説明

強化剤を含む固体経口投与剤形

本発明は、DACインヒビターを、GIT細胞管壁での該DACインヒビターの吸収を促進するための強化剤と組み合わせて含む、医薬組成物および経口投与剤形に関する。強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸またはその誘導体であり得る。一部の実施形態では、該固体経口投与剤形は、遅延放出剤形などの制御放出剤形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化剤を含む医薬組成物および固体経口投与剤形、およびそのような組成物を使用する治療方法に関する。特に、本発明は、脱アセチル化酵素(DAC)インヒビターを、該DACインヒビターのバイオアベイラビリティおよび/または吸収を促進する強化剤と組み合わせて含む医薬組成物および固体経口投与剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管(GIT)の内腔側を裏打ちする上皮細胞は、経口投与による薬物送達の主要な障壁であり得る。しかし、薬物送達および輸送を促進するために利用することができる4種の輸送経路:経細胞性(transcellular)、傍細胞性、担体媒介性、および経細胞輸送性(transcytotic)の輸送経路が認識されている。薬物、例えば慣用の薬物、ペプチド、タンパク質、高分子、またはナノ粒子もしくはマイクロ粒子系が1種以上の前記輸送経路と「相互作用」する能力は、GITから下層循環への該薬物の送達の増加を生じさせる。
【0003】
特定の薬物は、頂端側(apical)細胞膜に位置する栄養素の輸送系(すなわち担体媒介経路)を利用する。また高分子は、エンドサイトーシスされた小胞中で細胞を横切って輸送される(すなわち経細胞輸送経路)。しかし、多数の薬物は、細胞を通過する(すなわち経細胞経路)または細胞間を通過する(すなわち傍細胞経路)受動拡散によって腸管上皮を横切って輸送される。ほとんどの経口投与薬物は受動輸送によって吸収される。親油性の薬物は経細胞経路によって上皮に浸透し、一方、親水性の薬物は傍細胞経路に制限される。
【0004】
傍細胞経路は腸管上皮の総表面積の0.1%未満しか占めない。さらに、細胞の頂端部分の周囲に連続したベルトを形成するタイトジャンクションは、隣接細胞間の密封を創出することによって細胞間の浸透を制限する。ゆえに、親水性薬物、例えばペプチドの経口吸収は著しく制限され得る。薬物吸収の他の障壁には、内腔刷子縁または腸上皮細胞中の加水分解酵素、追加の拡散障壁を提供する上皮膜の表面上の水性境界層の存在、水性境界層と関連している粘液層および頂端膜を横切るプロトン勾配を創出する酸の微小気候が含まれる。薬物の吸収および最終的にそのバイオアベイラビリティはまた、薬物を腸内腔へ戻すP−糖タンパク質調節輸送およびシトクロムP450代謝等の他のプロセスによって低減される。また食物および/または飲物が消化管中に存在すると吸収およびバイオアベイラビリティが妨害され得る。
【0005】
ヒストンアセチル化は可逆的修飾であり、脱アセチル化はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)と称される酵素ファミリーによって触媒される。Grozinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96: 4868-4873 (1999)では、HDACが2つのクラスに分けられることが教示されている。Grozingerらは、ヒトHDAC1、HDAC2、およびHDAC3タンパク質が第1クラスのHDACのメンバーであることを教示し、第2クラスのHDACのメンバーであるHDAC4、HDAC5、およびHDAC6と称される新規タンパク質を開示している。Kao et al., Genes & Dev., 14: 55-66 (2000)では、第2クラスのHDACの新規メンバーであるHDAC7が開示されている。Van den Wyngaert, FEBS, 478: 77-83 (2000)では、第1クラスのHDACの新規メンバーであるHDAC8が開示されている。
【0006】
Richon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 3003-3007 (1998)では、HDAC活性が、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)から単離された天然産物であるトリコスタチンA(trichostatin A)(TSA)によって、および合成化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(suberoylanilide hydroxamic acid)(SAHA)によって阻害されることが開示されている。Yoshida and Beppu, Exper. Cell Res., 177: 122-131 (1988)では、TSAが、細胞周期のGおよびG期でラット線維芽細胞の停止を生じさせることが教示され、HDACが細胞周期調節に結び付けられている。実際、Finnin et al., Nature, 401: 188-193 (1999)では、マウスにおいてTSAおよびSAHAが細胞増殖を阻害し、末端分化を誘発し、腫瘍の形成を妨げることが教示されている。Suzuki et al., 米国特許第6,174,905号、EP 0847992、JP 258863/96、および日本国出願第10138957号では、細胞分化を誘発し、かつHDAC活性を阻害するベンズアミド誘導体が開示されている。Delorme et al., WO 01/38322およびPCT IB01/00683では、HDACインヒビターとして役立つ追加の化合物が開示されている。前記刊行物はそれぞれ参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0007】
ロミデプシンとして知られる脱アセチル化酵素インヒビター(デプシペプチド、FK228、およびFR901228としても知られる)は、以下に示される構造を有する環状ペプチドである。
【化1】

【0008】
米国特許第4,977,138号で開示されているように、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)を利用する発酵プロセスによってロミデプシンを製造することができる。該文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。発酵完了後、慣用の技術、例えば溶媒抽出、クロマトグラフィー、および/または再結晶によってロミデプシンが回収および精製される。ロミデプシンをクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)から単離することに加えて、今や、この化合物の全合成がKahn et al., J. Am. Chem. Soc. 118:7237-7238 (1996)によって報告されている。該文献は参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。この合成は14ステップのプロセスを含み、18%の全収率でロミデプシンを提供する。簡単には、該合成はまずCarreira触媒不斉アルドール反応を含み、チオール含有β−ヒドロキシ酸を生じさせた。化合物のペプチド部分は標準ペプチド合成法によって組み立てられた。次いでチオール含有β−ヒドロキシ酸がペプチド部分とカップリングされ、エステル(ロミデプシン)結合の形成によって単環式の環が製造された。次いで保護チオールがジスルフィド結合に変換されるとロミデプシンの二環式環系が形成された。
【0009】
ロミデプシンは強力な抗増殖効果を有することが示されている。例えば、ロミデプシンは癌のマウスモデルにおいてヒト腫瘍異種移植片およびマウス腫瘍の両者に対するin vivo抗腫瘍活性を示す。研究では、ヒストン脱アセチル化を阻害すると、種々のタイプの癌細胞において細胞周期停止、分化、およびアポトーシス細胞死が生じることが示されている。皮膚T細胞リンパ腫、ならびに腎細胞癌、ホルモン不応性前立腺癌、乳癌、およびいくつかの他の固形腫瘍および血液学的悪性腫瘍、例えば多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、および急性骨髄球性白血病の治療に関連して、ロミデプシンは進行中の研究の対象である。ロミデプシンはまた、動物モデルにおいて血管新生を阻害することが実証されている。メカニズムに関していかなる特定の理論にも拘束されることなく、この阻害効果は、血管形成刺激因子、例えば血管内皮増殖因子またはキナーゼ挿入ドメイン受容体の発現の抑制によって、および血管形成阻害因子、例えばフォンヒッペル・リンダウ(von Hippel Lindau)およびニューロフィブロミン(neurofibromin)2の誘導によって達成されると考えられる。これらの結果は、ロミデプシンが抗血管形成剤であり、少なくとも部分的に血管新生の阻害によって腫瘍拡大の抑制に寄与することを示す。さらに、ロミデプシンはまた、細胞のHDAC活性を阻害する濃度と同じ濃度でウシ大動脈内皮細胞の、低酸素によって刺激される増殖、浸潤、遊走、接着および管形成をブロックすることが示されている。
【0010】
ロミデプシン自体は、HDAC活性部位ポケットと相互作用すると思われる明らかな化学構造を有さない。しかし、ロミデプシンは、細胞の還元活性によって、redFKとして知られるその活性な還元型に変換される。ロミデプシンのジスルフィド結合は、細胞中で、グルタチオンが関与する細胞の還元活性によって高速に還元されることが示されている。還元型では、redFKは2個の機能的スルフヒドリル基を有し、その少なくとも一方は活性部位ポケット中で亜鉛と相互作用可能であり、それによって基質のアクセスを妨げると考えられる。
【0011】
redFKの阻害効果は、クラスI酵素であるHDAC1およびHDAC2ならびにクラスII脱アセチル化酵素であるHDAC4およびHDAC6に対して試験されている。低ナノモル濃度では、redFKはHDAC1およびHDAC2の強力なインヒビターであるが、HDAC4およびHDAC6の阻害が比較的弱いことが示された。より具体的には、HDAC6はredFKにほとんど非感受性であることが示され、ロミデプシンは各酵素の阻害に関してredFKより17〜23倍弱く、ロミデプシンのジメチル型はすべての該酵素に対する阻害活性を示さなかった。
