説明

弁装置

【課題】弁装置の組み付け工程における弁座の変形を抑制して、弁体・弁座間の高いシール性が得られるような弁装置を提供する。
【解決手段】弁座部材2の弁座21側の端面24に、弁座21の外周側に弁座21と同心上に環状凹部23を設けている。これにより、弁座部材2をケーシング5に圧入する際に弁座部材2の外周に作用する圧縮力は、環状凹部23の外周側部分の変形に消費されて、環状凹部23より内周側部分へはほとんど作用せず、弁座21の変形が防止される。これにより、弁座部材2をケーシング5に圧入する際に、弁座部材2の外周に圧縮力が作用しても弁座21の変形が抑制されるので、バルブ3および弁座21間の良好なシール性が得られるようなプレッシャレギュレータを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力による流体力と弾性部材による付勢力との差によって弁の開閉を行うように構成された弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の弁装置としては、たとえば、燃料通路途中に設けられ、燃料通路に臨む弁座と、弁座と協働して燃料通路を開閉する球状の弁体と、調圧ばねの付勢力を弁座に向かう方向に弁体へ伝達するキャップと、を備え、弁体に作用する流体の圧力による流体力と調圧ばねによる付勢力との差によって弁の開閉を行うように構成された弁装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−138785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の弁装置において、弁座は、弁座部材に貫通孔状に設けられた燃料通路の一端側の開口孔の周縁に、円錐面状に形成されている。球状の弁体と弁座の接触、つまり球と円錐面との接触は線状接触であり形状は円形である。弁体が弁座に密着した状態、すなわち弁体が弁座に着座した状態で高いシール性を維持するためには、両者の接触部が完全に連続した環状である必要がある。
【0005】
弁装置の構成部品の寸法・形状精度や組み付け誤差等により、球状弁体と弁座の円錐面との同軸度が低下する場合、弁体および弁座の円錐面の少なくとも一方にゆがみが生じている場合、等においては、弁体・弁座の接触部が完全な環状の線領域とならず、途中で途切れて弁体・弁座間のシール性が低下する可能性がある。たとえば、弁座を有する弁座部材はケーシングに圧入固定されているが、この圧入工程において弁座部材には圧縮力が作用するが、それを受けて弁座形状がゆがむ恐れがある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、その目的は、弁装置の組み付け工程における弁座の変形を抑制して、弁体・弁座間の高いシール性が得られるような弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の弁装置は、流体が流れる通路の途中に設けられる円環状の弁座部材と、弁座部材に設けられ且つ通路の一部を形成する貫通孔と、弁座部材の貫通孔の一端側周縁部である弁座と、通路内且つ弁座部材よりも下流側に弁座に当接可能に配置される弁体と、弁体を弁座に当接する方向へ付勢するコイルばねと、弁座部材、弁体およびコイルばねを収容保持するケーシングと、を備え、弁体が弁座から離れると通路が連通され、弁体が弁座に当接すると通路が遮断され、弁体が通路内を流れる流体から受ける力である流体力は弁体に対して弁座から離れる方向に作用し、流体力の大きさがコイルばねによる付勢力の大きさを上回ると弁体が弁座から離れる方向へ移動し、流体力の大きさがコイルばねによる付勢力の大きさを下回ると弁体が弁座に当接する方向へ移動するように構成された弁装置であって、ケーシングは円筒状に形成された円筒部を備え、弁座部材は円筒部と同軸上にして且つその軸方向において弁座と反対側の端部から円筒部内に圧入固定され、弁座部材の弁座側の端面には弁座の外周側に弁体に対向して開口し且つ弁座と同心上の環状凹部が形成されることを特徴としている。
【0008】
従来の弁装置では、その機能上、弁座部材とケーシングの嵌合部分、つまり弁座部材外周面とケーシングの貫通孔内周面との密着部において高いシール性を維持する必要がある。そのため、弁座部材とケーシングの固定方法として、たとえば圧入が用いられている。すなわち、弁座部材の外周部の直径寸法がケーシングの貫通孔の直径寸法よりもわずかに大きく設定されている。これにより、弁座部材がケーシングに圧入固定されると、弁座部材およびケーシングの両方にひずみが発生する。そうすると、弁座である円錐面がゆがみ、球体と弁座との接触部分が環状の線領域とならず、途中で途切れて球体・弁座間のシール性が低下する可能性がある。
