説明

弁装置及びサーボ弁

【課題】ポートを有するスリーブ内においてスプールを長手方向に移動可能とさせることによってポートの開口率を変化させる弁装置において、弁装置自体を取り替えることなく弁装置の特性を変化可能とする。
【解決手段】スプール4のポートの開口率を規定する規定部材4aから位置制御手段の制御基準とされる基準位置4cまでの距離を調節可能な距離調節手段5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートを有するスリーブ内において長手方向に移動可能とされると共に移動位置に応じて上記ポートの開口率を規定するスプールと、該スプールの位置を制御する位置制御手段とを備える弁装置及びサーボ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、流体の流量を調節する必要がある場合には、いわゆるスプール弁(弁装置)が用いられる。
このスプール弁は、流体の流入出口であるポートを有するスリーブと、該スリーブ内において長手方向に移動可能とされるスプールとを備えている。そして、スプールの移動位置によってポートの開口率が変化し、開口率に応じた流量を流体がポートから吐出されるように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上述のようなスプール弁の一例として、スプール弁の移動位置を制御する位置制御手段に供給する電流量を調節することによって、流体の流量を調節するサーボ弁が開示されている。
【特許文献1】特開2001−12409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スプールは、スリーブに形成されたポートの開口面積よりも広い面を有する部位(規定部材)を有しており、長手方向への移動によって当該規定部材によるポートの被覆率を変化させることによって上記開口率を変化させている。
そして、移動の際に基準とされるスプールの基準位置から上記規定部材までの距離が一定であるため、基準位置の位置を制御することによってポートの開口率を正確に規定することが可能となっている。
【0005】
一方で、ポートの開口開始タイミングあるいは閉鎖開始タイミングは、上記基準位置を基準位置とした場合に、規定部材の端部がポートの端部に対して何処に存在するかによって、上記タイミングが異なる。
具体的には、ポートが完全に閉鎖された状態で規定部材の端部がポートの端部よりも大きく離間されている場合には、スプールを移動させてから規定部材の端部がポート端部に移動するまでに時間を要するため、ポートの開口開始タイミングが遅くなる。
また、ポートが完全に閉鎖された状態で規定部材の端部がポートの端部に近い場合には、スプールを移動させて直ぐに規定部材の端部がポート端部に到達するため、ポートの開口開始タイミングが早くなる。
さらに、ポートの閉鎖開始タイミングは、ポートが完全に開口された状態における規定部材の端部とポートの端部との位置関係によって決まる。
【0006】
このようなポートの開口開始タイミングあるいは閉鎖開始タイミングの差は、スプール弁の特性であり、基準位置とポートとの位置関係が定まれば、規定部材の端部から上記基準位置までの距離によって決定されることなる。
したがって、このようなスプール弁の特性は、スプール弁を製造した段階で決定され、調節することができない。
【0007】
しかしながら、実際にスプール弁が組み込まれる装置においては、スプール弁の特性を調節することが好ましい場合がある。このような場合には、従来の装置においては、特性の異なるスプール弁に取り替えざるを得ない。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ポートを有するスリーブ内においてスプールを長手方向に移動可能とさせることによってポートの開口率を変化させる弁装置において、弁装置自体を取り替えることなく弁装置の特性を変化可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、ポートを有するスリーブ内において長手方向に移動可能とされると共に移動位置に応じて上記ポートの開口率を規定するスプールと、該スプールの位置を制御する位置制御手段とを備える弁装置であって、上記スプールの上記ポートの開口率を規定する規定部材から上記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの上記長手方向の距離を調節可能な距離調節手段を備えるという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記スリーブが複数のポートを備え、上記スプールが2つ以上の上記ポートに対して上記規定部材を備え、上記距離調節手段が、各規定部材の上記基準位置までの距離を独立して調節可能であるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記距離調節手段は、上記規定部材と上記基準位置との間に配置されるアクチュエータと、該アクチュエータを制御する制御手段とを備えるという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