強力なHSP−90阻害剤としての2−アミノピリミジン化合物
本発明は、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩、その合成、および増殖性疾患、たとえば癌の治療におけるHSP−90阻害剤としてのその使用を対象とする。
【化1】
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月13日出願の米国仮特許出願第61/088,599号の利益を主張するものであり、その出願の開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、化合物、薬学的に許容できるその塩および溶媒和物、その合成、ならびにHSP−90のモジュレーターまたは阻害剤としてのその使用を対象とする。本発明の化合物は、HSP−90活性をモジュレート(たとえば阻害)し、またHSP−90によって媒介される疾患または状態、たとえば、癌などの異常細胞成長に関連する病態を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
分子シャペロンは、合成時のタンパク質の適正なフォールディング、ならびに変性ストレス条件下でのそのリフォールディングが確実になされるようにすることにより、細胞機能において重要な役割を果たす。タンパク質の合成と分解のバランスを調節することにより、分子シャペロンは、ストレスに対する細胞応答の重要な一環をなす。さらに、様々な細胞タンパク質の適正なフォールディングを調節することにより、シャペロンは、細胞増殖やアポトーシスなどの細胞機能の調節において重要な役割を果たす(たとえば、Jollyら、J.Natl.Cancer Inst.92:1564〜1572(2000)を参照されたい)。熱ショックタンパク質(HSP)は、熱ショック、酸化ストレス、またはアルコールもしくは重金属の存在などの様々な環境ストレスに呼応して細胞中に蓄積される部類のシャペロンである。そのような環境ストレスから細胞を保護する際のその役割に加えて、HSPは、ストレスのない条件下でも、様々な細胞タンパク質のシャペロンとして重要な役割を果たし得る。HSPファミリーの仲間は、その分子量に従って分類される(たとえば、HSP−27、HSP−70、およびHSP−90)。腫瘍進行の種々の段階でHSPが示差的に発現されるという証拠からは、HSPが癌において重要な役割を担っていることが示唆される(たとえば、Martinら、Cancer Res.60:2232〜2238(2000)を参照されたい)。
【0004】
HSP−90は、ATPase活性を有するホモ二量体であり、様々な基質タンパク質との一連の複雑な相互作用において機能する(Youngら、J.Cell Biol.154:267〜273(2001))。しかし、HSP−90は、その既知の基質タンパク質の大部分がシグナル伝達タンパク質であるので、他のシャペロンと比べて独特である。したがって、HSP−90は、細胞のシグナル伝達ネットワークの調節において不可欠な役割を果たす(たとえば、Xuら、Proc.Natl.Acad.Sci 90:7074〜7078(1993)を参照されたい)。特に、HSP−90の基質タンパク質としては、p53、Bcr−Ab1キナーゼ、Raf−1キナーゼ、Aktキナーゼ、Npm−Alkキナーゼp185ErbB2膜貫通型キナーゼ、Cdk4、Cdk6、Wee1(細胞周期依存性キナーゼ)、HER2/Neu(ErbB2)、低酸素誘発因子1α(HIF−1α)などの、癌との関連が示唆される、突然変異または過剰発現した多くのタンパク質が挙げられる。したがって、HSP−90を阻害すると、アポトーシス、細胞増殖、および細胞周期調節に関与するこれらの重要なシグナル伝達タンパク質が選択的に分解される(Holsteinら、Cancer Res.61:4003〜4009(2001))。これらシグナル伝達タンパク質は、癌などの、異常細胞成長が関与する病態において重要な役割を果たしているので、したがってHSP−90は、魅力的な治療標的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、癌などの、異常細胞成長に関連した病態に罹患している患者に治療上の利益をもたらすことのできる、HSP−90活性の新しい阻害剤を発見し開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物
【0007】
【化1】
または薬学的に許容できるその塩を提供する。
式中、
R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、ならびにフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルからそれぞれ独立に選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、
R2およびR3はそれぞれ、塩素、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
R4は、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択され、
R5およびR6はそれぞれ、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
但し、
(1)R4、R5およびR6がすべて水素であるとき、R2およびR3は、同時に塩素ではなく、
(2)式Iの化合物は、以下の化合物のいずれでもない。
【0008】
【化2】
【0009】
この実施形態の好ましい態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4は水素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R3は、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される。R3は、C1〜C3アルキルであることが好ましい。
【0010】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4は水素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2は、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される。
【0011】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4は、フッ素、塩素、C2〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルから選択される。R4は、フッ素および塩素から選択されることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素である。
【0012】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素である。R4はフッ素であり、R5およびR6は両方とも水素であることが好ましい。
【0013】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素である。
【0014】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R5は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0015】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R6は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0016】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。
【0017】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C3〜C8シクロアルキル、またはフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルから選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルである。
【0018】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、または1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキルである。
【0019】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3は塩素である。
【0020】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3はC1〜C3アルキルである。この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素であり、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3は塩素であることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3はメチルである。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物
【0022】
【化3】
(式中、
R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、ならびにフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルからそれぞれ独立に選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、
R2およびR3はそれぞれ、塩素、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
R4は、フッ素、塩素、C2〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルから選択される。R4は、フッ素および塩素から選択されることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素である。
R5およびR6はそれぞれ、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される)
または薬学的に許容できるその塩を提供する。
【0023】
この実施形態の好ましい一態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素である。R4はフッ素であり、R5およびR6は両方とも水素であることがより好ましい。
【0024】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素である。
【0025】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R5は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0026】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R6は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0027】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。
【0028】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C3〜C8シクロアルキル、またはフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルからそれぞれ独立に選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルである。
【0029】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキルである。
【0030】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3は塩素である。
【0031】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3はC1〜C3アルキルである。この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素であり、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3は塩素であることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3はメチルである。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、
【0033】
【化4−1】
【0034】
【化4−2】
【0035】
【化4−3】
【0036】
【化4−4】
【0037】
【化4−5】
からなる群から選択される化合物または薬学的に許容できるこれらの塩を提供する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、医薬の調製における式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩の使用を提供する。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、癌治療のための医薬の調製における式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩の使用を提供する。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、細胞を、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と接触させることを含む、HSP−90の活性をモジュレートする方法を提供する。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または塩と別の治療薬との組合せを提供する。この実施形態の一態様では、組合せは、異常細胞成長、好ましくは癌の治療に使用する。
【0043】
本発明はまた、ヒトを含めた哺乳動物において異常細胞成長を治療する方法であって、前記哺乳動物に、異常細胞成長の治療において有効な量の、上記で規定した式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法に関する。
【0044】
この方法の一実施形態では、異常細胞成長は、限定はしないが、中皮腫、肝胆道系(肝臓および胆道)、原発性もしくは続発性のCNS腫瘍、原発性もしくは続発性の脳腫瘍、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、または前述の癌の1つまたは複数の組合せを含めた癌である。
【0045】
前記方法の別の実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄を含めた、良性の増殖性疾患である。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、乳癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および脊髄軸腫瘍、または前述の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、および肛門部の癌、または前述の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
【0048】
本発明のより好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、卵巣癌、結腸癌、および直腸癌、または前述の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
【0049】
前記方法の別の実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄を含めた、良性の増殖性疾患である。
【0050】
本発明はまた、異常細胞成長の治療において有効な量の、上で規定した式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む、ヒトを含めた哺乳動物において異常細胞成長を治療するための医薬組成物に関する。前記組成物の一実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、中皮腫、肝胆道系(肝臓および胆道)、原発性もしくは続発性のCNS腫瘍、原発性もしくは続発性の脳腫瘍、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、または前述の癌の1つまたは複数の組合せを含めた癌である。前記医薬組成物の別の実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄を含めた、良性の増殖性疾患である。
【0051】
本明細書では、記号[
【0052】
【化5】
]は、置換基の化学構造に組み込まれているとき、[
【0053】
【化6】
]の付いた原子が、その置換基の別の分子上のある位置への結合点であることを意味する。たとえば、仮定的な分子CH3CH2−Xにおいて、Xが、
【0054】
【化7】
であると規定されるとする。この場合、任意に番号を振った位置C−1に付いた[
【0055】
【化8】
]の配置は、フェニル環のC−1がこのメチレン炭素に結合していることを意味する。
【0056】
mが1〜19の整数であり、nが2〜20の整数であり、n>mである「Cm〜Cnアルキル」とは、m〜n個の炭素原子を有し、nは2〜20の整数である、直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を指す。Cm〜Cnアルキル基の例として、限定はしないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、neo−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられ、これらの置換された形態も含める。さらに、用語「アルキル」とは、炭素原子が1〜20個、または炭素原子が1〜12個、または炭素原子が1〜8個、または炭素原子が1〜6個、または炭素原子が1〜4個の、直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を指す。アルキルは、無置換でも、または少なくとも1個の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0057】
mが3〜19の整数であり、nが4〜20の整数であり、n>mである「Cm〜Cnシクロアルキル」とは、m〜n個の炭素原子を有する環状の飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、単環式でもよいし、許容し得る場合は二環式または多環式でもよい。シクロアルキルは、スピロ環式でもよい。シクロアルキルの例示的な例は、限定はしないが、以下の式から生じるものである。
【0058】
【化9】
【0059】
「Cm〜Cnアルコキシ」または「Cm〜Cnアルコキシル」とは、−O−(Cm〜Cnアルキル)を指し、(Cm〜Cnアルキル)は、この節で前に定義したとおりである。
【0060】
「アミノ」とは、−NH2を指す。
【0061】
基が、何らかの置換基で「置換されていてもよい」または「さらに置換されていてもよい」とき、この基の炭素または窒素原子において、1個または複数個の水素原子がこの炭素または窒素原子に結合しており、その炭素または窒素原子が、何らかの他の置換基で置換されていてもよいことを意味する。たとえば、「Rは、H、C1〜C3アルキル、またはフェニルであり、Rは、−F、オキソ、およびC1〜C3ペルフルオロアルキルから選択される1〜3個の基でさらに置換されていてもよい」とは、Rが、1)H(RがHであるとき、Rはさらに置換されることはない)、2)−F、オキソ、およびC1〜C3ペルフルオロアルキルから選択される1〜3個の基でさらに置換されていてもよいC1〜C3アルキル、さらに3)−FおよびC1〜C3ペルフルオロアルキルから選択される1〜3個の基でさらに置換されていてもよいフェニル、であることを意味する。オキソによるフェニルの任意選択の置換は、オキソ、すなわち=O結合によって置換される2個の水素原子を有するフェニル基の単一原子がないため、Rがフェニルであるときは当てはまらない。基が、「−(C1〜C4アルキレン)−」でさらに置換されているとき、「−(C1〜C4アルキレン)−」は、「C1〜C4アルキレン」が結合している基の窒素原子または炭素原子と一緒になって、炭素スピロ環またはヘテロスピロ環を形成することを意味する。
【0062】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の化合物または生理的/薬学的に許容できるその塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグの1種または複数と、生理的/薬学的に許容できる担体および賦形剤などの他の化学的成分との混合物を指す。医薬組成物の目的は、ヒトを含めた哺乳動物などの生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0063】
本明細書では、「生理的/薬学的に許容できる担体」とは、ヒトを含めた哺乳動物などの生物に著しい刺激を与えず、投与される化合物の生物活性および特性を損なわない担体または希釈剤を指す。
【0064】
「薬学的に許容できる賦形剤」とは、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。限定はしないが、賦形剤の例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々なタイプの糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0065】
本明細書では、用語「薬学的に許容できる塩」とは、親化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩を指す。そのような塩としては、以下のものが挙げられる。
(1)親化合物の遊離塩基を、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、(D)もしくは(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸などの有機酸と反応させて得ることのできる酸付加塩、または
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンと入れ替わるとき、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位するときに生成する塩。
【0066】
「接触させること」とは、化合物が直接、すなわちキナーゼ自体との相互作用によって、または間接的に、すなわちキナーゼの触媒活性を左右する別の分子との相互作用によって、PKの触媒活性に影響を及ぼし得るような形で、本教示の化合物と標的PKを引き合わせることを指す。このような「接触させること」は、「in vitroで」、すなわち、試験管、ペトリ皿などにおいて実現することができる。試験管では、接触させることは、化合物と対象とするPKのみが関わる場合もあり、または全細胞が関わる場合もある。細胞を細胞培養皿で維持するか成長させ、その環境で化合物と接触させてもよい。この状況において、特定の化合物がPK関連障害に影響を及ぼし得る能力、すなわち化合物のIC50を求めることができる。生物体の外の細胞については、限定はしないが、直接細胞マイクロインジェクションおよび数多くの膜貫通担体技術を含めて、PKを化合物と接触させるいくつもの方法が存在し、当業者に知られている。
【0067】
「PK関連障害」、「PKによって引き起こされる障害」、および「異常なPK活性」はすべて、不適切な、すなわち過少または過剰なPK触媒活性を特徴とする状態を指し、ここで、特定のPKは、RTK、CTK、またはSTKであってよい。不適切な触媒活性は、(1)通常はPKを発現しない細胞におけるPK発現、(2)望ましくない細胞増殖、分化、および/もしくは成長をもたらすPK発現の増加、または(3)細胞増殖、分化、および/もしくは成長の望ましくない低下をもたらすPK発現の減少のために生じ得る。PKの過剰活性とは、細胞増殖、分化、および/もしくは成長障害と相関し得る(すなわち、PKのレベルが増大するにつれて、細胞性障害による症状の1つまたは複数の重症度が増大する)、特定のPKをコードする遺伝子の増幅またはPK活性レベルの生成のいずれかを指す。過少活性は、細胞性障害による1つまたは複数の症状の重症度が、PK活性のレベルが低下するにつれて増大するものである。
【0068】
「治療する」、「治療すること」、および「治療」とは、PKによって媒介される細胞性障害および/またはその付随症状を緩和または解消する方法を指す。癌に関して、これらの用語は、癌に罹患している個体の余命が延長されること、または疾患の症状の1つまたは複数が軽減されることを意味する。
【0069】
「生物」とは、少なくとも1個の細胞からなる、任意の生命体を指す。生物は、たとえば単一の真核細胞のように単純な場合もあれば、ヒトを含めた哺乳動物のように複雑な場合もある。
【0070】
「治療有効量」とは、治療する障害の症状の1つまたは複数をある程度軽減する、投与される化合物の量を指す。癌の治療に関して、治療有効量とは、以下の効果の少なくとも1つを有する量を指す。
(1)腫瘍の大きさを縮小する、
(2)腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは止める)、
(3)腫瘍成長をある程度抑制する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは止める)、および
(4)癌に関連する1つまたは複数の症状をある程度軽減する(または、好ましくは解消する)。
【0071】
用語「立体異性体」とは、同一の化学構造を有するが、その原子または基の空間的配置に関しては異なる化合物を指す。詳細には、用語「鏡像異性体」は、重ね合わせることのできない互いの鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。用語「ラセミ」または「ラセミ混合物」とは、本明細書では、特定の化合物の鏡像異性体の1:1混合物を指す。一方、用語「ジアステレオ異性体」は、2つ以上の不斉中心を含み、互いの鏡像ではない、一対の立体異性体間の関係を指す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の化合物、すなわち式Iの化合物は、実施例1〜16の方法に従って生成することができる。以下の反応スキーム1〜3は、当業者による式Iの化合物の生成を可能にするものである。
【0073】
【化10】
【0074】
【化11】
【0075】
【化12】
【0076】
スキーム1は、式Iの化合物の生成に使用する中間体I(C)の合成を図示するものである。β−ケトエステルI(A)は、知られている手順に基づいて調製することができる(たとえば、ViscontiniおよびBuhler、Helvetica Chimica Acta、50(5):1289〜93(1967);Rosowskyら、J.Heterocyclic Chem.、26:509〜16(1989)を参照されたい)。窒素保護基であるPG1は、後続の化学現象と適合するように選択することができる。保護基およびその使用についての概論は、T.GreeneおよびP.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、1999、John Wiley&Sonsに記載されており、当業者によく知られている。化合物I(A)をグアニジンと縮合させて、化合物I(B)を得る。これは通常、化合物I(A)をプロトン性溶媒中にてグアニジンまたはグアニジン相当物と共に加熱することにより実行できる。典型的な反応条件では、化合物I(A)を、溶媒としてのtert−ブタノール中にて炭酸グアニジンと共に還流させることになる。化合物I(B)のヒドロキシル基をクロロまたはヨードに変換すると、I(C)が得られる。これは通常、化合物I(B)を非プロトン性溶媒中にてPOCl3と共に加熱することにより実行できる。典型的な反応条件では、化合物I(B)を、そのまま、または溶媒としての無水アセトニトリル中にて、過剰のPOCl3と共に還流させることになる。
【0077】
スキーム2は、式Iの化合物を中間体I(C)から生成することのできる経路を図示するものである。スキーム2では、化合物I(C)のクロロ/ヨード基を三置換フェニル基と交換して、化合物II(A)を得る。化合物II(A)を得るための、化合物I(C)のクロロ脱離基の三置換フェニル基による置換は、鈴木、スティル、根岸、または同様の条件を利用するクロスカップリング法を使用して実施することができる。化合物I(C)を化合物II(A)に変換する典型的なクロスカップリング反応では、水と1,4−ジオキサンなどの溶媒混合物中にて、炭酸ナトリウムなどの塩基およびPd(0)触媒の存在下、化合物I(C)をボロン酸またはボロン酸エステルで処理して、化合物II(A)を得ることになる。次いで、化合物II(A)の窒素保護基PG1を除去して、化合物II(B)を得る。PG1がエチルカルバメート保護基を形成するとき、PG1の除去は通常、化合物II(A)をCH3CNなどの溶媒中にてトリメチルシリルヨージドと共に還流することにより実行できる。別法として、酢酸中HBrまたはイソプロパノール中KOHをエチルカルバメート保護基の除去に使用することもできる。PG1がtert−ブチルカルバメート保護基であるとき、PG1の除去は、化合物II(A)を1,4−ジオキサンなどの溶媒中にて塩化水素で処理することにより実行できる。化合物II(A)を化合物II(B)に変換する典型的な条件は、化合物II(A)をTMSI(10〜20当量、4M 1,4−ジオキサン溶液)で処理して、化合物II(B)を得ることである。次いで、化合物II(B)のジヒドロピロロアミノ部分が、求電子性のR1−NH−CO部分との反応で求核試薬として働いて、化合物Iが得られる。この求核反応は、アシル化、および第二級アルキルアミンに適用可能な他の反応でよい。典型的なアシル化反応条件は、化合物II(B)をTEAの存在下でR1イソシアネートまたはイソシアネート相当物部分と反応させて、化合物Iを尿素として得ることである。イソシアネート相当物の調製方法は、種々のアミンとのCDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)付加物を生成することである。次いで、CDI付加物を、DMF中にてTEAの存在下、高温で化合物II(B)と反応させて、化合物Iを得ることができる。
【0078】
スキーム3は、式Iの化合物を中間体I(C)から生成することのできる別の経路を図示するものである。スキーム3では、PG1がエチルカルバメート保護基であるとき、化合物I(C)のPG1を、クロロからヨードへの変換と同時に1ステップで除去する。これは通常、化合物I(C)を、非プロトン性溶媒中にて高温でTMSIによって、または室温で塩化水素によって処理することにより実行できる。典型的な反応条件は、化合物I(C)をCH3CN中にて5当量のTMSIと共に還流させることである。メタノールで失活させた後、化合物III(A)がHI塩として得られる。次いで、化合物III(A)のジヒドロピロロアミノ部分を、求核試薬として、求電子性のR1部分と反応させて、化合物III(B)を得る。この求核反応は、アシル化、および第二級アルキルアミンに適用可能な他の反応でよい。典型的なアシル化反応条件は、化合物III(A)を、TEAの存在下でR1イソシアネートまたはイソシアネート相当物部分と反応させて、化合物III(B)を尿素として得ることである。イソシアネート相当物の調製方法は、種々のアミンとのCDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)付加物を生成することである。次いでCDI付加物を、DMF中にてTEAの存在下、高温で化合物II(B)と反応させて、化合物Iを得ることができる。次いで化合物III(B)のヨード基を、クロスカップリング法を使用しながら三置換フェニル部分によって置換して、化合物Iを得る。この反応は通常、鈴木、スティル、根岸、または同様の条件を使用して実施することができる。化合物III(B)を化合物Iに変換する典型的なクロスカップリング反応では、水と1,4−ジオキサンなどの溶媒混合物中にて、炭酸ナトリウムなどの塩基およびPd(0)触媒の存在下、化合物III(B)をボロン酸またはボロン酸エステルで処理して、化合物Iを得ることになる。
【0079】
本発明の化合物は、不斉炭素原子を有する場合もある。本発明の化合物の炭素−炭素結合は、本明細書では、実線(
【0080】
【化13】
)、くさび形実線(
【0081】
【化14】
)、またはくさび形破線(
【0082】
【化15】
)を使用して表記することができる。不斉炭素原子への結合を表記するための実線の使用は、その炭素原子で考えられるすべての立体異性体(たとえば、特定の鏡像異性体、ラセミ混合物など)が含まれることを示すものである。不斉炭素原子への結合を表記するためのくさび形実線またはくさび形破線の使用は、示した立体異性体のみが含まれることを意味することを示すものとする。本発明の化合物が2個以上の不斉炭素原子を含んでいる場合も考えられる。そうした化合物において、不斉炭素原子への結合を示す実線の使用は、考えられるすべての立体異性体が含まれることを意味することを示すものである。たとえば、別段記述しない限り、本発明の化合物は、鏡像異性体およびジアステレオ異性体として、またはそのラセミ体および混合物として存在し得るものとする。本発明の化合物中の1個または複数の不斉炭素原子への結合を表記するための実線の使用、および同じ化合物中の他の不斉炭素原子への結合を表記するためのくさび形実線またはくさび形破線の使用は、ジアステレオ異性体の混合物が存在することを示すものとする。
【0083】
個々の鏡像異性体を調製/単離するための従来の技術としては、光学的に純粋な適切な前駆体からのキラル合成、または、たとえばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体の分割が挙げられる。別法として、ラセミ体(またはラセミ前駆体)を、光学活性のある適切な化合物、たとえばアルコールと、または、本発明の化合物が酸性もしくは塩基性部分を含んでいる場合、酒石酸や1−フェニルエチルアミンなどの酸もしくは塩基と反応させることもできる。得られるジアステレオ異性体混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶によって分離し、ジアステレオ異性体の一方または両方を、当業者によく知られている手段によって、対応する純粋な(1種または複数の)鏡像異性体に変換することができる。本発明のキラルな化合物(およびそのキラルな前駆体)は、0〜50%、典型的には2〜20%のイソプロパノール、および0〜5%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有する炭化水素、典型的にはヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を用いる不斉樹脂でのクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、鏡像異性体富化された形で得ることもできる。溶出液を濃縮すると、濃縮された混合物が得られる。立体異性体の集合体は、当業者に知られている従来の技術によって分離することができる。たとえば、その開示が全体として参照により本明細書に援用される、E.L.Elielによる「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley、ニューヨーク、1994)を参照されたい。
【0084】
本発明の化合物がアルケニル基またはアルケニレン基を含んでいる場合、幾何的なシス/トランス(またはZ/E)異性体が考えられる。シス/トランス異性体は、当業者によく知られている従来の技術、たとえば、クロマトグラフィーおよび分別結晶によって分離することができる。構造異性体が低いエネルギー障壁で相互変換可能な場合、互変異性体の異性(「互変異性」)が存在し得る。互変異性は、たとえばイミノ、ケト、またはオキシム基を含んでいる本発明の化合物ではプロトン互変異性、または芳香族部分を含んでいる化合物ではいわゆる原子価互変異性の形をとり得る。要するに、単一化合物が複数種の異性を示す場合もあるということである。本発明の範囲内には、複数種の異性を示す化合物を含めて、本発明の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体、および互変異性体形態、ならびにこれらの1種または複数の混合物が含まれる。
【0085】
本発明の塩は、当業者に知られている方法に従って調製することができる。塩の例として、限定はしないが、酢酸塩、アクリル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩(クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩など)、炭酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、ブチン−1,4−二酸塩、エデト酸カルシウム塩、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、二塩酸塩、リン酸二水素塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩、エチルコハク酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタリン酸塩、メタン−スルホン酸塩、メチル硫酸塩、リン酸一水素塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フタル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオル酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、次酢酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオドード(triethiodode)、および吉草酸塩が挙げられる。
【0086】
塩基性である本発明の化合物は、様々な無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。そのような塩は、動物への投与について薬学的に許容できるものでなければならないが、実際には、最初に本発明の化合物を反応混合物から薬学的に許容されない塩として単離し、次いでこれをアルカリ試薬での処理によって遊離塩基化合物に再び単純に変換し、引き続いてこの遊離塩基を薬学的に許容できる酸付加塩に変換することが望ましい場合が多い。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、塩基化合物を、水性溶媒またはメタノールやエタノールなどの適切な有機溶媒中にて、選択した実質的に等量の鉱酸または有機酸で処理することにより調製できる。溶媒を蒸発させると、所望の固体の塩が得られる。所望の酸の塩は、遊離塩基の有機溶媒溶液から、溶液に適切な鉱酸または有機酸を加えることにより沈殿させることもできる。
【0087】
酸性である本発明の化合物は、薬理学的に許容できる様々なカチオンと塩基塩を形成することができる。そのような塩の例として、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。こうした塩はすべて、従来の技術によって調製される。本発明の薬学的に許容できる塩基の塩を調製するために試薬として使用される化学塩基は、本発明の酸性化合物と非毒性の塩基塩を形成するものである。そのような非毒性の塩基塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの薬理学的に許容できるカチオンから得られる塩が含まれる。こうした塩は、任意の適切な方法、たとえば、遊離酸をアミン(第一級、第二級、または第三級)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの無機塩基または有機塩基で処理する方法によって調製することができる。適切な塩の例示的な例として、グリシンやアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級、および第三級アミン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンなどの環式アミンから得られる有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、およびリチウムから得られる無機塩が挙げられる。これらの塩は、対応する酸性化合物を、薬理学的に許容できる所望のカチオンを含有する水溶液で処理し、次いで、得られる溶液を、好ましくは減圧下で蒸発させて乾燥させることにより調製してもよい。別法として、酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドを混合し、次いで、得られる溶液を、前述と同じようにして蒸発乾燥させることにより調製してもよい。いずれの場合でも、確実に反応を完了させ、所望の最終生成物の収率を最大にするために、化学量論量の試薬を用いることが好ましい。
【0088】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容できる塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法、たとえば、遊離塩基を、無機酸、たとえば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで、または有機酸、たとえば、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸やガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸や酒石酸などのα−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸やケイ皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸やエタンスルホン酸などのスルホン酸などで処理する方法によって調製することができる。
【0089】
固体である化合物の場合において、本発明の化合物および塩が、種々の結晶もしくは多形形態で、または非晶質形態で存在してもよいことが当業者に理解され、そのすべてが本発明の範囲内にあるものとする。
【0090】
本発明は、1個または複数の原子が、原子番号は同じであるが原子質量または質量数が自然界で通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子と入れ替わっている、同位体標識された本発明の化合物も包含する。本発明の化合物に含めるのに適する同位体の例として、2Hや3Hなどの水素、11C、13C、14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、18Fなどのフッ素、123Iや125Iなどのヨウ素、13Nや15Nなどの窒素、15O、17O、18Oなどの酸素、32Pなどのリン、35Sなどの硫黄の同位体が挙げられる。特定の同位体標識された本発明の化合物、たとえば、放射性同位体が組み込まれている本発明の化合物は、薬物および/または基質の組織分布調査において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3H、およびカーボン14、すなわち14Cは、組み込みやすく、検出手段が迅速であることから、この目的のために特に有用である。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体での置換は、代謝安定性がより高いために生じる特定の治療上の利点、たとえば、in vivo半減期の延長または投与必要量の減少をもたらす場合もあり、したがって状況によっては好ましいこともある。11C、18F、15O、13Nなどの陽電子放射同位体での置換は、陽電子放射断層撮影(PET)調査において基質受容体占有率を調べるのに有用となり得る。
【0091】
同位体標識された本発明の化合物は一般に、当業者に知られている従来の技術によって、またはそうでない場合に用いられる標識されていない試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用する、本明細書に記載の手順と類似した手順によって調製することができる。
【0092】
本発明の化合物は、溶媒和していない形態および溶媒和した形態の両方で存在し得る。用語「溶媒和物」は、本明細書では、本発明の化合物と一定量の1種または複数の薬学的に許容できる溶媒分子とを含む分子複合体について述べるのに使用する。用語「水和物」は、前記溶媒が水であるときに用いる。溶媒和物形態の例として、限定はしないが、本発明の化合物が、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、またはこれらの混合物と会合したものが挙げられる。本発明では、水和物のように、1個の溶媒分子が1分子の本発明の化合物と会合し得ることを特に企図する。
【0093】
さらに、本発明では、二水和物のように、2個以上の溶媒分子が1分子の本発明の化合物と会合し得ることを特に企図する。加えて、本発明では、半水和物のように、1個未満の溶媒分子が1分子の本発明の化合物と会合し得ることも特に企図する。さらにまた、本発明の溶媒和物は、本発明の化合物の水和物でない形の生物学的有効性を保持している、該化合物の溶媒和物として企図される。
【0094】
本明細書に記載の化合物のプロドラッグも、本発明の範囲内である。すなわち、本発明の化合物の特定の誘導体は、それ自体は薬理活性をほとんどまたはまったくもたないこともあるが、体内または体表に投与されると、たとえば加水分解による切断によって、所望の活性を有する本発明の化合物に変換され得る。そのような誘導体を「プロドラッグ」と呼ぶ。プロドラッグの使用についてのこれ以上の情報は、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、第14巻、ACS Symposium Series(T.HiguchiおよびW.Stella)、および「Bioreversible Carriers in Drug Design」、Pergamon Press、1987(E.B.Roche編、American Pharmaceutical Association)で見ることができる。
【0095】
本発明によるプロドラッグは、たとえば、本発明の化合物中に存在する適切な官能基を、たとえば、H.Bundgaardによる「Design of Prodrugs」(Elsevier、1985)に記載のとおりに、当業者に「プロ部分」として知られている特定の部分と交換することにより生成することができる。
【0096】
本発明によるプロドラッグのいくつかの例として、以下のものが挙げられる。
(i)本発明の化合物がカルボン酸官能基(−COOH)を含んでいる場合、化合物のカルボン酸官能基の水素が(C1〜C8)アルキルと交換されて、対応するエステルを形成しているプロドラッグ化合物、
(ii)本発明の化合物がアルコール官能基(−OH)を含んでいる場合、化合物のアルコール官能基の水素が(C1〜C6)アルカノイルオキシメチルと交換されて、対応するエーテルを形成しているプロドラッグ化合物、および
(iii)本発明の化合物が第一級または第二級アミノ官能基(−NH2または−NHR(R≠H))を含んでいる場合、化合物Iのアミノ官能基の、場合により一方または両方の水素が(C1〜C10)アルカノイルと交換されて、対応するアミドを形成しているプロドラッグ化合物。
【0097】
前述の例による交換基の別の例および他のプロドラッグタイプの例は、上述の参照文献で見ることができる。さらに、本発明の特定の化合物は、それ自体が他の本発明の化合物のプロドラッグとして働く場合もある。
【0098】
本発明の範囲内には、本発明の化合物の代謝産物、すなわち、薬物が投与されるとin vivoで生成される化合物も含まれる。本発明による代謝産物のいくつかの例として、以下のものが挙げられる。
(i)本発明の化合物がメチル基を含んでいる場合、そのヒドロキシメチル誘導体(たとえば、−CH3→−CH2OH)、
(ii)本発明の化合物がアルコキシ基を含んでいる場合、そのヒドロキシ誘導体(たとえば、−OR→−OH)、
(iii)本発明の化合物が第三級アミノ基を含んでいる場合、その第二級アミノ誘導体(たとえば、−NR1R2→−NHR1または−NHR2)、
(iv)本発明の化合物が第二級アミノ基を含んでいる場合、その第一級誘導体(たとえば、−NHR1→−NH2)、
(v)本発明の化合物がフェニル部分を含んでいる場合、そのフェノール誘導体(たとえば、−Ph→−PhOH)、および
(vi)本発明の化合物がアミド基を含んでいる場合、そのカルボン酸誘導体(たとえば、−CONH2→COOH)。
【0099】
医薬としての使用を目的とした本発明の化合物は、結晶性もしくは非晶質の製品、またはその混合物として投与することができる。そうした本発明の化合物は、たとえば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾燥などの方法によって、固体充填物、粉末、またはフィルムとして得ることができる。マイクロ波乾燥または高周波乾燥をこの目的のために使用してもよい。
【0100】
化合物は、単独で、または1種または複数の他の本発明の化合物と組み合わせて、または1種または複数の他の薬物と組み合わせて(またはこれらの任意の組合せとして)投与することができる。一般に、化合物は、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤を伴って、製剤として投与される。用語「賦形剤」は、本明細書では、本発明の(1種または複数の)化合物以外の任意の成分について述べるのに使用する。賦形剤の選択は、特定の投与方式、賦形剤が溶解性および安定性に及ぼす影響、剤形の種類などの要素によるところが大きい。
【0101】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物およびその調製方法は、当業者には容易に明らかとなろう。そのような組成物およびその調製方法は、たとえば、その開示を全体として参照により本明細書に援用する、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版(Mack Publishing Company、1995)で見ることができる。
【0102】
経口投与
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下するものでもよいし、または化合物が口から直接血流に入る頬側もしくは舌下投与を用いてもよい。
【0103】
経口投与に適する製剤としては、固体製剤、たとえば、錠剤;微粒子、液体、または粉末を含有するカプセル剤;ロゼンジ(液体充填型を含める)、咀嚼剤、多粒子およびナノ粒子、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム(粘膜付着型を含める)、腔坐剤、スプレー、ならびに液体製剤が挙げられる。
【0104】
