説明

弱毒生ワクチン

【課題】弱毒フラビウイルスのさらなる方法を提供し、フラビウイルス誘発疾患の防止に最適な生ワクチンを提供する。
【解決手段】フラビウイルス変異株がカプシド蛋白において少なくとも4個以上の連続するアミノ酸を欠失しており、カルボキシ末端の疎水性領域がその欠失によって影響されない、フラビウイルス弱毒生ワクチン。変異はカプシド蛋白内に提供され、弱毒ウイルスの増殖が生ワクチンとして投与した後にワクチン接種者内で生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラビウイルス弱毒生ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
フラビウイルス科は、3つの属、フラビウイルス属、ペスチウイルス属、およびヘパシウイルス属(genus hepaciviruses)を含む。
フラビウイルス属は主に蚊またはダニによって媒介されるウイルスを含み、それらの多くはヒト、および動物の重要な病原である。特に重要なのは黄熱(YF)ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、デング(Den)ウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、および近年北アメリカでヒトおよび様々なトリにおいて病原となっているウエストナイル(WN)ウイルスである。
ペスチウイルス属は経済的に非常に重要な動物病原を含み、例えば古典的ブタ熱(CPF)ウイルス、ウシウイルス性下痢性(BVD)ウイルスおよびボーダー病ウイルス(BDV)を含む。
C型肝炎ウイルス属はC型肝炎ウイルス(HCV)の異なる亜型および、G型肝炎ウイルスのような、関連ウイルスを含む。
【0003】
これら3属はフラビウイルス科に統合される。というのも、この科のあらゆる代表種は略同じゲノム構造を有し、多くの構造的および機能的な性質において一致を示すからである。フラビウイルスはすべて比較的小型で、ゲノムとしてmRNA極性を有する一本鎖RNA分子を含む被膜ウイルスである。ゲノムはポリプロテイン(polyprotein)の形態で全蛋白をコードする長い読み取り枠を有する。個々の成熟ウイルス蛋白はウイルス性および細胞性プロテアーゼ活性によって形成される。ゲノムにおける個々のウイルス蛋白の配置は全てのフラビウイルスに共通で5’末端から最初にカプシド蛋白、表面蛋白および一連の非構造蛋白、最後にウイルス性ポリメラーゼである。特別に、ペスチウイルスはさらにカプシド蛋白の前にオートプロテアーゼ(autoprotease)を含む。フラビウイルスのヌクレオカプシドは単一のウイルス蛋白、例えばカプシド蛋白によって形成され、ウイルスゲノムを取り囲む。カプシドは正二十面体であると考えられる。
【0004】
カプシド蛋白の正確な3次元構造はフラビウイルスのどの1つに関しても今だ明らかではない。しかし既知のアミノ酸配列は多くの相関があり、それ故カプシド蛋白は多くの構造的な類似を有すると推測される。この場合、同属の代表種における類似性は一般に異なる属の代表種間の類似性に比べてずっと大きいであろう。あらゆる例において、カプシド蛋白はおよそ100ないし190個のアミノ酸の長さを有する比較的小型の蛋白である。それは塩基性アミノ酸、例えばリジンおよびアルギニンといったアミノ酸への異常に高い偏りを有する。塩基性アミノ酸はウイルスRNAとの相互作用に関して重要であると考えられる(KhromykhおよびWestaway、1996)。しかし、全フラビウイルスカプシド蛋白はまた特徴的な疎水性部分を有する(図1)。かかる疎水性部分は常にカルボキシ末端約20個のアミノ酸で形成される。この部分はゲノム配列において表面構造蛋白に関する内部シグナル配列として機能する。蛋白合成の間に小胞体膜に組み込まれるこのシグナル配列によって、まずカプシド蛋白が膜に固定される。その後、この固定が蛋白分解によって切断される。加えて、内部疎水性部分が存在する。フラビウイルス属の代表種において、内部疎水性ドメインの機能的重要性が記載されている(Marcoffら、1997)。その著者は一連のフラビウイルスに関してこのドメインの境界を以下のように示した:デング1:46−67、デング2:46−66、デング3:46−67、デング4:45−65、日本脳炎:46−62、ウエストナイル:46−62、マリーバレー脳炎:46−62、セントルイス脳炎:45−61、黄熱:43−58、ランガート(Langat):42−54、ポーワッサン:40−52、TBE:42−54。C型肝炎ウイルスに関してもまた、機能的に重要な内部疎水性ドメインが同定され(HopeおよびMcLauchlan、2000)、アミノ酸119から145、特に125から144までにわたる。ペスチウイルスもまた主に疎水性を有する短い内部部分を有する。
【0005】