【0009】
本発明の請求項1に記載の弁装置では、弁座部材の弁座側の端面の弁座の外周側に弁体に対向して開口し且つ弁座と同心上の環状凹部を設けている。弁座部材をケーシングに圧入すると、弁座部材はケーシングと密着嵌合する外周面において弁座部材の径方向に圧縮力を受けるが、この圧縮力は環状凹部により遮断され、環状凹部よりも内周側部分へはほとんど作用しない。これにより、環状凹部よりも内周側に形成される弁座へも圧入時の圧縮力がほとんど作用せず、弁座が変形することがない。以上により、弁座部材とケーシングとの取り付け部の高いシール性を維持しつつ、弁座部材の弁座の変形を抑制して弁体・弁座間の良好なシール性が得られるような弁装置を提供することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の弁装置は、円筒部および弁座部材のどちらか一方に、弁座部材の円筒部内における弁体と反対側へ向かう軸方向移動を規制する規制部を備えることを特徴としている。
【0011】
弁体が弁座部材の弁座に当接しているときには、弁体はコイルばねの付勢力によって弁座部材の弁座に押し付けられている。また、弁座から離れていた弁体が弁座へ向かって移動して弁座に着座すると、弁体の移動速度が急激に0になるので、弁座は弁体から衝撃力を受ける。これらの力を受けて弁座部材が円筒部内で円筒部の軸方向に移動すると、弁体が弁座に着座しているときのコイルばねによる付勢力が変化し、それに応じて弁体が開弁するときの流体圧力が変化する。そこで、円筒部および弁座部材のどちらか一方に、弁座部材の円筒部内における弁体と反対側へ向かう軸方向移動を規制する規制部を設ければ、弁座部材が円筒部内で弁体と反対側へ向かって軸方向に移動することを阻止できる。
【0012】
以上により、本発明の請求項2に記載の弁装置によれば、弁座部材とケーシングとの取り付け部の高いシール性を維持しつつ、弁座部材の弁座の変形を抑制して弁体・弁座間の良好なシール性が得られるような弁装置を得られるのに加えて、その作動中において弁体の開弁圧力が変化することを効果的に防止することができる。
【0013】
この場合、本発明の請求項3に記載の弁装置のように、規制部は円筒部の弁体とは反対側の端部に接続し且つ円筒部の径方向内周側へ突き出すようにケーシングに形成された棚部である構成としてもよい。この構成においては、規制部である棚部はケーシングと一体的に形成されるので、容易且つ安価に規制部を設けることができる。
【0014】
本発明の請求項4に記載の弁装置は、弁体は球体を備え、球体が弁座と当接可能であることを特徴としている。
【0015】
上述した構成によれば、球体が円錐面状の弁座に当接すると両者の接触部分は確実に環状の線領域となるので、弁体が弁座に当接することにより確実に通路を遮断できる。また、球体は比較的容易にその形状精度を良好に製造できる。したがって、弁体の製造コストを抑えつつ、弁座部材の弁座の変形を抑制して弁体・弁座間の良好なシール性が得られるような弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による弁装置であるプレッシャレギュレータ1が装着された燃料供給モジュール100の部分断面図である。
【図2】プレッシャレギュレータ1の拡大断面図である。
【図3】弁座部材2とバルブ3との当接部の拡大図である。
【図4】バルブ3、キャップ4およびコイルばね6の装着状態を示す拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態による弁装置であるプレッシャレギュレータ1の変形例を示す拡大図である。
【図6】本発明の一実施形態による弁装置であるプレッシャレギュレータ1の他の変形例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による弁装置の一実施形態を、自動車の燃料タンク内に設置されて燃料タンク内の燃料を加圧してエンジンへ供給する役割を果たしている燃料供給モジュールに取り付けられた弁装置であるプレッシャレギュレータ1に適用した場合を例に、図面に基づいて説明する。
【0018】