液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟または硬カプセルの充填剤として使用することができ、通常は、担体、たとえば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油と、1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤は、たとえばサシェから固体を再構成して調製することもできる。
【0105】
本発明の化合物は、その開示を全体として参照により本明細書に援用する、LiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986(2001)に記載のものなどの、急速溶解型、急速崩壊型の剤形にして使用することもできる。
【0106】
錠剤剤形では、薬物は、用量に応じて、剤形の1重量%〜80重量%、より典型的な例では剤形の5重量%〜60重量%を占めてよい。薬物に加えて、錠剤は一般に、崩壊剤も含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換されたヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を占める。
【0107】
結合剤は一般に、錠剤製剤に粘着性の性質を付与するのに使用する。適切な結合剤としては、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤も含有してよい。
【0108】
錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80などの界面活性剤、および二酸化ケイ素やタルクなどの滑剤も場合により含んでよい。存在するとき、界面活性剤の量は、錠剤の0.2重量%〜5重量%であり、滑剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%である。
【0109】
錠剤は一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤も含有する。滑沢剤は一般に、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%の量で存在する。
【0110】
他の従来の成分として、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤、および矯味剤が挙げられる。
【0111】
例となる錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%〜約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0112】
錠剤ブレンドを直接またはローラーによって圧縮して、錠剤を形成することができる。別法として、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を、湿式、乾式、もしくは溶融造粒、溶融凝固、または押出し成形の処理にかけた後に打錠することもできる。最終製剤は、1つまたは複数の層を含んでよく、コーティングされていてもされていなくてもよく、またはカプセル封入されていてもよい。
【0113】
錠剤の製剤については、その開示を全体として参照により本明細書に援用する、H.LiebermanおよびL.Lachmanによる「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1」、Marcel Dekker、ニューヨーク州ニューヨーク、1980(ISBN 0−8247−6918−X)に詳細に論述されている。
【0114】
経口投与用の固体製剤は、即時型および/または調節型の放出となるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0115】
適切な調節型放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散や浸透性粒子および被覆粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、Vermaら、Pharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14(2001)で見ることができる。制御放出を実現するためのチューインガムの使用は、WO00/35298に記載されている。これらの参照文献の開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0116】
非経口投与
本発明の化合物は、血流中、筋肉中、または内臓に直接投与することもできる。非経口投与に適する手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および皮下が挙げられる。非経口投与に適する装置としては、(微細針を含めた)針注射器、無針注射器、および注入技術が挙げられる。
【0117】
非経口製剤は通常、塩、炭水化物、(好ましくはpH3〜9にするための)緩衝剤などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、一部の適用例では、無菌の非水性溶液として、または発熱物質を含まない無菌水などの適切な媒体と共に使用される乾燥形態として、より適切に製剤することもできる。
【0118】
たとえば凍結乾燥法による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準の製薬技術を使用して容易に実現することができる。
【0119】
非経口溶液の調製で使用する本発明の化合物の溶解性は、溶解性改善剤を混ぜるなどの適切な製剤技術を使用して向上させることができる。
【0120】
非経口投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の調節型放出をもたらす移植デポー剤として投与するための固体、半固体、または揺変性液体として製剤することができる。そのような製剤の例として、薬物でコートしたステントおよびPGLAマイクロスフェアが挙げられる。
【0121】
局所投与
本発明の化合物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち皮膚投与または経皮投与することもできる。この目的のための典型的な製剤としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散粉剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウェーハ、植込錠、スポンジ、繊維、絆創膏、およびマイクロエマルジョンが挙げられる。リポソームを使用してもよい。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。浸透性改善剤を混ぜてもよい。たとえば、FinninおよびMorganによるJ Pharm Sci、88(10)、955〜958(1999年10月)を参照されたい。他の局所投与手段としては、電気穿孔、イオン導入法、音波泳動法、超音波導入法、ならびに微細針または無針(たとえばPowderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が挙げられる。これら参照文献の開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0122】
局所投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0123】
吸入投与/鼻腔内投与
本発明の化合物は、通常は(単独で、たとえばラクトースとの乾燥ブレンドにした混合物として、またはたとえばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合した混合成分粒子としての)乾燥粉末の形で乾燥粉末吸入器から、または1,1,1,2−テトラフルオロエタンや1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤を使用してもしくは使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、電気流体力学を使用して微細な霧を生成するアトマイザー)、もしくはネブライザーからエアロゾルスプレーとして、鼻腔内にまたは吸入によって投与することもできる。鼻腔内の使用では、粉末は、生体接着剤、たとえばキトサンまたはシクロデキストリンを含んでもよい。
【0124】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、たとえば、エタノール、エタノール水溶液、または活性物を分散させ、可溶化し、もしくはその放出を延長するのに適する別の物質と、溶媒としての(1種または複数の)噴射剤と、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、オリゴ乳酸などの任意選択の界面活性剤とを含む、(1種または複数の)本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0125】
乾燥粉末または懸濁液製剤にして使用する前に、薬物製品は、吸入による送達に適する大きさ(通常は5ミクロン未満)に微粉化する。これは、スパイラルジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を生成するための超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、噴霧乾燥などの任意の適切な粉砕法によって実現することができる。
【0126】
吸入器または注入器に入れて使用するカプセル(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製のもの)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物の混合粉末、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤、およびl−ロイシン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウムなどの性能改質剤を含有するように製剤することができる。ラクトースは、無水でも一水和物の形でもよいが、後者であることが好ましい。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが挙げられる。
【0127】
電気流体力学を使用して微細な霧を生成するアトマイザーでの使用に適する溶液製剤は、1回の作動あたり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有してよく、作動体積は1μL〜100μLと様々でよい。典型的な製剤は、本発明の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含むものでよい。プロピレングリコールの代わりに使用することのできる別の溶媒としては、グリセロールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0128】
メントールやl−メントールなどの適切な着香剤、またはサッカリンやサッカリンナトリウムなどの甘味剤を、吸入投与/鼻腔内投与を目的とする本発明の製剤に加えてもよい。
【0129】
吸入投与/鼻腔内投与用の製剤は、たとえば、DL−乳酸−グリコール酸共重合体(PGLA)を使用して、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0130】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合では、投与量単位は、計量された量を送達する弁によって決定される。本発明による単位は通常、所望の量の本発明の化合物を含有する計量された用量または「ひと吹き(puff)」を投与するように構成される。全体としての1日用量を、1回で、またはより一般には、1日かけて数回に分けて投与することができる。
【0131】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、たとえば坐剤、膣坐剤、または浣腸の形で、直腸または膣に投与することができる。カカオ脂が伝統的な坐剤基剤であるが、様々な代替品を適宜使用してもよい。
【0132】
直腸/経膣投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0133】
眼への投与
本発明の化合物は、通常はpH調整された等張性無菌食塩水中の微粒子化懸濁液または溶液の液滴の形で、眼または耳に直接に投与することもできる。眼および耳への投与に適する他の製剤としては、軟膏、生分解性(たとえば、吸収性のゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(たとえばケイ素樹脂)の植込錠、ウェーハ、レンズ、ならびにニオソームやリポソームなどの微粒子系またはベシクル系が挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸などのポリマー、セルロース系ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖体ポリマー、たとえばゲランガムを、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と共に組み込んでもよい。このような製剤は、イオン導入法によって送達することもできる。
【0134】
眼/耳への投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出が挙げられる。
【0135】
他の技術
本発明の化合物は、上述の投与方式のいずれかにおいて使用するため、その溶解性、溶解速度、矯味、バイオアベイラビリティ、および/または安定性を向上させるために、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体やポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性の高分子物質と組み合わせることができる。
【0136】
たとえば、薬物−シクロデキストリン複合体は、一般にほとんどの剤形および投与経路に有用であることがわかっている。包接複合体および非包接複合体の両方を使用することができる。薬物との直接の複合体形成に代わるものとして、シクロデキストリンを、補助添加剤として、すなわち担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することもできる。そうした目的で最も一般的に使用されるのは、α、βおよびγシクロデキストリンであり、その例は、PCT出願第WO91/11172号、第WO94/02518号、および第WO98/55148号で見ることができ、これらの開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0137】
活性化合物の投与量は、治療を受ける対象、障害または状態の重症度、投与速度、化合物の性質、および処方する医師の裁量に応じて決まることになる。しかし、有効な投与量は通常、単一用量または分割用量で、体重1kgあたり1日あたり約0.001〜約100mg、好ましくは約0.01〜約35mg/kg/日の範囲にある。70kgのヒトでは、これが約0.07〜約7000mg/日、好ましくは約0.7〜約2500mg/日の量になるはずである。場合によっては、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルで十分となる場合もあれば、有害な副作用を少しも引き起こすことなく、さらに多い用量を使用することができる場合もあり、そうしたより多い用量は通常、数回分の小用量に分割されて、1日かけて投与される。
【0138】
本発明はまた、哺乳動物において異常細胞成長を治療する方法であって、前記哺乳動物に、異常細胞成長の治療に有効な量の本発明の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、挿入用抗生物質(intercalating antibiotic)、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗体、細胞傷害剤、抗ホルモン薬、および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される抗腫瘍薬と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0139】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物および本明細書に記載の医薬組成物と共に使用する抗腫瘍薬は、抗血管新生薬、キナーゼ阻害剤、汎キナーゼ阻害剤(pan kinase inhibitor)、または成長因子阻害剤である。好ましい汎キナーゼ阻害剤としては、米国特許第6,573,293号(Pfizer,Inc.、米国ニューヨーク州)に記載のSutent(商標)(スニチニブ)が挙げられる。抗血管新生薬としては、限定はしないが、以下の薬剤、EGF阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤、およびMMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤などが挙げられる。
【0140】
好ましいVEGF阻害剤としては、たとえば、Genentech,Inc.(カリフォルニア州South San Francisco)の抗VEGFモノクローナル抗体であるAvastin(ベバシズマブ)が挙げられる。その他のVEGF阻害剤として、CP−547,632(Pfizer Inc.、米国ニューヨーク州)、AG13736(Pfizer Inc.)、ZD−6474(AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD−2171、VEGF Trap(Regeneron/Aventis)、バタラニブ(PTK−787、ZK−222584としても知られる:Novartis&Schering AG)、Macugen(ペガプタニブオクタナトリウム、NX−1838、EYE−001、Pfizer Inc./Gilead/Eyetech)、IM862(Cytran Inc.、米国ワシントン州カークランド)、Ribozyme(コロラド州ボールダー)およびChiron(カリフォルニア州Emeryville)の合成リボザイムであるアンジオザイム(angiozyme)、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0141】
本発明を実施する際に有用なVEGF阻害剤は、米国特許第6,534,524号および第6,235,764号に記載されており、両特許をすべての目的のために全体として本明細書に援用する。その他のVEGF阻害剤は、たとえば、WO99/24440、WO95/21613、WO99/61422、米国特許第5,834,504号、WO98/50356、米国特許第5,883,113号、米国特許第5,886,020号、米国特許第5,792,783号、米国特許第6,653,308号、WO99/10349、WO97/32856、WO97/22596、WO98/54093、WO98/02438、WO99/16755、およびWO98/02437に記載されており、これらすべてを全体として参照により本明細書に援用する。
【0142】
他の抗血管新生化合物としては、アシトレチン、フェンレチニド、サリドマイド、ゾレドロン酸、アンジオスタチン、アプリジン、シレングチド(cilengtide)、コンブレタスタチンA−4、エンドスタチン、ハロフジノン、レビマスタット(rebimastat)、レモバブ(removab)、Revlimid、スクアラミン、ウクライン、Vitaxin、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0143】
本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる他の増殖抑制剤として、米国特許第6,080,769号、米国特許第6,194,438号、米国特許第6,258,824号、米国特許第6,586447号、米国特許第6,071,935号、米国特許第6,495,564号、および米国特許第6,150,377号、米国特許第6,596,735号、米国特許第6,479,513号、WO01/40217、米国出願第2003−0166675号において開示され、特許請求されている化合物を含めて、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤および受容体チロシンキナーゼPDGFrの阻害剤が挙げられる。前述の特許および特許出願はそれぞれ、全体として参照により本明細書に援用される。
【0144】
PDGRr阻害剤としては、限定はしないが、国際特許出願公開第WO01/40217号および第WO2004/020431号で開示されているものが挙げられ、これら特許文献の内容は、すべての目的のために全体として本明細書に援用される。好ましいPDGFr阻害剤として、PfizerのCP−673,451ならびにCP−868,596およびその塩が挙げられる。
【0145】
好ましいGARF阻害剤として、PfizerのAG−2037(ペリトレキソールおよびその塩)が挙げられる。本発明を実施する際に有用なGARF阻害剤は、米国特許第5,608,082号で開示されており、この特許文献を、すべての目的のために全体として本明細書に援用する。
【0146】
本明細書に記載の式(I)の化合物および医薬組成物と共に使用することのできる有用なCOX−II阻害剤の例としては、CELEBREX(商標)(セレコキシブ)、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、MK−663(エトリコキシブ)、COX−189(ルミラコキシブ)、BMS347070、RS57067、NS−398、Bextra(バルデコキシブ)、パラコキシブ(paracoxib)、Vioxx(ロフェコキシブ)、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3、SC−58125、およびArcoxia(エトリコキシブ)が挙げられる。さらに、COX−II阻害剤は、米国特許出願US2005−0148627およびUS2005−0148777にも記載されており、これら特許文献の内容を、すべての目的のために全体として本明細書に援用する。
【0147】
特定の実施形態では、抗腫瘍薬は、セレコキシブ(米国特許第5,466,823号)、バルデコキシブ(米国特許第5,633,272号)、パレコキシブ(米国特許第5,932,598号)、デラコキシブ(米国特許第5,521,207号)、SD−8381(米国特許第6,034,256号、実施例175)、ABT−963(WO2002/24719)、ロフェコキシブ(CAS番号162011−90−7)、WO1998/03484に記載のMK−663(またはエトリコキシブ)、WO1999/11605に記載のCOX−189(ルミラコキシブ)、BMS−347070(米国特許第6,180,651号)、NS−398(CAS123653−11−2)、RS57067(CAS17932−91−3)、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、またはメロキシカムである。
【0148】
本発明の化合物および本明細書で開示する医薬組成物と組み合わせて使用する抗腫瘍薬としての他の有用な阻害剤として、アスピリン、ならびに限定はしないが以下のもの、すなわち、サルサラート(Amigesic)、ジフルニサル(Dolobid)、イブプロフェン(Motrin)、ケトプロフェン(Orudis)、ナブメトン(Relafen)、ピロキシカム(Feldene)、ナプロキセン(Aleve、Naprosyn)、ジクロフェナク(Voltaren)、インドメタシン(Indocin)、スリンダク(Clinoril)、トルメチン(Tolectin)、エトドラク(Lodine)、ケトロラク(Toradol)、オキサプロジン(Daypro)、およびこれらの組合せを含めた、プロスタグランジンを生成する酵素(シクロオキシゲナーゼIおよびII)を阻害して、プロスタグランジンのレベルを低下させる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。
【0149】
好ましいCOX−I阻害剤として、イブプロフェン(Motrin)、ニュープリン(nuprin)、ナプロキセン(Aleve)、インドメタシン(Indocin)、ナブメトン(Relafen)、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0150】
本発明の化合物および本明細書で開示する医薬組成物と組み合わせて使用する標的薬としては、EGFr阻害剤、たとえば、Iressa(ゲフィチニブ、AstraZeneca)、Tarceva(エルロチニブまたはOSI−774、OSI Pharmaceuticals Inc.)、Erbitux(セツキシマブ、Imclone Pharmaceuticals、Inc.)、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.およびAbgenix Inc.)、HR3(キューバ政府)、IgA抗体(University of Erlangen−Nuremberg)、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGFワクチン、抗EGFrイムノリポソーム(Hermes Biosciences Inc.)、およびこれらの組合せが挙げられる。好ましいEGFr阻害剤として、Iressa、Erbitux、Tarceva、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0151】
他の抗腫瘍薬としては、pan erb受容体阻害剤またはErbB2受容体阻害剤、たとえば、CP−724,714(Pfizer,Inc.)、CI−1033(カネルチニブ、Pfizer,Inc.)、Herceptin(トラスツズマブ、Genentech Inc.)、Omitarg(2C4、ペルツズマブ、Genentech Inc.)、TAK−165(武田)、GW−572016(ロナファーニブ、GlaxoSmithKline)、GW−282974(GlaxoSmithKline)、EKB−569(Wyeth)、PKI−166(Novartis)、dHER2(HER2ワクチン、CorixaおよびGlaxoSmithKline)、APC8024(HER2ワクチン、Dendreon)、抗HER2/neu二重特異性抗体(Decof Cancer Center)、B7.her2.IgG3(Agensys)、AS HER2(Research Institute for Rad Biology&Medicine)、三官能性二重特異性抗体(University of Munich)、mAB AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc)およびmAB 2B−1(Chiron)、ならびにこれらの組合せから選択されるものが挙げられる。
【0152】
好ましいerb選択的抗腫瘍薬として、Herceptin、TAK−165、CP−724,714、ABX−EGF、HER3、およびこれらの組合せが挙げられる。好ましいpan erbb受容体阻害剤として、GW572016、CI−1033、EKB−569、Omitarg、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0153】
その他のerbB2阻害剤として、WO98/02434、WO99/35146、WO99/35132、WO98/02437、WO97/13760、WO95/19970、米国特許第5,587,458号、および米国特許第5,877,305号に記載のものが挙げられ、これら特許文献をそれぞれ、全体として参照により本明細書に援用する。本発明において有用なErbB2受容体阻害剤は、米国特許第6,465,449号および第6,284,764号ならびにWO2001/98277でも開示されており、これら特許文献をそれぞれ、全体として参照により本明細書に援用する。
【0154】
さらに、以下の薬剤、BAY−43−9006(Onyx Pharmaceuticals Inc.)、Genasense(アウグメロセン(augmerosen)、Genta)、パニツムマブ(Abgenix/Amgen)、Zevalin(Schering)、Bexxar(Corixa/GlaxoSmithKline)、Abarelix、Alimta、EPO906(Novartis)、ディスコデルモリド(XAA−296)、ABT−510(Abbott)、Neovastat(Aeterna)、エンザスタウリン(Eli Lilly)、コンブレスタチンA4P(Combrestatin A4P)(Oxigene)、ZD−6126(AstraZeneca)、フラボピリドール(Aventis)、CYC−202(Cyclacel)、AVE−8062(Aventis)、DMXAA(Roche/Antisoma)、Thymitaq(Eximias)、Temodar(テモゾロミド、Schering Plough)、およびRevilimd(Celegene)、ならびにこれらの組合せから、他の抗腫瘍薬を選択することもできる。
【0155】
他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、CyPat(酢酸シプロテロン)、Histerelin(酢酸ヒストレリン)、Plenaixis(アバレリックスデポー)、アトラセンタン(ABT−627)、サトラプラチン(JM−216)、Thalomid(サリドマイド)、Theratope、テミリフェン(temilifene)(DPPE)、ABI−007(パクリタキセル)、Evista(ラロキシフェン)、アタメスタン(Biomed−777)、Xyotax(ポリグルタメート化パクリタキセル)、Targetin(ベキサロチン(bexarotine))、およびこれらの組合せから選択してもよい。
【0156】
さらに、以下の薬剤、Trizaone(チラパザミン)、Aposyn(エキシスリンド)、Nevastat(AE−941)、Ceplene(ヒスタミン二塩酸塩)、Orathecin(ルビテカン)、Virulizin、Gastrimmune(G17DT)、DX−8951f(メシル酸エキサテカン)、Onconase(ランプリナーゼ(ranpirnase))、BEC2(ミツモアブ(mitumoab))、Xcytrin(モテクサフィンガドリニウム)、およびこれらの組合せから他の抗腫瘍薬を選択することもできる。
【0157】
以下の薬剤、CeaVac(CEA)、NeuTrexin(グルクロン酸トリメトレサート(trimetresate glucuronate))、およびこれらの組合せから、別の抗腫瘍薬を選択することもできる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、OvaRex(オレゴボマブ)、Osidem(IDM−1)、およびこれらの組合せから選択することができる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、Advexin(ING 201)、Tirazone(チラパザミン)、およびこれらの組合せから選択することもできる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、RSR13(エファプロキシラル)、Cotara(131I chTNT 1/b)、NBI−3001(IL−4)、およびこれらの組合せから選択することもできる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、Canvaxin、GMKワクチン、PEG Interon A、Taxoprexin(DHA/パシルタキセル(paciltaxel))、およびこれらの組合せから選択することもできる。
【0158】
他の抗腫瘍薬として、PfizerのMEK1/2阻害剤PD325901、Array BiopharmのMEK阻害剤ARRY−142886、Bristol MyersのCDK2阻害剤BMS−387,032、PfizerのCDK阻害剤PD0332991、およびAstraZenecaのAXD−5438、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0159】
さらに、CCI−779(Wyeth)やラパマイシン誘導体のRAD001(Novartis)およびAP−23573(Ariad)などのmTOR阻害剤、HDAC阻害剤、SAHA(Merck Inc./Aton Pharmaceuticals)、ならびにこれらの組合せも利用することができる。その他の抗腫瘍薬として、オーロラ2阻害剤VX−680(Vertex)、およびChk1/2阻害剤XL844(Exilixis)が挙げられる。
【0160】
以下の細胞傷害剤、たとえば、エピルビシン(Ellence)、ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル、Zinecard(デクスラゾキサン)、リツキシマブ(Rituxan)、メシル酸イマチニブ(Gleevec)、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数を、本発明の化合物および本明細書で開示する医薬組成物と組み合わせて使用することもできる。
【0161】
本発明は、限定はしないが、エキセメスタン(Aromasin、Pfizer Inc.)、リュープロレリン(LupronまたはLeuplin、TAP/Abbott/Takeda)、アナストロゾール(Arimidex、Astrazeneca)、ゴスレリン(gosrelin)(Zoladex、AstraZeneca)、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、ホルメスタン、クエン酸タモキシフェン(タモキシフェン、Nolvadex、AstraZeneca)、Casodex(AstraZeneca)、Abarelix(Praecis)、Trelstar、およびこれらの組合せを含めたホルモン療法と同時の本発明の化合物の使用も企図する。
【0162】
本発明はまた、限定はしないが、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール(Femara、Novartis)を含めた抗エストロゲン薬、ビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、Casodex(商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド、ビカルタミド)などの抗アンドロゲン薬、およびこれらの組合せなどのホルモン療法剤と同時の本発明の化合物の使用に関する。
【0163】
さらに、本発明は、本発明の化合物を、単独で、または1種または複数の支持療法製品、たとえば、フィルグラスチム(Neupogen)、オンダンセトロン(Zofran)、Fragmin、Procrit、Aloxi、Emend、またはこれらの組合せからなる群から選択される製品と組み合わせて提供する。
【0164】
特に好ましい細胞傷害剤としては、Camptosar、Erbitux、Iressa、Gleevec、Taxotere、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0165】
以下のトポイソメラーゼI阻害剤、すなわち、カンプトテシン、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、オラセシン(Supergen)、エキサテカン(第一)、BN−80915(Roche)、およびこれらの組合せを、抗腫瘍薬として利用することもできる。特に好ましいトポイソメラーゼII阻害剤としては、エピルビシン(Ellence)が挙げられる。
【0166】
アルキル化剤としては、限定はしないが、窒素マスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロミド、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルフォスファミド、イホスファミド、KW−2170、マホスファミド、およびミトラクトールが挙げられ、白金錯体アルキル化化合物としては、限定はしないが、シスプラチン、Paraplatin(カルボプラチン)、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、Eloxatin(オキサリプラチン、Sanofi)、またはサトラプラチン(satrplatin)、およびこれらの組合せが挙げられる。特に好ましいアルキル化剤として、Eloxatin(オキサリプラチン)が挙げられる。
【0167】
代謝拮抗薬としては、限定はしないが、メトトレキサート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、単独もしくはロイコボリンと組み合わせた5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、S−1、Alimta(ぺメトレキセド二ナトリウム、LY231514、MTA)、Gemzar(ゲムシタビン、Eli Lilly)、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキセド(nolatrexed)、オクホスファート、二ナトリウムプレメトレキセド、ペントスタチン、ペリトレキソール(pelitrexol)、ラルチトレキセド、トリアピン(triapine)、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチン、ビノレルビン、またはたとえば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸などの、欧州特許出願第239362号に記載の好ましい代謝拮抗薬のうちの1種、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0168】
抗生物質としては、挿入用抗生物質が挙げられ、限定はしないが、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アンナマイシン(annamycin)、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エピルビシン、ガラルビシン(galarubicin)、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン(nemorubicin)、ネオカルチノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0169】
植物由来の抗腫瘍物質としては、たとえば、有糸分裂阻害剤、たとえば、ビンブラスチン、ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル、およびこれらの組合せから選択されるものが挙げられる。
【0170】
細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害剤としては、アクラルビシン、アモノアフィド(amonafide)、ベロテカン(belotecan)、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ジフロモテカン(diflomotecan)、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、エピルビシン(Ellence)、エトポシド、エキサテカン、ギマテカン(gimatecan)、ルルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシド(tafluposide)、トポテカン、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数の薬剤が挙げられる。
【0171】
好ましい細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害剤として、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、エピルビシン(Ellence)、エトポシド、SN−38、トポテカン、およびこれらの組合せらなる群から選択される1種または複数の薬剤が挙げられる。
【0172】
免疫剤としては、インターフェロンおよび他の数多くの免疫強化薬が挙げられる。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ1a、インターフェロンγ1b(Actimmune)、またはインターフェロンγn1、およびこれらの組合せが含まれる。他の薬剤には、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、TheraCys、ウベニメクス、WF−10、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、メラノーマワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、OncoVAX−CL、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin)、チマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、Virulizin、Z−100、エピラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)(Y−muHMFG1)、Provenge(Dendreon)、およびこれらの組合せが含まれる。
【0173】
生体応答修飾物質は、組織細胞の生存、成長、または分化などの、生物の防御機構または生体応答を修飾して、抗腫瘍活性をもたせる作用物質である。このような物質として、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、Picibanil、ウベニメクス、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0174】
本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる他の抗癌剤としては、アリトレチノイン、アムプリゲン(ampligen)、アトラセンタンベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エキシスリンド、フィナステリド、ホテムスチン、イバンドロン酸、ミルテホシン、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペグアスパラガーゼ、ペントスタチン、タザロトン(tazarotne)、Telcyta(TLK−286、Telik Inc.)、Velcade(ボルテマジブ(bortemazib)、Millenium)、トレチノイン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0175】
白金錯体化合物には、限定はしないが、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0176】
カンプトテシン誘導体には、限定はしないが、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、イリノテカン、SN−38、エドテカリン、トポテカン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0177】
他の抗腫瘍薬には、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、トレチノイン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0178】
CTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原4)抗体などの、抗腫瘍免疫応答を強化することのできる抗腫瘍薬、およびCTLA4をブロックすることのできる他の薬剤、たとえば、MDX−010(Medarex)、および米国特許第6,682,736号で開示されているCTLA4化合物;ならびに他のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、たとえば、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤などの増殖抑制剤を利用してもよい。さらに、本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる特異的CTLA4抗体として、米国特許第6,682,736号および第6,682,736号で開示されているものが挙げられ、これら両方の特許文献を全体として参照により本明細書に援用する。
【0179】
本発明の組合せ法で使用することのできる特異的IGF1R抗体としては、WO2002/053596で開示されているものが挙げられ、この特許文献を全体として参照により本明細書に援用する。
【0180】
本発明で使用することのできる特異的CD40抗体としては、WO2003/040170で開示されているものが挙げられ、この特許文献を全体として参照により本明細書に援用する。
【0181】
放射線療法に応答してTNFαを発現するTNFerade(GeneVec)などの遺伝子療法薬も、抗腫瘍薬として用いることができる。
【0182】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物およびその医薬組成物と組み合わせてスタチンを使用してもよい。スタチン(HMG−CoAレダクターゼ阻害剤)は、アトルバスタチン(Lipitor(商標)、Pfizer Inc.)、プロバスタチン(provastatin)(Pravachol(商標)、Bristol−Myers Squibb)、ロバスタチン(Mevacor(商標)、Merck Inc.)、シンバスタチン(Zocor(商標)、Merck Inc.)、フルバスタチン(Lescol(商標)、Novartis)、セリバスタチン(Baycol(商標)、Bayer)、ロスバスタチン(Crestor(商標)、AstraZeneca)、ロボスタチン(lovostatin)とナイアシン(Advicor(商標)、Kos Pharmaceuticals)、これらの誘導体および組合せからなる群から選択されるものでよい。
【0183】
好ましい実施形態では、スタチンは、アトルバスタチンおよびロバスタチン、これらの誘導体および組合せからなる群から選択される。抗腫瘍薬として有用な他の薬剤として、Caduetが挙げられる。
【0184】
たとえば特定の疾患または状態を治療する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合もあるので、その少なくとも1種が本発明による化合物を含有する2種以上の医薬組成物を、組成物の共投与に適するキットの形で好都合に組み合わせてもよいことは、本発明の範囲内である。したがって、本発明のキットは、その少なくとも1種が本発明の化合物を含有する2種以上の別個の医薬組成物と、容器、分割されたボトル、または分割されたホイル製袋などの、前記組成物を別々に保持する手段とを含む。このようなキットの例は、錠剤、カプセル剤などの包装に使用されるよく知られたブリスターパックである。
【0185】
本発明のキットは、たとえば経口用と非経口用の、異なる剤形を投与する、別個の組成物を異なる投与間隔で投与する、または組成物の用量を互いに用量設定するのに特に適する。服薬遵守を援助するために、キットは、通常は投与の説明書を含み、記憶補助を備えていてもよい。
【実施例】
【0186】
以下の実施例において、単一のキラル中心を有する分子は、別段の指摘または構造式もしくは化学名による表記がない限り、ラセミ混合物として存在する。2つ以上のキラル中心を有する分子は、別段の指摘または構造式もしくは化学名による表記がない限り、ジアステレオ異性体のラセミ混合物として存在する。単一の鏡像異性体/ジアステレオ異性体は、当業者に知られている方法によって得ることができる。
【0187】
1H−NMRスペクトルは、300MHzまたは400MHzで作動させたBruker製機器で記録し、13C−NMRスペクトルは、75MHzで作動させて記録した。
【0188】
本明細書では、以下の略語を使用する場合がある:Et2O(ジエチルエーテル)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、THF(テトラヒドロフラン)、DCM(ジクロロ−メタン)、DMA(ジメチルアセタール)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、LiHMDSまたはLHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、TBME(tert−ブチルメチルエーテル)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、DMSOまたはdmso(ジメチルスルホキシド)、MeOH(メタノール)、EtOH(エタノール)、BuOH(ブタノール)、EtOAc(酢酸エチル)、THF(テトラヒドロフラン)、Ac(アセチル)、Me(メチル)、Et(エチル)、Ph(フェニル)、TMSI(トリメチルシリルヨージド)、DSC(N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート)、CDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)、Boc(tert−ブトキシカルボニル)、nBuLi(n−ブチルリチウム)、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)、HOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)、DME(1,2−ジメトキシエタン)、Pd(dba)2(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0))、およびRTまたはrt(室温)。
【0189】
(実施例1)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物1a(51mg、0.11mmol)のDMF(2mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(20mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物1(23mg、0.043mmol)が白色の固体として収率39%で得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.94 (s, 6 H), 2.35 (s, 1 H), 3.72 (d,
J=13.14 Hz, 1 H), 3.96 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 4.27 - 4.33 (m, 2 H), 4.33 - 4.48
(m, 4 H), 6.78 (s, 2 H), 6.90 (s, 1 H), 7.28 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.35 (d,
J=1.52 Hz, 1 H), 7.36 (s, 1 H), 7.49 (s, 1 H). LCMS (M+H)+
535.
