説明

強化されたポリオキシメチレン−ポリ乳酸組成物

強化されたポリオキシメチレン−ポリ乳酸樹脂組成物であって、ポリオキシメチレン、ポリ乳酸、および耐衝撃性改良剤を含み、この耐衝撃性改良剤が(a)エチレン、(b)式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または2〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはメチル、エチル、ブチルなど1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である]、および(c)式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素またはメチルなど1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはグリシジルである]のモノマーで製造されたエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤を含む。エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、さらに一酸化炭素モノマーで製造することができる。組成物は、1つまたは複数のエチレン/アクリレート、および/またはエチレン/ビニルエステルポリマー、イオノマー、ならびにカチオングラフト化剤をさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化されたポリオキシメチレンとポリ乳酸の組成物に関する。さらに詳しくは、グリシジル基を含むランダムエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤で強化された、ポリオキシメチレンとポリ乳酸とを含む熱可塑性組成物に関する。この組成物は、1つまたは複数のエチレン/アクリレートポリマー、イオノマー、および/またはグラフト化触媒をさらに含むことができる。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(すなわち、PLA)は、石油以外の自然発生する供給源から生物学的に誘導することができ、生体分解性である。しかし、脆性や徐結晶化などの物理的制限は、PLAを容易に、改良剤を使用することなく多くの用途に許容される程度の靭性を有する物品に射出成形することを阻止する恐れがある。
【0003】
製造業者、およびPLAを使用して様々な物品を製造する顧客は、この材料で製造された物品について改善された靭性、および改善された射出成形加工性、サイクル時間に興味がある。
【0004】
ポリオキシメチレン(POMまたはポリアセタール)は、物理的特性として、優れたトライボロジー、硬度、適度な靭性、および迅速に結晶化させる能力を含むポリマーである。POMは、大幅に衝撃性を改善することは考えられない主要なエンジニアリングポリマーの1つであった。溶融物に十分に小さい粒子で分散し、次いで固体状態で十分に接着して、応力転移をゴムマトリックスの界面全域に行き渡らせて耐衝撃性を改善するほど十分に相溶性であるのは、入手可能なゴムタイプの材料のうち少数だからである。
【0005】
以下の開示は、本発明の様々な態様にとって適切であり、下記のとおり簡単に要約することができる。
【0006】
(特許文献1)は、耐衝撃性改良剤を含むことができるポリ乳酸とポリアセタール樹脂とのブレンドを開示している。しかし、さらに靭性が改善された組成物が望ましい。
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/014424号パンフレット
【特許文献2】米国特許第3,264,272号明細書
【特許文献3】米国特許第4,187,358号明細書
【特許文献4】米国特許第4,912,167号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単に言えば、かつ本発明の1つの態様によれば、
(i)約1〜約96重量%のポリ乳酸、
(ii)約1〜約96重量%のポリオキシメチレン、ならびに
(iii)(a)約20〜約95重量%のエチレンと、
(b)約3〜約70重量%の式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である]と、
(c)約0.5〜約25重量%の式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはグリシジルである]とを共重合することから誘導されたエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤を含む約3〜約40重量%の耐衝撃性改良剤を含み、
ポリ乳酸、ポリオキシメチレン、および耐衝撃性改良剤の重量百分率は、ポリ乳酸、ポリオキシメチレン、および耐衝撃性改良剤の総重量に基づく樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明の他の態様に従って、前節の組成物を含む成形品、押出品、シート、または熱成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、約1〜約96重量%のポリオキシメチレン(POM)、約1〜約96重量%のポリ乳酸、および約3〜約40重量%の耐衝撃性改良剤を含む強化された熱可塑性樹脂組成物である。ただし、この重量百分率は組成物の総重量に基づく。耐衝撃性改良剤は、ランダムエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤、および任意に他の強靭化剤を含む。