【0012】
redFKはクラスI酵素に関する実証済みの阻害活性を有するが、redFKの投与は、ロミデプシンと比較して、in vivo HDAC活性の阻害における活性が低いことが示されている。それは媒体および血清中でredFKが高速に不活性化されることに起因する。ロミデプシンは両媒体および血清中でredFKより安定であるため、ロミデプシンは、細胞への取り込み後にredFKに還元されることによって活性化される、クラスI酵素を阻害するための天然プロドラッグであると見なすことができる。グルタチオン媒介活性化はまた、化学療法におけるグルタチオン媒介薬物耐性を相殺するためのロミデプシンの潜在能力を示す。
【0013】
多数の潜在的な吸収強化剤が特定されている。例えば、中鎖グリセリドは、腸粘膜を横切る親水性薬物の吸収を高める能力を示す(Pharm. Res. (1994), 11, 1148-54を参照のこと)。例えば、カプリン酸ナトリウムは、傍細胞経路によって腸および結腸の薬物吸収を高めると報告されている(Pharm. Res. (1993) 10, 857-864; Pharm. Res. (1988), 5, 341-346を参照のこと)。米国特許第4,656,161号(BASF AG)(該文献は参照により本明細書中に組み入れられる)は、エチレンオキシドと脂肪酸、脂肪アルコール、アルキルフェノール、またはソルビタンまたはグリセロール脂肪酸エステルを反応させることによって調製することができるような非イオン性界面活性剤を加えることによって、ヘパリンおよびヘパリノイドの腸内吸収性を高めるためのプロセスを開示している。
【0014】
米国特許第5,229,130号(Cygnus Therapeutics Systems)は、皮膚浸透エンハンサーである1種以上の植物油を用いて製剤化されている、経皮投与される薬理活性物質の皮膚浸透性を高める組成物を開示している。皮膚浸透は一定範囲のカルボン酸ナトリウムによって高められることも知られている(Int. J. of Pharmaceutics (1994), 108, 141-148を参照のこと)。さらに、バイオアベイラビリティを高めるための精油の使用が公知である(米国特許第5,665,386号(AvMax Inc.)を参照のこと)。精油は、シトクロムP450代謝および、薬物を血流から腸内へ戻すP−糖タンパク質調節輸送のいずれか、または両者、を低減するよう作用することが教示されている。
【0015】
しかし、薬物吸収の増強は腸壁への損傷につながることがよくある。したがって、GIT強化剤の広範囲の使用に対する制限はその潜在的毒性および副作用によって決定されることが多い。さらに、また特にペプチド、タンパク質または高分子の薬物に関して、輸送経路の1つとGIT強化剤の「相互作用」は、傍細胞経路による輸送を高めるためのタイトジャンクションとの一時的相互作用またはタイトジャンクションの一時的開放のように、一時的または可逆的であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、多数の潜在的強化剤が公知である。しかし、このことは、強化剤を含む対応する数の製品をもたらしていない。現在スウェーデンおよび日本で使用が承認されているそのような製品の1つは、商標Doktacillin(登録商標)の下で販売されている坐薬である(Lindmark et al. Pharmaceutical Research (1997), 14, 930-935を参照のこと)。該坐薬はアンピシリンおよび中鎖脂肪酸、カプリン酸ナトリウム(C10)を含む。
【0017】
DACインヒビターの投与を促進する固体経口投与剤形を強化剤とともに提供することが望ましい。他の剤形より優れた固体経口投与剤形の利点には、製造の容易さ、異なる制御放出および持続放出製剤の製剤化能、および投与の容易さが含まれる。溶液形式の薬物の投与は、血流中の薬物濃度プロファイルの制御を容易に促進できない。一方、固体経口投与剤形は多用途であり、例えば、薬物放出の程度および持続時間を最大にし、かつ治療的に望ましい放出プロファイルにしたがって薬物を放出するよう改変することができる。また、高い患者コンプライアンスをはじめとする投与の便宜および固体経口投与剤形に関連する製造コストに関する利点も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の要旨
本発明の一態様では、本発明の医薬組成物およびそれからなる剤形は脱アセチル化酵素(DAC)インヒビターおよび、GIT細胞管壁での該DACインヒビターの吸収を促進するための強化剤を含み、該強化剤は6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸もしくはその塩、または中鎖脂肪酸誘導体であり;ただし(i)該強化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、6〜20炭素原子の該鎖長はカルボン酸部分の鎖長に関し、および(ii)該強化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1個のアルコキシ基は6〜20炭素原子の炭素鎖長を有することを条件とする。該強化剤は、消化管による特にGIT細胞管壁でのDACインヒビターの吸収を高めることによって機能すると考えられる。特定の実施形態では、強化剤および得られる組成物および剤形は室温で固体である。特定の実施形態では、医薬組成物は少なくとも1種の補助賦形剤をも含む。特定の実施形態では、DACインヒビターはHDACインヒビターである。特定の実施形態では、DACインヒビターはTDACインヒビターである。ある特定の実施形態では、DACインヒビターはロミデプシンである。
【0019】
本発明の別の態様では、医薬組成物およびそれからなる剤形はDACインヒビターおよび、GIT細胞管壁での該DACインヒビターの吸収を促進するための強化剤を含み、組成物中に存在する該唯一の強化剤は6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸もしくはその塩、または中鎖脂肪酸誘導体である。
【0020】
剤形は、例えば、錠剤、粒子(例えばマイクロ粒子、ナノ粒子)、またはカプセルであり得る。多粒子形式(multiparticulate forms)は錠剤またはカプセル中であり得る。錠剤は、1つ、一部分、すべての層中の、またはいずれの層にも含まれない圧縮粒子を有する単層または多層錠剤であり得る。特定の実施形態では、剤形は制御放出剤形である。特定の実施形態では、剤形は遅延放出剤形である。特定の実施形態では、剤形は持続放出剤形である。剤形はコーティング(例えばポリマー、好ましくは速度制御または遅延放出ポリマーでコーティング)してよい。ポリマーを強化剤および薬物とともに圧縮して、マトリックス剤形、例えば制御放出、遅延放出、または持続放出マトリックス剤形を形成させることもできる。コーティング(例えばワックス、ポリマー)をマトリックス剤形に塗布することができる。
【0021】
本発明の他の実施形態には、該剤形を製造するプロセス、および剤形の治療上有効量を患者に投与することによって医学的症状(例えば増殖性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、癌)を治療する方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例1に記載のように、H−TRHを用いて、0時点および2時間まで30分間隔でCaco−2単層中のTEER(Ωcm)に対するC8、C10、C12、C14、C18、およびC18:2のナトリウム塩の効果を示す。
【図2】図2は、実施例1に記載のように、Caco−2単層中のH−TRH輸送に関するPappに対するC8、C10、C12、C14、C18、およびC18:2のナトリウム塩の効果を示す。
【図3】図3は、実施例1に記載の閉ループラットモデルにしたがって、NaC8またはNaC10(35mg)強化剤の存在を伴ってTRH 500μgを十二指腸間に(interduodenal)ボーラス投与した後の血清TRH濃度−時間プロファイルを示す。
【図4】図4は、実施例1に記載の閉ループラットモデルにしたがって、NaC8またはNaC10(35mg)強化剤の存在を伴ってTRH 1000μgを十二指腸間に(interduodenal)ボーラス投与した後の血清TRH濃度−時間プロファイルを示す。
【図5】図5は、実施例2に記載の閉ループラットモデルにしたがって、異なるカプリン酸ナトリウム(C10)レベル(10および35mg)を伴うUSPヘパリン(1000IU)の投与後の4時間にわたるAPTT応答を示す。
【図6】図6は、実施例2に記載の閉ループラットモデルにしたがって、異なるカプリル酸ナトリウム(C8)レベル(10mgおよび35mg)の存在下でのUSPヘパリン(1000IU)の投与後の5時間にわたる抗第X因子応答を示す。
【図7】図7は、実施例2に記載の閉ループラットモデルにしたがって、異なるカプリン酸ナトリウム(C10)レベル(10mgおよび35mg)の存在下でのUSPヘパリン(1000IU)の投与後の5時間にわたる抗第X因子応答を示す。
【図8】図8は、実施例2に記載のように本発明にしたがって製造された(a)s.c.USPヘパリン溶液(5000IU);(b)USPヘパリン(90000IU)およびNaC10を含む経口非コーティング即時放出錠剤製剤;(c)USPヘパリン(90000IU)およびNaC8を含む経口非コーティング即時放出錠剤製剤;および(d)USPヘパリン(90000IU)およびカプリン酸ナトリウムを含む経口非コーティング徐放錠剤製剤の投与後の8時間までの時間にわたるイヌにおける抗第X因子応答の平均値を示す。
