説明

張出部高欄構造及び張出部高欄施工方法

【課題】分割型の高欄の張出部への施工技術においてより短時間で高欄の位置決め精度の確保が行えるようにする。
【解決手段】張出部形成用の型枠に、プレキャストコンクリート製の張出型枠20と、プレキャストコンクリート製の高欄下部30aを用いる。高欄下部30aは、予め所定高さに施工精度よく設置された梁部材70上に載置することで、設置位置の位置決めを精度を簡単に確保できる。かかる型枠内に、現場でコンクリート打設することで、コンクリート製の張出部10を施工するとともに、併せて、高欄下部30aも設置施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム堤体等のコンクリート構造物の張出部に分割型の高欄を設ける技術に関し、特に高欄の取り付けを短期間で精度よく行うのに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
ダム堤体は、止水に十分な幅に設定されているため、その堤体上を人や車を通す場合にはやや幅が狭い。そこで、かかるダム堤体の天端上に張出部を設けて、十分な幅を確保することが行われる。
【0003】
従来のかかるダム堤体上の天端張出部は、堤体の上下流面にブラケットを設けて足場を組み、この足場上でオーバーハング形状の天端張出部構築用の型枠を形成し、かかる型枠内にコンクリート打設を行って施工していた。
【0004】
しかし、かかる型枠形成作業は、高いダム堤体上の狭い箇所で行わなければならないため極めて危険な高所作業である。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に記載の如く、かかる現場での危険が伴う型枠形成作業を回避する技術として、予めプレキャストコンクリート型枠を別途形成しておき、かかるプレキャストコンクリート型枠をダム堤体上に後付けし、その後にコンクリートを打設する技術が開発された。かかる技術を用いることで、足場構築及び、構築足場での危険な高所作業等の回避を行うことができる。プレキャストコンクリート型枠を使用することにより、それ以前の施工方法に比べて格段に作業の安全性、作業効率等の向上が図れる優れた技術である。
【0006】
しかし、下記特許文献1に提案の技術においては、型枠1はプレキャストコンクリート型枠1aとして予め製造しておき、現場に搬送後、クレーン等で吊り上げて、図11に示すように、ダム堤体の天端コンクリート部2に天端コンクリート打設と併せて設けた据付台座3にアンカーボルト4等で固定することとなる。
【0007】
かかる固定に際しては、プレキャストコンクリート型枠1aの底部に設けた孔にアンカーボルト4のボルト溝4a側を通し、ナット5によって固定している。さらに、かかる固定に際しては、必要に応じて、プレキャストコンクリート型枠1aの内側にフック6を設け、天端コンクリート2に埋設したアンカー筋7との間に、鉄筋8を緊張して、プレキャストコンクリート型枠1aが堤体の外側に傾斜しないようになっている。
【0008】
このようにプレキャストコンクリート型枠1aは、図11に示すように、外側に張り出したオーバーハング部を含めて予め一体に構成されている。そのため、プレキャストコンクリート型枠自体が張出部を構成する屈曲部を含めて大きく嵩ばるため、製造時、運搬時、保管時等においてぶつけたりし易く破損しやすいという問題点があった。
【0009】
さらには、かかるプレキャストコンクリート型枠では、上記の如く、張出部を構成する屈曲部を含めて大きく嵩ばる形状に形成されているため、長期保管等では、自重で、自己変形する場合も考えられ、かかる異形形状の一体型のプレキャストコンクリート型枠の保管には十分な配慮が必要となるという問題点も指摘されていた。
【0010】
一方、プレキャストコンクリート型枠においては、コンクリート打設時において、ひび割れ等を発生させることなく十分に側圧に耐え得る強度が求められるが、かかる強度確保の対策としては、簡単には、プレキャストコンクリート型枠の板厚を厚くすることが考えられる。
【0011】
しかし、強度確保のためにかかる板厚を厚くすると、プレキャストコンクリート型枠自体の重量が大重量となり、プレキャストコンクリート型枠の移動、吊り上げ等の点で扱い難くなるという問題が発生する。しかし、強度確保の要請は安全上は必須の要件であり、かかる点の回避は行えず、プレキャストコンクリート型枠の大重量化を承知の上で、十分な板厚の構成を採用せざるを得ない。