【0011】
本発明に使用するポリオキシメチレン(すなわち、POMまたはポリアセタール)は、1つまたは複数のホモポリマー、コポリマー、またはその混合物とすることができる。ホモポリマーは、ホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒドの環状オリゴマーなどのホルムアルデヒド相当物を重合することによって、調製される。コポリマーは、ポリオキシメチレン組成物を調製する際に通常使用される1つまたは複数のコモノマーを含有することができる。通常使用されるコモノマーには、アセタール、および2〜12個の連続炭素原子をもつエーテル単位のポリマー鎖への統合をもたらす環状エーテルがある。コポリマーを選択する場合、コモノマーの量は、20重量%以下、好ましくは15重量%以下、最も好ましくは約2重量%となる。好ましいコモノマーは1,3−ジオキソラン、エチレンオキシド、ブチレンオキシドであって、1,3−ジオキソランがより好ましく、また好ましいポリオキシメチレンコポリマーはコモノマーの量が約2重量%であるコポリマーである。また、ホモポリマーおよびコポリマーは、1)末端のヒドロキシ基が化学反応でエンドキャップされて、エステル基またはエーテル基が形成されたホモポリマー;あるいは、2)完全にはエンドキャップされていないが、コモノマー単位のいくつかのフリーヒドロキシ末端基を有するか、またはエーテル基を末端基とするコポリマーであることも好ましい。ホモポリマーについて好ましい末端基はアセテートおよびメトキシであり、コポリマーについて好ましい末端基はヒドロキシおよびメトキシである。
【0012】
本発明の組成物に使用するポリオキシメチレンは、分枝状または直鎖状とすることができ、一般的に10,000〜150,000、好ましくは20,000〜90,000、最も好ましくは25,000〜70,000の範囲の数平均分子量となる。分子量は、公称孔径60および1000Åの本願特許出願人のPSMバイモーダルカラムキットを使用して、m−クレゾール中160℃においてゲル透過クロマトグラフィーで都合よく測定することができる。分子量は、ASTM D1238またはISO1133でメルトフローを決定することにより、測定することができる。メルトフローは、射出成形法について0.1〜100g/分、好ましくは0.5〜60g/分、より好ましくは0.8〜40g/分の範囲となる。フィルム、繊維、およびブロー成形など他の構造ならびに方法は、他の溶融粘度範囲を選ぶことができる。POMは、POMおよびPLAの総量に対して、好ましくは約1〜約99重量%、より好ましくは約3〜約97重量%、さらにより好ましくは約5〜約95重量%で存在する。
【0013】
本発明で使用されているように、「ポリ乳酸」(「PLA」)の語は、乳酸乳酸またはその誘導体、およびその混合物から誘導された反復単位を少なくとも50モル%を含み、数平均分子量が3,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜700,000、より好ましくは20,000〜600,000であるポリ乳酸ホモポリマーおよびコポリマーを指す。好ましくは、本発明に使用するポリ乳酸は、乳酸またはその誘導体から誘導(例えば、製造)された反復単位を少なくとも70モル%含む。本発明に使用するポリ乳酸ホモポリマーおよびコポリマーは、d−乳酸、l−乳酸、またはその混合物から誘導することができる。2つ以上のポリ乳酸ポリマーの混合物を使用することができる。ポリ乳酸は、通常触媒を用いて「ラクチド」と呼ばれる乳酸二量体環状エステルを開環重合することによって調製される。結果として、ポリ乳酸は「ポリラクチド」とも呼ばれる。ポリ乳酸は、細菌などの生物によって製造することも、またはトウモロコシやサツマイモなどを含む植物から単離することもできる。かかる生物によって製造されるポリ乳酸は、合成されたものよりも高い分子量を有することができる。
【0014】
乳酸のコポリマーは、 通常ラクチドまたは別の乳酸誘導体と1つまたは複数の環状エステル、および/または二量体環状エステルとを触媒を用いて共重合することによって調製される。典型的なコモノマーは、グリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、グリコール酸の二量体環状エステル;α,α−ジメチルジメチル−β−プロピオラクトン、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパン酸の環状エステル;β−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ酪酸の環状エステル、δ−バレロラクトン、5−ヒドロキシペンタン酸の環状エステル;ε−カプロラクトン、6−ヒドロキシヘキサン酸の環状エステル、およびそのメチル置換誘導体、例えば2−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、4−メチル−6−ヒドロキシヘキサン酸、3,3,5−トリメチル−6−ヒドロキシヘキサン酸のラクトン、12−ヒドロキシドデカン酸の環状エステル、および2−p−ジオキサノン、2−(2−ヒドロキシエチル)−グリコール酸の環状エステルである。コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、およびエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなど脂肪族ならびに芳香族二酸およびジオールモノマーも使用することができる。コポリマーは、生物によって製造することも、または前述のような植物から単離することもできる。PLAは、POMとPLAの総量に対して、好ましくは約1〜約99重量%、より好ましくは約3〜97重量%、さらにより好ましくは約5〜約95重量%の本発明の組成物を含む。
