説明

引戸装置

【課題】確実にかつ容易に遮蔽部材を移動調整することのできる引戸装置を提供する。
【解決手段】
方立4の前面に出没可能に設けられた遮蔽部材6を移動調整するための調整部材Aであって、前記遮蔽部材6は方立4の垂直な凹溝5に移動可能にはめ込まれ、前記調整部材Aは方立側面で前記凹溝5に向かって貫通する取付孔10に固着される外筒11と、この外筒に回動できるようにはめ込まれた回動体12とを備え、外筒内周面11には内面中腹部にリング状の凸部が設けられ、この凸部の前面に第1噛合歯が設けられ、前記回動体12には前記第1噛合歯に所定のトルクで噛み合う第2噛合歯と、前面に設けられた回動工具係合溝12bと、後端部に設けられた偏芯カム軸12cとを備え、この偏芯カム軸が遮蔽部材6の側面に設けられたカム軸係合溝9に嵌合されている構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として室内で使用される引戸装置に関するものである。特に本発明は、引戸と方立とを備えた片開きの引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、片開き引戸装置では、図10に示すように、左右の壁面22、22の間に形成された開口部23を開閉する引戸21が設けられ、この引戸21の閉じ姿勢において、引戸21の端部裏面に隣接して方立24が設けられている。
【0003】
この方立24と引戸21との間には引戸をスムースに開閉するための隙間Sが形成されているが、隙間があると引戸21を閉めたときに室内の密閉性が悪くなる。
そこで従来では、例えば特許文献1〜特許文献3に示すように、方立の引戸に隣接する面に、方立と引戸の隙間を遮蔽する柔軟な遮蔽部材を、引戸側に向かって移動調整可能に設けたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−90989号公報
【特許文献2】特許第3033017号公報
【特許文献3】特開2002−138771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手段によれば、側面側に露出したビスをゆるめて遮蔽部材を長孔に沿って移動させたあと、再度ビスを締め付けて調整部材の位置を調整するようにしている。しかしこの手段では、調整操作が面倒であるといった欠点がある。
また、特許文献2にも調整ビスによって遮蔽部材を移動調整する技術が開示されているが、調整ビスの操作が遮蔽部材の前面から行うようにしているので、引戸を取り付けたあとでは遮蔽部材の前面が引戸で隠されてしまい、隙間調整することができないといった欠点がある。
また、特許文献3の手段では、方立の側面側から回動させるカムの偏芯軸によって遮蔽部材を移動調整するようにしている。しかし、使用時に引戸によって遮蔽部材に負荷される力が、カムの偏芯軸に作用してカムが容易に回動して遮蔽部材が移動し、引戸と遮蔽部材との間に隙間が発生するといった欠点があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来課題を解決するとともに、確実にかつ容易に遮蔽部材を移動調整することのできる引戸装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明の引戸装置は、左右の壁面の間に形成された開口部を開閉する引戸と、この引戸の閉じ姿勢において引戸の端部裏面に隣接する位置に配置された方立と、方立の前面で略全長にわたって垂直に形成されかつ引戸裏面側に向かって出没可能とした遮蔽部材と、この遮蔽部材を移動調整するための調整部材とからなる引戸装置であって、前記遮蔽部材は方立に設けられた垂直方向に延びる凹溝に移動可能にはめ込まれ、前記調整部材は方立側面で前記凹溝に向かって貫通する取付孔に固着される外筒と、この外筒に回動できるようにはめ込まれた回動体とを備え、外筒内周面には凹凸歯を備え、回動体は前記凹凸歯に弾力的に係合する弾性爪と、前面に設けられた回動工具係合溝と、後端部に設けられた偏芯カム軸とを備え、この偏芯カム軸が遮蔽部材の側面に設けられた縦長のカム軸係合溝に嵌合されている構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では上記のように、方立側面からドライバー等の回動工具を用いて回動体を回動を回動することにより遮蔽部材引戸方向に前進又は後退させて移動調整することができるものであるが、特に本発明では、回動体の第2噛合歯と外筒の第1噛合歯との噛み合いによって、その噛み合い力の範囲内で回動体の回動が阻止されるので、引戸使用中に回動体が容易に回動して遮蔽部材が勝手に移動することを効果的にに防止することができるといった優れた効果がある。
