説明

弁当用米飯の冷却方法とそれに用いられる真空冷却機

【課題】 温かい弁当用米飯の冷却を省スペースで効率よく衛生的に行う冷却方法の提供。
【解決手段】 弁当容器3より小さい米飯容器2に、炊飯された温かい米飯1を盛り付ける工程、米飯容器2に盛り付けられた温かい米飯1を真空冷却する工程、真空冷却後の米飯1を米飯容器2のまま弁当容器3に重ねて収容する工程を含む弁当用米飯の冷却方法である。米飯容器2として、通気性のある素材により形成された容器が用いられる。また、米飯容器2には、抗菌性や芳香性を持たせてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンビニエンスストアなどで販売される弁当用米飯の冷却方法とそれに用いられる真空冷却機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンビニエンスストアなどで販売される弁当の米飯は、炊き上がった米飯をほぐして十分に冷ました後、所定量ずつ計量して弁当容器に盛り付けていた。ところが、この場合、一旦冷ましてしまうので、その後の計量や成型に不都合を生じるし、味覚の上からも好ましくない。計量や成型を円滑に行うために、予めオイルを添加して米飯を炊くことが行われているが、味覚を損なうものである。このようなことから、下記特許文献1に開示されるように、炊き上がった米飯を温かいまま成型した後、弁当容器に盛り付けてから送風冷却することが提案されている。
【特許文献1】特許第3442030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明は、温かい米飯を単に空気流で送風冷却するものであった。つまり、前記特許文献1に記載の発明は、温かい米飯を真空冷却するものではなく、真空冷却はむしろ否定されている。
【0004】
ところが、前記特許文献1に記載の発明のように、温かい米飯を単に空気流で送風冷却するのでは、冷却に時間を要するものであった。また、送風冷却の場合、真空冷却に比べ徐々に温度が低下するので、特に冷却後半の比較的低い温度域において、衛生面での課題も残されていた。さらに、成型後の米飯を空気流で冷却するので、成型時の各部位での締まり具合の差などによって偏流を生じ、均一に冷却できないおそれもあった。
【0005】
また、特許文献1に記載の発明では、最初から弁当容器に温かい米飯を盛り付け、その後に送風冷却してから、おかずを盛り付けている。従って、冷却スペースとして、弁当容器全体分が必要となり、搬入装置および搬出装置をも含めた冷却装置全体が大掛かりとなってしまうものであった。
【0006】
そして、このことは、前記特許文献1に記載の発明において、仮に送風冷却ではなく真空冷却を採用した場合には、密閉される冷却空間内に無駄スペースが多くなるということに他ならず、冷却空間を真空状態にし難いことを意味する。従って、この点からも、前記特許文献1に記載の発明において、真空冷却を採用することは馴染まない。
【0007】
さらに、コンビニエンスストアなどで販売される弁当の容器は、通常、プラスチック製の通気性のない素材により形成されている。従って、そのような弁当容器に温かい米飯を直接盛り付けて冷却する前記特許文献1に記載の発明では、弁当容器を通した蒸気抜けや冷却などが図れなかった。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、温かい弁当用米飯の冷却を省スペースで効率よく衛生的に行うための冷却方法とそれに用いられる真空冷却機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、弁当容器より小さい米飯容器に、炊飯された温かい米飯を盛り付ける工程、前記米飯容器に盛り付けられた温かい米飯を真空冷却する工程、真空冷却後の前記米飯容器を前記弁当容器に収容する工程を含むことを特徴とする弁当用米飯の冷却方法である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、弁当用米飯を温かいまま盛り付け後に真空冷却するので、炊飯時のオイル添加を省略でき風味を害さない。しかも、真空冷却により短時間に衛生的に冷却することができる。