記アクチュエータが、電歪素子であるという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、第1流入ポート、第2流入ポート、第1流出ポート、第2流出ポート、第1流出入ポート及び第2流出入ポートを有するスリーブと、上記第1流入ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第1規定部材、上記第1流出ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第2規定部材、上記第2流出ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第3規定部材、及び上記第2流入ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第4規定部材を有すると共に上記スリーブ内において長手方向に移動されるスプールと、該スプールの位置を制御する位置制御手段と、を備えるサーボ弁であって、上記スプールの上記第1規定部材から上記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、上記スプールの上記第2規定部材から上記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、上記スプールの上記第3規定部材から上記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、上記スプールの上記第4規定部材から上記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、を独立して調節可能な距離調節手段を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、距離調節手段によって、スプールの規定部材(開口率を規定する部位)から制御基準となる基準位置までの距離を調節することが可能とされている。つまり、規定部材から基準位置までの距離が可変とされている。
このため、基準位置を移動させた場合におけるポートの開口開始タイミングあるいは閉鎖開始タイミングを変化させることができ、弁装置の特性を変化させることができる。
したがって、本発明によれば、ポートを有するスリーブ内においてスプールを長手方向に移動可能とさせることによってポートの開口率を変化させる弁装置において、弁装置自体を取り替えることなく弁装置の特性を変化させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る弁装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明においては、本発明の弁装置の一例として、ノズルフラッパ型のサーボ弁を挙げて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のサーボ弁1の概略構成を模式的に示す断面図である。また、図2は、サーボ弁1が備えるスリーブ3とスプール4とを拡大した断面図である。
図1に示すように、本実施形態のサーボ弁1は、筐体2と、スリーブ3と、スプール4と、伸縮装置5(距離調節手段)と、ノズル6と、ノズルフラッパ7と、トルクモータ8(位置制御手段)とを備えている。
【0018】
筐体2は、サーボ弁1の外形を形作るものであり、内部に複数の流路を備えると共に、スリーブ3、スプール4、ノズル6、ノズルフラッパ7等を収容するものである。
なお、筐体2の内部に形成される流路については後述する。
【0019】
スリーブ3は、両端が開放端とされた薄肉の円筒形状を有しており、内部にスプール4を摺動可能に収容するものであり、筐体2の壁面によって筐体2の内部に水平に支持されている。
このスリーブ3は、内部と外部とを連通するポートを複数備えている。より詳細には、スリーブ3は、左右対称に3つずつのポートを有しており、各々の側に対して、流体をスリーブ3内に導入するための流入ポート3aと、流体をスリーブ3の外部に導出するための流出ポート3bと、スリーブ3内とサーボ弁1による流体の供給先との間にて流体の導出入を行うための流出入ポート3cとを備えている。
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、図2に示すように、スリーブ3の一方側(図1における左側)を左側とし、スリーブ3の他方側(図1における右側)を右側として説明する。そして、左側に位置する流入ポート3aを第1流入ポート3a1、右側に位置する流入ポート3aを第2流入ポート3a2、左側に位置する流出ポート3bを第1流出ポート3b1、右側に位置する流出ポート3bを第2流出ポート3b2、右側に位置する流出入ポート3cを第1流出入ポート3c1、左側に位置する流出入ポート3cを第2流出入ポート3c2として説明する場合がある。
【0020】
