説明

弛み防止ボルト

【課題】簡単な構成で締結部分の弛み防止を図ることができ、必要事にはナットを弛め取外すことが可能な弛み防止ボルトを提供する。
【解決手段】ボルト軸部1に雄ネジ部と、その先端部に拡張部を有すると共に、基端部に複数の割り溝を設け、しかも、長手方向に雌ネジ部を有する補助ボルトB挿入穴を内部に設けた中空筒状部と、前記ボルト軸部1の雄ネジ部に挿入する弾性体を有する座金Cと、螺合されるナットで構成したボルト部Aを有し、ボルト軸部3に雄ネジ部と、拡径テーパ部を有する補助ボルトBを前記中空筒状部に螺合することで、前記ボルト軸部1の前記拡張部を拡張する前記ボルトBを具備すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のボルトにナットを組合わせて締結した後に、締結ボルトでナットの弛み防止を図ることができる弛み防止ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、ナットによる締結は、比較的小さな力で締結力を発揮でき、締結後には締付けを増締めしたり、弛めたりできるので一般的に使用されていた。しかし、振動や衝撃のある部分を締結しているナットでは、自然と締付けが弛んで、確実な締結力を維持することができない。このため、ナットの弛め止めとして割りピン・スプリング座金・ロックナット等を用いた方法などがある。
【特許文献1】 特許第2888553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のナットによる締結は、例えば建築物の構造材などの締結に広く利用されている。
しかし、ナットによる締結では、木材等の経年変化(乾燥等)による木痩せなどで効果的に弛みを防止することは困難である。割りピン・スプリング座金・ロックナット・ゴム等であっても容易に締結部分を弛められてしまう。例えば、接着剤等により固定する方法の場合、作業労力を必要とし、また、ナットを弛める必要を生じるときには、容易に弛めることができなくなる。
従って、本発明の目的は、簡単な構成だ締結部分の弛み防止を図ることができ、必要事にはナットを弛め取外すことが可能な弛み防止ボルトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、ボルト軸部1に雄ネジ部と、その先端部に拡張部を有すると共に、基端部に複数の割り溝を設け、しかも、長手方向に雌ネジ部を有する補助ボルトB挿入穴を内部に設けた中空筒状部と、前記ボルト軸部1の雄ネジ部に挿入する弾性体を有する座金Cと、螺合されるナットで構成したボルト部Aを有し、ボルト軸部3に雄ネジ部と、拡径テーパ部を有する補助ボルトBを前記中空筒状部に螺合することで、前記ボルト軸部1の前記拡張部を拡張する前記ボルトBを具備することを特徴とする弛み防止ボルトである。
【0005】
請求項2記載の発明は、ボルト軸部1に雄ネジ部と、その先端部に拡張部を有すると共に、基端部に複数の割り溝を設け、しかも、長手方向に複数の作業工具挿入穴を設けた中空筒状部と、前記ボルト軸部1の雄ネジ部に挿入する弾性体を有する座金Cと、螺合されるナットで構成することを特徴とする弛み防止ボルトである。
なお、請求項1及び2記載の発明の「弾性体を有する座金C」とは、弾性体と座金が一体となった形状であり、それにナットを単独で締付ける構成である。また、前記座金Cとナットの中間に使用用途により数枚の弾性体を重ね、伸縮幅を調整することも可能である。なお、弾性体と座金の位置は逆になてもよく、さらに、複数の弾性体類・座金・ナットを個々に分離した状態で使用しても良い。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明は、ボルト部Aのボルト軸部1に前記座金Cを挿入し、前記ナットを螺合する。その後、前記中空筒状部の前記挿入穴に、前記雄ネジ部と前記テーパ部を有する前記ボルトBで螺合することで、前記ボルト部A先端部の前記拡張部を拡張するとともに、前記ボルトBの前記テーパ部によって、前記割り溝が外側に突出し拡張することで振動・衝撃・熱変化などで、前記ナットがボルト部Aから外れて脱落することを防止することができる。