ワクチンはいくつかのフラビウイルスに対して有効に使用された。それ故、YFウイルス、JEウイルスおよびCPFウイルスに対する生ワクチンがあり、不活化ワクチンはJEおよびTBEに対して使用される。ヒトおよび家畜医療におけるフラビウイルスの重要性から見ると、新規の改良ワクチンの開発において高い需要がある。
一連の弱毒フラビウイルスが知られており、その弱毒化はゲノムの多様な領域での変異に基づく。弱毒化変異は、自然株において観察されるか、実験室においてウイルスの連続継代によって得られるか、中和抗体の存在下で変異株を選択して調製されるか、または組換えクローニング技術によって変異を標的導入して調製されるかのいずれかである。いくつかのフラビウイルスの感染cDNAクローンが存在し、かかるクローンの製法は当業者に公知である。これらの感染cDNAクローンによって、変異はフラビウイルスゲノムに特異的に導入可能となる。
【0006】
弱毒フラビウイルスにおける既知の変異はゲノムの以下のセクションで見出される:
被膜蛋白:弱毒変異の観察の大部分はエンベローププロテインE(フラビウイルス属)に関する(McMinn、1997参照;新例Mandlら、2000)。同様に、プロテインE(rns)(ペスチウイルス属)における弱毒変異が記載されている(Meyersら、1999)。
非構造蛋白:クンジンウイルスのNS1蛋白における点変異によって複製が遅延し、それ故、弱毒化する(Hallら、1999)。弱毒変異はまたNS3蛋白(Burtrapetら、2000)およびNS5蛋白(Xieら、1998)においても記載されている。
非コードゲノム部分:3’末端非コード領域における欠失によるTBEウイルスの弱毒化が記載されている(Mandlら、1998)。デングウイルスに関して、5’および3’の両方の非コード領域において欠失を有する実験的ワクチンが調製された(Laiら、1998)。これらのウイルスの弱毒化の分子的根拠はこのような変異によるウイルス複製に対する逆効果であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は弱毒フラビウイルスのさらに可能な方法を提供することを目的とし、フラビウイルス誘発疾患の防止に最適な生ワクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この目的はフラビウイルス変異株を含むフラビウイルス弱毒生ワクチンであって、該フラビウイルス変異株がカプシド蛋白において少なくとも4個以上の連続するアミノ酸を欠失しているという点で特徴的であり、カルボキシ末端の疎水性領域がその欠失によって影響されない、フラビウイルス弱毒生ワクチンによって達せられる。しかし(上記のように)一連の弱毒フラビウイルスはすでに当該分野において記載されており、その弱毒化は変異に基づいているが、カプシド蛋白においては、いずれの変異も、特に欠失に関しては、フラビウイルスの弱毒化の根拠として記載されていない。本発明記載のカプシド蛋白内に変異を含むフラビウイルスは、フラビウイルスの確実な弱毒化を提供してフラビウイルス生ワクチンとして使用可能であることもまた非常に驚くべきことである。それ故、本発明の変異はカプシド蛋白内に提供されるが、弱毒ウイルスの増殖が生ワクチンとして本発明記載のウイルスを投与した後ワクチン接種者内で生じるだろう。これは不活化ワクチンに勝る一連の利点となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aはフラビウイルス科の代表種におけるカプシド蛋白の親水性プロフィールを示す。負の値は強力な疎水性を有する領域を示す。
【0010】
【図1B】図1Bはフラビウイルス科の代表種におけるカプシド蛋白の親水性プロフィールを示す。負の値は強力な疎水性を有する領域を示す。
【0011】
【図1C】図1Cはフラビウイルス科の代表種におけるカプシド蛋白の親水性プロフィールを示す。負の値は強力な疎水性を有する領域を示す。
【0012】
【図2】図2はフラビウイルス科の各3属の3つの代表種におけるカプシド蛋白の直線状配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
カプシド蛋白における欠失はフラビウイルスに関する全く新規の弱毒化理論を構築する。それ故、カプシド蛋白は当該分野に関連したものと考えてはいけない。それ故、記載された欠失変異は実際有毒な表現型へ復帰しにくくヒトへの広い応用に最適であるフラビウイルス弱毒生ワクチンを提供するという本発明の知見は非常に驚くべきことである。
従来の不活化ワクチンの調製においては多量の感染および有毒ウイルスを産生する必要がある。組換え調製不活化ワクチンに関しても、多量の抗原が産生されて精製されなければならない。生ワクチンでは、ワクチンそれ自体がワクチン接種者体内で増殖するので、産生に必要な量は実質的に少なく、それ故生ワクチンの製造費用は一般に不活化ワクチンに比べて実質的に低い。さらに、毒性ではなく、非病原性ウイルスが産生されるため、その産生は健康のリスクとは関係がない。従来のフラビウイルス不活化ワクチンはホルマリンで処理して、抗原構造にある変化を引き起こして感染粒子を不活化することにより調製される。ワクチン接種者において、まず抗原構造が自然形態に正確に対応しない構造蛋白に対する体液性免疫応答が誘発され、長期免疫の構築および細胞障害性T細胞の形成という非常に重要な非構造蛋白に対する免疫応答は誘発されない。