スプール4は、スリーブ3内に収容され、長手方向に摺動可能とされた軸部材である。このスプール4は、スプール4の移動方向における位置によってスリーブ3の流入ポート3aと流出ポート3bの開口率を規定する規定部材4aを備えている。つまり、本実施形態においてスプール4は、4つの規定部材4aを備えている。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、図2に示すように、第1流入ポート3a1の開口率を規定するための規定部材4aを第1規定部材4a1、第1流出ポート3b1の開口率を規定するための規定部材4aを第2規定部材4a2、第2流出ポート3b2の開口率を規定するための規定部材4aを第3規定部材4a3、第2流入ポート3a2の開口率を規定するための規定部材4aを第4規定部材4a4として説明する場合がある。
規定部材4aは、スリーブ3の内径と略同一の直径を有する円柱部材であり、流入ポート3a及び流出ポート3bの開口面積よりも広い幅を有している。
【0021】
また、スプール4は、上述の規定部材4aが、該規定部材4aよりも直径の小さい円柱部材である連結部4bによって接続されることによって、一方向に延在されている。
そして、スプール4は、各規定部材4aによって流入ポート3a及び流出ポート3b覆って閉鎖される位置から、流入ポート3a及び流出ポート3bが規定部材4aによって覆われずに開放される位置の範囲で移動可能とされている。
【0022】
伸縮装置5は、スプール4の長手方向の長さ(距離)を調節するためのものであり、電歪素子5a(アクチュエータ)と、制御部5b(制御手段)とを備えている。
電歪素子5aは、各連結部4bに組み込まれて規定部材4a同士の間ごとに配置されており、制御部5bの制御の下に伸縮するものである。
また、制御部5bは、スプール4の内部を挿通する配線(不図示)を介して各電歪素子5aに電気的に接続されている。
そして、伸縮装置5によって、電歪素子5aを制御部5bの制御の下に伸び縮みさせることによって、スプール4の長さを調節する。
【0023】
なお、本実施形態においては、第1規定部材4a1と第2規定部材4a2との間に配置される電歪素子5aである第1電歪素子5a1によって、第1規定部材4a1から第2規定部材4a2までの距離が調節される。
また、第2規定部材4a2と第3規定部材4a3との間に配置される電歪素子5aである第2電歪素子5a2によって、第2規定部材4a2から第3規定部材4a3までの距離が調節される。
また、第3規定部材4a3と第4規定部材4a4との間に配置される電歪素子5aである第3電歪素子5a3によって、第3規定部材4a3から第4規定部材4a4までの距離が調節される。
つまり、電歪素子5aが、各規定部材4aの間に配置されており、各規定部材4aの位置を独立して調節させることができる。
【0024】
ノズル6は、外部から供給された流体をノズルフラッパ7に向けて噴射するものであり、スリーブ3の上方にてノズルフラッパ7を挟んで左右対称に2つ配置されている。
なお、以下の説明において、スリーブ3の左側の上方に位置するノズル6を第1ノズル6a、スリーブ3の右側の上方に位置するノズル6を第2ノズル6bとして説明する場合がある。
【0025】
ノズルフラッパ7は、トルクモータ8に接続された板状部材であり、第1ノズル6aと第2ノズル6bとの間に配置されている。
そして、ノズルフラッパ7は、スプール4とフィードバックスプリング9を介して接続されている。なお、ノズルフラッパ7は、スプール4の第2規定部材4a2の右側側面に固定されている。そして、本実施形態においては、第2規定部材4a2の右側側面が、スプール4を移動させる際の基準位置4cとされている。
【0026】
トルクモータ8は、外部から指示に基づいてトルクを発生させ、当該トルクによってノズルフラッパ7を傾斜させるものであり、ノズルフラッパ7に固定されると共にノズルフラッパ7にトルクを作用させるアーマチュア8aと、アーマチュア8aを傾斜する磁力を発生するコイル8b等を備えている。
なお、トルクモータ8は、筐体2の上部に対して固定されている。
【0027】
筐体2の説明に戻り、筐体2は、該筐体2の外部の供給源から供給される流体を第1ノズル6aと第2ノズル6bとに均等に分配して供給する流路2aと、ノズル6から噴射された流体をスリーブ3の流入ポート3aに導く流路2bと、スリーブ3の流出ポート3bから導出された流体を排出口2Aに導く流路2cと、スリーブ3の流出入ポート3cと供給先とを接続する流路2cとを備えている。
また、流路2aは、第1ノズル6aに流体を供給する流路2a1と、第2ノズル6bに流体を供給する流路2a2とを備えている。そして、流路2a1がスリーブ3の左側の開放端と接続され、流路2a2がスリーブ3の右側の開放端と接続され、スプール4の左側端面が流路2a1を流れる流体の圧力を受け、スプール4の右側端面が流路2a2を流れる流体の圧力を受けるように構成されている。
【0028】
次に、このように構成された本実施形態のサーボ弁1の動作について説明する。
【0029】
トルクモータ8にてノズルフラッパ7が傾斜されていない場合には、外部の供給源から流体が筐体2の内部に形成された流路2aに供給されると、流路2aに供給された流体は、第1ノズル6aと第2ノズル6bとから均等に噴出する。この際、流路2a1における流体の圧力と、流路2a2における流体の圧力とは等しい。よって、スプール4は移動しない。
なお、以下の説明において、スプール4が移動していない状態での位置を基準位置とする。
【0030】