また、温かい米飯を直接弁当容器に盛り付けないで、米飯だけを入れる小容器に盛り付けて冷却し、その後に弁当容器へ収容する構成である。そのため、真空冷却のための冷却空間に無駄スペースが生じず、効率的に真空冷却を図ることができる。さらに、真空冷却機やそれへの搬入および搬出装置を小型に構成することもできる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成要件に加えて、前記米飯容器として、通気性のある素材により形成された容器を用いることを特徴とする弁当用米飯の冷却方法である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、通気性のある素材により形成した米飯容器を使用することで、米飯容器を介した蒸気の抜けや真空引きが可能となる。従って、米飯容器に盛り付けられた米飯の全体から真空冷却を図ることができる。また、通気性のある容器を用いることで、吸湿性が期待でき、お櫃に入れたときと同様に高品質のままでご飯の状態保持が可能である。さらに、通気性のある容器は米飯容器にだけ用いられるので、弁当容器としてはこれまでのものを利用できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の構成要件に加えて、前記米飯容器として、抗菌性または芳香性のいずれか一方または双方が付与された容器を用いることを特徴とする弁当用米飯の冷却方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、抗菌性のある米飯容器を用いることで、より衛生的に弁当を製造できる。また、芳香性のある米飯容器を用いることで、香り付けをすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の弁当用米飯の冷却方法における真空冷却工程に用いられる真空冷却機であって、温かい米飯が盛り付けられた前記米飯容器が載せられるプレートを有する冷却空間内の減圧手段と、減圧された前記冷却空間内の復圧手段とを備えることを特徴とする真空冷却機である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、前記冷却空間内を前記減圧手段にて減圧して、前記冷却空間内に収容された米飯容器内の米飯を真空冷却することができる。この真空冷却機を用いることで、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の弁当用米飯の冷却方法を簡易に達成することができる。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成要件に加えて、前記プレートの上面に、そこに載せられる前記米飯容器の下面を浮かせる凸部若しくは凹部、または貫通穴が形成されたことを特徴とする真空冷却機である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、凸部若しくは凹部または貫通穴の作用により、米飯容器に盛り付けられた米飯の表裏全体から均一に真空冷却できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、温かい弁当用米飯の冷却を省スペースで効率よく衛生的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の弁当用米飯の冷却方法は、主としてコンビニエンスストアなどで販売される弁当用米飯の製造に適用される。この弁当用米飯は、通常は白御飯であるが、所望により混ぜ御飯や炊込み御飯などであってもよい。弁当用米飯は、炊飯工程、ほぐし工程、米飯容器への盛付け工程、真空冷却工程、弁当容器への収容工程が順次に行われる。
【0021】
前記弁当容器は、従来公知の各種の弁当容器が利用できる。一般的な弁当容器は、薄いプラスチックなどにより形成された蓋付き容器である。前記弁当容器には、御飯やおかずなどを盛り付ける適宜の仕切りがなされていてもよい。このような弁当容器には、従来はその米飯盛付け部に直接に米飯が盛り付けられていたが、本実施形態では米飯は米飯容器に盛り付けられ、この米飯容器が前記弁当容器内に収容される。従って、前記米飯容器は、前記弁当容器よりも小容器である。
【0022】