【0014】
対照的に、本発明記載のワクチンに関しては完全な自然形態で存在してインビボで産生される表面蛋白および非構造蛋白に対する体液性および細胞性免疫応答が獲得でき、それ故、当該分野の現状によると、不活化ワクチンに比べて実質的に長期の保護免疫応答が獲得できる。
本発明のフラビウイルス生ワクチンは、特に好ましい具体例によると、さらに従来の生ワクチンおよび遺伝子工学的方法によって調製される実験的生ワクチンに勝る利点を有する:
現在使用されているフラビウイルス生ワクチンは実験室で何度も接種されてきたもので、それは多数の変異を提供したが、これらのウイルスの生態に関してその意味がまだ詳細に完全に理解されておらず個々の弱毒変異間の相互作用と同様に、これらのウイルスの弱毒化への個々の寄与もまだ完全に明らかでなかった(JEに関して、Nitayaphanら、1990参照;YFに関して、Postら、1992参照;CPFに関して、Bjorklundら、1998参照)。変異の中には表面プロテインEのような、免疫応答に関して特に重要な抗原内に位置するものもある。それ故、ある抗原決定基は野生株ウイルスと比較して異なる形態で存在する。これらのウイルス弱毒化の遺伝学的根拠が複雑であるため弱毒化の根拠を形成する理論を直接他のフラビウイルスに応用するわけにはいかないのである。
【0015】
対照的に、本発明記載のワクチンでは唯一定義されて一般に応用可能な弱毒変異がカプシド蛋白に導入されて、それ故免疫応答で特に重要な蛋白(被膜蛋白またはフラビウイルス属におけるNS1のような、非構造蛋白)を変化させる必要がない。
本発明記載の生ワクチンの好ましい具体例は他のいずれの変異も含まず、特に免疫応答に関係する他の蛋白と同様に被膜蛋白における変異を含まない。
すでに上記した通り、一連の遺伝子工学的弱毒フラビウイルスが記載されておりその中で弱毒化は点変異に基づいている。これらに関して遺伝学的に復帰させることは比較的容易である。また、点変異によって弱毒化した、ウイルスの次の点変異による有毒表現型への復帰が記載されている(Mandlら、2000)。対照的に、本発明記載の生ワクチンにおいて、弱毒化は野生株への復帰が不可能である欠失によって達せられる。
【0016】
さらに記載される事例において、弱毒化は免疫応答に重要な被膜蛋白における変化、または複製および翻訳で重要なゲノム部分における変化に基づく。可能な限り自然で有効な免疫応答を誘発したいので被膜蛋白の抗原構造の変化も、複製または翻訳への本質的な逆効果も所望するものではない。これらの不利な点は本発明によって内部構造構成物のみを変化させることにより、被膜蛋白、非構造蛋白または非コード制御部分のいずれも変化させることなく克服される。
さらなる設定において、フラビウイルスワクチンは多様なウイルスを組み合わせて(キメラウイルス)調製される(Guirakhooら、2000)。キメラウイルスは病原ウイルスの遺伝子を人工的な手法で互いを新規に組み合わせた有機体であるため、ワクチン化によるかかるウイルスの放出はこれらのキメラウイルスが新規のウイルスへ予見不可能な性質を発達させるという危険性を孕んでいる。対照的に、新規のワクチンは多様なウイルスゲノムの組み合わせを構成せず、それ故ワクチン化による放出がこれまで自然に存在しなかったウイルス種の形成を引き起こすことはありえない。
【0017】
本発明のフラビウイルスカプシド蛋白への欠失の導入は、例えば、組換え技術による、実験的に無理なくそれ自体既知の方法を使用することにより当該分野のいずれの業者においても可能である。個々のカプシド蛋白をコードする遺伝子部分はこれまでゲノム配列が精製された全フラビウイルスで既知であり、新規のウイルスでは配列を比較することによって容易に定量可能である。もちろん、この場合における欠失はカルボキシ末端疎水性領域が欠失によって影響されるようないずれの読み枠の変化も起こしてはならない。このカルボキシ末端疎水性領域が大部分保存され、欠失によって影響されないことが不可欠である。言及される技術で変異株、つまり全ウイルス蛋白が、カプシド蛋白を除く、自然形態で形成される増殖における感染ウイルスを調製することは可能である。これらのウイルスの複製および翻訳は制限されない、またはされる必要もない。細胞培養における増殖によって、ワクチンとして使用可能な製品がこれらのウイルスから産生されえる。変化のない野生株とは対照的に、本発明記載のウイルスは、適当な宿主に接種した後、弱毒化の表現型を示し、例えば、疾患を誘発しない。しかしそれらは特異的免疫応答の形成を誘発する。本発明のフラビウイルス生ワクチンで免疫化した宿主は有毒な野生株によるその後の感染から保護されるだろう、例えば、未保護の有機体とは対照的に、野生株ウイルスによって誘発される疾患が生じないだろう。
