へ配置する場合に比べて尿素水タンクと2個のバッテリがエンジンルームの外装の吸入口から吸入された外気の流れの妨げになることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の建設機械は、前方に作業装置が設けられた旋回体と、この旋回体の後部に配置されたカウンタウェイトと、このカウンタウェイトの前方に配置されたエンジンルームとを備えている。そして、建設機械は、エンジンルーム内に配設されたエンジンと、このエンジンの熱交換を行う熱交換器と、エンジンルームの外装に形成され、外気を吸入する吸入口と、この吸入口からエンジンルーム内へ外気を取り入れて熱交換器を冷却するファンと、エンジンルームの外装に設けられ、エンジンから排出された排気ガスを外部へ放出する尾管と、エンジンから排出された排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、エンジンに電力を供給するバッテリとを備え、熱交換器よりも外気の流れの上流側に尿素水タンクとバッテリを共に配置している。そのため、尿素水タンクとバッテリが吸入口から吸入した外気によって冷却されるので、尿素水タンク内の尿素水とバッテリの温度が上昇することを抑えることができる。また、尿素水タンクとバッテリを共にエンジンルームに設置することにより、カウンタウェイトに尿素水タンクを設置するための凹部を設けなくても良いので、カウンタウェイトが車体のバランスを保つのに十分な重量を確保することができ、車体のバランスを維持することができる。このように、尿素水タンク内の尿素水とバッテリの温度が上昇することを抑えると共に、車体の高い安定性を確保することができ、尿素水タンクとバッテリを備えた建設機械の信頼性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る建設機械の第1実施形態である小旋回型油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本発明に係る建設機械の第1実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図である。
【図3】図2に示す本発明の第1実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図2に示す矢視Aから旋回体内を見た図である。
【図4】本発明に係る建設機械の第2実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図である。
【図5】図4に示す本発明の第2実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図4に示す矢視Aから旋回体内を見た図である。
【図6】本発明に係る建設機械の第3実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図である。
【図7】図6に示す本発明の第3実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図6に示す矢視Aから旋回体内を見た図である。
【図8】図7に示す本発明の第3実施形態に備えられる支持台の構成を示す図である。
【図9】本発明に係る建設機械の第4実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図である。
【図10】図9に示す本発明の第4実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図9に示す矢視Aから旋回体内を見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る建設機械を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
本発明に係る建設機械の第1実施形態は、例えば図1に示すように小旋回型油圧ショベル1に適用される。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動する旋回装置、例えばフロント作業機4とを備えている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5を備えている。
【0024】
また、エンジンルーム5は、左側前部に図示しないヒンジを介して左右方向に開閉する開閉扉14を有しており、この開閉扉14には、エンジンルーム5内に外気を吸入する吸入口5bが設けられている。具体的には、この吸入口5bは、エンジンルーム5の外装のうち開閉扉14の上部に設けられ、外気に伴って大きなゴミがエンジンルーム5内へ入らないように細長く設定された複数のスリット状になっている。なお、エンジンルーム5の開閉扉14には、吸入口5bとカウンタウェイト6との間に把手14aが取り付けられており、この把手14aを引くことによって開閉扉14を開いてエンジンルーム5内のメンテナンス作業等を行うようになっている。さらに、エンジンルーム5の外装のうち吸入口5bと反対側の外装には、吸入口5bからエンジンルーム5内に吸入した外気を再び外部へ送出する図示しない送出口が形成されている。
【0025】
さらに、エンジンルーム5は、図2に示すようにエンジン5aと、このエンジン5aの熱交換を行う熱交換器15と、エンジンルーム5の外装に形成され、外気を吸入する上述の吸入口5bと、エンジン5aの両端のうち熱交換器15に近い側の一端に設けられ、吸入口5bからエンジンルーム5内へ外気を取り入れて熱交換器15を冷却するファン16と、エンジンルーム5の外装に設けられ、エンジン5aから排出された排気ガスを外部へ放出する尾管20と、エンジン5aの両端のうちファン16と反対側の他端に設けられ、フロント作業機4へ圧油を供給する油圧ポンプ8とを有している。