元素分析:C23H22Cl3N7O2・1 H2Oの計算値: C, 49.97; H, 4.38; N, 17.73. 実測値: C, 50.36; H, 4.23; N, 17.40.
【0190】
【化16】
【0191】
化合物1a:4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン
化合物1c(55.7mg、0.11mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、塩化水素(0.5mL、2mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物1aを淡黄色の固体として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物1の合成に使用した。
【0192】
【化17】
【0193】
化合物1b:イミダゾール−1−カルボン酸ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イルアミド
ビシクロ[1.1.1]−ペンタン−1−アミン塩酸塩(19mg、0.16mmol)および1、1’−カルボニルジイミダゾール(32mg、0.192mmol)をDMF(2mL)に溶かした溶液に、トリエチルアミン(0.1mL、0.5mmol)を加えた(透明な溶液が懸濁液になった)。化合物1bの単離をそれ以上行わずに、この懸濁液を化合物1の合成に使用した。
【0194】
化合物1c:2−アミノ−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物1d(98mg、0.25mmol)のDMF(2mL)溶液に、炭酸カリウム(100mg、0.7mmol)および化合物1e(120mg、0.5mmol)を順次加えた。混合物を120℃で40分間マイクロ波装置にかけた。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加えて、撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 50→60%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物1c(62.7mg、収率48.3%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.38 - 1.48 (m, 9 H), 3.63 (t, J=13.89
Hz, 1 H), 3.91 (dd, J=24.00, 13.39 Hz, 1 H), 4.28 - 4.34 (m, 2 H), 4.40 (d,
J=3.54 Hz, 4 H), 6.81 (br. s., 2 H), 7.27 (s, 1 H), 7.32 - 7.34 (m, 1 H), 7.39
(s, 1 H), 7.55 (s, 1 H). LCMS (M+H)+ 527.
【0195】
【化18】
【0196】
化合物1d:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物1g(770mg、3.7mmol)および化合物1f(1000mg、2.7mmol)を1,4−ジオキサン(45mL)に混ぜた混合物に、炭酸ナトリウム(1.2g、11mmol)の入った5.6mLのH2Oを加えた。混合物を窒素で数回パージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(270mg)を加えた。反応混合物および得られる溶液を12時間80℃に加熱した。反応混合物に水(50mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 30→40%のEtOAcヘキサン)溶液によって精製して、化合物1d(590mg、収率40%)を淡褐色の泡沫として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.37 - 1.47 (m, J=12.88 Hz, 9 H), 4.07
- 4.24 (m, 2 H), 4.42 (d, J=7.58 Hz, 2 H), 6.82 (s, 2 H), 6.95 (d, J=1.77 Hz, 1
H), 7.08 - 7.21 (m, 1 H), 10.67 (s, 1 H). LCMS (M+H)+
398. 元素分析:C17H18Cl2N4O3・0.5 CH2Cl2の計算値: C, 49.80; H, 4.36; N, 12.74. 実測値: C, 47.41; H, 4.46; N, 12.71.
【0197】
【化19】
【0198】
化合物1e:メタンスルホン酸2−(4−クロロ−ピラゾール−1−イル)−エチルエステル
4−クロロピラゾール(342mg、3.3mmol)のDMF(10mL)溶液に、N2中で水素化ナトリウム(136mg、3.4mmol、60%鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。反応液をシリンジで、メタンスルホン酸2−ブロモ−エチルエステル(820mg、4mmol、以下の文献手順に従って調製、J.Med.Chem.1983、26(8)、p1168)中に移した。混合物を70℃で3時間撹拌した。混合物に水(30mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 20→30%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物1e(59mg、収率8%)を褐色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 2.89 (s, 3 H), 4.38 - 4.43 (m, 2 H),
4.55 - 4.61 (m, 2 H), 7.49 (s, 1 H), 7.49 (s, 1 H).
【0199】
化合物1f:2−アミノ−4−ヨード−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
エチル2−アミノ−4−クロロ−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキシレート(化合物I(C)、PG1はEtOC(O)−であり、XはClである)(30.6g、126mmol、1.0当量)を750mLのアセトニトリルに懸濁させた懸濁液に、ヨードトリメチルシラン(100mL、703mmol、5.6当量)を加え、得られる反応混合物を4時間加熱還流した。周囲温度に冷却した後、反応混合物をMeOH(27mL)で失活させ、真空中で濃縮して乾燥させた。トルエン(150mL)との同時蒸発によって微量MeOHを除去した。得られる残渣をEt2O(200mL)で処理し、沈殿を濾過し、Et2Oで洗浄した。次いで、未精製の褐色粉末を、還流状態にあるEtOAc(250mL)中で撹拌し、周囲温度に冷却し、固体を濾過によって収集し、酢酸エチルで洗浄して、所望の生成物を褐色の粉末(52.2g、約79%)として得た。この材料をそれ以上精製せずに次のステップの反応に使用した。1H NMR (300 MHz, DMSO-D6) δ ppm 9.47 (br s, 2H), 4.37 (s, 2H), 4.25
(s, 2H). LCMS (M+H)+: 263.2.
【0200】
上記褐色粉末(52.2g、約100mmol)をジオキサン(150mL)および水(150mL)に溶解させた。さらに、ジイソプロピルエチルアミン(69.7mL、400mmol)およびBoc2O(43.6g、200mmol)を加え、混合物を45℃に温めた。混合物を周囲温度で撹拌した後、さらに1.5時間NMRにかけた。生成物をEtOAc(3.0L)および飽和NaHCO3(水溶液)(1.0L)中に注ぎ、層を分離し、水層をEtOAc(1.0L)でもう一度洗浄した。有機層を合わせて乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空中で濃縮した。EtOAc(3L)を溶離液として使用しながら、生成物をシリカで濾過したが、生成物は完全に純粋ではなかった。EtOAc(2L)を使用しながらシリカプラグで濾過すると、化合物1f(8g、22%)が黄褐色の固体として得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm 1.44 (d, J=4.80 Hz, 9 H), 4.25 (d,
J=13.14 Hz, 2 H), 4.42 (d, J=8.34 Hz, 2 H), 7.06 (s, 2 H). LCMS (M+H)+:
348.2.
【0201】
【化20】
【0202】
化合物I(C)の調製:
【0203】
【化21】
ステップ1.エチルN−(エトキシカルボニル)−β−アラニネート(c)
アクリル酸エチル(a)(50mL、460mmol、1.1当量)、グリシンエチルエステル塩酸塩(b)(58.4g、418mmol、1当量)、およびトリエチルアミン(58.3mL、418mmol、1当量)の入った無水EtOH(960mL)を周囲温度で約72時間撹拌した。反応が完了した後、真空中で揮発性物質成分を除去し、未精製の中間体(c)をそのまま続けて使用した。
【0204】
ステップ2.エチルN−(エトキシカルボニル)−N−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−β−アラニネート(e)
未精製中間体(c)(418mmol)をCH2Cl2(275mL)に溶解させ、トリエチルアミン(58.3mL、418mmol)を加えた後、クロロギ酸エチル(d)(39.8mL、418mmol)を加えた。反応液を周囲温度で約24時間撹拌した。反応が完了した後、真空中で揮発性物質成分を除去した。次いで粗生成物を真空中(約5mmHg)で蒸留し、EtOAcに溶解させ、それを飽和KHSO4で3回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。濾過した後、真空中で揮発性物質成分を除去して、中間体(e)を透明な油状物(74.8g、272mmol)として、2ステップで65%の収率で得た。
【0205】
ステップ3.ジエチル4−オキソピロリジン−1,3−ジカルボキシレート(f)
氷浴で冷却したNaOEt(32.6mL)の無水EtOH(41.7mL)溶液(EtOH中21重量%)に、窒素雰囲気中で中間体(e)(18.0g、65.2mmol)を加えた。氷浴を取り外し、TLCによる観察で縮合が完了するまで、混合物を80℃で約12時間加熱した。混合物を氷/水上に注ぎ、EtOAcで抽出した。溶媒をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発して、未精製中間体(f)をオフホワイトの固体(14.05g)として得、これを精製せずに続けて使用した。
【0206】
ステップ4.エチル2−アミノ−4−ヒドロキシ−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキシレート(h)
中間体(f)(14.05g)および炭酸グアニジン(g)(16.6g、91.9mmol)の懸濁液をt−ブタノール(147mL)中で約6時間還流させた。混合物を約2時間かけて周囲温度に冷ました。真空中で揮発性物質成分を除去し、水を加えた。KHSO4を使用してpHを約6〜7に調整した。得られるスラリーを濾過して固体を収集し、これを水で洗浄した後、EtOAcで洗浄した。固体を真空乾燥して、中間体(h)をクリーム色の固体(11.9g、53.1mmol)として収率87%で得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm 11.01 (s, 1H), 6.97 (s, 0.5H, 互変異性体の可能性), 6.70 (s, 2H), 4.25 (s, 4H), 4.13-4.03
(m, 2H), 1.22 (t, 3H). LCMS (M+H)+: 225.2.
【0207】
ステップ5.エチル2−アミノ−4−クロロ−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキシレートI(C)
中間体(h)(11g、49mmol)を2回トルエンと共沸させた。無水アセトニトリル(250mL)およびPOCl3(25mL、270mmol)を加え、混合物を約2.5時間還流させた。追加のPOCl3(50mL)を加え、混合物をさらに2時間還流させた。揮発性物質成分を真空中にて40℃で濃縮して、赤色の溶液を得た。溶液の移し換えが容易になるまで最小量の無水アセトニトリルを加え、その後これを大型ビーカー中の氷上に注いだ。フラスコを少量のアセトニトリルでさらにすすぎ、これを氷に加えた。氷混合物に水(約50mL)を加えて、撹拌を容易にした。氷スラリー混合物が強塩基性になるまで、濃NH4OH(25mL)を撹拌しながらゆっくりと加え、次いで、まだ撹拌している氷のスラリーに50%NaOH水溶液(25mL)も加えた。氷をさらに加えた。氷スラリーとして約5分間撹拌した後、EtOAcを加えた。ビーカーでさらに数分撹拌した後、水を加えて氷の融解を促進した。混合物を分液漏斗に注ぎ、層を分配した。水層をEtOAcで3回抽出した。EtOAc抽出物を合わせて飽和したKHSO4水溶液で2回、飽和NaHCO3水溶液で2回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、淡いピンク色の粉末を得、これを酢酸エチルでトリチュレートして、化合物I(C)を淡いピンク色の固体(6.8g、28mmol)として収率57%で得た。HPLC/LCMS純度は、90%より高かった。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm 7.20 (s, 2H), 4.48 (s, 2H), 4.45 (s,
2H), 4.17-4.08 (m, 2H), 1.24 (t, 3H). LCMS (M+H)+: 243.2, 245.2.
【0208】
化合物1gの調製:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシフェニルボロン酸
【0209】
【化22】
化合物aの調製:
3,5−ジクロロ−フェノール(70g、0.43mol)の無水トルエン(1L)溶液に、N2雰囲気中にて0℃でNaH(51.5g、1.29mol)を少量ずつ加えた。加えた後、得られる混合物を室温に温め、20分間撹拌した。次いで懸濁液を再び0℃に冷却し、ヨウ素(253.81g、91.5mol)をゆっくりと加えた。次いで反応混合物を室温で終夜撹拌した。TLC(石油エーテル/CH2Cl2 1:1)によって、出発材料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を1N HCl(1L)で失活させ、エーテル(1L)で希釈した。分離した有機層をブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、未精製の化合物2を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/CH2Cl2 5:1〜1:1)によって精製して、純粋な化合物a(85g、収率:68%)を白色の固体として得た。
【0210】
化合物bの調製:
化合物a(67g、0.23mol)、クロロメトキシ−エタン(31.8g、0.29mol)、およびCs2CO3(63.7g、0.2mol)をDMF(600mL)に混ぜた混合物を、室温で2時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc 2:1)によって、化合物aが完全に消費されたことが示された。反応混合物をH2O(500mL×3)およびブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、未精製の化合物3を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 1:50)によって精製して、純粋な化合物b(80g、100%)を黄色の固体として得た。
【0211】
化合物cの調製:
化合物b(77g、0.22mol)、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン(57g、0.44mol)、およびEt3N(92mL、0.66mol)をジオキサン(500mL)に溶かした溶液を、30分間N2でパージした。次いで、得られる混合物に、Pd(OAc)2(2.7g、0.011mol)およびビフェニル−2−イル−ジシクロヘキシル−ホスファン(8.5g、0.022mol)を加えた。加えた後、反応混合物を80℃で1.5時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc 30:1)によって、化合物bが完全に消費されたことが示された。得られる混合物を飽和NH4Cl(500mL)、H2O(500mL)、およびブライン(500mL)で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、未精製の化合物cを得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc 5:1〜1:1)によって精製して、純粋な化合物c(35g、収率:45%)を褐色の固体として得た。
【0212】
化合物1gの調製:
化合物c(35g、0.1mol)を無水CH2Cl2(200mL)に溶かした撹拌した溶液に、N2雰囲気中にて0℃でBBr3(125g、0.5mol)を滴下した。20分間撹拌した後、反応混合物を氷水中に注ぎ、3N NaOH(100mL)によってpH約10に塩基性化し、有機層を分離した。分離した水層を1N HCl(500mL)でpH約3に調整し、EtOAc(500mL×3)で抽出し、有機層を合わせてブライン(1.0L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物1g(39.7g、収率:80%)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 6.875-6.878 (d, 1H), 6.727-6.737 (d, 1H).
【0213】
(実施例2)
2−アミノ−N−シクロプロピル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物2a(42mg、0.11mmol)のDMF(3mL)溶液に、炭酸カリウム(46mg、0.33mmol)、化合物2b、および化合物2c(82mg、0.5mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて120℃で40分間加熱した。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加え、撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を、分取HPLCによって精製して、化合物2(31.5mg、収率56%)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.35 - 0.45 (m, 2 H), 1.84 (s, 1 H),
3.69 (d, J=13.39 Hz, 1 H), 3.95 (dd, J=13.01, 1.39 Hz, 1 H), 4.13 - 4.47 (m, 6
H), 6.36 (s, 1 H), 6.77 (s, 2 H), 7.27 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.33 (d, J=1.77 Hz,
1 H), 7.35 (s, 1 H), 7.48 (s, 1 H). LCMS (M+H)+ 510.
元素分析:C21H20Cl3N7O2・1.25 H2Oの計算値: C, 47.47; H, 4.27; N, 18.45. 実測値: C, 47.13; H, 4.01; N, 18.72.
【0214】
【化23】
【0215】
化合物2a:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸シクロプロピルアミド
化合物1g(668g、3.2mmol)および化合物III(B)−1(1.1g、3.1mmol)を1,4−ジオキサン(30mL)に溶かした溶液に、炭酸ナトリウム溶液(7.8mL、2M、9.2mmol)を加えた。混合物を15分間N2でパージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)(355mg、0.3mmol)を加えた。得られる混合物を80℃で12時間撹拌した。反応混合物をCeliteパッドで濾過し、MeOHで十分に洗浄した。濾液を減圧によって濃縮した。残渣をEtOAc(2×500mL)とブライン(100mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の油状物を得た。この黄色の油状物をCH2Cl2およびヘキサンで処理し、沈殿を収集し、ヘキサンで十分に洗浄して、化合物2a(1.1g、97%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.33 - 0.44 (m, 2 H), 0.46 - 0.59 (m, 2 H), 0.80 - 0.91 (m, 1
H), 4.11 (br. s., 2 H), 4.39 (s, 2 H), 6.45 (d, J=2.78 Hz, 1 H), 6.74 - 6.84
(m, 2 H), 6.91 - 7.00 (m, 1 H), 7.14 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 10.64 (br. s., 1 H).
LCMS (M+H)+: 380.
【0216】
【化24】
【0217】
化合物III(B)−1:2−アミノ−4−ヨード−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸シクロプロピルアミド
化合物I(C)(8.36g、24.7mmol)のACN(200mL)懸濁液に、室温でヨードトリメチルシラン(25mL、176mmol)を加えた。混合物を90℃で3時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、次いでMeOH(10mL)で失活させ、減圧により濃縮した。残渣をEt2O(100mL)で処理し、沈殿を濾過によって収集し、エーテルで十分に洗浄して、4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンのHI塩を褐色の固体(14.4g、81%)として得た。この粗生成物は、それ以上精製せずに次の反応にすぐに使用することができた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 4.25 (t, J=4.80 Hz, 1 H), 4.29 - 4.47
(m, 3 H), 6.02 (br. s., 2 H), 9.42 (br. s., 1 H). LCMS (M+H)+: 263.
【0218】
4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンHI塩(2590mg、5mmol)のDMF(10mL)溶液に、化合物10aの(5mLのDMF)溶液およびTEA(2.8mL、20mmol)を加えた。混合物を65℃で2時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OHジクロロメタン溶液)によって精製して、化合物III(B)−1を淡黄色の固体(1.1g、収率62%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.38 - 0.48 (m, 2 H), 0.51 - 0.64 (m,
2 H), 2.53 - 2.59 (m, 1 H), 4.24 (s, 2 H), 4.36 - 4.44 (m, 2 H), 6.56 (d,
J=2.78 Hz, 1 H), 6.96 - 7.10 (m, 2 H). LCMS (M+H)+: 346.0.
【0219】
【化25】
【0220】
化合物2bおよび2cの調製:4−クロロ−1−(2−ブロモ−エチル)−1H−ピラゾールおよび4−クロロ−1−(2−クロロ−エチル)−1H−ピラゾール
クロロピラゾール(500mg、4.9mmol)のDMF(8mL)溶液に、室温で水素化ナトリウム(293mg、7.3mmol、60%の鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で40分間撹拌した。次いで、混合物にカニューレで1−ブロモ−2−クロロエタン(856mg、5.9mmol、DMF(1mL)溶液)を加えた。混合物を12時間60℃に加熱した。反応混合物に水(20mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、蝋状の油状物残渣を得た。LC/MSおよび1H−NMRによって、これが化合物2bと化合物2cの2種の生成物の混合物であることが示された(498mg、収率61.9%)。
【0221】
(実施例3)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物3a(50mg、0.11mmol)のDMF(2mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(20mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物2(34mg、0.072mmol)が白色の固体として収率63%で得られた。1H NMR (400 MHz, dmso-d6) δ ppm 1.89 - 1.97 (m, 6 H), 1.99 (s, 3 H), 2.26 - 2.39 (m, 1 H), 3.49
(d, J=12.38 Hz, 1 H), 3.82 (dd, J=12.76, 1.89 Hz, 1 H), 4.19 - 4.46 (m, 6 H),
6.01 (t, J=2.02 Hz, 1 H), 6.67 (s, 2 H), 6.82 (s, 1 H), 6.99 (s, 1 H), 7.02 (d,
J=1.52 Hz, 1 H), 7.19 (d, J=2.02 Hz, 1 H), 7.30 (d, J=1.26 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 481.
【0222】
【化26】
【0223】
化合物3a:4−[4−クロロ−2−メチル−6−(2−ピラゾール−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン(110646−545)
化合物3b(58mg、0.12mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、塩化水素(0.5mL、2mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物3aを淡黄色の固体残渣として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物1の合成に使用した。
【0224】
【化27】
【0225】
化合物3b:2−アミノ−4−[2,4−ジクロロ−6−(2−ピラゾール−1−イル−エトキシ)−フェニル]−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物3c(96mg、0.26mmol)のDMF(2mL)溶液に、炭酸カリウム(100mg、0.7mmol)および1−(2−ブロモ−エチル)−1H−ピラゾール(文献の手順に従って調製:Org.Letters、2006、8(10)、p.2043)(67mg、0.38mmol)を順次加えた。混合物を120℃で40分間マイクロ波装置にかけた。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 100%のEtOAc)によって精製して、化合物3b(69.3mg、収率58%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。
1H NMR
(400 MHz, dmso-d6) δ
ppm 1.46 (s, 9 H), 1.99 (s, 3 H), 3.39 - 3.59 (m, 1 H), 3.77 (d, J=22.48 Hz, 1
H), 4.20 - 4.28 (m, 1 H), 4.29 - 4.34 (m, 3 H), 4.34 - 4.45 (m, 2 H), 6.03 (q,
J=2.02 Hz, 1 H), 6.70 (s, 2 H), 6.98 (s, 1 H), 7.03 (s, 1 H), 7.24 (dd, J=4.80,
2.02 Hz, 1 H), 7.31 (dd, J=15.92, 1.52 Hz, 1 H). LCMS (M+H)+
472.
【0226】
【化28】
【0227】
化合物3c:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物3d(300mg、1.6mmol)および化合物1f(583mg、1.6mmol)を1,4−ジオキサン(10mL)に混ぜた混合物に、炭酸ナトリウム(512mg、4.8mmol)の入った2.4mLのH2Oを加えた。混合物を数回窒素でパージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)(116mg)を加えた。反応混合物および得られる溶液を、マイクロ波装置に入れて120℃で40分間加熱した。反応混合物に水(50mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 60→70%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物3c(361mg、収率59%)を淡褐色の泡沫として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.38 - 1.46 (m, 9 H), 2.03 (s, 3 H),
4.05 - 4.48 (m, 4 H), 6.71 (s, 2 H), 6.80 (s, 1 H), 6.82 (s, 1 H), 10.07 (s, 1
H). LCMS (M+H)+ 378.
【0228】
【化29】
【0229】
化合物3d:5−クロロ−2,3−ジメチル−フェノールボロン酸
【0230】
【化30】
ステップ#1手順:氷−NaCl浴に浸した、出発材料(SM)(5.46mL、45mmol、1.0当量)をDCM(300mL)に溶かした透明な溶液に、Ipy2BF4(20.3g、53.4mmol、1.20当量)を加えた。得られた溶液を、浴が0℃の状態で撹拌し、次いでゆっくりと室温に温めた。反応液は、橙色の溶液から橙色の懸濁液へとゆっくりと変わった。次いで反応液を室温で終夜撹拌した。反応液をDCM(200mL)で希釈し、飽和Na2S2O3水溶液で洗浄した。有機層を収集し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムにかけて、10.50gの所望の生成物を褐色の固体として収率88%で得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 4.05 (br. s., 2 H), 7.02 (d, J=2.27
Hz, 1 H), 7.50 (d, J=2.27 Hz, 1 H).
【0231】
ステップ#2手順:出発材料(1.00g、3.74mmol、1.0当量)、CuI(73mg、0.374mmol、0.10当量)、1,10−フェナントロリン(139mg、0.748mmol、0.20当量)、Cs2CO3(2.49g、7.48mmol、2.0当量)、MeOH(10mL)の混合物を、マイクロ波条件下(120℃、2時間、撹拌)で反応させた。LC−MSによって、反応が完了しており、化合物の大半が所望の生成物であることが示された。各回を1グラムの規模にして、反応を10回繰り返した。これら4つのすべての反応液を合わせ、MeOHおよびEtOAcで希釈した。混合物をセライトに通して、不溶性物質を除去した。黒色の濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、9:1〜4:1のヘプタン/EtOAcを使用しながらシリカゲルのカラムにかけて、4.0g(全4回)の所望の生成物を褐色の固体として収率62.3%で得た。
【0232】
ステップ#3手順:0℃で、出発材料(2.68g、15.6mmol、1.0当量)を25mLの濃HCl(37%)に懸濁させた懸濁液に、NaNO2(2.27g、31.2mmol、2.0当量)を25mLの水に溶かした溶液を加えた。0℃で10分間撹拌した後、橙色の懸濁液が得られ、ジアゾニウム塩化合物が生成した。ジアゾニウム塩にKI(10.4g、62.5mmol、4.0当量)の水(50mL)溶液を加えた。加えている間、多量の固体材料が生成した。次いで反応液を室温で終夜撹拌した。室温で終夜撹拌した後、反応液を300mLのEtOAcで希釈した。有機層を収集し、1.0MのNa2S2O3で洗浄した。次いで有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をISCOのカラムにかけて(10%のEtOAcヘプタン溶液)、3.30gの所望の生成物を収率75%で黄色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 2.45 (s, 3 H), 3.88 (s, 3 H), 6.64 (d,
J=1.76 Hz, 1 H), 6.91 (d, J=1.76 Hz, 1 H).
【0233】
ステップ#4手順:マイクロ波対応20mL容バイアルに、Pd(OAc)2(39.7mg、0.177mmol、0.10当量)、出発材料(500mg、1.77mmol、1.0当量)、ジオキサン(12mL)、ピナコールボラン(0.514mL、3.54mmol、2.0当量)、Et3N(0.74mL、5.31mmol、3.0当量)、およびホスフィン配位子(124mg、0.354mmol、0.20当量)を加えた。混合物をN2でパージし、マイクロ波装置に入れて120℃で30分間反応させた。反応液をEtOAc(100mL)で希釈し、セライトで濾過した。濾液をブライン(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮した。残渣を、10%のEtOAc/ヘプタンを使用しながらISCOのカラムにかけて、4.00gの所望の生成物を収率80%で黄白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 1.38 (s, 12 H), 2.32 (s, 3 H), 3.76
(s, 3 H), 6.64 (d, J=1.51 Hz, 1 H), 6.76 (d, J=1.01 Hz, 1 H).
【0234】
ステップ#5手順:出発材料(1.50g、5.02mmol)を20の無水のジクロロメタンに溶かした0℃の溶液に、三臭化ホウ素(12.6mL、12.6mml、2.5当量、1.0M DCM溶液)を5分間かけてゆっくりと加えた。0℃で15分間撹拌した後、HPLCによれば反応が完了し、20mLの氷水中に注いだ。二相性の混合物を激しく撹拌し、1MのNaOH(10mL)を用いて水相をpH=約10とした。有機層を分離し、廃棄した。水相を1MのHClでpH=約3に酸性化し、白色の沈殿を発生させ、濾過し、室内真空下にて60℃で乾燥させて、500mg(収率53%)の所望の生成物を白色の固体として得た。
【0235】
(実施例4)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物4a(200mg、0.49mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(30mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物4(161mg、収率63.5%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.94 (s, 6 H), 2.34 (s, 1 H), 3.65 (d,
J=13.14 Hz, 1 H), 3.93 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 4.20 - 4.28 (m, 2 H), 4.30 - 4.43
(m, 4 H), 6.79 (s, 2 H), 6.89 (br. s., 1 H), 7.23 - 7.29 (m, 2 H), 7.34 (d,
J=1.77 Hz, 1 H), 7.36 (d, J=4.55 Hz, 1 H). LCMS (M+H)+
519.
元素分析:C23H22Cl2FN7O2・1 H2Oの計算値: C, 51.50; H, 4.51; N, 18.28. 実測値: C, 51.81; H, 4.34; N, 18.02.
【0236】
【化31】
【0237】
化合物4a:4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン
化合物4b(249mg、0.49mmol)のCH3OH(10mL)溶液に、塩化水素(2.4mL、9.8mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物4aを淡黄色の固体残渣として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物1の合成に使用した。
【0238】
【化32】
【0239】
化合物4b:2−アミノ−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物1d(270mg、0.68mmol)のDMF(8mL)溶液に、炭酸カリウム(282mg、2mmol)および化合物4c(674mg、1.4mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて120℃で40分間加熱した。反応混合物に水(20mL)およびEtOAc(2×50mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 90→100%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物4b(194mg、収率56%)を淡黄色の泡沫として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.34 - 1.50 (m, 9 H), 3.48 - 3.64 (m,
J=6.06 Hz, 1 H), 3.79 - 3.97 (m, 1 H), 4.21 - 4.31 (m, 2 H), 4.30 - 4.50 (m, 4
H) 6.83 (s, 2 H), 7.27 (s, 1 H), 7.30 - 7.38 (m, 2 H), 7.42 (dd, J=10.86, 4.55
Hz, 1 H). LCMS (M+H)+ 509.
【0240】
【化33】
【0241】
化合物4cおよび4dの合成:4−フルオロ−1−(2−ブロモ−エチル)−1H−ピラゾールおよび4−フルオロ−1−(2−クロロ−エチル)−1H−ピラゾール
フルオロピラゾール(1000mg、11.6mmol)のDMF(7mL)溶液に、室温で水素化ナトリウム(700mg、17.4mmol、60%の鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で40分間撹拌した。次いで混合物にカニューレで1−ブロモ−2−クロロエタン(2000mg、13.9mmol、DMF(1mL)溶液)を加えた。混合物を12時間60℃に加熱した。反応混合物に水(50mL)を加え、THF(2×200mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、蝋状の油状物残渣を得た。LC/MSおよび1H−NMRによって、これが化合物4cと化合物4dの2種の生成物の混合物であることが示された(1000mg、収率57.4%)。
【0242】
フルオロピラゾールの合成:フルオロピラゾールは、Organic Letters 1995、3、p239に記載の方法の変法によって調製および単離した。
【0243】
【化34】
ステップ#1手順:
化合物1(750g、5.7mol)およびEt3N(948mL、6.816mol)をCH2Cl2(2L)に溶かした溶液に、0℃でTsCl(1295.4g、6.8mol)を少量ずつ加えた。得られる混合物を室温で終夜撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=5:1)によって反応の完了が示された。ブライン(5L)を加え、混合物をCH2Cl2(3×10L)で抽出した。有機層を合わせてブライン(2×5L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc 20:1〜5:1)によって精製して、化合物2(1500g、92%)を白色の固体として得た。
【0244】
ステップ#2手順:
化合物2(100g、0.35mmol)のTHF(1.5L)溶液に、−85℃でn−BuLi(336ml、0.8mol)を滴下添加した。次いで混合物を−85℃でもう10分間撹拌した。反応混合物を3N HCl水溶液(300mL)で失活させ、室温に温めた。混合物を飽和NaHCO3水溶液でpH=7に塩基性化し、Et2O(3×5L)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物3(53.84g、58%)を褐色の固体として得、これをそのまま次のステップに使用した。
【0245】
ステップ#3手順:
NHEt2(50g、0.7mol)、TBAF(56.3mL、0.05639mol)、およびEt3N(78mL、0.6mol)をCH3CN(300mL)に溶かした溶液に、0℃で化合物3(150g、0.5639mol)のCH3CN(500mL)溶液を加えた。得られる溶液を室温で終夜撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=1:1)によって反応の完了が示された。混合物をブライン(300mL)で希釈し、EtOAc(500mL×3)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=1:1)によって精製して、化合物4(60g、73%)を褐色の油状物として得た。
【0246】
ステップ#4手順:
化合物4(100g、0.7mol)およびNH2NH2.2HCl(79.6g、0.8mol)をEtOH(200mL)およびH2O(150mL)に混ぜた混合物を78℃で4時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=1:1)によって反応の完了が示された。反応混合物を室温に冷ました。混合物を飽和NaHCO3水溶液でpH=7に塩基性化し、EtOAc(3×2L)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=1:1)によって精製して、フルオロピラゾール(36.25g、61%)を褐色の固体として得た。
1H NMR
(400 MHz, dmso-d6) δ
ppm 7.64 (br. s., 2 H), 12.61 (br. s., 1 H).