【0015】
本発明で使用されているように、「エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤」の語は、エチレンおよび少なくとも2つの追加のモノマーから誘導(例えば、製造)されたポリマーを指す。
【0016】
本発明に使用するエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、(a)エチレン、(b)式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはメチル、エチル、ブチルなど1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である]、および(c)式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素またはメチルなど1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはグリシジルである]のモノマーを重合することによって製造された少なくとも1つのランダムポリマーである。好ましいモノマー(b)は、アクリル酸ブチルである。1つまたは複数のアクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸イソブチル、およびアクリル酸sec−ブチルを使用することができる。好ましいエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、エチレン、アクリル酸ブチル、およびメタクリル酸グリシジルから誘導され、通常E/BA/GMAと呼ばれる。モノマーから誘導された反復単位は、(a)エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤の総量の約20〜約95重量%、好ましくは約20〜約90重量%、より好ましくは約40〜約90重量%、最も好ましくは約50〜80重量%を含む。モノマーから誘導された反復単位は、(b)エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤の総量の好ましくは約3〜約70重量%、より好ましくは 約3〜約40重量%、さらにより好ましくは約15〜約35重量%、なおより好ましくは約20〜約35重量%を含む。モノマーから誘導された反復単位は、(c)エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤の総量の好ましくは約0.5〜約25重量%、より好ましくは約2〜約20重量%、さらにより好ましくは約3〜約17重量%を含む。
【0017】
上記のモノマー(a)〜(c)から誘導されたエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、(d)一酸化炭素(CO)モノマーからさらに誘導することもできる。一酸化炭素から誘導された反復単位は、存在する場合、エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤の総量の好ましくは約20重量%まで、より好ましくは約3〜約15重量%を含む。
【0018】
本発明の組成物に使用するエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、前述のモノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下、高温、好ましくは約100〜約270℃、より好ましくは約130〜約230℃で、および高圧、好ましくは少なくとも70MPa、より好ましくは約140〜約350MPaで直接重合することによって調製できるランダムコポリマーである。エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、チューブラ法、オートクレーブ、その組合せ、または他の適当な方法で調製することもできる。重合中の混合が不完全であること、または重合過程でのモノマー濃度が変動することによって、エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、ポリマー鎖全域にわたって反復単位組成中で完全には均一でない恐れがある。エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤は、後重合でグラフト化も別の改質もされない。
【0019】
耐衝撃性改良剤の量は、ポリオキシメチレン、ポリ乳酸、および耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、好ましくは約3〜約40重量%、より好ましくは約4〜約30重量%、なおより好ましくは約8〜約25重量%となる。
【0020】
本発明に使用する耐衝撃性改良剤は、エチレンおよびアクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、または酢酸ビニルなどのビニルエステルからなるコポリマーの1つまたは複数をさらに含むことができる。エチレンおよびアクリル酸エステルまたは酢酸ビニルからなるコポリマーは、使用されるとき、耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、好ましくは約1〜約50重量%、より好ましくは約5〜約40重量%、さらにより好ましくは約10〜約30重量%で存在する。
【0021】