【0026】
具体的には、ファン16はエンジン5aに図示しないプーリを介して接続されており、エンジン5aの駆動力によって回転するようになっている。また、熱交換器15は、図示されていないが、例えばエンジン5a用の冷却水を冷却するラジエータと、フロント作業機4を作動させる作動油を冷却するオイルクーラと、エンジン5aの吸気を冷却するインタクーラとを有している。これらのラジエータ、オイルクーラ、及びインタクーラは、それぞれ旋回体3の前後方向に沿って並設されており、旋回フレーム3a上に固定された枠体によって立設した状態で支持されている。そして、熱交換器15は、エンジン5a、ファン16、及び油圧ポンプ8が配置された部屋と、後述する尿素水タンク12とバッテリ13a,13bが配置される部屋とを隔てるようになっている。
【0027】
従って、小旋回型油圧ショベル1では、エンジン5aが駆動すると、ファン16が回転してエンジンルーム5の外装に形成された吸入口5bから外気がエンジンルーム5内へ流入する。そして、流入した外気は熱交換器15へ送風され、熱交換器15のラジエータ、オイルクーラ、及びインタクーラをそれぞれ冷却する。その後、外気はエンジン5a及び油圧ポンプ8に送風されてエンジン5aと油圧ポンプ8を冷却し、エンジンルーム5の外装に形成された送出口から外部へ送出される。
【0028】
ここで、小旋回型油圧ショベル1の旋回体3の後部に配置されたカウンタウェイト6は、後端半径が標準型油圧ショベルと比べて小さく、例えば内側に大きく窪んだ凹部6aを有してエンジンルーム5に取り外し可能に取り付けられている。また、カウンタウェイト6は、例えば鋳物で成形されることによって車体のバランスが保たれている。すなわち、フロント作業機4の重さによって車体が前方へ傾倒することがないようにカウンタウェイト6の形状や重量等が調整され、車体の重心が旋回体3の中心付近に位置するようになっている。
【0029】
本発明の第1実施形態では、エンジンルーム5は、図2、図3に示すようにエンジン5aから排出された排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する上述した尿素水タンク12と、エンジン5aに電力を供給する2個のバッテリ13a,13bとを有し、熱交換器15よりも外気の流れの上流側に尿素水タンク12と2個のバッテリ13a,13bを共に配置している。すなわち、本発明の第1実施形態は、エンジンルーム5の開閉扉14と、熱交換器15と、カウンタウェイト6との間に尿素水タンク12及びバッテリ13a,13bを配置している。
【0030】
そして、本発明の第1実施形態は、例えば2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側に配置している。すなわち、尿素水タンク12は、2個のバッテリ13a,13bと旋回体3の前後方向においてバッテリ13a,13bの後方に配置されている。ここで、バッテリ13a,13bはそれぞれ直方体の形状を有しており、同じ大きさ及び同じバッテリ容量に設定されている。これらのバッテリ13a,13bは、直方体の側面のうち長手方向の側面をそれぞれ向かい合わせた状態で配置されており、さらに直方体の上面の長手方向が旋回体3の前後方向と平行になるように並設されている。なお、バッテリ13a,13bは、旋回フレーム3a上に例えば図示しない固定バンド等で動かないように固定されている。
【0031】
また、尿素水タンク12の上部には、尿素水を補給するための補給口12aが設けられており、この補給口12aは、エンジンルーム5の開閉扉14側に配置されている。さらに、上述した尿素水タンク12は、例えば耐食性の高い合成樹脂材で成形されたり、あるいはステンレス等で成形されており、尿素水タンク12の形状や大きさは、2個のバッテリ13a,13bと、開閉扉14と、熱交換器15と、カウンタウェイト6との間のスペースに収まるように予め設定されている。従って、尿素水タンク12の後端側は、カウンタウェイト6の凹部6aの形状に沿うように成形されている。そのため、尿素水タンク12の上面の形状は、図2に示すように角部が丸みを帯びた台形となっており、尿素水タンク12の側面は、図3に示すように角部が丸みを帯びた長方形となっている。なお、尿素水タンク12の高さは、バッテリ13a,13bの高さよりも大きく設定されており、尿素水タンク12は、旋回フレーム3a上に例えば図示しない固定バンド等で動かないように固定されている。
【0032】
また、エンジンルーム5は、図示されないが、エンジン5aと尾管20とを接続し、エンジン5aから排出される排気ガスを排出口20へ導く排気管と、この排気管に設けられた還元触媒と、排気管のうち還元触媒よりも上流側に配設され、尿素水タンク12から供給された尿素水を排気管内へ噴射する噴射装置とを有している。そして、噴射装置によって噴射された尿素水から生成したアンモニアが還元触媒において排気ガス中に含まれる有害な窒素酸化物を還元して無害な水と窒素に分解するようになっている。