【0247】
(実施例5)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物4a(195mg、0.48mmol)のDMF(4mL)溶液に、化合物5aの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(30mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物5(192mg、収率75.5%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, dmso-d6) δ ppm 3.66 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 3.82 (br.
s., 2 H), 3.98 (d, J=12.63 Hz, 1 H), 4.26 (d, J=4.04 Hz, 2 H), 4.30 - 4.38 (m,
2 H), 4.42 (br. s., 2 H), 6.83 (s, 2 H), 6.99 (s, 1 H), 7.23 (d, J=4.29 Hz, 1
H), 7.29 (d, J=1.52 Hz, 1 H), 7.35 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.37 (d, J=4.55 Hz, 1
H). LCMS (M+H)+ 534.
元素分析:C20H17Cl2F4N7O2・0.25 H2Oの計算値: C, 44.58; H, 3.27; N, 18.20. 実測値: C, 44.87; H, 3.34; N, 17.86.
【0248】
【化35】
【0249】
化合物5a:1−[(Z)−メチルイミノメチル]−3−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)−1−ビニル−尿素
2,2,2−トリフルオロエチルアミン(72mg、1mmol)および1、1’−カルボニルジイミダゾール(135mg、0.8mmol)をDMF(4mL)に溶かした溶液(無色透明な溶液)に、TEA(1.3mL、0.8mmol)を加えた。化合物5aをさらに単離せずに、この溶液を化合物5の合成に使用した。
【0250】
(実施例6)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物6a(71mg、0.17mmol)のDMF(3mL)溶液に、炭酸カリウム(120mg、0.85mmol)および化合物6b(89mg、0.4mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて100℃で60分間加熱した。反応混合物に水(20mL)およびEtOAc(100mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を分取HPLCによって精製して、化合物6(30mg、収率33%)を白色の固体として得た。
1H NMR
(400 MHz, DMSO-d6) δ
ppm 1.56 (t, J=18.95 Hz, 3 H), 3.43 - 3.55 (m, 2 H), 3.69 (d, J=13.14 Hz, 1 H),
4.00 (d, J=12.88 Hz, 1 H), 4.20 - 4.28 (m, 2 H), 4.31 - 4.37 (m, 2 H), 4.40 -
4.47 (m, 2 H), 6.69 (s, 1 H), 6.81 (s, 2 H), 7.26 (d, J=4.29 Hz, 1 H), 7.28 (d,
J=1.77 Hz, 1 H,) 7.34 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.36 (d, J=4.80 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 530. 元素分析:C21H20Cl2F3N7O2・1.75 H2Oの計算値: C, 44.89; H, 4.22; N, 17.45. 実測値: C, 45.22; H, 3.90; N, 17.12.
【0251】
【化36】
【0252】
化合物6a:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸(2,2−ジフルオロプロピル)−アミド
化合物1g(1.07g、5.17mmol)および化合物III(B)−2(1.98g、5.17mmol)を1,4−ジオキサン(25mL)に溶かした溶液に、炭酸ナトリウム溶液(7.8mL、2M、15.5mmol)を加えた。混合物を15分間N2でパージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)(597mg、0.517mmol)を加えた。得られる混合物を85℃で3時間撹拌した。反応混合物をCeliteパッドで濾過し、MeOHで十分に洗浄した。濾液を減圧によって濃縮した。残渣をEtOAc(2×500mL)とブライン(100mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離して、化合物6aを白色の固体(305mg、収率14%)として得た。
1H NMR
(400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.54 (t, J=19.07 Hz, 3 H), 3.46 (br. s., 2 H), 4.21 (br. s., 2
H), 4.47 (s, 2 H), 6.73 - 6.84 (m, 2 H), 6.84 - 6.89 (m, 1 H), 6.97 (d, J=1.77
Hz, 1 H), 7.16 (d, J=2.02 Hz, 1 H), 10.69 (br. s., 1 H). LCMS (M+H)+:
418.0, 420.0.
【0253】
【化37】
【0254】
化合物III(B)−2:2−アミノ−4−ヨード−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸(2,2−ジフルオロ−プロピル)−アミド
化合物I(C)(8.36g、24.7mmol)のACN(200mL)懸濁液に、室温でヨードトリメチルシラン(25mL、176mmol)を加えた。混合物を90℃で3時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、次いでMeOH(10mL)で失活させ、減圧によって濃縮した。残渣をEt2O(100mL)で処理し、沈殿を濾過によって収集し、エーテルで十分に洗浄して、4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンのHI塩を褐色の固体(14.4g、81%)として得た。この粗生成物は、それ以上精製せずに次の反応にすぐに使用することができた。
1H NMR
(400 MHz, DMSO-d6) δ
ppm 4.25 (t, J=4.80 Hz, 1 H), 4.29 - 4.47 (m, 3 H), 6.02 (br. s., 2 H), 9.42
(br. s., 1 H). LCMS (M+H)+: 263.0.
【0255】
4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンHI塩(590mg、1.1mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物9aの(2mLのDMF)溶液およびTEA(0.6mL、4.6mmol)を加えた。混合物を65℃で2時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→100%のEtOAcジクロロメタン溶液)によって精製して、化合物III(B)−2を白色の固体(195mg、収率82%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.50 - 1.60 (m, 3 H), 3.51 (br. s., 2
H), 4.32 (s, 2 H), 4.46 (d, J=6.06 Hz, 2 H). LCMS (M+H)+: 384.0.
【0256】
【化38】
【0257】
化合物6b:メタンスルホン酸2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エチルエステル
化合物6a(13.4g、98mmol)、ジイソプロピルアミン(34.3mL、196mmol)、および4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(1.2g、9.78mmol)をジクロロメタン(245mL)に溶かした、氷浴中の溶液に、塩化メタンスルホニル(16.8g、11.4mL、147mmol)を加えた。反応液を室温に温め、室温で2時間撹拌した。水(50mL)を加えて反応を失活させた。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→60%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物6b(19.5g、収率96%)を黄色がかった油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 2.89 (s, 3 H), 4.33 - 4.38 (m, 2 H),
4.53 - 4.59 (m, 2 H), 7.38 (d, J=1.52 Hz, 1 H), 7.40 (d, J=1.01 Hz, 1 H).
【0258】
【化39】
【0259】
化合物6cの調製:2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エタノール
フルオロピラゾール(20g、0.23mol)のDMF(200mL)溶液に、0℃で水素化ナトリウム(13.8g、0.35mol、60%鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで2−ブロモ−エタノール(43g、0.35mol)を0℃で滴下した。得られる混合物を40℃で12時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=1:1)によって反応の完了が示された。混合物を飽和NH4Cl水溶液(200mL)で失活させた。次いで真空中でDMFを除去し、残渣をEt2O(1000mL)とH2O(1000mL)とに分配した。水層をさらなるEt2O(4×1L)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物6c(20g、66%)を黄色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.69 (t, J=5.56 Hz, 2 H), 4.04 (t,
J=5.56 Hz, 2 H), 4.90 (br. s., 1 H), 7.43 (d, J=4.29 Hz, 1 H), 7.81 (d, J=4.55
Hz, 1 H).
【0260】
【化40】
【0261】
(実施例7)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−6−メチルフェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物7a(186mg、0.48mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物7(195mg、収率82%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 2.05 (s, 6 H), 2.06 (s, 3 H),
2.37 (s, 1 H), 3.71 (d, J=12.63 Hz, 1 H), 3.96 (dd, J=13.01, 1.39 Hz, 1 H,)
4.23 - 4.36 (m, 4 H), 4.43 - 4.55 (m, 2 H), 6.97 (s, 1 H), 6.98 (s, 1 H), 7.24
(d, J=4.55 Hz, 1 H), 7.26 (d, J=4.29 Hz, 1 H). LCMS (M+H)+
499.
元素分析:C24H25ClFN7O2・0.25 H2Oの計算値: C, 57.89; H, 5.06; N, 19.69. 実測値: C, 57.31; H, 5.11; N, 19.44.
【0262】
【化41】
【0263】
化合物7a:4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−6−メチル−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン
化合物7b(234mg、0.48mmol)のCH3OH(10mL)溶液に、塩化水素(2.4mL、9.5mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物7aを淡黄色の固体残渣として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物7の合成に使用した。
【0264】
【化42】
【0265】
化合物7b:2−アミノ−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−6−メチル−フェニル}−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物3c(84mg、0.22mmol)のDMF(2mL)溶液に、炭酸カリウム(154mg、1.1mmol)および化合物6b(120mg、0.6mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて100℃で40分間加熱した。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(90→100% EtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物7b(66mg、収率60%)を淡黄色の泡沫として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.44 (s, 9 H), 2.00 (s, 3 H), 3.50
(dd, J=23.49, 13.39 Hz, 1 H), 3.83 (dd, J=25.52, 12.88 Hz, 1 H), 4.17 - 4.31
(m, 4 H), 4.33 - 4.41 (m, 2 H), 6.70 (s, 2 H), 6.99 (s, 1 H), 7.04 (s, 1 H),
7.28 (dd, J=18.44, 4.29 Hz, 1 H), 7.42 (dd, J=10.74, 4.42 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 489.元素分析:C23H26ClFN6O3・0.5 H2O・0.25 CH3CO2CH2CH3の計算値: C, 55.44; H, 5.62; N, 16.16. 実測値: C, 55.78; H, 5.49; N, 15.93.
【0266】
【化43】
【0267】
(実施例8)
2−アミノ−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−6−メチルフェニル}−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物7a(504mg、1.3mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物5aの(5mLのDMF)溶液およびTEA(2mL、14mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物8(470mg、収率70%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.01 (s, 3 H), 3.61 (d, J=12.88 Hz, 1
H), 3.75 - 3.85 (m, 2 H), 3.91 (d, J=12.63 Hz, 1 H), 4.26 (dd, J=12.88, 3.79
Hz, 4 H), 4.36 - 4.44 (m, 2 H), 6.73 (s, 2 H), 6.92 (s, 1 H), 7.01 (s, 1 H),
7.06 (s, 1 H), 7.23 (d, J=4.04 Hz, 1 H), 7.37 (d, J=4.55 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 514.
元素分析:C21H20ClF4N7O2・1 H2Oの計算値: C, 47.42; H, 4.17; N, 18.43. 実測値: C, 47.54; H, 3.85; N, 18.13.
【0268】
【化44】
【0269】
(実施例9)
2−アミノ−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−6−メチルフェニル}−N−(2,2−ジフルオロプロピル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物7a(136mg、0.35mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物9aの(3mLのDMF)溶液およびジイソプロピルエチルアミン(1mL)を加えた。混合物を75℃で2時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物9(171mg、収率96%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.56 (t, J=18.95 Hz, 3 H), 2.01 (s, 3
H), 3.40 - 3.52 (m, 2 H), 3.65 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 3.92 (d, J=12.63 Hz, 1 H),
4.26 (dd, J=11.62, 3.28 Hz, 4 H), 4.37 - 4.45 (m, 2 H) 6.66 (s, 1 H), 6.70 (s,
2 H) 7.01 (s, 1 H), 7.06 (s, 1 H), 7.26 (d, J=4.04 Hz, 1 H), 7.36 (d, J=4.55
Hz, 1 H). LCMS (M+H)+ 511.
元素分析:C22H23ClF3N7O2・0.25 H2Oの計算値: C, 51.37; H, 4.60; N, 19.06. 実測値: C, 51.34; H, 4.65; N, 18.70.
【0270】
【化45】
【0271】
化合物9a:イミダゾール−1−カルボン酸(2,2−ジフルオロ−プロピル)−アミド
2,2−ジフルオロプロピルアミン塩酸塩(82mg、0.62mmol)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(114mg、0.7mmol)をDMF(3mL)に溶かした溶液(無色透明な溶液)に、TEA(1.3mL、0.8mmol)を加えた。化合物9をさらに単離せずに、この溶液を化合物5の合成に使用した。
【0272】
(実施例10)
2−アミノ−N−シクロプロピル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物10は、イミダゾール−1−カルボン酸(2,2−ジフルオロ−プロピル)−アミド(化合物9a)の代わりにイミダゾール−1−カルボン酸シクロプロピルアミド(10a)を用いたことを除き、実施例9と同様にして調製した。化合物10は、白色の固体(26mg、40%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.36 - 0.44 (m, 2 H), 0.49 - 0.63 (m,
2 H), 1.19 - 1.28 (m, 1 H), 3.65 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 3.93 (d, J=13.14 Hz, 1
H), 4.21 - 4.28 (m, 2 H), 4.29 - 4.44 (m, 4 H), 6.35 (s, 1 H), 6.78 (s, 2 H),
7.20 - 7.29 (m, 2 H), 7.33 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.35 (d, J=4.55 Hz, 1 H).
LCMS (M+H)+ 493.
元素分析:C21H20Cl2FN7O2・1.25 H2O・0.25 CH3COOHの計算値: C, 48.74; H, 4.47; N, 18.50. 実測値: C, 48.75; H, 4.08; N, 18.24.
【0273】
【化46】
【0274】
(実施例11)
2−アミノ−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−シアノ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−N−(2,2−ジフルオロプロピル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
6a(147mg、0.35mmol)および炭酸セシウム(400mg、1.23mmol)をDMSO(3mL)に混ぜた混合物に、化合物11b(136mg、0.88mmol)を加えた。得られる混合物を90℃で12時間加熱した。混合物に飽和炭酸ナトリウム溶液(50mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物11(18mg、20%)が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.56 (t, J=19.07 Hz, 3 H), 3.48 (d,
J=6.06 Hz, 1 H), 3.67 (br. s., 1 H), 3.92 - 4.08 (m, 2 H), 4.36 - 4.50 (m, 6
H), 6.70 (d, J=2.02 Hz, 1 H), 6.78 (s, 2 H), 7.31 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.34 (d,
J=1.77 Hz, 1 H), 7.81 (s, 1 H), 8.19 (s, 1 H). LCMS (M+H)+
537.
【0275】
【化47】
【0276】
化合物11b:1−(2−クロロ−エチル)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル
化合物11c(160mg、0.92mmol)のDCM(4mL)懸濁液に、約0℃(氷/水浴)で塩化チオニル(0.14mL、1.84mmol)を加えた。得られる混合物を0℃で撹拌し、90分間室温に温め、その間に懸濁液は黄色がかった溶液になった。反応混合物を減圧によって濃縮した。残渣をEtOAc(300mL)と飽和NaHCO3溶液(50mL)およびブライン(50mL)とに分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧により濃縮して、化合物11bを黄色のグリース(140mg、98%)として得た。この固体をそれ以上精製せずに次のステップの反応に使用した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.96 - 4.08 (m, 2 H), 4.47 -
4.56 (m, 2 H), 8.12 (s, 1 H), 8.64 (s, 1 H).
【0277】
【化48】
【0278】
化合物11cの調製:1−(2−クロロ−エチル)−4−ニトロソメチル−1H−ピラゾール
化合物11d(166mg、1.1mmol)および酢酸ナトリウム(174mg、2.1mmol)をEtOH(4mL)に溶かした溶液に、ヒドロキシアミン塩酸塩(114mg、1.6mmol)を加えた。得られる混合物を90℃で90分間撹拌した。反応混合物をEtOAc(300mL)とH2O(50mL)およびブライン(50mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、化合物11cを白色の固体(164mg、90%)として得た。1H NMR (400 MHz, dmso-d6) δ ppm 4.00 (t, J=5.68 Hz, 2 H), 4.49 (t,
J=5.68 Hz, 2 H), 7.36 (s, 1 H), 7.85 (s, 1 H), 8.33 (s, 1 H), 11.26 (s, 1 H).
LCMS (M+H)+: 174
【0279】
化合物11dの調製:1−(2−クロロ−エチル)−4−ニトロソメチル−1H−ピラゾール
化合物11dは、実施例4の4−フルオロピラゾールの代わりに4−カルバルデヒドピラゾールを用いたことを除き、化合物4cおよび4dと同様にして調製した。
【0280】
(実施例12)
2−アミノ−4−{2−[2−(4−ブロモ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−4,6−ジクロロフェニル}−N−シクロプロピル−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物12a(142mg、0.32mmol)、K2CO3(265mg、1.92mmol)、およびKI(106mg、0.64mmol)をDMF(2mL)に溶かした溶液に、4−ブロモピラゾール(141mg、1mmol)を加えた。得られる混合物をマイクロ波装置に入れて130℃で1時間加熱した。反応混合物をEtOAc(300mL)とH2O(50mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物12が白色の固体(85mg、48%)として得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.34 - 0.46 (m, 2 H), 0.48 - 0.59 (m,
2 H), 2.53 - 2.57 (m, 1 H), 3.73 (d, J=11.12 Hz, 1 H), 3.96 (dd, J=13.14, 2.02
Hz, 1 H), 4.26 - 4.50 (m, 6 H), 6.37 (br. s., 1 H), 6.78 (s, 2 H), 7.27 (d,
J=1.77 Hz, 1 H), 7.33 - 7.35 (m, 1 H), 7.38 (s, 1 H), 7.48 - 7.55 (m, 1 H).
LCMS (M+H)+: 552.
【0281】
【化49】
【0282】
【化50】
【0283】
化合物12a:2−アミノ−4−[2,4−ジクロロ−6−(2−クロロ−エトキシ)−フェニル]−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸シクロプロピルアミド
化合物2a(800mg、2.1mmol)および炭酸カリウム(872mg、6.3mmol)をDMF(8mL)に溶かした溶液に、1−ブロモ−2−クロロエタン(0.4mL、4.2mmol)を加えた。得られる混合物を50℃で12時間加熱した。反応混合物を濾過して炭酸塩を除去し、EtOAcで十分に洗浄した。次いで濾液をEtOAc(200ml)と飽和NaHCO3(50ml)およびブライン(50ml)とに分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、次いで減圧によって濃縮した。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OHジクロロメタン溶液)によって精製して、化合物12a(786mg、85%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d
ppm 0.32 - 0.43 (m, 2 H), 0.47 - 0.58 (m, 2 H), 3.69 - 3.86 (m, 1 H), 4.00 -
4.12 (m, 2 H), 4.19 (d, J=13.14 Hz, 2 H), 4.23 - 4.31 (m, 2 H), 4.32 - 4.45 (m,
2 H), 6.42 (d, J=2.78 Hz, 1 H), 6.80 (s, 2 H), 7.38 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.96
(s, 1 H). LCMS (M+H)+ 444.
【0284】
【化51】
【0285】
実施例13〜16は、上記実施例に記載の方法と同様の方法を使用して調製した。
【0286】
【表1−1】
【0287】
【表1−2】
【0288】
HSP−90生化学アッセイ
SPA(シンチレーション近接アッセイ)競合結合アッセイを使用して、本発明の化合物のHSP−90に対する効力を評価した。そのC末端上に6−Hisタグを含んでいる全長またはN末端HSP−90は、Hisタグを介して銅担持ケイ酸イットリウムシンチラントビーズに結合する。以下に構造を示す、トリチウム標識プロピル−ゲルダナマイシン(pGA)は、ゲルダナマイシンと呼ばれる、HSP−90の天然阻害剤の類似体である。#17位に付加されたトリチウム標識プロピル−アミン基を含んでいるトリチウム標識pGAは、HSP−90に結合し、同位体をビーズと近接させる。17−n−プロピルアミノ−ゲルダナマイシンは、参照により本明細書に援用される米国特許第4,261,989号に記載のとおりに調製することができる。このアッセイで同じく使用することのできる第二のトリチウム標識化合物を以下に示し、化合物Aと称する。
【0289】
【化52】
【0290】
上記化合物Aの構造中の「T」は、標識トリチウム化水素原子の位置を示す。この化合物は、Kdが40nMであり、以下のように調製することができる。化合物Aは、化合物Aの親化合物(N−アリル−2−(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)イソインドリン−1−カルボキサミド)から、以下に記載するとおりに調製することができる。Boc(R,S)−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドールカルボン酸(263mg、1mmole)、ジイソプロピルエチルアミン(0.9mL、5mmol)、およびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムリン五フッ化物(HATU)(420mg、1.1mmol)を5mLのDMFに溶かした溶液に、窒素雰囲気中でアリルアミン(2.5mL、5mmol、2M THF溶液)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3(30mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。EtOAc層をNa2SO4で乾燥させる。Na2SO4を濾別し、濾液を蒸発させて、褐色の油状物残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 40→50%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、所望の中間体生成物(321mg、定量的収率)であるtert−ブチル1−[(アリルアミノ)カルボニル]−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボキシレートを得た。
【0291】
tert−ブチル1−[(アリルアミノ)カルボニル]−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボキシレート(1mmol)のDCM(5mL)溶液に、室温で塩化水素(3mL、12mmol;4Mジオキサン溶液)を加えた。反応液を室温で12時間加熱、撹拌した。反応混合物を蒸発させて、油状物残渣を得た。残渣(N−アリルイソインドリン−1−カルボキサミド)をそれ以上精製せずに次のステップの反応に使用した。
【0292】
次いで、5−クロロ−2,4−ビス(メトキシメトキシ)安息香酸(WO2006/117669で示されているとおりに調製できる)(340mg、1.2mmol)、4−メチルモルホリン(2.2mL、20mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(460mg、2.4mmol)、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(330mg、2.4mmol)を12mLのDMFに溶かした溶液に、窒素雰囲気中でN−アリルイソインドリン−1−カルボキサミド(1mmol)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。反応混合物にH2O(50mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。EtOAc層をNa2SO4で乾燥させる。Na2SO4を濾別し、濾液を蒸発させて、褐色の油状物残渣を得た。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 50→60%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、所望の中間体生成物(423mg、収率91.8%)であるN−アリル−2−[5−クロロ−2,4−ビス(メトキシメトキシ)ベンゾイル]イソインドリン−1−カルボキサミドを得た。
【0293】
N−アリル−2−[5−クロロ−2,4−ビス(メトキシメトキシ)ベンゾイル]イソインドリン−1−カルボキサミド(392mg、0.85mmol)のDCM(5mL)溶液に、塩化水素(4mL、16mmol;4Mジオキサン溶液)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO3(水溶液)で中和し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、蒸発させて、親化合物(N−アリル−2−(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)イソインドリン−1−カルボキサミド)としての所望の最終生成物を白色の固体(221mg、収率69.7%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.57 (d, J=79.33 Hz, 2 H), 4.65 - 4.93
(m, 1 H), 4.97 - 5.19 (m, 1 H), 5.42 - 5.70 (m, 1 H), 5.68 - 5.95 (m, 1 H),
6.40 - 6.71 (m, 1 H), 6.92 (s, 1 H), 7.15 - 7.67 (m, 4 H), 8.28 (s, 1 H), 10.06
(s, 1 H), 10.40 (s, 1 H). 元素分析:C19H17ClN2O4の計算値: C, 61.21; H, 4.60; N, 7.51. 実測値: C, 61.02; H, 4.63; N, 7.36.
