説明

弁体が変形する弁

【課題】高温で使用してもリークが生じない弁を提供する。
【解決手段】環状の弁座7と、弁座7と反対側に向かって外側に開いた、弁座7側に凸状の板状の弁体8と、弁体8の中央部を支持する支持部材9とを有し、支持部材9は、弁体8を弁座7に押圧し、弁体8を弾性変形させることによって、弁体8を弁座7に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁、特に高温の気体の流路を閉鎖するための弁に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な流体の流れを制御するために、多様な弁が使用されている。例えば、特許文献1のような燃焼装置等では、高温の空気や排ガスの流れを切り換えるためにも弁が使用される。そのような高温で使用される弁では、熱によって弁体等が変形するため、リークが発生し易い。
【0003】
弁の気密性を高めるためには、弾性変形可能な樹脂を用いることが一般的であるが、高温の気体用の弁には、耐熱性の問題によりそのような樹脂を使用することができない。また、燃焼装置の燃焼用空気や排ガスの流路は、流路面積が大きい場合が多く、特に、変形によるリークが問題となりやすい。
【0004】
特許文献1のような蓄熱交番式の燃焼装置では、排ガスの流路と燃焼空気の流路とを弁によって切り換える必要がある。そのための弁にリークがあると、熱効率が悪化したり、燃焼状態が不安定になったりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3796343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点に鑑みて、本発明は、高温で使用してもリークが生じない弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による弁は、環状の弁座と、少なくとも外側が前記弁座と反対側に向かって開いた板状に形成された弁体と、前記弁体の中央部を支持する支持部材とを有し、前記支持部材は、前記弁体を前記弁座に押圧し、前記弁体を弾性変形させることによって、前記弁体を前記弁座に密着させるものとする。
【0008】
この構成によれば、弁体と弁座との相対位置が変わったり弁体や弁座が変形したりしても、弁体を弾性変形させることによって弁座の形状に合致させて、隙間をなくすることができる。このため、熱膨張による変形が生じるような高温で使用しても、流路を気密に閉鎖してリークを防止できる。
【0009】
また、本発明の弁において、前記弁体は、少なくとも外側が前記弁座側に凸状であってもよい。
【0010】
この構成によれば、弁体が弁座の形状に合致するように弾性変形しやすい。
【0011】
また、本発明の弁において、前記支持部材は、前記弁座を揺動可能に支持することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、支持部材や他の部材の変形によって支持部材の位置や向きが変わっても、弁体を弁座に対して正対させて押圧できる。
【0013】
また、本発明の弁において、前記弁体の前記支持部材に支持される部分の外形形状は円形であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、弁体の支持部材に支持された部分から弁座に当接する部分までの距離が一定になるので、どの位置に隙間が生じても弁体の弾性変形により隙間をなくすことができる。
【0015】
また、本発明の弁において、前記支持部材は、前記弁体を押圧する負荷が予め定めた値となるまで、前記弁体を前記弁座に押圧してもよい。
【0016】
この構成によれば、弁体と弁座との間に隙間がある間は、隙間のある部分に弁体が逃げるように弾性変形可能であるので、支持部材に対する反力が緩和されるが、弁体が全周に亘って弁座に当接すると、支持部材に対する反力が大きくなる。したがって、弁体が全周に亘って弁座に当接しているときに予測される反力に相当する負荷となるまで押圧すれば、弁体と弁座の間の隙間をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1つの実施形態の3方弁の断面図である。
【図2】図1の3方弁の側面図である。
【図3】図1の3方弁の弁体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の弁1つの実施形態である三方弁1の断面を示す。三方弁1は、流体の流路となる内部空間を形成する金属製のハウジング2に、本発明に係る弁構造を有する2つの開閉ポート3,4と、1つの常時開放された固定ポート5とが設けられている。