【0033】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、エンジンルーム5の開閉扉14に形成されたスリット状の吸入口5bからエンジンルーム5内へ外気が吸入されるので、熱交換器15よりも外気の流れの上流側、すなわちエンジンルーム5の開閉扉14と熱交換器15との間の空間の温度は吸入された外気によって大気の温度に近くなっている。そのため、エンジンルーム5の開閉扉14と熱交換器15との間のスペースに尿素水タンク12と2個のバッテリ13a,13bを共に配置することにより、エンジンルーム5内において高温となる部分、例えばエンジン5aや油圧ポンプ8等の熱を発生させる機器の近傍に設置しても尿素水タンク12と2個のバッテリ13a,13bが吸入口5bから吸入した外気によって冷却されるので、尿素水タンク12内の尿素水とバッテリ13a,13bの温度が上昇することを抑えることができる。
【0034】
また、尿素水タンク12と2個のバッテリ13a,13bが共にエンジンルーム5内に設置されているので、カウンタウェイト6が車体のバランスを保つのに十分な重量を確保することができる。さらに、尿素水タンク12と2個のバッテリ13a,13bをエンジンルーム5内に設置することにより、フロント作業機4とカウンタウェイト6との重さが釣り合うことによって旋回体3の中心付近に位置する重心がずれることを抑えることができる。これにより、小旋回型油圧ショベル1が尿素水タンク12とバッテリ13a,13bを備えても車体のバランスを維持することができる。このように、尿素水タンク12内の尿素水とバッテリ13a,13bの温度が上昇することを抑えると共に、車体の高い安定性を確保することができ、尿素水タンク12とバッテリ13a,13bを備えた小旋回型油圧ショベル1の信頼性を向上させることができる。
【0035】
また、本発明の第1実施形態は、2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側に配置することにより、バッテリ13a,13bの後方、すなわちバッテリ13a,13bよりもカウンタウェイト6側に尿素水タンク12を設置するためのスペースが確保される。従って、このスペースにおけるカウンタウェイト6の内側に大きく窪んだ凹部6aの形状に合わせて尿素水タンク12の形状や大きさを設定し、当該スペースに尿素水タンク12を設置することにより、尿素水タンク12とバッテリ13a,13bを共に熱交換器15よりも外気の流れの上流側に配置することに伴って新たにデッドスペースが生じることを抑えることができ、エンジンルーム5内のスペースを有効に活用することができる。
【0036】
また、本発明の第1実施形態は、2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側に並設しているので、図3に示すように尿素水タンク12及びバッテリ13a,13bの上方が開放されている。そのため、熱交換器15よりも外気の流れの上流側に尿素水タンク12とバッテリ13a,13bを共に配置しても、尿素水タンク12とバッテリ13a,13bが吸入口5bからエンジンルーム5内へ流入する外気の流れの妨げになることを抑えることができる。これにより、十分な流量の外気を吸入口5bから熱交換器15、エンジン5a、及び油圧ポンプ8へ送風することができる。
【0037】
[第2実施形態]
図4は本発明に係る建設機械の第2実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図、図5は図4に示す本発明の第2実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図4に示す矢視Aから旋回体内を見た図である。
【0038】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図2、図3に示すように2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側に配置したのに対して、第2実施形態は、図4、図5に示すように尿素水タンク22と熱交換器15との間に2個のバッテリ13a,13bを配置したことである。
【0039】
この場合、バッテリ13a,13bは、直方体の側面のうち短手方向の側面を向かい合わせた状態で配置され、さらに直方体の上面の長手方向が旋回体3の前後方向と平行になるように並設されている。また、バッテリ13a,13bは、熱交換器15とそれぞれ隣接して配置され、尿素水タンク22は、エンジンルーム5の開閉扉14とバッテリ13a,13bとの間のスペースに配置されている。従って、尿素水タンク22の形状や大きさは、2個のバッテリ13a,13bと、開閉扉14と、カウンタウェイト6との間の上記スペースに収まるように予め設定されている。そのため、尿素水タンク22の上面の形状は、図4に示すように角部が丸みを帯びた長方形となっており、尿素水タンク22の側面は、図5に示すように角部が丸みを帯びた長方形となっている。なお、尿素水タンク22の高さは、バッテリ13a,13bの高さよりも小さく設定されている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0040】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、尿素水タンク22と熱交換器15との間に2個のバッテリ13a,13bを配置することにより、尿素水タンク22がバッテリ13a,13bよりも外側、すなわちエンジンルーム5の開閉扉14に近い側に配置されるので、開閉扉14に設けられた把手14aを把持して開閉扉14を開くことにより、尿素水タンク22の補給口22aに容易に手を伸ばすことができる。さらに、尿素水タンク22の高さがバッテリ13a,13bの高さよりも小さく設定されているので、旋回体3の外側から尿素水タンク22の補給口22aに尿素水を注入し易くなっている。これにより、尿素水タンク22における尿素水の補給等のメンテナンス作業にかかる手間や時間を省くことができ、メンテナンス作業における利便性を高めることができる。