【0294】
親化合物を生成したら、トリチウムガスを用い、標準の水素化方法を使用して、化合物Aを調製した。
【0295】
同位体から放射されるβシグナルは、シンチラントを励起し、それによって、測定可能なシグナルが生成される。アッセイ混合物に競合的化合物を加えると、競合的化合物は、HSP−90のN末端上のATP結合部位で、結合しているトリチウム標識pGAまたは化合物Aと競合する。化合物によって、標識されたpGAまたは化合物Aが外されると、シグナルは減少する(β粒子はすでにビーズと近接していない)。このシグナルの減少を使用して、阻害剤/化合物がpGAまたは化合物Aに対してどの程度競合的であるかを定量化する。
【0296】
HSP−90への3H−pGA(G1と示す)および化合物A(G2と示す)結合についてのSPAアッセイは、96ウェル平底白色プレート(Corning #3604)で実施した。G1では、典型的な反応溶液は、結合緩衝液(100mMのHepes、pH7.5、および150mMのKCl)中に30nMのHSP−90および200nMの3H−pGAを含有するものであった。G2では、典型的な反応溶液は、5nMのHSP−90および50nMの化合物Aを含有するものであった。G1については、3H−pGAをまず、合成および精製した未標識pGAで33%標識に希釈して、最終濃度を200nMとした。G2については、標識された化合物Aを未標識の化合物Aで希釈して、標識:未標識の比率を1:2として、最終濃度を50nMとした。HSP−90/3H−pGA(またはHSP−90/化合物A)溶液に、Kiを求めるための11段階の異なる濃度で阻害剤を加えた。阻害剤濃度の範囲は、固体サンプルでは100μMまたは適切な範囲、標的のライブラリ化合物では10μM、および4mMの保存液とした。阻害パーセントを求めるために、化合物を1μMおよび10μMで試験した。サンプル中の最終DMSOは4%とした。結合緩衝液中に希釈してある銅−Ysiビーズ(Amersham、#RPNQ0096)を各ウェルに加えて、最終濃度を100μg/ウェルとした。プレートをシールし、箔で覆ったふたをかぶせ、室温で30分間振盪した。ビーズを30分間沈降させ、その後Packard TopCount NXT計測器を使用して、プレートをカウントした。Beckman Biomek FXを使用して、この手順を中間の処理量にも適合させた。Kiの値を確実に正確なものにするために、サンプルは2連で実験し、かつ実験日を2日に分けた。
【0297】
Kiを求めるために、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、補正したcpm(実際のcpm−バックグラウンド)を阻害剤濃度に対してプロットした。データをIC50一般式、すなわちY=YI/(1+[X]/IC50)[ここで、YI=Y切片であり、[X]は、競合リガンド/阻害剤である]に適合させた。次いでこのIC50を使用して、Cheng−Prusoff式:
【0298】
【数1】
[ここで、cl=冷リガンド濃度(変化する)であり、[hl]=熱リガンドの濃度(200nMまたは50nM)であり、Kd{hl}=(3H−pGAでは)240nMまたは(化合物Aでは)40nMである]を用いることにより、Kiを算出した。誤差は、以下のように算出した。すなわち、IC50誤差/IC50値=端数誤差(fractional error)、および端数誤差*Ki値=Ki誤差。
【0299】
阻害剤がHSP−90に緊密に結合するあまり、遊離阻害剤分子の集団が、酵素−阻害剤複合体の形成により著しく消耗されるようになる場合には、上記式はもはや有効でない。これは通常、観察されるIC50がHSP−90濃度とほとんど同じであるときに当てはまる。緊密に結合する阻害剤については、以下の式を適用することができる。
【0300】
【数2】
ここで、
【0301】
【数3】
であり、ELおよびELoは、それぞれ阻害剤の存在下および非存在下の放射リガンド−HSP−90複合体である。EL/ELoは、阻害剤存在下での微量シグナル(fractional signal)を表す。Io、Eo、およびLoは、それぞれ、阻害剤、HSP−90、および放射リガンドの濃度である。KIは、リガンドの阻害定数であり、KLは、酵素(HSP−90)とリガンド間の結合親和性定数である。
【0302】
実施例1〜16の化合物1〜16のKiアッセイデータを、以下の表2に記載する。
【0303】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月13日出願の米国仮特許出願第61/088,599号の利益を主張するものであり、その出願の開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、化合物、薬学的に許容できるその塩および溶媒和物、その合成、ならびにHSP−90のモジュレーターまたは阻害剤としてのその使用を対象とする。本発明の化合物は、HSP−90活性をモジュレート(たとえば阻害)し、またHSP−90によって媒介される疾患または状態、たとえば、癌などの異常細胞成長に関連する病態を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
分子シャペロンは、合成時のタンパク質の適正なフォールディング、ならびに変性ストレス条件下でのそのリフォールディングが確実になされるようにすることにより、細胞機能において重要な役割を果たす。タンパク質の合成と分解のバランスを調節することにより、分子シャペロンは、ストレスに対する細胞応答の重要な一環をなす。さらに、様々な細胞タンパク質の適正なフォールディングを調節することにより、シャペロンは、細胞増殖やアポトーシスなどの細胞機能の調節において重要な役割を果たす(たとえば、Jollyら、J.Natl.Cancer Inst.92:1564〜1572(2000)を参照されたい)。熱ショックタンパク質(HSP)は、熱ショック、酸化ストレス、またはアルコールもしくは重金属の存在などの様々な環境ストレスに呼応して細胞中に蓄積される部類のシャペロンである。そのような環境ストレスから細胞を保護する際のその役割に加えて、HSPは、ストレスのない条件下でも、様々な細胞タンパク質のシャペロンとして重要な役割を果たし得る。HSPファミリーの仲間は、その分子量に従って分類される(たとえば、HSP−27、HSP−70、およびHSP−90)。腫瘍進行の種々の段階でHSPが示差的に発現されるという証拠からは、HSPが癌において重要な役割を担っていることが示唆される(たとえば、Martinら、Cancer Res.60:2232〜2238(2000)を参照されたい)。
【0004】
HSP−90は、ATPase活性を有するホモ二量体であり、様々な基質タンパク質との一連の複雑な相互作用において機能する(Youngら、J.Cell Biol.154:267〜273(2001))。しかし、HSP−90は、その既知の基質タンパク質の大部分がシグナル伝達タンパク質であるので、他のシャペロンと比べて独特である。したがって、HSP−90は、細胞のシグナル伝達ネットワークの調節において不可欠な役割を果たす(たとえば、Xuら、Proc.Natl.Acad.Sci 90:7074〜7078(1993)を参照されたい)。特に、HSP−90の基質タンパク質としては、p53、Bcr−Ab1キナーゼ、Raf−1キナーゼ、Aktキナーゼ、Npm−Alkキナーゼp185ErbB2膜貫通型キナーゼ、Cdk4、Cdk6、Wee1(細胞周期依存性キナーゼ)、HER2/Neu(ErbB2)、低酸素誘発因子1α(HIF−1α)などの、癌との関連が示唆される、突然変異または過剰発現した多くのタンパク質が挙げられる。したがって、HSP−90を阻害すると、アポトーシス、細胞増殖、および細胞周期調節に関与するこれらの重要なシグナル伝達タンパク質が選択的に分解される(Holsteinら、Cancer Res.61:4003〜4009(2001))。これらシグナル伝達タンパク質は、癌などの、異常細胞成長が関与する病態において重要な役割を果たしているので、したがってHSP−90は、魅力的な治療標的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、癌などの、異常細胞成長に関連した病態に罹患している患者に治療上の利益をもたらすことのできる、HSP−90活性の新しい阻害剤を発見し開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物
【0007】
【化1】
または薬学的に許容できるその塩を提供する。
式中、
R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、ならびにフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルからそれぞれ独立に選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、
R2およびR3はそれぞれ、塩素、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
R4は、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択され、
R5およびR6はそれぞれ、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
但し、
(1)R4、R5およびR6がすべて水素であるとき、R2およびR3は、同時に塩素ではなく、
(2)式Iの化合物は、以下の化合物のいずれでもない。
【0008】
【化2】
【0009】
この実施形態の好ましい態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4は水素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R3は、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される。R3は、C1〜C3アルキルであることが好ましい。
【0010】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4は水素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2は、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される。
【0011】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4は、フッ素、塩素、C2〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルから選択される。R4は、フッ素および塩素から選択されることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素である。
【0012】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素である。R4はフッ素であり、R5およびR6は両方とも水素であることが好ましい。
【0013】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素である。
【0014】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R5は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0015】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R6は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0016】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。
【0017】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C3〜C8シクロアルキル、またはフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルから選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルである。
【0018】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、または1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキルである。
【0019】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3は塩素である。
【0020】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3はC1〜C3アルキルである。この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素であり、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3は塩素であることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3はメチルである。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物
【0022】
【化3】
(式中、
R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、ならびにフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルからそれぞれ独立に選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、
R2およびR3はそれぞれ、塩素、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
R4は、フッ素、塩素、C2〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルから選択される。R4は、フッ素および塩素から選択されることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素である。
R5およびR6はそれぞれ、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される)
または薬学的に許容できるその塩を提供する。
【0023】
この実施形態の好ましい一態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素である。R4はフッ素であり、R5およびR6は両方とも水素であることがより好ましい。
【0024】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素である。
【0025】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R5は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0026】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R6は、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである。
【0027】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。
【0028】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C3〜C8シクロアルキル、またはフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルからそれぞれ独立に選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルである。
【0029】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキルである。
【0030】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3は塩素である。
【0031】
この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R2は塩素であり、R3はC1〜C3アルキルである。この実施形態の好ましい別の態様では、また矛盾しない他のいずれかの好ましい態様との組合せにおいて、R4はフッ素または塩素であり、R5は水素であり、R6は水素であり、R2はメチルまたは塩素であり、R3はメチルまたは塩素であり、R1は、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される。R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3は塩素であることが好ましい。より好ましくは、R4はフッ素であり、R2は塩素であり、R3はメチルである。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、
【0033】
【化4−1】
【0034】
【化4−2】
【0035】
【化4−3】
【0036】
【化4−4】
【0037】
【化4−5】
からなる群から選択される化合物または薬学的に許容できるこれらの塩を提供する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、医薬の調製における式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩の使用を提供する。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、癌治療のための医薬の調製における式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩の使用を提供する。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、細胞を、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と接触させることを含む、HSP−90の活性をモジュレートする方法を提供する。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物または塩と別の治療薬との組合せを提供する。この実施形態の一態様では、組合せは、異常細胞成長、好ましくは癌の治療に使用する。
【0043】
本発明はまた、ヒトを含めた哺乳動物において異常細胞成長を治療する方法であって、前記哺乳動物に、異常細胞成長の治療において有効な量の、上記で規定した式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む方法に関する。
【0044】
この方法の一実施形態では、異常細胞成長は、限定はしないが、中皮腫、肝胆道系(肝臓および胆道)、原発性もしくは続発性のCNS腫瘍、原発性もしくは続発性の脳腫瘍、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、または前述の癌の1つまたは複数の組合せを含めた癌である。
【0045】
前記方法の別の実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄を含めた、良性の増殖性疾患である。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、乳癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および脊髄軸腫瘍、または前述の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、および肛門部の癌、または前述の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
【0048】
本発明のより好ましい実施形態では、癌は、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、卵巣癌、結腸癌、および直腸癌、または前述の癌の1つまたは複数の組合せから選択される。
【0049】
前記方法の別の実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄を含めた、良性の増殖性疾患である。
【0050】
本発明はまた、異常細胞成長の治療において有効な量の、上で規定した式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む、ヒトを含めた哺乳動物において異常細胞成長を治療するための医薬組成物に関する。前記組成物の一実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、中皮腫、肝胆道系(肝臓および胆道)、原発性もしくは続発性のCNS腫瘍、原発性もしくは続発性の脳腫瘍、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、または前述の癌の1つまたは複数の組合せを含めた癌である。前記医薬組成物の別の実施形態では、前記異常細胞成長は、限定はしないが、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄を含めた、良性の増殖性疾患である。
【0051】
本明細書では、記号[
【0052】
【化5】
]は、置換基の化学構造に組み込まれているとき、[
【0053】
【化6】
]の付いた原子が、その置換基の別の分子上のある位置への結合点であることを意味する。たとえば、仮定的な分子CH3CH2−Xにおいて、Xが、
【0054】
【化7】
であると規定されるとする。この場合、任意に番号を振った位置C−1に付いた[
【0055】
【化8】
]の配置は、フェニル環のC−1がこのメチレン炭素に結合していることを意味する。
【0056】
mが1〜19の整数であり、nが2〜20の整数であり、n>mである「Cm〜Cnアルキル」とは、m〜n個の炭素原子を有し、nは2〜20の整数である、直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を指す。Cm〜Cnアルキル基の例として、限定はしないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、neo−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられ、これらの置換された形態も含める。さらに、用語「アルキル」とは、炭素原子が1〜20個、または炭素原子が1〜12個、または炭素原子が1〜8個、または炭素原子が1〜6個、または炭素原子が1〜4個の、直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を指す。アルキルは、無置換でも、または少なくとも1個の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0057】
mが3〜19の整数であり、nが4〜20の整数であり、n>mである「Cm〜Cnシクロアルキル」とは、m〜n個の炭素原子を有する環状の飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、単環式でもよいし、許容し得る場合は二環式または多環式でもよい。シクロアルキルは、スピロ環式でもよい。シクロアルキルの例示的な例は、限定はしないが、以下の式から生じるものである。
【0058】
【化9】
【0059】
「Cm〜Cnアルコキシ」または「Cm〜Cnアルコキシル」とは、−O−(Cm〜Cnアルキル)を指し、(Cm〜Cnアルキル)は、この節で前に定義したとおりである。
【0060】
「アミノ」とは、−NH2を指す。
【0061】
基が、何らかの置換基で「置換されていてもよい」または「さらに置換されていてもよい」とき、この基の炭素または窒素原子において、1個または複数個の水素原子がこの炭素または窒素原子に結合しており、その炭素または窒素原子が、何らかの他の置換基で置換されていてもよいことを意味する。たとえば、「Rは、H、C1〜C3アルキル、またはフェニルであり、Rは、−F、オキソ、およびC1〜C3ペルフルオロアルキルから選択される1〜3個の基でさらに置換されていてもよい」とは、Rが、1)H(RがHであるとき、Rはさらに置換されることはない)、2)−F、オキソ、およびC1〜C3ペルフルオロアルキルから選択される1〜3個の基でさらに置換されていてもよいC1〜C3アルキル、さらに3)−FおよびC1〜C3ペルフルオロアルキルから選択される1〜3個の基でさらに置換されていてもよいフェニル、であることを意味する。オキソによるフェニルの任意選択の置換は、オキソ、すなわち=O結合によって置換される2個の水素原子を有するフェニル基の単一原子がないため、Rがフェニルであるときは当てはまらない。基が、「−(C1〜C4アルキレン)−」でさらに置換されているとき、「−(C1〜C4アルキレン)−」は、「C1〜C4アルキレン」が結合している基の窒素原子または炭素原子と一緒になって、炭素スピロ環またはヘテロスピロ環を形成することを意味する。
【0062】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載の化合物または生理的/薬学的に許容できるその塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグの1種または複数と、生理的/薬学的に許容できる担体および賦形剤などの他の化学的成分との混合物を指す。医薬組成物の目的は、ヒトを含めた哺乳動物などの生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0063】
本明細書では、「生理的/薬学的に許容できる担体」とは、ヒトを含めた哺乳動物などの生物に著しい刺激を与えず、投与される化合物の生物活性および特性を損なわない担体または希釈剤を指す。
【0064】
「薬学的に許容できる賦形剤」とは、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。限定はしないが、賦形剤の例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々なタイプの糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0065】
本明細書では、用語「薬学的に許容できる塩」とは、親化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩を指す。そのような塩としては、以下のものが挙げられる。
(1)親化合物の遊離塩基を、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、(D)もしくは(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸などの有機酸と反応させて得ることのできる酸付加塩、または
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンと入れ替わるとき、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位するときに生成する塩。
【0066】
「接触させること」とは、化合物が直接、すなわちキナーゼ自体との相互作用によって、または間接的に、すなわちキナーゼの触媒活性を左右する別の分子との相互作用によって、PKの触媒活性に影響を及ぼし得るような形で、本教示の化合物と標的PKを引き合わせることを指す。このような「接触させること」は、「in vitroで」、すなわち、試験管、ペトリ皿などにおいて実現することができる。試験管では、接触させることは、化合物と対象とするPKのみが関わる場合もあり、または全細胞が関わる場合もある。細胞を細胞培養皿で維持するか成長させ、その環境で化合物と接触させてもよい。この状況において、特定の化合物がPK関連障害に影響を及ぼし得る能力、すなわち化合物のIC50を求めることができる。生物体の外の細胞については、限定はしないが、直接細胞マイクロインジェクションおよび数多くの膜貫通担体技術を含めて、PKを化合物と接触させるいくつもの方法が存在し、当業者に知られている。
【0067】
「PK関連障害」、「PKによって引き起こされる障害」、および「異常なPK活性」はすべて、不適切な、すなわち過少または過剰なPK触媒活性を特徴とする状態を指し、ここで、特定のPKは、RTK、CTK、またはSTKであってよい。不適切な触媒活性は、(1)通常はPKを発現しない細胞におけるPK発現、(2)望ましくない細胞増殖、分化、および/もしくは成長をもたらすPK発現の増加、または(3)細胞増殖、分化、および/もしくは成長の望ましくない低下をもたらすPK発現の減少のために生じ得る。PKの過剰活性とは、細胞増殖、分化、および/もしくは成長障害と相関し得る(すなわち、PKのレベルが増大するにつれて、細胞性障害による症状の1つまたは複数の重症度が増大する)、特定のPKをコードする遺伝子の増幅またはPK活性レベルの生成のいずれかを指す。過少活性は、細胞性障害による1つまたは複数の症状の重症度が、PK活性のレベルが低下するにつれて増大するものである。
【0068】
「治療する」、「治療すること」、および「治療」とは、PKによって媒介される細胞性障害および/またはその付随症状を緩和または解消する方法を指す。癌に関して、これらの用語は、癌に罹患している個体の余命が延長されること、または疾患の症状の1つまたは複数が軽減されることを意味する。
【0069】
「生物」とは、少なくとも1個の細胞からなる、任意の生命体を指す。生物は、たとえば単一の真核細胞のように単純な場合もあれば、ヒトを含めた哺乳動物のように複雑な場合もある。
【0070】
「治療有効量」とは、治療する障害の症状の1つまたは複数をある程度軽減する、投与される化合物の量を指す。癌の治療に関して、治療有効量とは、以下の効果の少なくとも1つを有する量を指す。
(1)腫瘍の大きさを縮小する、
(2)腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは止める)、
(3)腫瘍成長をある程度抑制する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは止める)、および
(4)癌に関連する1つまたは複数の症状をある程度軽減する(または、好ましくは解消する)。
【0071】
用語「立体異性体」とは、同一の化学構造を有するが、その原子または基の空間的配置に関しては異なる化合物を指す。詳細には、用語「鏡像異性体」は、重ね合わせることのできない互いの鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。用語「ラセミ」または「ラセミ混合物」とは、本明細書では、特定の化合物の鏡像異性体の1:1混合物を指す。一方、用語「ジアステレオ異性体」は、2つ以上の不斉中心を含み、互いの鏡像ではない、一対の立体異性体間の関係を指す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の化合物、すなわち式Iの化合物は、実施例1〜16の方法に従って生成することができる。以下の反応スキーム1〜3は、当業者による式Iの化合物の生成を可能にするものである。
【0073】
【化10】
【0074】
【化11】
【0075】
【化12】
【0076】
スキーム1は、式Iの化合物の生成に使用する中間体I(C)の合成を図示するものである。β−ケトエステルI(A)は、知られている手順に基づいて調製することができる(たとえば、ViscontiniおよびBuhler、Helvetica Chimica Acta、50(5):1289〜93(1967);Rosowskyら、J.Heterocyclic Chem.、26:509〜16(1989)を参照されたい)。窒素保護基であるPG1は、後続の化学現象と適合するように選択することができる。保護基およびその使用についての概論は、T.GreeneおよびP.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、1999、John Wiley&Sonsに記載されており、当業者によく知られている。化合物I(A)をグアニジンと縮合させて、化合物I(B)を得る。これは通常、化合物I(A)をプロトン性溶媒中にてグアニジンまたはグアニジン相当物と共に加熱することにより実行できる。典型的な反応条件では、化合物I(A)を、溶媒としてのtert−ブタノール中にて炭酸グアニジンと共に還流させることになる。化合物I(B)のヒドロキシル基をクロロまたはヨードに変換すると、I(C)が得られる。これは通常、化合物I(B)を非プロトン性溶媒中にてPOCl3と共に加熱することにより実行できる。典型的な反応条件では、化合物I(B)を、そのまま、または溶媒としての無水アセトニトリル中にて、過剰のPOCl3と共に還流させることになる。
【0077】
スキーム2は、式Iの化合物を中間体I(C)から生成することのできる経路を図示するものである。スキーム2では、化合物I(C)のクロロ/ヨード基を三置換フェニル基と交換して、化合物II(A)を得る。化合物II(A)を得るための、化合物I(C)のクロロ脱離基の三置換フェニル基による置換は、鈴木、スティル、根岸、または同様の条件を利用するクロスカップリング法を使用して実施することができる。化合物I(C)を化合物II(A)に変換する典型的なクロスカップリング反応では、水と1,4−ジオキサンなどの溶媒混合物中にて、炭酸ナトリウムなどの塩基およびPd(0)触媒の存在下、化合物I(C)をボロン酸またはボロン酸エステルで処理して、化合物II(A)を得ることになる。次いで、化合物II(A)の窒素保護基PG1を除去して、化合物II(B)を得る。PG1がエチルカルバメート保護基を形成するとき、PG1の除去は通常、化合物II(A)をCH3CNなどの溶媒中にてトリメチルシリルヨージドと共に還流することにより実行できる。別法として、酢酸中HBrまたはイソプロパノール中KOHをエチルカルバメート保護基の除去に使用することもできる。PG1がtert−ブチルカルバメート保護基であるとき、PG1の除去は、化合物II(A)を1,4−ジオキサンなどの溶媒中にて塩化水素で処理することにより実行できる。化合物II(A)を化合物II(B)に変換する典型的な条件は、化合物II(A)をTMSI(10〜20当量、4M 1,4−ジオキサン溶液)で処理して、化合物II(B)を得ることである。次いで、化合物II(B)のジヒドロピロロアミノ部分が、求電子性のR1−NH−CO部分との反応で求核試薬として働いて、化合物Iが得られる。この求核反応は、アシル化、および第二級アルキルアミンに適用可能な他の反応でよい。典型的なアシル化反応条件は、化合物II(B)をTEAの存在下でR1イソシアネートまたはイソシアネート相当物部分と反応させて、化合物Iを尿素として得ることである。イソシアネート相当物の調製方法は、種々のアミンとのCDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)付加物を生成することである。次いで、CDI付加物を、DMF中にてTEAの存在下、高温で化合物II(B)と反応させて、化合物Iを得ることができる。
【0078】
スキーム3は、式Iの化合物を中間体I(C)から生成することのできる別の経路を図示するものである。スキーム3では、PG1がエチルカルバメート保護基であるとき、化合物I(C)のPG1を、クロロからヨードへの変換と同時に1ステップで除去する。これは通常、化合物I(C)を、非プロトン性溶媒中にて高温でTMSIによって、または室温で塩化水素によって処理することにより実行できる。典型的な反応条件は、化合物I(C)をCH3CN中にて5当量のTMSIと共に還流させることである。メタノールで失活させた後、化合物III(A)がHI塩として得られる。次いで、化合物III(A)のジヒドロピロロアミノ部分を、求核試薬として、求電子性のR1部分と反応させて、化合物III(B)を得る。この求核反応は、アシル化、および第二級アルキルアミンに適用可能な他の反応でよい。典型的なアシル化反応条件は、化合物III(A)を、TEAの存在下でR1イソシアネートまたはイソシアネート相当物部分と反応させて、化合物III(B)を尿素として得ることである。イソシアネート相当物の調製方法は、種々のアミンとのCDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)付加物を生成することである。次いでCDI付加物を、DMF中にてTEAの存在下、高温で化合物II(B)と反応させて、化合物Iを得ることができる。次いで化合物III(B)のヨード基を、クロスカップリング法を使用しながら三置換フェニル部分によって置換して、化合物Iを得る。この反応は通常、鈴木、スティル、根岸、または同様の条件を使用して実施することができる。化合物III(B)を化合物Iに変換する典型的なクロスカップリング反応では、水と1,4−ジオキサンなどの溶媒混合物中にて、炭酸ナトリウムなどの塩基およびPd(0)触媒の存在下、化合物III(B)をボロン酸またはボロン酸エステルで処理して、化合物Iを得ることになる。
【0079】
本発明の化合物は、不斉炭素原子を有する場合もある。本発明の化合物の炭素−炭素結合は、本明細書では、実線(
【0080】
【化13】
)、くさび形実線(
【0081】
【化14】
)、またはくさび形破線(
【0082】
【化15】
)を使用して表記することができる。不斉炭素原子への結合を表記するための実線の使用は、その炭素原子で考えられるすべての立体異性体(たとえば、特定の鏡像異性体、ラセミ混合物など)が含まれることを示すものである。不斉炭素原子への結合を表記するためのくさび形実線またはくさび形破線の使用は、示した立体異性体のみが含まれることを意味することを示すものとする。本発明の化合物が2個以上の不斉炭素原子を含んでいる場合も考えられる。そうした化合物において、不斉炭素原子への結合を示す実線の使用は、考えられるすべての立体異性体が含まれることを意味することを示すものである。たとえば、別段記述しない限り、本発明の化合物は、鏡像異性体およびジアステレオ異性体として、またはそのラセミ体および混合物として存在し得るものとする。本発明の化合物中の1個または複数の不斉炭素原子への結合を表記するための実線の使用、および同じ化合物中の他の不斉炭素原子への結合を表記するためのくさび形実線またはくさび形破線の使用は、ジアステレオ異性体の混合物が存在することを示すものとする。
【0083】
個々の鏡像異性体を調製/単離するための従来の技術としては、光学的に純粋な適切な前駆体からのキラル合成、または、たとえばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体の分割が挙げられる。別法として、ラセミ体(またはラセミ前駆体)を、光学活性のある適切な化合物、たとえばアルコールと、または、本発明の化合物が酸性もしくは塩基性部分を含んでいる場合、酒石酸や1−フェニルエチルアミンなどの酸もしくは塩基と反応させることもできる。得られるジアステレオ異性体混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶によって分離し、ジアステレオ異性体の一方または両方を、当業者によく知られている手段によって、対応する純粋な(1種または複数の)鏡像異性体に変換することができる。本発明のキラルな化合物(およびそのキラルな前駆体)は、0〜50%、典型的には2〜20%のイソプロパノール、および0〜5%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有する炭化水素、典型的にはヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を用いる不斉樹脂でのクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、鏡像異性体富化された形で得ることもできる。溶出液を濃縮すると、濃縮された混合物が得られる。立体異性体の集合体は、当業者に知られている従来の技術によって分離することができる。たとえば、その開示が全体として参照により本明細書に援用される、E.L.Elielによる「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley、ニューヨーク、1994)を参照されたい。
【0084】
本発明の化合物がアルケニル基またはアルケニレン基を含んでいる場合、幾何的なシス/トランス(またはZ/E)異性体が考えられる。シス/トランス異性体は、当業者によく知られている従来の技術、たとえば、クロマトグラフィーおよび分別結晶によって分離することができる。構造異性体が低いエネルギー障壁で相互変換可能な場合、互変異性体の異性(「互変異性」)が存在し得る。互変異性は、たとえばイミノ、ケト、またはオキシム基を含んでいる本発明の化合物ではプロトン互変異性、または芳香族部分を含んでいる化合物ではいわゆる原子価互変異性の形をとり得る。要するに、単一化合物が複数種の異性を示す場合もあるということである。本発明の範囲内には、複数種の異性を示す化合物を含めて、本発明の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体、および互変異性体形態、ならびにこれらの1種または複数の混合物が含まれる。
【0085】
本発明の塩は、当業者に知られている方法に従って調製することができる。塩の例として、限定はしないが、酢酸塩、アクリル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩(クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩など)、炭酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、ブチン−1,4−二酸塩、エデト酸カルシウム塩、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、二塩酸塩、リン酸二水素塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩、エチルコハク酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタリン酸塩、メタン−スルホン酸塩、メチル硫酸塩、リン酸一水素塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フタル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオル酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、次酢酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオドード(triethiodode)、および吉草酸塩が挙げられる。
【0086】
塩基性である本発明の化合物は、様々な無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。そのような塩は、動物への投与について薬学的に許容できるものでなければならないが、実際には、最初に本発明の化合物を反応混合物から薬学的に許容されない塩として単離し、次いでこれをアルカリ試薬での処理によって遊離塩基化合物に再び単純に変換し、引き続いてこの遊離塩基を薬学的に許容できる酸付加塩に変換することが望ましい場合が多い。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、塩基化合物を、水性溶媒またはメタノールやエタノールなどの適切な有機溶媒中にて、選択した実質的に等量の鉱酸または有機酸で処理することにより調製できる。溶媒を蒸発させると、所望の固体の塩が得られる。所望の酸の塩は、遊離塩基の有機溶媒溶液から、溶液に適切な鉱酸または有機酸を加えることにより沈殿させることもできる。
【0087】
酸性である本発明の化合物は、薬理学的に許容できる様々なカチオンと塩基塩を形成することができる。そのような塩の例として、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。こうした塩はすべて、従来の技術によって調製される。本発明の薬学的に許容できる塩基の塩を調製するために試薬として使用される化学塩基は、本発明の酸性化合物と非毒性の塩基塩を形成するものである。そのような非毒性の塩基塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの薬理学的に許容できるカチオンから得られる塩が含まれる。こうした塩は、任意の適切な方法、たとえば、遊離酸をアミン(第一級、第二級、または第三級)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの無機塩基または有機塩基で処理する方法によって調製することができる。適切な塩の例示的な例として、グリシンやアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級、および第三級アミン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンなどの環式アミンから得られる有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、およびリチウムから得られる無機塩が挙げられる。これらの塩は、対応する酸性化合物を、薬理学的に許容できる所望のカチオンを含有する水溶液で処理し、次いで、得られる溶液を、好ましくは減圧下で蒸発させて乾燥させることにより調製してもよい。別法として、酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドを混合し、次いで、得られる溶液を、前述と同じようにして蒸発乾燥させることにより調製してもよい。いずれの場合でも、確実に反応を完了させ、所望の最終生成物の収率を最大にするために、化学量論量の試薬を用いることが好ましい。
【0088】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容できる塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法、たとえば、遊離塩基を、無機酸、たとえば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などで、または有機酸、たとえば、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸やガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸や酒石酸などのα−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸やケイ皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸やエタンスルホン酸などのスルホン酸などで処理する方法によって調製することができる。
【0089】
固体である化合物の場合において、本発明の化合物および塩が、種々の結晶もしくは多形形態で、または非晶質形態で存在してもよいことが当業者に理解され、そのすべてが本発明の範囲内にあるものとする。
【0090】
本発明は、1個または複数の原子が、原子番号は同じであるが原子質量または質量数が自然界で通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子と入れ替わっている、同位体標識された本発明の化合物も包含する。本発明の化合物に含めるのに適する同位体の例として、2Hや3Hなどの水素、11C、13C、14Cなどの炭素、36Clなどの塩素、18Fなどのフッ素、123Iや125Iなどのヨウ素、13Nや15Nなどの窒素、15O、17O、18Oなどの酸素、32Pなどのリン、35Sなどの硫黄の同位体が挙げられる。特定の同位体標識された本発明の化合物、たとえば、放射性同位体が組み込まれている本発明の化合物は、薬物および/または基質の組織分布調査において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3H、およびカーボン14、すなわち14Cは、組み込みやすく、検出手段が迅速であることから、この目的のために特に有用である。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体での置換は、代謝安定性がより高いために生じる特定の治療上の利点、たとえば、in vivo半減期の延長または投与必要量の減少をもたらす場合もあり、したがって状況によっては好ましいこともある。11C、18F、15O、13Nなどの陽電子放射同位体での置換は、陽電子放射断層撮影(PET)調査において基質受容体占有率を調べるのに有用となり得る。
【0091】
同位体標識された本発明の化合物は一般に、当業者に知られている従来の技術によって、またはそうでない場合に用いられる標識されていない試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用する、本明細書に記載の手順と類似した手順によって調製することができる。
【0092】
本発明の化合物は、溶媒和していない形態および溶媒和した形態の両方で存在し得る。用語「溶媒和物」は、本明細書では、本発明の化合物と一定量の1種または複数の薬学的に許容できる溶媒分子とを含む分子複合体について述べるのに使用する。用語「水和物」は、前記溶媒が水であるときに用いる。溶媒和物形態の例として、限定はしないが、本発明の化合物が、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、またはこれらの混合物と会合したものが挙げられる。本発明では、水和物のように、1個の溶媒分子が1分子の本発明の化合物と会合し得ることを特に企図する。
【0093】
さらに、本発明では、二水和物のように、2個以上の溶媒分子が1分子の本発明の化合物と会合し得ることを特に企図する。加えて、本発明では、半水和物のように、1個未満の溶媒分子が1分子の本発明の化合物と会合し得ることも特に企図する。さらにまた、本発明の溶媒和物は、本発明の化合物の水和物でない形の生物学的有効性を保持している、該化合物の溶媒和物として企図される。
【0094】
本明細書に記載の化合物のプロドラッグも、本発明の範囲内である。すなわち、本発明の化合物の特定の誘導体は、それ自体は薬理活性をほとんどまたはまったくもたないこともあるが、体内または体表に投与されると、たとえば加水分解による切断によって、所望の活性を有する本発明の化合物に変換され得る。そのような誘導体を「プロドラッグ」と呼ぶ。プロドラッグの使用についてのこれ以上の情報は、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、第14巻、ACS Symposium Series(T.HiguchiおよびW.Stella)、および「Bioreversible Carriers in Drug Design」、Pergamon Press、1987(E.B.Roche編、American Pharmaceutical Association)で見ることができる。
【0095】
本発明によるプロドラッグは、たとえば、本発明の化合物中に存在する適切な官能基を、たとえば、H.Bundgaardによる「Design of Prodrugs」(Elsevier、1985)に記載のとおりに、当業者に「プロ部分」として知られている特定の部分と交換することにより生成することができる。
【0096】
本発明によるプロドラッグのいくつかの例として、以下のものが挙げられる。
(i)本発明の化合物がカルボン酸官能基(−COOH)を含んでいる場合、化合物のカルボン酸官能基の水素が(C1〜C8)アルキルと交換されて、対応するエステルを形成しているプロドラッグ化合物、
(ii)本発明の化合物がアルコール官能基(−OH)を含んでいる場合、化合物のアルコール官能基の水素が(C1〜C6)アルカノイルオキシメチルと交換されて、対応するエーテルを形成しているプロドラッグ化合物、および
(iii)本発明の化合物が第一級または第二級アミノ官能基(−NH2または−NHR(R≠H))を含んでいる場合、化合物Iのアミノ官能基の、場合により一方または両方の水素が(C1〜C10)アルカノイルと交換されて、対応するアミドを形成しているプロドラッグ化合物。
【0097】
前述の例による交換基の別の例および他のプロドラッグタイプの例は、上述の参照文献で見ることができる。さらに、本発明の特定の化合物は、それ自体が他の本発明の化合物のプロドラッグとして働く場合もある。
【0098】
本発明の範囲内には、本発明の化合物の代謝産物、すなわち、薬物が投与されるとin vivoで生成される化合物も含まれる。本発明による代謝産物のいくつかの例として、以下のものが挙げられる。
(i)本発明の化合物がメチル基を含んでいる場合、そのヒドロキシメチル誘導体(たとえば、−CH3→−CH2OH)、
(ii)本発明の化合物がアルコキシ基を含んでいる場合、そのヒドロキシ誘導体(たとえば、−OR→−OH)、
(iii)本発明の化合物が第三級アミノ基を含んでいる場合、その第二級アミノ誘導体(たとえば、−NR1R2→−NHR1または−NHR2)、
(iv)本発明の化合物が第二級アミノ基を含んでいる場合、その第一級誘導体(たとえば、−NHR1→−NH2)、
(v)本発明の化合物がフェニル部分を含んでいる場合、そのフェノール誘導体(たとえば、−Ph→−PhOH)、および
(vi)本発明の化合物がアミド基を含んでいる場合、そのカルボン酸誘導体(たとえば、−CONH2→COOH)。
【0099】
医薬としての使用を目的とした本発明の化合物は、結晶性もしくは非晶質の製品、またはその混合物として投与することができる。そうした本発明の化合物は、たとえば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾燥などの方法によって、固体充填物、粉末、またはフィルムとして得ることができる。マイクロ波乾燥または高周波乾燥をこの目的のために使用してもよい。