前記米飯容器は、好ましくは通気性のある素材により形成される。その具体的材質は、特に問わないが、たとえば不織布や「ゴアテックス」(登録商標)を用いることができる。また、米飯容器にわさび抽出物質などの抗菌性のある物質や、香りを放出する物質を含有させておき、抗菌性や芳香性を持たせてもよい。米飯容器の形状は、特に問わないが、通常は上方にのみ開口した浅い箱状、または皿状に形成される。
【0023】
炊飯工程により炊き上げられた米飯は、ほぐし工程においてほぐされる。そして、そのほぐされた温かい米飯は、盛付け工程において所定量ずつ計量され、米飯容器に盛り付けられる。その際、米飯容器に単によそうだけでもよいし、所望により花形や山形などの適宜の形状に成形を行ってもよい。温かい状態で米飯の計量区分けや成形を行うことで、炊飯時にオイルなどを添加しておく必要はなく、食味食感の向上と添加物の廃止を図ることができる。
【0024】
米飯容器に盛付けられた米飯は、真空冷却工程において真空冷却機で真空冷却される。弁当容器には、米飯盛付け部だけでなく、おかず盛付け部もある。そのため、直接に弁当容器に米飯を盛り付けて真空冷却する場合には、真空冷却用のチャンバー(冷却空間)が必要以上に大きくなり、排気性能にも悪影響を及ぼすが、本実施形態のように米飯容器を用いることで、そのような不都合が回避される。また、米飯容器を通気性のある材質で構成することで、米飯を米飯容器の側壁に密着させても蒸気の抜け性は確保される。
【0025】
真空冷却後の米飯は、米飯容器のまま弁当容器の所望箇所へ収容される。米飯容器を通気性のある材質で構成することで、吸湿性が期待でき、お櫃に入れた場合と同様に、高品質のままで米飯の状態保持が可能である。このように、本実施形態では、熱飯を直接弁当容器に盛り付けないで、米飯だけを入れる小容器(米飯容器)に盛り付けて冷却し、それを小容器のまま弁当容器に重ねて入れて弁当が製造される。この弁当容器には、米飯容器の収容前または収容後、おかずが盛付けられ、蓋がされてコンビニエンスストアなどへ出荷される。
【0026】
次に、上記真空冷却工程に好適に用いられる真空冷却機の一実施形態について説明する。本実施形態の真空冷却機は、温かい米飯が盛り付けられた米飯容器が収容される空間内の減圧手段と、減圧された前記空間内を大気圧まで復圧する復圧手段とを備える。前記空間は、そこに収容される米飯を前記減圧手段にて真空冷却するための領域として機能することから、「冷却空間」と呼ぶことにする。
【0027】
この冷却空間を開閉可能に構成するために、板状のプレートとこのプレートに対し開閉可能な蓋体とを備え、プレートに蓋体を気密状態に被せる。前記プレートは、円形または略矩形の板状で水平に配置される。前記蓋体は、下方に開口して形成されており、前記プレートのほぼ全体を覆う偏平なドーム形とされている。この蓋体は、球面状に形成すれば耐圧性が高まり好ましく、また米飯容器を収容した冷却空間内に余分な空間(空気)が残らない形状が、冷却空間内を減圧する上で好ましい。前記プレートと前記蓋体とは、近接離隔方向に相対的な移動が可能に構成され、前記プレートへの前記蓋体の着脱が可能とされている。前記プレートには、温かい米飯が盛り付けられた米飯容器が載せ置かれる。
【0028】
冷却空間は、上述のように、プレートと蓋体とで構成する代わりに、次のように構成してもよい。すなわち、ボックス状の処理槽を備え、その処理槽の扉を開閉することで、冷却空間を開閉可能に構成してもよい。この場合、処理槽内に設けられる棚板状のプレートに、温かい米飯が盛り付けられた米飯容器が載せ置かれる。この棚板状のプレートは、処理槽自体の棚板であってもよいし、処理槽に対し出し入れされるワゴンの棚板であってもよい。この意味において、このプレートは、米飯容器載置部材と称することができる。
【0029】
いずれの場合も、前記冷却空間には、前記減圧手段の減圧ライン、または前記復圧手段の復圧ラインが接続される。前記減圧手段は、前記冷却空間内を減圧する手段であり、真空ポンプまたはエゼクタ(ejector)などからなる。これらは、複数種類のものを組み合わせて前記減圧手段として用いることもできる。この減圧手段の減圧ラインは、第一弁を介して前記冷却空間に接続されており、前記第一弁より基端側(真空ポンプ等の側)は常時、所定の減圧下に維持される。従って、前記第一弁を開閉操作することで、前記冷却空間の減圧の有無が切り替えられる。
