説明

強化された免疫刺激活性を有するリン酸が修飾されたオリゴヌクレオチド類似体

【課題】強化された免疫刺激活性を有するリン酸が修飾されたオリゴヌクレオチド類似体を提供する。
【解決手段】式Iに相当する少なくとも1個のピリミジン−プリン(Py−Pu)モチーフを有するオリゴヌクレオチドが、免疫応答の媒介において極めて有効である。免疫応答を誘導するため、および、癌およびウイルス感染のような病気および障害を治療するための治療的および予防的に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のホスホノアセタート、または、ホスホノアセタート様の結合を有するオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
背景および使用方法
細菌のDNAは、B細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化するための免疫刺激性の作用を有するが、脊椎動物のDNAはそれらがない(Tokunaga,T.等,1988.Jpn.J.Cancer Res.79:682〜686;Tokunaga,T.等,1984,JNCI 72:955〜962;Messina,J.P.等,1991,J.Immunol.147:1759〜1764;および、Krieg,1998,In:Applied Oligonucleotide Technology,C.A.SteinおよびA.M.Krieg,(編集),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley and Sons,Inc.),ニューヨーク,ニューヨーク州,431〜448頁に総論されている)。現在、これらの細菌のDNAの免疫刺激性の作用は、細菌のDNAに共通の特定の塩基の構成(CpGモチーフ)中の非メチル化CpGジヌクレオチドが存在する結果であると理解されているが、脊椎動物のDNAにおいては、これらはメチル化されており、過小評価されている(Krieg等,1995 Nature 374:546〜549;Krieg,1999 Biochim.Biophys.Acta 93321:1〜10)。細菌のDNAの免疫刺激性の作用は、これらのCpGモチーフを含む合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を用いて模擬することができる。このようなCpGのODNは、ヒトおよびマウスの白血球に対して高い刺激作用を有し、B細胞増殖;サイトカイン、および、免疫グロブリン分泌;ナチュラルキラー(NK)細胞の溶解作用、および、IFN−γ分泌;および、Th1様T細胞応答の発達を促進することにおいて重要な、共刺激分子を発現してサイトカイン、特にTh1様サイトカインを分泌させるための樹状細胞(DC)およびその他の抗原提示細胞の活性化を誘導する。このような天然型のホスホジエステル主鎖のCpGのODNの免疫刺激性の作用は、CpGモチーフがメチル化されてGpCに変化したり、または、その他の方法で除去または改変されると劇的に減少するという点で、このような作用は高度にCpG特異的である(Krieg等,1995 Nature 374:546〜549;Hartmann等,1999 Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:9305〜10)。
【0003】
初期の研究において、免疫刺激性のCpGモチーフは、プリン−プリン−CpG−ピリミジン−ピリミジンという式に従っていると考えられていた(Krieg等,1995 Nature 374:546〜549;Pisetsky,1996 J.Immunol.156:421〜423;Hacker等,1998 EMBO J.17:6230〜6240;Lipford等,1998 Trends in Microbiol.6:496〜500))。しかしながら現在、マウスのリンパ球は、この「式」に従っていないホスホジエステルCpGモチーフに極めてよく応答し(Yi等,1998 J.Immunol.160:5898〜5906)、同じことがヒトB細胞および樹状細胞にも当てはまることが明らかになっている(Hartmann等,1999 Proc.Natl.Acad.Sci USA 96:9305〜10;Liang,1996 J.Clin.Invest.98:1119〜1129)。
【0004】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドのホスホジエステル主鎖に対して様々な修飾が行われてきた。リンにおける修飾には、中性の、加えて正電荷および負電荷を有する種、例えばホスホロチオエート(PS)種が含まれる。PSオリゴヌクレオチドは、優れた免疫刺激性活性を示し、それに代わるものは、CpGにおけるインターヌクレオチド結合がホスホジエステル(PO)結合である切断され易いODNのみである。このことから、一般的に、匹敵する活性を得るには、リン原子における置換基が類似の電荷およびサイズを有していなければならないと考えられる。
【発明の開示】
【0005】
要約
本発明は、強化された免疫刺激能力を惹起する1種またはそれより多くの修飾を含むオリゴヌクレオチドに関する。具体的には、本発明は、式I(以下の)に相当する少なくとも1個のピリミジン−プリン(Py−Pu)モチーフを有するオリゴヌクレオチドが、免疫応答の媒介において極めて有効であるという発見に基づく。これらのオリゴヌクレオチドは、免疫応答を誘導するため、および、癌およびウイルス感染のような病気および障害を治療するための治療的および予防的に有用である。
【0006】
一形態において、本発明は、少なくとも1個の式Iで示される修飾ピリミジン−プリンジヌクレオチドを有する免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む組成物である:
【0007】
【化1】

【0008】
式中、Rは、水素(H)、C〜C−アルキル、メトキシエチル、ピバロイルオキシメチル、ピバロイルオキシベンジル、または、S−ピバロイルチオエチル、または、それらの生理学的に許容できる塩であり;X、YおよびZは、酸素(O)または硫黄(S)であり;RおよびRは、H、または、C〜Cアルキルであり;Pyは、ピリミジン塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体であり、Puは、プリン塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体である。
【0009】
いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドをさらに含み、ここでこの第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を有する。その他の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドをさらに含み、ここでこの第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を有する。さらにその他の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドをさらに含み、ここでこの第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を有する、さらに、少なくとも1個の第三のピリミジン−プリンジヌクレオチドをさらに含み、ここでこの第三のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を有する。
【0010】
いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドの少なくとも1個のヌクレオチドは、実質的に、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース、2’−アミノ−2’デオキシリボース、2’−O−アルキル−リボース、または、3’−O−アルキル−リボースからなる群より選択される修飾された糖残基を有する。いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、2’−5’、5’−5’、3’−3’、2’−2’、または、2’−3’結合からなる群より選択される少なくとも1個のインターヌクレオチド結合を含む。いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、Bクラス、Cクラス、Pクラス、Tクラス、または、Eクラスのオリゴヌクレオチドである。
【0011】
いくつかの実施態様において、本組成物は、抗菌剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、喘息もしくはアレルギー治療薬、または、自己免疫疾患治療薬をさらに含む。その他の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、TLR9リガンドである。その他の実施態様において、上記ピリミジン−プリンジヌクレオチドの1個またはそれより多くは、C−Gジヌクレオチドである。一実施態様において、第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、C−Gジヌクレオチドである。その他の実施態様において、第一のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、C−Gジヌクレオチドである。さらにその他の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも2個のC−Gジヌクレオチドを含む。さらにその他の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも3個のC−Gジヌクレオチドを含む。一実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個のホスホロチオエートインターヌクレオチド結合を含む。その他の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個のホスホジエステルインターヌクレオチド結合を含む。いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、抗原と共に配合される。
【0012】
本発明のその他の形態は、被検体において免疫応答を刺激する方法を提供し、本方法は、被検体に、免疫応答を刺激するための有効量の、少なくとも1個のホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む。一実施態様において、上記被検体は細菌感染を有し、本組成物は、細菌感染の治療に有効な量で投与される。その他の実施態様において、上記被検体はアレルギーを有し、本組成物は、アレルギーの治療に有効な量で投与される。さらにその他の実施態様において、本組成物は、喘息の治療に有効な量で投与される。さらにその他の実施態様において、上記被検体は自己免疫疾患を有し、本組成物は、自己免疫疾患の治療に有効な量で投与される。
【0013】
一実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、本明細書において説明される免疫刺激性オリゴヌクレオチドのいずれか1種またはそれより多くである。特定の実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、アンチセンス、リボザイム、または、アプタマーではない。一実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、抗原と共に配合される。
【0014】
本発明のその他の形態は、被検体における癌の治療方法を提供し、本方法は、このような治療が必要な被検体に、癌の治療に有効な量の、本明細書において説明される免疫刺激性オリゴヌクレオチドのいずれか1種またはそれより多く、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む。一実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、経口、経鼻、舌下、静脈内、皮下、粘膜、呼吸器、直接注射、および、皮膚からなる群より選択される経路で送達される。その他の実施態様において、上記被検体に治療手順が施される。一実施態様において、上記治療手順は、外科手術である。その他の実施態様において、上記治療手順は、放射線である。さらにその他の実施態様において、上記治療手順は、医薬品である。さらにその他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、製剤化される。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、標的分子に結合している。
【0015】
本発明のその他の形態は、被検体における感染の治療方法を提供し、本方法は、このような治療が必要な被検体に、感染の治療に有効な量の、本明細書において説明される免疫刺激性オリゴヌクレオチドのいずれか1種またはそれより多く、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む。一実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、経口、経鼻、舌下、静脈内、皮下、粘膜、呼吸器、直接注射、および、皮膚からなる群より選択される経路で送達される。一実施態様において、このような感染症は、細菌感染である。その他の実施態様において、感染は、ウイルス感染である。さらにその他の実施態様において、感染は、寄生虫感染である。その他の実施態様において、感染は、真菌感染である。
【0016】
一実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、Aクラスのオリゴヌクレオチドである。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、Bクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。さらにその他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、Cクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。さらにその他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、Tクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。さらにその他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、Eクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。一実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、DNA/RNAハイブリッドであり、本オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を有するCGジヌクレオチドを含む。
【0017】
本発明のその他の形態は、被検体における喘息の治療方法を提供し、本方法は、このような治療が必要な被検体に、喘息の治療に有効な量の、少なくとも1個のホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、Bクラス、Cクラス、Pクラス、Tクラス、または、Eクラスのオリゴヌクレオチドである。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、DNA/RNAハイブリッドである、および、CGジヌクレオチドにおけるインターヌクレオチド結合は、ホスホジエステル結合である。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、経口、経鼻、舌下、静脈内、皮下、粘膜、呼吸器、直接注射、および、皮膚からなる群より選択される経路で送達される。
【0018】
本発明のその他の形態は、被検体におけるアレルギーの治療方法を提供し、本方法は、このような治療が必要な被検体に、アレルギーの治療に有効な量の、少なくとも1個のホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、Bクラス、Cクラス、Pクラス、Tクラス、または、Eクラスのオリゴヌクレオチドである。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、DNA/RNAハイブリッドである、および、CGジヌクレオチドにおけるインターヌクレオチド結合は、ホスホジエステル結合である。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、経口、経鼻、舌下、静脈内、皮下、粘膜、呼吸器、直接注射、および、皮膚からなる群より選択される経路で送達される。
【0019】
本発明のその他の形態は、少なくとも1個のホスホノアセタート様の結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)を含む組成物であって、ここで該オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の治療剤に連結している。一実施態様において、このような治療剤は、第二のオリゴヌクレオチドであり、この第二のオリゴヌクレオチドは、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドに結合して、分岐状構造を形成する。その他の実施態様において、このような治療剤は、第二のオリゴヌクレオチドであり、この第二のオリゴヌクレオチドは、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドに結合して、3’−3’結合を形成する。さらにその他の実施態様において、このような治療剤は、第二のオリゴヌクレオチドであり、この第二のオリゴヌクレオチドと本免疫刺激性オリゴヌクレオチドとが、デンドリマーを形成する。さらにその他の実施態様において、このような治療剤は、抗ウイルス剤である。その他の実施態様において、このような治療剤は、抗癌剤である。一実施態様において、本オリゴヌクレオチドと治療剤との間の結合は、共有結合である。一実施態様において、本オリゴヌクレオチドと治療剤との間の結合は、非共有結合である。一実施態様において、本組成物は、抗原を含む。
【0020】
また本発明のオリゴヌクレオチドの免疫応答を刺激するための使用も、本発明の一形態として提供される。
また本発明のオリゴヌクレオチドの免疫応答を刺激するための医薬品を製造する方法も提供される。
【0021】
本発明のそれぞれの限定は、本発明の様々な実施態様を含んでいてもよい。従って当然ながら、本発明のそれぞれの形態には、いずれか1つの構成要素、または、構成要素の組み合わせに関する本発明のそれぞれの限定を含めることができる。本発明は、その用途において、以下の説明に記載の、または、図面で説明されている要素の構築および配置に関する詳細に限定されない。本発明は、それ以外の実施態様でもよいし、様々な方法で実施してもよいし、または、行ってもよい。また本明細書において用いられる言い回しおよび用語は説明のためであり、制限するものとみなされるべきではない。本明細書において、「〜が挙げられる(including)」、「〜を含む(comprising)」、または「〜を有する(having)」、「〜を含む(containing)」、「〜に関与する(involving)」およびそれらの変形型の使用は、その後に列挙した事項およびそれらの等価物、加えて追加の事項を包含することを意味する。
【0022】
詳細な説明
本発明は、部分的に、強化された免疫刺激能力を示す安定化されたオリゴヌクレオチドの一種の発見に基づく。ホスホロチオエート修飾のようなオリゴヌクレオチドの主鎖の修飾によって、安定性が向上したオリゴヌクレオチドが生じることが多い。場合によっては、主鎖の修飾により、TLR9活性を刺激する能力が減少する可能性があるため、安定化されていないオリゴヌクレオチドの効力のうちいくつかが犠牲になる。発明者等によって、ことが発見された主鎖に特定の修飾を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、安定性が増加するだけでなく、インターフェロン−α(IFN−α)生産を刺激し、TLR9活性化を誘導する能力も強化される。結果として、これらの分子は、強化された効力を有する。
【0023】
本発明は、一般的に、特定の主鎖の修飾を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドに関し、加えて、関連する免疫刺激性オリゴヌクレオチド、および、組成物に関する。本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、免疫応答を刺激または促進するための組成物または方法が要求されるあらゆる環境または用途において有用である。本発明のオリゴヌクレオチドは、癌、感染症、アレルギーおよび喘息、炎症性疾患、ならびに、自己免疫疾患などの様々な状態の治療に使用するための医薬組成物、例えばアジュバント、ワクチンおよびその他の医薬品の製造において特に有用である。従って、本発明は、特定の形態において、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む免疫刺激性組成物に関し、加えてそれらの使用方法に関する。また以下で開示されたように、本発明のオリゴヌクレオチドは、免疫細胞を活性化する方法、被検体にワクチン接種する方法、免疫系の不全、感染、癌、アレルギー状態、または、炎症性疾患もしくは自己免疫疾患を有する、または、その危険性がある被検体を治療する方法において特に有用である。
【0024】
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、以下の式Iで示されるピリミジン−プリン(Py−Pu)ジヌクレオチドを含む:
【0025】
【化2】

【0026】
式中、Rは、水素(H)、C〜C−アルキル、メトキシエチル、ピバロイルオキシメチル、ピバロイルオキシベンジル、または、S−ピバロイルチオエチル、または、それらの生理学的に許容できる塩であり;X、YおよびZは、酸素(O)または硫黄(S)であり;RおよびRは、H、または、C〜Cアルキルであり;Pyは、ピリミジン塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体であり、Puは、プリン塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体である。
【0027】
用語「免疫刺激性オリゴヌクレオチド」、またはそれと同等の「免疫刺激性の核酸」は、本発明の状況に関して、少なくとも1個の本発明のPy−Pu免疫刺激性ジヌクレオチドを有し、免疫細胞を活性化することができるあらゆる核酸を意味する。本発明のいくつかの実施態様において、このようなピリミジン−プリンジヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドであり得る。このようなケースにおいて、CpGジヌクレオチドのうち少なくともCは、典型的には非メチル化されているが、必ずしもその限りではない。ピリミジン−プリンジヌクレオチドを含む免疫刺激性の核酸は、多数の発行された特許および公開された特許出願で説明されており、例えば、米国特許第6,194,388号;6,207,646号;6,218,371号;6,239,116号;6,339,068号;6,406,705号;および、6,429,199号などで説明されている。本発明のいくつかの形態において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1個より多くのPy−Pu免疫刺激性ジヌクレオチドを有することが望ましい。
【0028】