【0012】
このように、プレキャストコンクリート型枠では、その強度確保の要請に対して、プレキャストコンクリート型枠自体の大重量化は避けられないが、かかる大重量化については、上記移動の点で問題があるばかりでなく、工場等で成形後、例えば、長期保管等する場合に、自重により変形、あるいは歪み、ひび割れ等が発生し易くなるという問題点がある。かかる変形、歪み、ひび割れ等が発生している状態で型枠として使用すれば、コンクリート打設時の側圧で型枠破損を招かないとも限らず、大きな事故原因となる可能性も否定できない。
【0013】
そこで、十分な板厚を確保した状態で、すなわち大重量化した状態でのプレキャストコンクリート型枠の軽量化としては、プレキャストコンクリート型枠の部材延長を短くして小型化を図ることで、プレキャストコンクリート型枠1基当たりの単位重量を低減することが考えられる。
【0014】
しかし、かかる対策を採用すると、実際の施工に当たっては、その分、ダム堤体に沿って多数のプレキャストコンクリート型枠を連接する必要が発生する。このように連接箇所が増えることは、その部分での設置底面の高さ調整の箇所が増え、元々面倒で手間のかかる作業である高さ調整作業の数が増えることとなり、プレキャストコンクリート型枠を使用するメリットである工期の短縮効果を著しく低減させる結果となる。
【0015】
そこで、特許文献2には、作業ヤード等で予め支保工をあてがった状態で分割したプレキャストコンクリート型枠を形成し、張出部形成現場でかかる分割型枠をクレーン等で
吊りながら型枠形成を行う方法が提案されている。特に、かかる提案では、分割型枠は支保工で裏打ちされているため、プレキャストコンクリート型枠の強度確保と軽量化を行うことができるものである。
【0016】
また、形成された張出部に高欄を設ける技術としては、高欄を上下に分割することで、予め上下を一体化した高欄を設ける場合よりも、極めて容易に高欄の施工ができる技術が、例えば、特許文献3には公開されている。
【特許文献1】特開平5−321229号公報
【特許文献2】特開2004−92098号公報
【特許文献3】特開2004−92099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の如き特許文献2、3で提案された個々の技術を組み合わせることで、より安全に、確実に、張出部に高欄を設けることができるようになった。確かに、かかる技術が開発される前の施工方法に比べれば、遥かに施工効率の向上が図れている。しかし、現場では、さらなる施工効率の向上が求められているのも現実である。
【0018】
かかる現場からの要請に対して、本発明者は施工方法を工程毎に見直し、さらなる検討を行った。かかる結果、施工精度に関わる作業で、以外にも相当な時間がかかっていることに気がついた。高欄を上下に分割することで、格段の施工効率の向上を図った筈ではあるが、逆に分割したがために、下部の高欄の張出部への設置、あるいは下部の高欄と、上部の高欄との接合等における施工精度の確保に時間がかかることが判明した。
【0019】
本発明の目的は、分割型の高欄の張出部への施工技術においてより短時間で施工精度の確保が行えるようにすることにある。
【0020】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0022】
すなわち、本発明は構築物の側面から前記構築物の外側に張り出した張出部にプレキャストコンクリート製の高欄を設けた張出部高欄構造であって、前記高欄は、高欄下部と、前記高欄下部の上に設ける高欄上部とを有し、前記高欄下部は、前記構築物の内側において、前記構築物の側面に沿って上下方向に設けた柱部材に前記張出部の外側に向けた梁部材上に設けられ、前記高欄下部の前記梁部材への設置部は、前記梁部材と共に打設コンクリートにより埋設されていることを特徴とする。かかる構成において、前記張出部側には、上下方向に伸びる鉄筋が前記打設コンクリートにより埋設され、前記鉄筋が、前記高欄下部を上下方向に貫通していることを特徴とする。以上の構成において、前記高欄下部と前記高欄上部との接合箇所には、雨水の侵入抑制が図れる凹凸部の嵌め合い構造が形成されていることを特徴とする。以上の構成において、前記張出部の傾斜部を構成するプレキャストコンクリート製の傾斜板には、傾斜上端側に雨水が傾斜面に沿って流れ落ちるのを抑制する水切り部が設けられていることを特徴とする。