本発明に使用する耐衝撃性改良剤は、少なくとも1つの任意のイオノマー強靭化剤をさらに含むことができる。イオノマーとは、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カドミウム、スズ(II)、コバルト(II)、アンチモン(II)などの2価金属カチオンで中和または部分的に中和されたカルボキシル基含有ポリマーを指す。イオノマーの例は、米国特許公報(特許文献2)および米国特許公報(特許文献3)に記載されている。適当なカルボキシル基含有ポリマーの例として、エチレン/アクリル酸コポリマー、およびエチレン/メタクリル酸コポリマーがあるが、それに限定されるものではない。カルボキシル基含有ポリマーは、それに限定されるものではないがアクリル酸ブチルなど1つまたは複数の追加のモノマーから誘導することもできる。亜鉛(II)塩は、好ましい中和剤である。イオノマーは、サーリン(Surlyn(登録商標))という商標でデラウェア州ウィルミントンの本願特許出願人から市販されている。イオノマーは、使用されるとき、耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、好ましくは約1〜約75重量%、より好ましくは約5〜約60重量%、さらにより好ましくは約10〜約50重量%で存在する。
【0022】
本発明の組成物は、少なくとも1つの任意のグラフト化触媒をさらに含むことができる。グラフト化触媒は、米国特許公報(特許文献4)に記載されている。グラフト化触媒は、Al3+、Cd2+、Co2+、Cu2+、Fe2+、In3+、Mn2+、Nd3+、Sb3+、Sn2+、Zn2+などの触媒カチオンの供給源である。適当なグラフト化触媒として、酢酸やステアリン酸などの炭化水素モノ−、ジ−、またはポリカルボン酸の塩があるが、それに限定されるものではない。炭酸塩などの無機塩も使用することができる。好ましいグラフト化触媒の例として、オクタン酸第一スズ、ステアリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、および二酢酸亜鉛(水和物または無水物)があるが、それに限定されるものではない。グラフト化触媒は、使用されるとき、100重量部のポリ乳酸および耐衝撃性改良剤に対して、好ましくは約0.01〜約3重量部を含む。
【0023】
本発明の組成物は、約0.5〜約5重量%の可塑剤;約0.1〜約5重量%の酸化防止剤および安定剤;約3〜約40重量%の充填剤;約5〜約40重量%の補強剤;約0.5〜約10重量%のナノコンポジット補強剤;および/または約1〜約40重量%の難燃剤など他の添加剤を任意でさらに含むことができる。適当な充填剤の例には、ガラス繊維、および沈降CaCO、タルク、ウォラストナイトなどの鉱物がある。
【0024】
本発明に実施形態では、肉眼で見ると均質に分散され、射出成形で離層しなくなるまで、ポリオキシメチレン、ポリ乳酸、およびエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤を溶融ブレンドすることによって、組成物が調製される。他の材料(例えば、エチレン/アクリレートコポリマー、イオノマー、グラフト化剤、他の添加剤)は、ポリ乳酸−エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤マトリックス中に均一に分散することができる。当技術分野で知られている溶融混合法のいずれかを使用して、成分材料を混合することによって、ブレンドを得ることができる。例えば、1)一軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、混練機、バンバリーミキサー、ロールミキサーなどの溶融ミキサーを使用して、成分材料を均質に混合することができ、樹脂組成物が得られる;または2)溶融ミキサーで成分材料の一部分を混合することができ、続いて残りの成分材料を添加し、均質になるまでさらに溶融混合する。
【0025】
適当な溶融加工技法のいずれかを使用して、本発明の組成物を物品に成形することができる。射出成形、押出成形、ブロー成形、射出吹込成形など当技術分野で知られている通常使用される溶融成形法が好ましく、射出成形がより好ましい。押出によって本発明の組成物をフィルムおよびシートに形成して、流延フィルムおよびインフレートフィルムを調製することができる。これらのシートをさらに熱成形して、溶融物からまたは組成物加工の後段階で延伸できる物品および構造物にすることができる。シートは、厚さ約少なくとも10ミル(0.010インチ)である。フィルムは、厚さ0〜10ミル(0.010インチ)である。同時押出または押出積層されたフィルムを多層構造物の一部とすることができる。本発明の組成物を使用して、溶融物からまたは組成物加工の後段階で延伸できる繊維およびフィラメントを形成することができる。本発明の組成物で形成できる物品の例として、ノブ、ボタン、使い捨て食器、熱成形可能なシーティングなどがあるが、それに限定されるものではない。本発明は、自動車用途にも適用される。
【実施例】
【0026】
配合:よく働く2つのセグメントを含むスクリュー、続いて真空口および2孔ダイを備えた30mm同方向回転ヴェルナー&プフライデラー(Werner & Pfleiderer)二軸スクリュー押出機で、実施例の組成物を調製した。溶融した材料を前に水中急冷槽に排出し、ストランドカッターで切断した。
【0027】
成形:6オンス往復スクリュー式成形機を用いて、スクリュー速度60rpm、高射出率、および背圧50psiで、ASTM成形物に成形し、1枚の1/8インチ引張試験片および2枚の5インチ×1/8インチ曲げ試験片を製造した。
【0028】