少なくとも1個のPy−Puジヌクレオチドを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、式Iに相当するピリミジン−プリンジヌクレオチド配列を含み、免疫系を活性化する核酸分子である。少なくとも1個のPy−Puジヌクレオチドを含む免疫刺激性核酸の非限定的な例は、非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド配列を含む核酸(すなわち、非メチル化5’シチジン、それに続いて3’グアノシンの配列であり、ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様結合で連結されている)である。本発明のいくつかの形態において、Py−Puジヌクレオチドは、C−Gジヌクレオチドである。「C−G」 ジヌクレオチドは、式:5’−Py−Pu−3’で示されるジヌクレオチドとして説明され、式中Pyは、Cまたは修飾C、および、Puは、Gまたは修飾Gである。本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、複数のC−Gジヌクレオチドを含んでいてもよい。C−Gジヌクレオチドのうち1個またはそれより多くは、ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有していてもよい。
【0029】
いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、TLR9リガンドとして作用する。本明細書で用いられる用語「TLR9リガンド」は、TLR9のシグナル伝達の増加を誘導することができるあらゆる物質(すなわち、TLR9のアゴニスト)を意味する。TLR9リガンドとして具体的には、これらに限定されないが、免疫刺激性CpG核酸分子が挙げられる。
【0030】
本発明のいくつかの形態において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を含む。いくつかの実施態様において、このような結合は、少なくとも1個の内部Py−Puジヌクレオチド内でのみ起こる。その他の実施態様において、このような結合は、複数のPy−Puジヌクレオチド内で起こるか、または、全てのPy−Puジヌクレオチドより少ない数で起こる。本発明の状況に応じて、ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合は、Py−Pu免疫刺激性ジヌクレオチドの外側に存在していてもよい。ホスホノアセタートおよびホスホノアセタート様結合は式Iおよび以下の式で示される:
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
式中、R、R、R、YおよびZは、上述した通りに定義され、Nuは、あらゆるヌクレオチドである。
本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様の結合に加えて、Py−Puジヌクレオチドにさらなる主鎖の修飾を有していてもよい。安定化されたインターヌクレオチド結合は、ホスホジエステルインターヌクレオチド結合と比較してインビボでの分解(例えば、エキソまたはエンドヌクレアーゼを介した分解)に対して比較的耐性を有するインターヌクレオチド結合である。ホスホノアセタート、および、ホスホノアセタート様結合に加えて、本オリゴヌクレオチドは、その他の安定化されたインターヌクレオチド結合を含んでいてもよく、このような結合としては、これらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホナート、および、メチルホスホロチオエートが挙げられる。その他の安定化されたインターヌクレオチド結合としては、これらに限定されないが、ペプチド、アルキル、および、デホスホが挙げられる。ホスホノアセタートインターヌクレオチド結合は、その他の安定化された結合と同様に、ヌクレアーゼ消化に対する感受性の減少、および、RNアーゼHを活性化する能力の増加を示す。従って、例えばホスホジエステル(ただしホスホノアセタート、オリゴヌクレオチド以外)は、ヌクレアーゼ消化を受けやすいが、ホスホジエステル、および、ホスホノアセタートオリゴヌクレオチドはいずれも、RNアーゼHを活性化する。いくつかの実施態様において、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個のホスホジエステルインターヌクレオチド結合を含む。
【0034】
本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合に加えて、好ましい内部の位置で、分解に対して耐性を有する5’および3’末端を含んでいてもよい。このような分解抵抗性の末端は、対応する未修飾の末端に比べて、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性の増加が起こるあらゆる適切な修飾を含んでいてもよい。例えば、5’および3’末端は、主鎖の少なくとも1個のリン酸への修飾を包接させることによって安定化することができる。一実施態様において、各末端における主鎖の少なくとも1個のリン酸への修飾は、独立して、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホノアセタート、ホスホノアセタート様、メチルホスホナート、または、メチルホスホロチオエートインターヌクレオチド結合である。その他の実施態様において、分解抵抗性の末端は、3’末端でペプチドまたはアミド結合によって連結された1個またはそれより多くのヌクレオチド単位を含む。
【0035】
用語「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、例えば塩基および/または糖類に置換または修飾を含む核酸またはオリゴヌクレオチドも包含する。例えば、これには、2’位のヒドロキシル基以外、および、5’位のリン酸基またはヒドロキシ基以外で、低分子量の有機性の基に共有結合で結合した主鎖の糖類を有する核酸も含まれる。従って、修飾核酸は、2’−O−アルキル化デオキシリボース基を含んでいてもよい。加えて修飾核酸は、デオキシリボースの代わりに、アラビノース、または、2’−フルオロアラビノースのような糖類を含んでいてもよい。従って、このような核酸は、主鎖の組成がヘテロジニアスであってもよく、すなわち一つに連結したポリマー単位のあらゆる可能性のある組み合わせを含んでいてもよく、例えばペプチド核酸である(これは、核酸塩基を含むアミノ酸主鎖を有する)。本発明の状況に関して、本オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または、アプタマーではない。
【0036】
また核酸としては、置換プリンおよびピリミジンも挙げられ、例えばC−5プロピンピリミジン、および、7−デアザ−7−置換プリンで修飾された塩基である(Wagner RW等(1996)Nat Biotechnol 14:840〜4)。プリンおよびピリミジンとしては、これらに限定されないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、5−メチルシトシン、5−ヒドロキシシトシン、5−フルオロシトシン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、および、その他の天然に存在する、および、天然に存在しない核酸塩基、置換および非置換の芳香族成分が挙げられる。このような修飾のその他の例は当業者周知である。
【0037】
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、これらが式Iで示される修飾ピリミジン−プリンジヌクレオチドを含んでいさえすれば、Aクラス、Bクラス、Cクラス、Tクラス、PクラスおよびEクラスのようなその他のODNクラスのモチーフおよび特性を含んでいてもよい。「Bクラス」のODNは、B細胞の活性化には有力だが、IFN−α、および、NK細胞の活性化の誘導においては比較的弱い。BクラスのCpG核酸は、典型的には、完全に安定化されており、所定の好ましい塩基の構成内に非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。例えば、米国特許第6,194,388号;6,207,646号;6,214,806号;6,218,371号;6,239,116号;および、6,339,068号を参照。その他のクラスは、IFN−αの誘導、および、NK細胞の活性化に関して有力だが、B細胞の刺激に関しては比較的弱い;このクラスは、Aクラスと名付けられている。「Aクラス」のCpG核酸は、典型的には、5’および3’末端に安定化されたポリG配列、および、少なくとも6個のヌクレオチドからなるパリンドロームのホスホジエステルCpGジヌクレオチドを含む配列を有する。例えば、公開された特許出願PCT/US00/26527(WO01/22990)を参照。さらにCpG核酸のその他のクラスは、B細胞およびNK細胞を活性化し、IFN−αを誘導する;このクラスは、「Cクラス」と名付けられている。最初に特徴付けられたCクラスのCpG核酸は、典型的には、完全に安定化されており、Bクラスタイプの配列、および、GCリッチなパリンドローム、または、パリンドロームに近い形態などを含む。このクラスは、2001年8月17日付けで出願された米国仮特許出願第60/313,273号、2002年8月19日付けで出願されたUS10/224,523、および、US(その全内容をこの参照により開示に含める)で説明されている。これらの組み合わせのモチーフを含む核酸は、B細胞の活性化および樹状細胞(DC)の活性化の強い誘導物質である従来のBクラスのCpGのODNに関連する作用と、さらに近年説明されている、IFN−αおよびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化の強い誘導物質であるが、ただし、B細胞およびDC活性化については比較的弱い誘導物質である免疫刺激性核酸のクラス(BクラスのCpGのODN)に関連する作用との間の範囲のうちどこかに当てはまる免疫刺激作用を有する。Krieg AM等,(1995)Nature 374:546〜9;Ballas ZK等,(1996)J Immunol 157:1840〜5;Yamamoto S等,(1992)J Immunol 148:4072〜6。従来技術のBクラスのCpGのODNはホスホロチオエート主鎖を有するものが多く、従来技術のAクラスのCpGのODNは、混合型の、または、キメラの主鎖を有するが、Cクラスの組み合わせのモチーフの免疫刺激性核酸は、安定化された、例えばホスホロチオエート、キメラまたはホスホジエステル主鎖のいずれかを有する可能性があり、場合によってはこれらは切断され易い主鎖を有する。ホスホナートまたはホスホナート様の修飾は、これらのタイプの分子それぞれに包含させることができる。
【0038】
「Tクラス」のオリゴヌクレオチドにおいて、本発明のODN、ならびにIFN関連のサイトカインおよびケモカインの場合ように修飾されていない場合、IFN−α分泌の誘導レベルは、BクラスまたはCクラスのオリゴヌクレオチドよりも低いが、Bクラスのオリゴヌクレオチドに類似したレベルでIL−10を誘導する能力を保持する。例えば、米国特許出願第11/099,683号を参照。その他のクラスであるPクラスのオリゴヌクレオチドは、場合に応じてCクラスよりもかなり高レベルのIFN−α分泌を誘導する能力を有する。「Pクラス」のオリゴヌクレオチドは、インビトロおよび/またはインビボいずれかで自発的にコンカテマーに組み立てられる能力を有する。これらの分子の作用方法に関するいかなる特定の理論に拘束されることはないが、一つの可能性のある仮説は、この特性は、Pクラスのオリゴヌクレオチドに、特定の免疫細胞内部でTLR9をより高度に架橋させ、これまでに述べられたCpGオリゴヌクレオチドのクラスに比べて別個の免疫活性化パターンを誘導する能力を与えるといものである。例えば、米国特許出願第11/706,561号を参照。「Eクラス」のオリゴヌクレオチドは、配列RPy−PuRをさらに含むA、B、C、TまたはPクラスのオリゴヌクレオチドのサブクラスであり、ここでRおよびRはそれぞれ親油性の置換されたヌクレオチド類似体であり、Pyは、ピリミジンヌクレオチドであり、Puは、プリン、または、脱塩基残基である。好ましい親油性ヌクレオチド類似体は、例えば、5−クロロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−ヨード−ウラシル、5−エチル−ウラシル、5−プロピル−ウラシル、2,4−ジフルオロ−トルエン、および、3−ニトロピロールである。
【0039】
ホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様結合などを有する主鎖のような修飾された主鎖は、ホスホロアミデートまたはH−ホスホナートの化学のいずれかを用いた自動式の技術を利用して合成してもよい。合成は、例えば、国際特許出願WO02/32912で説明されている。ホスホノアセタート、および、ホスホノアセタート様結合を用いたオリゴヌクレオチドの合成が、例えば米国特許第6,693,187号で説明されている(その内容を参照により本発明に含める)。アリールおよびアルキルホスホナートは、例えば、米国特許第4,469,863号で説明されているようにして製造することができる;および、アルキルホスホトリエステル(ここで電荷を有する酸素部分は、米国特許第号5,023,243、および、欧州特許第092,574号で説明されているようにアルキル化される)は、市販の試薬を用いた自動式の固相合成によって製造することができる。その他のDNA主鎖の修飾および置換の作成方法が説明されている(Uhlmann,E.等(1990)Chem Rev 90:544;Goodchild,J.(1990)Bioconjugate Chem 1:165)。またキメラオリゴヌクレオチドを製造する方法も既知である。例えばUhlmann等に発行された特許では、このような技術を説明している。
【0040】
本オリゴヌクレオチドは、DNAでもよいし、またはRNAでもよい。一実施態様において、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、リボースおよびデオキシリボースが混合されたタイプの主鎖を含むDNA/RNAハイブリッド分子である。DNA/RNAハイブリッドオリゴヌクレオチドは、様々なT細胞依存性の用途において活性の増加を示すものが多く、これらのオリゴヌクレオチドでの刺激は、サイトカインのような異なるプロファイルの免疫応答に関連する分子の誘導が起こることが多い。一実施態様において、これらのDNA/RNAハイブリッドオリゴヌクレオチドは、一本鎖である。その他の実施態様において、本オリゴヌクレオチドの全部または一部は、二本鎖である。
【0041】
一実施態様において、本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1次および2次構造の両方に関して共有結合で閉じられたダンベル型の分子の形態を有するである。一実施態様において、このような環状オリゴリボヌクレオチドは、介在する二本鎖セグメントで連結された2つの一本鎖ループを含む。一実施態様において、少なくとも1個の一本鎖ループは、本発明の免疫刺激性DNAモチーフを含む。本発明のその他の共有結合で閉じられたダンベル型の分子は、例えば、二本鎖セグメントが少なくとも部分的にDNAであるキメラDNA/RNA分子(例えば、ホモ二量体のdsDNA、または、ヘテロ二量体のDNA:RNAのいずれか)を含み、少なくとも1個の一本鎖ループは、本発明の免疫刺激性DNAモチーフを含む。あるいは、キメラ分子の二本鎖化されたセグメントはDNAである。
【0042】
また本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、その他の修飾を含んでいてもよい。その例としては、非イオン性のDNA類似体、例えばアルキルおよびアリール−リン酸塩(ここで電荷を有するホスホナートの酸素が、アルキルまたはアリール基で置換される)、ホスホジエステル、および、アルキルホスホトリエステル(ここで電荷を有する酸素部分が、アルキル化される)が挙げられる。また、いずれかの末端に、または、両方の末端にテトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールのようなジオールを含む核酸も、実質的にヌクレアーゼ分解に対する耐性を有することが示されている。
【0043】
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、天然のRNAおよびDNAと比べて、ホスホジエステルインターヌクレオチド架橋、β−D−リボース単位、および/または、天然のヌクレオチド塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル)などの様々な化学修飾および置換を包含していてもよい。化学修飾の例は、当業者既知であり、例えば、Uhlmann E等(1990)Chem Rev 90:543;“Protocols for Oligonucleotides and Analogs” Synthesis and Properties & Synthesis and Analytical Techniques,S.Agrawal,Ed,Humana Press,Totowa,USA 1993;Crooke ST等(1996)Annu Rev Pharmacol Toxicol 36:107〜129;および、Hunziker J等(1995)Mod Synth Methods 7:331〜417で説明されている。本発明に係るオリゴヌクレオチドは、1種またはそれより多くの修飾を有していてもよく、ここでそれぞれの修飾は、天然のDNAまたはRNAで構成される同じ配列のオリゴヌクレオチドと比べて、特定のホスホジエステルインターヌクレオチド架橋、および/または、特定のβ−D−リボース単位、および/または、特定の天然のヌクレオチド塩基の位置に位置する。
【0044】
例えば、本発明は、1種またはそれより多くの修飾を任意に含むオリゴヌクレオチドに関し、ここでそれぞれの修飾は、独立して、以下から選択される:
a)ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置するホスホジエステルインターヌクレオチド架橋の、修飾インターヌクレオチド架橋での置換、
b)ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置するホスホジエステル架橋の、デホスホ架橋での置換、
c)糖リン酸主鎖からの糖リン酸単位のその他の単位での置換、
d)β−D−リボース単位の修飾糖単位での置換、および、
e)天然のヌクレオチド塩基の修飾ヌクレオチド塩基での置換。
【0045】
より詳細なオリゴヌクレオチドの化学修飾の例は、以下の通りである。
ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置するホスホジエステルインターヌクレオチド架橋は、修飾インターヌクレオチド架橋で置き換えることができ、ここでこの修飾インターヌクレオチド架橋は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、NR−ホスホロアミデート、ボラノホスフェート、α−ヒドロキシベンジルホスホナート、リン酸塩−(C〜C21)−O−アルキルエステル、リン酸−[(C〜C12)アリール−(C〜C21)−O−アルキル]エステル、(C〜C)アルキルホスホナート、および/または、(C〜C12)アリールホスホナート架橋、(C〜C12)−α−ヒドロキシメチル−アリール(例えば、WO95/01363で開示された)から選択され、ここで(C〜C12)アリール、(C〜C20)アリール、および、(C〜C14)アリールは、任意に、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ニトロ、シアノで置換されていてもよく、ここでRおよびRは、互いに独立して、水素、(C〜C18)−アルキル、(C〜C20)−アリール、(C〜C14)−アリール−(C〜C)−アルキル、好ましくは水素、(C〜C)−アルキル、好ましくは(C〜C4)−アルキル、および/または、メトキシエチルであるか、または、RおよびRは、それらを有する窒素原子と共に、5〜6員環の複素環を形成し、この複素環はさらに、O、SおよびNからなる群より選択されるさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0046】
ヌクレオチドの3’および/または5’末端に位置するホスホジエステル架橋の、デホスホ架橋での交換(デホスホ架橋は、例えば、Uhlmann EおよびPeyman A in “Methods in Molecular Biology”,第20巻,“Protocols for Oligonucleotides and Analogs”,S.Agrawal編集,ヒューマナ・プレス,トトワ1993,第16章,355ff頁で説明されている)において、デホスホ架橋は、例えば、デホスホ架橋ホルムアセタール、3’−チオホルムアセタール、メチルヒドロキシルアミン、オキシム、メチレンジメチル−ヒドラゾ、ジメチレンスルホン、および/または、シリル基から選択される。
【0047】
糖リン酸単位(すなわち、β−D−リボース、および、ホスホジエステルインターヌクレオチド架橋が一緒になって糖リン酸単位を形成する)は、糖リン酸主鎖を形成しており(すなわち糖リン酸主鎖が糖リン酸単位で構成される)、この単位は、その他の単位で置き換えることができ、ここでその他の単位は、例えば「モルホリノ誘導体」オリゴマー(例えば、Stirchak EP等(1989)Nucleic Acids Res 17:6129〜41で説明されているようなもの)を構築するのに適した単位であり、すなわち、例えばモルホリノ誘導体単位で置換することができ;または、ポリアミド核酸(「PNA」;例えば、Nielsen PE等(1994)Bioconjug Chem 5:3〜7で説明されている通り)を構築するのに適した単位であり、すなわち、例えば、PNA主鎖単位で、例えば2−アミノエチルグリシンで置換することができる。
【0048】
β−D−リボース単位、または、β−D−2’−デオキシリボース単位は、修飾糖単位で置き換えることができ、ここでこの修飾糖単位は、例えば、α−D−2’−デオキシリボース、α−L−2’−デオキシリボース、β−L−2’−デオキシリボース、β−L−リボース、2’−F−2’−デオキシリボース、2’−F−2’−デオキシ−アラビノース、2’−O−(C〜C)アルキル−リボースから選択され、好ましくは、2’−O−(C〜C)アルキル−リボースは、2’−O−メチルリボース、2’−O−(C〜C)アルケニル−リボース、2’−[O−(C〜C)アルキル−O−(C〜C)アルキル]−リボース、2’−NH−2’−デオキシリボース、β−D−キシロ−フラノース、α−アラビノフラノース、2,4−ジデオキシ−β−D−エリスロ−ヘキソ−ピラノース、および、炭素環(例えば、Froehler,J.(1992)Am Chem Soc 114:8320で説明されている)、および/または、鎖が開環した糖の類似体(例えば、Vandendriessche等(1993)Tetrahedron 49:7223で説明されている)、および/または、ビシクロ環を有する糖の類似体(例えば、Tarkov,M.等(1993)Helv Chim Acta 76:481で説明されている)である。
【0049】
いくつかの実施態様において、上記糖は、2’−O−メチルリボース、2’−デオキシリボース、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース、2’−アミノ−2’デオキシリボース、2’−O−アルキル−リボース、または、3’−O−アルキル−リボース、および/または、2’−O−4’−C−アルキレンリボース、例えば2’−O−4’−C−メチレンリボース(または、いわゆるLNA)である。
【0050】
また核酸としては、置換プリンおよびピリミジンも挙げられ、例えばC−5プロピンピリミジン、および、7−デアザ−7−置換プリンで修飾された塩基(Wagner,R.W.等(1996)Nat Biotechnol 14:840〜4)である。プリンおよびピリミジンとしては、これらに限定されないが、アデニン、シトシン、グアニン、および、チミン、および、その他の天然に存在する、および、天然に存在しない核酸塩基、置換および非置換の芳香族成分が挙げられる。
【0051】