【0100】
化合物は、単独で、または1種または複数の他の本発明の化合物と組み合わせて、または1種または複数の他の薬物と組み合わせて(またはこれらの任意の組合せとして)投与することができる。一般に、化合物は、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤を伴って、製剤として投与される。用語「賦形剤」は、本明細書では、本発明の(1種または複数の)化合物以外の任意の成分について述べるのに使用する。賦形剤の選択は、特定の投与方式、賦形剤が溶解性および安定性に及ぼす影響、剤形の種類などの要素によるところが大きい。
【0101】
本発明の化合物の送達に適する医薬組成物およびその調製方法は、当業者には容易に明らかとなろう。そのような組成物およびその調製方法は、たとえば、その開示を全体として参照により本明細書に援用する、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版(Mack Publishing Company、1995)で見ることができる。
【0102】
経口投与
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下するものでもよいし、または化合物が口から直接血流に入る頬側もしくは舌下投与を用いてもよい。
【0103】
経口投与に適する製剤としては、固体製剤、たとえば、錠剤;微粒子、液体、または粉末を含有するカプセル剤;ロゼンジ(液体充填型を含める)、咀嚼剤、多粒子およびナノ粒子、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム(粘膜付着型を含める)、腔坐剤、スプレー、ならびに液体製剤が挙げられる。
【0104】
液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟または硬カプセルの充填剤として使用することができ、通常は、担体、たとえば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油と、1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤は、たとえばサシェから固体を再構成して調製することもできる。
【0105】
本発明の化合物は、その開示を全体として参照により本明細書に援用する、LiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986(2001)に記載のものなどの、急速溶解型、急速崩壊型の剤形にして使用することもできる。
【0106】
錠剤剤形では、薬物は、用量に応じて、剤形の1重量%〜80重量%、より典型的な例では剤形の5重量%〜60重量%を占めてよい。薬物に加えて、錠剤は一般に、崩壊剤も含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換されたヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を占める。
【0107】
結合剤は一般に、錠剤製剤に粘着性の性質を付与するのに使用する。適切な結合剤としては、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン、第二リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤も含有してよい。
【0108】
錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムやポリソルベート80などの界面活性剤、および二酸化ケイ素やタルクなどの滑剤も場合により含んでよい。存在するとき、界面活性剤の量は、錠剤の0.2重量%〜5重量%であり、滑剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%である。
【0109】
錠剤は一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤も含有する。滑沢剤は一般に、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%の量で存在する。
【0110】
他の従来の成分として、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤、および矯味剤が挙げられる。
【0111】
例となる錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%〜約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0112】
錠剤ブレンドを直接またはローラーによって圧縮して、錠剤を形成することができる。別法として、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を、湿式、乾式、もしくは溶融造粒、溶融凝固、または押出し成形の処理にかけた後に打錠することもできる。最終製剤は、1つまたは複数の層を含んでよく、コーティングされていてもされていなくてもよく、またはカプセル封入されていてもよい。
【0113】
錠剤の製剤については、その開示を全体として参照により本明細書に援用する、H.LiebermanおよびL.Lachmanによる「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1」、Marcel Dekker、ニューヨーク州ニューヨーク、1980(ISBN 0−8247−6918−X)に詳細に論述されている。
【0114】
経口投与用の固体製剤は、即時型および/または調節型の放出となるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0115】
適切な調節型放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散や浸透性粒子および被覆粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、Vermaら、Pharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14(2001)で見ることができる。制御放出を実現するためのチューインガムの使用は、WO00/35298に記載されている。これらの参照文献の開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0116】
非経口投与
本発明の化合物は、血流中、筋肉中、または内臓に直接投与することもできる。非経口投与に適する手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および皮下が挙げられる。非経口投与に適する装置としては、(微細針を含めた)針注射器、無針注射器、および注入技術が挙げられる。
【0117】
非経口製剤は通常、塩、炭水化物、(好ましくはpH3〜9にするための)緩衝剤などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、一部の適用例では、無菌の非水性溶液として、または発熱物質を含まない無菌水などの適切な媒体と共に使用される乾燥形態として、より適切に製剤することもできる。
【0118】
たとえば凍結乾燥法による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準の製薬技術を使用して容易に実現することができる。
【0119】
非経口溶液の調製で使用する本発明の化合物の溶解性は、溶解性改善剤を混ぜるなどの適切な製剤技術を使用して向上させることができる。
【0120】
非経口投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の調節型放出をもたらす移植デポー剤として投与するための固体、半固体、または揺変性液体として製剤することができる。そのような製剤の例として、薬物でコートしたステントおよびPGLAマイクロスフェアが挙げられる。
【0121】
局所投与
本発明の化合物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち皮膚投与または経皮投与することもできる。この目的のための典型的な製剤としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散粉剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウェーハ、植込錠、スポンジ、繊維、絆創膏、およびマイクロエマルジョンが挙げられる。リポソームを使用してもよい。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。浸透性改善剤を混ぜてもよい。たとえば、FinninおよびMorganによるJ Pharm Sci、88(10)、955〜958(1999年10月)を参照されたい。他の局所投与手段としては、電気穿孔、イオン導入法、音波泳動法、超音波導入法、ならびに微細針または無針(たとえばPowderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が挙げられる。これら参照文献の開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0122】
局所投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0123】
吸入投与/鼻腔内投与
本発明の化合物は、通常は(単独で、たとえばラクトースとの乾燥ブレンドにした混合物として、またはたとえばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合した混合成分粒子としての)乾燥粉末の形で乾燥粉末吸入器から、または1,1,1,2−テトラフルオロエタンや1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤を使用してもしくは使用せずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、電気流体力学を使用して微細な霧を生成するアトマイザー)、もしくはネブライザーからエアロゾルスプレーとして、鼻腔内にまたは吸入によって投与することもできる。鼻腔内の使用では、粉末は、生体接着剤、たとえばキトサンまたはシクロデキストリンを含んでもよい。
【0124】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、たとえば、エタノール、エタノール水溶液、または活性物を分散させ、可溶化し、もしくはその放出を延長するのに適する別の物質と、溶媒としての(1種または複数の)噴射剤と、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、オリゴ乳酸などの任意選択の界面活性剤とを含む、(1種または複数の)本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0125】
乾燥粉末または懸濁液製剤にして使用する前に、薬物製品は、吸入による送達に適する大きさ(通常は5ミクロン未満)に微粉化する。これは、スパイラルジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を生成するための超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、噴霧乾燥などの任意の適切な粉砕法によって実現することができる。
【0126】
吸入器または注入器に入れて使用するカプセル(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製のもの)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物の混合粉末、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤、およびl−ロイシン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウムなどの性能改質剤を含有するように製剤することができる。ラクトースは、無水でも一水和物の形でもよいが、後者であることが好ましい。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが挙げられる。
【0127】
電気流体力学を使用して微細な霧を生成するアトマイザーでの使用に適する溶液製剤は、1回の作動あたり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有してよく、作動体積は1μL〜100μLと様々でよい。典型的な製剤は、本発明の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含むものでよい。プロピレングリコールの代わりに使用することのできる別の溶媒としては、グリセロールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0128】
メントールやl−メントールなどの適切な着香剤、またはサッカリンやサッカリンナトリウムなどの甘味剤を、吸入投与/鼻腔内投与を目的とする本発明の製剤に加えてもよい。
【0129】
吸入投与/鼻腔内投与用の製剤は、たとえば、DL−乳酸−グリコール酸共重合体(PGLA)を使用して、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0130】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合では、投与量単位は、計量された量を送達する弁によって決定される。本発明による単位は通常、所望の量の本発明の化合物を含有する計量された用量または「ひと吹き(puff)」を投与するように構成される。全体としての1日用量を、1回で、またはより一般には、1日かけて数回に分けて投与することができる。
【0131】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、たとえば坐剤、膣坐剤、または浣腸の形で、直腸または膣に投与することができる。カカオ脂が伝統的な坐剤基剤であるが、様々な代替品を適宜使用してもよい。
【0132】
直腸/経膣投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が挙げられる。
【0133】
眼への投与
本発明の化合物は、通常はpH調整された等張性無菌食塩水中の微粒子化懸濁液または溶液の液滴の形で、眼または耳に直接に投与することもできる。眼および耳への投与に適する他の製剤としては、軟膏、生分解性(たとえば、吸収性のゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(たとえばケイ素樹脂)の植込錠、ウェーハ、レンズ、ならびにニオソームやリポソームなどの微粒子系またはベシクル系が挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸などのポリマー、セルロース系ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖体ポリマー、たとえばゲランガムを、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と共に組み込んでもよい。このような製剤は、イオン導入法によって送達することもできる。
【0134】
眼/耳への投与用の製剤は、即時型および/または調節型の放出がなされるように製剤することもできる。調節型放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出が挙げられる。
【0135】
他の技術
本発明の化合物は、上述の投与方式のいずれかにおいて使用するため、その溶解性、溶解速度、矯味、バイオアベイラビリティ、および/または安定性を向上させるために、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体やポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性の高分子物質と組み合わせることができる。
【0136】
たとえば、薬物−シクロデキストリン複合体は、一般にほとんどの剤形および投与経路に有用であることがわかっている。包接複合体および非包接複合体の両方を使用することができる。薬物との直接の複合体形成に代わるものとして、シクロデキストリンを、補助添加剤として、すなわち担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することもできる。そうした目的で最も一般的に使用されるのは、α、βおよびγシクロデキストリンであり、その例は、PCT出願第WO91/11172号、第WO94/02518号、および第WO98/55148号で見ることができ、これらの開示を全体として参照により本明細書に援用する。
【0137】
活性化合物の投与量は、治療を受ける対象、障害または状態の重症度、投与速度、化合物の性質、および処方する医師の裁量に応じて決まることになる。しかし、有効な投与量は通常、単一用量または分割用量で、体重1kgあたり1日あたり約0.001〜約100mg、好ましくは約0.01〜約35mg/kg/日の範囲にある。70kgのヒトでは、これが約0.07〜約7000mg/日、好ましくは約0.7〜約2500mg/日の量になるはずである。場合によっては、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルで十分となる場合もあれば、有害な副作用を少しも引き起こすことなく、さらに多い用量を使用することができる場合もあり、そうしたより多い用量は通常、数回分の小用量に分割されて、1日かけて投与される。
【0138】
本発明はまた、哺乳動物において異常細胞成長を治療する方法であって、前記哺乳動物に、異常細胞成長の治療に有効な量の本発明の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗薬、挿入用抗生物質(intercalating antibiotic)、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗体、細胞傷害剤、抗ホルモン薬、および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される抗腫瘍薬と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0139】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物および本明細書に記載の医薬組成物と共に使用する抗腫瘍薬は、抗血管新生薬、キナーゼ阻害剤、汎キナーゼ阻害剤(pan kinase inhibitor)、または成長因子阻害剤である。好ましい汎キナーゼ阻害剤としては、米国特許第6,573,293号(Pfizer,Inc.、米国ニューヨーク州)に記載のSutent(商標)(スニチニブ)が挙げられる。抗血管新生薬としては、限定はしないが、以下の薬剤、EGF阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤、およびMMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤などが挙げられる。
【0140】
好ましいVEGF阻害剤としては、たとえば、Genentech,Inc.(カリフォルニア州South San Francisco)の抗VEGFモノクローナル抗体であるAvastin(ベバシズマブ)が挙げられる。その他のVEGF阻害剤として、CP−547,632(Pfizer Inc.、米国ニューヨーク州)、AG13736(Pfizer Inc.)、ZD−6474(AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD−2171、VEGF Trap(Regeneron/Aventis)、バタラニブ(PTK−787、ZK−222584としても知られる:Novartis&Schering AG)、Macugen(ペガプタニブオクタナトリウム、NX−1838、EYE−001、Pfizer Inc./Gilead/Eyetech)、IM862(Cytran Inc.、米国ワシントン州カークランド)、Ribozyme(コロラド州ボールダー)およびChiron(カリフォルニア州Emeryville)の合成リボザイムであるアンジオザイム(angiozyme)、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0141】
本発明を実施する際に有用なVEGF阻害剤は、米国特許第6,534,524号および第6,235,764号に記載されており、両特許をすべての目的のために全体として本明細書に援用する。その他のVEGF阻害剤は、たとえば、WO99/24440、WO95/21613、WO99/61422、米国特許第5,834,504号、WO98/50356、米国特許第5,883,113号、米国特許第5,886,020号、米国特許第5,792,783号、米国特許第6,653,308号、WO99/10349、WO97/32856、WO97/22596、WO98/54093、WO98/02438、WO99/16755、およびWO98/02437に記載されており、これらすべてを全体として参照により本明細書に援用する。
【0142】
他の抗血管新生化合物としては、アシトレチン、フェンレチニド、サリドマイド、ゾレドロン酸、アンジオスタチン、アプリジン、シレングチド(cilengtide)、コンブレタスタチンA−4、エンドスタチン、ハロフジノン、レビマスタット(rebimastat)、レモバブ(removab)、Revlimid、スクアラミン、ウクライン、Vitaxin、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0143】
本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる他の増殖抑制剤として、米国特許第6,080,769号、米国特許第6,194,438号、米国特許第6,258,824号、米国特許第6,586447号、米国特許第6,071,935号、米国特許第6,495,564号、および米国特許第6,150,377号、米国特許第6,596,735号、米国特許第6,479,513号、WO01/40217、米国出願第2003−0166675号において開示され、特許請求されている化合物を含めて、酵素ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害剤および受容体チロシンキナーゼPDGFrの阻害剤が挙げられる。前述の特許および特許出願はそれぞれ、全体として参照により本明細書に援用される。
【0144】
PDGRr阻害剤としては、限定はしないが、国際特許出願公開第WO01/40217号および第WO2004/020431号で開示されているものが挙げられ、これら特許文献の内容は、すべての目的のために全体として本明細書に援用される。好ましいPDGFr阻害剤として、PfizerのCP−673,451ならびにCP−868,596およびその塩が挙げられる。
【0145】
好ましいGARF阻害剤として、PfizerのAG−2037(ペリトレキソールおよびその塩)が挙げられる。本発明を実施する際に有用なGARF阻害剤は、米国特許第5,608,082号で開示されており、この特許文献を、すべての目的のために全体として本明細書に援用する。
【0146】
本明細書に記載の式(I)の化合物および医薬組成物と共に使用することのできる有用なCOX−II阻害剤の例としては、CELEBREX(商標)(セレコキシブ)、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、MK−663(エトリコキシブ)、COX−189(ルミラコキシブ)、BMS347070、RS57067、NS−398、Bextra(バルデコキシブ)、パラコキシブ(paracoxib)、Vioxx(ロフェコキシブ)、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3、SC−58125、およびArcoxia(エトリコキシブ)が挙げられる。さらに、COX−II阻害剤は、米国特許出願US2005−0148627およびUS2005−0148777にも記載されており、これら特許文献の内容を、すべての目的のために全体として本明細書に援用する。
【0147】
特定の実施形態では、抗腫瘍薬は、セレコキシブ(米国特許第5,466,823号)、バルデコキシブ(米国特許第5,633,272号)、パレコキシブ(米国特許第5,932,598号)、デラコキシブ(米国特許第5,521,207号)、SD−8381(米国特許第6,034,256号、実施例175)、ABT−963(WO2002/24719)、ロフェコキシブ(CAS番号162011−90−7)、WO1998/03484に記載のMK−663(またはエトリコキシブ)、WO1999/11605に記載のCOX−189(ルミラコキシブ)、BMS−347070(米国特許第6,180,651号)、NS−398(CAS123653−11−2)、RS57067(CAS17932−91−3)、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイル−フェニル)−1H−ピロール、2−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、またはメロキシカムである。
【0148】
本発明の化合物および本明細書で開示する医薬組成物と組み合わせて使用する抗腫瘍薬としての他の有用な阻害剤として、アスピリン、ならびに限定はしないが以下のもの、すなわち、サルサラート(Amigesic)、ジフルニサル(Dolobid)、イブプロフェン(Motrin)、ケトプロフェン(Orudis)、ナブメトン(Relafen)、ピロキシカム(Feldene)、ナプロキセン(Aleve、Naprosyn)、ジクロフェナク(Voltaren)、インドメタシン(Indocin)、スリンダク(Clinoril)、トルメチン(Tolectin)、エトドラク(Lodine)、ケトロラク(Toradol)、オキサプロジン(Daypro)、およびこれらの組合せを含めた、プロスタグランジンを生成する酵素(シクロオキシゲナーゼIおよびII)を阻害して、プロスタグランジンのレベルを低下させる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。
【0149】
好ましいCOX−I阻害剤として、イブプロフェン(Motrin)、ニュープリン(nuprin)、ナプロキセン(Aleve)、インドメタシン(Indocin)、ナブメトン(Relafen)、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0150】
本発明の化合物および本明細書で開示する医薬組成物と組み合わせて使用する標的薬としては、EGFr阻害剤、たとえば、Iressa(ゲフィチニブ、AstraZeneca)、Tarceva(エルロチニブまたはOSI−774、OSI Pharmaceuticals Inc.)、Erbitux(セツキシマブ、Imclone Pharmaceuticals、Inc.)、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.およびAbgenix Inc.)、HR3(キューバ政府)、IgA抗体(University of Erlangen−Nuremberg)、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGFワクチン、抗EGFrイムノリポソーム(Hermes Biosciences Inc.)、およびこれらの組合せが挙げられる。好ましいEGFr阻害剤として、Iressa、Erbitux、Tarceva、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0151】
他の抗腫瘍薬としては、pan erb受容体阻害剤またはErbB2受容体阻害剤、たとえば、CP−724,714(Pfizer,Inc.)、CI−1033(カネルチニブ、Pfizer,Inc.)、Herceptin(トラスツズマブ、Genentech Inc.)、Omitarg(2C4、ペルツズマブ、Genentech Inc.)、TAK−165(武田)、GW−572016(ロナファーニブ、GlaxoSmithKline)、GW−282974(GlaxoSmithKline)、EKB−569(Wyeth)、PKI−166(Novartis)、dHER2(HER2ワクチン、CorixaおよびGlaxoSmithKline)、APC8024(HER2ワクチン、Dendreon)、抗HER2/neu二重特異性抗体(Decof Cancer Center)、B7.her2.IgG3(Agensys)、AS HER2(Research Institute for Rad Biology&Medicine)、三官能性二重特異性抗体(University of Munich)、mAB AR−209(Aronex Pharmaceuticals Inc)およびmAB 2B−1(Chiron)、ならびにこれらの組合せから選択されるものが挙げられる。
【0152】
好ましいerb選択的抗腫瘍薬として、Herceptin、TAK−165、CP−724,714、ABX−EGF、HER3、およびこれらの組合せが挙げられる。好ましいpan erbb受容体阻害剤として、GW572016、CI−1033、EKB−569、Omitarg、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0153】
その他のerbB2阻害剤として、WO98/02434、WO99/35146、WO99/35132、WO98/02437、WO97/13760、WO95/19970、米国特許第5,587,458号、および米国特許第5,877,305号に記載のものが挙げられ、これら特許文献をそれぞれ、全体として参照により本明細書に援用する。本発明において有用なErbB2受容体阻害剤は、米国特許第6,465,449号および第6,284,764号ならびにWO2001/98277でも開示されており、これら特許文献をそれぞれ、全体として参照により本明細書に援用する。
【0154】
さらに、以下の薬剤、BAY−43−9006(Onyx Pharmaceuticals Inc.)、Genasense(アウグメロセン(augmerosen)、Genta)、パニツムマブ(Abgenix/Amgen)、Zevalin(Schering)、Bexxar(Corixa/GlaxoSmithKline)、Abarelix、Alimta、EPO906(Novartis)、ディスコデルモリド(XAA−296)、ABT−510(Abbott)、Neovastat(Aeterna)、エンザスタウリン(Eli Lilly)、コンブレスタチンA4P(Combrestatin A4P)(Oxigene)、ZD−6126(AstraZeneca)、フラボピリドール(Aventis)、CYC−202(Cyclacel)、AVE−8062(Aventis)、DMXAA(Roche/Antisoma)、Thymitaq(Eximias)、Temodar(テモゾロミド、Schering Plough)、およびRevilimd(Celegene)、ならびにこれらの組合せから、他の抗腫瘍薬を選択することもできる。
【0155】
他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、CyPat(酢酸シプロテロン)、Histerelin(酢酸ヒストレリン)、Plenaixis(アバレリックスデポー)、アトラセンタン(ABT−627)、サトラプラチン(JM−216)、Thalomid(サリドマイド)、Theratope、テミリフェン(temilifene)(DPPE)、ABI−007(パクリタキセル)、Evista(ラロキシフェン)、アタメスタン(Biomed−777)、Xyotax(ポリグルタメート化パクリタキセル)、Targetin(ベキサロチン(bexarotine))、およびこれらの組合せから選択してもよい。
【0156】
さらに、以下の薬剤、Trizaone(チラパザミン)、Aposyn(エキシスリンド)、Nevastat(AE−941)、Ceplene(ヒスタミン二塩酸塩)、Orathecin(ルビテカン)、Virulizin、Gastrimmune(G17DT)、DX−8951f(メシル酸エキサテカン)、Onconase(ランプリナーゼ(ranpirnase))、BEC2(ミツモアブ(mitumoab))、Xcytrin(モテクサフィンガドリニウム)、およびこれらの組合せから他の抗腫瘍薬を選択することもできる。
【0157】
以下の薬剤、CeaVac(CEA)、NeuTrexin(グルクロン酸トリメトレサート(trimetresate glucuronate))、およびこれらの組合せから、別の抗腫瘍薬を選択することもできる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、OvaRex(オレゴボマブ)、Osidem(IDM−1)、およびこれらの組合せから選択することができる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、Advexin(ING 201)、Tirazone(チラパザミン)、およびこれらの組合せから選択することもできる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、RSR13(エファプロキシラル)、Cotara(131I chTNT 1/b)、NBI−3001(IL−4)、およびこれらの組合せから選択することもできる。その他の抗腫瘍薬は、以下の薬剤、Canvaxin、GMKワクチン、PEG Interon A、Taxoprexin(DHA/パシルタキセル(paciltaxel))、およびこれらの組合せから選択することもできる。
【0158】
他の抗腫瘍薬として、PfizerのMEK1/2阻害剤PD325901、Array BiopharmのMEK阻害剤ARRY−142886、Bristol MyersのCDK2阻害剤BMS−387,032、PfizerのCDK阻害剤PD0332991、およびAstraZenecaのAXD−5438、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0159】
さらに、CCI−779(Wyeth)やラパマイシン誘導体のRAD001(Novartis)およびAP−23573(Ariad)などのmTOR阻害剤、HDAC阻害剤、SAHA(Merck Inc./Aton Pharmaceuticals)、ならびにこれらの組合せも利用することができる。その他の抗腫瘍薬として、オーロラ2阻害剤VX−680(Vertex)、およびChk1/2阻害剤XL844(Exilixis)が挙げられる。
【0160】
以下の細胞傷害剤、たとえば、エピルビシン(Ellence)、ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル、Zinecard(デクスラゾキサン)、リツキシマブ(Rituxan)、メシル酸イマチニブ(Gleevec)、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数を、本発明の化合物および本明細書で開示する医薬組成物と組み合わせて使用することもできる。
【0161】
本発明は、限定はしないが、エキセメスタン(Aromasin、Pfizer Inc.)、リュープロレリン(LupronまたはLeuplin、TAP/Abbott/Takeda)、アナストロゾール(Arimidex、Astrazeneca)、ゴスレリン(gosrelin)(Zoladex、AstraZeneca)、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、ホルメスタン、クエン酸タモキシフェン(タモキシフェン、Nolvadex、AstraZeneca)、Casodex(AstraZeneca)、Abarelix(Praecis)、Trelstar、およびこれらの組合せを含めたホルモン療法と同時の本発明の化合物の使用も企図する。
【0162】
本発明はまた、限定はしないが、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、レトロゾール(Femara、Novartis)を含めた抗エストロゲン薬、ビカルタミド、フルタミド、ミフェプリストン、ニルタミド、Casodex(商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド、ビカルタミド)などの抗アンドロゲン薬、およびこれらの組合せなどのホルモン療法剤と同時の本発明の化合物の使用に関する。
【0163】
さらに、本発明は、本発明の化合物を、単独で、または1種または複数の支持療法製品、たとえば、フィルグラスチム(Neupogen)、オンダンセトロン(Zofran)、Fragmin、Procrit、Aloxi、Emend、またはこれらの組合せからなる群から選択される製品と組み合わせて提供する。
【0164】
特に好ましい細胞傷害剤としては、Camptosar、Erbitux、Iressa、Gleevec、Taxotere、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0165】
以下のトポイソメラーゼI阻害剤、すなわち、カンプトテシン、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、オラセシン(Supergen)、エキサテカン(第一)、BN−80915(Roche)、およびこれらの組合せを、抗腫瘍薬として利用することもできる。特に好ましいトポイソメラーゼII阻害剤としては、エピルビシン(Ellence)が挙げられる。
【0166】
アルキル化剤としては、限定はしないが、窒素マスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、テモゾロミド、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルフォスファミド、イホスファミド、KW−2170、マホスファミド、およびミトラクトールが挙げられ、白金錯体アルキル化化合物としては、限定はしないが、シスプラチン、Paraplatin(カルボプラチン)、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、Eloxatin(オキサリプラチン、Sanofi)、またはサトラプラチン(satrplatin)、およびこれらの組合せが挙げられる。特に好ましいアルキル化剤として、Eloxatin(オキサリプラチン)が挙げられる。
【0167】
代謝拮抗薬としては、限定はしないが、メトトレキサート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、単独もしくはロイコボリンと組み合わせた5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、S−1、Alimta(ぺメトレキセド二ナトリウム、LY231514、MTA)、Gemzar(ゲムシタビン、Eli Lilly)、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エチニルシチジン、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキセド(nolatrexed)、オクホスファート、二ナトリウムプレメトレキセド、ペントスタチン、ペリトレキソール(pelitrexol)、ラルチトレキセド、トリアピン(triapine)、トリメトレキセート、ビダラビン、ビンクリスチン、ビノレルビン、またはたとえば、N−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸などの、欧州特許出願第239362号に記載の好ましい代謝拮抗薬のうちの1種、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0168】
抗生物質としては、挿入用抗生物質が挙げられ、限定はしないが、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アンナマイシン(annamycin)、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エピルビシン、ガラルビシン(galarubicin)、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン(nemorubicin)、ネオカルチノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0169】
植物由来の抗腫瘍物質としては、たとえば、有糸分裂阻害剤、たとえば、ビンブラスチン、ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル、およびこれらの組合せから選択されるものが挙げられる。
【0170】
細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害剤としては、アクラルビシン、アモノアフィド(amonafide)、ベロテカン(belotecan)、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ジフロモテカン(diflomotecan)、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、エピルビシン(Ellence)、エトポシド、エキサテカン、ギマテカン(gimatecan)、ルルトテカン(lurtotecan)、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシド(tafluposide)、トポテカン、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数の薬剤が挙げられる。
【0171】
好ましい細胞傷害性トポイソメラーゼ阻害剤として、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、イリノテカンHCl(Camptosar)、エドテカリン、エピルビシン(Ellence)、エトポシド、SN−38、トポテカン、およびこれらの組合せらなる群から選択される1種または複数の薬剤が挙げられる。
【0172】
免疫剤としては、インターフェロンおよび他の数多くの免疫強化薬が挙げられる。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ1a、インターフェロンγ1b(Actimmune)、またはインターフェロンγn1、およびこれらの組合せが含まれる。他の薬剤には、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、TheraCys、ウベニメクス、WF−10、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、レンチナン、メラノーマワクチン(Corixa)、モルグラモスチム、OncoVAX−CL、サルグラモスチム、タソネルミン、テクロイキン(tecleukin)、チマラシン(thymalasin)、トシツモマブ、Virulizin、Z−100、エピラツズマブ、ミツモマブ(mitumomab)、オレゴボマブ、ペムツモマブ(pemtumomab)(Y−muHMFG1)、Provenge(Dendreon)、およびこれらの組合せが含まれる。
【0173】
生体応答修飾物質は、組織細胞の生存、成長、または分化などの、生物の防御機構または生体応答を修飾して、抗腫瘍活性をもたせる作用物質である。このような物質として、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、Picibanil、ウベニメクス、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0174】
本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる他の抗癌剤としては、アリトレチノイン、アムプリゲン(ampligen)、アトラセンタンベキサロテン、ボルテゾミブ、ボセンタン、カルシトリオール、エキシスリンド、フィナステリド、ホテムスチン、イバンドロン酸、ミルテホシン、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペグアスパラガーゼ、ペントスタチン、タザロトン(tazarotne)、Telcyta(TLK−286、Telik Inc.)、Velcade(ボルテマジブ(bortemazib)、Millenium)、トレチノイン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0175】
白金錯体化合物には、限定はしないが、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0176】
カンプトテシン誘導体には、限定はしないが、カンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、イリノテカン、SN−38、エドテカリン、トポテカン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0177】
他の抗腫瘍薬には、ミトキサントロン、l−アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ダカルバジン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、トレチノイン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0178】
CTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原4)抗体などの、抗腫瘍免疫応答を強化することのできる抗腫瘍薬、およびCTLA4をブロックすることのできる他の薬剤、たとえば、MDX−010(Medarex)、および米国特許第6,682,736号で開示されているCTLA4化合物;ならびに他のファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、たとえば、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤などの増殖抑制剤を利用してもよい。さらに、本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる特異的CTLA4抗体として、米国特許第6,682,736号および第6,682,736号で開示されているものが挙げられ、これら両方の特許文献を全体として参照により本明細書に援用する。
【0179】
本発明の組合せ法で使用することのできる特異的IGF1R抗体としては、WO2002/053596で開示されているものが挙げられ、この特許文献を全体として参照により本明細書に援用する。
【0180】
本発明で使用することのできる特異的CD40抗体としては、WO2003/040170で開示されているものが挙げられ、この特許文献を全体として参照により本明細書に援用する。
【0181】
放射線療法に応答してTNFαを発現するTNFerade(GeneVec)などの遺伝子療法薬も、抗腫瘍薬として用いることができる。
【0182】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物およびその医薬組成物と組み合わせてスタチンを使用してもよい。スタチン(HMG−CoAレダクターゼ阻害剤)は、アトルバスタチン(Lipitor(商標)、Pfizer Inc.)、プロバスタチン(provastatin)(Pravachol(商標)、Bristol−Myers Squibb)、ロバスタチン(Mevacor(商標)、Merck Inc.)、シンバスタチン(Zocor(商標)、Merck Inc.)、フルバスタチン(Lescol(商標)、Novartis)、セリバスタチン(Baycol(商標)、Bayer)、ロスバスタチン(Crestor(商標)、AstraZeneca)、ロボスタチン(lovostatin)とナイアシン(Advicor(商標)、Kos Pharmaceuticals)、これらの誘導体および組合せからなる群から選択されるものでよい。
【0183】
好ましい実施形態では、スタチンは、アトルバスタチンおよびロバスタチン、これらの誘導体および組合せからなる群から選択される。抗腫瘍薬として有用な他の薬剤として、Caduetが挙げられる。
【0184】
たとえば特定の疾患または状態を治療する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合もあるので、その少なくとも1種が本発明による化合物を含有する2種以上の医薬組成物を、組成物の共投与に適するキットの形で好都合に組み合わせてもよいことは、本発明の範囲内である。したがって、本発明のキットは、その少なくとも1種が本発明の化合物を含有する2種以上の別個の医薬組成物と、容器、分割されたボトル、または分割されたホイル製袋などの、前記組成物を別々に保持する手段とを含む。このようなキットの例は、錠剤、カプセル剤などの包装に使用されるよく知られたブリスターパックである。
【0185】
本発明のキットは、たとえば経口用と非経口用の、異なる剤形を投与する、別個の組成物を異なる投与間隔で投与する、または組成物の用量を互いに用量設定するのに特に適する。服薬遵守を援助するために、キットは、通常は投与の説明書を含み、記憶補助を備えていてもよい。
【実施例】
【0186】
以下の実施例において、単一のキラル中心を有する分子は、別段の指摘または構造式もしくは化学名による表記がない限り、ラセミ混合物として存在する。2つ以上のキラル中心を有する分子は、別段の指摘または構造式もしくは化学名による表記がない限り、ジアステレオ異性体のラセミ混合物として存在する。単一の鏡像異性体/ジアステレオ異性体は、当業者に知られている方法によって得ることができる。
【0187】
1H−NMRスペクトルは、300MHzまたは400MHzで作動させたBruker製機器で記録し、13C−NMRスペクトルは、75MHzで作動させて記録した。
【0188】
本明細書では、以下の略語を使用する場合がある:Et2O(ジエチルエーテル)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、THF(テトラヒドロフラン)、DCM(ジクロロ−メタン)、DMA(ジメチルアセタール)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、LiHMDSまたはLHMDS(リチウムヘキサメチルジシラジド)、TBME(tert−ブチルメチルエーテル)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、DMSOまたはdmso(ジメチルスルホキシド)、MeOH(メタノール)、EtOH(エタノール)、BuOH(ブタノール)、EtOAc(酢酸エチル)、THF(テトラヒドロフラン)、Ac(アセチル)、Me(メチル)、Et(エチル)、Ph(フェニル)、TMSI(トリメチルシリルヨージド)、DSC(N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート)、CDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)、Boc(tert−ブトキシカルボニル)、nBuLi(n−ブチルリチウム)、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)、HOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)、DME(1,2−ジメトキシエタン)、Pd(dba)2(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0))、およびRTまたはrt(室温)。
【0189】
(実施例1)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物1a(51mg、0.11mmol)のDMF(2mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(20mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物1(23mg、0.043mmol)が白色の固体として収率39%で得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.94 (s, 6 H), 2.35 (s, 1 H), 3.72 (d,
J=13.14 Hz, 1 H), 3.96 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 4.27 - 4.33 (m, 2 H), 4.33 - 4.48
(m, 4 H), 6.78 (s, 2 H), 6.90 (s, 1 H), 7.28 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.35 (d,
J=1.52 Hz, 1 H), 7.36 (s, 1 H), 7.49 (s, 1 H). LCMS (M+H)+
535.
元素分析:C23H22Cl3N7O2・1 H2Oの計算値: C, 49.97; H, 4.38; N, 17.73. 実測値: C, 50.36; H, 4.23; N, 17.40.