以上の構成において、前記高欄下部の外部側面には、前記傾斜板と前記高欄下部との接続部に雨水が侵入するのを抑制する雨水除け部材が側面から突設して設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明は構築物の側面から前記構築物の外側に張り出した張出部にプレキャストコンクリート製の高欄を設ける張出部高欄施工方法であって、前記高欄は、前記張出部の外側部を形成する高欄下部と、前記高欄下部の上に設ける高欄上部とを有し、前記張出部は、前記構築物の内側に前記側面に沿って上下方向に設ける柱部材から、前記張出部の外側に向けて延ばした梁部材上に設けた前記高欄下部の側面部分を、打設型枠の一部として、コンクリートを打設して施工することを特徴とする。かかる構成において、前記高欄下部は前記梁部材の上に設けるに際しては、予め所定位置に上下方向に延ばして設けた鉄筋を、前記高欄下部に上下方向に貫通させ、貫通させた前記鉄筋を高欄上部のモルタル継手内に通すことで、高欄上部と高欄下部との位置決め目安を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0025】
本発明では、構築物の内側にその側面に沿って上下方向に設けた柱部材に対して、張出部材の外側方向に向けて伸ばす梁部材上に、張出部形成用のコンクリートを打設する前に予め高欄下部を設けておくことで、高欄下部の張出部に設ける施工精度の確保を行い、且つ、かかる確保に要する時間の短縮を図った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
本発明は、張出部に高欄を設ける技術に関する。かかる技術においては、基本的には、張出部の施工は前記特許文献2に記載の技術を適用し、且つ施工する高欄は前記特許文献3に記載の分割型の高欄を施工するものである。しかし、両技術を組合せ適用する本発明では、張出部を形成するコンクリートを打設する前に、高欄下部を予め所定位置に設置しておくことで、施工精度に関わる作業時間の短縮を図った。
【0028】
上記両技術はそれぞれ別個に開発されたものではあるが、かかる技術を採用することで、格段に張出部への高欄の施工効率が向上した。しかし、前記にも述べた如く、高欄を分割型に構成したがために、逆に分割した高欄を張出部へ設置する等の作業においては、その施工精度を確保するために時間を費やすこととなった。勿論、かかる施工精度に費やす時間をも含めて、かかる工法を採用する前に比べれば、格段に施工効率は良くなっているのは確かである。
【0029】
しかし、現場からは、施工費用のより一層の低減化が強く要望され、かかる施工費用の低減化が図れる技術の開発が求められている。そこで、かかる施工作業の詳細な見直しを行った結果、上記の如く、接合に際しての施工精度を出すのに多大な時間が費やされていることに気がついた。施工精度を出す作業の時間は、単純には短縮することはできない。
【0030】
特に高欄の張出部への設置高さの精度には高精度が要求され、例えばライナープレートあるいは金物等を敷いて高さ調整を行わなければならない。また、クレーン等の重機を使用してmm単位のオーダーで位置合わせを行うため、かかる接合箇所が増えるだけで、全体としては極めて多大の時間を費やすこととなるのである。
【0031】
そこで、本発明では、張出部の構築と、分割型の高欄の高欄下部の設置とを、一緒に行う方法を新たに開発することで、これまでには無い程の極めて簡単な作業で、作業精度を短時間で出せることができるようにしたのである。前記にも述べた如く、張出部を形成するコンクリートを打設する前に、高欄下部を予め所定位置に設置しておくのである。
【0032】
すなわち、これまでは、張出部を打設コンクリートで形成した後で、そのコンクリート製の張出部の上面に、既に形成したプレキャストコンクリート製の高欄下部を据えつける施工方法を採用していた。
【0033】
一度完成した張出部の上面に、別途完成した高欄下部を設置するためには、高欄下部を張出部の上面にコンクリートの欠けが発生する程に強く衝突するのを避けながら、高さ位置を調節する等、クレーン等の重機で極めて慎重な作業をしなければならず、その設置精度を出すためかなりの時間を費やすこととなっていたのである。
【0034】