修飾塩基とは、T、C、G、AおよびUのような一般的にDNAおよびRNAに見出される天然に存在する塩基とは化学的に異なっているが、基本的な化学構造はこれらの天然に存在する塩基と共通しているあらゆる塩基である。修飾ヌクレオチド塩基は、例えば、ヒポキサンチン、ウラシル、ジヒドロウラシル、プソイドウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−アミノウラシル、5−(C〜C)−アルキルウラシル、5−(C〜C)−アルケニルウラシル、5−(C〜C)−アルキニルウラシル、5−(ヒドロキシメチル)ウラシル、5−クロロウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−ヨード−ウラシル、2,4−ジフルオロ−トルエン、および、3−ニトロピロール、5−ヒドロキシシトシン、5−(C〜C)−アルキルシトシン、5−(C〜C)−アルケニルシトシン、5−(C〜C)−アルキニルシトシン、5−クロロシトシン、5−フルオロシトシン、5−ブロモシトシン、N−ジメチルグアニン、2,4−ジアミノ−プリン、8−アザプリン、置換された7−デアザプリン、好ましくは7−デアザ−7置換プリン、および/または、7−デアザ−8置換プリン、5−ヒドロキシメチルシトシン、N4−アルキルシトシン、例えば、N4−エチルシトシン、5−ヒドロキシデオキシシチジン、5−ヒドロキシメチルデオキシシチジン、N4−アルキルデオキシシチジン、例えば、N4−エチルデオキシシチジン、6−チオデオキシグアノシン、および、ニトロピロールのデオキシリボヌクレオチド、C5−プロピニルピリミジン、および、ジアミノプリン、例えば2,6−ジアミノプリン、イノシン、5−メチルシトシン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチン、または天然のヌクレオチド塩基のその他の修飾型から選択されたものでもよい。この一覧は典型的なものを意味しており、これらに限定するとは解釈されない。
【0052】
本明細書において「Py」は、ピリミジンを意味するものとして用いられ、いくつかの実施態様において、シトシン、または、修飾シトシンを含むヌクレオチドである。本明細書で用いられる修飾シトシンとは、天然に存在する、または、天然に存在しないシトシンのピリミジン塩基類似体であって、オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を損なうことなくこの塩基を置き換えることができるものである。修飾シトシンとしては、これらに限定されないが、5−置換シトシン(例えば、5−メチル−シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−クロロ−シトシン、5−ブロモ−シトシン、5−ヨード−シトシン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシメチル−シトシン、5−ジフルオロメチル−シトシン、および、非置換または置換された5−アルキニル−シトシン)、6−置換シトシン、N4−置換シトシン(例えば、N4−エチル−シトシン)、5−アザ−シトシン、2−メルカプト−シトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、縮合環系を有するシトシン(例えば、N,N’−プロピレンシトシン、または、フェノキサジン)、および、ウラシル、および、その誘導体(例えば、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモ−ウラシル、5−ブロモビニル−ウラシル、4−チオ−ウラシル、5−ヒドロキシ−ウラシル、5−プロピニル−ウラシル)が挙げられる。好ましいシトシンのいくつか例としては、5−メチル−シトシン、5−フルオロ−シトシン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシメチル−シトシン、および、N4−エチル−シトシンが挙げられる。本発明のその他の実施態様において、シトシン塩基は、万能な塩基(例えば、3−ニトロピロール、P−塩基)、芳香環系(例えば、フルオロベンゼン、または、ジフルオロベンゼン)、または、水素原子(dスペーサー)で置換されている。
【0053】
本明細書において「Pu」は、プリン、または、改変されたプリンを意味するものとして用いられる。いくつかの実施態様において、Puは、グアニンまたは修飾グアニン塩基である。本明細書で用いられる修飾グアニンは、オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を損なうことなくこの塩基を置き換えることができるグアニンの天然に存在する、または、天然に存在しないプリン塩基の類似体である。修飾グアニンとしては、これらに限定されないが、7−デアザグアニン、7−デアザ−7−置換グアニン(例えば、7−デアザ−7−(C〜C)アルキニルグアニン)、7−デアザ−8−置換グアニン、ヒポキサンチン、N2−置換グアニン(例えば、N2−メチル−グアニン)、5−アミノ−3−メチル−3H,6H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、プリン、インドール、アデニン、置換アデニン(例えば、N6−メチル−アデニン、8−ヒドロキシアデニン)8−置換グアニン(例えば、8−ヒドロキシグアニン、および、8−ブロモグアニン)、および、6−チオグアニンが挙げられる。本発明のその他の実施態様において、このようなグアニン塩基は、万能な塩基(例えば、4−メチル−インドール、5−ニトロ−インドール、および、K−塩基)、芳香環系(例えば、ベンズイミダゾール、または、ジクロロ−ベンズイミダゾール、1−メチル−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド)、または、水素原子(dスペーサー)で置換されている。
【0054】
本発明はまた、通常ではないインターヌクレオチド結合を有するオリゴヌクレオチドも包含し、このような通常ではないインターヌクレオチド結合としては、5’−5’、2’−2’、2’−3’、および、2’−5’インターヌクレオチド結合が挙げられる。本発明のいくつかの形態において、本オリゴヌクレオチドが、1個またはそれより多くの接近可能な5’末端を有することが有利である。このような5’末端を2個有する修飾オリゴヌクレオチドを作製することが可能である。これは、例えば、3’−3’結合を介して2個のオリゴヌクレオチドを結合させ、1または2個の接近可能な5’末端を有するオリゴヌクレオチドを生成することによって達成してもよい。この3’−3’結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホノアセタート、または、その他のあらゆる修飾インターヌクレオチド架橋であり得る。このような結合を達成する方法は、当業界既知である。例えば、このような結合は、Seliger,H.等.Oligonucleotide analogs with terminal 3’−3’− and 5’−5’−internucleotidic linkages as antisense inhibitors of viral gene expression,Nucleotides & Nucleotides(1991),10(1−3),469−77、および、Jiang等,Pseudo−cyclic oligonucleotides:in vitro and in vivo properties,Bioorganic & Medicinal Chemistry(1999),7(12),2727〜2735で説明されている。
【0055】
一実施態様において、このような通常ではない結合の1個またはそれより多くがポリマー内のどこかに存在している可能性があるとしても、このような通常ではない結合は、免疫刺激性DNAモチーフから排除される。遊離末端を有するポリマーの場合、1個の3’−3’インターヌクレオチド結合を内包させることによって、2個の遊離の5’末端を有するポリマーが生じる可能性がある。逆に言えば、遊離末端を有するポリマーの場合、1個の5’−5’インターヌクレオチド結合を内包させることによって、2個の遊離の3’末端を有するポリマーが生じる可能性がある。
【0056】
加えて、結合がホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホノアセタート、またはその他の修飾された架橋ではない3’3’−、5’−5’−、2’−2’−、2’−3’−、および、2’−5’で連結された核酸は、追加のスペーサー、例えばトリまたはテトラエチレングリコールリン酸成分を用いて製造することができる(Durand,M.等,Triple−helix formation by an oligonucleotide containing one(dA)12 and two(dT)12 sequences bridged by two hexaethylene glycol chains,Biochemistry(1992),31(38),9197−204,米国特許第5658738号、および、米国特許第5668265号)。あるいは、ヌクレオチドではないリンカーは、エタンジオール、プロパンジオールから誘導されてもよいし、または、標準的なホスホアミダイトの化学を用いて脱塩基デオキシリボース(dスペーサー)単位から誘導されてもよい(Fontanel,Marie Laurence等,Sterical recognition by T4 polynucleotide kinase of non−nucleosidic moieties 5’−attached to oligonucleotides;Nucleic Acids Research(1994),22(11),2022−7)。このようなヌクレオチドではないリンカーは、連結しようとする2つのODNの3’末端間の距離が望ましい距離になるように、一回または複数回、または、互いに組み合わせて包含させることができる。
【0057】
本オリゴヌクレオチドは、2重または3重の単位(グレン・リサーチ(Glen Research),スターリング,バージニア州)、具体的には3’−3’結合を有する修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド類似体を含む単位を含んでいてもよい。一実施態様において、2重の単位は、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチロキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホアミダイトに基づくものが可能である。一実施態様において、3重の単位は、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチロキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホアミダイトの取り込みに基づくものが可能である。修飾オリゴリボヌクレオチド類似体が複数の2倍、3倍またはその他の倍数の単位により分岐するとデンドリマーが生じるが、これは、本発明のさらなる実施態様である。具体的には、本類似体の分岐していない形態と比べて異なる免疫作用を有するTLR3、TLR7、TLR8およびTLR9のような免疫刺激性RNAおよびDNAの組み合わせの場合、分岐状の修飾オリゴリボヌクレオチド類似体により、受容体の架橋が形成される可能性がある。加えて、分岐状、または、それ以外のタイプの多量体の類似体の合成は、分解に対してDNAを安定化させる可能性があり、弱い、または、有効性が限られたDNA配列に、治療上有用なレベルの免疫活性を作動させる可能性がある。またこのような修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド類似体は、ペプチドを修飾する試薬、または、オリゴヌクレオチドを修飾する試薬(グレン・リサーチ)から得られたリンカー単位を含んでいてもよい。さらにこのような修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド類似体は、ペプチド(アミド)結合によって上記ポリマーに連結された1個またはそれより多くの天然または非天然のアミノ酸残基を含んでいてもよい。
【0058】
3’−5’、5’−5’、3’−3’、2’−2’、2’−3’、および、2’−5’インターヌクレオチド結合は、直接の結合であってもよいし、または、間接的な結合であってもよい。このような状況において、直接の結合とは、リンカー成分が介在しない本明細書において開示されたようなリン酸結合または修飾されたリン酸結合を意味する。介在するリンカー成分とは、本明細書において開示されたようなリン酸結合または修飾されたリン酸結合とは異なる有機成分であり、このようなリンカー成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、dスペーサー(すなわち、脱塩基デオキシリボヌクレオチド)、2重の単位、または、3重の単位が挙げられる。
【0059】
このような結合は、好ましくは、C、H、N、O、S、B、P、および、ハロゲンで構成され、3〜300個の原子を含む。3個の原子を含む例は、アセタール結合(ODN1−3’−O−CH−O−3’−ODN2)であり、これは例えば、ある1つのヌクレオチドの3’−ヒドロキシ基を、第二のオリゴヌクレオチドの3’−ヒドロキシ基に連結する。約300個の原子を含む例は、PEG−40(テトラコンタポリエチレングリコール)である。好ましい結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、メチルホスホナート、ホスホロアミデート、ボラノホスホナート(boranophosphonate)、アミド、エーテル、チオエーテル、アセタール、チオアセタール、尿素、チオ尿素、スルフェンアミド、シッフ塩基、および、ジスルフィド結合である。ソルリンク・バイオコンジュゲーション・システム(Solulink BioConjugation System、すなわち、www.trilinkbiotech.com)を使用することも可能である。
【0060】
本オリゴヌクレオチドが、2個またはそれより多くの配列単位で構成される場合、これらの単位は、同一でもよいし、または異なっていてもよい。従って、3’3’−結合を有するオリゴヌクレオチドにおいて、その配列は、同一な5’−ODN1−3’3’−ODN1−5’でもよいし、または、異なる5’−ODN1−3’3’−ODN2−5’でもよい。さらに、様々なオリゴヌクレオチド単位の化学修飾、加えてそれらへのリンカーの連結は、様々であってもよい。短いオリゴヌクレオチドの取り込みは、長いオリゴヌクレオチドの取り込みよりも効率が低いようであることから、2個またはそれより多くの短い配列の結合は、改善された免疫刺激が生じる。このような短いオリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは2〜20個のヌクレオチド、より好ましくは3〜16個のヌクレオチドであるが、最も好ましくは5〜10個のヌクレオチドである。好ましくは、連結されたオリゴヌクレオチドは、2またはそれより多くの未結合の5’末端を有する。
【0061】
また本オリゴヌクレオチドの部分的な配列は、ヌクレオチドではないリンカーで連結されていてもよい。本明細書で用いられる「ヌクレオチドではないリンカー」は、ヌクレオチド、または、それらのポリマー(すなわちポリヌクレオチド)ではないあらゆるリンカーとしての構成要素を意味し、ここでヌクレオチドは、プリンまたはピリミジン核酸塩基、および、糖リン酸塩、具体的には脱塩基リンカー(dスペーサー)、トリエチレングリコール単位、または、ヘキサエチレングリコール単位を含む。さらに好ましいリンカーは、アルキルアミノリンカー、例えばC3、C6、C12アミノリンカー、および、アルキルチオールリンカー、例えばC3またはC6チオールリンカーが挙げられる。また本オリゴヌクレオチドは、芳香族残基で連結することもでり、このような芳香族残基は、アルキルまたは置換されたアルキル基さらにで置換されていてもよい。
【0062】
本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、細胞への取り込みを容易にするために、いくつかの実施態様において長さが3〜100塩基の範囲である。いくつかの実施態様において、本オリゴヌクレオチドは、長さが7〜100塩基である。典型的には、十分な免疫刺激モチーフが存在していれば、6個のヌクレオチドより大きいあらゆるサイズの核酸が(場合によっては数kbの長さの核酸でも)本発明に従って免疫応答を誘導することができる。しかしながら、本発明の修飾オリゴヌクレオチドの改善された免疫刺激能力は、それより長さがかなり短い免疫刺激性の分子でも提供される。いくつかの実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、長さが3〜6塩基である。本オリゴヌクレオチドは、100個のヌクレオチドよりも長くてもよい。例えばこれらは、120、150、200でってもよいし、または、ある種の環境においてそれよりも長くてもよい。
【0063】
その他の安定化されたオリゴヌクレオチドは、以下を含む:非イオン性DNA類似体、例えばアルキル−およびアリールホスファート(ここで電荷を有するホスホナートの酸素が、アルキルまたはアリール基で置換される)、ホスホジエステル、および、アルキルホスホトリエステル(ここで電荷を有する酸素部分が、アルキル化される)。また、いずれかの末端に、または、両方の末端にテトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコールのようなジオールを含む核酸も、実質的にヌクレアーゼ分解に対する耐性を有することが示されている。
【0064】
本発明のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、このような治療が必要な被検体において、免疫応答を刺激するのに有用である。このような治療が必要な被検体は、自己免疫疾患または炎症性の状態を有する、もしくはその危険性がある被検体、癌を有する、もしくはその危険性がある被検体、化学療法または放射線治療を受けた癌に罹った被検体、ウイルス、細菌または寄生虫感染に罹った、もしくはその危険性がある被検体、喘息を有する被検体、アレルギーもしくはアレルギー性鼻炎を有する被検体、アテローム性動脈硬化症を有する、もしくはその危険性がある被検体、または、組織または臓器移植を受けた被検体である。
【0065】
癌を発症する危険性がある被検体とは、癌を発症する確率が高い被検体である。これらの被検体としては、例えば、癌を発症させる高い可能性に相関することが実証された遺伝学的な異常を有する被検体、および、タバコ、アスベストまたはその他の化学的毒素のような発癌物質に晒された被検体、または、これまでに癌を治療したことがあり、見かけ上回復している被検体が挙げられる。癌を発症する危険性がある被検体を、被検体が発症する危険性がある癌のタイプに特異的な抗原、および、Py-Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドで治療すると、その被検体において癌細胞が発生したときにそれらを殺傷ことが可能である。被検体中で腫瘍の形成が始まると、その被検体は、腫瘍抗原に対して特異的な免疫応答を発生させると予想される。癌を有する被検体とは、検出可能な癌細胞を有する被検体である。癌は、悪性の癌の場合もあるし、または、良性の癌の場合もある。本明細書で用いられる「癌」は、体内の臓器およびシステムの正常な機能を妨害する制御不能な細胞増殖を意味する。癌は、その元の位置から移動して正常な臓器に転移し、最終的に影響を受けた臓器の機能が劣化することによって被検体を死亡させる。白血病のような造血系の癌は、被検体の正常な造血組織の区画に侵入して、それによって造血不能に陥り(貧血、血小板減少症、および、好中球減少症の形態で)、最終的には死をもたらす可能性がある。このような被検体は、Py−Puオリゴヌクレオチド単独で治療してもよいし、または、抗原、またはその他の治療剤と組み合わせて治療してもよい。
【0066】
転移は、原発腫瘍から体のその他の部分への癌細胞の内転移によって生じた原発腫瘍の位置とは異なる癌細胞の領域である。原発腫瘍の質量を診断する時に、転移の存在に関して被検体はをモニターすることが可能である。転移は、ほとんどの場合、核磁気共鳴映像法(MRI)でのスキャン、コンピュータ断層撮影法(CT)でのスキャン、血液および血小板の計数、肝臓機能の研究、胸部X線、および、骨のスキャンそれぞれ単独で、または、それらと特定の症状のモニターとを併用することによって検出される。
【0067】
癌としては、これらに限定されないが、基底細胞癌腫、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳および中枢神経系(CNS)の癌;乳癌;子宮頚癌;絨毛上皮腫;結腸および直腸癌;結合組織癌;消化器系癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;白血病;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);リンパ腫、例えばホジキンおよび非ホジキンリンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(例えば、唇、舌、口腔および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮癌;泌尿器系の癌、加えてその他の癌腫、腺癌および肉腫が挙げられる。
【0068】
感染を有する被検体とは、感染性病原体に晒され、体内に急性または慢性的な検出可能なレベルの病原体を含む被検体である。Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、抗原と共に用いても、または抗原を共に用いなくても、感染性病原体のレベルを減少または撲滅することができる抗原特異的な全身性または粘膜免疫応答を高めることができる。本明細書で用いられる感染症とは、体内に外来微生物が存在することにより生じる病気である。病原性が侵入する最初の部位である体の粘膜表面を保護するのに有効なワクチン法および治療を開発することが特に重要である。感染を有するの危険性がある被検体とは、将来的に微生物と接触することが予想される被検体である。このような被検体の非限定的な例は、医療従事者、または、世界中の微生物感染の発生率が高い地域への旅行者である。
【0069】
アレルギーを有する被検体は、アレルゲンに応答してアレルギー反応を示す被検体である。アレルギーとは、物質(アレルゲン)に対する後天性の過敏症を意味する。アレルギー状態としては、これらに限定されないが、湿疹、アレルギー性鼻炎、または、鼻感冒、枯草熱、結膜炎、気管支喘息、じんましん(hives)、および、食物アレルギー、および、その他のアトピー性の状態が挙げられる。
【0070】
アレルギーは、一般的に、無害のアレルゲンに対するIgE抗体の生成によって引き起こされる。CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドの全身または粘膜投与により誘導されたサイトカインは、主にTh1と呼ばれるクラス(その例としては、IL−12、IP−10、IFN−γ、および、IFN−γが挙げられる)に属し、これらは、体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を誘導する。IL−4およびIL−5サイトカインの生産に関連するその他の主要なタイプの免疫応答は、Th2免疫応答と名付けられる。一般的に、アレルギー性疾患は、Th2タイプの免疫応答が介在しているようである。被検体において免疫応答を優勢のTh2(これは、IgE抗体生産、および、アレルギーに関連する)からバランスの取れたTh2/Th1応答(これは、アレルギー反応に対して予防的である)にシフトさせるCpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドの能力に基づいて、免疫応答を誘導するのに有効な量のCpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドを被検体に投与して、喘息およびアレルギーを治療または予防することができる。
【0071】
従って、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、アレルギー状態、および、喘息のような非アレルギー状態の治療において有意な治療的な有用性を有する。喘息の被検体の気道において、Th2サイトカイン、特にIL−4およびIL−5が上昇する。これらのサイトカインは、喘息の炎症性応答の重要な局面、例えばIgEアイソトープの切り換え、好酸球の走化性および活性化、および、肥満細胞増殖を促進する。Th1サイトカイン、特にIFN−γおよびIL−12は、Th2クローンの形成、および、Th2サイトカイン生産を抑制する可能性がある。喘息は、炎症、気道狭窄、および、吸入された物質に対する気道の反応性の増加を特徴とする呼吸器系の障害を意味する。喘息は、これらに限定されないが、アトピー性の症状、または、アレルギー性の症状に付随する場合が多い。
【0072】
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、先天性免疫応答、または、Th1様の免疫応答に関与する状態、例えば炎症、アトピー性皮膚炎、急性および慢性的な同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患(GvHD)、所定の自己免疫疾患、ならびに、敗血症を治療するのに有用であり得る。本発明は、本発明に従って達成できるTLRシグナル伝達の選択的な阻害に基づいてこのような状態を治療するのに用いることができる。