【0030】
一方、前記復圧手段は、減圧された前記冷却空間内へ外気を導入して、真空状態を解除し復圧する手段である。この復圧手段により、前記冷却空間は、大気圧下に解放可能とされる。その際、衛生面を考慮して、フィルターを介して外気を導入するのがよい。前記復圧手段の復圧ラインは、第二弁を介して前記冷却空間に接続されており、この第二弁を開閉操作することで、前記冷却空間と外部との連通の有無が切り替えられる。
【0031】
前記プレートの上面は、平板状でもよいが、そこに載せられる米飯容器を浮かせる凸部若しくは凹部または貫通穴を形成するのがよい。プレートに蓋体を被せて冷却空間を構成する場合には、凸部または凹部を形成すればよいし、処理槽内に棚板状のプレートを配置する場合には、凸部や凹部の他、貫通穴であってもよい。これにより、米飯容器が通気性のある素材により形成されていることもあり、米飯容器の裏面からの蒸気抜きや減圧が容易かつ確実となり、効率的でムラのない真空冷却が可能となる。
【0032】
ところで、前記冷却空間に収容される米飯容器内の米飯の温度を検知する温度センサを備えておけば、その温度センサの出力に基づき前記減圧手段の作動時間を調整することで、最適な目標温度まで真空冷却を確実に行うことができる。この温度センサは、米飯容器を前記プレートへ載せる直前に計測できる位置へ設けておけばよい。また、前記冷却空間内に前記温度センサを設けてもよく、その場合はその温度センサからの出力に基づきつつ真空冷却処理が可能である。さらに、真空冷却した後の米飯の温度を計測して、前記減圧手段の作動時間を調整してもよい。
【0033】
また、前記冷却空間内の圧力を計測する圧力センサを設けてもよく、その場合もその圧力センサの出力を利用して真空冷却処理が可能なだけでなく、その圧力センサからの出力を利用して、前記復圧手段により前記冷却空間内が大気圧まで完全に戻されたか否かの確認をすることができる。
【0034】
さらに、前記減圧手段の作動時間の調整は、上述したような米飯容器内の米飯の温度による場合だけでなく、米飯容器の数または米飯容器内の米飯量に基づいて行ってもよい。たとえば、冷却空間内に収容する米飯容器の個数や米飯量に応じて、前記減圧手段の作動時間を調整するのである。その際、米飯容器の個数や米飯量だけでなく、前記温度センサにより検出した米飯の温度をも考慮して、前記減圧手段の作動時間を調整してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
本実施例は、コンビニエンスストアなどで販売するための弁当の製造ラインに適用される。この弁当製造ラインでは、温かい米飯1を計量しつつ米飯容器2に盛り付け後に真空冷却し、真空冷却後の米飯1を米飯容器2のまま弁当容器3の所定箇所に収容し、おかず4を盛り付けて弁当が製造される(図4)。このような弁当の製造は、米飯1を炊く炊飯工程、炊き上がった米飯1をほぐしあら熱を取るほぐし工程、ほぐされた米飯1から所定量を計量取得し米飯容器2によそい入れる盛付け工程、米飯容器2に収容された温かい米飯1の冷却を図る真空冷却工程、この真空冷却後の米飯1を米飯容器2のまま弁当容器3の所定箇所に入れる収容工程を含んでなされる。
【0037】
本実施例の米飯容器2は、上方にのみ開口した浅い略矩形の箱状に形成されており、不織布または「ゴアテックス」(登録商標)などの通気性のある素材により形成される。なお、米飯容器2にわさび抽出物質などの抗菌性のある物質や、香りを放出する物質を含有させておき、抗菌性や芳香性を持たせてもよい。
【0038】
次に、前記真空冷却工程において使用される真空冷却機の一実施例について説明する。図1は、本発明の真空冷却機の一実施例を示す概略構成図であり、一部を断面にして示している。また、図2は、その真空冷却機への米飯容器2の搬入および搬出状態を示す概略平面図である。真空冷却機への米飯容器2の搬入は、第一コンベアベルト5を介して行われ、真空冷却機からの米飯容器2の搬出は、第二コンベアベルト6を介して行われる。
【0039】
前記各コンベアベルト5,6との間で米飯容器2の受け渡しを可能に、各コンベアベルト5,6と隣接してプレート7が設けられる。本実施例のプレート7は、図2に示すように平面視略矩形状の板材であり、その上面には多数の凸部8,8…が上方へ突出して形成されている。