【0018】
ワクチンの性質がワクチンとして適当な変異株の調製という点で改善されうる目的で多くの特徴に注意が払われるのならカプシド蛋白の領域における本発明の欠失は特に生ワクチンとして適当な変異株を調製するのに十分適する。本発明のいかなる場合においても提供される欠失は適当な弱毒免疫原性ウイルスを調製するためには4個以上のアミノ酸でなければならない、なぜなら4個までのアミノ酸の欠失を有するウイルスは野生株ウイルスに類似の有毒な表現型を示すためである。さらに、有毒ウイルス型への復帰が除外されうるのはこの次数の欠失のみである。
さらに、本発明記載の欠失はカプシド蛋白のカルボキシ末端疎水性領域と関係してはならない。この配列はゲノム内の被膜蛋白の正確な形成に必要であって蛋白分解によって分裂して成熟カプシド蛋白から除去されることが知られている。このシグナル配列の長さは個々のフラビウイルスで様々であるが、親水性プロフィールを設定して容易に定量されうる(図1参照)。従って、本発明記載の欠失はこのカルボキシ末端領域と関係してはならない。
【0019】
カルボキシ末端疎水性領域は少なくとも−1およびそれ以下の図1記載の親水値を有するこの領域における全アミノ酸に関する。特に好ましくは、図1記載の、0以下の親水性を有するC末端領域が不変のままであることである。
本発明記載の好ましい欠失は内部疎水性ドメインという領域に関係する。図1から全フラビウイルスのカプシド配列は、上記のカルボキシ末端の疎水性シグナル配列に加えて、さらに強力な親水性アミノ酸鎖の内部に強力な疎水性を有する部分を含むことが確認できる。これらの内部ドメインという領域が部分的にまたは完全に除去される欠失は特に適当なフラビウイルス弱毒生ワクチンを提供するだろう。「内部疎水性ドメイン」少なくともその当該領域全ては図1において負の疎水値を有すると考えることができる。
【0020】
図2において、本発明記載のワクチンで少なくとも部分的に欠失していてもよい特に好ましい疎水性領域は多くのフラビウイルスで特徴的である。これらの領域は個々のアミノ酸配列の疎水性プロフィールを計算することにより定量可能である。図2の下線の領域はKyteおよびDoolittle(1982)のアルゴリズムを用いてウインドウサイズ5で計算した。別法として、疎水性領域はウインドウサイズ5ないし13アミノ酸残基で計算可能であり、または、HoppおよびWoods(1981)のような、ウインドウサイズ3ないし11が普通選択可能である、他のアルゴリズムによって計算可能である。
図1記載の疎水性ブロットはKyteおよびDoolittle(1982)のウインドウサイズ9アミノ酸残基での、またはHoppおよびWoods(1981)の、各々、ウインドウサイズ7アミノ酸残基でのアルゴリズムに従って計算された。好ましい疎水性領域はデング1:46−67、デング2:46−66、デング3:46−67、デング4:45−65、日本脳炎:46−62、ウエストナイル:46−62、マリーバレー脳炎:46−62、セントルイス脳炎:45−61、黄熱:43−58、ランガート(Langat):42−54、ポーワッサン:40−52、TBE:42−54、HCV:119−145、特に125−144から選択される。
【0021】
弱毒ワクチンの特別な具体例は内部疎水性ドメインというかかる大部分を除去した結果生じた変異ゲノムが細胞培養内において接種可能であるウイルスを産生しないカプシド欠失である。これらのゲノムは複製可能であって自然形態でカプシド蛋白を除く全ての蛋白を有効に翻訳可能であり、おそらく非感染性ウイルス様粒子を形成することも可能である。カプシド蛋白の疎水性を増加させる付加的な点変異または挿入を導入することによって、かかる欠失変異株は接種能力のある生ワクチンとして適したウイルス変異株へと産生可能である。これらの挿入は元の欠失した配列とは異なる配列である。適当な付加変異は、例えば、細胞培養系で複製能力を失った欠失変異株が、細胞培養に比べてより感受性の高い増殖系(例えばフラビウイルス属のウイルスに関する実験マウス、ペスチウイルスに関する自然宿主、C型肝炎ウイルスの場合のブタ、ヒツジ、ウシまたはチンパンジー)に導入されるという点、および適当な変異株がこの系で継代によって産生および選択されるという点で産生および同定されてもよい。この場合、特に好ましいより感受性の高い系は動物、特にマウス、ラット、ウサギ、野ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシまたは霊長類、例えば、チンパンジーである。いずれの付加的な変異の復帰も増殖能力のないウイルスまたは非常に限られた増殖能力しかないウイルスを提供するので、生じたウイルス変異株は特に安全なワクチンを構成する。欠失の復帰はアプリオリに不可能である。
【0022】