【0073】
自己免疫疾患は、一般的に、抗体媒介性、T細胞媒介性、または、抗体媒介性とT細胞媒介性との組み合わせに分類することができる。本発明のアダプターODN、および、TLRリガンドの組み合わせは、様々なタイプの抗体媒介性またはT細胞性免疫に関与する自己免疫、例えばインスリン依存性(I型)糖尿病、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、および、炎症性腸疾患(すなわち、クローン病および潰瘍性大腸炎)を治療するのに有用であると考えられる。これらの自己免疫疾患の動物モデルが利用可能であり、これらの病気における本発明の組み合わせの有効性を評価するのに有用である。その他の自己免疫疾患としては、これらに限定されないが、円形脱毛症、後天性血友病、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、ベーチェット症候群、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎(celiac sprue dermatitis)、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ−ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、円板状紅斑性狼瘡(discoid lupus)、特発性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症、筋炎、ギラン−バレー症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、若年性関節炎、扁平苔癬、重症筋無力症、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性内分泌不全症候群(polyglandular syndrome)、皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、サルコイドーシス、スティッフマン症候群、高安動脈炎(Takayasu arthritis)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、ブドウ膜炎、血管炎、および、白斑が挙げられる。
【0074】
数種の自己免疫疾患において、自己抗原に対する抗体が観察されることが多い。例えば全身性エリテマトーデスの場合、一本鎖および二本鎖DNAまたはRNAに対する自己抗体が説明されている。Vallin,H.等,(1999)J Immunol 163:6306〜13;Hoet,R.M.等,(1999)J Immunol 163:3304〜12;ven Venrooij(1990)J Clin Invest 86:2154〜60。自己免疫患者の血清で頻繁に観察される自己抗体のレベルは、病気の重症度と互いに関係があることが見出されている。例えばヒトのSLEにおいて発生した自己抗体のパターンから、無傷の高分子粒子(例えばRNAまたはDNAを含む複合体)それ自身が免疫原性である可能性があり、従って抗核酸抗体が発生することが示唆される。Lotz,M.等,(1992)Mol Biol Rep 16:127;Mohan C等,(1993)J Exp Med 177:1367〜81。例えばアポトーシス細胞から放出されたこのようなDNAもしくはRNA、または、自己免疫患者の血清中に存在するDNAもしくはRNAを含む微生物は、自己免疫疾患に寄与する炎症に関与する可能性がある。Fatenejad,S.(1994)J Immunol 152:5523〜31;Malmegrim,K.C.等,(2002)Isr Med Assoc J 4:706〜12;Newkirk,M.M.等,(2001)Arthritis Res 3:253〜8。実際に、SLE血清から、CpGを含む配列が同定できており、このような配列は、自己免疫疾患の発症に寄与すると考えられるIFN−γ分泌によって支配される効率的な免疫応答を誘導する。Magnusson,M.等,(2001)Scand J Immunol 54:543〜50;Ronnblom,L.等,(2001)J Exp Med 194:F59〜63。加えて、抗RNA抗体に関するエピトープが同定できており、これは、G,U−リッチ配列で構成される。Tsai,D.E.等,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:8864〜8;Tsai,D.E.等,(1993)J Immunol 150:1137〜45。G,U−リッチ配列はTLR7およびTLR8の天然リガンドのようであるため、原理上は自己免疫疾患に寄与する可能性がある免疫刺激性の応答、または、自己免疫疾患の発症に介在する可能性がある。PCT/US03/10406。自己抗体の標的である血清CpG DNAまたはG,U−リッチRNAが媒介する免疫刺激の重要性を考慮して、本発明は、自己免疫疾患を有する、または、その危険性がある被検体において、CpG DNAまたはRNAが媒介する免疫促進に関連する状態を治療する方法を提供する。
【0075】
被検体は、ヒトまたは脊椎動物を意味するものとし、例えば、これらに限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウ、ニワトリ、霊長類、例えばサル、および、魚類(水産養殖種)、例えばサケが挙げられる。好ましくは、被検体は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。従って、本発明はまた、ヒト以外の被検体における癌および腫瘍、感染、ならびにアレルギー/喘息を治療するためにも用いることができる。癌は、コンパニオンアニマル(すなわち、ネコおよびイヌ)の主な死亡原因の1つである。
【0076】
本明細書で用いられるように、治療する、治療される、または、〜を治療すること、という用語は、感染症、癌、アレルギー、または、喘息のような障害に関して用いられる場合、上記病気(例えば、病原体への感染)の発症に対する被検体の耐性を高める、または、言い換えれば、被検体が、上記病気を発症させる(例えば、病原体への感染を起こす)可能性を低くするような予防的治療を意味し、加えて、被検体が病気を発症させた後に闘病するための治療(例えば、感染を減らす、または、排除する)、または、上記病気が悪化するのを防ぐための治療も意味する。
【0077】
Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、治療手順の一部として、単独で投与してもよいし、または、その他の治療剤または医薬品と共に投与してもよい。本明細書で用いられる「治療手順」は、これらに限定されないが、外科手術、放射線、治療用医薬品の投与などの手法を意味する。治療手順の一部として投与された治療用医薬品は、標的分子と共に製剤化してもよいし、または、標的分子に結合させてもよい。本明細書で用いられる「標的分子」は、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドを特定の部位に、または、細胞内に標的化すると予想されるあらゆる分子を意味し、例えば抗原である。一実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、標的分子に結合させる。その他の実施態様において、標的分子は、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドに結合させないで本免疫刺激性オリゴヌクレオチドと共に投与される。場合によっては、標的分子および本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、リポソームのような運搬手段に封入させてもよい。その他の例において、標的分子は、運搬手段の外側に結合させる。
【0078】
Py−Puオリゴヌクレオチドが抗原と共に投与される例において、被検体は、抗原に晒される可能性がある。本明細書で用いられる「〜に晒される」という用語は、被検体が抗原と接触する能動的な工程、または、インビボでの被検体の抗原への受動的な曝露のいずれかを意味する。被検体の抗原への能動的な曝露方法は当業界周知である。一般的に、抗原は、静脈内、筋肉内、経口、経皮、粘膜、鼻腔内、気管内、または、皮下投与のようなあらゆる手段で被検体に直接投与される。抗原は、全身投与してもよいし、または、局所投与してもよい。以下、抗原およびPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドを投与する方法をより詳細に説明する。被検体の体内で抗原が免疫細胞に曝露可能になると、被検体は抗原に受動的に晒される。被検体は、例えば体への外来病原体の侵入によって、または、表面上に外来抗原を発現する腫瘍細胞の発達によって、抗原に受動的に晒される可能性がある。
【0079】
本方法において被検体が抗原に受動的に晒される場合、本方法は特にPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド投与のタイミングに依存する。例えば、癌、または、感染症、または、アレルギー性もしくは喘息性の応答を発症する危険性がある被検体において、被検体は、危険が最大の時期にPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドを定期的に投与されてもよく、このような時期とは、すなわちアレルギーの季節中、または、発癌物質に晒された後である。加えて、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、旅行者が感染因子に晒される危険性がある外国の土地に旅行する前に、旅行者に投与してもよい。同様に、生物戦に晒される危険性がある兵士または民間人にPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドを投与してもよく、それによりもし被検体が抗原に晒された時に、その抗原に対する全身性または粘膜免疫応答を誘導することができる。
【0080】
抗原は、免疫応答を惹起することができる分子である。抗原としては、これらに限定されないが、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖類、多糖類結合体、多糖類およびその他の分子のペプチドおよび非ペプチドミミック、低分子物質、脂質、糖脂質、炭水化物、ウイルスおよびウイルス抽出物、および、多細胞生物、例えば寄生体、ならびに、アレルゲンが挙げられる。抗原という用語は、典型的には、宿主免疫系によって外来と認識されるあらゆるタイプの分子を含む。抗原としては、これらに限定されないが、癌抗原、微生物抗原、および、アレルゲンが挙げられる。
【0081】
本明細書で用いられる癌抗原は、腫瘍または癌細胞表面に結合するペプチドまたはタンパク質のような化合物であり、これは、MHC分子の環境で抗原提示細胞の表面で発現されると免疫応答を惹起することができる。癌抗原は、例えばCohen等,1994,Cancer Research,54:1055で説明されているように未精製の癌細胞抽出物を製造すること、抗原を部分的に精製すること、組換え技術、または、既知の抗原のデノボ合成のいずれかによって癌細胞から製造することができる。癌抗原としては、これらに限定されないが、組換えによって発現される抗原、腫瘍または癌の免疫原性の部分または腫瘍全体が挙げられる。このような抗原は、単離してもよいし、または、組換えによって、もしくはその他のあらゆる当業界既知の手段によって製造してもよい。
【0082】
本明細書で用いられる微生物抗原は、例えば、これらに限定されないが、ウイルス、細菌、寄生体および真菌類などの微生物に由来する抗原である。このような抗原としては、無傷の微生物、加えて、天然の分離菌、および、それらの断片または誘導体が挙げられ、さらに加えて天然の微生物抗原と同一であるか、または、それらに類似しており、その微生物に特異的な免疫応答を誘導する合成化合物も挙げられる。ある化合物が天然の微生物抗原に対して(体液性および/または細胞性)免疫応答を誘導する場合、その化合物は天然の微生物抗原に類似している。このような抗原は、当業界における慣例的手順で用いられ、当業者周知である。
【0083】
ウイルスは、一般的に核酸コアと外殻タンパク質コートとを含む小さい感染因子であるが、単独で生存する生物ではない。またウイルスは、タンパク質が欠失した感染性の核酸の形態をとることも可能である。ウイルスは、ウイルスを複製することができる生きた細胞がないと生存することができない。ウイルスは、エンドサイトーシス、または、DNA(ファージ)の直接的な注入のいずれかによって特定の生きた細胞に侵入し、増殖し、病気を引き起こす。続いて複製されたウイルスは、放出されて、さらなる細胞に感染することができる。ある種のウイルスは、DNA含有ウイルスであり、その他のウイルスは、RNA含有ウイルスである。DNAウイルスとしては、ポックス、ヘルペス、アデノ、パポバ、パルボ、および、ヘパドナウイルスが挙げられる。RNAウイルスとしては、ピコルナ、カリチ、アストロ、トガ、フラビ、コロナ、パラミクソ、オルソミクソ、ブンヤ、アレナ、ラブド、フィロ、ボルナ、レオ、および、レトロウイルスが挙げられる。いくつかの形態において、本発明はまた、病気の進行にプリオンが関与する病気を治療することも目的とし、このような病気としては、例えば牛海綿状脳症(すなわち、狂牛病、BSE)、または、動物におけるスクラピー感染、もしくは、ヒトにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病が挙げられる。
【0084】
ウイルスとしては、これらに限定されないが、エンテロウイルス(例えば、これらに限定されないが、ピコルナウイルス科のウイルスが挙げられ、例えばポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど)、ロタウイルス、アデノウイルス、および、肝炎ウイルス、例えばA型、B型、C型、D型およびE型肝炎A型、B型、C型、D型およびE型が挙げられる。ヒトに見出されるウイルスの具体的な例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウィルス、例えばHIV−1(また、HTLV−III、LAV、または、HTLV−III/LAV、または、HIV−IIIとも称される;および、その他の分離株、例えばHIV−LP;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウィルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸系発疹ウイルス);オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えば、ハンターンウイルス、ブンヤウイルス、フレボウイルス、および、ナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、および、ロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウィルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純疱疹ウイルス(HSV)1型および2型、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV));ポックスウイルス科(痘瘡ウィルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);イリドウイルス科(例えば、アフリカ豚コレラウイルス);および、その他のウイルス、例えば急性喉頭気管支炎ウイルス、アルファウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、トリインフルエンザ、SARsウイルス、西ナイルウイルス。
【0085】
脊椎動物において、グラム陰性およびグラム陽性細菌はいずれも感染因子である。このようなグラム陽性細菌としては、これらに限定されないが、パスツレラ属(Pasteurella)の種、ブドウ球菌属の種、および、連鎖球菌属の種が挙げられる。グラム陰性細菌としては、これらに限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属の種、および、サルモネラ属の種が挙げられる。感染性の細菌の具体的な例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、マイコバクテリウム属の種(例えば、結核菌(M.tuberculosis)、トリ結核菌(M.avium)、バテー杆菌(M.intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシイ(M.kansaii)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(M.gordonae))、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌属)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌属)、連鎖球菌属(ビリダンス群)、ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌属(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌、病原性のカンピロバクター属の種、エンテロコッカス属の種、ヘモフィルス・インフルエンゼ、炭素菌、コリネバクテリウム・ジフセリエ(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属の種、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、パラウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、動物パスツレラ症病原菌(Pasturella multocida)、バクテロイド属、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・ペルテニュ(Treponema pertenue)、レプトスピラ属、リケッチア属、および、アクチノマイセス・イスラエリイ(Actinomyces israelli)。
【0086】
菌類の例としては、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙げられる。
【0087】
その他の感染性の生物(すなわち原生生物)としては、プラスモディウム属、例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、および、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、および、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)が挙げられる。血液感染性および/または組織寄生中としては、マラリア原虫(Plasmodium spp.)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、バベシア・ディバージエンス(Babesia divergens)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、リーシュマニア属(Leishmania spp.)、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma gambiense)、および、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiense)(アフリカ睡眠症)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)(シャーガス病)、および、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)が挙げられる。
【0088】
その他の医学上関連する微生物は、文献で広範囲にわたり説明されており、例えば、C.G.A.Thomas,Medical Microbiology,Bailliere Tindall,英国1983を参照(その全内容を参照により本発明に含める)。
【0089】
アレルゲンとは、敏感な被検体においてアレルギー性または喘息性の応答を誘導する可能性がある物質(抗原)を意味する。アレルゲンの種類は膨大であり、例えば、花粉、昆虫毒、動物の鱗屑が細かくなったもの、真菌胞子、および、薬物(例えば、ペニシリン)を挙げることができる。天然、動物および植物アレルゲンの例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:以下の生物種に特異的なタンパク質:イヌ(Canis familiaris);ダニ(例えば、Dermatophagoides farinae);ネコ(Felis domesticus);ブタクサ(Ambrosia artemiisfolia;ライグラス(例えば、Lolium perenne、または、Lolium multiflorum);スギ(Cryptomeria japonica);アルテルナリア属(Alternaria alternata);アルダー;ハンノキ(Alnus gultinoasa);カバノキ属(Betula verrucosa);コナラ属(Quercus alba);オリーブ(Olea europa);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);プランタゴ(例えば、Plantago lanceolata);イラクサ(Parietaria)(例えば、Parietaria officinalis、または、Parietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えば、Blattella germanica);ミツバチ(例えば、Apis multiflorum);イトスギ(Cupressus)(例えば、Cupressus sempervirens、Cupressus arizonica、および、Cupressus macrocarpa);ビャクシン属(例えば、Juniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communis、および、Juniperus ashei);ヒノキ科クロベ属(Thuya)(例えば、Thuya orientalis);ヒノキ(例えば、Chamaecyparis obtusa);ワモンゴキブリ属(例えば、Periplaneta americana);シバムギ(Agropyron)(例えば、Agropyron repens);ライ麦(例えば、Secale cereale);コムギ属(例えば、Triticum aestivum);カモガヤ(Dactylis)(例えば、Dactylis glomerata);ウシノケグサ属(例えば、Festuca elatior);イチゴツナギ属(例えば、Poa pratensis、または、Poa compressa);カラスムギ属(例えば、Avena sativa);シラゲガヤ属(例えば、Holcus lanatus);ハルガヤ属(例えば、Anthoxanthum odoratum);リボンガヤ(Arrhenatherum)(例えば、Arrhenatherum elatius);コヌカグサ属(Agrostis)(例えば、Agrostis alba);オオアワガエリ属(Phleum)(例えば、Phleum pratense);クサヨシ属(Phalaris)(例えば、Phalaris arundinacea);スズメノヒエ属(例えば、Paspalum notatum);モロコシ属(例えば、Sorghum halepensis);および、ブロムグラス(例えば、Bromus inermis)。
【0090】