【図9】図9は、開ループモデルのラット(n=8)に対して、35mgの種々の強化剤、例えばカプリル酸ナトリウム(C8)、ノナン酸ナトリウム(C9)、カプリン酸ナトリウム(C10)、ウンデカン酸ナトリウム(C11)、ラウリン酸ナトリウム(C12)、および強化剤の種々の50:50二成分混合物の存在下で、パルナパリン(parnaparin)ナトリウム(低分子量ヘパリン(LMWH))(1000IU)のリン酸緩衝生理食塩水溶液をラットに十二指腸内投与した後の3時間にわたる抗第X因子応答を示す。参照結果は250IUのパルナパリンナトリウムの皮下投与を含んだ。対照溶液は、いかなる強化剤をも含まずに1000IUのパルナパリンナトリウムを含む溶液の十二指腸内投与を含んだ。
【図10】図10は、種々のレベルのカプリン酸ナトリウム(0.0g(対照)、0.55g、1.1g)を含むロイプロリド(20mg)溶液をイヌに十二指腸内投与した後の8時間にわたるロイプロリドの平均血漿レベルを示す。
【図11】図11は、溶液(10mL)および即時放出錠剤の両剤形として、カプリン酸ナトリウム550mgの存在下でパルナパリンナトリウム(90,000IU)を経口投与した後の8時間にわたるイヌにおける抗第X因子応答の平均値を示す。
【図12】図12は、溶液(240mL)および即時放出錠剤の両剤形として、カプリン酸ナトリウムの存在下でパルナパリンナトリウム(90,000IU)を経口投与した後の24時間にわたるヒトにおける抗第X因子応答の平均値を示す。
【図13】図13は、種々の用量のカプリン酸ナトリウム(0.55g、1.1g、1.65g)の存在下で、種々の用量のパルナパリンナトリウム(20,000IU、45,000IU、90,000IU)を含む15mL溶液を空腸内投与した後の24時間にわたるヒトにおける抗第X因子応答の平均値を示す。
【図14】図14は、(a)カプリン酸ナトリウム0.55gを含む即時放出カプセル、(b)カプリン酸ナトリウム0.55gを含むEudragit Lコーティング即時崩壊錠剤、および(c)強化剤を含まないEudragit Lコーティング即時崩壊錠剤として45,000IUのパルナパリンナトリウムを経口投与した後の8時間にわたるイヌにおける抗第X因子応答の平均値を示す。
【図15】図15は、皮下投与と比較して経口、空腸内、および結腸内(intracolonically)で、45,000IUのLMWHおよびカプリン酸ナトリウム0.55gを同時投与した後の8時間にわたるイヌにおける抗第X因子応答の平均値を示す。
【図16】図16は、種々の製剤のロミデプシンおよび強化剤の十二指腸内投与に関する群平均データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」には、内容によって明らかに別の指定がなされない限り、複数の指示対象が含まれる。ゆえに、例えば、「an enhancer」への言及には2種以上の強化剤の混合物が含まれ、「a DAC inhibitor」への言及には2種以上のDACインヒビターの混合物が含まれ、「an additional drug」への言及には2種以上の追加の薬物の混合物が含まれる、などである。
【0024】
本明細書中で使用される用語「脱アセチル化酵素(deacetylase)」および「DAC」とは、細胞中の任意の脱アセチル化酵素活性(deactylase activity)を表すものとする。特定の実施形態では、脱アセチル化酵素活性はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性である。特定の実施形態では、脱アセチル化酵素活性はチュブリン脱アセチル化酵素(TDAC)活性である。特定の実施形態では、脱アセチル化酵素活性とは、細胞中の他のタンパク質または生物学的分子の脱アセチル化を表す。特定の実施形態では、脱アセチル化酵素活性はタンパク質またはペプチドのリシン残基のε−アミノ基からアセチル基を除去する。
【0025】
本明細書中で使用される用語「ヒストン脱アセチル化酵素」および「HDAC」とは、ヒストンのリシン残基のε−アミノ基からアセチル基を除去する酵素ファミリーのいずれか1つを表すものとする。ヒストン脱アセチル化酵素は細胞増殖に重要な役割を果たすと考えられる。文脈によって特に指定されない限り、用語「ヒストン」とは、任意の種由来の、H1、H2A、H2B、H3、H4、およびH5を含む任意のヒストンタンパク質を表すものとする。ヒストン脱アセチル化酵素にはクラスIおよびクラスII酵素が含まれ、ヒト起源であってもよく、非限定的に、HDAC−1、HDAC−2、HDAC−3、HDAC4、HDAC−5、HDAC−6、HDAC−7、HDAC−8、HDAC−9、HDAC−10、およびHDAC−11が含まれる。特定の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素は哺乳動物供給源(例えばラット、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、霊長類、ヒト、など)由来である。ある特定の実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素はヒト供給源由来である。いくつかの実施形態では、ヒストン脱アセチル化酵素は、原生動物、細菌、または真菌供給源由来である。
【0026】
本明細書中で使用される用語「脱アセチル化酵素インヒビター」、「DACインヒビター」および「薬物」とは、脱アセチル化酵素と相互作用可能で、かつその酵素活性を阻害可能な化合物を表すものとする。「脱アセチル化酵素活性を阻害」との文言は、脱アセチル化酵素が基質からアセチル基を除去する能力を低減させることを意味する。特定の実施形態では、基質はリシン残基のアセチル化ε−アミノ基である。いくつかの実施形態では、そのような脱アセチル化酵素活性の低減は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%である。他の実施形態では、脱アセチル化酵素活性は少なくとも95%または少なくとも99%低減される。好適なDACインヒビターには、例えば、短鎖脂肪酸、例えばブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアートおよびバルプロ酸;ヒドロキサム酸およびそれらの誘導体、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)およびその誘導体、オキサムフラチン(oxamflatin)、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート(suberic bishydroxamate)(SBHA)、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド(N-hydroxy-7-(2-naphthylthio) heptanomide)(HNHA)、ニコチンアミド、スクリプタイド(scriptaid)(SB−556629)、スクリプタード(scriptade)、スプリトマイシン(splitomicin)、ルナシン(lunacin)、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド(pyroxamide)、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041;プロペンアミド、例えば3−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、およびMC 1293;アロイルピロリルヒドロキシアミド、例えばAPHA化合物8;トリコスタチン、例えばトリコスタチンAおよびトリコスタチンC;環状テトラペプチド、例えばトラポキシン、例えばトラポキシンAおよびトラポキシンB、ロミデプシン、アンタナペプチン(antanapeptins)A〜D、HC−トキシン、クラミドシン、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチン(spiruchostatins)、例えばスピルコスタチンA、スピルコスタチンBおよびスピルコスタチンC、サリナミド(salinamides)、例えばサリナミドAおよびサリナミドB、および環状ヒドロキサム酸含有ペプチド(CHAP);ベンズアミド、例えばM344、MS−275、CI−994(N−アセチルジナリン(N-acetyldinaline))、タセジナリンおよびシルチノール(sirtinol);三環式ラクタムおよびスルタム誘導体;アミジオール(amijiol)の酢酸誘導体、有機硫黄化合物、例えばジアリルジスルフィドおよびスルフォラファン;求電子性ケトン、例えばα−ケトアミドおよびトリフルオロメチルケトン;ピメロイルアニリドo−アミノアニリド(PAOA);デプデシン;プサマプリン(psammaplins)、例えばプサマプリンAおよびプサマプリンF;チューバシン(tubacin);クルクミン;ヒスタシン(histacin);6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781;CRA−026440;CG1521;PXD101;G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521が含まれる。用語「DACインヒビター」には、すべてのアナログ、異性体、誘導体、塩、エナンチオマー、ジアステレオマー、立体異性体、互変異性体、およびその他の形式、例えば光学的に純粋なエナンチオマーまたは立体異性体(steroeisomers)、混合物、ラセミ化合物、ならびにそのすべての製薬上許容しうる誘導体も含まれる。一実施形態では、DACインヒビターはロミデプシンである。
【0027】
本明細書中で使用される用語「ロミデプシン」とは以下の化学構造の天然産物を表す:
【化2】

【0028】
ロミデプシンは強力なHDACインヒビターであり、当技術分野において名称FK228、FR901228、NSC630176、またはデプシペプチドとの呼称によっても知られている。ロミデプシンの特定および製造は米国特許第4,977,138号に記載されている。該文献は参照により本明細書中に組み入れられる。分子式はC2436であり、分子量は540.71である。ロミデプシンは化学名、(1S,4S,10S,16E,21R)−7−[(2Z)−エチリデン]−4,21−ジイソプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタノンを有する。ロミデプシンにはCASナンバー128517-07-7が割り当てられている。結晶性形状では、ロミデプシンは典型的に白色〜淡黄色がかった白色の結晶または結晶性粉末である。用語「ロミデプシン」は、この化合物およびその任意の製薬上許容しうる塩の形式を包含する。特定の実施形態では、用語「ロミデプシン」には、そのプロドラッグ、エステル、保護された形式、および誘導体も含まれる。