燃料供給モジュール100は、図示しない電動式燃料ポンプおよび図示しない燃料フィルタをハウジング101内に一体的に保持して形成され、自動車の燃料タンク102に取り付けられている。燃料供給モジュール100において、図示しない電動式燃料ポンプおよび燃料フィルタは、燃料タンク102の開口孔102aを介して燃料タンク102内に配置され、燃料供給モジュール100は、図1に示すように、ハウジング101のフランジ101cを介して燃料タンク102に固定されている。電動式燃料ポンプ(図示せず)により吸入・加圧された燃料は、図示しない燃料フィルタを通過して濾過された後、燃料通路101aを送出口103へ向かって流れる。燃料供給モジュール100の送出口103には、図示しない燃料配管が接続され、燃料供給モジュール100から送出された燃料をエンジン(図示せず)へ導いている。
【0019】
本発明の一実施形態による弁装置としてのプレッシャレギュレータ1は、図1に示すように、燃料供給モジュール100のハウジング101が備える燃料通路101aの途中に設置されている。詳しくは、図1に示すように、ハウジング101に燃料通路101aと燃料タンク102内部空間とを連通するように設けられている貫通孔101bに圧入固定されている。
【0020】
プレッシャレギュレータ1は、図1に示すように、ケーシング5、円環状の弁座部材2、バルブ3、コイルばね6、キャップ4およびカバー7を備えている。
【0021】
ケーシング5は、たとえば、鋼板にプレス加工を施して、図1に示すように、略有底円筒状に形成されている。ケーシング5は、図1に示すように、円筒部である円筒状の小径部51、および小径部51に接続し小径部51と同軸上で小径部51よりも直径が大きい大径部52を備えている。小径部51の大径部52と反対側の端部、つまりバルブ3とは反対側の端部には、小径部51の径方向の内周側に突き出すように規制部54が形成されている。規制部54は、略有底円筒状のケーシング5の底部に相当する。規制部54の中央には貫通孔53が形成されている。
【0022】
プレッシャレギュレータ1は、図1に示すように、ケーシング5の小径部51が燃料供給モジュール100のハウジング101の貫通孔101b内に圧入されて、燃料供給モジュール100に固定されている。また、ケーシング5の大径部52の外周面とハウジング101の貫通孔101bの内周面との間には、図1に示すように、O−リング9が装着されている。これにより、燃料通路101a内を流れる燃料がプレッシャレギュレータ1のケーシング5とハウジング101の貫通孔101bとの間を通って燃料タンク102内へ流出することを阻止している。ケーシング5の大径部52の外周には、図1に示すように、バックアップリング8が嵌合装着されている。このバックアップリング8は、大径部52を貫通孔101b内の適正位置に保持するとともに、O−リングの移動を規制してシール機能を維持する役目を果たしている。
【0023】
ケーシング5の小径部51内には、図1に示すように、弁座としての弁座部材2が圧入固定されている。弁座部材2は、たとえば金属材料から円環状に形成され、その内周孔である貫通孔22は、図1に示すように、ケーシング5の貫通孔53と連通している。貫通孔22のケーシング5の規制部54とは反対側の端部の周縁部には、後述する弁体であるバルブ3と当接可能な弁座21が形成されている。弁座21は、図3に示すように、貫通孔22と同軸上の円錐面状に形成されている。
【0024】
弁座部材2のその軸方向における弁座21側の端面24には、図3に示すように、弁座21と同心上の環状凹部23が形成されている。
【0025】
弁体であるバルブ3は、図1に示すように、球体であるボール31と環状板である環状板32とから構成されている。ボール31は、たとえば金属材料から球状に形成されている。環状板32も、たとえば金属材料から平座金状に形成されている。環状板32の内周孔である貫通孔32bは、その直径寸法がボール31の直径寸法よりもわずかに小さく形成されている。これにより、ボール31を環状板32の貫通孔32bに圧入する、詳しくは、ボール31の直径部分が環状板32の板厚方向(図1中における上下方向)範囲内にあるように圧入すると、ボール31と環状板32とは強固に固定されてバルブ3を形成する。バルブ3において、環状板32の弁座部材2とは反対側の面は、図4に示すように、後述するキャップ4の端面41と密着するガイド面32aとなる。このガイド面32aとボール31とが交わって形成される円の直径は、図4に示すように、直径Dである。
【0026】