【0041】
[第3実施形態]
図6は本発明に係る建設機械の第3実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図、図7は図6に示す本発明の第3実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図6に示す矢視Aから旋回体内を見た図、図8は図7に示す本発明の第3実施形態に備えられる支持台の構成を示す図である。
【0042】
本発明の第3実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図2、図3に示すように2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側に配置したのに対して、第3実施形態は、図6、図7に示すように2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク23の上方に配置したことである。
【0043】
具体的には、本発明の第3実施形態は、バッテリ13a、13bを下方から支持する支持台17を備えており、この支持台17は、図8に示すようにバッテリ13a,13bが載置される長方形の平板17aと、この平板17aの4つの角部に配置され、平板17aに対して垂直にそれぞれ設けられた4本の支柱17bと、平板17a及び各支柱17bを支持する4本の支持片17cとから成っている。
【0044】
また、平板17aの長手方向の長さは、図6に示すようにバッテリ13a,13bの上面の長手方向の長さよりも大きく設定されており、平板17aの短手方向の長さは、バッテリ13a,13bの上面の短手方向の長さの2倍よりも大きく、エンジンルーム5の開閉扉14と熱交換器15との間の間隔よりも小さく設定されている。そして、支持台17は、開閉扉14と、熱交換器15と、カウンタウェイト6との間に配置され、各支持片17cの裏面が旋回フレーム3aに溶接等によって固定されている。
【0045】
バッテリ13a,13bは、第1実施形態と同様に直方体の側面のうち長手方向の側面をそれぞれ向かい合わせた状態で配置されており、さらに直方体の上面の長手方向が旋回体3の前後方向と平行になるように支持台17の平板17a上に並設されている。なお、バッテリ13a,13bは、支持台17の平板17a上に例えば図示しない固定バンド等で動かないように固定されている。そして、尿素水タンク23は、支持台17の平板17aの下方に配置されている。
【0046】
従って、尿素水タンク23の形状や大きさは、支持台17の平板17aの下方に形成されたスペースに収まるように予め設定されている。そのため、尿素水タンク22の上面の形状は、角部が丸みを帯びた長方形となっており、尿素水タンク22の側面は、図7に示すように角部が丸みを帯びた長方形となっている。なお、尿素水タンク23の高さは、支持台17の支柱17bの長さよりも小さく設定されている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0047】
このように構成した本発明の第3実施形態によれば、第1、第2実施形態のように尿素水タンク12,22とバッテリ13a,13bを並べて配置した場合に比べ、バッテリ13a,13bの大きさのスペースを旋回フレーム3a上に新たに確保することができるので、旋回フレーム3a上に確保したバッテリ13a,13bの大きさのスペース分だけ尿素水タンク23の容量を大きく設定することができる。これにより、尿素水タンク23内に十分な量の尿素水を貯蔵することができる。
【0048】
また、尿素水タンク23の高さは、上述したように支持台17の支柱17bの長さよりも小さく設定されており、尿素水タンク23の容量を大きく設定しても尿素水タンク23の高さを抑えることができるので、エンジンルーム5の開閉扉14を開いて旋回体3の外側から尿素水タンク23の補給口23aへ尿素水を容易に注入することができる。これにより、尿素水の補給等のメンテナンス作業における作業者の負担を軽減することができる。
【0049】
[第4実施形態]
図9は本発明に係る建設機械の第4実施形態に備えられる旋回体内部の構成を示す図、図10は図9に示す本発明の第4実施形態に備えられる尿素水タンク及びバッテリの配置を説明する図であり、図9に示す矢視Aから旋回体内を見た図である。
【0050】
本発明の第4実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態が図2、図3に示すように2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側の旋回フレーム3a上に配置したのに対して、第4実施形態は、第1実施形態と同様に2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク12よりもフロント作業機4側に配置したことに加え、例えば図9、図10に示すように2個のバッテリ13a,13bのうち1個のバッテリ13bの上方に他の1個のバッテリ13aを配置したことである。
【0051】
この場合、本発明の第4実施形態は、第3実施形態に備えられた支持台17の代わりに、支持台17の平板17aの大きさが異なる平板27aを有する支持台27を備えている。すなわち、平板27aの長手方向の長さは、図9に示すようにバッテリ13a,13bの上面の長手方向の長さよりも少しだけ大きく、エンジンルーム5の開閉扉14と熱交換器15との間の間隔よりも小さく設定されており、平板27aの短手方向の長さは、バッテリ13a,13bの上面の短手方向の長さよりも少しだけ大きく設定されている。