また、トルクモータ8にてノズルフラッパ7が右側に傾斜されると、ノズルフラッパ7が第1ノズル6aに近づき、第2ノズル6bから遠ざかる。この結果、第1ノズル6aからの流体の噴射がノズルフラッパ7によって阻害され、第1ノズル6aに連通する流路2a1内の圧力が上昇し、スプール4の左側端面が受ける力が右側端面よりも相対的に強くなり、スプール4は右側に移動する。
なお、ノズルフラッパ7の右側への傾斜角度が大きくなる程、流路2a1内の圧力が大きくなり、スプール4の右側への移動量が大きくなる。
そして、ノズルフラッパ7の傾斜角度は、トルクモータ8がノズルフラッパ7に作用させるトルクの大きさに比例するため、トルクモータ8の出力を制御することによってスプール4の移動量を制御することができる。
【0031】
また、トルクモータ8にてノズルフラッパ7が左側に傾斜されると、ノズルフラッパ7が第2ノズル6bに近づき、第1ノズル6aから遠ざかる。この結果、第2ノズル6aからの流体の噴射がノズルフラッパ7によって阻害され、第2ノズル6aに連通する流路2a2内の圧力が上昇し、スプール4の右側端面が受ける力が左側端面よりも相対的に強くなり、スプール4は左側に移動する。
なお、ノズルフラッパ7の左側への傾斜角度が大きくなる程、流路2a2内の圧力が大きくなり、スプール4の左側への移動量が大きくなる。
【0032】
そして、本実施形態のサーボ弁1は、伸縮装置5によってスプール4の長さを調節することができ、自らの特性を変化させることができる。
例えば、サーボ弁1の特性としては、スプール4が基準位置から少しでも変位した場合に流出入ポート3cに流体が流れるクリティカルセンタ、スプール4が基準位置から大きく変化した場合に流出入ポート3cに流体が流れるオーバラップ、及びスプール4が基準位置の場合にも流出入ポート3cに流体が流れるアンダラップが挙げられる。
以下に、上記特性を本実施形態のサーボ弁1によって達成するための方法について説明する。
【0033】
(クリティカルセンタ)
サーボ弁1の特性をクリティカルセンタとする場合には、図2に示すように、スプール4が基準位置である際に、第1規定部材4a1の右側端部が第1流入ポート3a1の右側端部と合い、第2規定部材4a2の左側端部が第1流出ポート3b1の左側端部と合い、第3規定部材4a3の右側端部が第2流出ポート3b2の右側端部と合い、第4規定部材4a4の左側端部が第2流入ポート3a2の左側端部と合うように、基準位置4cからの各規定部材4aまでの距離を伸縮装置5によって調節する。
【0034】
このような規定部材4aの配置により、スプール4が左側に移動される場合には、スプール4の移動開始後、即座に第1流入ポート3a1と第2流出ポート3b2とが開口される。
そして、第1流入ポート3a1と第2流出ポート3b2とが開口されると、流体が第1流入ポート3a1からスリーブ3内に流れ込み、第1流出入ポート3c1を介して供給先に供給される。そして、供給先から戻された流体は、第2流出入ポート3c2を介して再びスリーブ3内に流れ込んだ後、第2流出ポート3b2を介してスリーブ3の外部に排出され、さらには筐体2の排出口2Aを介してサーボ弁1の外部に排出される。
【0035】
一方、スプール4が右側に移動される場合には、スプール4の移動開始後、即座に第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1とが開口される。
そして、第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b2とが開口されると、流体が第2流入ポート3a2からスリーブ3内に流れ込み、第2流出入ポート3c2を介して供給先に供給される。そして、供給先から戻された流体は、第1流出入ポート3c1を介して再びスリーブ3内に流れ込んだ後、第1流出ポート3b1を介してスリーブ3の外部に排出され、さらには筐体2の排出口2Aを介してサーボ弁1の外部に排出される。
【0036】
つまり、上述の規定部材4aの配置によって、スリーブ3を移動させた場合に即座に供給先に流体が供給される。このため、サーボ弁1の特性を、スプール4が基準位置から少しでも変位した場合に流出入ポート3cに流体が流れるクリティカルセンタとすることができる。
【0037】
(オーバラップ)
サーボ弁1の特性をオーバラップとする場合には、図3に示すように、スプール4が基準位置である際に、第1規定部材4a1の右側端部が第1流入ポート3a1の右側端部よりも右側に位置し、第2規定部材4a2の左側端部が第1流出ポート3b1の左側端部よりも左側に位置し、第3規定部材4a3の右側端部が第2流出ポート3b2の右側端部よりも右側に位置し、第4規定部材4a4の左側端部が第2流入ポート3a2の左側端部よりも左側に位置するように、基準位置4cからの各規定部材4aまでの距離を伸縮装置5によって調節する。
【0038】
このような規定部材4aの配置により、スプール4が左側に移動される場合には、スプール4の移動開始直後には、第1流入ポート3a1と第2流出ポート3b2とが開口されず、第1規定部材4a1の右側端部が第1流入ポート3a1の右側端部に達し、第3規定部材4a3の右側端部が第2流出ポート3b2の右側端部に達した後に第1流入ポート3a1と第2流出ポート3b2とが開口される。