本発明のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、単独で投与してもよいし、または、免疫応答を強化するためのアジュバントのようなその他の治療剤と組み合わせて投与してもよい。本免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびその他の治療剤は、同時に投与してもよいし、または、連続的に投与してもよく、または、治療手順の一部として投与してもよい。その他の治療剤が同時に投与される場合、これらは、同じ調合物で投与してもよいし、または、別々の調合物で投与してもよいが、投与は同時である。その他の治療剤および本免疫刺激性オリゴヌクレオチドの投与が時間的に別々である場合、その他の治療剤は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと互いに連続して投与される。これらの化合物が投与される間隔の期間は、分単位でもよいし、または、それより長くてもよい。その他の治療剤としては、これらに限定されないが、アジュバント、サイトカイン、抗体、抗原、医薬品などが挙げられる。場合によっては、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドを治療剤または医薬品に結合させることが有利なことがある。このような結合は、共有結合でもよいし、または、非共有結合でもよい。共有結合とは、物質と本オリゴヌクレオチドとが、共有結合を介して結合するタイプの結合である。本オリゴヌクレオチドと抗原との間の共有結合は、このようにして連結された本免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび抗原が、それぞれ個々の構成要素の測定可能な機能的な活性を保持しさえすれば、あらゆるタイプの適切な共有結合が可能である。共有結合は、直接的でもよいし、または、間接的でもよい(例えばリンカー成分を介して)。共有結合で結合させた免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよび抗原は、細胞内で一方から他方が放出されるようにプロセシングを受けてもよい。この方法において、いずれかの構成要素の細胞への送達は、別々の調製物、または、別々の構成要素として投与される場合のその送達と比較して強化される可能性がある。
【0091】
非共有結合は、共有結合が存在しない結合であり、例えば水素結合を介した会合、または、微粒子のような運搬手段の内部での会合である。
本発明のオリゴヌクレオチドは、抗菌剤と共に被検体に投与してもよい。本明細書で用いられる抗菌剤は、感染性微生物を死滅または阻害することができる天然に存在する、または、合成化合物を意味する。本発明に従って有用な抗菌剤のタイプは、被検体に感染した、または、感染する危険性がある微生物のタイプに依存すると予想される。抗菌剤としては、これらに限定されないが、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および、抗寄生虫剤が挙げられる。「抗感染薬物質」、「抗菌剤」、「抗ウイルス剤」、「抗真菌剤」、「抗寄生虫剤」および「駆虫薬」のような成句は、当業者にとって十分に確立された意味を有し、標準的な医療の教本で定義されている。簡単に言えば、抗菌剤は細菌を死滅させるか、または、阻害するものであり、例えば、抗生物質、加えて、類似の機能を有するその他の合成または天然の化合物が挙げられる。抗生物質は、微生物のような細胞で二次代謝産物として生産される低分子量の分子である。一般的に、抗生物質は、微生物に特異的であるが、宿主細胞には存在しない1種またはそれより多くの機能または構造を妨害する。抗ウイルス剤は、自然源から単離してもよいし、または、合成してもよく、これらは、ウイルスを死滅または阻害させるのに有用である。抗真菌剤は、体表の真菌感染、加えて、日和見性および一次的な全身性真菌感染を治療するのに用いられる。抗寄生虫剤は、寄生体を死滅させるか、または、阻害する。
【0092】
ヒトへの投与に有用な抗寄生虫剤(また駆虫薬とも称される)の例としては、これらに限定されないが、アルベンダゾール、アンホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、塩酸クロロキン、リン酸クロロキン、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、ジエチルカルバマジン、フランカルボン酸ジロキサニド、エフロールニチン、フラゾリダオン(furazolidaone)、糖質コルチコイド、ハロファントリン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メフロキン、メグルミンアンチモニエート、メラルソプロール、メトリホネート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルチモックス、オキサムニキン、パロモマイシン、ペンタミジンイセチオネート、ピペラジン、プラジカンテル、リン酸プリマキン、プログアニル、パモ酸ピランテル、ピリメタミン(pyrimethanmine)−スルホンアミド類、ピリメタミン−スルファドキシン、塩酸キナクリン、硫酸キニン、グルコン酸キニジン、スピラマイシン、スチボグルコン酸ナトリウム(グルコン酸アンチモンナトリウム)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、および、トリパルサミドが挙げられ、これらのうちいくつかは、単独で、または、その他の物質と組み合わせて用いられる。
【0093】
抗菌剤は、細菌の増殖または機能を殺す、または、それらを阻害するものである。抗菌剤の大分類は、抗生物質である。多様な細菌を死滅させる、または、阻害するのに有効な抗生物質は、広域抗生物質と称される。その他のタイプの抗生物質は、主としてグラム陽性またはグラム陰性細菌のクラスに対して有効である。これらのタイプの抗生物質は、狭域抗生物質と称される。一種の生物または病気に対して有効であり、その他のタイプの細菌に対しては有効ではないその他の抗生物質は、限定域(limited−spectrum)抗生物質と称される。抗菌剤は、それらの主要な作用機序に基づいて分類される場合がある。一般的に、抗菌剤は、細胞壁合成阻害剤、細胞膜阻害剤、タンパク質合成阻害剤、核酸合成または機能の阻害剤、および、競合的阻害剤である。
【0094】
抗ウイルス剤は、ウイルスによる細胞の感染、または、細胞内でのウイルス複製を防ぐ化合物である。抗ウイルス薬物は、抗菌性薬物よりもずっと少ないが、これはなぜなら、ウイルス複製のプロセスは、宿主細胞内でのDNA複製と密接に関連するため、非特異的な抗ウイルス剤は宿主にとって毒性であることが多いためである。ウイルス感染のプロセスには、抗ウイルス剤によってブロックまたは阻害することができる段階がいくつかある。これらの段階としては、ウイルスの宿主細胞への付着(免疫グロブリン、または、結合ペプチド)、ウイルスの脱殻(例えば、アマンタジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えば、インターフェロン)、ウイルスRNAまたはDNAの複製(例えば、ヌクレオチド類似体)、新しいウイルスタンパク質の成熟(例えば、プロテアーゼ阻害剤)、および、ウイルスの出芽および放出が挙げられる。
【0095】
ヌクレオチド類似体とは、ヌクレオチドに類似しているが、不完全な、または、一般的ではないデオキシリボースまたはリボース基を有する合成化合物である。ヌクレオチド類似体が細胞内に入ると、これらはリン酸化されて三リン酸の形態になるため、ウイルスDNAまたはRNAへの取り込みに関して正常なヌクレオチドと競合する。ヌクレオチド類似体の三リン酸の形態が成長中の核酸鎖に組み込まれると、それらはウイルスポリメラーゼと不可逆的な結合を引き起こすため、鎖がそこで終結する。ヌクレオチド類似体としては、これらに限定されないが、アシクロビル(単純疱疹ウイルス、および、水痘−帯状疱疹ウイルスの治療に用いられる)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの治療に有用)、イドクスウリジン、リバビリン(呼吸器系合胞体ウイルスの治療に有用)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモド、および、レシミキモド(resimiquimod)が挙げられる。
【0096】
インターフェロンは、ウイルスに感染した細胞、加えて免疫細胞によって分泌されるサイトカインである。インターフェロンは、感染した細胞に隣接する細胞上の特異的な受容体に結合することによって作用し、細胞に、ウイルスによる感染からその細胞が保護されるような変化をもたらす。またαおよびβ−インターフェロンは、感染した細胞の表面でクラスIおよびクラスII MHC分子の発現も誘導し、それにより、宿主の免疫細胞に認識させるための抗原提示の増加が起こる。αおよびβ−インターフェロンは組換えの形態として入手することができ、慢性B型およびC型肝炎感染の治療に用いられてきた。インターフェロンは、抗ウイルス治療に有効な投与量で、発熱、倦怠感および体重減少のような重度の副作用が生じる。
【0097】
本発明において有用な抗ウイルス剤としては、これらに限定されないが、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオチド類似体、および、プロテアーゼ阻害剤が挙げられる。抗ウイルス剤の具体的な例としては、これらに限定されないが、エースマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス(Alvircept Sudotox);塩酸アマンタジン;アラノチン;アリルドン;メシル酸アテビルジン;アブリジン;シドフォビル;シパムフィリン;塩酸シタラビン;メシル酸デラビルジン;デシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファミシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアルリジン;フォサリレート(Fosarilate);ホスカルネットナトリウム;ホスフォネットナトリウム(Fosfonet Sodium);ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;メシル酸サキナビル;塩酸ソマンタジン;ソリブジン;スタトロン(Statolon);スタブジン;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;リン酸ビダラビン;ビダラビンリン酸ナトリウム;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;および、ジンビロキシムが挙げられる。
【0098】
抗真菌剤は、感染性の真菌類の治療および予防に有用である。抗真菌剤は、それらの作用機序によって分類されることがある。いくつかの抗真菌剤は、グルコースシンターゼを阻害することによって細胞壁阻害剤として機能する。このようなものとしては、これらに限定されないが、バシウンギン(basiungin)/ECBが挙げられる。その他の抗真菌剤は、膜の完全性を不安定にすることによって作用する。このようなものとしては、これらに限定されないが、イミダゾール、例えばクロトリマゾール、セルタコンゾール(sertaconzole)、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、および、ボリコナゾール(voriconacole)が挙げられ、加えて、FK463、アンホテリシンB、BAY38−9502、MK991、プラジミシン、UK292、ブテナフィン、および、テルビナフィンも挙げられる。その他の抗真菌剤は、キチンを分解することによって(例えば、キチナーゼ)、または、免疫抑制(501クリーム)によって機能する。
【0099】
Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、喘息治療薬と共に投与してもよい。喘息治療薬としては、これらに限定されないが、PDE−4阻害剤、気管支拡張剤/ベータ−2アゴニスト、K+チャネル開口薬、VLA−4アンタゴニスト、ニューロキンアンタゴニスト、トロンボキサンA2(TXA2)合成阻害剤、キサンチン、アラキドン酸アンタゴニスト、5リポキシゲナーゼ阻害剤、TXA2受容体アンタゴニスト、TXA2アンタゴニスト、5−リポキシ活性化タンパク質の阻害剤、および、プロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0100】
気管支拡張剤/βアゴニストは、気管支拡張または平滑筋の弛緩を引き起こす化合物クラスである。気管支拡張剤/βアゴニストとしては、これらに限定されないが、サルメテロール、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、D2522/ホルモテロール、フェノテロール、ビトルテロール、ピルブテロール(pirbuerol)メチルキサンチン、および、オルシプリナリンが挙げられる。持続型βアゴニスト、および、気管支拡張剤は、抗炎症性の治療に加えて、長期間の症状の予防に用いられる化合物である。持続型βアゴニストとしては、これらに限定されないが、サルメテロール、および、アルブテロールが挙げられる。これらの化合物は、コルチコステロイドと併用されることが一般的であり、炎症の治療薬と併用することなく用いられることは通常ない。これらは、頻脈、骨格筋の震え、低カリウム血症、および、過量でのQTc間隔の延長のような副作用を伴うことがあった。
【0101】
例えばテオフィリンなどのメチルキサンチンは、症状の長期間のコントロールおよび予防に用いられてきた。これらの化合物は、ホスホジエステラーゼ阻害によって生じる気管支拡張を引き起こし、さらにアデノシン拮抗作用によって生じる可能性もある。これらのタイプの化合物が有する具体的な問題は、用量依存性の急性毒性である。結果として、代謝クリアランスの個人差から生じる毒性、および、制限された治療域を考慮するために、血清濃度を定期的にモニターしなければならない。副作用としては、頻脈、頻拍性不整脈、吐き気、および、嘔吐、中枢神経系の刺激、頭痛、発作、吐血、高血糖症、および、低カリウム血症が挙げられる。短時間作用型のβアゴニストとしては、これらに限定されないが、アルブテロール、ビトルテロール、ピルブテロール、および、テルブタリンが挙げられる。短時間作用型のβアゴニスト投与に伴う有害作用のいくつかとしては、頻脈、骨格筋の震え、低カリウム血症、乳酸の増加、頭痛、および、高血糖症が挙げられる。
【0102】
クロモリンナトリウムおよびネドクロミルは、主として、運動またはアレルゲンに起因するアレルギーの症状から生じる喘息の症状を予防するために長期にわたりコントロールするタイプの薬物療法として用いられる。これらの化合物は、塩素チャネルの機能を妨害することによってアレルゲンに対する初期および後期の反応をブロックすると考えられる。さらにこれらは、肥満細胞膜も安定化させ、媒介物質の活性化、および、それらのイノシネオフィル(inosineophil)および上皮細胞からの放出を阻害する。最大の効果を達成するには、一般的に4〜6週間の投与が必要である。
【0103】
抗コリン作用薬は、一般的に、急性気管支痙攣の軽減に用いられる。これらの化合物は、ムスカリン様コリン作用性受容体の競合阻害によって機能すると考えられる。抗コリン作用薬としては、これらに限定されないが、臭化イプラトロピウムが挙げられる。これらの化合物は、コリン作用が介在する気管支痙攣のみに拮抗し、抗原に対するいかなる反応も改変することはない。副作用としては、口の渇き、および、呼吸分泌物、人によっては喘鳴の増加が挙げられ、さらに、目に噴霧された場合は視力障害もある。
【0104】
また本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、抗アレルギー治療剤と共に投与してもよい。従来のアレルギーの治療または予防方法には、アレルギー治療薬の使用または脱感作療法が含まれていた。アレルギーを治療または予防するための開発中の療法のいくつかとしては、抗IgE抗体の中和の使用がある。アレルギー反応の化学媒介物質の作用をブロックする抗ヒスタミン剤およびその他の薬物は、アレルギーの症状の辛さを調節するのには役立つが、アレルギー反応を予防せず、その後に起こるアレルギー性応答に対する作用もない。脱感作療法は、アレルゲンに対するIgG型の応答を誘導するために、一般的には皮下注射で少ない用量のアレルゲンを投与することによって行われる。IgG抗体の存在は、IgE抗体の誘導により生じた媒介物質の生産を阻害するのに役立つと考えられている。重篤な反応の誘導を回避するために、最初のうちは被検体は極めて低用量のアレルゲンで治療され、その後用量を徐々に増加させる。このタイプの治療は、被検体は、実際にアレルギー性応答を引き起こす化合物投与され、重篤なアレルギー反応が生じる可能性があるため危険である。
【0105】
アレルギー治療薬としては、これらに限定されないが、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、および、プロスタグランジン誘導物質が挙げられる。抗ヒスタミン剤は、肥満細胞または好塩基球によって放出されたヒスタミンを中和するように作用する化合物である。これらの化合物は当業界周知であり、一般的にアレルギー治療に頻繁に使用されている。抗ヒスタミン剤としては、これらに限定されないが、アクリバスチン、アステミゾール、アゼタジン(azatadine)、アゼラスチン、ベタタスチン(betatastine)、ブロムフェニルアミン、ブクリジン(buclizine)、セチリジン、セチリジン類似体、クロルフェニラミン、クレマスチン、CS560、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デキスクロルフェニルアミン、エバスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、HSR609、ヒドロキシジン、レボカバスチン、ロラチジン(loratidine)、メトスコポラミン、ミゾラスチン、ノラステミゾール(norastemizole)、フェニンダミン、プロメタジン、ピリラミン、テルフェナジン、および、トラニラストが挙げられる。
【0106】
コルチコステロイドとしては、これらに限定されないが、メチルプレドニゾロン、ブレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、および、トリアムシノロンが挙げられる。デキサメタゾンは抗炎症性作用を有するコルチコステロイドであるが、デキサメタゾンは極めて吸収されやすく、有効量で長期にわたる抑制性の副作用を示すため、アレルギーまたは喘息の治療に吸入される形態でデキサメタゾンが定期的に用いられることはない。しかしながら、デキサメタゾンは、本発明の組成物と組み合わせて投与すれば、デキサメタゾンを低用量で投与することができ、従って副作用を減少させることができるため、本発明に従ってアレルギーまたは喘息を治療するのに用いることができる。コルチコステロイド使用に伴う副作用のいくつかとしては、咳、発声困難、口腔カンジダ症(カンジダ症)、および、より高用量では、全身性の作用、例えば副腎抑制、グルコース不耐性、骨粗しょう症、無菌性骨壊死、白内障の形成、成長抑制、高血圧、筋衰弱、皮膚の薄化、および、易傷性が挙げられる。Barnes & Peterson(1993)Am Rev Respir Dis 148:S1−S26;および、Kamada AK等,(1996)Am J Respir Crit Care Med 153:1739〜48。
【0107】
また本発明の免疫刺激性組成物は、抗癌治療と共に投与してもよい。抗癌治療としては、癌治療薬、放射線、および、外科手術が挙げられる。本明細書で用いられる「癌治療薬」は、被検体に癌治療の目的で投与される物質を意味する。本明細書で用いられる「癌を治療すること」は、癌の発症を予防すること、癌の症状を低減すること、および/または、すでに発症した癌の成長を阻害することを含む。その他の形態において、癌治療薬は、癌を発症する危険性がある被検体に、癌を発症させる危険を減少させる目的で投与される。本明細書において様々なタイプの癌治療のための医薬品を説明する。本明細書の目的において、癌治療薬は、化学療法剤、免疫療法剤、癌ワクチン、ホルモン療法、および、生体応答調整物質に分類される。
【0108】
加えて、本発明の方法の目的は、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドと共に1種より多くの癌治療薬を使用することを包含することである。一例として、必要に応じて、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、化学療法剤と免疫治療剤との両方と共に投与してもよい。あるいは、癌治療は、癌を有する被検体、または、癌を発症する危険性がある被検体を治療するために、免疫治療剤および癌ワクチン、または、化学療法剤および癌ワクチン、または、化学療法剤、免疫治療剤および癌ワクチン全てを1個の被検体に投与することを包含していてもよい。
【0109】
化学療法剤は、メトトレキセート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、糖を含まないクロロエチルニトロソウレア、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン(fragyline)、メグルミン(meglamine)GLA、バルルビシン、カルムスタイン(carmustaine)、および、ポリフェルポサン(poliferposan)、MMI270、BAY12−9566、RASファメシルトランスフェラーゼ阻害剤(RAS famesyl transferase inhibitor)、ファメシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメテキソール(Lometexol)、グラモレック(Glamolec)、CI−994、TNP−470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトロキサントロン(Mitroxantrone)メタレット(Metaret)/スラミン、バチマスタット(Batimastat)、E7070、BCH−4556、CS−682、9−AC、AG3340、AG3433、Incel/VX−710、VX−853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マーミスタット(Marmistat)、BB2516/マーミスタット、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナール(Lemonal)DP2202、FK317、ピシバニール/OK−432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロマイド、エバセット(Evacet)/リポソーマルドキソルビシン、ユータキサン(Yewtaxan)/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード(Xeload)/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス(Cyclopax)/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU−077/シスプラチン、HMR1275/フラボピリドール(flavopiridol)、CP−358(774)/EGFR、CP−609(754)/RAS腫瘍遺伝子阻害剤、BMS−182751/経口白金、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミゾール(Ergamisol)/レバミソール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプト/レバミソール、カンプトサール(Camptosar)/イリノテカン、ツモデックス(Tumodex)/ラリトレキセド(Ralitrexed)、ロイスタチン/クラドリビン、パキセクス(Paxex)/パクリタキセル、ドキシル/リポソーマルドキソルビシン、カエリクス(Caelyx)/リポソーマルドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルマルビシン(Pharmarubicin)/エピルビシン、デポサイト(DepoCyt)、ZD1839、LU79553/ビス−ナフタルイミド、LU103793/ドラスタイン(Dolastain)、カエチクス(Caetyx)/リポソーマルドキソルビシン、ジェムザール/ゲムシタビン、ZD0473/アノーメッド(Anormed)、YM116、ヨウ素種(Iodine seed)、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド(Dexifosamide)、アイフェス(Ifes)/メスネックス(Mesnex)/イフォサミド(Ifosamide)、ブモン(Vumon)/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プランチノール(Plantinol)/シスプラチン、ベペシド(Vepeside)/エトポシド、ZD9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサン類似体、ニトロソウレア類、アルキル化剤、例えばメルフェラン(melphelan)、および、シクロホスファミド、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロロムブシル(Chlorombucil)、塩酸シタラビン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクシウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イフォスファミド、インターフェロンアルファ−2a、アルファ−2b、酢酸ロイプロリド(LHRH−放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、塩酸メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ(Mesna)、ミトタン(o.p’−DDD)、塩酸ミトキサントロン、オクトレオチド、プリカマイシン、塩酸プロカルバジン、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(Mitoguazone)(メチル−GAG;メチルグリオキサールビス−グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)、および、硫酸ビンデシンからなる群より選択してもよい(ただしこれらに限定されない)。