【0029】
薬物は任意の好適な相状態で提供してよく、それには固体、液体、溶液、懸濁液、などが含まれる。固体粒子形式で提供される場合、粒子は任意の好適なサイズまたは形態であってよく、1種以上の結晶性、半結晶性、および/または非結晶性形式をとってよい。薬物は、ナノまたはマイクロ粒子薬物送達系に含ませることができ、該系では、薬物はナノまたはマイクロ粒子であるか、またはその中に取り込まれているか、それによってカプセル化されているか、それに結合しているか、もしくは別の様式でそれと結び付いている。
【0030】
本明細書中で使用される「DACインヒビターの治療上有効量」とは、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて治療的に有用な応答を誘発するDACインヒビターの量を表す。特定の実施形態では、該量は、望まれない細胞(例えば癌性細胞、炎症細胞、望ましくない細胞)の増殖を阻害するために十分な量である。
【0031】
本明細書中で使用される用語「強化剤」とは、動物、例えばヒトにおいてGITを横切る薬物の輸送を増強可能な化合物または化合物の混合物を表す。特定の実施形態では、強化剤は、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸、もしくはその塩、または中鎖脂肪酸誘導体、もしくはその塩であり;ただし、(i)該強化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、6〜20炭素原子の該鎖長はカルボン酸部分の鎖長に関し、および(ii)該強化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1個のアルコキシ基は6〜20炭素原子の炭素鎖長を有することを条件とする。特定の実施形態では、強化剤は中鎖脂肪酸のナトリウム塩である。中鎖脂肪酸の他の塩を使用してもよく、それにはアンモニウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、およびカルシウム塩が含まれる。ある特定の実施形態では、強化剤はカプリン酸ナトリウムである。特定の実施形態では、強化剤は室温で固体である。
【0032】
本明細書中で使用される用語「中鎖脂肪酸誘導体」には、脂肪酸塩、エステル、エーテル、酸ハロゲン化物、カルバミン酸塩、炭酸塩、アミン、尿素、アミド、無水物、カルボン酸エステル、ニトリル、ならびにグリセリド、例えばモノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドが含まれる。炭素鎖は飽和または不飽和の種々の程度によって特徴付けられる。換言すれば、炭素鎖は、例えば、完全に飽和であるかまたは部分的に不飽和であって(すなわち1個以上の炭素−炭素二重または三重結合を含んで)よい。用語「中鎖脂肪酸誘導体」はまた、酸基(または誘導体)の反対の炭素鎖の末端が、上述の部分(例えばエステル、エーテル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシル(hydoxyl)、カルバミン酸、炭酸、アミン、尿素、アミド、無水物、カルボン酸エステル、ニトリル、またはグリセリド部分)の1つで官能化されている中鎖脂肪酸を包含するものとする。ゆえにそのような二官能性脂肪酸誘導体には、例えば二価酸およびジエステル(機能的部分が同種である)が含まれ、また、アミノ酸およびアミノ酸誘導体などの異なる機能的部分を含む二官能性化合物、例えば、酸またはそのエステルもしくは塩の反対の脂肪酸炭素鎖の末端にアミド部分を含む中鎖脂肪酸またはそのエステルもしくは塩が含まれる。典型的な塩には、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、などが含まれる。塩は有機塩、例えばアンモニウム塩であってもよい。
【0033】
本明細書中で使用される「強化剤の治療上有効量」とは、経口投与薬物(例えばロミデプシンなどのDACインヒビター)の治療上有効量の取り込みを可能にする強化剤の量を表す。浸透性が不十分な薬物の胃腸送達を増強する強化剤の有効性は投与部位に依存することが示されている(実施例6、7および12を参照のこと)。
【0034】
本発明の強化剤は、一時的かつ可逆的様式でGIT細胞管壁と相互作用し、浸透性を高め、さもなければ浸透性が不十分な分子の吸収を促進する。特定の実施形態では、強化剤には、(i)中鎖脂肪酸およびその塩、(ii)グリセロールおよびプロピレングリコールの中鎖脂肪酸エステル、および(iii)胆汁酸塩が含まれる。一実施形態では、強化剤は、中鎖脂肪酸塩、エステル、エーテル、アミド、または中鎖脂肪酸の他の誘導体であり、該強化剤は、好ましくは、室温で固体であり、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有し;ただし(i)該強化剤が中鎖脂肪酸のエステルである場合、8〜14炭素原子の該鎖長はカルボン酸部分の鎖長に関し、および(ii)該強化剤が中鎖脂肪酸のエーテルである場合、少なくとも1個のアルコキシ基は8〜14炭素原子の炭素鎖長を有することを条件とする。特定の実施形態では、鎖長は偶数の炭素原子(例えば8、10、12、14)である。他の実施形態では、鎖長は奇数の炭素原子(例えば9、11、13、15)である。特定の実施形態では、炭素鎖長は8である。他の実施形態では、炭素鎖長は10である。さらに他の実施形態では、炭素鎖長は12である。特定の実施形態では、強化剤はカプリル酸またはその塩形式である。特定の実施形態では、強化剤はカプリン酸またはその塩形式である。特定の実施形態では、強化剤はラウリン酸またはその塩である。ある特定の実施形態では、強化剤は中鎖脂肪酸のナトリウム塩であり、該中鎖脂肪酸は8〜14炭素原子の炭素鎖長を有し;該ナトリウム塩は室温で固体である。別の実施形態では、強化剤はカプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、またはラウリン酸ナトリウムである。薬物および強化剤は1:100,000〜100:1(薬物:強化剤)の比で存在させてよい。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:10000〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:5000〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1000〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1000〜1:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:500〜1:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:100〜1:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:10〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1〜100:1の範囲である。
【0035】
本明細書中で使用される用語「速度制御ポリマー材料(rate controlling polymer material)」には、本発明の固体経口投与剤形からの薬物の放出を制御可能な親水性ポリマー、疎水性ポリマー、および親水性および/または疎水性ポリマーの混合物が含まれる。ポリマーは合成または天然ポリマーであってよい。好適な速度制御ポリマー材料には、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、およびヒドロキシプロピルメチル酢酸セルローススクシナート;ポリ(エチレン)オキシド;アルキルセルロース、例えばエチルセルロースおよびメチルセルロース;カルボキシメチルセルロース;親水性セルロース誘導体;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン;酢酸セルロース、例えば酢酸セルロースブチラート、酢酸セルロースフタラート、および酢酸セルローストリメリッタート;ポリ酢酸ビニル、例えばポリ酢酸ビニル;ポリ酢酸ビニルフタラート、およびポリビニルアセタールジエチルアミノアセタート;ポリアクリラート、ポリエステル、ポリ無水物、およびポリアルキルメタクリラートからなる群より選択されるポリマー材料が含まれる。他の好適な疎水性ポリマーには、アクリル酸またはメタクリル酸およびそのそれぞれのエステルから誘導されるポリマーおよび/またはコポリマー、ゼイン、ワックス、シェラックおよび硬化植物油が含まれる。
【0036】
本発明の実施に特に有用な速度制御ポリマー材料は、ポリアクリル酸、ポリアクリラート、ポリメタクリル酸およびポリメタクリラートポリマー、例えばEudragit(登録商標)の商品名の下で販売されているポリマー(Rohm GmbH, Darmstadt, Germany)、特にEudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)L100-55およびAcryl-Eze(登録商標)MP(Colorcon, West Point, PA)コーティング材料およびその混合物である。いくつかの前記ポリマーは、薬物が放出される部位を制御するための遅延放出ポリマーとして使用することができる。それらには、ポリメタクリラートポリマー、例えばEudragit(登録商標)の商品名の下で販売されているポリマー、特にEudragit(登録商標)L、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)L100-55、およびAcryl-Eze(登録商標)MPコーティング材料およびその混合物が含まれる。
【0037】