【0009】
(その他の課題を解決するための手段並びに効果)
本発明では、請求項2に記載のように、調整部材の前面をカバーするキャップが調整部材に着脱自在に取り付けられている構成とするのがよい。
これにより、調整部材表面の回動工具係合溝等を隠すことができて、調整部材表面の意匠感を高めることができる。
【0010】
また本発明では、請求項3に記載のように、回動体の弾性爪を、合成樹脂製の回動体のボディと一体的に形成して、樹脂素材の持つ弾性によって弾性力が付与するように形成するのがよい。
これにより金属バネ等の付加部材を必要とせず一体成形による簡潔な構成で弾性爪を備えた回動体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる引戸装置の全体的な構成を示す平面図。
【図2】本発明の引戸装置の要部を示す断面図。
【図3】本発明の引戸装置における調整部材の分解斜視図。
【図4】本発明の引戸装置における調整部材の全体斜視図。
【図5】本発明の引戸装置における調整部材の拡大断面図。
【図6】本発明の引戸装置の要部を示す斜視図。
【図7】本発明の引戸装置における調整部材の動作を示す断面図。
【図8】本発明の引戸装置における遮蔽部材の基材を示す斜視図。
【図9】本発明の引戸装置における遮蔽部材の基材の別例を示す斜視図。
【図10】従来例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の詳細をその実施の形態を示す図面に基づいて詳細に説明する。 図において、符号1は引戸であって、左右の壁面2、2の間に形成された開口部3を開閉する。この引戸1を閉じ姿勢において、引戸1の端部裏面に隣接する位置に方立4が配置されている。
【0013】
方立4は、垂直に延びた柱材で形成され、その引戸1に面した前面で略全長にわたって垂直な凹溝5が設けられ、この凹溝5に遮蔽部材6が引戸方向に出没自在にはめ込まれている。
遮蔽部材6はアルミ等の金属引抜き材で形成された基材7と、植毛材やゴム材等の弾性のある柔軟な材料で形成された遮蔽部8とからなり、遮蔽部8は基材7の前端に固着されて引戸1との隙間を引戸上下方向の全長にわたって埋めるようにしている。また、基材8には後述する調整部材Aの偏芯カム軸12cが係合するカム軸係合溝9が垂直方向に沿って形成されている。
【0014】
前記方立4には、その側面に取付孔10が前記凹溝5に貫通して設けられ、この取付孔10に調整部材Aが取り付けられている。
前記調整部材Aは合成樹脂材から作られ、取付孔10に回転できないように嵌合される外筒11と、この外筒11に回動可能にはめ込まれた回動体12とを備えている。
前記外筒11はその内面中腹部にリング状の凸部11aが設けられ、この凸部11aの前面(図3における左側)に第1噛合歯11bが設けられている。更に外筒11の外周面には、方立4の取付孔10にはめ込まれたときに取付孔10の内面に食い込んで外筒11が回動するのを阻止する突条11cが設けられている。
【0015】
前記回動体12は大径の鍔部12aを有し、その後面(図3の右側)に前記外筒11の第1噛合歯11bに所定のトルクで噛み合う第2噛合歯12bが設けられている。更に回動体12の前面にはドライバー等の回動工具が係合する回動工具係合溝12eが設けられている。また、回動体12の後端部には偏芯カム軸12cが設けられ、この偏芯カム軸12cが遮蔽部材6の基材側面に設けられたカム軸係合溝9に係合されている。
前記回動体12の第2噛合歯12bと外筒11の第1噛合歯11bとの噛み合いは、回動工具を用いて回動体12に設定以上の回動トルクが付与されたときに、回動体12並びに外筒11の樹脂素材の持つ弾性変形によって相互の噛み合い部分が滑って回動体12の回動ができるように、噛合歯の形状や噛み合い深さに配慮がなされている。
【0016】
また、回動体12は、その胴部の外周面に小さな突起12dが形成され、この突起12dが外筒11のリング状凸部11aの後縁段部11dに係合しており、これにより回動体12が外筒11から前方に抜け出ること阻止している。
【0017】
また、調節部材Aの表面をカバーする皿状の蓋体13が調整部材Aに着脱自在に取り付けられている。本実施例では、蓋体13の裏面中央に突設したピン脚13aが、回動体12の回動工具係合溝12eの中心に形成した孔12fに嵌合して取り付けられるようになっている。この蓋体13をとりつけることにより、調整部材Aの表面の回動工具係合溝12c等を隠すことができて調整部材表面の意匠感を高めることができる。
【0018】