【0110】
免疫療法剤は、3622W94、4B5、ANA Ab、抗FLK−2、抗VEGF、ATRAGEN、アバスチン(ベバシズマブ;ジェネンテック(Genentech))、BABS、BEC2、ベクサー(BEXXAR)(トシツモマブ;グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline))、C225、キャンパス(CAMPATH)(アレムトツマブ(alemtuzumab);ジェンザイム社(Genzyme Corp.)、シーサイド(CEACIDE)、CMA676、EMD−72000、セツキシマブ(セツキシマブ;イムクローン・システムズ社(ImClone Systems,Inc.))、グリオマブ(Gliomab)−H、GNI−250、ハーセプチン(トラスツズマブ;ジェネンテック)、IDEC−Y2B8、ImmuRAIT−CEA、ior c5、ior egf.r3、ior t6、LDP−03、リンフォサイド(LymphoCide)、MDX−11、MDX−22、MDX−210、MDX−220、MDX−260、MDX−447、メリミューン(MELIMMUNE)−1、メリミューン−2、モノファーム(Monopharm)−C、ノボMAb(NovoMAb)−G2、オンコリム(Oncolym)、OV103、オバレックス(OvaRex)、パノレックス(Panorex)、プレターゲット(Pretarget)、クアドラメット、リブタキシン(Ributaxin)、リツキサン(リツキシマブ;ジェネンテック(Genentech))、SMART1D10Ab、SMART ABL364Ab、SMART M195、TNT、および、ZENAPAX(ダクリズマブ;ロシュ(Roche))からなる群より選択してもよい(ただしこれらに限定されない)。
【0111】
癌ワクチンは、EGF、抗イディオタイプ癌ワクチン、Gp75抗原、GMK黒色腫ワクチン、MGVガングリオシド結合ワクチン、Her2/neu、オバレックス(OvaRex)、M−Vax、O−Vax、L−Vax、STn−KHLセラトープ(Theratope)、BLP25(MUC−1)、リポソーマルイディオタイプワクチン(liposomal idiotypic vaccine)、メラシン(Melacine)、ペプチド抗原ワクチン、毒素/抗原ワクチン、MVAベースのワクチン、PACIS、BCGワクチン、TA−HPV、TA−CIN、DISC−ウイルス、および、イムシスト(ImmuCyst)/テラシス(TheraCys)からなる群より選択してもよい(ただしこれらに限定されない)。
【0112】
Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドをモノクローナル抗体のような免疫治療剤と共に使用することは、ADCCの有意な強化(上記で考察された)、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、および、IFNαレベルの増加などの多数のメカニズムによって生存期間を延長させることができる。本核酸は、モノクローナル抗体と組み合わせて用いられる場合、生物学的な結果を達成するのに必要な抗体の用量を少なくするのに役立つ。
【0113】
本明細書で用いられる癌抗原および腫瘍抗原という用語は同じ意味で用いられており、癌細胞によって差異的に発現される抗原を意味し、これらは、癌細胞を標的とするために活用することができる。癌抗原とは、腫瘍特異的と思われる免疫応答を刺激することが可能な抗原である。これらの抗原の一部は、必ずしも発現されないが、正常な細胞によってコードされている。これらの抗原は、正常な細胞では通常はサイレントである(すなわち発現されない)抗原、所定の分化段階でのみ発現される抗原、および、胚性および胎児性抗原のような一時的に発現される抗原のように特徴付けることができる。その他の癌抗原は、突然変異した細胞性遺伝子、例えば腫瘍遺伝子(例えば、活性化されたras腫瘍遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、突然変異p53)、内部の欠失または染色体転座によって生じた融合タンパク質によってコードされている。さらにその他の癌抗原は、例えばRNAおよびDNA腫瘍ウイルスが有するウイルス遺伝子によってコードされたものがある。
【0114】
また本発明の組成物は、非核酸アジュバントと共に投与してもよい。非核酸アジュバントとは、本明細書において説明されるPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド以外の、体液性および/または細胞性免疫応答を刺激することができるあらゆる分子または化合物である。非核酸アジュバントとしては、例えば、持続作用をもたらすアジュバント、免疫を刺激するアジュバント、および、持続作用をもたらし免疫系を刺激するアジュバントが挙げられる。
【0115】
またPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、粘膜アジュバントとしても有用である。これまでに、全身性および粘膜免疫はいずれも、Py−Pu核酸の粘膜送達により誘導されることが発見されている。従って、本オリゴヌクレオチドは、その他の粘膜アジュバントと組み合わせて投与してもよい。
【0116】
また免疫応答は、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドと共に、サイトカインの共投与または共直線性の発現(Bueler & Mulligan,1996;Chow等,1997;Geissler等,1997;Iwasaki等,1997;Kim等,1997)、または、B−7共刺激分子(Iwasaki等,1997;Tsuji等,1997)によって誘導または増大させることができる。サイトカインという用語は、ナノ〜ピコモル濃度で体液性の調節因子として作用し、正常な状態または病的な状態のいずれにおいても個体の細胞および組織の機能的な活性を調節する可溶性タンパク質およびペプチドの多様な群の一般名として用いられる。このようなタンパク質はまた、細胞間の相互作用にも直接介在しており、細胞外の環境で起こるプロセスを調節する。サイトカインの例としては、これらに限定されないが、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−γ(γ−IFN)、IFN−α、腫瘍壊死因子(TNF)、TGF−β、FLT−3リガンド、および、CD40リガンドが挙げられる。サイトカインは、T細胞応答の指示において役割を果たす。ヘルパー(CD4+)T細胞は、その他のT細胞などのその他の免疫系細胞に作用する可溶性因子を生産することによって哺乳動物の免疫応答を調整する。最も成熟したCD4+Tヘルパー細胞は、2種のサイトカインプロファイル:Th1またはTh2の一方を発現する。いくつかの実施態様において、サイトカインは、Th1サイトカインであることが好ましい。
【0117】
また本オリゴヌクレオチドは、Th2免疫応答からTh1免疫応答に免疫応答を再転換させるのにも有用である。それにより、比較的バランスの取れたTh1/Th2環境の生成が起こる。Th2からTh1免疫応答への免疫応答の再転換は、本核酸に応答して生産されたサイトカインのレベルを測定することによって(例えば、IL−12、IFN−αおよびGM−CSFなどのTh1サイトカインを生産する単球細胞およびその他の細胞を誘導することによって)評価することができる。Th2からTh1応答への免疫応答の再転換または再平衡は、喘息の治療または予防に特に有用である。例えば、喘息の治療に有効な量は、喘息に関連するTh2タイプの免疫応答をTh1タイプの応答、または、バランスの取れたTh1/Th2環境に再転換するのに有用な量であってもよい。Th2サイトカイン、特にIL−4およびIL−5は、喘息の被検体の気道において上昇する。本発明のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、免疫系の再平衡を促進するTh1サイトカインの増加を引き起こすため、主としてTh2免疫応答に付随する有害作用を予防したり、または、を減少させたりすることができる。
【0118】
また本発明のオリゴヌクレオチドは、気道リモデリングを治療するのにも有用な可能性がある。気道リモデリングは、気道における平滑筋細胞増殖および/または粘膜下の肥厚によって生じ、最終的には気道狭窄を引き起こし、空気流が制限される。本発明のオリゴヌクレオチドは、さらなるリモデリングを予防することが可能であり、場合によってはリモデリングプロセスによって生じる組織形成をさらに減少させることもあり得る。
【0119】
また本オリゴヌクレオチドは、樹状細胞の生存、分化、活性化および成熟を改善することにも有用である。Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、細胞樹状細胞の生存、分化、活性化および成熟を促進する特有の能力を有する。
【0120】
Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、被検体に直接投与してもよいし、または、は、核酸を送達する複合体と共に投与してもよい。核酸を送達する複合体は、標的化させる手段(例えば、より高い親和性の標的細胞への結合をもたらす分子)に結合した(例えば、それにイオン結合または共有結合した;または、その内部にカプセル封入された)核酸分子を意味するものとする。核酸を送達する複合体の例としては、ステロール(例えば、コレステロール)、脂質(例えば、カチオン脂質、ビロゾーム、または、リポソーム)、または、標的細胞に特異的な結合剤(例えば、標的細胞に特異的な受容体によって認識されるリガンド)と結合した核酸が挙げられる。好ましい複合体は、インビボにおいて、標的細胞による内在化の前に有意な解離を防ぐのに十分に高い安定性を有するものであり得る。しかしながら、このような複合体は、本オリゴヌクレオチドが機能的な形態で放出されるように細胞内で適切な条件下で切断することができる。
【0121】
抗原およびオリゴヌクレオチドを表面に運搬するための運搬手段または送達装置が説明されている。Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド、および/または、抗原、および/または、その他の治療剤は、単独で投与してもよいし(例えば、塩類溶液または緩衝液中で)、または、当業界既知のあらゆる運搬手段を用いて投与してもよい。一形態において、本発明は、運搬手段と共に、および、任意に製薬上許容できるキャリアーと共に、前述した本発明の形態のいずれかに記載の組成物を含む医薬組成物を提供し、ここでこのような運搬手段は、カチオン脂質、リポソーム、生細菌のベクター(例えば、サルモネラ属、大腸菌(Escherichia coli))、カルメット−ゲラン杆菌(Bacillus calmatte−guerin)、赤痢菌属(Shigella)、乳酸桿菌属(Lactobacillus))、生ウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、単純ヘルペス)、渦巻型、ビロゾーム、免疫刺激複合体(ISCOM)、微粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、単層の小胞(LUV)、多層の小胞、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、エマルソーム(emulsome)、ポリカチオン性ペプチド、マイクロスフェア、核酸ワクチン、ポリマー、ポリマーリング(polymer ring)、プロテオソーム、フッ化ナトリウム、または、トランスジェニック植物から選択される。一実施態様において、本発明のこの形態に従って、本医薬組成物は、抗原を含む。その他の実施態様において、本発明のこの形態に従って、本医薬組成物は、抗感染、癌、喘息、アレルギーまたは炎症性の医薬品、またはその他の医薬品を含む。
【0122】
一実施態様において、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、カチオン脂質と共に投与され、このようなカチオン脂質は、DOTAP(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル硫酸塩)である。DOTAPの代わりに、または、それに加えて、エンドソーム区画へ輸送する物質などの類似の特性を有するその他の物質が用いることができる。その他の脂質調合物としては、例えば、EFFECTENETM(特殊なDNA濃縮エンハンサーを有する非リポソーム性の脂質)、および、SUPERFECTTM(新規の活性なデンドリマー技術)が挙げられる。リポソームは、ギブコ・BRL(Gibco BRL)から例えばLIPOFECTINTM、および、LIPOFECTACETMとして市販されており、これらは、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)−プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)、および、ジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物(DDAB)のようなカチオン脂質の形態から形成される。リポソームの製造方法は当業界周知であり、多くの出版物で説明されている。またリポソームは、Gregoriadis G(1985)Trends Biotechnol 3:235〜241でも総論されている。
【0123】
リポソームは、特定のリガンド(例えばモノクローナル抗体、糖、グリコリピド、または、タンパク質)にリポソームをカップリングさせることによって、特定の組織を標的とすることが可能である。リポソームが免疫細胞を標的とするのに有用であり得るリガンドとしては、これらに限定されないが、免疫細胞に特異的な受容体と相互作用する無傷の分子、または、分子のフラグメント、ならびに、免疫細胞の細胞表面マーカーと相互作用する抗体のような分子が挙げられる。このようなリガンドは、当業者周知の結合分析によって容易に同定することができる。さらに他の実施態様において、リポソームを以前に考察された免疫治療のための抗体の1種にカップリングすることによって、リポソームは癌を標的とすることができる。加えて、ベクターと、ベクターを宿主細胞の細胞核に向かわせると予想される核を標的とするペプチドとをカップリングさせてもよい。
【0124】
一実施態様において、このような媒体は、哺乳動物であるレシピエントへの埋め込みまたは投与に適している生体適合性の微粒子またはインプラントである。この方法に従って有用な生浸食性の(bioerodible)インプラントの典型例は、「Polymeric Gene Delivery System」という名称の公開された国際出願WO95/24929で説明されている。WO95/24929は、適切なプロモーターの制御下に外因性遺伝子を包含させるための、生体適合性の、好ましくは生分解性高分子マトリックスを説明している。このような高分子マトリックスを用いて、被検体内での治療剤の持続放出を達成することができる。
【0125】
好ましくは、高分子マトリックスは、マイクロスフェア(ここで核酸および/またはその他の治療剤は、固体の高分子マトリックス内全体に分散される)、または、マイクロカプセル(ここで核酸および/またはその他の治療剤は、高分子シェルのコア内に保存される)のような微粒子の形態である。治療剤を包含させるためのその他の高分子マトリックスの形態としては、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント、および、ステントが挙げられる。高分子マトリックス装置のサイズおよび組成は、マトリックスが導入される組織中で好都合な解離動態が生じるように選択される。高分子マトリックスのサイズはさらに、用いられる送達方法に従って選択され、このような送達方法は、典型的には、組織への注射、または、鼻および/または肺の領域へのエアロゾルによる懸濁液の投与である。好ましくは、エアロゾル経路が用いられる場合、高分子マトリックス、ならびに核酸および/またはその他の治療剤は、界面活性剤である媒体に包含される。高分子マトリックスの組成を、好都合な分解速度を有し、さらに、生体接着性の材料から形成されるように選択することによって、マトリックスが傷害を受けた鼻および/または肺の表面に投与される場合に移動の有効性が高くすることができる。またマトリックスの組成は、崩壊するのではなく、長期間にわたり拡散によって放出されるように選択してもよい。いくつかの好ましい実施態様において、本核酸は、インプラントによって被検体に投与され、一方その他の治療剤は短時間で投与される。経口送達または粘膜への送達のような送達に適した生体適合性のマイクロスフェアが、Chickering等,(1996)Biotech Bioeng 52:96〜101、および、Mathiowitz,E.等,(1997)Nature 386:410〜414、および、PCT特許出願WO97/03702で開示されている。
【0126】
非生分解性および生分解性高分子マトリックスのどちらを用いても、本核酸および/またはその他の治療剤を被検体に送達することができる。好ましくは、生分解性のマトリックスである。このような高分子は、天然高分子でもよいし、または、合成高分子でもよい。このような高分子は、望ましい放出がなされる期間に基づいて選択され、一般的に数時間から数年の規模であり、または、それより長くてもよい。典型的には、数時間から3〜12ヶ月の範囲の期間にわたる放出が、本核酸物質にとって最も望ましい。このような高分子は、任意に、水中でその重量の約90%まで吸収することができるヒドロゲルの形態でもよいし、さらに、任意に、多価イオン、またはその他のポリマーで架橋されていてもよい。
【0127】
特に興味深い生体接着性ポリマーとしては、H.S.Sawhney,C.P.PathakおよびJ.A.Hubell in Macromolecules,(1993)26:581〜587(その教示は、本明細書に包含される)で説明されている生浸食性のヒドロゲルが挙げられる。このようなものとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、および、ポリ(オクタデシルアクリラート)が挙げられる。
【0128】
有効量のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドという用語は、望ましい生物学的な作用をもたらすのに必要な、または、十分な量を意味する。例えば、粘膜免疫性が誘導されるように抗原と共に投与されるPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドの有効量は、抗原に晒されたら抗原に応答してIgAの発生を引き起こすのに必要な量であるが、一方で、全身性の免疫を誘導するのに必要な量は、抗原に晒されたら抗原に応答してIgGの発生を引き起こすのに必要な量である。本明細書で示された教示と合わせて、特定の被検体を治療するために、様々な活性な化合物から選択すること、および、効力、相対的生物学的利用率、患者の体重、有害な副作用の重症度、および、好ましい投与様式のような要因を検討することによって、実質的な毒性を引き起こさず、さらに極めて有効な予防または治療的処置の処方計画を計画することができる。あらゆる特定の適用に対する有効量は、治療される病気または状態、投与される具体的なPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド、被検体の大きさ、または、病気または状態の重症度のような要因に応じて様々であってよい。当業者であれば、特定のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド、および/または、抗原、および/またはその他の治療剤の有効量を、余計な実験を行うことなく経験的に決定することができる。
【0129】
粘膜または局所送達のための本明細書において説明される化合物の被検体への用量は、典型的には、1回の投与あたり約0.1μg〜10mgの範囲であり、この用量は、用途に応じて、毎日、毎週または毎月投与してもよいし、および、それ以外のあらゆる時間間隔で投与してもよい。より典型的には、粘膜または局所への用量は、1回の投与あたり約10μg〜5mg、最も典型的には約100μg〜1mgの範囲であり、数日または数週間の間隔をあけて2〜4回で投与される。より典型的には、免疫刺激剤の用量は、1回の投与あたり1μg〜10mg、最も典型的には10μg〜1mgの範囲であり、毎日または毎週投与される。抗原特異的な免疫応答を誘導するためにの、非経口送達の場合の本明細書において説明される化合物の被検体への用量(ここで、本化合物は抗原と共に送達されるが、その他の治療剤と共には送達されない)は、典型的には、ワクチンアジュバントまたは免疫刺激剤を適用する場合の有効な粘膜への用量よりも5〜10,000倍多く、より典型的には10〜1,000倍多く、最も典型的には20〜100倍多い。先天性免疫応答を誘導するために、または、ADCCを増加させるために、または、抗原特異的な免疫応答を誘導するために、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、その他の治療剤と組み合わせて、または、特殊化した運搬手段で投与される場合、非経口送達の場合の本明細書において説明される化合物の用量は、典型的には、1回の投与あたり約0.1μg〜10mgの範囲であり、この用量は、用途に応じて、毎日、毎週または毎月投与してもよいし、それ以外のあらゆる時間間隔で投与してもよい。より典型的には、これらの目的のための非経口用量は、1回の投与あたり約10μg〜5mg、最も典型的には約100μg〜1mgの範囲であり、数日または数週間の間隔をあけて2〜4回で投与される。しかしながら、いくつかの実施態様において、これらの目的のための非経口用量は、上述の典型的な用量よりもそれぞれ5〜10,000倍多い用量で用いてもよい。
【0130】
本明細書において説明されるあらゆる化合物に関して、その治療有効量をまずは動物モデルから決定する場合がある。また治療上有効な用量は、ヒトで試験された(ヒトでの臨床試験が進行中である)Py−Puオリゴヌクレオチド、および、類似の薬理学的な活性を示すことがわかっている化合物、例えばその他のアジュバント(例えば、LT抗原、および、ワクチン接種目的のその他の抗原)に関するヒトのデータからも決定することができる。非経口投与には、より多い用量が必要な場合がある。適用された用量は、相対的生物学的利用率、および、投与される化合物の効力に基づいて調節することができる。上述の方法および当業界周知のその他の方法に基づいて最大の有効性が達成されるように用量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0131】
Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、製剤化されてもよい。本発明の調合物は、製薬上許容できる溶液の形態で投与され、このような溶液には、慣例的手順で、製薬上許容できるの濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性のキャリアー、アジュバント、および、任意にその他の治療用成分を含ませることができる。
【0132】