好ましいフラビウイルス弱毒生ワクチンはカプシド蛋白において5ないし70、好ましくは6ないし25、特に7ないし20個の、連続するアミノ酸の欠失を有するフラビウイルス変異株を含む。この好ましい次数の各欠失は弱毒化継代行動において質的変化能力で特徴的である。欠失が20以上の連続するアミノ酸である場合、継代能力の喪失が宿主細胞における生ワクチンの調製間に生じるだろう。かかる継代能力の喪失は宿主細胞の感受性によるが、ある付加的な変異株によって各宿主細胞で保存されるだろう。カプシド蛋白の疎水性が増加する1つまたはそれ以上の変異株によって保存されるだろう。かかる変異は好ましくはカプシド蛋白の疎水性が増加する点変異から、またはカプシド蛋白遺伝子内の強力な疎水性部分を有するアミノ酸部分の挿入を導入して選択される。カプシド蛋白の疎水性領域の重複が特に好ましいことが明らかになった。特に好ましい点変異は電荷を持った、または疎水性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、セリン、などのような)と、各々、極性の低いアミノ酸または無極性アミノ酸(例えば、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、バリンなどのような)との交換を含む。かかる付加的な変異は特に好ましくはより感受性の高い系への導入によって自動的に産生される。これらの付加的な変異株の選択はまた継代能力自体の保存によって自動的に生じる。
アミノ酸の極性における僅かな差異となる単一変異は継代能力の保存には十分である(例えば、プロリンをロイシンに、バリンをフェニルアラニンに交換すること)。
【0023】
好ましくは、欠失はアミノ末端までの15アミノ酸までおよび/またはカルボキシ末端シグナル配列の始まりの手前までの15アミノ酸までに達する。これまでフラビウイルスカプシド蛋白の最初の20アミノ酸(またはこのアミノ酸をコードするゲノム部分)は複製に不可欠であると考えられていたが(KhromykhおよびWestaway、1997)、本発明の範疇にある複製および増殖能力を有するウイルスは、この領域に及ぶ欠失を有し、十分に調製可能であった。
本発明はフラビウイルスのあらゆる代表種に応用可能である。本明細書の範疇で、「フラビウイルス」なる語は、フラビウイルス属の代表種のみを意味すると明らかに指摘している場合を除き、フラビウイルス科のあらゆる代表種に関する。本発明が認識している特に好ましいフラビウイルスの代表種は黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルスの4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ポーワッサンウイルス、古典的ブタ熱ウイルス、ウシウイルス性下痢性ウイルス、ボーダー病ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびG型肝炎ウイルスから成る群から選択される。これらの代表種はヒトおよび動物に関する病原性が既知であって、これらの代表種に関して適当な弱毒生ワクチンに対する需要が特に高いので、本発明に特に適している。
【0024】
本発明記載の生ワクチンに関して多量のウイルスが有効な免疫化に必要であって、それ故投与当たり、10ないし107、好ましくは102ないし106、とくに103ないし105の、フラビウイルスの感染単位が本発明の生ワクチンには必要である。好ましくは、生ワクチンがこの量の感染単位で一回投与量として投与可能であるとよい。
好ましくは、本発明記載の生ワクチンは活性物質または補助物質を含むのがよい。ネオマイシンまたはカナマイシンのような、抗生物質、チオメルサールのような、保存料、およびヒトアルブミン、ラクトース−ソルビット(sorbit)、ソルビット−ゼラチン、ポリゼリン(polygeline)または、塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウムのような、塩のような、安定化剤を加えるのが特に好ましい。一般に、アミノ酸、多糖類および(緩衝)塩が添加剤として使用されるのが好ましい。
本発明記載の生ワクチンの調製において、―ヒトに投与したいのであれば―非形質転換宿主細胞を使用すると、この手法で、性質変化の危険性(例えば新規の、好ましくない変異の容易な導入)、およびこれらの細胞の要素との汚染の危険性が避けられるので、推奨される。
本発明のさらなる態様に従って、フラビウイルスワクチンは核酸ワクチン、核酸は本発明記載の欠失したカプシド蛋白をコードしている、として提供されてもよい。好ましくは、かかるフラビウイルス核酸ワクチンは、プラスミドワクチンにおけるFDAによって推奨されるような、ネオマイシンまたはカナマイシンのような、アミノグリコシド抗生物質、加えて核酸を含んでいるのがよい。当該分野において、非常に多くの様々な戦略が「裸」核酸でのワクチン化に関して記載された(例えば、WO90/11092、WO94/29469、WO97/47197参照、その出典を明示することにより本明細書の一部とする、リポソーム介在核酸転移、(好ましくは生分解性の)ミクロスフィアを用いる核酸転移が好ましい)。
【0025】