そこで、プレキャストコンクリート製の高欄下部を張出部の打設コンクリート型枠の一部として使用することで、その後に型枠内にコンクリート打設を行い、張出部のコンクリート打設と高欄下部の設置とを合わせて施工するようにした。かかる施工方法により、張出部への高欄下部の取り付け精度の確保に要する作業を、実質的に無くすことができるのである。
【0035】
かかる高欄下部の張出部への設置作業は、元々はそれぞれ別個に完成したものを据えつけるところから発生した問題である。しかし、本発明の如く、当初から、コンクリートを打設することで、張出部の形成と、併せて高欄下部の設置とを一緒に行うことで、別個に完成したものを精度よく据えつける作業を無くすことができるのである。
【0036】
勿論、コンクリートを打設する前に、高欄下部をきちんとした位置に確保するための作業は当然に発生することとなるが、しかし、かかる作業は、別個に完成した重量物をクレーンで吊り上げて張出部や高欄下部に損傷を与えることなくmm単位で位置合わせする場合に比べれば、極めて簡単に行えるのである。
【0037】
すなわち、高欄下部を載せる梁部材を新たに設けて、かかる梁部材の位置精度を出しておけばよいのである。梁部材は、例えば、人が持ち運びできる程度の部材を使用することができ、クレーン等の重機を用いる場合に比べ、精度出しに要する時間を格段に短縮することができるのである。
【0038】
このようにして精度よく設置した仮設鋼材の梁部材上に、プレキャストコンクリート製の高欄下部を載せ、その後にコンクリート打設を行えばよいのである。高欄下部は、クレーン等の重機を用いて行うが、しかし、既にコンクリートで形成された張出部に据えつける場合に比べて、仮設鋼材の梁部材上に据えつける方が、格段に簡単な作業となるのである。
【0039】
例えば、本発明を使用することで、従来高欄下部を張出部に載置する施工精度の調整に一週間かかっていたものが、実質的にゼロにすることができるのである。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明を適用する重力式コンクリートダムの堤体部分を模式的に示した説明図である。図2は、本発明に関わる張出部への高欄の設置構造を模式的に示した断面説明図である。かかる図2では、張出部形成用のコンクリート型枠の形成状況が示されている。図3は、図2に示すようにして型枠を形成した後にコンクリート打設して、張出部と高欄下部とが一体に形成された状態を示している。但し、図3では、図2に示す高欄上部は省略している。
【0041】
本発明は、例えば、図1に示す重量式コンクリートダムAの張出した堤体部分Bに高欄Cを設ける場合等に適用することができる。すなわち、構築物として堤体部分Bを例に挙げて、かかる構築物としての堤体部分Bから外側に張り出した張出部分に、高欄を設ける場合について説明する。以下の説明では、図1に示す堤体部分Bの左側を部分的に示しながら説明する。右側部分は、左側部分と同様の構造で、左側部分と同様にして施工することができるので、その説明は省略する。
【0042】
図2に示すように、本実施の形態の張出部高欄構造では、かかる張出部10は、プレキャストコンクリート製の張出型枠20と、分割型の高欄30の高欄下部30aとを用いてコンクリートの打設型枠が形成されている。高欄下部30aは、図2に示すように、垂壁部分31と地覆部分32とが、90度で交差したような断面略L字型に形成されている。
【0043】
張出型枠20は、例えば、プレキャストコンクリート板20aに形成されている。かかるプレキャストコンクリート板20aには、仮設鋼材40が予め設けられている。仮設鋼材40としては、例えば、断面がコの字型の溝型鋼40a等が使用される。プレキャストコンクリート板20aに対して、溝型鋼40aのフランジ部分を、固定ボルト41等で固定しておけばよい。かかる作業は、勿論張出部形成現場ではなく、プレキャストコンクリート板20aの作成場所等で、別途予め行っておけばよい。
【0044】
かかる傾斜部を構成する張出型枠20は、コンクリートの現場打設で予め形成された基台50に対して、図2に示すように、基台50の上面端側から、斜め上方に向けて張り出して設けられている。かかる張出型枠20は、一体に設けられた仮設鋼材40の溝型鋼40aを、予め基台50に設けた柱部材60に対して、斜めに溶接することで、斜め上方に向けて張出固定されている。尚、基台50には、図2に示すように、補強筋51、52が設けられている。
【0045】