コイルばね6は、金属材料、たとえば、ばね鋼線等から、オープンエンドの等ピッチコイルばねとして形成されている。
【0027】
コイルばね6の両端には、それぞれに、図1に示すようにキャップ4が装着されている。キャップ4は、たとえば樹脂材料から形成されている。キャップ4は、略円筒状に形成され、中央には、孔である貫通孔42がキャップ4と同軸上に形成されている。貫通孔42の直径寸法は、図2に示すように、直径dである。ここで、貫通孔42の直径dは、バルブ3におけるガイド面32aとボール31との交線である円の直径Dよりも、わずかに大きく形成されている。また、キャップ4は、図2に示すように、コイルばね6のコイル内周に隙間を有して嵌合可能に形成された円筒面44の外周側に、コイルばね6のピッチと等しいピッチで設けられた螺旋状面43を備えている。この螺旋状面43はキャップ4の周方向において360度に亘って設けられている。これにより、コイルばね6の両端にキャップ4が装着されると、コイルばね6は、その巻き始め端から360度において、言い換えるとコイル一巻き分だけ螺旋状面43に当接し、且つ巻き終わり端から360度において、言い換えるとコイル一巻き分だけ螺旋状面43に当接している。したがって、コイルばね6の有効巻き数Neとしての、コイルばね6がプレッシャレギュレータ1に装着された状態においてコイルばねとして作用可能な巻き数は、言い換えると弾性変形可能巻き数は、コイルばね6の総巻き数Naから両端それぞれの一巻きを引いた数となる。すなわち、Ne=Na−2、である。また、キャップ4のコイルばね6側と反対側の端部には、図2に示すように、面取り面45が形成されている。
【0028】
本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1においては、コイルばね6の有効巻き数Neを、[n+0.5]巻きとしている。ここで、nは整数である。つまり、コイルばね6をその軸方向から見ると、巻き始め端および巻き終わり端であるコイルの両端は、コイルの周方向において180度ずれた位置にある。プレッシャレギュレータ1の完成状態においては、コイルばね6は圧縮状態となっている。
【0029】
コイルばね6の両端にキャップ4が装着された状態で、弁座部材2側のキャップ4には、図1に示すように、バルブ3が装着されている。すなわち、図2に示すように、キャップ4の貫通孔42内にバルブ3のボール31の一部、つまり、環状板32よりも図2において下方に突き出している部分、が貫通孔42内に嵌合している。一方、コイルばね6の両端にキャップ4が装着された状態で、弁座部材2側とは反対側のキャップ4は、図1に示すように、カバー7に保持されている。カバー7は、たとえば、鋼板にプレス加工を施して形成されている。カバー7は、図1に示すように中央部に凹部を備え、この凹部内にキャップ4が嵌合保持されている。同時に、カバー7は、その外周部がケーシング5の大径部52内に圧入されてケーシング5に固定されている。
【0030】
次に、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1の組立方法について説明する。
【0031】
先ず、ケーシング5の小径部51内に弁座部材2を圧入し固定する。このとき、弁座部材2を、弁座部材2の弁座21がある側とは反対側の端部から小径部51内へ圧入して、弁座部材2の弁座21がある側とは反対側の端部を、ケーシング5の規制部54に当接させる。
【0032】
次に、コイルばね6の両端それぞれにキャップ4を装着する。このとき、コイルスプリング43の端部が螺旋状面43の終端に完全に到達するまで、コイルばね6とキャップ4の螺旋状面43とを螺合させる。そうすると、コイルばね6はその両端部それぞれにおいて、コイルの周方向において360度だけ、言い換えるとコイル一巻きだけキャップ4の螺旋状面43とコイルの軸方向において密着する。
【0033】
次に、両端にキャップ4が装着されたコイルばね6において、一方のキャップ4にバルブ3を嵌合する。このとき、バルブ3の環状板32のガイド面32aとキャップ4の端面とを密着させる。
【0034】
次に、両端にキャップ4が装着され且つバルブ3が嵌合されたコイルばね6において、バルブ3が嵌合されないほうのキャップ4をカバー7の凹部に嵌合する。続いて、この状態で、バルブ3をケーシング5内へ挿入し、バルブ3のボール31を弁座部材2の弁座21に密着させ、続いて、コイルばね6を圧縮しつつ、カバー7をケーシング5の大径部52内に圧入する。以上で、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1の組立が完了する。