【0039】
一方、スプール4が右側に移動される場合には、スプール4の移動開始直後には、第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1とが開口されず、第2規定部材4a2の左側端部が第1流出ポート3b1の左側端部に達し、第4規定部材4a4の左側端部が第2流入ポート3a2の右側端部に達した後に第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1とが開口される。
【0040】
つまり、上述の規定部材4aの配置によって、スリーブ3を移動させた直後には供給先に流体が供給されない。このため、サーボ弁1の特性を、スプール4が基準位置から大きく変化した場合に流出入ポート3cに流体が流れるオーバラップとすることができる。
【0041】
(アンダラップ)
サーボ弁1の特性をアンダラップとする場合には、図4に示すように、スプール4が基準位置である際に、第1規定部材4a1の右側端部が第1流入ポート3a1の右側端部よりも左側に位置し、第2規定部材4a2の左側端部が第1流出ポート3b1の左側端部よりも右側に位置し、第3規定部材4a3の右側端部が第2流出ポート3b2の右側端部よりも左側に位置し、第4規定部材4a4の左側端部が第2流入ポート3a2の左側端部よりも右側に位置するように、基準位置4cからの各規定部材4aまでの距離を伸縮装置5によって調節する。
【0042】
このような規定部材4aの配置により、スプール4が基準位置に配置された場合であっても、第1流入ポート3a1と第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1と第2流出ポート3b2とが開口されている。
つまり、上述の規定部材4aの配置によって、スプール4が基準位置の場合であっても流体が供給先に供給される。このため、サーボ弁1の特性を、スプール4が基準位置の場合にも流出入ポート3cに流体が流れるアンダラップとすることができる。
【0043】
このように、本実施形態のサーボ弁1によれば、伸縮装置5によってスプール4の基準位置から各規定部材4aまでの位置を調節することによって、サーボ弁1の特性を任意に変化させることができる。
【0044】
なお、上述の3つの特性を実現する場合には、スプール4が左側に移動した場合における第1流入ポート3a1と第2流出ポート3b2との開口タイミングは一緒となり、スプール4が右側に移動した場合における第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1との開口タイミングは一緒となる。
しかしながら、第1流入ポート3a1と第2流出ポート3b2との開口タイミング、及び、第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1との開口タイミングが必ずしも一緒となる必要はない。
例えば、スプール4が基準位置の場合に、第1流入ポート3a1のみがわずかに開口されるように、伸縮装置5によって第1規定部材4a1の位置を調節しても良い。これによって、供給先における第1流出入ポート3c1側の圧力を上昇させることができる。
また、スプール4が基準位置の場合に、第2流入ポート3a2のみがわずかに開口されるように、伸縮装置5によって第4規定部材4a4の位置を調節しても良い。これによって、供給先における第2流出入ポート3c2側の圧力を上昇させることができる。
つまり、本実施形態のサーボ弁1によれば、供給先における流体の圧力を調節することも可能となる。
【0045】
以上のような本実施形態のサーボ弁1によれば、伸縮装置5によって、スプール4の規定部材4aから基準位置4cまでの距離を調節することが可能とされている。つまり、規定部材4aから基準位置4cまでの距離が可変とされている。
このため、基準位置4cを移動させた場合における第1流入ポート3a1と第2流入ポート3a2と第1流出ポート3b1と第2流出ポート3b2との開口開始タイミングあるいは閉鎖開始タイミングを変化させることができ、弁装置の特性を変化させることができる。
したがって、本実施形態のサーボ弁1によれば、ポートを有するスリーブ内においてスプールを長手方向に移動可能とさせることによってポートの開口率を変化させるサーボ弁において、サーボ弁自体を取り替えることなくサーボ弁の特性を変化させることが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る弁装置及びサーボ弁の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、本実施形態の弁装置の一例として、サーボ弁を挙げて説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、スリーブとスプールとを備えるスプール弁全般に適用することができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、伸縮装置5(距離調節手段)がアクチュエータとして電歪素子を備える構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、スプール4の規定部材4aを基準位置4cに対して変位可能な機構であれば、伸縮装置5のアクチュエータとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態におけるサーボ弁の概略構成を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるサーボ弁の特性がクリティカルセンタである場合のスリーブ及びスプールを拡大した図面である。