かかる柱部材60は、基台50のコンクリート打設に際して、予め上下方向に突設するように設けられている。かかる柱部材60は、その上端が、その後に打設コンクリートにより形成される張出部10の上面からは、突出しないように設定されている。かかる柱部材60には、例えば、溝型鋼60a等を使用すればよい。
【0046】
また、柱部材60の上端側には、梁部材70が水平方向に溶接等で設けられている。梁部材70には、例えば、溝型鋼70a等を使用すればよい。かかる構成の梁部材70は、柱部材60の上端から、張出部10の張出方向に向けて伸ばされている。梁部材70の長さは、高欄下部30aの地覆部分32である水平面部分を安定して載せることができる程度に設けられている。例えば、高欄下部30aの水平面部分が40cmの場合には、梁部材70の長さは60cm位でよく、十分に作業者がクレーンを用いずに持てる程度の長さである。
【0047】
また、かかる高欄下部30aを載せる梁部材70は、長手方向の上端面71が、張出部10の水平な上面と平行になるように施工精度よく設けられている。図2に示す場合、梁部材70に使用する溝型鋼70aのフランジ71aが、長手方向の上端面71に相当している。
【0048】
かかる梁部材70上に、高欄下部30aの地覆部分32の下端面の水平面が、図2に示すように載置されている。載置された高欄下部30aの垂壁部分31は、高欄下部30aの地覆部分32を梁部材70上に載せた状態で、垂壁部分31の端部31aが張出型枠20の上端部21上に載るように設定されている。さらに、端部31a、上端部21の接合面は、図2に示すように、垂壁部分31の外面側33と同一面になるように設けられている。
【0049】
尚、当然ではあるが、必要に応じて梁部材70と高欄下部30aとを、例えばボルトで確実に固定する等しても構わない。
【0050】
このようにして、張出部10の外側は、張出型枠20と、その上端部21に連接した高欄下部30aの垂壁部分31とで、コンクリート打設用の型枠が形成されることとなる。
また、高欄下部30aは、断面略L字型に構成されているため、張出部10の側面側の型枠は、上端面が一部高欄下部30aの水平面部分の地覆部分32で覆われた形状になってもいる。
【0051】
さらに、図2に示すように、L字型に曲げられた定着鉄筋80が、高欄下部30a、張出型枠20で構成された型枠内側に設けられている。かかる定着鉄筋80は、高欄下部30aの地覆部分32に設けたモルタルコッター32aを通して、上方に突出されている。
定着鉄筋80としては、例えば、ねじふし棒鋼80a等が使用されている。
【0052】
梁部材70上に高欄下部30aを載置する際には、梁部材70の上面に位置出しした墨のライン等に合わせて行えばよく、また定着鉄筋80は地覆部分32のモルタルコッター32aに通される。定着鉄筋80は、高欄の上部を載置する場合にひっかからないように精度よく設ける必要があるが、高欄下部30aのモルタルコッター32aを通してその位置精度の確保が行えるのでより簡単にその精度が確保できる。
【0053】
このようにして張出型枠20と高欄下部30aとで形成された型枠内に、コンクリートを打設することで、張出部10が形成されている。打設するコンクリート量は、梁部材70の上端面71上に、薄くかかる程度に設定されている。
【0054】
また、形成された張出部10上では、図2に示すように、張出部10の上面の外側は高欄下部30aの地覆部分32で覆われているが、かかる地覆部分32の端32bからは、張出部10の上に所定層厚の舗装90がなされ、車や人の往来が良好にできるように構成されている。
【0055】
このようにして高欄下部30aを張出部10の型枠として用いることにより、張出部10の形成と、高欄下部30aの張出部10への設置とを合わせて行った場合のコンクリート打設後の状況を図3に示した。図3に示す如く、高欄下部30aは、張出部10と一体になっていることが分かる。
【0056】
以上の如く、高欄下部30aは、張出部10のコンクリート打設による形成に合わせてその設置施工がなされるので、別々に形成した高欄下部30aと張出部10との位置合わせ作業のような、施工精度を要する作業が発生しないのである。
【0057】
上記の如く施工精度の作業の格段の軽減が図れる施工方法で施工した高欄下部30aには、図2に示すように、高欄上部30bが載せられる。高欄上部30bには、図2に示すように、定着鉄筋81を内部に有したモルタル充填継手82が設けられている。モルタル充填継手82には、継手用モルタル排出孔83、継手用モルタル注入孔84が設けられている。
