説明

建設資材の昇降装置

【課題】 上部開口から建設資材を容易に取り込むことができ、しかも水平度を確保するための同調制御機構が不要で、高速昇降が可能な昇降ステージを有する建設資材の昇降装置を提供する。
【解決手段】 立体フレーム2の最上層の梁2aには、昇降ステージ3を昇降させるための駆動装置4が設置されており、駆動装置4は、最上層の梁2aに沿って当該梁2aの直下に設置される第一回転軸11と、第一減速機13を介して第一回転軸11を駆動するブレーキ付き電動機16と、第一回転軸11の両端部においてそれぞれ第二減速機14、14を介して連結され、第一回転軸11と直交する一対の並設された第二回転軸とから概略構成されている。一対の並設された第二回転軸には、それぞれ二個のスプロケットが取り付けられており、各スプロケットに巻き掛けたチェーン5の一端に昇降ステージ3が連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設資材の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超高層RC集合住宅などの建設工事では、躯体構築時におけるタワークレーンの負荷を軽減する目的で、型枠やサポート材などの転用部材を下階から上階へ搬送する機能と、タワークレーンにより外部から搬入されるALC版などの資材を荷受けするステージ機能とを併せ持った昇降装置が考案され、多くの建設現場で実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−214614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現行の昇降装置は複数の電動式チェーンホイストを用いて資材を積載するステージを昇降させており、以下のような問題点がある。
(1)最上層に設置される複数の電動式チェーンホイストが大きいため、ALC版などの長物資材を上部開口から取り込む際に、電動式チェーンホイストが障害となり、資材の取り込みに手間が掛かる。
(2)複数の昇降駆動装置を用いる場合には、昇降動作を繰り返す間に昇降用のチェーンあるいはワイヤーロープの繰出し量に差が生じ、昇降ステージの水平度が狂ってくる。そのため、この狂いを小さく抑える、あるいは補正するための複雑な制御機構が必要となる。その結果、昇降装置のコストが上昇する、あるいは信頼性維持に手間が掛かる等の問題がある。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、上部開口から建設資材を容易に取り込むことができ、しかも水平度を確保するための同調制御機構が不要で、高速昇降が可能な昇降ステージを有する建設資材の昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、構造物 の複数階と略 同一の高さ寸法を有する平面視矩形状の 立体フレームと、当該 立体フレーム内を昇降する 昇降ステージと、前記立体フレームの最上層に設置され、前記 昇降ステージを懸吊して昇降させる駆動装置 と、前記立体フレームを 前記構造物 に固定支持するアウトリガーとを備える建設資材の昇降装置において、前記駆動装置が、前記立体フレームの最上層の梁に沿って設置され、第一減速機を介して電動機に連結された第一回転軸と、前記第一回転軸の両端部においてそれぞれ第二減速機を介して連結され、前記第一回転軸と直交する一対の並設された第二回転軸とを備え、前記一対の並設された第二回転軸にそれぞれ取り付けられたスプロケットに巻き掛けたチェーンの一端に、前記昇降ステージが連結されていることを特徴とする。
【0006】
電動機を作動すると、第一減速機で減速された駆動力は第一回転軸から第二減速機を介して一対の並設された第二回転軸に伝達される。一対の第二回転軸とともにスプロケットが回転すると、スプロケットに巻き掛けたチェーンが上下方向に移動し、 昇降ステージが昇降する。本駆動装置の場合、電動機の回転が各スプロケットに同じ条件で伝達されるため、昇降ステージは常に水平が維持され、高速昇降も可能となる。
【0007】
本発明によれば、駆動機構がコンパクトになるため、従来に比べて立体フレームの上部開口面積が大きくなり、ALC版などの長物資材も手間を掛けずに取り込むことができる。また、昇降ステージの水平度が常に維持されるので、複雑な同調制御機構が不要となるうえ、昇降ステージの高速化が可能となる。
【0008】
また、本発明では、前記チェーンの他端に連結されるバランスウェイトが、鉛直方向に延在するガイドパイプ内を昇降してもよい。
【0009】