次に、本発明のボルト施工後に、前記ナットと前記ボルトBを再度締付けることもできるので、前記ナットを弛みにくくすることができる。従って、木材等のような経年変化(乾燥等)による木痩せした場合でも、前記ボルトBでの螺合による前記座金Cの作用で、前記ナットが戻ることはなく弛みを防止できることが可能である。
また、前記ボルトBを前記中空筒状部に螺合する際に、前記拡張部で拡張された前記割り溝を介在した雌ネジ部が前記ボルトBに対して、前記テーパ部に摩擦力を発生させるので前記ナットをさらに弛みにくくできる。
また、時間の経過と共に締結力が低下した場合でも、前記ナットを再び締付けて締結力の低下を補うことができる。しかも、相乗効果として前記ボルトBが、仮に不可抗力等で外れたとしても先端部が拡張した状態なので、前記ナットは人為的に取外さない限り外れる可能性がない。
請求項2記載の発明は、ボルト軸部1に雄ネジ部と、その先端部に拡張部を有すると共に、基端部に複数の割り溝を設け、しかも、長手方向に複数の作業工具挿入穴を設けた中空筒状部と、前記ボルト軸部1の雄ネジ部に挿入する弾性体を有する座金Cと、螺合されるナットで構成することを特徴とする弛み防止ボルトである。
【0007】
請求項1及び2の共通事項として、本発明の弛み防止ボルトを締結後に前記ナットを戻す場合、前記拡張部からなる前記割り溝と前記雄ネジ部を介在し、前記ナットを工具類で戻す方向に回転することで、前記割り溝が徐々に縮小されるので前記ナットを戻すことが可能となる。
さらに、締結後に取外して再使用することも可能である。その際、使用した前記ボルト軸部1の基端部が拡張した状態となるので、再使用する場合に考慮して基端部に、前記ナットを螺合しやすいように、雄ネジ部外面より前記中空筒状部に対して傾斜角Xを設ける形状としてある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施形態1)以下、実施例を図面を参照して説明する。
図1に示すように、請求項1記載の弛み防止ボルトは、ボルト軸部1に雄ネジ部1eと、長手方向に雌ネジ部1cを有する前記B挿入穴を内部に設けた中空筒状部1d(具体的には円筒状)と、ボルト軸部1の雄ネジ部1eに挿入する弾性体4aを有する座金Cと、螺合されるナット2で構成されたボルト部Aと、ボルト軸部1の中空筒状部1dに螺合する補助ボルトBで構成されている。
なお、ボルト軸部1と、座金Cと、ナット2と、補助ボルトBとは、ここでは金属製の部材であるが、金属に限定されず金属以外の材料で構わない。
【0009】
(実施形態2)ボルト軸部1の先端部には、割り溝1bの拡張部1aが形成されている。拡張部1aは、ボルト軸部1の基端部から中空筒状部1dに補助ボルトBを螺合することによって拡張される。補助ボルトBの頭部には、拡張部1aへの挿入を容易にし、拡張するためにテーパ部3bが形成されている。
【0010】
(実施形態3)ボルト軸部1の基端部の拡張部1aは、ナット2を螺合されるように雄ネジ1e形状に形成されている。また、ボルト軸部1の先端部は、割り溝1bが設けられた拡張部1aとなっている。
【0011】
(実施形態4)本発明の弛み防止ボルトを用いて建築物の構造材や石材・金属・コンクリート等の接合部からなる対象物Yを固定するには、まず、図4に示すように、弾性体4aと座金4bと、座金Cと、ナット2からなるボルト部Aを拡張部1a側から接続する対象物Yaに形成されている連結穴Zに通し、さらに、対象物Yの連結穴Zに挿入して、座金Cと、ナット2を対象物Yに押し当て座金Cと、ナット2で締結する。
【0012】