【0058】
前記高欄下部30aの地覆部分32のモルタルコッター32aから上方に突出させた定着鉄筋80に、図2に示すように、上記の高欄上部30bのモルタル充填継手82がかぶさるように、高欄上部30bを高欄下部30a上に設置する。その後、モルタル充填継手82内に、モルタルを充填することで、定着鉄筋80、81をモルタルで固定して、高欄上部30bの高欄下部30a上への据えつけを行う。
【0059】
かかる据えつけに際しては、例えば、図2に示すように、高欄上部30bと高欄下部30aとの接合面に、ずれ防止ピン85を設けて、ずれの防止を図ればよい。また、高欄上部30bには、図2に示すように、手摺り34が設けられている。
【0060】
(実施の形態2)
本実施の形態では、前記実施の形態1で説明した張出部高欄構造の施工方法について説明する。
【0061】
図4に示すように、ステップS100で、基台50を形成する。すなわち、図5(a)に示すように、コンクリート製の躯体部分に、補強筋51、52を埋設する。補強筋52は、鉛直方向に設けておく。かかる躯体部分に、図5(b)に示すように、メタルフォーム110等で型枠を形成し、現場打設でコンクリートを打ち継ぎし、基台50を形成する。
【0062】
かかる基台50の作成に際しては、柱部材60を予め設けておく。かかる柱部材60を基台50に設けた様子を、模式的に図6(a)に斜視図で示した。図6(a)に示す場合には、横に複数連接するプレキャストコンクリート製の高欄下部30aの一基分の長さに相当する部分のみを示している。基台上面から柱部材60が突設している様子が分かる。
【0063】
その後、図4に示すステップS200で、図5(c)、(d)に示すように、基台50に対して斜めに張出型枠20を設置する。すなわち、図5(c)に示すように、予めプレキャストコンクリート板20aに仮設鋼材40を取り付けた張出型枠20を、クレーン等で吊りながら作業を行う。作業に際しては、図5(d)に示すように、仮設鋼材40と柱部材60間にターンバックル120等を溶接して介在させ、適度にターンバックル120を調節することによって、張出方向の角度を所定角度に設定する。所定角度に設定した状態で、仮設鋼材40を柱部材60に溶接する。かかる様子を、図6(b)に模式的に斜視図で示した。
【0064】
図4に示すステップS300で、図5(e)に示すように、柱部材60に対して、張出部の張出方向に向けて梁部材70を設ける。梁部材70は、柱部材60の上端側に溶接等で固定する。溶接による固定に際しては、高欄下部30aの地覆部分32の水平部分が載置できるように柱部材60に対して、水平方向に位置精度よく溶接固定する。かかる様子を、図7(a)に模式的に斜視図で示した。
【0065】
その後、図4に示すステップS400で、図5(f)に示すように、定着鉄筋80を設ける。略L字型に屈曲したねじふし棒鋼等を、張出部の上面から突出させるようにして設ける。すなわち、梁部材70より上方に突設するように設けておけばよい。かかる様子を、図7(b)に模式的に斜視図で示した。
【0066】
図4に示すステップS500で、図8(a)に示すように、高欄下部30aを梁部材70上に設置する。かかる設置に際しては、かかる定着鉄筋80が高欄下部30aの地覆部分32のモルタルコッター32aを上下方向に貫通するように設置する。併せて、高欄下部30aの垂壁部分31の端部が、張出型枠20の上端に接続するようにする。このようにして張出部10のコンクリート打設型枠を形成し、その型枠内にコンクリートを現場打設する。かかる様子を、図9(a)に模式的に斜視図で示した。
【0067】
図4に示すステップS600で、図8(b)、(c)に示すように、張出部10に高欄下部30aが設置された状態で、高欄下部30a上に高欄上部30bを設置する。かかる様子を、図9(b)に模式的に斜視図で示した。尚、図9(b)では、分かりやすくするために、定着鉄筋80は省略した。
【0068】
かかる高欄下部30aの設置に際しては、予め高欄上部30b側に設けたモルタル充填継手20に高強度無収縮モルタルを充填して、定着鉄筋80と、高欄上部30b側に設けた定着鉄筋81とを、モルタルで繋ぐようにする。また、ずれ防止ピン85で高欄上部30bの位置ずれを防止する。その後、図4に示すステップS700で、図8(d)に示すように、高欄下部30aの地覆部分32の端部32bから、張出部上面に所定層厚で舗装90を行う。