【0040】
各凸部8は、同一の形状および大きさに形成されている。本実施例の各凸部8は、プレート7の上面から上方へ突出した略半球状に形成されている。本実施例では、プレート7に配置される複数の各米飯容器2に合わせた位置に凸部8,8…を形成しているが、プレート7上に満遍なく多数の凸部8,8…を配置してもよい。なお、凸部8の形状や配置は、適宜変更可能である。また、凸部8に代えて、プレート7の上面に適宜の凹部を形成してもよい。たとえば、プレート7の上面には、プレート7上に載せられる各米飯容器2の下部に、その米飯容器2よりも外方へ延出して凹溝を形成してもよい。また、各米飯容器2自体の底面に、前記プレート7の凸部8や凹溝に代わる凸部,凹溝(いずれも図示省略)を形成してもよい。
【0041】
このようなプレート7は、水平に保持されると共に、その下部に配置された上下動装置9により、上下動可能とされる。この上下動装置9は、カム、ソレノイド、またはエアシリンダなどを利用して構成される。この上下動装置9により、プレート7は、下方停止位置7Dと上方停止位置7Uのいずれかの位置で停止可能である。プレート7が下方停止位置7Dにある場合、プレート7の上面は、前記各コンベアベルト5,6の米飯容器搬送面と同一平面に配置される。ところで、本実施例では、第一コンベアベルト5からプレート7に載せられる米飯容器2内の米飯1の温度を計測する温度センサ10が備えられている。
【0042】
プレート7の真上には、蓋体11が配置されている。本実施例では、蓋体11の位置は常に固定され、この蓋体11に対しプレート7が上下動することで、プレート7は蓋体11により開閉される。つまり、プレート7が下方停止位置7Dにある場合には、プレート7に対し蓋体11が上方へ相対的に離間した状態となり、プレート7に対する米飯容器2の搬入および搬出が可能とされる。一方、プレート7が上方停止位置7Uにある場合には、プレート7に対し蓋体11が相対的に下降した状態となり、プレート7に蓋体11が被せられた状態となる。
【0043】
本実施例の蓋体11は、平面視長方形状のドーム形に形成されており、上部は偏平に形成され、下方に開口して形成されている。蓋体11の下部には、短筒状のストッパー12が周方向に沿って設けられ、このストッパー12の外周部にはパッキン13が装着される。このパッキン13は、上端部が蓋体11に対し位置決めされて設けられ、その状態で下端部がストッパー12よりも下方へ延出する大きさである。さらに、パッキン13の下端部は、蓋体11の径方向外側へ湾曲する形状とされている。
【0044】
このような構成であるから、プレート7が上方停止位置7Uまで上昇すると、プレート7の外周部上面にストッパー12の下端部が当接されて位置決めされる。このようにしてプレート7上に蓋体11が被せられた状態では、ストッパー12の外周部において、プレート7の外周部上面にパッキン13の下端部が密着して、プレート7に蓋体11が気密状態に設けられる。この状態において、パッキン13の下端部外周縁は、プレート7の外周縁にほぼ対応して配置される。これにより、プレート7と蓋体11との間に、米飯容器2内の米飯1の冷却空間14が密閉空間として形成される。ストッパー12の下端部をプレート7の上面に当接して位置決めすることで、パッキン13が適切にプレート7に密着するだけでなく、パッキン13の損傷を防止できる。
【0045】
蓋体11の上部中央は、減圧手段15および復圧手段16に接続される。具体的には、蓋体11の上部中央に設けられた管路17を介して、減圧手段15と復圧手段16が蓋体11に接続される。本実施例では、減圧手段15の減圧ライン18と復圧手段16の復圧ライン19は、蓋体11側の末端部において共通の管路17とされる。
【0046】
減圧手段15は、真空ユニット20を備え、この真空ユニット20は減圧ライン18を介して蓋体11と接続される。真空ユニット20は、典型的には、真空ポンプを備えて構成される。減圧ライン18の中途には、真空ユニット20と冷却空間14との連通の有無を切り替える第一弁21が設けられている。減圧ライン18は、前記第一弁21より真空ユニット20側が、真空ユニット20にて常に所定の減圧下に維持されている。従って、プレート7に蓋体を被せた状態で第一弁21を開けば、プレート7と蓋体11とで形成された冷却空間14内を所定圧力下に減圧することができる。