さらに本発明はまた以下の工程:
・フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸がカプシド蛋白において本発明記載の欠失を含む、フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を提供する、
・該フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を適当な宿主細胞で増殖させる、
・宿主細胞で増殖させたウイルス粒子を回収させる、
・該ウイルス粒子を生ワクチンに加工する
で特徴的である、本発明記載の生ワクチンの製法に関する。
好ましい宿主細胞はニワトリ胚細胞、初期ニワトリ胚細胞、ヒト二倍体細胞系(例えばWI−38、MRC−5)、ベロ細胞、初期ハムスター腎細胞、初期イヌ腎細胞または二倍体アカゲザル胎児肺細胞から成る群から選択される。
最後に、本発明はまたカプシド蛋白において本発明の欠失を有するフラビウイルス核酸であって、フラビウイルス感染の予防に関するワクチン産生のためのフラビウイルス核酸の使用に関する。
本発明は図と同様に以下の実施例によってより詳細に説明されるだろう、しかしながら、それは制限するものではない。
【0026】
図1A−Cはフラビウイルス科の各3属の3つの代表種におけるカプシド蛋白の親水性プロフィールを示す。負の値は強力な疎水性を有する領域を示す。カルボキシ末端疎水性領域はゲノムにおいて被膜蛋白に関するシグナル配列である。各蛋白に関して、親水性はKyteおよびDoolittle(1982)のウインドウサイズ9アミノ酸残基(上段)でのアルゴリズムに従って、HoppおよびWoods(1981)のウインドウサイズ7アミノ酸残基(下段)でのアルゴリズムに従って計算された。
【0027】
図2はフラビウイルス科の各3属の3つの代表種におけるカプシド蛋白の直線状配列を示す。強力な疎水性を有する配列部分(KyteおよびDoolittleに従ってウインドウサイズ5で定量)は下線を引いている。この場合、大部分の個々のカルボキシ末端配置部分はそれに続く被膜蛋白に関するシグナル配列を表す。この部分では欠失は全くない。他方の(内部の)疎水性部分は弱毒化欠失に好ましい領域を表す。
【実施例】
【0028】
実施例1:TBEウイルスのカプシド欠失変異の生ワクチンとしての使用
TBEウイルスの場合、病原性および免疫原性は成熟マウスモデルで試験されてもよい。生ワクチンとして、カプシド蛋白の領域において16個のアミノ酸の欠失を有するTBEウイルスの変異株(CD28−43)が使用された。この変異株および以下の実施例で議論される他の変異株は表1に開示される。変異株CD28−43は野生株と比較される遺伝子発現を示しBHK−21細胞で所望されるのと同程度継代されるだろう。個々の変異株をTBEウイルスの感染cDNAクローンに導入して変異株を調製した。この変異株cDNAクローンからのRNAをインビトロで転写し、このRNAをBHK−21細胞内にエレクトロポレーションした。3日後細胞培養上清を収集し、ハイタイターウイルス懸濁液を得るためにウイルスを2回新生マウス脳にて継代させた。成熟マウスモデルにおいて生ワクチンとしての変異株の適性を試験するために後者を使用した。この目的で、生後15週間のマウスを10000pfuの変異株または有毒な野生株に各々皮下接種させて、4週間かけて生存率を観察した。表2から明らかなように、有毒野生株ウイルスの場合では、10匹のマウスのうち9匹が脳炎の典型的な臨床所見を示し死亡した。それとは対照的に、カプシド欠失変異株を接種したマウスのいずれも死亡しなかった。また100倍の高い投与量で変異株を接種させた場合、10匹のマウスのいずれも発症しなかった。この結果はカプシド欠失変異株が非病原性であったことを意味する。変異株を接種した全マウスの血清のアッセイによると全てTBEウイルスに対して特異的免疫応答を形成していた。有毒ウイルスを高い投与量で接種させて、この免疫応答が野生株ウイルスの感染に対して保護できるか否か試験した。マウスは全て疾患の徴候を全く示さずにこの試験を生き残った。この結果はカプシド欠失変異株が保護免疫を誘発して野生株ウイルスに対するワクチンとして使用可能であることを意味する。
【0029】
実施例2:継代可能な変異株の回収、その変異株はアミノ末端20アミノ酸の領域に及ぶ欠失を有する
感染cDNAクローンによって、TBEウイルスのカプシド蛋白に欠失を導入した、その欠失はアミノ酸16からアミノ酸25までに及ぶ(変異株CD16−25;表1参照)。変異株CD16−25は細胞培養において所望されるのと同程度継代可能であった。この結果は、当該分野の従来の主張とは対照的に、20アミノ末端アミノ酸の領域に及ぶ欠失が、アミノ酸16を除いて、フラビウイルスの複製を破壊しないということを示す。
【0030】
実施例3:有毒カプシド欠失変異