ノッチ付アイゾッド衝撃強さ測定は、ASTM D256に従って行われた。1/8インチ曲げ試験片のそれぞれを半分に切断し、それぞれにノッチを付け、試験した。
【0029】
【表1】

【0030】
以下の実施例で使用するPLAは、1:1のTFA/塩化メチレン中、23℃において0.4g/デカリットルの濃度で測定した内部粘度が1.49であるポリ乳酸ホモポリマーを指す。普通の市販の添加剤を少量含んでいる。
【0031】
E/BA/GMA−5は、66.75重量%のエチレン、28重量%のアクリル酸n−ブチル、および5.25重量%のメタクリル酸グリシジルから誘導された、エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジルターポリマーである。ASTM法D1238で測定したメルトインデックスが12g/10分である。
【0032】
E/BA/GMA−12は、66重量%のエチレン、22重量%のアクリル酸n−ブチル、および12重量%のメタクリル酸グリシジルから誘導された、エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジルターポリマーである。ASTM法D1238で測定したメルトインデックスが8g/10分である。
【0033】
E/BA/GMA−17は、63重量%のエチレン、20重量%のアクリル酸n−ブチル、および17重量%のメタクリル酸グリシジルから誘導された、エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸グリシジルターポリマーである。ASTM法D1238で測定したメルトインデックスが15g/10分である。
【0034】
E/GMAは、98.2重量%のエチレンおよび1.8重量%のメタクリル酸グリシジルから誘導された、エチレン/メタクリル酸グリシジルコポリマーである。
【0035】
E/BAは、27重量%のアクリル酸ブチルおよび73重量%のエチレンから誘導された、エチレン/アクリル酸ブチル・コポリマーである。
【0036】
EPDMは、68重量%のエチレン、28重量%のプロピレン、および4重量%の1,3−ヘキサジエンから誘導されたポリマーであり、250℃におけるムーニー粘度MLが35である。
【0037】
イオノマーは、67重量%のエチレン、24重量%のアクリル酸n−ブチル、および9重量%のメタクリル酸から誘導されたターポリマーを指し、亜鉛で35%中和されている。
【0038】
(比較例1〜4)
表1に示される各比較例については、試料の材料のそれぞれを、そのバレルおよびダイが200℃に加熱された30mm押出ヴェルナー&プフライデラー(Werner & Pfleiderer)二軸スクリュー押出機で配合した。比較例1に相当する試料は、1時間当たり20ポンドで押出し、比較例2および3に相当する試料は、1時間当たり約25ポンドで押出した。比較例4を除いて、試料のすべては、6オンス成形機で成形温度60℃にて成形した。比較例4は、型中で80℃にて成形した。成形機のバレルおよびノズルを200℃に設定した。各周期は、30秒射出時間と20秒滞留時間で構成された。得られたブレンドの物理的特性を表1に示す。表1における材料の重量%は、組成物の総重量に基づいている。
【0039】
【表2】

【0040】
(実施例1〜4)
これらの実施例は、E/BA/GMA強靭化剤を添加することによって、POM/PLAブレンドを強靭化したことを示している。表2に示される各実施例については、材料のすべてを押出機の後部にある主供給口を通じて供給して、試料材料のそれぞれを30mm二軸スクリュー押出機で配合した。実施例1、2、および3は、1時間当たり30ポンドで供給し、実施例4は、1時間当たり35ポンドで供給した。押出rpmが、実施例1および2は75rpm、実施例3は100rpm、実施例4は200rpmであった。成形温度60℃、射出成形圧はそれぞれ7475psi、7475psi、および9775psiで、実施例1〜3を成形した。バレルを200℃に設定して、成形温度90℃、射出/滞留周期25/20秒、射出成形圧11,500psiで、実施例4を成形した。得られたブレンドの物理的特性を表2に示す。表2で、成分量は組成物の総重量に基づく重量%で与えられている。
【0041】
【表3】

【0042】
(比較例5〜9および実施例5〜6)
表3に示される各実施例については、材料のそれぞれを、そのバレルおよびダイを約190〜200℃、200rpmに設定した二軸スクリュー押出機で配合した。材料のすべてを押出機の後部にある主供給口を通じて供給した。溶融温度は約225〜232℃であった。得られた組成物をASTM試験片に成形し、その物理的特性を決定した。表3で、成分量は組成物の総重量に基づく重量%で与えられている。
【0043】
【表4】

【0044】
(実施例7〜24)
表4〜7に示される各実施例については、材料のそれぞれを、そのバレルおよびダイを約170℃、約150〜200rpmに設定した二軸スクリュー押出機で配合した。溶融温度は約205〜230℃であった。実施例11、20、および21では、材料のすべてを、押出機の後部にある主供給口を通じて供給した。実施例7〜10、12〜19、および22〜24の場合では、PLA、E/BA/GMA、および他の添加剤を押出機の後部にある主供給口を通じて供給し、POMをPLA、E/BA/GMA、および他の添加剤を混合する場所で押出機に側方供給した。得られた組成物をASTM試験片に成形し、そのノッチ付アイゾッド耐衝撃性を決定した。表4〜7で、成分量は組成物の総重量に基づく重量%で与えられている。
【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