【0047】
一方、前記復圧手段16は、減圧された前記冷却空間14内へ外気を導入して、真空状態を解除し復圧する手段である。具体的には、外気は、フィルター22を介して取り込まれ、復圧ライン19を介して冷却空間14内へ供給可能とされている。復圧ライン19の中途には、外気と冷却空間14との連通の有無を切り替える第二弁23が設けられている。従って、第二弁23を閉じて第一弁21を開いて、冷却空間14内を減圧手段15にて減圧した後、第一弁21を閉じて第二弁23を開ければ、冷却空間14内の真空状態を解除して大気圧下に戻すことができる。
【0048】
また、本実施例の復圧ライン19には、前記第二弁23より末端側(冷却空間14側)に、圧力センサ(不図示)が設けられている。従って、この圧力センサにより、冷却空間14内の圧力を検出することができる。
【0049】
さらに、本実施例の真空冷却機には、減圧手段15や復圧手段16などを制御する制御器(制御手段)24が備えられている。本実施例では、上下動装置9、真空ユニット20、温度センサ10、圧力センサ(不図示)、第一弁21、第二弁23は、制御器24に接続されており、その制御器24にて各種制御が可能とされる。具体的には、制御器24は、温度センサ10からの検出信号に基づいて、真空ユニット20による冷却空間14の減圧時間を調整(つまり第一弁21を開く時間を調整)したり、圧力センサ(不図示)からの検出信号に基づいて、第二弁23による冷却空間14の復圧完了を確認したりする。このように、制御器24は、所定のプログラムに従い、第一弁21や第二弁23の開閉を制御したり、上下動装置9や真空ユニット20を制御したりする。
【0050】
次に、本実施例の真空冷却機の使用について説明する。まず、第一弁21および第二弁23が閉められ、且つプレート7が下方停止位置7Dにあり、蓋体11が開かれた状態とする。この状態において、プレート7上への米飯容器2の搬入工程が行われる。本実施例では、炊飯後、ほぐされた温かい米飯1が所定量だけ計量されて米飯容器2に盛り付けられ、その米飯1盛り付け後の米飯容器2は、所定間隔で第一コンベアベルト5上を搬送され、ロボットアーム25によりプレート7上に移される。プレート7上には、上述したように多数の凸部8,8…が形成されており、米飯容器2は、その凸部8にてプレート7上面から浮いた状態で支持される。プレート7には、等間隔に所定個数の米飯容器2が載せられる。
【0051】
このような搬入工程後、米飯容器2を載せられたプレート7は、蓋体11にて閉じられる。すなわち、上下動装置9によりプレート7を上方停止位置7Uまで上昇させる。その後の真空冷却工程では、第一弁21を所定時間だけ開くことで、冷却空間14内を減圧して、米飯容器2内の米飯1の真空冷却が図られる。前記所定時間は、冷却空間14内へ搬入される米飯1の温度により調整してもよい。この際の米飯1の温度は、上述した温度センサ10により検出される。また、前記所定時間は、プレート7に載せられる米飯容器2の数量や、米飯容器2に入れられる米飯1の量に応じて調整してもよい。
【0052】
図3は、米飯容器2内の米飯1の真空冷却時の状態を示す概略断面図である。この図に示すように、米飯容器2は、プレート7上の多数の凸部8,8…に支持されることで、プレート7の上面から浮いた状態に支持される。しかも、米飯容器2は、通気性のある素材により形成されている。従って、真空冷却中には、米飯容器2内の米飯1の全周から真空引きがなされ、蒸気が抜けることになる。従って、米飯容器2内の米飯1を均一に真空冷却することができる。
【0053】
真空冷却工程後には、第一弁21を閉じる一方、第二弁23を開いて、冷却空間14内を大気圧まで復圧する復圧工程が行われる。この復圧工程により冷却空間14内が大気圧まで戻されたか否かは、前記圧力センサ(不図示)により把握される。復圧工程終了後には、米飯容器2が載せられたプレート7から蓋体11が開かれる。すなわち、上下動装置9によりプレート7を下方停止位置7Dまで下降させた後、プレート7上からの米飯容器2の搬出工程が行われる。
【0054】