本発明の固体経口投与剤形は、錠剤、粒子(例えばマイクロ粒子、ナノ粒子)、またはカプセルであってよい。好ましい固体経口投与剤形は、胃での薬物および強化剤の放出を最小にし、ゆえにその中の局所強化剤濃度の希釈を最小にし、かつ腸で薬物および強化剤を放出させる遅延放出剤形である。特に好ましい固体経口投与剤形は遅延放出高速開始剤形(delayed release rapid onset dosage form)である。そのような剤形は、胃での薬物および強化剤の放出を最小にし、ゆえにその中の局所強化剤濃度の希釈を最小にするが、腸の適切な部位に到達すると高速に薬物および強化剤を放出し、吸収部位での薬物および強化剤の局所濃度を最大にすることによって薬物の送達を最大にする。薬物および強化剤は典型的に同じ吸収部位に存在する。特定の実施形態では、腸の所望の部位での薬物および/または強化剤の溶解度を高める可溶化剤を使用する。
【0038】
本明細書中で使用される用語「錠剤」には、非限定的に、即時放出(IR)錠剤、徐放(SR)錠剤、マトリックス錠剤、多層錠剤、多層マトリックス錠剤、持続放出錠剤、遅延放出錠剤、およびパルス放出錠剤(pulsed release tablets)が含まれ、それらのいずれかまたはすべては、場合により、1種以上のコーティング材料、例えばポリマーコーティング材料またはワックスコーティング材料、例えば腸溶コーティング、速度制御コーティング、半透性コーティング、などでコーティングしてよい。用語「錠剤」には浸透性送達系も含まれ、該系では、DACインヒビターはオスマゲント(osmagent)(および場合により他の賦形剤)と組み合わされ、半透膜でコーティングされ、該半透膜は薬物化合物が放出される穴(orifice)を限定する。本発明の実施に特に有用な錠剤固体経口投与剤形には、IR錠剤、SR錠剤、コーティングIR錠剤、マトリックス錠剤、コーティングマトリックス錠剤、多層錠剤、コーティング多層錠剤、多層マトリックス錠剤およびコーティング多層マトリックス錠剤からなる群より選択される剤形が含まれる。特定の実施形態では、錠剤の剤形は腸溶コーティング錠剤の剤形である。特定の実施形態では、錠剤の剤形は腸溶コーティング高速開始錠剤の剤形である。
【0039】
本明細書中で使用される用語「カプセル」には、即時放出カプセル、徐放カプセル、コーティング即時放出カプセル、コーティング徐放カプセル、遅延放出カプセル、およびコーティング遅延放出カプセルが含まれる。一実施形態では、カプセルの剤形は腸溶コーティングカプセルの剤形である。別の実施形態では、カプセルの剤形は腸溶コーティング高速開始カプセルの剤形である。
【0040】
本明細書中で使用される用語「粒子」または「多粒子(multiparticulate)」とは、サイズまたは形態にかかわらず、複数の離散粒子、顆粒、ペレット、またはミニタブレット、およびその混合物または組み合わせを表す。経口形式が多粒子カプセルである場合、該多粒子材料を含有するためにゼラチン硬カプセルまたはゼラチン軟カプセルを好適に使用することができる。あるいは、多粒子材料を含有するためにサシェを好適に使用することができる。多粒子材料は、速度制御ポリマー材料を含む層でコーティングしてよい。多粒子経口投与剤形には、送達対象の異なる物質を有する粒子、顆粒、ペレット、またはミニタブレットの2以上の集団の混合物を含ませてよい。例えば、粒子の一集団には強化剤を含ませ、別の粒子集団には薬物(例えばロミデプシン)を含ませてよい。多粒子経口投与剤形には、異なるin vitroおよび/またはin vivo放出特性を有する粒子、顆粒、ペレット、またはミニタブレットの2以上の集団の混合物を含ませてもよい。例えば、多粒子経口投与剤形には、好適なカプセル中に含まれる即時放出成分および遅延放出成分の混合物を含ませてよい。一実施形態では、多粒子剤形は遅延放出高速開始ミニタブレットを含むカプセルを含む。別の実施形態では、多粒子剤形は即時放出ミニタブレットを含む遅延放出カプセルを含む。別の実施形態では、多粒子剤形は遅延放出顆粒を含むカプセルを含む。さらに別の実施形態では、多粒子剤形は即時放出顆粒を含む遅延放出カプセルを含む。
【0041】
別の実施形態では、多粒子を1種以上の補助賦形剤材料とともに圧縮して錠剤剤形、例えば単層または多層錠剤にしてよい。典型的に、多層錠剤は、同じ放出特性または異なる放出特性を有する同じレベルまたは異なるレベルの同じ活性成分を含む2層を含む。あるいは、多層錠剤は各層中に異なる活性成分(群)を含有してよい。そのような錠剤は、単層であれ多層であれ、場合により、制御放出ポリマーでコーティングして、追加の制御放出特性をもたらすようにすることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を以下に記載する。各事例で、DACインヒビターは治療効果を誘発するために十分な任意の量で存在させてよい。当業者に理解されるように、DACインヒビターの実際の使用量は、とりわけ、使用されるDACインヒビターの効力、患者の詳細およびDACインヒビターが使用される治療の目的に依存する。ロミデプシンがDACインヒビターである実施形態では、ロミデプシンの使用量は約0.5mg/m〜約300mg/mの範囲であってよく、約1ng/mL〜約500ng/mLの血漿濃度を達成するために好適な量で投与してよい。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約0.5mg/m〜約10mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約1mg/m〜約25mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約10mg/m〜約50mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約25mg/m〜約200mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約25mg/m〜約75mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約25mg/m〜約100mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約50mg/m〜約150mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約100mg/m〜約200mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は約200mg/m〜約300mg/mの範囲である。特定の実施形態では、ロミデプシンの使用量は300mg/mより多い。強化剤は、経口投与による治療上有効量の薬物の取り込みを可能にするために十分な任意の量で好適に存在させる。一実施形態では、薬物および強化剤は1:100,000〜100:1(薬物:強化剤)の比で存在する。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:10000〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:5000〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1000〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1000〜1:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:500〜1:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:100〜1:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:10〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1〜10:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は50:1〜100:1の範囲である。特定の実施形態では、薬物と強化剤の比は1:1〜100:1の範囲である。使用される薬物と強化剤の実際の比は、とりわけ、具体的薬物の効力および/または具体的強化剤の強化活性に依存する。
【0043】
一実施形態では、DACインヒビターおよび、GIT細胞管壁での該DACインヒビターの吸収を促進するための強化剤として、6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸、もしくはその塩形式、または中鎖脂肪酸誘導体、もしくはその塩形式を含む医薬組成物およびそれからなる固体経口投与剤形を提供する。特定の実施形態では、強化剤および/または組成物は室温で固体である。そのような一実施形態では、HDACインヒビターはロミデプシンである。
【0044】
別の実施形態では、DACインヒビターを含み、かつ、GIT細胞管壁での該HDACインヒビターの吸収を促進するための強化剤として、組成物中に存在する唯一の強化剤が6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸、もしくはその塩形式、または中鎖脂肪酸誘導体、もしくはその塩形式である医薬組成物およびそれからなる経口投与剤形を提供する。そのような一実施形態では、DACインヒビターはロミデプシンである。特定の実施形態では、組成物はDACインヒビターとしてロミデプシンを含み、かつ強化剤としてカプリル酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、組成物はDACインヒビターとしてロミデプシンを含み、かつ強化剤としてカプリン酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、組成物はロミデプシンおよびラウリン酸ナトリウムを含む。任意の前記組成物は、他の製薬上許容しうる賦形剤、例えば充填剤、放出キネティクスを制御するための物質、湿潤剤、などを含んでよい。特定の実施形態では、賦形剤はポリビニルピロリドンである。
【0045】