【0019】
三方弁1は、開閉ポート3,4のいずれかと固定ポート5との間に流体の流れを許す切換弁である。各ポート3,4,5には、外部の流路に接続するためのフランジ6が配設されている。
【0020】
開閉ポート3,4において、それぞれ、ハウジング2には、金属製の環状の弁座7が固定され、弁座7に欠球状の金属製鏡板からなる弁体8が圧接されて流路を封止できるようになっている。弁座7の弁体に当接する部分、つまり、内部空間側の内周のエッジは、半径5mm程度に丸面取りされている。
【0021】
弁体8は、その中央部が、棒状の支持部材9によって若干の揺動が可能なように支持されている。具体的には弁体8の中央部には、剛性のある筒状の保持部10が溶接されており、保持部10には、支持部材9の拡径した先端部11を受け入れる支持凹部12が設けられている。弁体8は、先端部11と支持凹部12との遊びの範囲内で、支持部材9に対して揺動可能である。
【0022】
支持部材9は、ハウジング2を貫通する操作軸13の回転によって揺動する揺動アーム14に保持されている。揺動アーム14は、先端がポート3またはポート4に接近するように揺動可能であり、ポート3の弁座7に圧接される弁体8を支持する支持部材9と、ポート4の弁座7に圧接される弁体8を支持する支持部材9とを保持している。
【0023】
図2に示すように、ハウジング2の外側に延伸する操作軸13の端部に、操作レバー15が取り付けられている。操作レバー15は、ボールねじを用いたメカニカルシリンダ16によって揺動させられるようになっている。メカニカルシリンダ16を駆動するブレーキ付モータ17には、電流を検出することによってメカニカルシリンダ16の負荷を算出する負荷検出装置が組み込まれている。
【0024】
三方弁1は、開閉ポート3,4のいずれかを閉鎖するために、モータ17を駆動し、支持部材9が支持している弁体8を弁座7に押圧して、弁体8によって弁座7の開口を封止する。モータ17は、検出したメカニカルシリンダ16の負荷が所定の値に達したとき、ブレーキをかけてメカニカルシリンダ16の位置を固定する。これにより、三方弁1は、弁体8を弁座7に所定の圧力で押圧する状態を保持する。
【0025】
三方弁1において、揺動アーム14を開閉ポート3,4のいずれかに向かって揺動させて、支持部材9を介して弁体8を弁座7に押圧する際、理想的には、弁体8の外周部(正確には外縁のやや内側)が、全周に亘って同時に弁座7に当接する。しかしながら、実際には、弁体8の歪みや傾斜等によって、弁体8の外周部のいずれか一点のみが、最初に、弁座7に当接する。さらに揺動アーム14を揺動させると、弁体8の弁座7に当接している部分の移動が弁座7によって阻まれるため、弁体8の弁座7に当接している部分が揺動アーム14に接近するように、弁体8が支持部材9に対して揺動する。
【0026】
弁座7のエッジが真円であり、弁体8が完全な球面であれば、弁体8は、支持部材9に対する揺動によって、弁座7の全周に亘って当接する。しかしながら、弁座7や弁体8は、熱による歪み等によって僅かに変形していることが少なくない。したがって、弁体8は、周方向に分散した少なくとも3箇所が弁座7に当接し、弁座7との間に隙間が残った状態となる。
【0027】
さらに、揺動アーム14を強いトルクで揺動させると、弁体8が弾性変形して、弁座7との隙間を埋める。つまり、弁体8を支持部材9で弁座7に強く押圧すると、弁体8の弁座7から抗力を受ける部分が支持部材9側且つ内側に押し込まれ、弁座7に当接していない部分が外側に広がって、その応力を緩和する。これにより、弁座7と弁体8との隙間が埋められる。
【0028】
弁座7と弁体8との間に隙間なくなると、弁体8は、弁座7によって内側に押し込まれた分の応力を、外側に広がって緩和することができなくなる。つまり、弁座7と弁体8との間に隙間なくなると、支持部材9が弁体8から受ける反力が大きくなる。これにより、メカニカルシリンダ16が高負荷となるため、前記負荷検出装置で検出する負荷が予め定めた値に達したとき、この状態でモータ17をロックすることで、支持部材9が所定の力で弁体8を弁座7に押圧した状態、つまり、弁体8が弾性変形して弁座7に密着している状態を保持できる。
【0029】