搬出工程では、図2に示すように、プレート7上の米飯容器2を第二コンベアベルト6上に、所定間隔で搬出する。プレート7から第二コンベアベルト6への米飯容器2の移動は、ロボットアーム25により行われる。このロボットアーム25は、本実施例では前記搬入工程用のものを共通的に利用するが、搬入専用と搬出専用の各ロボットアームを設置してもよい。いずれにしても、所定速度で作動する第二コンベアベルト6には、所定間隔で米飯容器2が載せられ搬出される。
【0055】
このようにして米飯容器2にて真空冷却された米飯1は、図4に示すように、米飯容器2のまま弁当容器3内の所定箇所へ重ねて入れられる。さらに、弁当容器3には、適宜のおかず4が収容され、蓋26がなされる。弁当容器3へのおかず4の盛付けは、弁当容器3に米飯容器2を入れた後に行ってもよいし、弁当容器3に米飯容器2を入れる前に行ってもよい。
【0056】
本実施例の構成によれば、熱飯のまま計量して盛りつけるので、炊飯時のオイルなどの添加が不要である。また、真空冷却することで、短時間に衛生的に熱飯を冷却することができる。このようにして、添加物をなくし、おいしい米飯を衛生的に効率よく製造することができる。
【0057】
また、弁当容器3とは別にそれより小さな米飯容器2を用いることで、真空チャンバーを小型にでき、冷却スピードを上げることができる。また、弁当の製造時におけるハンドリング性を向上することもできる。さらに、米飯容器2の通気性とプレート7の凸部8の作用により、冷却性能(蒸気の抜け性)を確保することもできる。しかも、通気性のある米飯容器2は、お櫃と同様の機能を期待できる上、抗菌性や芳香性を持たせた場合には、その含浸成分の効果が副次的に期待できる。
【0058】
なお、本発明の弁当用米飯の冷却方法とそれに用いられる真空冷却機は、上記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
【0059】
たとえば、上記実施例の真空冷却機において、蓋体11内には、減圧ライン18や復圧ライン19への接続用開口部(17)と離間した下方位置に、邪魔板としてのバッフル板(不図示)を設けると共に、このバッフル板の外周部と蓋体11の内面との間に、フィルター(不図示)を取り替え可能に設けてもよい。これにより、冷却空間14の減圧時には、冷却空間14内の空気はフィルター(不図示)を介して真空ユニット20側へ吸引されることになる。従って、冷却空間14内の減圧時に、米飯容器2内の米粒が吸引されるのが防止される。また逆に、復圧時には、冷却空間14内へ空気が一気に流入するが、この空気流が米飯容器2内の米飯1に直接に当たるのがバッフル板(不図示)によって防止される。
【0060】
また、上記実施例では、蓋体11の位置を固定し、この蓋体11に対しプレート7を上下動させたが、これとは逆に、プレート7の位置を固定し、このプレート7に対し蓋体11を上下動させてもよい。その場合、減圧ライン18や復圧ライン19は、プレート7の側へ接続するのがよい。
【0061】
また、上記実施例では、プレート7を一枚だけ備えた例を説明したが、複数枚のプレート7を備えた真空冷却機としてもよい。その場合、一のプレート(第一プレート)において真空冷却工程が行われている最中に、他のプレート(第二プレート)では、次の真空冷却用の米飯容器2の搬入工程が行われており、更に別のプレート(第三プレート)では、真空冷却後の米飯容器2の搬出工程が行われるように構成するのがよい。この場合、これら三つのプレートは、同一のテーブルに載せられている。そして、各プレートにおける工程終了後には、そのテーブルを回転させて、蓋体11のある位置に第二プレートを配置することで、次の真空冷却が可能とされる。その際、第一プレートでは、前記真空冷却後の米飯容器2の搬出がなされ、また第三プレートでは、新たに米飯容器2が搬入される。このように、各プレートにおける実行工程をずらしつつ、各プレートにおいて前記搬入、真空冷却、搬出の各工程が順次に行われるようにしてもよい。
【0062】
さらに、真空冷却機の構成は、上記実施例のように、プレート7に対し蓋体11を被せて冷却空間14を形成する構成に限らず、開閉可能な冷却チャンバーを有するその他の構成の真空冷却機でもよい。図5は、本発明の真空冷却機の他の実施例を示す概略断面図であり、一部を断面にして示している。本実施例の真空冷却機も基本的には、前記実施例と同様の構成であるから、以下では両者の異なる点を中心に説明する。また、両実施例で同等の箇所には、同一の符号を付して説明する。