【0069】
(実施の形態3)
本実施の形態では、前記実施の形態1で説明した張出部高欄構造において、プレキャストコンクリート製の張出型枠20と高欄下部30a、高欄下部30aと高欄上部30bとの接合部における雨水浸透防止策について説明する。
【0070】
従来、プレキャストコンクリート構造物では、プレキャストコンクリート部材間の接合部における雨水の浸透防止には、特段考慮が払われてはいなかった。しかし、厳冬期を迎える場所に設置されるプレキャストコンクリート製の構造物では、浸透した雨水が凍り、膨張して接合箇所に破損が生じることがあるのに気がついた。
【0071】
そこで、例えば、図10(a)に示すように、高欄上部30bには、高欄下部30aとの接合箇所より少し上位置に、側面を突設させて雨水が真下の接合箇所に至らないように、雨水除け部材200を設ければよいことに気がついた。かかる雨水除け部材200は、高欄上部30bをプレキャストコンクリートで成型する際に一体に形成するようにしても構わない。
【0072】
あるいは、高欄上部30bを成型後に、別途雨水除け部材200を後付けして設けるようにしても構わない。かかる場合には、既設の高欄上部等にも適用できるものである。
【0073】
かかる構成の雨水除け部材200は、高欄上部30bの他に、高欄下部30aの張出型枠20との接合箇所の上方に設けても構わない。また、高欄上部30bの高欄下部30aの地覆部分32側に設置しても構わない。高欄下部30aの地覆部分32と高欄上部30bとの接合箇所を雨水の浸透から保護することができる。
【0074】
また、かかる雨水除け部材200の構成と共に、図10(a)では、高欄下部30aと高欄上部30bとの接合箇所を、高欄上部30aの地覆部分32に設けた凸部210と、高欄上部30bの凹部220とを噛み合わせるようにすれば、雨水の浸透が防止できる。
【0075】
さらには、張出型枠20の側面の上端側には、下向きに開口させた凹部(水切り部)230を設けるようにしても構わない。かかる凹部230は、図10(b)に部分的に拡大して示した。かかる凹部230により、雨水の水切りが行われ、傾斜部を構成する張出型枠20を形成するプレキャストコンクリート板20aの傾斜面に沿って雨水が流れ落ちるのを防止することができる。
【0076】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0077】
例えば、前記実施の形態1で述べたように高欄下部は、略L字型に屈曲した構成となっており、かかる構成の高欄下部は、PC桁の角部に載置できる構造でもある。そこで、高欄下部のプレキャストコンクリート成型型枠をPC桁用にも使用できるように共通化を図ることにより、より施工費用を低減化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の堤体等の張出部に高欄を設ける分野で有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明を適用する例としての重力式コンクリートダムの堤体部分の模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の張出部高欄構造を模式的に示した断面説明図である。
【図3】本発明の張出部高欄構造において打設コンクリートによりコンクリート部分が一体に形成されている状況を示した断面説明図である。
【図4】本発明の張出部高欄施工方法の手順を示したフロー図である。
【図5】(a)〜(f)は、張出部高欄施工方法の手順を示した説明図である。
【図6】(a)、(b)は、張出部高欄施工方法の一部の手順を斜視図で示した説明図である。
【図7】(a)、(b)は、張出部高欄施工方法の一部の手順を斜視図で示した説明図である。
【図8】(a)〜(d)は、張出部高欄施工方法の手順を示した説明図である。
【図9】(a)、(b)は、張出部高欄施工方法の一部の手順を斜視図で示した説明図である。
【図10】(a)、(b)は、高欄接合部の雨仕舞いの様子を示した説明図である。
【図11】従来の張出部の施工方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1 型枠
1a プレキャストコンクリート型枠
2 天端コンクリート部
3 据付台座
4 アンカーボルト
4a ボルト溝
5 ナット
6 フック
7 アンカー筋