【0052】
そして、支持台27は、開閉扉14と、熱交換器15と、カウンタウェイト6と、尿素水タンク24との間に平板27aの長手方向が旋回体3の前後方向と垂直になるように配置され、各支柱27bの裏面が旋回フレーム3aに溶接等によって固定されている。従って、2個のバッテリ13a,13bのうち1個のバッテリ13bは、直方体の上面の長手方向が旋回体3の前後方向と垂直になるように支持台27の平板27aの下方に配置されると共に、他の1個のバッテリ13aは、直方体の上面の長手方向が旋回体3の前後方向と垂直になるように支持台27の平板27aの上方に配置されている。なお、バッテリ13bは旋回フレーム3a上に例えば図示しない固定バンド等で固定されており、バッテリ13aは支持台27の平板27a上に例えば図示しない固定バンド等で固定されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0053】
このように構成した本発明の第4実施形態によれば、2個のバッテリ13a,13bのうち1個のバッテリ13bの上方に支持台27によって他の1個のバッテリ13aを配置することにより、図2に示す第1実施形態のように尿素水タンク12と2個のバッテリ13a,13bを旋回フレーム3a上に並べて配置した場合に比べ、1個のバッテリ13aの大きさのスペースを旋回フレーム3a上に確保することができる。これにより、旋回フレーム3a上に確保した1個のバッテリ13aの大きさのスペース分だけ尿素水タンク24の容量を大きく設定することができ、尿素水タンク24内に十分な量の尿素水を貯蔵することができる。さらに、図6に示す第3実施形態のように2個のバッテリ13a,13bを尿素水タンク23の上方へ配置する場合に比べ、尿素水タンク24とバッテリ13a,13bが吸入口5bから吸入された外気の流れの妨げになることを抑えることができる。
【0054】
なお、上述した本発明の第1〜3実施形態では、熱交換器15よりも外気の流れの上流側に2個のバッテリ13a,13bを配置した場合について説明したが、熱交換器15よりも外気の流れの上流側に1個又は3個以上のバッテリを配置しても良い。この場合も、エンジンルーム5内における熱交換器15よりも外気の流れの上流側のスペースに収まるように尿素水タンクの大きさを設定することができる。
【0055】
また、本発明の第1〜4実施形態は、図1に示すように小旋回型油圧ショベル1に適用した場合について説明したが、中型以上の油圧ショベル等の建設機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 小旋回型油圧ショベル(建設機械)
2 走行体
3 旋回体
4 フロント作業機(作業装置)
5 エンジンルーム
5a エンジン
5b 吸入口
6 カウンタウェイト
7 キャブ
8 油圧ポンプ
12,22,23,24 尿素水タンク
12a,22a,23a,24a 補給口
13a,13b バッテリ
14 開閉扉
14a 把手
15 熱交換器
16 ファン
17,27 支持台
17a,27a 平板
17b,27b 支柱
17c,27c 支持片
20 尾管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に作業装置が設けられた旋回体と、この旋回体の後部に配置されたカウンタウェイトと、このカウンタウェイトの前方に配置されたエンジンルームと、このエンジンルーム内に配設されたエンジンと、このエンジンの熱交換を行う熱交換器と、前記エンジンルームの外装に形成され、外気を吸入する吸入口と、この吸入口から前記エンジンルーム内へ外気を取り入れて前記熱交換器を冷却するファンと、前記エンジンルームの外装に設けられ、前記エンジンから排出された排気ガスを外部へ放出する尾管と、前記エンジンから排出された排気ガスを浄化する尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、前記エンジンに電力を供給するバッテリとを備えた建設機械において、
前記熱交換器よりも外気の流れの上流側に前記尿素水タンクと前記バッテリを共に配置したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記バッテリを前記尿素水タンクよりも前記作業装置側に配置したことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記尿素水タンクと前記熱交換器との間に前記バッテリを配置したことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記バッテリを前記尿素水タンクの上方に配置したことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
2個の前記バッテリを備え、
これらの2個の前記バッテリのうち1個の前記バッテリの上方に他の1個の前記バッテリを配置したことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144955(P2012−144955A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6234(P2011−6234)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】