チェーンの他端については、スプロケットの近くにチェーンバケットなどを設け、そこからチェーンを出し入れしてもよいが、昇降ステージが上昇した場合(無負荷側チェーンが繰り出される場合)に、スプロケットとチェーンの接触部で遊びが生じ、異音や振動が発生することがある。本発明では、この事象を防止するため、チェーンにバランスウェイトを連結することにより、無負荷側のチェーンに常にテンションを掛け、スプロケットの回転を安定させている。また、バランスウェイトがスムーズに上下できるように、鉛直方向に延在するガイドパイプ内をバランスウェイトが昇降するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建設資材の昇降装置では、第一減速機で減速された駆動力が第一回転軸から第二減速機を介して一対の並設された第二回転軸に伝達され、一対の第二回転軸に取り付けられたスプロケットが回転すると、スプロケットに巻き掛けたチェーンとともに 昇降ステージが昇降するコンパクトな駆動機構となっている。このため、従来に比べて立体フレームの上部開口面積が大きくなり、ALC版などの長物資材も手間を掛けずに取り込むことができる。また、昇降ステージの水平度が常に維持されるので、複雑な同調制御機構が不要となるうえ、昇降ステージの高速化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る建設資材の昇降装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る建設資材の昇降装置1を示したものであり、図2および図3は昇降ステージ3および駆動装置4の詳細を示したものである。
【0012】
昇降装置1は、立体フレーム2内を昇降ステージ3が昇降するものであり、構造物S に設けられた吹き抜けの開口部内 に配置されて用いられる。立体フレーム2をアウトリガー6で構造物Sに固定した後、 昇降ステージ3を利用して建設資材を下階から上階もしくは上階から下階へ搬送する。
【0013】
立体フレーム2は、構造物Sと階高を同じくし、四層分 の高さ寸法を有する平面視矩形状のラーメン構造物であり、荷の出し入れがない側面と背面はブレース2c、2dで補強されている。
【0014】
立体フレーム2 には、立体フレーム2 から水平方向 に突出・縮退可能 な一対の アウトリガー6、6 が備えられており 、これらアウトリガー6、6 が立体フレーム2 から突出して、その先端部 が構造物S の梁S 上に固定 されることにより、立体フレーム2が構造物Sに固定 支持される 。
また、立体フレーム2 は、アウトリガー6、6 を縮退させてクレーン等により揚重すれば 、その位置を盛り替えることができる。
【0015】
昇降ステージ3 は、水平方向 に突出・縮退可能な一対の ステージアウトリガー7、7を側端部に備えており、これら ステージアウトリガー7、7 は、立体フレーム2 の梁2bの位置 まで突出可能とされている。 ステージアウトリガー7、7 を突出させて、その先端部 を立体フレーム2 の梁2b上に載置して、昇降ステージ3を立体フレーム2で支持することにより、荷の出し入れを安全に行うことができる 。
【0016】
立体フレーム2の最上層の梁2aには、昇降ステージ3を昇降させるための駆動装置4が設置されており、昇降ステージ3は駆動装置4からチェーン5で吊り下げられている。
駆動装置4は平面視コ字状をしており、最上層の梁2aに沿って当該梁2aの直下に設置される。具体的には、駆動装置4は、立体フレーム2の最上層の梁2aに沿って当該梁2aの直下に設置される第一回転軸11と、第一減速機13を介して第一回転軸11を駆動するブレーキ付き電動機16と、第一回転軸11の両端部においてそれぞれ第二減速機14、14を介して連結され、第一回転軸11と直交する一対の並設された第二回転軸12、12とから概略構成される。
一対の並設された第二回転軸12、12には、それぞれ二個のスプロケット15、15が取り付けられており、各スプロケット15に巻き掛けたチェーン5の一端に昇降ステージ3が連結されている。
なお、第二減速機14には、 一段で大きな減速比が得られる、ウォームギアとウォームホィールからなるウォーム減速機が使用されている。
【0017】
各チェーン5の他端にはバランスウェイト9が連結されている。バランスウェイト9は、昇降ステージ3の昇降に伴い、立体フレーム2に付設された鉛直方向に延在するガイドパイプ8内を昇降する。図4にガイドパイプ8を、図5に昇降ステージ3とバランスウェイト9との相対位置関係をそれぞれ示す。
【0018】
ブレーキ付き電動機16を作動すると、第一減速機13で減速された駆動力は第一回転軸11から第二減速機14、14を介して一対の並設された第二回転軸12、12に伝達される。そして、一対の第二回転軸12、12とともにスプロケット15…が回転すると、スプロケット15…に巻き掛けたチェーン5…が上下方向に移動し、 昇降ステージ3が昇降する。
なお、昇降ステージの両端部にそれぞれ歯車を設置して、両歯車間にチェーンを掛け渡せば、半分の本数のチェーンで昇降ステージを昇降させることができるが、このようにすると、チェーンの移動量が二倍となり、昇降速度の低下を招くことになる。
【0019】
立体フレーム2の側面には、駆動装置4とステージアウトリガー7を駆動するための操作盤10が設置されている。この操作盤10は一端が立体フレーム2に軸支されており、 昇降装置1の位置を盛り替える際には、操作盤10を水平面内に回動して立体フレーム2内に格納する。
【0020】
次に、昇降装置1を用いて建設資材を所定階から上階へ 搬送する 方法について 説明する。
先ず 、駆動装置4 を駆動して、昇降ステージ3 を構造物S の所定階に停止させ、ステージアウトリガー7 を突出 させて、立体フレーム2の梁2b に支持させる。この状態から、構造物S 側に設置した ゲート(図示省略) を開き、構造物S の所定階から建設資材 を昇降ステージ3 に運び込む。そして、駆動装置4 を駆動して 昇降ステージ3 を若干上方に移動させ て停止し 、ステージアウトリガー7 を縮退させて 昇降ステージ3 内に格納し 、再び、駆動装置4 を駆動して 昇降ステージ3 をさらに上方に移動させる。