【図3】本発明の一実施形態におけるサーボ弁の特性がオーバラップである場合のスリーブ及びスプールを拡大した図面である。
【図4】本発明の一実施形態におけるサーボ弁の特性がアンダラップである場合のスリーブ及びスプールを拡大した図面である。
【符号の説明】
【0050】
1……サーボ弁(弁装置)、2……筐体、3……スリーブ、3a……流入ポート(ポート)、3a1……第1流入ポート(ポート)、3a2……第2流入ポート(ポート)、3b……流出ポート(ポート)、3b1……第1流出ポート(ポート)、3b2……第2流出ポート(ポート)、3c……流出入ポート、3c1……第1流出入ポート、3c2……第2流出入ポート、4……スプール、4a……規定部材、4a1……第1規定部材(規定部材)、4a2……第2規定部材(規定部材)、4a3……第3規定部材(規定部材)、4a4……第4規定部材(規定部材)、4b……連結部、4c……基準位置、5……伸縮装置(距離調節手段)、5a……電歪素子(アクチュエータ)、5a1……第1電歪素子(アクチュエータ)、5a2……第2電歪素子(アクチュエータ)、5a3……第3電歪素子(アクチュエータ)、5b……制御部(制御手段)、6……ノズル、7……ノズルフラッパ、8……トルクモータ(位置制御手段)、9……フィードバックスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートを有するスリーブ内において長手方向に移動可能とされると共に移動位置に応じて前記ポートの開口率を規定するスプールと、該スプールの位置を制御する位置制御手段とを備える弁装置であって、
前記スプールの前記ポートの開口率を規定する規定部材から前記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの前記長手方向の距離を調節可能な距離調節手段を備えることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記スリーブが複数のポートを備え、前記スプールが2つ以上の前記ポートに対して前記規定部材を備え、
前記距離調節手段は、各規定部材の前記基準位置までの距離を独立して調節可能であることを特徴とする請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記距離調節手段は、前記規定部材と前記基準位置との間に配置されるアクチュエータと、該アクチュエータを制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の弁装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、電歪素子であることを特徴とする請求項3記載の弁装置。
【請求項5】
第1流入ポート、第2流入ポート、第1流出ポート、第2流出ポート、第1流出入ポート及び第2流出入ポートを有するスリーブと、
前記第1流入ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第1規定部材、前記第1流出ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第2規定部材、前記第2流出ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第3規定部材、及び前記第2流入ポートの開口率を移動位置に応じて規定する第4規定部材を有すると共に前記スリーブ内において長手方向に移動されるスプールと、
該スプールの位置を制御する位置制御手段と、
を備えるサーボ弁であって、
前記スプールの前記第1規定部材から前記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、
前記スプールの前記第2規定部材から前記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、
前記スプールの前記第3規定部材から前記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、
前記スプールの前記第4規定部材から前記位置制御手段の制御基準とされる基準位置までの距離と、
を独立して調節可能な距離調節手段を備えることを特徴とするサーボ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117002(P2010−117002A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291995(P2008−291995)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】