【0190】
【化16】
【0191】
化合物1a:4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン
化合物1c(55.7mg、0.11mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、塩化水素(0.5mL、2mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物1aを淡黄色の固体として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物1の合成に使用した。
【0192】
【化17】
【0193】
化合物1b:イミダゾール−1−カルボン酸ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イルアミド
ビシクロ[1.1.1]−ペンタン−1−アミン塩酸塩(19mg、0.16mmol)および1、1’−カルボニルジイミダゾール(32mg、0.192mmol)をDMF(2mL)に溶かした溶液に、トリエチルアミン(0.1mL、0.5mmol)を加えた(透明な溶液が懸濁液になった)。化合物1bの単離をそれ以上行わずに、この懸濁液を化合物1の合成に使用した。
【0194】
化合物1c:2−アミノ−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物1d(98mg、0.25mmol)のDMF(2mL)溶液に、炭酸カリウム(100mg、0.7mmol)および化合物1e(120mg、0.5mmol)を順次加えた。混合物を120℃で40分間マイクロ波装置にかけた。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加えて、撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 50→60%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物1c(62.7mg、収率48.3%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.38 - 1.48 (m, 9 H), 3.63 (t, J=13.89
Hz, 1 H), 3.91 (dd, J=24.00, 13.39 Hz, 1 H), 4.28 - 4.34 (m, 2 H), 4.40 (d,
J=3.54 Hz, 4 H), 6.81 (br. s., 2 H), 7.27 (s, 1 H), 7.32 - 7.34 (m, 1 H), 7.39
(s, 1 H), 7.55 (s, 1 H). LCMS (M+H)+ 527.
【0195】
【化18】
【0196】
化合物1d:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物1g(770mg、3.7mmol)および化合物1f(1000mg、2.7mmol)を1,4−ジオキサン(45mL)に混ぜた混合物に、炭酸ナトリウム(1.2g、11mmol)の入った5.6mLのH2Oを加えた。混合物を窒素で数回パージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(270mg)を加えた。反応混合物および得られる溶液を12時間80℃に加熱した。反応混合物に水(50mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 30→40%のEtOAcヘキサン)溶液によって精製して、化合物1d(590mg、収率40%)を淡褐色の泡沫として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.37 - 1.47 (m, J=12.88 Hz, 9 H), 4.07
- 4.24 (m, 2 H), 4.42 (d, J=7.58 Hz, 2 H), 6.82 (s, 2 H), 6.95 (d, J=1.77 Hz, 1
H), 7.08 - 7.21 (m, 1 H), 10.67 (s, 1 H). LCMS (M+H)+
398. 元素分析:C17H18Cl2N4O3・0.5 CH2Cl2の計算値: C, 49.80; H, 4.36; N, 12.74. 実測値: C, 47.41; H, 4.46; N, 12.71.
【0197】
【化19】
【0198】
化合物1e:メタンスルホン酸2−(4−クロロ−ピラゾール−1−イル)−エチルエステル
4−クロロピラゾール(342mg、3.3mmol)のDMF(10mL)溶液に、N2中で水素化ナトリウム(136mg、3.4mmol、60%鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。反応液をシリンジで、メタンスルホン酸2−ブロモ−エチルエステル(820mg、4mmol、以下の文献手順に従って調製、J.Med.Chem.1983、26(8)、p1168)中に移した。混合物を70℃で3時間撹拌した。混合物に水(30mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 20→30%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物1e(59mg、収率8%)を褐色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 2.89 (s, 3 H), 4.38 - 4.43 (m, 2 H),
4.55 - 4.61 (m, 2 H), 7.49 (s, 1 H), 7.49 (s, 1 H).
【0199】
化合物1f:2−アミノ−4−ヨード−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
エチル2−アミノ−4−クロロ−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキシレート(化合物I(C)、PG1はEtOC(O)−であり、XはClである)(30.6g、126mmol、1.0当量)を750mLのアセトニトリルに懸濁させた懸濁液に、ヨードトリメチルシラン(100mL、703mmol、5.6当量)を加え、得られる反応混合物を4時間加熱還流した。周囲温度に冷却した後、反応混合物をMeOH(27mL)で失活させ、真空中で濃縮して乾燥させた。トルエン(150mL)との同時蒸発によって微量MeOHを除去した。得られる残渣をEt2O(200mL)で処理し、沈殿を濾過し、Et2Oで洗浄した。次いで、未精製の褐色粉末を、還流状態にあるEtOAc(250mL)中で撹拌し、周囲温度に冷却し、固体を濾過によって収集し、酢酸エチルで洗浄して、所望の生成物を褐色の粉末(52.2g、約79%)として得た。この材料をそれ以上精製せずに次のステップの反応に使用した。1H NMR (300 MHz, DMSO-D6) δ ppm 9.47 (br s, 2H), 4.37 (s, 2H), 4.25
(s, 2H). LCMS (M+H)+: 263.2.
【0200】
上記褐色粉末(52.2g、約100mmol)をジオキサン(150mL)および水(150mL)に溶解させた。さらに、ジイソプロピルエチルアミン(69.7mL、400mmol)およびBoc2O(43.6g、200mmol)を加え、混合物を45℃に温めた。混合物を周囲温度で撹拌した後、さらに1.5時間NMRにかけた。生成物をEtOAc(3.0L)および飽和NaHCO3(水溶液)(1.0L)中に注ぎ、層を分離し、水層をEtOAc(1.0L)でもう一度洗浄した。有機層を合わせて乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空中で濃縮した。EtOAc(3L)を溶離液として使用しながら、生成物をシリカで濾過したが、生成物は完全に純粋ではなかった。EtOAc(2L)を使用しながらシリカプラグで濾過すると、化合物1f(8g、22%)が黄褐色の固体として得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm 1.44 (d, J=4.80 Hz, 9 H), 4.25 (d,
J=13.14 Hz, 2 H), 4.42 (d, J=8.34 Hz, 2 H), 7.06 (s, 2 H). LCMS (M+H)+:
348.2.
【0201】
【化20】
【0202】
化合物I(C)の調製:
【0203】
【化21】
ステップ1.エチルN−(エトキシカルボニル)−β−アラニネート(c)
アクリル酸エチル(a)(50mL、460mmol、1.1当量)、グリシンエチルエステル塩酸塩(b)(58.4g、418mmol、1当量)、およびトリエチルアミン(58.3mL、418mmol、1当量)の入った無水EtOH(960mL)を周囲温度で約72時間撹拌した。反応が完了した後、真空中で揮発性物質成分を除去し、未精製の中間体(c)をそのまま続けて使用した。
【0204】
ステップ2.エチルN−(エトキシカルボニル)−N−(2−エトキシ−2−オキソエチル)−β−アラニネート(e)
未精製中間体(c)(418mmol)をCH2Cl2(275mL)に溶解させ、トリエチルアミン(58.3mL、418mmol)を加えた後、クロロギ酸エチル(d)(39.8mL、418mmol)を加えた。反応液を周囲温度で約24時間撹拌した。反応が完了した後、真空中で揮発性物質成分を除去した。次いで粗生成物を真空中(約5mmHg)で蒸留し、EtOAcに溶解させ、それを飽和KHSO4で3回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。濾過した後、真空中で揮発性物質成分を除去して、中間体(e)を透明な油状物(74.8g、272mmol)として、2ステップで65%の収率で得た。
【0205】
ステップ3.ジエチル4−オキソピロリジン−1,3−ジカルボキシレート(f)
氷浴で冷却したNaOEt(32.6mL)の無水EtOH(41.7mL)溶液(EtOH中21重量%)に、窒素雰囲気中で中間体(e)(18.0g、65.2mmol)を加えた。氷浴を取り外し、TLCによる観察で縮合が完了するまで、混合物を80℃で約12時間加熱した。混合物を氷/水上に注ぎ、EtOAcで抽出した。溶媒をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発して、未精製中間体(f)をオフホワイトの固体(14.05g)として得、これを精製せずに続けて使用した。
【0206】
ステップ4.エチル2−アミノ−4−ヒドロキシ−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキシレート(h)
中間体(f)(14.05g)および炭酸グアニジン(g)(16.6g、91.9mmol)の懸濁液をt−ブタノール(147mL)中で約6時間還流させた。混合物を約2時間かけて周囲温度に冷ました。真空中で揮発性物質成分を除去し、水を加えた。KHSO4を使用してpHを約6〜7に調整した。得られるスラリーを濾過して固体を収集し、これを水で洗浄した後、EtOAcで洗浄した。固体を真空乾燥して、中間体(h)をクリーム色の固体(11.9g、53.1mmol)として収率87%で得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm 11.01 (s, 1H), 6.97 (s, 0.5H, 互変異性体の可能性), 6.70 (s, 2H), 4.25 (s, 4H), 4.13-4.03
(m, 2H), 1.22 (t, 3H). LCMS (M+H)+: 225.2.
【0207】
ステップ5.エチル2−アミノ−4−クロロ−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキシレートI(C)
中間体(h)(11g、49mmol)を2回トルエンと共沸させた。無水アセトニトリル(250mL)およびPOCl3(25mL、270mmol)を加え、混合物を約2.5時間還流させた。追加のPOCl3(50mL)を加え、混合物をさらに2時間還流させた。揮発性物質成分を真空中にて40℃で濃縮して、赤色の溶液を得た。溶液の移し換えが容易になるまで最小量の無水アセトニトリルを加え、その後これを大型ビーカー中の氷上に注いだ。フラスコを少量のアセトニトリルでさらにすすぎ、これを氷に加えた。氷混合物に水(約50mL)を加えて、撹拌を容易にした。氷スラリー混合物が強塩基性になるまで、濃NH4OH(25mL)を撹拌しながらゆっくりと加え、次いで、まだ撹拌している氷のスラリーに50%NaOH水溶液(25mL)も加えた。氷をさらに加えた。氷スラリーとして約5分間撹拌した後、EtOAcを加えた。ビーカーでさらに数分撹拌した後、水を加えて氷の融解を促進した。混合物を分液漏斗に注ぎ、層を分配した。水層をEtOAcで3回抽出した。EtOAc抽出物を合わせて飽和したKHSO4水溶液で2回、飽和NaHCO3水溶液で2回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、淡いピンク色の粉末を得、これを酢酸エチルでトリチュレートして、化合物I(C)を淡いピンク色の固体(6.8g、28mmol)として収率57%で得た。HPLC/LCMS純度は、90%より高かった。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm 7.20 (s, 2H), 4.48 (s, 2H), 4.45 (s,
2H), 4.17-4.08 (m, 2H), 1.24 (t, 3H). LCMS (M+H)+: 243.2, 245.2.
【0208】
化合物1gの調製:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシフェニルボロン酸
【0209】
【化22】
化合物aの調製:
3,5−ジクロロ−フェノール(70g、0.43mol)の無水トルエン(1L)溶液に、N2雰囲気中にて0℃でNaH(51.5g、1.29mol)を少量ずつ加えた。加えた後、得られる混合物を室温に温め、20分間撹拌した。次いで懸濁液を再び0℃に冷却し、ヨウ素(253.81g、91.5mol)をゆっくりと加えた。次いで反応混合物を室温で終夜撹拌した。TLC(石油エーテル/CH2Cl2 1:1)によって、出発材料が完全に消費されたことが示された。反応混合物を1N HCl(1L)で失活させ、エーテル(1L)で希釈した。分離した有機層をブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、未精製の化合物2を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/CH2Cl2 5:1〜1:1)によって精製して、純粋な化合物a(85g、収率:68%)を白色の固体として得た。
【0210】
化合物bの調製:
化合物a(67g、0.23mol)、クロロメトキシ−エタン(31.8g、0.29mol)、およびCs2CO3(63.7g、0.2mol)をDMF(600mL)に混ぜた混合物を、室温で2時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc 2:1)によって、化合物aが完全に消費されたことが示された。反応混合物をH2O(500mL×3)およびブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、未精製の化合物3を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン 1:50)によって精製して、純粋な化合物b(80g、100%)を黄色の固体として得た。
【0211】
化合物cの調製:
化合物b(77g、0.22mol)、4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン(57g、0.44mol)、およびEt3N(92mL、0.66mol)をジオキサン(500mL)に溶かした溶液を、30分間N2でパージした。次いで、得られる混合物に、Pd(OAc)2(2.7g、0.011mol)およびビフェニル−2−イル−ジシクロヘキシル−ホスファン(8.5g、0.022mol)を加えた。加えた後、反応混合物を80℃で1.5時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc 30:1)によって、化合物bが完全に消費されたことが示された。得られる混合物を飽和NH4Cl(500mL)、H2O(500mL)、およびブライン(500mL)で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、未精製の化合物cを得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc 5:1〜1:1)によって精製して、純粋な化合物c(35g、収率:45%)を褐色の固体として得た。
【0212】
化合物1gの調製:
化合物c(35g、0.1mol)を無水CH2Cl2(200mL)に溶かした撹拌した溶液に、N2雰囲気中にて0℃でBBr3(125g、0.5mol)を滴下した。20分間撹拌した後、反応混合物を氷水中に注ぎ、3N NaOH(100mL)によってpH約10に塩基性化し、有機層を分離した。分離した水層を1N HCl(500mL)でpH約3に調整し、EtOAc(500mL×3)で抽出し、有機層を合わせてブライン(1.0L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物1g(39.7g、収率:80%)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 6.875-6.878 (d, 1H), 6.727-6.737 (d, 1H).
【0213】
(実施例2)
2−アミノ−N−シクロプロピル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物2a(42mg、0.11mmol)のDMF(3mL)溶液に、炭酸カリウム(46mg、0.33mmol)、化合物2b、および化合物2c(82mg、0.5mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて120℃で40分間加熱した。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加え、撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を、分取HPLCによって精製して、化合物2(31.5mg、収率56%)を白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.35 - 0.45 (m, 2 H), 1.84 (s, 1 H),
3.69 (d, J=13.39 Hz, 1 H), 3.95 (dd, J=13.01, 1.39 Hz, 1 H), 4.13 - 4.47 (m, 6
H), 6.36 (s, 1 H), 6.77 (s, 2 H), 7.27 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.33 (d, J=1.77 Hz,
1 H), 7.35 (s, 1 H), 7.48 (s, 1 H). LCMS (M+H)+ 510.
元素分析:C21H20Cl3N7O2・1.25 H2Oの計算値: C, 47.47; H, 4.27; N, 18.45. 実測値: C, 47.13; H, 4.01; N, 18.72.
【0214】
【化23】
【0215】
化合物2a:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸シクロプロピルアミド
化合物1g(668g、3.2mmol)および化合物III(B)−1(1.1g、3.1mmol)を1,4−ジオキサン(30mL)に溶かした溶液に、炭酸ナトリウム溶液(7.8mL、2M、9.2mmol)を加えた。混合物を15分間N2でパージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)(355mg、0.3mmol)を加えた。得られる混合物を80℃で12時間撹拌した。反応混合物をCeliteパッドで濾過し、MeOHで十分に洗浄した。濾液を減圧によって濃縮した。残渣をEtOAc(2×500mL)とブライン(100mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色の油状物を得た。この黄色の油状物をCH2Cl2およびヘキサンで処理し、沈殿を収集し、ヘキサンで十分に洗浄して、化合物2a(1.1g、97%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.33 - 0.44 (m, 2 H), 0.46 - 0.59 (m, 2 H), 0.80 - 0.91 (m, 1
H), 4.11 (br. s., 2 H), 4.39 (s, 2 H), 6.45 (d, J=2.78 Hz, 1 H), 6.74 - 6.84
(m, 2 H), 6.91 - 7.00 (m, 1 H), 7.14 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 10.64 (br. s., 1 H).
LCMS (M+H)+: 380.
【0216】
【化24】
【0217】
化合物III(B)−1:2−アミノ−4−ヨード−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸シクロプロピルアミド
化合物I(C)(8.36g、24.7mmol)のACN(200mL)懸濁液に、室温でヨードトリメチルシラン(25mL、176mmol)を加えた。混合物を90℃で3時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、次いでMeOH(10mL)で失活させ、減圧により濃縮した。残渣をEt2O(100mL)で処理し、沈殿を濾過によって収集し、エーテルで十分に洗浄して、4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンのHI塩を褐色の固体(14.4g、81%)として得た。この粗生成物は、それ以上精製せずに次の反応にすぐに使用することができた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 4.25 (t, J=4.80 Hz, 1 H), 4.29 - 4.47
(m, 3 H), 6.02 (br. s., 2 H), 9.42 (br. s., 1 H). LCMS (M+H)+: 263.
【0218】
4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンHI塩(2590mg、5mmol)のDMF(10mL)溶液に、化合物10aの(5mLのDMF)溶液およびTEA(2.8mL、20mmol)を加えた。混合物を65℃で2時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OHジクロロメタン溶液)によって精製して、化合物III(B)−1を淡黄色の固体(1.1g、収率62%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.38 - 0.48 (m, 2 H), 0.51 - 0.64 (m,
2 H), 2.53 - 2.59 (m, 1 H), 4.24 (s, 2 H), 4.36 - 4.44 (m, 2 H), 6.56 (d,
J=2.78 Hz, 1 H), 6.96 - 7.10 (m, 2 H). LCMS (M+H)+: 346.0.
【0219】
【化25】
【0220】
化合物2bおよび2cの調製:4−クロロ−1−(2−ブロモ−エチル)−1H−ピラゾールおよび4−クロロ−1−(2−クロロ−エチル)−1H−ピラゾール
クロロピラゾール(500mg、4.9mmol)のDMF(8mL)溶液に、室温で水素化ナトリウム(293mg、7.3mmol、60%の鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で40分間撹拌した。次いで、混合物にカニューレで1−ブロモ−2−クロロエタン(856mg、5.9mmol、DMF(1mL)溶液)を加えた。混合物を12時間60℃に加熱した。反応混合物に水(20mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、蝋状の油状物残渣を得た。LC/MSおよび1H−NMRによって、これが化合物2bと化合物2cの2種の生成物の混合物であることが示された(498mg、収率61.9%)。
【0221】
(実施例3)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−クロロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物3a(50mg、0.11mmol)のDMF(2mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(20mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物2(34mg、0.072mmol)が白色の固体として収率63%で得られた。1H NMR (400 MHz, dmso-d6) δ ppm 1.89 - 1.97 (m, 6 H), 1.99 (s, 3 H), 2.26 - 2.39 (m, 1 H), 3.49
(d, J=12.38 Hz, 1 H), 3.82 (dd, J=12.76, 1.89 Hz, 1 H), 4.19 - 4.46 (m, 6 H),
6.01 (t, J=2.02 Hz, 1 H), 6.67 (s, 2 H), 6.82 (s, 1 H), 6.99 (s, 1 H), 7.02 (d,
J=1.52 Hz, 1 H), 7.19 (d, J=2.02 Hz, 1 H), 7.30 (d, J=1.26 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 481.
【0222】
【化26】
【0223】
化合物3a:4−[4−クロロ−2−メチル−6−(2−ピラゾール−1−イル−エトキシ)−フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン(110646−545)
化合物3b(58mg、0.12mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、塩化水素(0.5mL、2mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物3aを淡黄色の固体残渣として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物1の合成に使用した。
【0224】
【化27】
【0225】
化合物3b:2−アミノ−4−[2,4−ジクロロ−6−(2−ピラゾール−1−イル−エトキシ)−フェニル]−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物3c(96mg、0.26mmol)のDMF(2mL)溶液に、炭酸カリウム(100mg、0.7mmol)および1−(2−ブロモ−エチル)−1H−ピラゾール(文献の手順に従って調製:Org.Letters、2006、8(10)、p.2043)(67mg、0.38mmol)を順次加えた。混合物を120℃で40分間マイクロ波装置にかけた。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 100%のEtOAc)によって精製して、化合物3b(69.3mg、収率58%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。
1H NMR
(400 MHz, dmso-d6) δ
ppm 1.46 (s, 9 H), 1.99 (s, 3 H), 3.39 - 3.59 (m, 1 H), 3.77 (d, J=22.48 Hz, 1
H), 4.20 - 4.28 (m, 1 H), 4.29 - 4.34 (m, 3 H), 4.34 - 4.45 (m, 2 H), 6.03 (q,
J=2.02 Hz, 1 H), 6.70 (s, 2 H), 6.98 (s, 1 H), 7.03 (s, 1 H), 7.24 (dd, J=4.80,
2.02 Hz, 1 H), 7.31 (dd, J=15.92, 1.52 Hz, 1 H). LCMS (M+H)+
472.
【0226】
【化28】
【0227】
化合物3c:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物3d(300mg、1.6mmol)および化合物1f(583mg、1.6mmol)を1,4−ジオキサン(10mL)に混ぜた混合物に、炭酸ナトリウム(512mg、4.8mmol)の入った2.4mLのH2Oを加えた。混合物を数回窒素でパージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)(116mg)を加えた。反応混合物および得られる溶液を、マイクロ波装置に入れて120℃で40分間加熱した。反応混合物に水(50mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 60→70%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物3c(361mg、収率59%)を淡褐色の泡沫として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.38 - 1.46 (m, 9 H), 2.03 (s, 3 H),
4.05 - 4.48 (m, 4 H), 6.71 (s, 2 H), 6.80 (s, 1 H), 6.82 (s, 1 H), 10.07 (s, 1
H). LCMS (M+H)+ 378.
【0228】
【化29】
【0229】
化合物3d:5−クロロ−2,3−ジメチル−フェノールボロン酸
【0230】
【化30】
ステップ#1手順:氷−NaCl浴に浸した、出発材料(SM)(5.46mL、45mmol、1.0当量)をDCM(300mL)に溶かした透明な溶液に、Ipy2BF4(20.3g、53.4mmol、1.20当量)を加えた。得られた溶液を、浴が0℃の状態で撹拌し、次いでゆっくりと室温に温めた。反応液は、橙色の溶液から橙色の懸濁液へとゆっくりと変わった。次いで反応液を室温で終夜撹拌した。反応液をDCM(200mL)で希釈し、飽和Na2S2O3水溶液で洗浄した。有機層を収集し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルのカラムにかけて、10.50gの所望の生成物を褐色の固体として収率88%で得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 4.05 (br. s., 2 H), 7.02 (d, J=2.27
Hz, 1 H), 7.50 (d, J=2.27 Hz, 1 H).
【0231】
ステップ#2手順:出発材料(1.00g、3.74mmol、1.0当量)、CuI(73mg、0.374mmol、0.10当量)、1,10−フェナントロリン(139mg、0.748mmol、0.20当量)、Cs2CO3(2.49g、7.48mmol、2.0当量)、MeOH(10mL)の混合物を、マイクロ波条件下(120℃、2時間、撹拌)で反応させた。LC−MSによって、反応が完了しており、化合物の大半が所望の生成物であることが示された。各回を1グラムの規模にして、反応を10回繰り返した。これら4つのすべての反応液を合わせ、MeOHおよびEtOAcで希釈した。混合物をセライトに通して、不溶性物質を除去した。黒色の濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、9:1〜4:1のヘプタン/EtOAcを使用しながらシリカゲルのカラムにかけて、4.0g(全4回)の所望の生成物を褐色の固体として収率62.3%で得た。
【0232】
ステップ#3手順:0℃で、出発材料(2.68g、15.6mmol、1.0当量)を25mLの濃HCl(37%)に懸濁させた懸濁液に、NaNO2(2.27g、31.2mmol、2.0当量)を25mLの水に溶かした溶液を加えた。0℃で10分間撹拌した後、橙色の懸濁液が得られ、ジアゾニウム塩化合物が生成した。ジアゾニウム塩にKI(10.4g、62.5mmol、4.0当量)の水(50mL)溶液を加えた。加えている間、多量の固体材料が生成した。次いで反応液を室温で終夜撹拌した。室温で終夜撹拌した後、反応液を300mLのEtOAcで希釈した。有機層を収集し、1.0MのNa2S2O3で洗浄した。次いで有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をISCOのカラムにかけて(10%のEtOAcヘプタン溶液)、3.30gの所望の生成物を収率75%で黄色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 2.45 (s, 3 H), 3.88 (s, 3 H), 6.64 (d,
J=1.76 Hz, 1 H), 6.91 (d, J=1.76 Hz, 1 H).
【0233】
ステップ#4手順:マイクロ波対応20mL容バイアルに、Pd(OAc)2(39.7mg、0.177mmol、0.10当量)、出発材料(500mg、1.77mmol、1.0当量)、ジオキサン(12mL)、ピナコールボラン(0.514mL、3.54mmol、2.0当量)、Et3N(0.74mL、5.31mmol、3.0当量)、およびホスフィン配位子(124mg、0.354mmol、0.20当量)を加えた。混合物をN2でパージし、マイクロ波装置に入れて120℃で30分間反応させた。反応液をEtOAc(100mL)で希釈し、セライトで濾過した。濾液をブライン(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮した。残渣を、10%のEtOAc/ヘプタンを使用しながらISCOのカラムにかけて、4.00gの所望の生成物を収率80%で黄白色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 1.38 (s, 12 H), 2.32 (s, 3 H), 3.76
(s, 3 H), 6.64 (d, J=1.51 Hz, 1 H), 6.76 (d, J=1.01 Hz, 1 H).
【0234】
ステップ#5手順:出発材料(1.50g、5.02mmol)を20の無水のジクロロメタンに溶かした0℃の溶液に、三臭化ホウ素(12.6mL、12.6mml、2.5当量、1.0M DCM溶液)を5分間かけてゆっくりと加えた。0℃で15分間撹拌した後、HPLCによれば反応が完了し、20mLの氷水中に注いだ。二相性の混合物を激しく撹拌し、1MのNaOH(10mL)を用いて水相をpH=約10とした。有機層を分離し、廃棄した。水相を1MのHClでpH=約3に酸性化し、白色の沈殿を発生させ、濾過し、室内真空下にて60℃で乾燥させて、500mg(収率53%)の所望の生成物を白色の固体として得た。
【0235】
(実施例4)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物4a(200mg、0.49mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(30mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物4(161mg、収率63.5%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.94 (s, 6 H), 2.34 (s, 1 H), 3.65 (d,
J=13.14 Hz, 1 H), 3.93 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 4.20 - 4.28 (m, 2 H), 4.30 - 4.43
(m, 4 H), 6.79 (s, 2 H), 6.89 (br. s., 1 H), 7.23 - 7.29 (m, 2 H), 7.34 (d,
J=1.77 Hz, 1 H), 7.36 (d, J=4.55 Hz, 1 H). LCMS (M+H)+
519.
元素分析:C23H22Cl2FN7O2・1 H2Oの計算値: C, 51.50; H, 4.51; N, 18.28. 実測値: C, 51.81; H, 4.34; N, 18.02.
【0236】
【化31】
【0237】
化合物4a:4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン
化合物4b(249mg、0.49mmol)のCH3OH(10mL)溶液に、塩化水素(2.4mL、9.8mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物4aを淡黄色の固体残渣として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物1の合成に使用した。
【0238】
【化32】
【0239】
化合物4b:2−アミノ−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物1d(270mg、0.68mmol)のDMF(8mL)溶液に、炭酸カリウム(282mg、2mmol)および化合物4c(674mg、1.4mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて120℃で40分間加熱した。反応混合物に水(20mL)およびEtOAc(2×50mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 90→100%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物4b(194mg、収率56%)を淡黄色の泡沫として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.34 - 1.50 (m, 9 H), 3.48 - 3.64 (m,
J=6.06 Hz, 1 H), 3.79 - 3.97 (m, 1 H), 4.21 - 4.31 (m, 2 H), 4.30 - 4.50 (m, 4
H) 6.83 (s, 2 H), 7.27 (s, 1 H), 7.30 - 7.38 (m, 2 H), 7.42 (dd, J=10.86, 4.55
Hz, 1 H). LCMS (M+H)+ 509.
【0240】
【化33】
【0241】
化合物4cおよび4dの合成:4−フルオロ−1−(2−ブロモ−エチル)−1H−ピラゾールおよび4−フルオロ−1−(2−クロロ−エチル)−1H−ピラゾール
フルオロピラゾール(1000mg、11.6mmol)のDMF(7mL)溶液に、室温で水素化ナトリウム(700mg、17.4mmol、60%の鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で40分間撹拌した。次いで混合物にカニューレで1−ブロモ−2−クロロエタン(2000mg、13.9mmol、DMF(1mL)溶液)を加えた。混合物を12時間60℃に加熱した。反応混合物に水(50mL)を加え、THF(2×200mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、蝋状の油状物残渣を得た。LC/MSおよび1H−NMRによって、これが化合物4cと化合物4dの2種の生成物の混合物であることが示された(1000mg、収率57.4%)。
【0242】
フルオロピラゾールの合成:フルオロピラゾールは、Organic Letters 1995、3、p239に記載の方法の変法によって調製および単離した。
【0243】
【化34】
ステップ#1手順:
化合物1(750g、5.7mol)およびEt3N(948mL、6.816mol)をCH2Cl2(2L)に溶かした溶液に、0℃でTsCl(1295.4g、6.8mol)を少量ずつ加えた。得られる混合物を室温で終夜撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=5:1)によって反応の完了が示された。ブライン(5L)を加え、混合物をCH2Cl2(3×10L)で抽出した。有機層を合わせてブライン(2×5L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これを、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc 20:1〜5:1)によって精製して、化合物2(1500g、92%)を白色の固体として得た。
【0244】
ステップ#2手順:
化合物2(100g、0.35mmol)のTHF(1.5L)溶液に、−85℃でn−BuLi(336ml、0.8mol)を滴下添加した。次いで混合物を−85℃でもう10分間撹拌した。反応混合物を3N HCl水溶液(300mL)で失活させ、室温に温めた。混合物を飽和NaHCO3水溶液でpH=7に塩基性化し、Et2O(3×5L)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物3(53.84g、58%)を褐色の固体として得、これをそのまま次のステップに使用した。
【0245】
ステップ#3手順:
NHEt2(50g、0.7mol)、TBAF(56.3mL、0.05639mol)、およびEt3N(78mL、0.6mol)をCH3CN(300mL)に溶かした溶液に、0℃で化合物3(150g、0.5639mol)のCH3CN(500mL)溶液を加えた。得られる溶液を室温で終夜撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=1:1)によって反応の完了が示された。混合物をブライン(300mL)で希釈し、EtOAc(500mL×3)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=1:1)によって精製して、化合物4(60g、73%)を褐色の油状物として得た。
【0246】
ステップ#4手順:
化合物4(100g、0.7mol)およびNH2NH2.2HCl(79.6g、0.8mol)をEtOH(200mL)およびH2O(150mL)に混ぜた混合物を78℃で4時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=1:1)によって反応の完了が示された。反応混合物を室温に冷ました。混合物を飽和NaHCO3水溶液でpH=7に塩基性化し、EtOAc(3×2L)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=1:1)によって精製して、フルオロピラゾール(36.25g、61%)を褐色の固体として得た。
1H NMR
(400 MHz, dmso-d6) δ
ppm 7.64 (br. s., 2 H), 12.61 (br. s., 1 H).
【0247】
(実施例5)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物4a(195mg、0.48mmol)のDMF(4mL)溶液に、化合物5aの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(30mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。油状物残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物5(192mg、収率75.5%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, dmso-d6) δ ppm 3.66 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 3.82 (br.
s., 2 H), 3.98 (d, J=12.63 Hz, 1 H), 4.26 (d, J=4.04 Hz, 2 H), 4.30 - 4.38 (m,
2 H), 4.42 (br. s., 2 H), 6.83 (s, 2 H), 6.99 (s, 1 H), 7.23 (d, J=4.29 Hz, 1
H), 7.29 (d, J=1.52 Hz, 1 H), 7.35 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.37 (d, J=4.55 Hz, 1
H). LCMS (M+H)+ 534.
元素分析:C20H17Cl2F4N7O2・0.25 H2Oの計算値: C, 44.58; H, 3.27; N, 18.20. 実測値: C, 44.87; H, 3.34; N, 17.86.