以上の構成において、引戸1をセットするときに、遮蔽部材6の遮蔽部7が引戸1の裏面に当接して方立4と引戸1との隙間を埋めるように調整する。具体的には、ドライバー等の回動工具を用いて設定トルク以上の力で回動体12を回動して偏芯カム軸12cを回動し、遮蔽部材6を引戸方向に前進又は後退させて調整する。調整したあとは、回動体12の第2噛合歯12bと外筒11の第1噛合歯11bとの噛み合いによって、その噛み合い力の範囲内で回動体11の回動が阻止されるので、引戸使用中に回動体12が容易に回動して遮蔽部材6が勝手に移動することがない。
また、遮蔽部材6を一度調整したあと、経年使用による引戸素材の歪み等により引戸1と方立4との隙間が拡大したときも、前記同様の操作で遮蔽部材6を移動させて調整することができる。
尚、図7(a)は引戸1に対して遮蔽部材6を最大に後退させた状態を示し、図7(b)は最大に進出させた状態を示す。
【0019】
本発明において、回動工具を用いて回動体12に設定以上の回動トルクが付与されたときに、回動体12並びに外筒11の樹脂素材の持つ弾性変形によって噛合歯11b、12bの相互の噛み合い部分が滑って回動体12の回動ができるようにしたので、金属バネ等の付加部材を必要とせず、噛合歯を備えた外筒11と回動体12とを、それぞれ合成樹脂による一体成型品で作成でき、これにより簡潔な構成で安価に提供することができる。
【0020】
また、遮蔽部材6のカム軸係合溝9が基材8の側面に垂直方向に沿って形成されているので、基材8をアルミ等の金属引抜き材でひき抜き加工と同時にカム軸係合溝9を形成することができ、これにより、カム軸係合溝を別加工する必要が無くなって加工手間を省くことができる。
尚、遮蔽部材6の基材8は、図8に示すようにカム軸係合溝9を左右に設けて、調整部材Aを方立4に対して左右どちらから取り付けても対応できるようにしたが、図9に示すようにカム軸係合溝9を一方側にのみ形成してもよい。
【0021】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施例の構造のみに特定されるものでなく、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、引戸と方立との隙間を埋める遮蔽部材を備えた引戸構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
A 調整部材
1 引戸
2 壁面
3 開口部
4 方立
5 凹溝
6 遮蔽部材
7 遮蔽部
8 基材
9 カム軸係合溝
10 取付孔
11 外筒
11a リング状凸部
11b 第1噛合歯
12 回動体
12a 鍔部
12b 第2噛合歯
12c 偏芯カム軸
12e 回動工具係合溝
13 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の壁面の間に形成された開口部を開閉する引戸と、この引戸の閉じ姿勢において引戸の端部裏面に隣接する位置に配置された方立と、方立の前面で略全長にわたって垂直に形成されかつ引戸裏面側に向かって出没可能とした遮蔽部材と、この遮蔽部材を移動調整するための調整部材とからなる引戸装置であって、
前記遮蔽部材は、方立に設けられた垂直方向に延びる凹溝に移動可能にはめ込まれ、
前記調整部材は、方立側面で前記凹溝に向かって貫通する取付孔に固着される合成樹脂製の外筒と、この外筒に回動できるようにはめ込まれた合成樹脂製の回動体とを備え、
前記外筒の内面中腹部にリング状の凸部が設けられ、この凸部の前面に第1噛合歯が設けられ、
前記回動体には前記第1噛合歯に所定のトルクで噛み合う第2噛合歯と、前面に設けられた回動工具係合溝と、後端部に設けられた偏芯カム軸とを備え、この偏芯カム軸が遮蔽部材の側面に設けられた縦長のカム軸係合溝に係合されている引戸装置。
【請求項2】
前記調整部材の前面をカバーするキャップが調整部材に着脱自在に取り付けられている請求項1に記載の引戸装置。
【請求項3】
前記回動体の第2噛合歯と外筒の第1噛合歯との噛み合いは、回動体に設定トルク以上の回動トルクが付与されたときに、回動体並びに外筒の樹脂素材の持つ弾性によって相互の噛み合い部分が滑って回動体の回動ができるように形成されている請求項1又は請求項2に記載の引戸装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−188888(P2012−188888A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54910(P2011−54910)
【出願日】平成23年3月13日(2011.3.13)
【出願人】(391006902)
【Fターム(参考)】