治療に使用するための有効量のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、本オリゴヌクレオチドを、望ましい表面に、例えば粘膜、全身へ送達するあらゆる様式で被検体に投与することができる。本発明の医薬組成物を投与することは、当業者既知のあらゆる手段によって達成されてもよい。投与経路としては、これらに限定されないが、経口、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、粘膜、鼻腔内、舌下、気管内、吸入法、眼、膣、皮膚、直腸、および、直接注射が挙げられる。
【0133】
経口投与のためには、上記化合物(すなわち、Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド、抗原、およびその他の治療剤)は、活性な化合物と当業界周知の製薬上許容できるキャリアーとを混合することによって容易に製剤化することができる。このようなキャリアーによって、本発明の化合物を、治療しようとする被検体が経口摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能になる。経口で使用するための医薬製剤は、固形賦形剤として得ることができ、任意に、得られた混合物を粉砕して、必要に応じて適切な助剤を添加した後に顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを形成してもよい。適切な賦形剤は、具体的には、糖類のような充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、または、ソルビトール;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/または、ポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて崩壊剤を添加してもよく、このような崩壊剤としては、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギン酸もしくはそれらの塩、例えばアルギン酸ナトリウムが挙げられる。任意に、経口製剤はまた、製剤中の酸性状態を中和するための塩類溶液または緩衝液(すなわちEDTA)中で製剤化してもよいし、または、キャリアーをまったく用いないで投与してもよい。
【0134】
また特に考慮されるのは、上記のオリゴヌクレオチドの経口用剤形である。本オリゴヌクレオチドは、経口送達が有効になるように化学修飾されてもよい。一般的に、考慮される化学修飾は、本オリゴヌクレオチドそのものに少なくとも1個の成分を付着させることであり、ここで前記成分によって、(a)タンパク質分解の阻害;および、(b)胃または腸から血流への取り込みが可能になる。また、本オリゴヌクレオチドの総体的な安定性を高めること、および、体内の循環時間を長くすることも望ましい。このような成分の例としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および、ポリプロリンが挙げられる。AbuchowskiおよびDavis,1981,“Soluble Polymer−Enzyme Adducts” In:Enzymes as Drugs,Hocenberg and Roberts,eds.,Wiley−Interscience,ニューヨーク,ニューヨーク州,367−383頁;Newmark等,1982,J.Appl.Biochem.4:185〜189。用いることができるその他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソラン、および、ポリ−1,3,6−チオキソラン(tioxocane)である。製薬としての使用に好ましいものは、上述したように、ポリエチレングリコール成分である。
【0135】
本オリゴヌクレオチドに関して、放出される部位は、胃、小腸(十二指腸、空腸または回腸)、または、大腸であり得る。当業者であれば、胃では溶解しないが、十二指腸または腸内のどこかで物質を放出すると予想される製剤が利用可能である好ましくは、このような放出において、本オリゴヌクレオチドを保護すること、または、胃の環境を過ぎて(例えば腸内で)生物学的に活性な物質の放出することのいずれかによって、胃の環境の有害な作用が回避できると予想される。
【0136】
最大の胃の耐性を確実にするためには、少なくともpH5.0まで不浸透性のコーティングが必須である。腸溶コーティングとして用いられるより一般的な不活性構成要素の例は、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリビニルアセテートフタラート(PVAP)、オイドラギット(Eudragit)L30D、アクアテリック(Aquateric)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、オイドラギットL、オイドラギットS、および、セラックである。これらのコーティングは、混合型のフィルムとして用いてもよい。
【0137】
また、胃に対する保護が考慮されていない錠剤上に、コーティングまたはコーティングの混合物を用いてもよい。その例としては、糖コーティング、または、錠剤の嚥下をより容易にするコーティングが挙げられる。カプセルは、乾燥した治療剤(すなわち粉末)を送達する場合は、ハードシェル(例えば、ゼラチン)から構成されていてもよいし、液体の形態の場合はソフトゼラチンシェルを用いてもよい。カシェ剤のシェル材料は、粘性のスターチ、またはその他の食用の紙が可能である。丸剤、ロゼンジ、成形錠剤、または、湿製錠剤の場合は、湿式塊化(moist massing)技術を用いることができる。
【0138】
このような治療剤は、粒度が約1mmの顆粒またはペレットの形態で、微細なマルチ粒子として製剤に含めることができる。このようなカプセル投与のための物質の製剤はまた、粉末、軽度に圧縮されたプラグの形態が可能であり、または、錠剤であってもよい。このような治療剤は、圧縮によって製造することができる。
【0139】
いずれにも着色剤および矯味矯臭薬剤が含まれていてもよい。例えば、本オリゴヌクレオチドを製剤化して(例えば、リポソーム、または、マイクロスフェアでのカプセル化によって)、続いてさらに着色剤および矯味矯臭薬剤を含む冷蔵飲料のような食用の製品に含ませてもよい。
【0140】
治療剤の体積は、不活性材料を用いて希釈してもよいし、または、増加させてもよい。これらの希釈剤としては、炭水化物、特にマンニトール、a−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、改変デキストラン、および、スターチが挙げられる。またある種の無機塩が充填剤としても使用可能であり、このような無機塩としては、例えば、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および、塩化ナトリウムが挙げられる。いくつかの市販の希釈剤としては、ファスト−フロー(Fast−Flo)、エムデックス(Emdex)、STA−Rx1500、エンコンプレス(Emcompress)、および、アビセル(Avicell)が挙げられる。
【0141】
上記治療剤の製剤に崩壊剤を含ませて、固形の剤形にすることができる。崩壊剤として用いられる物質としては、これらに限定されないが、スターチが挙げられ、例えば、市販のスターチベースの崩壊剤、エキスプロタブ(Explotab)である。グリコール酸ナトリウムスターチ、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラマイロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ、および、ベントナイトがいずれも使用可能である。その他の形態の崩壊剤は、不溶性の陽イオン交換樹脂である。粉末化したゴム類を、崩壊剤および結合剤としてとして用いてもよく、このようなゴム類としては、寒天、カラヤまたはトラガカントのような粉末化したゴム類が挙げられる。またアルギン酸およびそのナトリウム塩も、崩壊剤として有用である。
【0142】
結合剤を用いて、硬質の錠剤が形成されるように治療剤を一緒に保持してもよく、このような結合剤としては、天然産物由来の材料が挙げられ、例えばアカシア、トラガカント、スターチ、および、ゼラチンである。その他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、および、カルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)、および、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はいずれも、アルコール性の溶液で治療剤を粒状化するために用いることができる。
【0143】
製剤化工程中にこう着を防ぐために、抗摩擦剤(anti−frictional agent)を上記治療剤の製剤に含ませることができる。治療剤とダイの壁面との間の層として潤滑剤を用いてもよく、このような潤滑剤の例としては、これらに限定されないが、ステアリン酸、例えばそのマグネシウムおよびカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油、および、ワックスが挙げられる。また可溶性の潤滑剤を用いてもよく、このような潤滑剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、カルボワックス(Carbowax)4000および6000が挙げられる。
【0144】
滑剤は、製剤化中に薬物の流動特性を改善して、圧縮中の再構成を促進する可能性があるものであり、このような滑剤を添加してもよい。滑剤としては、スターチ、タルク、発熱性シリカ、および、アルミノケイ酸ナトリウム水和物が挙げられる。
【0145】
水性環境への治療剤の溶解を促進するために、浸潤剤として界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、および、スルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤を用いてもよく、このようなカチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、または、塩化ベンゼトニウムが挙げられる。界面活性剤として製剤に含ませることができる可能性がある非イオン性界面活性剤の例としては、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアラート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびに、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらの界面活性剤は、本オリゴヌクレオチドの配合中に、単独で存在していてもよいし、または、混合物として様々な比率で存在していてもよい。
【0146】
経口で用いることができる医薬製剤としては、ゼラチンで作製されたプッシュフィット式カプセル、加えて、ゼラチン、ならびに、グリセロールまたはソルビトールのような可塑剤で作製された軟質の封入カプセルが挙げられる。プッシュフィット式カプセルは、活性成分を、充填剤、例えばラクトース、結合剤、例えばスターチ、および/または、潤滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および、任意に安定剤と混合された形態で含んでいてもよい。ソフトカプセル中において、活性な化合物は、脂肪油、流動パラフィンまたは、液状のポリエチレングリコールのような適切な液体に溶解または懸濁させてあってもよい。それに加えて安定剤を添加してもよい。また経口投与用に製剤化されたマイクロスフェアを用いてもよい。このようなマイクロスフェアは、当業界においてよく定義されている。経口投与のための製剤はいずれも、このような投与法に適した投与量で用いられる必要がある。
【0147】
口腔投与のためには、本組成物は、従来の方式で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとっていてもよい。
吸入法による投与の場合、本発明に従って使用するための上記化合物は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切なガスを使用して、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーを噴霧する形態で送達することが都合のよい形態であり得る。加圧エアロゾルの場合、定量を送達するためのバルブを設けることによって投与単位を決定してもよい。吸入器または吹き付け器に使用するための、例えばゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、上記化合物、および、適切な粉末ベース(例えばラクトースまたはスターチ)の粉末混合物を含ませて製剤化してもよい。
【0148】
また本明細書において、本オリゴヌクレオチドの肺送達も考慮される。本オリゴヌクレオチドは、吸入中に哺乳動物の肺に送達され、肺上皮の内層を通過して血流に送達される。吸入される分子のその他の報告としては、以下が挙げられる:Adjei等,1990,Pharmaceutical Research,7:565〜569;Adjei等,1990,International Journal of Pharmaceutics,63:135〜144(酢酸ロイプロリド);Braquet等,1989,Journal of Cardiovascular Pharmacology,13(別冊5):143〜146(エンドセリン−1);Hubbard等,1989,Annals of Internal Medicine,Vol.III,206−212頁(a1−アンチトリプシン);Smith等,1989,J.Clin.Invest.84:1145〜1146(a−1−プロテイナーゼ);Oswein等,1990,“Aerosolization of Proteins,” Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II,キーストーン,コロラド州,3月(組換えヒト成長ホルモン);Debs等,1988,J.Immunol.140:3482〜3488(インターフェロン−g、および、腫瘍壊死因子アルファ)、および、Platz等,米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)。全身性の作用を目的とした薬物の肺送達のための方法および組成物が、Wong等に1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号で説明されている。
【0149】
本発明の実施における使用には、治療用製品の肺送達のために設計された多様な機械装置が考慮され、このような装置としては、これらに限定されないが、ネブライザー、定量吸入器、および、粉末吸入器が挙げられ、これらはいずれも当業者にはよく知られている。
【0150】
本発明の実施に適した市販の装置のいくつかの具体的な例は、マリンクロット社(Mallinckrodt,Inc.,セントルイス,ミズーリ州)製のウルトラベント(Ultravent)ネブライザー;マークエスト・メディカル・プロダクツ(Marquest Medical Products,イングルウッド,コロラド州)製のアコーン(Acorn)IIネブライザー;グラクソ社(Glaxo Inc.,リサーチ・トライアングル・パーク,ノースカロライナ州)製のベントリン(Ventolin)定量吸入器;および、ファイソンズ社(Fisons Corp.,ベッドフォード,マサチューセッツ州)製のスピンハラー(Spinhaler)粉末吸入器である。
【0151】
このような装置はいずれも、オリゴヌクレオチドの分散に適した製剤の使用を必要とする。典型的には、製剤はそれぞれ用いられる装置のタイプに特殊化され、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバント、および/または、キャリアーに加えて、適切な噴射剤の使用を含む場合がある。またリポソーム、マイクロカプセル、または、マイクロスフェア、包接錯体、またはその他のタイプのキャリアーの使用も考慮される。また化学修飾されたオリゴヌクレオチドは、化学修飾のタイプ、または、用いられる装置のタイプに応じて様々な配合で製造してもよい。
【0152】
ジェット式または超音波式のいずれかのネブライザーを用いた用途に適した製剤は、典型的には、水に溶解させたオリゴヌクレオチドを含むと予想され、この場合、生物学的に活性なオリゴヌクレオチドは溶液1mLあたり約0.1〜25mgの濃度で用いられる。このような製剤はまた、緩衝液、および、単糖(例えば、オリゴヌクレオチドの安定化、および、浸透圧の制御のための)を含んでいてもよい。このようなネブライザー用製剤はまた、界面活性剤を含んでいてもよく、それによりエアロゾル形成の際に溶液の噴霧によって引き起こされる表面でオリゴヌクレオチドの凝集が誘導されることを低減させるか、または予防することができる。
【0153】
定量吸入器装置を用いた用途のための製剤は、一般的に、界面活性剤を用いて噴射剤中に懸濁した本オリゴヌクレオチドを含む微粉を含むと予想される。このような噴射剤は、この目的で用いられるあらゆる従来の材料が可能であり、例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、または、炭化水素、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、または、それらの組み合わせが挙げられる。適切な界面活性剤としては、トリオレイン酸ソルビタン、および、ダイズレシチンが挙げられる。またオレイン酸も、界面活性剤として有用な場合がある。
【0154】
粉末吸入器装置から分散させるための製剤は、オリゴヌクレオチドを含む細粒化した乾燥粉末を含むと予想され、さらに、充填剤、例えばラクトース、ソルビトール、スクロース、または、マンニトールを、装置から粉末の分散を容易にする量で含んでいてもよく、例えば製剤の50〜90重量%で含んでいてもよい。本オリゴヌクレオチドは、肺の遠位への最も有効な送達のためには、10mm(またはミクロン)未満の平均粒度、最も好ましくは0.5〜5mmの平均粒度を有する粒子の形態で製造することが最も有利であると予想される。
【0155】
また本発明の医薬組成物の経鼻送達も考慮される。経鼻送達は、鼻に治療用製品を投与した後に、血流に直接本発明の医薬組成物を送達させることが可能であり、肺中に製品を堆積させる必要がない。経鼻送達のための製剤としては、デキストラン、または、シクロデキストリンを含む製剤が挙げられる。
【0156】
経鼻投与のために、有用な装置は、定量噴霧器が取り付けられた小型の硬質のボトルである。一実施態様において、本発明の医薬組成物溶液を既定体積のチャンバー(このチャンバーは、チャンバー内の液体が加圧された時にスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するために設計された開口部を有する)に引き込むことによって定量が送達される。このようなチャンバーは、本発明の医薬組成物を投与するために加圧される。具体的な実施態様において、このようなチャンバーは、ピストンのような構成である。このような装置は市販されている。
【0157】
あるいは、開口部、または、圧搾される時にスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するために設計された開口部を備えたプラスチック製のスクイーズボトルが用いられる。このような開口部は、通常ボトルの頂部に存在し、この頂部は、一般的に、効率的なエアロゾル製剤の投与のために部分的に鼻内の通路にフィットするように先細りの形状である。好ましくは、鼻内への吸入器は、測定された薬物用量が投与されるように定量のエアロゾル製剤を供給すると予想される。
【0158】
上記化合物は、それらを全身に送達することが望ましい場合、注射、例えば大量注射または持続点滴による非経口投与のために製剤化してもよい。注射用製剤は、1回投与量の場合は例えばアンプルの形態で提供してもよいし、または、保存剤を添加した複数回投与用の容器の形態で提供してもよい。本組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとることもでき、さらに、懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような成形剤を含んでいてもよい。
【0159】
非経口投与のための医薬製剤としては、水溶性の形態の活性な化合物の水溶液が挙げられる。加えて、活性な化合物の懸濁液は、適切な油性懸濁注射液として製造してもよい。適切な親油性溶媒または媒体としては、脂肪油、例えばゴマ油、または、合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル、もしくは、トリグリセリド、または、リポソームが挙げられる。水性懸濁注射液は、懸濁液の粘度を高める物質を含んでいてもよく、このような物質としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、または、デキストランが挙げられる。任意に、懸濁液はまた、適切な安定剤、または、上記化合物の溶解性を高める物質を含んでいてもよく、それにより高度に濃縮された溶液の製造が可能になる。
【0160】
あるいは、活性な化合物は、使用前に適切な媒体(例えば滅菌パイロジェンフリー水)と共に構成するために、粉末形態であってもよい。
また上記化合物は、直腸または膣用の組成物として製剤化してもよく、このような製剤としては、例えば、カカオバターまたはその他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む坐剤または保留浣腸が挙げられる。
【0161】
これまで説明した製剤に加えて、上記化合物はまた、デポ製剤として製剤化してもよい。このような持続型製剤は、適切な高分子材料または疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルジョンとして)、または、イオン交換樹脂を用いて製剤化してもよいし、または、難溶性の誘導体(例えば難溶性の塩)として製剤化してもよい。
【0162】
また本医薬組成物は、適切な固相またはゲル相キャリアー、または、賦形剤を含んでもよい。このようなキャリアーまたは賦形剤の例としては、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、スターチ、セルロース誘導体、ゼラチン、および、ポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられる。
【0163】
適切な液状または固形医薬製剤の形態は、例えば、吸入のための水溶液または食塩水の形態、マイクロカプセル化の形態、渦巻(encochleated)の形態、顕微鏡レベルの金粒子上に被覆された形態、リポソーム中に内包された形態、噴霧された形態、エアロゾルの形態、皮膚に埋め込むためのペレットの形態、または、皮膚を引っ掻くために鋭利な物体上に乾燥させた形態である。また本医薬組成物は、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、ドロップ、または、活性な化合物を長期にわたって放出させる製剤の形態が挙げられ、その製造において、賦形剤および添加剤、および/または、助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、潤滑剤、矯味矯臭薬剤、甘味料、または、可溶化剤が、上述したように習慣的に用いられる。本医薬組成物は、様々な薬物送達システムへの使用に適している。薬物送達方法の簡単な総論としては、Langer,Science 249:1527〜1533,1990を参照(参照することにより本明細書に含まれる)。
【0164】
Py−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ならびに任意にその他の治療剤および/または抗原は、そのままの(純粋な)形態で投与してもよいし、または、製薬上許容できる塩の形態で投与してもよい。医薬品で用いられる場合、このような塩は製薬上許容できるものと予想されるが、製薬上許容できる塩以外のものも、それらの製薬上許容できる塩を製造するために都合よく用いられる可能性がある。このような塩としては、これらに限定されないが、以下の酸から製造された塩が挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、および、ベンゼンスルホン酸。また、このような塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類塩として製造することもでき、例えば、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として製造することもできる。