【0035】
次に、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1の特徴的構成、すなわち、弁座部材2の端面24に弁座21と同心上の環状凹部23を設けたこと、の作用効果について説明する。
【0036】
本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1の組立工程の説明中に述べたように、弁座部材2は、ケーシング5の小径部51内に圧入される。弁座部材2の外周直径寸法はケーシング5の小径部51の直径寸法よりわずかに大きく設定されている。このため、弁座部材2の小径部51内への圧入が完了した時点において、弁座部材2には、その周方向および径方向に圧縮力が作用していると同時に、ケーシング5の小径部51には、その周方向に引張力が作用している。このとき、弁座部材2は、上述した圧縮力を受けて変形する。
【0037】
従来の弁装置の弁座部材は、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1の弁座部材2に設けられている環状凹部23を備えていない。そのため、圧入時において弁座部材の外周部に圧縮力が作用すると、圧縮力が弁座部材の中央部へも伝達され、弁座である円錐面がゆがみ、球体と弁座との接触部分が環状の線領域とならず、接触線が途中で途切れて球体・弁座間のシール性が低下する可能性がある。
【0038】
本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1では、弁座部材2の弁座21側の端面24に、弁座21の外周側に弁座21と同心上に環状凹部23を設けている。ケーシング5の小径部51内への弁座部材2の圧入が完了すると、弁座部材2に対して、弁座部材2の外周側から中心へ向かう方向に圧縮力が作用する。
【0039】
環状凹部23が設けられていない場合は、圧縮力は弁座部材2に対し、弁座部材2の軸方向の全長に亘って均一に作用する。このため、貫通孔22はその全長に亘って均一に変形し、貫通孔22の一端側に設けられた弁座21も変形することになる。
【0040】
これに対して、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1のように弁座部材2に環状凹部23を設けると、圧入により弁座部材2に圧縮力が作用すると、弁座部材2の環状凹部23の外周側の円筒部分は剛性が低いため容易に変形する。そして、弁座部材2に作用した圧縮力は、弁座部材2の環状凹部23の外周側の円筒部分の変形に費やされ、環状凹部23の内周側へはほとんど伝達されず、このため、環状凹部23の内周側の円筒部分、すなわち環状凹部23と貫通孔22に挟まれた円筒部分はほとんど変形しない。これにより、貫通孔22はほとんど変形することがなく、貫通孔22の開口端周縁に形成されている弁座21の変形もほとんどない。これにより、バルブ3のボール31が弁座21に着座したときの接触部分は、連続した環状の線領域となりボール31および弁座21間の高いシール性が維持できる。
【0041】
また、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1では、ケーシング5に圧入される弁座部材2においてケーシング5の開放端側の端面24に環状凹部23を設けている。環状凹部23が開口している端面24は、何物とも接していないため、その径方向の変形が拘束されない。したがって、弁座部材2をケーシング5の小径部51内へ圧入する際、弁座部材2に圧縮力が作用すると、弁座部材2のケーシング5の小径部51と直接接触している部分、すなわち、環状凹部23の外周側の円筒部分が容易に変形することができ、これにより、圧入により弁座部材2に作用する圧縮力のほとんどが消費される。したがって、環状凹部23の内周側の円筒部分の変形は抑制される。つまり、弁座21の変形が抑制される。
【0042】
以上説明したように、本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1では、その組み付け工程において弁座部材2の弁座21が変形することが防止される。これにより、バルブ3のボール31が弁座21に着座したときの接触部分は、連続した環状の線領域となりボール31および弁座21間の高いシール性が維持できる。したがって、圧入により弁座部材2およびケーシング5の取り付け部の高いシール性を維持しつつ、弁座部材2の弁座21の変形を抑制してバルブ3および弁座21間の良好なシール性が得られるようなプレッシャレギュレータ1を実現することができる。