弁体8は、少なくとも外側部分が弁座7と反対側に向かって開いた板状に形成されていれば、外側部分の弾性変形によって弁座7との隙間を埋めることが可能である。弁体8は、好ましくは、本実施形態の欠球形状に代表されるように、弁座7側に凸状、つまり、外側ほど流路方向に対する傾斜が小さくなる形状にすることで、よりスムーズに弁座7との隙間を埋めるような変形が可能となる。しかしながら、弁体8は、円錐状であってもよく、外側ほど開放角度が小さく、流路方向に対して傾斜が小さくなるような形状であってもよい。
【0030】
ただし、弁体8は、図3(a)に示すように、その外縁部が直胴に近い形状になっていると、外縁部が弁体8の変形を阻害するフランジとして作用するため、図3(b)に示すように、外縁部が外側に大きく開いた形状であることが好ましい。一方、弁体8の弾性変形に対する寄与の少ない中央部は、流体を封止できれば、いかなる形状であってもよく、例えば、弁座7側から見て凹状に形成してもよい。
【0031】
また、弁座7と弁体8との間の隙間は、周方向のどの位置に発生するか予想できない。このため、弁体8は、どの方向にも等しい変形能を有することが望まれる。そのために、弁体8の支持部材9に保持される剛性のある保持部10から弁座7に当接する部分までの弾性変形する部分の長さ、および、弁体8の強度を増大させる弁座7に当接する部分から外縁までの長さが、それぞれ、周方向に一定であることが望まし。したがって、保持部10外形形状は、弁体8の中心に位置する円形であることが望ましい。
【0032】
また、保持部10の外径Dが小さいほど、弁体8の弾性変形可能な部分が多くなるので、保持部10は、支持部材9の押圧力により弁体8が破断しない程度に応力を分散できる最小限の大きさに留めることが好ましい。
【0033】
弁体8の厚みは、弁体8の材質や開閉ポート3,4の口径(弁座7の内径)、その他の構造や使用温度などの条件から予想される三方弁1の各構成要素の歪み(変形)によって適宜選択すべきであるが、例えば、開閉ポート3,4の口径が600mmである本実施形態において、厚さ2mmのステンレス鋼製の市販の鏡板を用いることができる。このとき、弁座7と弁体8との隙間をなくすために必要な、支持部材9によって弁体8を弁座7に押圧する力(負荷)は、約2000Nであった。
【0034】
弁体8を弁座7に押圧する際、弁座7に対して弁体8が僅かに擦れる。このため、弁座7のエッジを丸面取りすることによって、弁体8の擦過する際の摩擦抵抗を軽減し、局所摩耗を抑制することが好ましい。
【0035】
本発明の三方弁1は、ゴム製のシール部材を使用しておらず、金属製の部材のみで構成しても、開閉ポート3,4をリークなく閉鎖できる。また、各構成要素が熱膨張等によって変形しても、弁体8の弾性変形によって弁座7と弁体8との隙間をなくすように構成されているので、高温または温度変化の大きい流体の流路を切換えることができる。
【0036】
また、本発明は、三方弁1に関連して説明してきたが、二方弁や四方以上の弁にも適用できることは言うまでもない。さらに、支持部材9の駆動は、三方弁1のように揺動するものに限らず、直動タイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…三方弁
2…ハウジング
3,4…開閉ポート
5…固定ポート
6…フランジ
7…弁座
8…弁体
9…支持部材
10…保持部
11…先端部
12…支持凹部
13…操作軸
14…揺動アーム
15…操作レバー
16…メカニカルシリンダ
17…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の弁座と、
少なくとも外側が前記弁座と反対側に向かって開いた板状に形成された弁体と、
前記弁体の中央部を支持する支持部材とを有し、
前記支持部材は、前記弁体を前記弁座に押圧し、前記弁体を弾性変形させることによって、前記弁体を前記弁座に密着させることを特徴とする弁。
【請求項2】
前記弁体は、少なくとも外側が前記弁座側に凸状であることを特徴とする請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記支持部材は、前記弁体を揺動可能に支持することを特徴とする請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
前記弁体の前記支持部材に支持される部分の外形形状は円形であることを特徴とする請求項1から3のいずれかにに記載の弁。
【請求項5】
前記支持部材は、前記弁体を押圧する負荷が予め定めた値となるまで、前記弁体を前記弁座に押圧することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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