別の実施形態では、本発明の組成物を含む多層錠剤を提供する。典型的にそのような多層錠剤は、即時放出形式の薬物(例えばロミデプシン)および強化剤を含む第一の層および改変された放出形式の薬物(例えばロミデプシン)および強化剤を含む少なくとも第二の層を含む。本明細書中で使用される用語「改変された放出(modified release)」には、患者に投与された際の、薬物の徐放、遅延放出、または別の様式の制御放出が含まれる。別の実施形態では、多層錠剤は薬物を含む第一の層および強化剤を含む少なくとも第二の層を含んでよい。第一および少なくとも第二の層中の薬物は同じであっても異なっていてもよく、各層は、独立して、薬物および/または強化剤の放出を改変するために選択される別の賦形剤を含んでよい。ゆえに薬物および強化剤はそれぞれの第一および少なくとも第二の層から同じ割合または異なる割合で放出される。あるいは、多層錠剤の各層は同じ量または異なる量の両薬物および強化剤を含んでよい。そのような多層錠剤の一実施形態では、薬物であるDACインヒビターはロミデプシンである。錠剤に含まれる他の薬物は細胞障害性物質または抗増殖性物質であってよい。特定の他の実施形態では、他の薬物は抗炎症剤である。
【0046】
さらに別の実施形態では、本発明は、HACインヒビター(例えばロミデプシン)および強化剤を含む多粒子組成物を提供する。多粒子組成物には、粒子、顆粒、ペレット、ミニタブレット、またはその組み合わせを含ませてよく、薬物および強化剤は、多粒子組成物を構成する同じ集団または異なる集団の粒子、顆粒、ペレット、またはミニタブレット中に含ませてよい。多粒子の実施形態では、多粒子材料を含有するためにサシェおよびカプセル、例えばゼラチン硬カプセルまたはゼラチン軟カプセルを好適に使用することができる。多粒子剤形には、異なるin vitroおよび/またはin vivo放出特性を有する粒子、顆粒、ペレット、またはミニタブレットの2以上の集団の混合物を含ませてよい。例えば、多粒子剤形には、好適なカプセル中に含まれる即時放出成分および遅延放出成分の混合物を含ませてよい。そのような多粒子の一実施形態では、DACインヒビターはロミデプシンである。特定の実施形態では、強化剤はカプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、またはラウリン酸ナトリウムである。ある特定の実施形態では、強化剤はカプリン酸ナトリウムである。
【0047】
任意の上述の実施形態の事例で、制御放出コーティングを最終剤形(カプセル、錠剤、多層錠剤、多粒子組成物、など)に塗布してよい。制御放出コーティングは、典型的に、上で定義される速度制御ポリマー材料を含む。そのようなコーティング材料の溶解特性はpH依存性であってもpHに非依存性であってもよい。
【0048】
本発明の固体経口投与剤形の種々の実施形態は、補助賦形剤材料、例えば、希釈剤、潤滑剤、崩壊剤、可塑剤、粘着防止(anti-tack)剤、湿潤剤、界面活性剤、塩、不透明化剤、増量剤、バッファー、色素、香味物質、などをさらに含んでよい。当業者に理解されるように、賦形剤の厳密な選択およびその相対量は最終剤形に、ある程度、依存する。
【0049】
好適な希釈剤には、例えば、製薬上許容しうる不活性充填剤、例えばソルビトール、微結晶性セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、糖、および/または任意の前記希釈剤の混合物が含まれる。希釈剤の例には、例えば、ソルビトール、例えばParteck(登録商標)SI 400(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)、微結晶性セルロース、例えばAvicelの商品名の下で販売されている微結晶性セルロース(FMC Corp., Philadelphia, Pa.)、例えばAvicelTM pH101、AvicelTM pH102およびAvicelTM pH112;ラクトース、例えばラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatose DCL21;二塩基性リン酸カルシウム、例えばEmcompress(登録商標)(JRS Pharma, Patterson, NY);マンニトール;デンプン;および糖、例えばスクロースおよびグルコースが含まれる。好適な潤滑剤、例えば圧縮対象の粉末の流動性に作用する物質は、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えばAerosilTM 200;タルク;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸カルシウムである。好適な崩壊剤には、例えば、弱く架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウムならびにその組み合わせおよび混合物が含まれる。好適な湿潤剤には、ポリマー、炭水化物、脂質、溶媒、または小分子、例えば非限定的に、アルコールおよびポリオール、例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール(transcutol)、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド(trgycerides)およびその誘導体;グリセリドシクロデキストリンおよびシ
クロデキストリン誘導体;約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えばテトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテルまたはメトキシPEG;アミドおよび他の窒素含有化合物、例えば2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドン;エステル、例えばプロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセタート、プロピレングリコールジアセタート、ε−カプロラクトンおよびその異性体、δ−バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトンおよびその異性体;および当技術分野において公知の他の可溶化剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、モノオクタノイン(monooctanoin)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、および水が含まれる。特定の実施形態では、可溶化剤はポリビニルピロリドン(PVP)である。
【実施例】
【0050】
実施例1 − TRH含有錠剤
(a) Caco−2単層
細胞培養:1%(v/v)非必須アミノ酸;10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)4.5g/Lグルコース中でCaco−2細胞を培養した。37℃、5% COで湿度95%中で細胞を培養した。標準組織培養フラスコ中で細胞を生育して増殖させ、100%コンフルエントに到達したら継代した。次いでCaco−2細胞をポリカーボネートフィルターインサート(Costar;直径12mm,孔サイズ0.4μm)上に5×10細胞/cmの密度で播種し、6ウェル培養プレート中でインキュベートし、1日おきに培地を変えた。フィルター上に播種されて20日〜30日目の間の継代30〜40の時点でのコンフルエント単層をこれらの研究全体にわたって使用した。
【0051】
経上皮輸送研究:H−TRHの輸送(頂端(apucal)から側底(basolateral)への流動)に対する種々のMCFAのナトリウム塩の効果を以下のように試験した:15.0μCi/mL(0.2μM)の3H−TRHをTRH流動実験の0時点で頂端側に加えた。輸送実験は、25mM N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)バッファー、pH7.4を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で37℃で実施した。表1に示すように、溶解度の変動に起因して、種々の濃度の異なるMCFAナトリウム塩および種々の頂端バッファーを使用した。すべての事例で、側底チャンバーは通常のHBSS+HEPESを含んだ。
【表1】

【0052】
細胞培養培地を除去した後、予温したHBSS(37℃)を頂端側に1mL、側底側に2mL含むウェルに単層を入れた。37℃で30分間単層をインキュベートした。そして0時点で、頂端側HBSSを、強化剤化合物の存在および不存在下で放射標識化合物を含む対応する頂端側試験溶液で置き換えた。単層の完全性をモニタリングするために、EvomとともにMillicell ERS chopstix apparatus(Millipore (U.K.) Ltd., Hertfordshire, UK)を使用して、単層の経上皮電気抵抗(TEER)を0時点および30分間隔で120分まで測定した。プレートをオービタルシェーカー上でインキュベーター(37℃)に入れた。単層を横切る輸送の後に30分間隔で120分まで側底サンプリング(1mL)を行った。各30分間隔で、予温した新鮮なHBSS 2mLを含む新規ウェルに各インサートを移した。t=0およびt=120分の時点で10μLサンプルを採取することによって頂端側の保存放射能を決定した。シンチレーション液(10mL)を各サンプルに加え、Wallac System 1409シンチレーションカウンターで各サンプルの毎分の崩壊を測定した。各時点で頂端側および側底側溶液に関するH−TRH濃度の平均値を算出した。Arturssonによって報告されている方法を使用して見かけの透過係数を算出した(Artursson P., J. Pharm. Sci. 79:476-482 (1990)を参照のこと)。
【0053】
図1は、H−TRHを用いて、Caco−2単層において2時間にわたる、TEER(Ωcm)に対するC8、C10、C12、C14、C18、およびC18:2ナトリウム塩の効果を示す。C8、C10、C14、およびC18に関するデータは、対照と比較してTEERの最小の低下しか示さない。C12に関するデータはいくらかの細胞損傷(TEERの低下)を示すが、この低下はおそらくここで使用される高濃度の強化剤に起因する。