従って、本発明によれば、先に述べた目的と利点を完全に満足する強化されたポリオキシメチレン−ポリ乳酸組成物、およびその物品が提供されたことは明らかである。本発明はその特定の実施形態とともに記載されてきたが、多数の代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および広範な範囲に含まれているかかる代替、修正、および変形のすべてを含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって、
(i)約1〜約96重量%のポリ乳酸、
(ii)約1〜約96重量%のポリオキシメチレン、および
(iii)約3〜約40重量%の耐衝撃性改良剤を含み、
前記耐衝撃性改良剤が、
(a)約20〜約95重量%のエチレン、
(b)約3〜約70重量%の式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である]、および
(c)約0.5〜約25重量%の式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはグリシジルである]を共重合することから誘導されたエチレンコポリマー耐衝撃性改良剤を含み、
前記ポリ乳酸、ポリオキシメチレン、および前記耐衝撃性改良剤の重量百分率は、ポリ乳酸、ポリオキシメチレン、および耐衝撃性改良剤の総重量に基づくことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(a)が約20〜約90重量%のエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)が約40〜約90重量%のエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(a)が約50〜約80重量%のエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(b)が約20〜約35重量%の式CH=C(R)COの1つまたは複数のオレフィン[式中、Rは水素または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である]であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(c)が約3〜約17重量%の式CH=C(R)COの少なくとも1つのオレフィン[Rは水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rはグリシジルである]であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレンコポリマー耐衝撃性改良剤が、さらに(d)0〜約20重量%の一酸化炭素を共重合することから誘導されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(b)がアクリル酸ブチルであり、(c)がメタクリル酸グリシジルであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記耐衝撃性改良剤が、(iii)耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、約1〜約75重量%の1つまたは複数のイオノマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記耐衝撃性改良剤が、(iii)耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、10〜50重量%の1つまたは複数のイオノマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記耐衝撃性改良剤が、(iii)耐衝撃性改良剤の総重量を基準にして、さらにエチレンおよびアクリル酸エステルまたは酢酸ビニルからなるコポリマーの1つまたは複数を約50重量%まで含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
1つまたは複数のカチオングラフト化触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記カチオングラフト化触媒が、炭化水素モノ−、ジ−、またはポリカルボン酸の塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記カチオングラフト化触媒が、1つまたは複数のオクタン酸第一スズ、ステアリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、および二酢酸亜鉛であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする成形品。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする押出品。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とするシート。
【請求項18】
請求項17によるシートで製造されることを特徴とする熱成形品。

【公表番号】特表2006−528275(P2006−528275A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533047(P2006−533047)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/015067
【国際公開番号】WO2004/101642
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】