8 鉄筋
10 張出部
20 張出型枠
20a プレキャストコンクリート板
21 上端部
30 高欄
30a 高欄下部
30b 高欄上部
31 垂壁部分
31a 端部
32 地覆部分
32a モルタルコッター
32b 端部
33 外面側
34 手摺り
40 仮設鋼材
40a 溝型鋼
41 固定ボルト
50 基台
51 補強筋
52 補強筋
60 柱部材
60a 溝型鋼
70 梁部材
70a 溝型鋼
71 上端面
71a フランジ
80 定着鉄筋
80a ねじふし棒鋼
81 定着鉄筋
82 モルタル充填継手
83 継手用モルタル排出孔
84 継手用モルタル注入孔
85 ずれ防止ピン
90 舗装
110 メタルフォーム
120 ターンバックル
200 雨水除け部材
210 凸部
220 凹部
230 凹部(水切り部)
A 重力式コンクリートダム
B 堤体部分
C 高欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築物の側面から前記構築物の外側に張り出した張出部にプレキャストコンクリート製の高欄を設けた張出部高欄構造であって、
前記高欄は、高欄下部と、前記高欄下部の上に設ける高欄上部とを有し、
前記高欄下部は、前記構築物の内側において、前記構築物の側面に沿って上下方向に設けた柱部材に前記張出部の外側に向けた梁部材上に設けられ、
前記高欄下部の前記梁部材への設置部は、前記梁部材と共に打設コンクリートにより埋設されていることを特徴とする張出部高欄構造。
【請求項2】
請求項1記載の張出部高欄構造において、
前記張出部側には、上下方向に伸びる鉄筋が前記打設コンクリートにより埋設され、
前記鉄筋が、前記高欄下部を上下方向に貫通していることを特徴とする張出部高欄構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の張出部高欄構造において、
前記高欄下部と前記高欄上部との接合箇所には、雨水の侵入抑制が図れる凹凸部の嵌め合い構造が形成されていることを特徴とする張出部高欄構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の張出部高欄構造において、
前記張出部の傾斜部を構成するプレキャストコンクリート製の傾斜板には、傾斜上端側に雨水が傾斜面に沿って流れ落ちるのを抑制する水切り部が設けられていることを特徴とする張出部高欄構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の張出部高欄構造において、
前記高欄下部の外部側面には、前記傾斜板と前記高欄下部との接続部に雨水が侵入するのを抑制する雨水除け部材が側面から突設して設けられていることを特徴とする張出部高欄構造。
【請求項6】
構築物の側面から前記構築物の外側に張り出した張出部にプレキャストコンクリート製の高欄を設ける張出部高欄施工方法であって、
前記高欄は、前記張出部の外側部を形成する高欄下部と、前記高欄下部の上に設ける高欄上部とを有し、
前記張出部は、前記構築物の内側に前記側面に沿って上下方向に設ける柱部材から、前記張出部の外側に向けて延ばした梁部材上に設けた前記高欄下部の側面部分を、打設型枠の一部として、コンクリートを打設して施工することを特徴とする張出部高欄施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の張出部高欄施工方法において、
前記高欄下部は前記梁部材の上に設けるに際しては、予め所定位置に上下方向に延ばして設けた鉄筋を前記高欄下部に上下方向に貫通させ、貫通させた前記鉄筋を高欄上部のモルタル継手内に通すことで、高欄上部と高欄下部との位置決め目安を行うことを特徴とする張出部高欄施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−274612(P2008−274612A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118198(P2007−118198)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(000211237)ランデス株式会社 (35)
【出願人】(594074805)東栄コンクリート工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】