【0054】
図2は、Caco−2単層においてそれを横切るH−TRHに関するPappに対するC8、C10、C12、C14、C18、およびC18:2ナトリウム塩の効果を示す。対照と比較して、C8、C10、C12、およびC14のナトリウム塩は、使用された濃度で、透過定数Pappのかなりの増加を示した。C12塩に関して観察される高いPapp値は、この高い強化剤濃度での細胞損傷を示しているかもしれないことが知られている。
【0055】
ミトコンドリア毒性アッセイ:MDH存在下でのテトラゾリウム塩の色の変化に基づく方法を使用して、細胞生存度のマーカーとしてミトコンドリアデヒドロゲナーゼ(MDH)活性を評価した。細胞を回収し、カウントし、約10細胞/mLの密度で96ウェルプレートに播種した(細胞懸濁液100μL/ウェル)。次いで5%COを含む加湿雰囲気中で37℃で24時間、細胞をインキュベートした。いくつかのウェルを表1に示される濃度の各MCFAナトリウム塩溶液で処理し、プレートを2時間インキュベートした。インキュベーション後、10μLのMTT標識試薬を各ウェルに4時間加えた。可溶化バッファー(100μL;表1を参照のこと)を各ウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートした。分光光度計(Dynatech MR7000)を使用して各サンプルの570nmでの吸光度を測定した。
【0056】
(b) in vivo投与(閉ループラットモデル)
Doluisioらの方法(Doluisio J. T., et al.: Journal of Pharmaceutical Science (1969), 58, 1196-1200を参照のこと)およびBraydenらの方法(Brayden D.: Drug Delivery Pharmaceutical News (1997) 4(1)を参照のこと)からin vivoラット閉ループ研究を改変した。オスWistarラット(体重範囲250g〜350g)を塩酸ケタミン/アセプロマジンで麻酔した。腹部で正中切開を施し、周囲の血管への損傷を回避するよう注意しながら、十二指腸のセグメント(7〜9cmの組織)を幽門括約筋から約5cm遠位で単離した。37℃にあたためられたサンプル溶液(C8またはC10(35mg)およびTRH(500μgおよび1000μg)を含むPBS)および対照(TRHのみ(500μgおよび1000μg)を含むPBS)を、26G針を使用して、十二指腸セグメントの管腔内に直接投与した。(サンプルおよび対照に関する)すべての十二指腸内投与の容量は1mL/kgであった。セグメントの近位端を結紮し、ループに等張生理食塩水(37℃)をスプレーして水分を提供し、次いで膨張を回避しながら腹腔内に戻した。切開部を外科用クリップで閉じた。参照として、一群の動物にPBS中のTRH(0.2mL中100μg)を皮下注射によって投与した。
【0057】
図3は、閉ループラットモデルにしたがって、NaC8またはNaC10(35mg)強化剤の存在を伴ってTRH 500μgを十二指腸間にボーラス投与した後の血清TRH濃度−時間プロファイルを示す。図4は、閉ループラットモデルにしたがって、NaC8またはNaC10(35mg)強化剤の存在を伴ってTRH 1000μgを十二指腸間にボーラス投与した後の血清TRH濃度−時間プロファイルを示す。図3および4から、各事例で強化剤が存在すると、対照TRH溶液と比べてTRHの血清レベルが顕著に増加することがわかる。このことは、強化剤の存在下で薬物の吸収が増加することを示す。
【0058】
(c) 錠剤化
溶液中のTRHに関するNaC8およびNaC10の増強効果が確立されたら、即時放出(IR)および徐放(SR)TRH錠剤などを製造することができる。以下の表2および3でIRおよびSR製剤を詳説する。
【表2】

【表3】

【0059】
実施例2
ヘパリン含有錠剤
(a) 閉ループラットセグメント
上記実施例1(a)で実施した手順を繰り返した。TRHの代わりにUSPヘパリンを使用し、十二指腸内ではなく回腸内投薬を行った。腹部で正中切開を施し、回腸の遠位端を定めた(回腸−盲腸連結部から約10cm近位)。周囲の血管への損傷を回避するよう注意しながら、7〜9cmの組織を単離し、遠位端を結紮した。Biotrack 512凝固モニターの試験カートリッジに一滴の(尾動脈から新たにサンプルされた)全血を入れることによって、活性型プロトロンビン時間(APTT)応答によって示されるヘパリン吸収を測定した。種々の時点でAPTT測定を行った。図5は、異なるカプリン酸ナトリウム(C10)レベル(10および35mg)でのUSPヘパリン(1000iu)のAPTT応答を示す。血流へのヘパリン吸収の指標としてAPTT応答を使用すると、強化剤を含まない対照ヘパリン溶液と比較して、カプリン酸ナトリウムの存在下で吸収が顕著に増加することが明らかである。
【0060】
クエン酸塩添加血液サンプルを3000rpmで15分間遠心分離し、抗第X因子分析用の血漿を得た。図6は、カプリル酸ナトリウム(C8、10mgおよび35mg)の存在下でのUSPヘパリン(1000iu)の抗第X因子応答を示す。図7は、カプリン酸ナトリウム(C10、10mgおよび35mg)の存在下でのUSPヘパリン(1000iu)の抗第X因子応答を示す。各事例で対照は強化剤を含まない同ヘパリン濃度の溶液である。NaC8(35mg用量)およびNaC10(10mgおよび35mgの両用量)に関して観察された抗第X因子活性の顕著な増加は、対照ヘパリン溶液と比較して、ヘパリン吸収の増加を示す。
【0061】
(b) 錠剤化
(i) IR錠剤
ヘパリンナトリウムUSP(197.25IU/mg,Scientific Protein Labs., Waunkee, Wis.供給)および強化剤(カプリル酸ナトリウム,NaC8;カプリン酸ナトリウム,NaC10,Napp Technologies, New Jersey供給)を含む即時放出(IR)錠剤を、表4に詳説される処方にしたがって、Manesty(E)単一錠剤プレスを使用して混合物を直接圧縮することによって製造した。以下のように混合物を製造した:ヘパリン、強化剤、および錠剤賦形剤(適用可能である場合、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを除く)を量り分けて容器に入れた。コロイド状二酸化ケイ素が存在する場合、それを425μmのふるいに通してふるい分けして容器に入れ、その後、混合物を4分間混合し、ステアリン酸マグネシウムを加えてさらに1分間混合した。
【表4】

【0062】
ヘパリンのアズール色素測定に基づくヘパリンアッセイを使用して、上記で製造された錠剤の効力を試験した。アッセイ対象のサンプルをアズールA色素溶液に加え、626nmでのサンプル溶液の吸光度からヘパリン含量を算出した。表4に詳説される選択されたバッチの錠剤データおよび効力値を表5に挙げる。この実施例に基づくIR錠剤の、pH7.4のリン酸バッファー中の溶解プロファイルをヘパリンアッセイ、種々の時点でのサンプリングによって決定した。
【0063】
ヘパリン/カプリル酸ナトリウム:バッチ1および2の錠剤は迅速な放出をもたらし、15分で100%の薬物を放出した。バッチ4の錠剤もまた迅速な放出をもたらし、30分で100%の放出をもたらした。
【0064】
ヘパリン/カプリン酸ナトリウム:バッチ5および6の錠剤は15分で100%の薬物を迅速に放出した。
【表5】

【0065】
(ii) SR錠剤
上記(i)で使用された手順と同じ手順を使用して、表6に示される処方にしたがって徐放(SR)錠剤を製造した。上記(i)と同じ手順を使用して、制御放出錠剤の効力を決定した。選択されたバッチに関する錠剤の詳細および効力を表7に示す。この実施例に基づくSR錠剤の溶解プロファイルをpH7.4でのヘパリンアッセイ、種々の時点でのサンプリングによって決定した。
【0066】
ヘパリン/カプリル酸ナトリウム:バッチ8、9、および11の溶解データを表8に示す。このデータから、15% Methocel K100LVを含み、5%デンプングリコール酸ナトリウムの存在および不存在下のヘパリン/カプリル酸ナトリウムSR錠剤(バッチ8および9)が持続的放出をもたらし、3〜4時間の間で100%放出が生じたことがわかる。10%マンニトールを維持するバッチ11はより速い放出をもたらした。
【0067】
ヘパリン/カプリン酸ナトリウム:バッチ13および14の溶解データを表8に示す。これらのデータから、20% Methocel K100LVを含むヘパリン/カプリン酸ナトリウムSR錠剤(バッチ13)が6時間にわたる薬物化合物の持続的放出を示したことがわかる。Methocel K100LVの代わりにMethocel K15Mが使用された場合(バッチ14)、8時間後に薬物化合物の放出は完了していなかった。
【表6】

【表7】

【表8】

【0068】
(iii) 腸溶コーティング錠剤
バッチ7および15の錠剤を、表9に詳説されるコーティング溶液で腸溶コーティングした。サイドベントコーティングパン(Freund Hi-Coater)を使用して5%w/wコーティング溶液で錠剤をコーティングした。VanKel崩壊テスターVK100E4635で崩壊試験を実施した。崩壊媒体は最初は疑似胃液pH1.2で1時間であり、次いでリン酸バッファーpH7とした。記録された崩壊時間はリン酸バッファーpH7.4への導入から完全崩壊までの時間であった。バッチ7の腸溶コーティング錠剤の崩壊時間は34分24秒であり、バッチ15の腸溶コーティング錠剤では崩壊時間は93分40秒であった。
【表9】

【0069】
(c) イヌでの研究