【0165】
適切な緩衝剤としては、酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);および、リン酸および塩(0.8〜2%w/v)が挙げられる。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)、および、チメロサール(0.004〜0.02%w/v)が挙げられる。
【0166】
本発明の医薬組成物は、任意に製薬上許容できるキャリアーに内包させた、有効量のPy−Pu免疫刺激性オリゴヌクレオチド、および、任意に抗原および/またはその他の治療剤を含む。製薬上許容できるキャリアーという用語は、ヒトまたはその他の脊椎動物に投与するのに適した1種またはそれより多くの適合性の固形または液状充填剤、希釈剤、または、カプセル封入剤を意味する。キャリアーという用語は、活性成分の適用が容易になるようにそれらが混合される、天然または合成の有機または無機物質成分を意味する。また本医薬組成物の構成要素は、望ましい薬剤の効率を実質的に損なう可能性がある相互作用が起こらないように本発明の化合物と混合してもよいし、これらの構成要素を互いに混合してもよい。
【0167】
以下の実施例を用いて本発明をさらに説明するが、さらに制限するものとして解釈すべきではない。本願中で引用された全ての参考文献の全内容(例えば参考文献、発行された特許、公開された特許出願、および、同時係属中の特許出願など)は、参照により明示的に開示に含まれる。
【実施例】
【0168】
材料および方法
オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)および試薬
全てのODNは、コーリー・ファーマシューティカル社(Coley Pharmaceutical GmbH)によって迅速な脱保護ホスホアミダイト化学法に従って合成され、これらは同一性および純度が制御されており、その内毒素は、リムラス(Limulus)分析(バイオウィッタカー(Biowhittaker,Verviers,ベルギー)によって測定したところ検出不可能なレベルであった(<0.1EU/ml)。ODNを、滅菌した内毒素非含有のトリス−EDTA(シグマ(Sigma),Deisenhofen,ドイツ)に懸濁して保存し、微生物および内毒素汚染の両方を予防するために無菌条件下で操作した。全ての希釈は、内毒素非含有のトリス−EDTAを用いて行った。
【0169】
TLR9分析
HEK293細胞を、エレクトロポレーションによって、ヒトTLR9、および、6xNF−κB−ルシフェラーゼレポータープラスミドを発現するベクターでトランスフェクションした。安定な形質転換体(3×10細胞/ウェル)を、既定量のODNと共に、加湿したインキュベーター中で37℃で16時間インキュベートした。各データポイントは、3連で試行された。細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ遺伝子活性に関して分析した(パーキン・エルマー(Perkin−Elmer,Zaventem,ベルギー)製のBriteLiteキットを使用)。ODNを添加していない培地のレポーター遺伝子活性を参照値として、刺激の指標を計算した。
【0170】
細胞の精製
健康なヒトドナー由来の末梢血液バフィーコート調製物を、デュッセルドルフ大学(ドイツ)の血液バンクから得て、PBMCをフィコール−ハイパック(シグマ)での遠心分離で精製した。細胞を、加湿したインキュベーター中で、37℃で、5%(v/v)の加熱不活性化されたヒトAB血清(バイオウィッタカー)、または、10%(v/v)の加熱不活性化されたFCS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、および、100μg/mlのストレプトマイシン(全てのシグマ製)が添加されたRPMI1640培地中で培養した。
【0171】
サイトカインの検出
PBMCを5×10細胞/mlの濃度で再懸濁し、96ウェルの丸底プレート(250μl/ウェル)に添加した。PBMCを、様々なODN、ORNまたはヌクレオシド濃度でインキュベートし、既定のタイムポイントに達したら培養上清(SN)を回収した。すぐに用いない場合、必要になるまでSNを−20℃で保存した。阻害実験のために、細胞を既定されたTLRリガンド濃度で刺激し、ヌクレオシドまたはORNを添加した。いくつかの実験では、細胞培養開始の1時間後に第二の修飾ORNを添加した。SN中のサイトカインの量は、社内のELISAを用いて、市販の抗体(PBL,ニューブルンズウィック,ニュージャージー州,米国)を用いて開発されたIFN-αに関して評価した。
【0172】
実施例1:CpGモチーフにおけるホスホノアセタート主鎖の修飾によって、TLR9活性化の増加が起こる
非メチル化CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体9(TLR9)経路を介して免疫応答を刺激することができることがわかっている。ホスホロチオエート(PS)オリゴヌクレオチド(ODN)は、強い免疫刺激活性を示すが、CpGにおけるインターヌクレオチド結合がホスホジエステル(PO)結合である切断され易いODNだけはそのような結果を示さない。一般的に、リン原子における置換基は、匹敵する活性を得るには類似の電荷およびサイズを有していなければならないと考えられる。この関係をより詳細に調査するために、ヒトTLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞を、CpGモチーフにPO(配列番号7)、PS(配列番号6)、P−Me(配列番号12)、および、ホスホノアセタート(PA)(配列番号8)による主鎖の修飾を含むODNとインキュベートした。配列番号3は、既知の活性を有するBクラスのODNである。TLR9活性は、ルシフェラーゼ分析によって6xNF−κB−ルシフェラーゼレポータープラスミドを用いて測定した。しかしながら、PSとP−Me(メチルホスホナート)との比較からは、電荷は、TLR9活性の活性化に関して主要な役割を果たさない可能性があることが示された(図1)。加えて、リンにおける置換基のサイズをPOからPSに大きくすることによって、TLR9活性の活性化が有意に減少した。それゆえに、極めて驚くべきことに、PA(POおよびP−Meよりも大きい)結合の導入によって、リン酸への修飾に関して出願人がこれまで観察したなかでも最良のTLR9活性が生じる(図1)。表1に、試験したODN配列の要約を示す。
【0173】
【表1】

【0174】
実施例2:CpGモチーフにおけるホスホノアセタート主鎖の修飾によって、IFN−α生産の増加が起こる
ヒト細胞におけるPA修飾の作用を調査するために、ヒトPBMCを全血から単離し、同一な配列を有するがPA修飾部位が異なるBクラスのODNとインキュベートした。ODNは、未修飾ODN(配列番号33)、第一のCpGモチーフで修飾されたODN(配列番号8)、第二のCpGモチーフで修飾されたODN(配列番号9)、または、第一および第二のCpGモチーフの両方で修飾されたODN(配列番号10)のいずれかであった。24時間インキュベートした後に、IFN−α濃度をELISA分析で測定した。PA修飾を有する3種の全てのODNが、未修飾ODNよりも多くのIFN−αを誘導した。2つのPA修飾を有する配列番号10は、1ヶ所のみ修飾されたODNよりもわずかに多いIFN−αを誘導するようであった(図2)。表2に、試験したODN配列の要約を示す。
【0175】
【表2】

【0176】
実施例3:BクラスのODNのCpGモチーフにおけるホスホノアセタート主鎖の修飾によって、TLR9活性化の増加が起こる
CpGモチーフにおける様々な主鎖の修飾のTLR9活性化に対する作用を直接比較するために、ルシフェラーゼ分析を行った。1つのCpGモチーフにおいてPS(配列番号13)、PO(配列番号14)、または、PA(配列番号15)主鎖の修飾を有する同一な配列のODNを、TLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞においてTLR9を活性化する能力に関して試験した。図3aで示されるように、PA修飾を有するODNは、PS修飾を有するODNよりも強いTLR9アゴニストであったが、PO修飾を有するODNほど強くはなかった。
【0177】
全てがPSの主鎖を有するODN(配列番号16)、第一のCpGモチーフにPA修飾を有するODN(配列番号17)、または、第一および第二のCpGモチーフの両方にPA修飾を有するODN(配列番号18)のいずれかを用いて、類似のルシフェラーゼ分析を行った。図3bで示されるように、両方のPA修飾を有するODNが、PSを有するODNから得られた活性化を上回るTLR9活性化の増加を起こした。2つのCpGモチーフに修飾を有するODNが、最も高いTLR9活性化を示した。
【0178】
全てがホスホロチオエートのBクラスのODN(配列番号5)、第一の(5’末端の先端)CpGモチーフに1つのPA修飾を有するBクラスの切断され易いODN(配列番号9)、第二のCpGモチーフに1つのPA修飾を有するODN(配列番号10)、および、CpGモチーフの両方がPAインターヌクレオチド結合で修飾されたODN(配列番号11)により誘導されたTLR9活性を比較するために、同じ分析を行った。図3cで示されるように、PAで修飾された3種全てのODNによる刺激は、配列番号5と比較してTLR9活性化の増加を起こした。表3に、試験されたODNを要約する。
【0179】
【表3】

【0180】
実施例4:CクラスのODNのCpGモチーフにおけるホスホノアセタート主鎖の修飾によって、TLR9活性化の増加が起こる
ホスホノアセタートで修飾されたCクラスの切断され易いODNを、TLR9を活性化する能力に関して試験した。TLR9でトランスフェクションされたHEK293を、同一な配列を有するが、CpGモチーフに異なる主鎖の修飾を有するCクラスの修飾されたODNとインキュベートし、得られたTLR9活性をルシフェラーゼ分析で測定した。様々な位置にPA修飾を有するODNを比較した(表4を参照)。図4によれば、第一(5’)および第二のCpGモチーフにPAまたはPOを有するODNから最も強い活性が得られたことが示される。
【0181】
【表4】

【0182】
実施例5:ホスホノアセタート主鎖の修飾の位置は、効力および有効性に影響を与える
PA修飾のODNのTLR9を活性化する能力に対する作用をさらに調査するために、BクラスおよびCクラスのODNのCpGモチーフにさらなる修飾を作製し、TLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞においてTLR9を刺激する能力に関して試験した。BクラスのODN(配列番号1)を、PAで第一のCpGモチーフ(配列番号23)、第二のCpGモチーフ(配列番号24)、第三のモチーフ(配列番号25)、または、第四のモチーフ(配列番号26)で修飾した。図5aで示されるように、第一のCpGにおけるPA修飾は、TLR9依存性のシグナル強度の効力および有効性を高め、第二および第三のCpGにおけるPA修飾は、効力を高めた。第四のCpGにおけるPA修飾は、効力および有効性の両方を低減させた。
【0183】
次に、第一および第二(配列番号27)、第二および第四(配列番号28)、または、第一、第二および第四(配列番号29)のCpGのいずれかが修飾された、1個より多くのPAで修飾されたCpGモチーフを有する配列番号1の誘導体を試験した。図5bで示されるように、第一および第二のCpGにおけるPA修飾は、TLR9の効力および有効性活性化を高めたが、それに対して、第二および第四、または、第一、第二および第四におけるPA修飾は、効力および有効性に対する作用が最も小さかった。
【0184】
また異なる位置にPA修飾を有するCクラスのODN(配列番号33)の誘導体も、TLR9を活性化する能力に関して試験した。第一のCpGモチーフ(配列番号30)、第二のCpGモチーフ(配列番号31)、または、第一および第二両方のCpGモチーフ(配列番号32)にPA修飾を作製した。図5cで示されるように、第一、または、第一および第二のCpGにおけるPA修飾は、TLR9の効力および有効性活性化を高めたが、それに対して、第二のCpGにおけるPA修飾単独では効力および有効性に影響を与えなかった。表5に、試験したODNの要約を示す。総合すると、これらのデータによれば、少なくとも第一のCpGモチーフに修飾を有するODNは、最も有力なTLR9活性化を起こすことが示される。
【0185】
【表5】

【0186】
等価物
以上に記載された明細書は、当業者が本発明を実施するのに十分であるとみなされる。実施例は、本発明の一形態の単なる説明として意図されており、その他の機能的に同等な実施態様も本発明の範囲内であるため、本発明は、提供された実施例によってその範囲が限定されないこととする。本明細書において示され説明されたものに加えて、本発明の様々な改変が、当業者であれば前述の説明から十分明らかであると思われ、それらは添付の請求項の範囲内に含まれる。本発明の利点および目的が、必ず本発明の各実施態様に包含されるわけではない。
【0187】
図面は説明のためだけに示されるのであり、本明細書において開示された本発明の実施に必須ではない。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、同一な配列を有し、ホスホジエステル(PO)(配列番号7、赤色のライン)、ホスホロチオエート(PS)(配列番号3、赤色の点線)、メチルホスホナート(P−Me)(配列番号12、黒色のライン)、または、ホスホノアセタート(PA)(配列番号8、黒色の点線)による主鎖の修飾を有するBクラスのオリゴヌクレオチド(ODN)の比較を示すグラフである。この図から、ルシフェラーゼ分析によって測定したところ、TLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞において、PA修飾を有するODNは、その他の主鎖の修飾と比較してより低いODN濃度でより大きい程度のヒトTLR9活性を誘導したことが示される。y軸は、刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図2】図2は、ヒトPBMCにおいて、PAを有するODNで刺激した後のインターフェロンアルファ(IFN−α)の誘導を示すグラフである。ELISA分析によって測定し、CpGモチーフ中に1個(配列番号9〜10)または2個(配列番号11)のPA修飾のいずれかを有する切断され易いODNのIFN−α生産を、同じ配列の切断され易いODN(配列番号2)と比較した。y軸は、IFN−α濃度(pg/ml)であり、x軸は、オリゴヌクレオチド濃度(μM)である。
【図3a】図3は、ルシフェラーゼ分析によって測定された、TLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞においてBクラスのODNで刺激した後のTLR9の刺激を示す3つのグラフである。図3aは、主鎖にPS(配列番号13)、PO(配列番号14)、または、PA(配列番号15)による修飾を含む単一のCpGモチーフを有する同じ配列のODNによるTLR9の刺激の比較を示す。y軸は、相対的な刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図3b】図3bは、2つのCpGモチーフ(ここで、それぞれのCpGモチーフは、PSまたはPA主鎖のいずれかを含む)を含む同じ配列の3種のODNの比較を示す。CpGモチーフに1(配列番号17)または2(配列番号18)のPA修飾のいずれかを有するODNを、同じ配列のPSオリゴヌクレオチド(配列番号16)による刺激と比較した。y軸は、相対的な刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図3c】図3cは、複数のCpGモチーフを含む同じ配列を有するODNによるTLR9の刺激を示す。CpGモチーフに1(配列番号9〜10)、または、2(配列番号11)PA修飾のいずれかを有する切断され易いODNを、同じ配列のPSオリゴヌクレオチド(配列番号5)による刺激と比較した。y軸は、相対的な刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図4】図4は、ルシフェラーゼ分析によって測定された、TLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞において、同一な配列を有するが、CpGモチーフに異なる主鎖の修飾を有するCクラスの切断され易いODN(配列番号19〜22、表4を参照)で刺激した後のTLR9の刺激を示すグラフである。y軸は、刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図5a】図5は、TLR9でトランスフェクションされたHEK293細胞において、複数のCpGモチーフを含むODNで刺激した後のTLR9の刺激を示す3つのグラフである。図5aは、4種のCpGモチーフを異なる組み合わせで有するPA修飾を含む4種のBクラスのODN(配列番号23〜26、表5を参照)のTLR9を刺激する能力を比較する。また全てがPSのBクラスのODN(配列番号1)、および、CクラスのODN(配列番号4)も試験した。y軸は、相対的な刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図5b】図5bは、3種のCpGモチーフを異なる組み合わせで有するPA修飾を含む3種のBクラスのODN(配列番号27〜29、表5を参照)のTLR9を刺激する能力を比較する。また全てがPSのBクラスのODN(配列番号1)、および、CクラスのODN(配列番号4)も試験した。y軸は、相対的な刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。
【図5c】図5cは、2つのCpGモチーフのうちいずれか1つ(配列番号30〜31)、または、その両方(配列番号32)にPA修飾を含む3種のCクラスのODNのTLR9を刺激する能力の比較を示す。また同じ配列の全てがPSのCクラスのODN(配列番号33)も試験した。y軸は、相対的な刺激の指標であり、x軸は、ODN濃度(μM)の対数である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の式I:
【化1】

で示される修飾されたピリミジン−プリンジヌクレオチドを有する免疫刺激性オリゴヌクレオチドであって、
式中、
Rは、水素(H)、C〜C−アルキル、メトキシエチル、ピバロイルオキシメチル、ピバロイルオキシベンジル、または、S−ピバロイルチオエチル、または、それらの生理学的に許容できる塩であり;
X、YおよびZは、酸素(O)または硫黄(S)であり;
およびRは、H、または、C〜Cアルキルであり;
Pyは、ピリミジン塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体であり、Puは、プリン塩基を有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体である、上記オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドが、キメラの主鎖を含む、請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
少なくとも第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドをさらに含み、ここで第二のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合、ホスホジエステル結合、または、ホスホロチオエート結合を有し、加えて、少なくとも第三のピリミジン−プリンジヌクレオチドをさらに含み、ここで第三のピリミジン−プリンジヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を有する、請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドの少なくとも1個のヌクレオチドが、実質的に、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース、2’−アミノ−2’デオキシリボース、2’−O−アルキル−リボース、2’−O−メチル−リボース、2’−アミノ−2’−デオキシリボース、2’−O−4’−C−アルキレンリボース、または、3’−O−アルキル−リボースからなる群より選択される修飾された糖残基を有する、請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記本免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、2’−5’、5’−5’、3’−3’、2’−2’、または、2’−3’結合からなる群より選択される少なくとも1個のインターヌクレオチド結合を含む、請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド。
【請求項6】
抗原、抗菌剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、喘息もしくはアレルギー治療薬、または、自己免疫疾患治療薬をさらに含む、請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
被検体において免疫応答を刺激する方法であって、少なくとも1個のホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)、および、製薬用キャリアーを含む組成物を、免疫応答を刺激するための有効量で被検体に投与することを含む、上記方法。
【請求項8】
被検体における癌の治療方法であって、このような治療が必要な被検体に、癌の治療に有効な量の請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項9】
被検体における感染の治療方法であって、このような治療が必要な被検体に、感染治療に有効な量の請求項1に記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項10】
被検体における喘息の治療方法であって、このような治療が必要な被検体に、喘息の治療に有効な量の、少なくとも1個のホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項11】
被検体におけるアレルギーの治療方法であって、このような治療が必要な被検体に、アレルギーの治療に有効な量の、少なくとも1個のホスホノアセタート様インターヌクレオチド結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)、および、製薬用キャリアーを含む組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項12】
少なくとも1種の治療剤に結合した、少なくとも1個のホスホノアセタートまたはホスホノアセタート様の結合を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ここで該オリゴヌクレオチドの主鎖はキメラである)を含む組成物。
【請求項13】
前記治療剤が、第二のオリゴヌクレオチドであり、この第二のオリゴヌクレオチドは、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドに結合して、分岐状構造を形成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記治療剤が、第二のオリゴヌクレオチドであり、この第二のオリゴヌクレオチドは、本免疫刺激性オリゴヌクレオチドに結合して、3’−3’結合を形成する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記治療剤が、第二のオリゴヌクレオチドであり、この第二のオリゴヌクレオチドと本免疫刺激性オリゴヌクレオチドとが、デンドリマーを形成する、請求項11に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公開番号】特開2009−28031(P2009−28031A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−129789(P2008−129789)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(502102051)コーリー ファーマシューティカル ゲーエムベーハー (21)
【Fターム(参考)】