【0063】
前記実施例では、プレート7にドーム状の蓋体11を被せて冷却空間14を構成したが、本実施例では、ボックス状の処理槽27にて冷却空間14を構成している。この処理槽27には、扉(不図示)が開閉可能に備えられており、この扉を閉じることで、処理槽27内が密閉空間となる。処理槽27には、前記実施例と同様に、減圧手段15や復圧手段16が接続されており、密閉された処理槽27内の減圧や復圧が可能とされている。また、処理槽27内には、上下に複数段、棚板状のプレート7,7…が備えられている。
【0064】
この棚板状のプレート7は、棚板として機能するものである。この棚板状のプレート7には、多数の貫通穴29,29…を形成しておくのが好ましい。具体的には、棚板状のプレート7を多孔板または網状とすればよい。棚板状のプレート7の上には、前記実施例と同様に、温かい米飯1が盛り付けられた米飯容器2が載せられて、処理槽27内で真空冷却される。棚板状のプレート7に多数の貫通穴29,29…を形成しておくことで、米飯容器2の下面からも真空冷却が可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の真空冷却機の一実施例を示す概略構成図であり、一部を断面にして示している。
【図2】図1の真空冷却機への米飯容器の搬入および搬出状態を示す概略平面図である。
【図3】米飯容器内の米飯の真空冷却時の状態を示す概略断面図である。
【図4】米飯容器を弁当容器に収容した状態の一例を示す概略縦断面図である。
【図5】本発明の真空冷却機の他の実施例を示す概略断面図であり、一部を断面にして示している。
【符号の説明】
【0066】
1 米飯
2 米飯容器
3 弁当容器
4 おかず
7 プレート
8 凸部
9 上下動装置
11 蓋体
14 冷却空間
15 減圧手段
16 復圧手段
18 減圧ライン
19 復圧ライン
20 真空ユニット
21 第一弁
23 第二弁
24 制御器
27 処理槽
29 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁当容器(3)より小さい米飯容器(2)に、炊飯された温かい米飯(1)を盛り付ける工程、
前記米飯容器(2)に盛り付けられた温かい米飯(1)を真空冷却する工程、
真空冷却後の前記米飯容器(2)を前記弁当容器(3)に収容する工程
を含むことを特徴とする弁当用米飯の冷却方法。
【請求項2】
前記米飯容器(2)として、通気性のある素材により形成された容器を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の弁当用米飯の冷却方法。
【請求項3】
前記米飯容器(2)として、抗菌性または芳香性のいずれか一方または双方が付与された容器を用いる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弁当用米飯の冷却方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の弁当用米飯(1)の冷却方法における真空冷却工程に用いられる真空冷却機であって、
温かい米飯(1)が盛り付けられた前記米飯容器(2)が載せられるプレート(7)を有する冷却空間(14)内の減圧手段(15)と、
減圧された前記冷却空間(14)内の復圧手段(16)と
を備えることを特徴とする真空冷却機。
【請求項5】
前記プレート(7)の上面に、そこに載せられる前記米飯容器(2)の下面を浮かせる凸部(8)若しくは凹部、または貫通穴(29)が形成された
ことを特徴とする請求項4に記載の真空冷却機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−129823(P2006−129823A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324803(P2004−324803)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】