(実施形態5)次に図1に示すように、ボルト軸部1の基端部側から中空筒状部1dに補助ボルトBをドライバー等で螺合し、ボルト軸部1の先端部の拡張部1aを拡張させて、ボルト部Aを対象物Y・Yaに固定する。ボルト軸部1への補助ボルトBの螺合は、座金Cと、ナット2をボルト軸部1の拡張部1aの所に螺合した状態で行い、ボルト軸部1に螺合した補助ボルトBの先端部は、拡張部1aを拡張させるところまで行う。
【0013】
(実施形態6)補助ボルトBの構成を説明する。補助ボルトBは、ボルト軸部3に雄ネジ部3aとテーパ部3bを有し、頭部に補助ボルトBを螺合させるべき回転操作部3cを設けるものである。この回転操作部3cの頭部は、図示例では十字穴であるが、特別に限定されず、例えば六角形状等で形成されても良い。補助ボルトBを用いて建築物の構造材等に対象物Yを固定するには、補助ボルトBの回転操作によってボルト軸部3の雄ネジ部3aを、ボルト部Aの座金Cとナット2を介在し雌ネジ部1cに螺合することで、中空筒状部1d低部に突き当たった所で拡張部1aが拡張することで完了となる。
【0014】
(実施形態7)図2に示すように、請求項1記載の弛み防止ボルトは、ボルト軸部1に雄ネジ部1eと、その先端部に拡張部を1a有すると共に、基端部に複数の割り溝1bを設け、しかも、長手方向に円筒部を有する複数の作業工具5挿入穴を内部に設けた中空筒状部1dと、ボルト軸部1の雄ネジ部1eに挿入する弾性体4aを有する座金Cと、螺合されるナット2から構成される弛み防止ボルトである。
使用方法としては、対象物Y・Yaにボルト軸部1aを挿入し、雄ネジ部1cに座金Cを挿入して、ナット2を螺合後に、中空筒状部1dに複数の作業工具5(例えば、先端が円錐状の釘締め・ポンチ類)を、ハンマー等で打込むことで、ボルト軸部1の拡張部1aを拡張することで弛み防止の機能を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 請求項1の分解図と斜視図を兼用したものである。
【図2】 請求項2の分解図と斜視図を兼用したものである。
【図3】 請求項1の平面図である。
【図4】 請求項1の側面図である。
【図5】 請求項1の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
A ボルト部、B 補助ボルト、C 弾性体を有する座金
1、3 ボルト軸部
1a 拡張部
1b 複数の割り溝
1c 雌ネジ部
1d 中空筒状部
1e、3a 雄ネジ部
2 ナット
3b 拡径テーパ部
3c 回転操作部
4a 弾性体(スプリング・ゴム等)
4b 座金
5 複数の作業工具
X 傾斜角
Y 対象物、Ya 接続する対象物
Z 連結穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト軸部1に雄ネジ部と、その先端部に拡張部を有すると共に、基端部に複数の割り溝を設け、しかも、長手方向に雌ネジ部を有する補助ボルトB挿入穴を内部に設けた中空筒状部と、前記ボルト軸部1の雄ネジ部に挿入する弾性体を有する座金Cと、螺合されるナットで構成したボルト部Aを有し、ボルト軸部3に雄ネジ部と、拡径テーパ部を有する補助ボルトBを前記中空筒状部に螺合することで、前記ボルト軸部1の前記拡張部を拡張する前記ボルトBを具備することを特徴とする弛み防止ボルト。
【請求項2】
ボルト軸部1に雄ネジ部と、その先端部に拡張部を有すると共に、基端部に複数の割り溝を設け、しかも、長手方向に複数の作業工具挿入穴を設けた中空筒状部と、前記ボルト軸部1の雄ネジ部に挿入する弾性体を有する座金Cと、螺合されるナットで構成することを特徴とする弛み防止ボルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−299885(P2009−299885A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179591(P2008−179591)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(501077527)
【Fターム(参考)】