カプシド変異CD28およびCD28−31は各々、1および4個のアミノ酸の長さの欠失を有する(表1)。これらの変異株において、欠失アミノ酸は内部疎水性ドメインの部分ではない(図1)。成熟マウスにこの変異株を接種させると野生株ウイルスに対応する、各々、マウスの80%、および100%を殺す有毒な表現型を有することが示された(表2)。この結果はカプシド蛋白の非疎水性領域における4個のアミノ酸までの欠失は弱毒ワクチンを調製するのに適していないことを示す。
【0031】
実施例4:弱毒化カプシド欠失変異株
カプシド欠失変異株CD28−35、CD28−39、および実施例1記載の変異株CD28−43は8、12および16個のアミノ酸の長さの欠失を有する(表1)。これらの欠失は内部疎水性ドメインの一部を除去する(図1)。成熟マウスにこれらの変異株を接種させると、例えば、全く殺さない、変異株CD28−35の場合、マウスのたった10%しか殺さない、弱毒な表現型を有することが示された(表2)。この結果は内部疎水性ドメインの一部を除去するにおける欠失は弱毒化させることを示す。弱毒化の程度はまた欠失の大きさに依存してその大きさによって増加するだろう。これらの弱毒変異株によって免疫化したマウスは全て有毒な野生株ウイルスによる感染に対して完全に保護された。この結果はカプシド欠失変異株が生ワクチンとして使用可能であるという実施例1の結果を保証する。
【0032】
実施例5:付加的な変異の同定
カプシド欠失変異株CD28−48、CD28−54およびCD28−89は21、27および62個のアミノ酸の長さの欠失を有する(表1)。これらの欠失は内部疎水性ドメインを完全に除去し、または最も大きい欠失の場合、カプシド蛋白の内部疎水性部分を全て除去する(図1)。これらの変異株は遺伝子発現には影響しないが、BHK−21細胞にて継代させることができない。これらの変異株をトランスフェクションしたBHK−21細胞培養上清を3日後収集して10匹の新生マウス(生後1日)に頭蓋内接種させた。これはTBEウイルスに関する既知の増殖系の最も感受性の高いものの1つを構成する。5ないし10日後、CD28−48の場合で全て、CD28−54の場合で10匹のうち7匹の新生マウスが脳炎の明らかな臨床所見を示して死亡した。変異株CD28−89を接種させたマウスは全て死亡しなかった。発症した全てのマウスの脳では、TBEウイルスがPCRによって検出でき、生存マウスではウイルスは見出すことができなかった。発症したマウスの脳からのウイルスはBHK−21細胞培養で所望されるのと同程度継代可能であった。この結果は疎水性ドメインの除去によって細胞培養での継代能力を失った変異株において、細胞培養において再び継代可能な復帰変異株が選択されうることを示す。
これらの変化の遺伝学的基礎を定量するために、カプシド蛋白をコードするゲノム部分を一連のかかる復帰変異株における配列を読んだ。各場合、元々導入した欠失に加えてプロテインCにおける別の変異が存在することが示された。これらは点変異または配列重複であった。別の変異は表3で開示される。これら全ての変異株のある共通の特徴はそれらがカプシド蛋白の疎水性を増大させているということである。この結果はカプシド蛋白の疎水性を増大させる変異株は細胞培養においてフラビウイルスの継代能力に関して内部疎水性配列の欠失効果を復帰させることが可能であることを示す。
【0033】
実施例6:生ワクチンとしての付加的な変異を有するカプシド欠失変異株
感染クローンによって、カプシド蛋白において各々(表3に表記の変異から選択)ある付加的な変異とともに内部疎水性ドメインの21個のアミノ酸の長さの欠失を含む2つの変異株を調製した。付加的な変異のない対応する変異株(CD28−43)とは対照的に、これら2つの変異株、CD28−43/L70およびCD28−43/Du8は所望されるのと同程度の継代能力があった(表1)。この結果は実施例5の結果を保証する。成熟マウスにこれらの変異株を接種させると両方とも非病原性で保護免疫を誘発することが示された(表2)。この結果は上記の視点に記載の欠失および付加的な変異が生ワクチンとして適していることを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
参考文献:
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラビウイルス変異株を含む、フラビウイルス弱毒生ワクチンであって、該フラビウイルス変異株がカプシド蛋白において少なくとも4個以上の連続するアミノ酸を欠失しており、カルボキシ末端の疎水性領域がその欠失によって影響されないという点で特徴的である、フラビウイルス弱毒生ワクチン。
【請求項2】
欠失がカプシド蛋白の内部疎水性ドメインに関係するという点で特徴的である、請求項1記載の生ワクチン。
【請求項3】
カプシド蛋白において、5ないし70、好ましくは6ないし25、特に7ないし20個の、連続するアミノ酸が欠失しているという点で特徴的である、請求項1または2記載の生ワクチン。
【請求項4】
欠失が20個より大きな連続するアミノ酸であって、加えてカプシド蛋白が1つまたはそれ以上の変異を含み、その変異によってカプシド蛋白の疎水性が増大し、好ましくはその変異が