【0248】
【化35】
【0249】
化合物5a:1−[(Z)−メチルイミノメチル]−3−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)−1−ビニル−尿素
2,2,2−トリフルオロエチルアミン(72mg、1mmol)および1、1’−カルボニルジイミダゾール(135mg、0.8mmol)をDMF(4mL)に溶かした溶液(無色透明な溶液)に、TEA(1.3mL、0.8mmol)を加えた。化合物5aをさらに単離せずに、この溶液を化合物5の合成に使用した。
【0250】
(実施例6)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物6a(71mg、0.17mmol)のDMF(3mL)溶液に、炭酸カリウム(120mg、0.85mmol)および化合物6b(89mg、0.4mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて100℃で60分間加熱した。反応混合物に水(20mL)およびEtOAc(100mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣を分取HPLCによって精製して、化合物6(30mg、収率33%)を白色の固体として得た。
1H NMR
(400 MHz, DMSO-d6) δ
ppm 1.56 (t, J=18.95 Hz, 3 H), 3.43 - 3.55 (m, 2 H), 3.69 (d, J=13.14 Hz, 1 H),
4.00 (d, J=12.88 Hz, 1 H), 4.20 - 4.28 (m, 2 H), 4.31 - 4.37 (m, 2 H), 4.40 -
4.47 (m, 2 H), 6.69 (s, 1 H), 6.81 (s, 2 H), 7.26 (d, J=4.29 Hz, 1 H), 7.28 (d,
J=1.77 Hz, 1 H,) 7.34 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.36 (d, J=4.80 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 530. 元素分析:C21H20Cl2F3N7O2・1.75 H2Oの計算値: C, 44.89; H, 4.22; N, 17.45. 実測値: C, 45.22; H, 3.90; N, 17.12.
【0251】
【化36】
【0252】
化合物6a:2−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸(2,2−ジフルオロプロピル)−アミド
化合物1g(1.07g、5.17mmol)および化合物III(B)−2(1.98g、5.17mmol)を1,4−ジオキサン(25mL)に溶かした溶液に、炭酸ナトリウム溶液(7.8mL、2M、15.5mmol)を加えた。混合物を15分間N2でパージし、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)(597mg、0.517mmol)を加えた。得られる混合物を85℃で3時間撹拌した。反応混合物をCeliteパッドで濾過し、MeOHで十分に洗浄した。濾液を減圧によって濃縮した。残渣をEtOAc(2×500mL)とブライン(100mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離して、化合物6aを白色の固体(305mg、収率14%)として得た。
1H NMR
(400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.54 (t, J=19.07 Hz, 3 H), 3.46 (br. s., 2 H), 4.21 (br. s., 2
H), 4.47 (s, 2 H), 6.73 - 6.84 (m, 2 H), 6.84 - 6.89 (m, 1 H), 6.97 (d, J=1.77
Hz, 1 H), 7.16 (d, J=2.02 Hz, 1 H), 10.69 (br. s., 1 H). LCMS (M+H)+:
418.0, 420.0.
【0253】
【化37】
【0254】
化合物III(B)−2:2−アミノ−4−ヨード−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸(2,2−ジフルオロ−プロピル)−アミド
化合物I(C)(8.36g、24.7mmol)のACN(200mL)懸濁液に、室温でヨードトリメチルシラン(25mL、176mmol)を加えた。混合物を90℃で3時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、次いでMeOH(10mL)で失活させ、減圧によって濃縮した。残渣をEt2O(100mL)で処理し、沈殿を濾過によって収集し、エーテルで十分に洗浄して、4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンのHI塩を褐色の固体(14.4g、81%)として得た。この粗生成物は、それ以上精製せずに次の反応にすぐに使用することができた。
1H NMR
(400 MHz, DMSO-d6) δ
ppm 4.25 (t, J=4.80 Hz, 1 H), 4.29 - 4.47 (m, 3 H), 6.02 (br. s., 2 H), 9.42
(br. s., 1 H). LCMS (M+H)+: 263.0.
【0255】
4−ヨード−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミンHI塩(590mg、1.1mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物9aの(2mLのDMF)溶液およびTEA(0.6mL、4.6mmol)を加えた。混合物を65℃で2時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→100%のEtOAcジクロロメタン溶液)によって精製して、化合物III(B)−2を白色の固体(195mg、収率82%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.50 - 1.60 (m, 3 H), 3.51 (br. s., 2
H), 4.32 (s, 2 H), 4.46 (d, J=6.06 Hz, 2 H). LCMS (M+H)+: 384.0.
【0256】
【化38】
【0257】
化合物6b:メタンスルホン酸2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エチルエステル
化合物6a(13.4g、98mmol)、ジイソプロピルアミン(34.3mL、196mmol)、および4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(1.2g、9.78mmol)をジクロロメタン(245mL)に溶かした、氷浴中の溶液に、塩化メタンスルホニル(16.8g、11.4mL、147mmol)を加えた。反応液を室温に温め、室温で2時間撹拌した。水(50mL)を加えて反応を失活させた。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0→60%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物6b(19.5g、収率96%)を黄色がかった油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3-d) δ ppm 2.89 (s, 3 H), 4.33 - 4.38 (m, 2 H),
4.53 - 4.59 (m, 2 H), 7.38 (d, J=1.52 Hz, 1 H), 7.40 (d, J=1.01 Hz, 1 H).
【0258】
【化39】
【0259】
化合物6cの調製:2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エタノール
フルオロピラゾール(20g、0.23mol)のDMF(200mL)溶液に、0℃で水素化ナトリウム(13.8g、0.35mol、60%鉱油中分散液)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで2−ブロモ−エタノール(43g、0.35mol)を0℃で滴下した。得られる混合物を40℃で12時間撹拌した。TLC(石油エーテル/EtOAc=1:1)によって反応の完了が示された。混合物を飽和NH4Cl水溶液(200mL)で失活させた。次いで真空中でDMFを除去し、残渣をEt2O(1000mL)とH2O(1000mL)とに分配した。水層をさらなるEt2O(4×1L)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物6c(20g、66%)を黄色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.69 (t, J=5.56 Hz, 2 H), 4.04 (t,
J=5.56 Hz, 2 H), 4.90 (br. s., 1 H), 7.43 (d, J=4.29 Hz, 1 H), 7.81 (d, J=4.55
Hz, 1 H).
【0260】
【化40】
【0261】
(実施例7)
2−アミノ−N−ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−6−メチルフェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物7a(186mg、0.48mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物1bの(3mLのDMF)溶液およびTEA(1mL、7mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物7(195mg、収率82%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 2.05 (s, 6 H), 2.06 (s, 3 H),
2.37 (s, 1 H), 3.71 (d, J=12.63 Hz, 1 H), 3.96 (dd, J=13.01, 1.39 Hz, 1 H,)
4.23 - 4.36 (m, 4 H), 4.43 - 4.55 (m, 2 H), 6.97 (s, 1 H), 6.98 (s, 1 H), 7.24
(d, J=4.55 Hz, 1 H), 7.26 (d, J=4.29 Hz, 1 H). LCMS (M+H)+
499.
元素分析:C24H25ClFN7O2・0.25 H2Oの計算値: C, 57.89; H, 5.06; N, 19.69. 実測値: C, 57.31; H, 5.11; N, 19.44.
【0262】
【化41】
【0263】
化合物7a:4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−6−メチル−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−2−イルアミン
化合物7b(234mg、0.48mmol)のCH3OH(10mL)溶液に、塩化水素(2.4mL、9.5mmol、4Mジオキサン溶液)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌し、LC/MSによってモニターした。溶媒を蒸発させて、化合物7aを淡黄色の固体残渣として得た。この未精製残渣をそれ以上精製せずに化合物7の合成に使用した。
【0264】
【化42】
【0265】
化合物7b:2−アミノ−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−ピラゾール−1−イル)−エトキシ]−6−メチル−フェニル}−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸tert−ブチルエステル
化合物3c(84mg、0.22mmol)のDMF(2mL)溶液に、炭酸カリウム(154mg、1.1mmol)および化合物6b(120mg、0.6mmol)を順次加えた。混合物をマイクロ波装置に入れて100℃で40分間加熱した。反応混合物に水(10mL)およびEtOAc(50mL)を加えて撹拌した。有機層を収集し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色がかった油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(90→100% EtOAcヘキサン溶液)によって精製して、化合物7b(66mg、収率60%)を淡黄色の泡沫として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.44 (s, 9 H), 2.00 (s, 3 H), 3.50
(dd, J=23.49, 13.39 Hz, 1 H), 3.83 (dd, J=25.52, 12.88 Hz, 1 H), 4.17 - 4.31
(m, 4 H), 4.33 - 4.41 (m, 2 H), 6.70 (s, 2 H), 6.99 (s, 1 H), 7.04 (s, 1 H),
7.28 (dd, J=18.44, 4.29 Hz, 1 H), 7.42 (dd, J=10.74, 4.42 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 489.元素分析:C23H26ClFN6O3・0.5 H2O・0.25 CH3CO2CH2CH3の計算値: C, 55.44; H, 5.62; N, 16.16. 実測値: C, 55.78; H, 5.49; N, 15.93.
【0266】
【化43】
【0267】
(実施例8)
2−アミノ−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−6−メチルフェニル}−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物7a(504mg、1.3mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物5aの(5mLのDMF)溶液およびTEA(2mL、14mmol)を加えた。混合物を70℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物8(470mg、収率70%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.01 (s, 3 H), 3.61 (d, J=12.88 Hz, 1
H), 3.75 - 3.85 (m, 2 H), 3.91 (d, J=12.63 Hz, 1 H), 4.26 (dd, J=12.88, 3.79
Hz, 4 H), 4.36 - 4.44 (m, 2 H), 6.73 (s, 2 H), 6.92 (s, 1 H), 7.01 (s, 1 H),
7.06 (s, 1 H), 7.23 (d, J=4.04 Hz, 1 H), 7.37 (d, J=4.55 Hz, 1 H). LCMS
(M+H)+ 514.
元素分析:C21H20ClF4N7O2・1 H2Oの計算値: C, 47.42; H, 4.17; N, 18.43. 実測値: C, 47.54; H, 3.85; N, 18.13.
【0268】
【化44】
【0269】
(実施例9)
2−アミノ−4−{4−クロロ−2−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−6−メチルフェニル}−N−(2,2−ジフルオロプロピル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物7a(136mg、0.35mmol)のDMF(5mL)溶液に、化合物9aの(3mLのDMF)溶液およびジイソプロピルエチルアミン(1mL)を加えた。混合物を75℃で2時間加熱した。反応液を室温に冷却した。反応混合物に水(50mL)を加え、EtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄褐色の油状物を得た。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OH EtOAc溶液)によって精製して、化合物9(171mg、収率96%)を油状物として得た。この油状物を凍結乾燥して、白色の固体とした。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.56 (t, J=18.95 Hz, 3 H), 2.01 (s, 3
H), 3.40 - 3.52 (m, 2 H), 3.65 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 3.92 (d, J=12.63 Hz, 1 H),
4.26 (dd, J=11.62, 3.28 Hz, 4 H), 4.37 - 4.45 (m, 2 H) 6.66 (s, 1 H), 6.70 (s,
2 H) 7.01 (s, 1 H), 7.06 (s, 1 H), 7.26 (d, J=4.04 Hz, 1 H), 7.36 (d, J=4.55
Hz, 1 H). LCMS (M+H)+ 511.
元素分析:C22H23ClF3N7O2・0.25 H2Oの計算値: C, 51.37; H, 4.60; N, 19.06. 実測値: C, 51.34; H, 4.65; N, 18.70.
【0270】
【化45】
【0271】
化合物9a:イミダゾール−1−カルボン酸(2,2−ジフルオロ−プロピル)−アミド
2,2−ジフルオロプロピルアミン塩酸塩(82mg、0.62mmol)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(114mg、0.7mmol)をDMF(3mL)に溶かした溶液(無色透明な溶液)に、TEA(1.3mL、0.8mmol)を加えた。化合物9をさらに単離せずに、この溶液を化合物5の合成に使用した。
【0272】
(実施例10)
2−アミノ−N−シクロプロピル−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−フルオロ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物10は、イミダゾール−1−カルボン酸(2,2−ジフルオロ−プロピル)−アミド(化合物9a)の代わりにイミダゾール−1−カルボン酸シクロプロピルアミド(10a)を用いたことを除き、実施例9と同様にして調製した。化合物10は、白色の固体(26mg、40%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.36 - 0.44 (m, 2 H), 0.49 - 0.63 (m,
2 H), 1.19 - 1.28 (m, 1 H), 3.65 (d, J=13.14 Hz, 1 H), 3.93 (d, J=13.14 Hz, 1
H), 4.21 - 4.28 (m, 2 H), 4.29 - 4.44 (m, 4 H), 6.35 (s, 1 H), 6.78 (s, 2 H),
7.20 - 7.29 (m, 2 H), 7.33 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.35 (d, J=4.55 Hz, 1 H).
LCMS (M+H)+ 493.
元素分析:C21H20Cl2FN7O2・1.25 H2O・0.25 CH3COOHの計算値: C, 48.74; H, 4.47; N, 18.50. 実測値: C, 48.75; H, 4.08; N, 18.24.
【0273】
【化46】
【0274】
(実施例11)
2−アミノ−4−{2,4−ジクロロ−6−[2−(4−シアノ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]フェニル}−N−(2,2−ジフルオロプロピル)−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
6a(147mg、0.35mmol)および炭酸セシウム(400mg、1.23mmol)をDMSO(3mL)に混ぜた混合物に、化合物11b(136mg、0.88mmol)を加えた。得られる混合物を90℃で12時間加熱した。混合物に飽和炭酸ナトリウム溶液(50mL)を加え、EtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物11(18mg、20%)が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.56 (t, J=19.07 Hz, 3 H), 3.48 (d,
J=6.06 Hz, 1 H), 3.67 (br. s., 1 H), 3.92 - 4.08 (m, 2 H), 4.36 - 4.50 (m, 6
H), 6.70 (d, J=2.02 Hz, 1 H), 6.78 (s, 2 H), 7.31 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.34 (d,
J=1.77 Hz, 1 H), 7.81 (s, 1 H), 8.19 (s, 1 H). LCMS (M+H)+
537.
【0275】
【化47】
【0276】
化合物11b:1−(2−クロロ−エチル)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル
化合物11c(160mg、0.92mmol)のDCM(4mL)懸濁液に、約0℃(氷/水浴)で塩化チオニル(0.14mL、1.84mmol)を加えた。得られる混合物を0℃で撹拌し、90分間室温に温め、その間に懸濁液は黄色がかった溶液になった。反応混合物を減圧によって濃縮した。残渣をEtOAc(300mL)と飽和NaHCO3溶液(50mL)およびブライン(50mL)とに分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、減圧により濃縮して、化合物11bを黄色のグリース(140mg、98%)として得た。この固体をそれ以上精製せずに次のステップの反応に使用した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.96 - 4.08 (m, 2 H), 4.47 -
4.56 (m, 2 H), 8.12 (s, 1 H), 8.64 (s, 1 H).
【0277】
【化48】
【0278】
化合物11cの調製:1−(2−クロロ−エチル)−4−ニトロソメチル−1H−ピラゾール
化合物11d(166mg、1.1mmol)および酢酸ナトリウム(174mg、2.1mmol)をEtOH(4mL)に溶かした溶液に、ヒドロキシアミン塩酸塩(114mg、1.6mmol)を加えた。得られる混合物を90℃で90分間撹拌した。反応混合物をEtOAc(300mL)とH2O(50mL)およびブライン(50mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、化合物11cを白色の固体(164mg、90%)として得た。1H NMR (400 MHz, dmso-d6) δ ppm 4.00 (t, J=5.68 Hz, 2 H), 4.49 (t,
J=5.68 Hz, 2 H), 7.36 (s, 1 H), 7.85 (s, 1 H), 8.33 (s, 1 H), 11.26 (s, 1 H).
LCMS (M+H)+: 174
【0279】
化合物11dの調製:1−(2−クロロ−エチル)−4−ニトロソメチル−1H−ピラゾール
化合物11dは、実施例4の4−フルオロピラゾールの代わりに4−カルバルデヒドピラゾールを用いたことを除き、化合物4cおよび4dと同様にして調製した。
【0280】
(実施例12)
2−アミノ−4−{2−[2−(4−ブロモ−1H−ピラゾール−1−イル)エトキシ]−4,6−ジクロロフェニル}−N−シクロプロピル−5,7−ジヒドロ−6H−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボキサミド
化合物12a(142mg、0.32mmol)、K2CO3(265mg、1.92mmol)、およびKI(106mg、0.64mmol)をDMF(2mL)に溶かした溶液に、4−ブロモピラゾール(141mg、1mmol)を加えた。得られる混合物をマイクロ波装置に入れて130℃で1時間加熱した。反応混合物をEtOAc(300mL)とH2O(50mL)とに分配した。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。分取HPLCによって単離すると、化合物12が白色の固体(85mg、48%)として得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.34 - 0.46 (m, 2 H), 0.48 - 0.59 (m,
2 H), 2.53 - 2.57 (m, 1 H), 3.73 (d, J=11.12 Hz, 1 H), 3.96 (dd, J=13.14, 2.02
Hz, 1 H), 4.26 - 4.50 (m, 6 H), 6.37 (br. s., 1 H), 6.78 (s, 2 H), 7.27 (d,
J=1.77 Hz, 1 H), 7.33 - 7.35 (m, 1 H), 7.38 (s, 1 H), 7.48 - 7.55 (m, 1 H).
LCMS (M+H)+: 552.
【0281】
【化49】
【0282】
【化50】
【0283】
化合物12a:2−アミノ−4−[2,4−ジクロロ−6−(2−クロロ−エトキシ)−フェニル]−5,7−ジヒドロ−ピロロ[3,4−d]ピリミジン−6−カルボン酸シクロプロピルアミド
化合物2a(800mg、2.1mmol)および炭酸カリウム(872mg、6.3mmol)をDMF(8mL)に溶かした溶液に、1−ブロモ−2−クロロエタン(0.4mL、4.2mmol)を加えた。得られる混合物を50℃で12時間加熱した。反応混合物を濾過して炭酸塩を除去し、EtOAcで十分に洗浄した。次いで濾液をEtOAc(200ml)と飽和NaHCO3(50ml)およびブライン(50ml)とに分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、次いで減圧によって濃縮した。この油状物残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 0→10%のCH3OHジクロロメタン溶液)によって精製して、化合物12a(786mg、85%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d
ppm 0.32 - 0.43 (m, 2 H), 0.47 - 0.58 (m, 2 H), 3.69 - 3.86 (m, 1 H), 4.00 -
4.12 (m, 2 H), 4.19 (d, J=13.14 Hz, 2 H), 4.23 - 4.31 (m, 2 H), 4.32 - 4.45 (m,
2 H), 6.42 (d, J=2.78 Hz, 1 H), 6.80 (s, 2 H), 7.38 (d, J=1.77 Hz, 1 H), 7.96
(s, 1 H). LCMS (M+H)+ 444.
【0284】
【化51】
【0285】
実施例13〜16は、上記実施例に記載の方法と同様の方法を使用して調製した。
【0286】
【表1−1】
【0287】
【表1−2】
【0288】
HSP−90生化学アッセイ
SPA(シンチレーション近接アッセイ)競合結合アッセイを使用して、本発明の化合物のHSP−90に対する効力を評価した。そのC末端上に6−Hisタグを含んでいる全長またはN末端HSP−90は、Hisタグを介して銅担持ケイ酸イットリウムシンチラントビーズに結合する。以下に構造を示す、トリチウム標識プロピル−ゲルダナマイシン(pGA)は、ゲルダナマイシンと呼ばれる、HSP−90の天然阻害剤の類似体である。#17位に付加されたトリチウム標識プロピル−アミン基を含んでいるトリチウム標識pGAは、HSP−90に結合し、同位体をビーズと近接させる。17−n−プロピルアミノ−ゲルダナマイシンは、参照により本明細書に援用される米国特許第4,261,989号に記載のとおりに調製することができる。このアッセイで同じく使用することのできる第二のトリチウム標識化合物を以下に示し、化合物Aと称する。
【0289】
【化52】
【0290】
上記化合物Aの構造中の「T」は、標識トリチウム化水素原子の位置を示す。この化合物は、Kdが40nMであり、以下のように調製することができる。化合物Aは、化合物Aの親化合物(N−アリル−2−(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)イソインドリン−1−カルボキサミド)から、以下に記載するとおりに調製することができる。Boc(R,S)−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドールカルボン酸(263mg、1mmole)、ジイソプロピルエチルアミン(0.9mL、5mmol)、およびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムリン五フッ化物(HATU)(420mg、1.1mmol)を5mLのDMFに溶かした溶液に、窒素雰囲気中でアリルアミン(2.5mL、5mmol、2M THF溶液)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3(30mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×50mL)を加えて、水溶液を抽出した。EtOAc層をNa2SO4で乾燥させる。Na2SO4を濾別し、濾液を蒸発させて、褐色の油状物残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 40→50%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、所望の中間体生成物(321mg、定量的収率)であるtert−ブチル1−[(アリルアミノ)カルボニル]−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボキシレートを得た。
【0291】
tert−ブチル1−[(アリルアミノ)カルボニル]−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボキシレート(1mmol)のDCM(5mL)溶液に、室温で塩化水素(3mL、12mmol;4Mジオキサン溶液)を加えた。反応液を室温で12時間加熱、撹拌した。反応混合物を蒸発させて、油状物残渣を得た。残渣(N−アリルイソインドリン−1−カルボキサミド)をそれ以上精製せずに次のステップの反応に使用した。
【0292】
次いで、5−クロロ−2,4−ビス(メトキシメトキシ)安息香酸(WO2006/117669で示されているとおりに調製できる)(340mg、1.2mmol)、4−メチルモルホリン(2.2mL、20mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(460mg、2.4mmol)、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(330mg、2.4mmol)を12mLのDMFに溶かした溶液に、窒素雰囲気中でN−アリルイソインドリン−1−カルボキサミド(1mmol)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。反応混合物にH2O(50mL)を加えて、反応を失活させた。次いでEtOAc(2×100mL)を加えて、水溶液を抽出した。EtOAc層をNa2SO4で乾燥させる。Na2SO4を濾別し、濾液を蒸発させて、褐色の油状物残渣を得た。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離 50→60%のEtOAcヘキサン溶液)によって精製して、所望の中間体生成物(423mg、収率91.8%)であるN−アリル−2−[5−クロロ−2,4−ビス(メトキシメトキシ)ベンゾイル]イソインドリン−1−カルボキサミドを得た。
【0293】
N−アリル−2−[5−クロロ−2,4−ビス(メトキシメトキシ)ベンゾイル]イソインドリン−1−カルボキサミド(392mg、0.85mmol)のDCM(5mL)溶液に、塩化水素(4mL、16mmol;4Mジオキサン溶液)を加えた。反応液を室温で12時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO3(水溶液)で中和し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層を合わせて乾燥させ、濾過し、蒸発させて、親化合物(N−アリル−2−(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゾイル)イソインドリン−1−カルボキサミド)としての所望の最終生成物を白色の固体(221mg、収率69.7%)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.57 (d, J=79.33 Hz, 2 H), 4.65 - 4.93
(m, 1 H), 4.97 - 5.19 (m, 1 H), 5.42 - 5.70 (m, 1 H), 5.68 - 5.95 (m, 1 H),
6.40 - 6.71 (m, 1 H), 6.92 (s, 1 H), 7.15 - 7.67 (m, 4 H), 8.28 (s, 1 H), 10.06
(s, 1 H), 10.40 (s, 1 H). 元素分析:C19H17ClN2O4の計算値: C, 61.21; H, 4.60; N, 7.51. 実測値: C, 61.02; H, 4.63; N, 7.36.
【0294】
親化合物を生成したら、トリチウムガスを用い、標準の水素化方法を使用して、化合物Aを調製した。
【0295】
同位体から放射されるβシグナルは、シンチラントを励起し、それによって、測定可能なシグナルが生成される。アッセイ混合物に競合的化合物を加えると、競合的化合物は、HSP−90のN末端上のATP結合部位で、結合しているトリチウム標識pGAまたは化合物Aと競合する。化合物によって、標識されたpGAまたは化合物Aが外されると、シグナルは減少する(β粒子はすでにビーズと近接していない)。このシグナルの減少を使用して、阻害剤/化合物がpGAまたは化合物Aに対してどの程度競合的であるかを定量化する。
【0296】
HSP−90への3H−pGA(G1と示す)および化合物A(G2と示す)結合についてのSPAアッセイは、96ウェル平底白色プレート(Corning #3604)で実施した。G1では、典型的な反応溶液は、結合緩衝液(100mMのHepes、pH7.5、および150mMのKCl)中に30nMのHSP−90および200nMの3H−pGAを含有するものであった。G2では、典型的な反応溶液は、5nMのHSP−90および50nMの化合物Aを含有するものであった。G1については、3H−pGAをまず、合成および精製した未標識pGAで33%標識に希釈して、最終濃度を200nMとした。G2については、標識された化合物Aを未標識の化合物Aで希釈して、標識:未標識の比率を1:2として、最終濃度を50nMとした。HSP−90/3H−pGA(またはHSP−90/化合物A)溶液に、Kiを求めるための11段階の異なる濃度で阻害剤を加えた。阻害剤濃度の範囲は、固体サンプルでは100μMまたは適切な範囲、標的のライブラリ化合物では10μM、および4mMの保存液とした。阻害パーセントを求めるために、化合物を1μMおよび10μMで試験した。サンプル中の最終DMSOは4%とした。結合緩衝液中に希釈してある銅−Ysiビーズ(Amersham、#RPNQ0096)を各ウェルに加えて、最終濃度を100μg/ウェルとした。プレートをシールし、箔で覆ったふたをかぶせ、室温で30分間振盪した。ビーズを30分間沈降させ、その後Packard TopCount NXT計測器を使用して、プレートをカウントした。Beckman Biomek FXを使用して、この手順を中間の処理量にも適合させた。Kiの値を確実に正確なものにするために、サンプルは2連で実験し、かつ実験日を2日に分けた。
【0297】
Kiを求めるために、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、補正したcpm(実際のcpm−バックグラウンド)を阻害剤濃度に対してプロットした。データをIC50一般式、すなわちY=YI/(1+[X]/IC50)[ここで、YI=Y切片であり、[X]は、競合リガンド/阻害剤である]に適合させた。次いでこのIC50を使用して、Cheng−Prusoff式:
【0298】
【数1】
[ここで、cl=冷リガンド濃度(変化する)であり、[hl]=熱リガンドの濃度(200nMまたは50nM)であり、Kd{hl}=(3H−pGAでは)240nMまたは(化合物Aでは)40nMである]を用いることにより、Kiを算出した。誤差は、以下のように算出した。すなわち、IC50誤差/IC50値=端数誤差(fractional error)、および端数誤差*Ki値=Ki誤差。
【0299】
阻害剤がHSP−90に緊密に結合するあまり、遊離阻害剤分子の集団が、酵素−阻害剤複合体の形成により著しく消耗されるようになる場合には、上記式はもはや有効でない。これは通常、観察されるIC50がHSP−90濃度とほとんど同じであるときに当てはまる。緊密に結合する阻害剤については、以下の式を適用することができる。
【0300】
【数2】
ここで、
【0301】
【数3】
であり、ELおよびELoは、それぞれ阻害剤の存在下および非存在下の放射リガンド−HSP−90複合体である。EL/ELoは、阻害剤存在下での微量シグナル(fractional signal)を表す。Io、Eo、およびLoは、それぞれ、阻害剤、HSP−90、および放射リガンドの濃度である。KIは、リガンドの阻害定数であり、KLは、酵素(HSP−90)とリガンド間の結合親和性定数である。
【0302】
実施例1〜16の化合物1〜16のKiアッセイデータを、以下の表2に記載する。
【0303】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
または薬学的に許容できるその塩
(式中、
R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、ならびにフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルから選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、
R2およびR3は、塩素、フッ素、−CN、C1〜C3アルコキシル、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
R4は、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択され、
R5およびR6は、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
但し、
(1)R4、R5およびR6がすべて水素であるとき、R2およびR3は、同時に塩素ではなく、
(2)式Iの化合物は、以下の化合物
【化2】
のいずれでもない)。
【請求項2】
R4が水素であり、R5が水素であり、R6が水素であり、R3が、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
R4が水素であり、R5が水素であり、R6が水素であり、R2が、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項4】
R4が、フッ素、塩素、C2〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルから選択される、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項5】
R4がフッ素または塩素であり、R5が水素であり、R6が水素である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項6】
R4がフッ素または塩素であり、R5が水素であり、R6が水素であり、R2がメチルまたは塩素であり、R3がメチルまたは塩素である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項7】
R5が、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項8】
R6が、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項9】
R1が、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項10】
R1が、C3〜C8シクロアルキル、またはフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルから選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項11】
R1が、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、または1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキルである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項12】
R2が塩素であり、R3が塩素である、請求項1および4から11のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項13】
R2が塩素であり、R3がC1〜C3アルキルである、請求項1、2、および4から11のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項14】
【化3−1】
【化3−2】
【化3−3】
【化3−4】
【化3−5】
からなる群から選択される化合物またはこれらの薬学的に許容できる塩。
【請求項15】
次式の化合物
【化4】
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項17】
癌治療のための医薬の調製における、請求項1から15のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項18】
細胞を、請求項1から15のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と接触させることを含む、HSP−90の活性をモジュレートする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物または塩と別の治療薬の組合せ。
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
または薬学的に許容できるその塩
(式中、
R1は、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、ならびにフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルから選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルからなる群から選択され、
R2およびR3は、塩素、フッ素、−CN、C1〜C3アルコキシル、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
R4は、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択され、
R5およびR6は、水素、フッ素、塩素、臭素、−CN、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択され、
但し、
(1)R4、R5およびR6がすべて水素であるとき、R2およびR3は、同時に塩素ではなく、
(2)式Iの化合物は、以下の化合物
【化2】
のいずれでもない)。
【請求項2】
R4が水素であり、R5が水素であり、R6が水素であり、R3が、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
R4が水素であり、R5が水素であり、R6が水素であり、R2が、フッ素、C1〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項4】
R4が、フッ素、塩素、C2〜C3アルキル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルから選択される、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項5】
R4がフッ素または塩素であり、R5が水素であり、R6が水素である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項6】
R4がフッ素または塩素であり、R5が水素であり、R6が水素であり、R2がメチルまたは塩素であり、R3がメチルまたは塩素である、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項7】
R5が、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項8】
R6が、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C3アルキルである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項9】
R1が、シクロプロピル、シクロブチル、ビシクロ[1.1.1]ペント−1−イル、および1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキルからなる群から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項10】
R1が、C3〜C8シクロアルキル、またはフッ素、塩素、およびC1〜C3アルキルから選択される1〜6個の基で置換されているC3〜C8シクロアルキルである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項11】
R1が、C1〜C6アルキル、1〜6個のフッ素で置換されているC1〜C6アルキル、または1〜2個の塩素および6個までのフッ素で置換されているC1〜C6アルキルである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項12】
R2が塩素であり、R3が塩素である、請求項1および4から11のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項13】
R2が塩素であり、R3がC1〜C3アルキルである、請求項1、2、および4から11のいずれかに記載の化合物または塩。
【請求項14】
【化3−1】
【化3−2】
【化3−3】
【化3−4】
【化3−5】
からなる群から選択される化合物またはこれらの薬学的に許容できる塩。
【請求項15】
次式の化合物
【化4】
または薬学的に許容できるその塩。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項17】
癌治療のための医薬の調製における、請求項1から15のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩の使用。
【請求項18】
細胞を、請求項1から15のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と接触させることを含む、HSP−90の活性をモジュレートする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物または塩と別の治療薬の組合せ。
【公表番号】特表2011−530580(P2011−530580A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522573(P2011−522573)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053277
【国際公開番号】WO2010/018481
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053277
【国際公開番号】WO2010/018481
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】
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