次いで 、昇降ステージ3 が上階のスラブよりも若干上方の位置まで上昇した時点で、駆動装置4 を停止し、ステージアウトリガー7 を突出 させた後 、再び駆動装置4 を駆動し て、ステージアウトリガー7 を立体フレーム2の梁2b に支持させる。そして 、昇降ステージ3 から建設資材 を上階に運び込む 。
上記一連の作業により 、建設資材 を所定階から上階まで搬送することができる。なお、建設資材 を所定階から下 階に 搬送する作業もほぼ同様の手順による。
【0021】
次に、昇降装置1の位置を所定階から上階へ 盛り替える手順について説明する。
先ず 、クレーン(図示省略)を用いて立体フレーム2 を保持した状態で 、アウトリガー6 を構造物Sの梁Sに固定しているアンカーボルト(図示省略)を撤去する。また、操作盤10を立体フレーム2内に格納しておく。次いで、クレーンで立体フレーム2 を若干上昇させ、アウトリガー6 を構造物Sの梁S から地切りする。そして、アウトリガー6 を縮退させた後 、クレーンで立体フレーム2 を上昇させる。
昇降ステージ3 の位置が上階のスラブよりも若干上方となった時点で、立体フレーム2 の上昇を停止して アウトリガー6 を突出 させた後 、立体フレーム2 を下降させて、アウトリガー6 を構造物Sの梁S上 に着地させる。そして 、アウトリガー6 を構造物Sの梁S にアンカーボルトで 固定する。
上記一連の作業により 、昇降装置1の所定階から上階への 盛り替えが完了する。なお、 昇降装置1の所定階から下階への 盛り替えもほぼ同様の手順による。
【0022】
本実施形態による建設資材の昇降装置1では、第一減速機13で減速された駆動力が第一回転軸11から第二減速機14を介して一対の並設された第二回転軸12、12に伝達され、一対の第二回転軸12、12に取り付けられたスプロケット15…が回転すると、スプロケット15…に巻き掛けたチェーン5…とともに 昇降ステージ3が昇降するコンパクトな駆動機構となっている。このため、従来に比べて立体フレーム2の上部開口面積が大きくなり、ALC版などの長物資材も手間を掛けずに取り込むことができる。また、ブレーキ付き電動機16の回転が各スプロケット15に同じ条件で伝達されるため、昇降ステージ3は常に水平を維持した状態となり、高速昇降が可能となる。その結果、昇降装置のコスト低減と信頼性の向上を図ることができる。
【0023】
以上、本発明に係る建設資材の昇降装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、立体フレームは四層としているが、三層や五層などでもよいことはいうまでもない。要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る建設資材の昇降装置を示し、(a)はその正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図2】昇降ステージおよび駆動装置の側面図である。
【図3】昇降ステージおよび駆動装置の背面図である。
【図4】ガイドパイプを示したものであり、(a)はその正面図、(b)はA−A矢視断面図である。
【図5】昇降ステージとバランスウェイトとの相対位置関係を示したものであり、(a)は昇降ステージが最下層にある状態、(b)は昇降ステージが最上層にある状態である。
【符号の説明】
【0025】
1 昇降装置
2 立体フレーム
3 昇降ステージ
4 駆動装置
5 チェーン
6 アウトリガー
7 ステージアウトリガー
8 ガイドパイプ
9 バランスウェイト
10 操作盤
11 第一回転軸
12 第二回転軸
13 第一減速機
14 第二減速機
15 スプロケット
16 ブレーキ付き電動機
S 構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の複数階と略同一の高さ寸法を有する平面視矩形状の立体フレームと、当該立体フレーム内を昇降する昇降ステージと、前記立体フレームの最上層に設置され、前記 昇降ステージを懸吊して昇降させる駆動装置 と、前記立体フレームを 前記構造物 に固定支持するアウトリガーとを備える建設資材の昇降装置において、
前記駆動装置が、前記立体フレームの最上層の梁に沿って設置され、第一減速機を介して電動機に連結された第一回転軸と、前記第一回転軸の両端部においてそれぞれ第二減速機を介して連結され、前記第一回転軸と直交する一対の並設された第二回転軸とを備え、
前記一対の並設された第二回転軸にそれぞれ取り付けられたスプロケットに巻き掛けたチェーンの一端に、前記昇降ステージが連結されていることを特徴とする建設資材の昇降装置。
【請求項2】
前記チェーンの他端に連結されるバランスウェイトが、鉛直方向に延在するガイドパイプ内を昇降することを特徴とする請求項1に記載の建設資材の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−46360(P2007−46360A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232913(P2005−232913)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000159272)吉永機械株式会社 (6)
【Fターム(参考)】