・カプシド蛋白の疎水性を増大させる点変異、または
・優勢的に疎水作用を有するアミノ酸部分の挿入、特にカプシド蛋白の疎水性領域の重複
から選択されるという点で特徴的である、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の生ワクチン。
【請求項5】
フラビウイルスが黄熱ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、デングウイルス(DV)の4つの血清型、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEウイルス)、ウエストナイルウイルス(WNV)、マリーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、ポーワッサンウイルス(PV)、古典的ブタ熱ウイルス(CPFV)、ウシウイルス性下痢性ウイルス(BDV)、ボーダー病ウイルス(BDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)から成る群から選択されるという点で特徴的である、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の生ワクチン。
【請求項6】
10ないし10、好ましくは10ないし10、特に10ないし10の、フラビウイルス感染単位を含むという点で特徴的である、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の生ワクチン。
【請求項7】
さらに抗生物質、保存料、安定化剤、緩衝物質またはそれらの混合物を含むという点で特徴的である、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の生ワクチン。
【請求項8】
ネオマイシン、カナマイシン、チオメルサール、ヒトアルブミン、ラクトース−ソルビット、ソルビット−ゼラチン、ポリゼリン、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、アミノ酸、多糖類、緩衝塩またはそれらの混合物を含むという点で特徴的である、請求項7記載の生ワクチン。
【請求項9】
非形質転換宿主細胞によって産生されるという点で特徴的である、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の生ワクチン。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか1つで定義されるような欠失カプシド蛋白をコードする核酸を含むという点で特徴的である、フラビウイルスワクチン。
【請求項11】
アミノグリコシド抗生物質、特にネオマイシンまたはカナマイシン、リポソーム、ミクロスフィアまたはそれらの混合物を含むという点で特徴的である、請求項10記載のフラビウイルスワクチン。
【請求項12】
以下の工程:
・請求項1ないし5のいずれか1つで定義されるような、カプシド蛋白において少なくとも4個以上の連続するアミノ酸を欠失しているフラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を準備する工程、
・該フラビウイルスまたはフラビウイルス核酸を適当な宿主細胞で増殖させる工程、
・宿主細胞で増殖させたウイルス粒子を回収する工程、および
・該ウイルス粒子を生ワクチンに処理する工程
で特徴的である、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の生ワクチンを製造する方法。
【請求項13】
宿主細胞がニワトリ胚細胞、初期ニワトリ胚細胞、ヒト二倍体細胞系、ベロ細胞、初期ハムスター腎細胞、初期イヌ腎細胞または二倍体アカゲザル胎児肺細胞から成る群から選択されるという点で特徴的である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1ないし5のいずれか1つで定義されるような、カプシド蛋白において少なくとも4個以上の連続する核酸を欠失しているフラビウイルス核酸であって、フラビウイルス感染の防止用のワクチンの製造における該フラビウイルス核酸の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−132686(P2010−132686A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24458(P2010−24458)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【分割の表示】特願2002−566328(P2002−566328)の分割
【原出願日】平成14年2月11日(2002.2.11)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】