【0043】
なお、上述した本発明の一実施形態によるプレッシャレギュレータ1においては、弁座部材2に設けた環状凹部23の断面形状を、図3に示すように、長方形としているが、長方形以外の形状としてもよい。たとえば、図5に示すように、環状凹部23の底部を曲線状とする、あるいは、図6に示すように、略三角形状とする、等してもよい。
【0044】
なお、上述した実施形態は、本発明による弁装置を、自動車の燃料タンク内に設置されて燃料ポンプから吐出された燃料の圧力を調整するプレッシャレギュレータ1に適用したものであるが、適用対象流体を自動車用燃料に限定する必要はなく、他の種類の流体を扱う装置に適用してもよい。さらには、弁装置が搭載される対象を自動車に限定する必要はなく、他の種類の機器に搭載される弁装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 プレッシャレギュレータ(弁装置)
2 弁座部材
21 弁座
22 貫通孔
23 環状凹部
24 端面
3 バルブ(弁体)
31 ボール(球体)
32 リングプレート(環状板)
32a ガイド面
32aa ガイド面輪郭線
32b 貫通孔(内周)
4 キャップ
41 端面
41a 端面輪郭線
42 貫通孔(孔)
43 螺旋状面
44 円筒面
45 面取り面
5 ケーシング
51 小径部
52 大径部
53 貫通孔
54 規制部
6 コイルばね
7 カバー
71 貫通孔
8 バックアップリング
9 O−リング
100 燃料供給モジュール
101 ハウジング
101a 燃料通路(通路)
101b 貫通孔
101c フランジ
102 燃料タンク
102a 開口孔
103 送出口
D 外径
d 内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる通路の途中に設けられる円環状の弁座部材と、
前記弁座部材に設けられ且つ前記通路の一部を形成する貫通孔と、
前記弁座部材の前記貫通孔の一端側周縁部である弁座と、
前記通路内且つ前記弁座部材よりも下流側に前記弁座に当接可能に配置される弁体と、
前記弁体を前記弁座に当接する方向へ付勢するコイルばねと、
前記弁座部材、前記弁体および前記コイルばねを収容保持するケーシングと、を備え、
前記弁体が前記弁座から離れると前記通路が連通され、前記弁体が前記弁座に当接すると前記通路が遮断され、
前記弁体が前記通路内を流れる流体から受ける力である流体力は前記弁体に対して前記弁座から離れる方向に作用し、
前記流体力の大きさが前記コイルばねによる付勢力の大きさを上回ると前記弁体が前記弁座から離れる方向へ移動し、前記流体力の大きさが前記コイルばねによる付勢力の大きさを下回ると前記弁体が前記弁座に当接する方向へ移動するように構成された弁装置であって、
前記ケーシングは円筒状に形成された円筒部を備え、
前記弁座部材は前記円筒部と同軸上にして且つその軸方向において前記弁座と反対側の端部から前記円筒部内に圧入固定され、
前記弁座部材の前記弁座側の端面には前記弁座の外周側に前記弁体に対向して開口し且つ前記弁座と同心上の環状凹部が形成されることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記円筒部および前記弁座部材のどちらか一方に、前記弁座部材が前記円筒部内における前記弁体と反対側へ向かう軸方向移動を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記規制部は前記円筒部の前記弁体とは反対側の端部に接続し且つ前記円筒部の径方向内周側へ突き出すように前記ケーシングに形成された棚部であることを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記弁体は球体を備え、
前記球体が前記弁座と当接可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−38567(P2011−38567A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184968(P2009−184968)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】