上記表5および6のバッチ3、7および15の錠剤を一回量クロスオーバー試験において5匹のイヌの群に経口投与した。各群に、(1)90000IUヘパリンおよびNaC10強化剤550mgを含む非コーティングIR錠剤(バッチ7)を経口投与で;(2)90000IUヘパリンおよびNaC8強化剤550mgを含む非コーティングIR錠剤(バッチ3)を経口投与で;(3)90000IUヘパリンおよびNaC10強化剤550mgを含む非コーティングSR錠剤(バッチ15)を経口投与で;および(4)ヘパリン溶液(5000IU,対照)を皮下(s.c.)投与で投与した。種々の時点で頸静脈から抗第X因子分析用の血液サンプルを回収した。処置前後のすべての動物の臨床評価では、被験体に対する副作用は示されなかった。図8は、s.c.ヘパリン溶液対照とともに、各処置に関する抗第X因子応答の平均値を示す。図8のデータは、本発明のすべての製剤に関する血漿抗第X因子活性の増加を示す。この結果は、NaC8およびNaC10強化剤の両方を使用する生物活性ヘパリンの送達の成功を示す。IR製剤および等価の用量のヘパリンを使用した場合、投与されるNaC8と比べてNaC10が低用量である(NaC10用量はNaC8の用量の半分であった)にもかかわらず、NaC10強化剤の場合に大きい抗第X因子応答が観察された。抗第X因子応答は、SR錠剤の使用により、IR製剤と比較して、より長期間のプロファイルにわたって持続させることができる。
【0070】
実施例3
ラットにおける十二指腸内投与後の低分子量ヘパリン(LMWH)の全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
オスWistarラット(250g〜350g)を、筋肉内注射によって投与される塩酸ケタミン(80mg/kg)およびマレイン酸アセプロマジン(3mg/kg)の混合物で麻酔した。さらに必要に応じてハロタンガスを動物に投与した。腹部で正中切開を施し、十二指腸を単離した。リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で再調製された強化剤の存在または不存在下でパルナパリンナトリウム(LMWH)(Opocrin SBA, Modena, Italy)を含む試験溶液を、幽門から約10〜12cmの腸に挿入されたカニューレを経由して投与した(1mL/kg)。この手順の間、生理食塩水で腸を湿った状態に保った。薬物投与後、腸のセグメントを慎重に腹部に戻し、外科用クリップを使用して切開部を閉じた。非経口参照溶液(0.2mL)を頸の後ろのヒダ内に皮下投与した。
【0071】
血液サンプルを尾動脈から種々の間隔で採取し、血漿抗第X因子活性を測定した。図9は、開ループモデルのラット(n=8)に、35mgの異なる強化剤[カプリル酸ナトリウム(C8)、ノナン酸ナトリウム(C9)、カプリン酸ナトリウム(C10)、ウンデカン酸ナトリウム(C11)、ラウリン酸ナトリウム(C12)]および強化剤の異なる50:50二成分混合物の存在下で、パルナパリンナトリウム(LMWH)(1000IU)のリン酸緩衝生理食塩水溶液をラットに十二指腸内投与した後の、3時間にわたる抗第X因子応答の平均値を示す。参照結果は250IUのパルナパリンナトリウムの皮下投与を含んだ。対照溶液は、いかなる強化剤も含まずに1000IUのパルナパリンナトリウムを含む溶液の十二指腸内投与を含んだ。
【0072】
図9は、強化剤の不存在下でのLMWHの全身送達が、ラットへの十二指腸内投与後に相対的に不十分であるが;中鎖脂肪酸のナトリウム塩を同時投与すると、ラット腸からのLMWHの全身送達が顕著に増加することを示す。
【0073】
実施例4
イヌにおける十二指腸内投与後のロイプロリドの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
ビーグル犬(10〜15Kg)をメデトミジン(80μg/kg)で沈静させ、口、食道、および胃を経由して十二指腸に内視鏡を挿入した。脱イオン水中で再調製された強化剤の存在または不存在下で酢酸ロイプロリド(Mallinckrodt Inc, St. Louis, Mo.)を含む試験溶液(10mL)を、内視鏡によって十二指腸内投与した。内視鏡を除去した後、アチパメゾール(400μg/kg)を使用して鎮静を回復させた。滅菌水0.5mL中で再調製されたロイプロリド1mgを含む非経口参照溶液をそれぞれ静脈内および皮下投与した。
【0074】
種々の時点で頸静脈から血液サンプルを採取し、血漿ロイプロリドレベルを測定した。得られた平均血漿ロイプロリドレベルを図10に示す。その結果は、強化剤を伴わずに十二指腸内投与された場合、ロイプロリドの全身送達は無視できる程度であるが、強化剤と同時投与すると、ロイプロリドの全身送達においてかなりの強化剤用量依存的増強が生じたことを示し;高用量の強化剤で8%の平均%相対バイオアベイラビリティが観察された。
【0075】
実施例5
イヌにおける経口投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
(a) 顆粒製造
パルナパリンナトリウム(47.1%)、カプリン酸ナトリウム(26.2%)、マンニトール(16.7%)、およびExplotabTM(Roquette Freres, Lestrem, France)(10.0%)を含む混合物200gを、顆粒化溶媒として水を使用して、Kenwood Chefミキサーで顆粒化した。得られた顆粒をオーブンで67〜68℃でトレイ乾燥し、オシレーティンング式造粒機でそれぞれ1.25mm、0.8mm、および0.5mmスクリーンに通してサイズを低下させた。得られた顆粒の実際の効力はラベル表示の101.1%と測定された。
【0076】
(b) 30,000IU LMWH/カプリン酸ナトリウム183mgの即時放出錠剤の製造
上記顆粒を0.5%ステアリン酸マグネシウムと5分間バッグ混合した。得られた混合物を、Riva Piccalo打錠機で13mm円形凹型を使用して錠剤化し、30,000IUパルナパリンナトリウムおよびカプリン酸ナトリウム183mgの目標錠剤含量にした。錠剤は108Nの平均錠剤硬度および675mgの平均錠剤重量を有した。錠剤の実際のLMWH含量はラベル表示の95.6%と測定された。
【0077】
錠剤に対して崩壊試験を実施した。崩壊バスケットの6試験管のそれぞれに1個の錠剤を入れた。脱イオン水を使用して37℃で29〜30サイクル/分で崩壊装置を操作した。錠剤崩壊は550秒で完了した。
【0078】
(c) 90,000IU LMWH/カプリン酸ナトリウム0.55g溶液の製造
90,000IUパルナパリンナトリウムおよびカプリン酸ナトリウム0.55gを個別にガラスビンに量り入れ、得られた粉末混合物を水10mLで再調製した。
【0079】
(d) イヌでの生体試験評価
90,000IUパルナパリンナトリウムおよびカプリン酸ナトリウム550mgを、処置間に7日のウォッシュアウトを行って、6匹のメスビーグル犬(9.5〜14.4Kg)の群における一回用量非無作為化クロスオーバー試験において、溶液剤形(10mLの上記溶液組成物に相当)および高速崩壊錠剤剤形(3錠の上記錠剤組成物に相当)の両剤形として投与した。5000IUパルナパリンナトリウムを含む皮下注射を基準として使用した。
【0080】
種々の間隔で頸静脈から血液サンプルを採取し、抗第X因子活性を測定した。ベースライン抗第X因子活性に関してデータを補正した。得られた平均血漿抗第X因子レベルを図11にまとめる。錠剤および溶液剤形の両剤形は皮下投与基準脚と比較して良好な応答を示した。血漿抗第X因子レベルによって決定される、固体剤形からのパルナパリンナトリウムの平均送達は、対応する溶液剤形よりかなり高かった。
【0081】
実施例6
ヒトにおける経口投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
(a) 顆粒製造
パルナパリンナトリウム(61.05%)、カプリン酸ナトリウム(33.95%)、およびポリビニルピロリドン(Kollidon 30, BASF AG, Ludwigshafen, Germany)(5.0%)を水の添加前にGral 10で5分間混合し、次いですべての材料が明らかに顆粒化されるまで、ぜん動ポンプを使用して、混合しながら、水を徐々に加えた。
【0082】
得られた顆粒をいずれも50℃で24時間オーブンでトレー乾燥した。Fitzmill M5Aを使用して30メッシュスクリーンに通して乾燥済み顆粒を細砕した。
【0083】
(b) 45,000IU LMWH/カプリン酸ナトリウム275mgの即時放出錠剤の製造
パルナパリンナトリウム/カプリン酸ナトリウム/ポリビニルピロリドン顆粒(78.3%)を、10リットルのVコーンブレンダー中でマンニトール(16.6%)、Explotab(5.0%)、およびステアリン酸マグネシウム(1.0%)と5分間混合した。得られた混合物(480.41mg/g)の効力はラベル表示の100.5%であった。自動モードのPiccola 10ステーションプレスで13mm円形標準凹型を使用して混合物を錠剤化し、45,000IU LMWHおよびカプリン酸ナトリウム275mgの目標含量にした。得られた即時放出錠剤は、1027mgの平均錠剤重量、108Nの平均錠剤硬度および97%ラベル表示の効力を有した。錠剤は850秒までの崩壊時間および30分間でpH1.2バッファーへの100%溶解を示した。
【0084】
(c) 90,000IU LMWH/カプリン酸ナトリウム550mg溶液の製造
2種の即時錠剤を水30mL中で再調製した。各錠剤は45,000IU LMWHおよびカプリン酸ナトリウム275mgを含んでいた。
【0085】
(d) ヒトでの生体試験評価
90,000IU LMWHおよびカプリン酸ナトリウム550mgを、各投与間に7日のウォッシュアウトを行って、オープンラベル3処置3期間研究において、溶液剤形(30mLの上記溶液剤形に相当)および固体剤形(2錠の上記組成物に相当)の両剤形として12人の健康なヒトボランティアに経口投与した;処置A(即時放出錠剤)およびB(経口溶液)を無作為化様式でクロスオーバーし、一方、処置C(6,400IU FluxumTM SC(Hoechst Marion Roussel)、市販の注射用LMWH製品)を単一ブロックとして同じ被験体に投与した。
【0086】
種々の間隔で血液サンプルを採取し、抗第X因子活性を測定した。得られた平均抗第X因子レベルを図12に示す。処置AおよびBでは、皮下投与参照処置と比較して予想外に低い応答が示された。しかし、血漿抗第X因子レベルによって測定される、固体剤形からのLMWHの平均送達が、たった0.9%の平均%バイオアベイラビリティしか観察されなかった対応する溶液剤形からの平均送達よりかなり高かったことに留意すべきである。
【0087】
実施例7
ヒトにおける空腸内投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤の効果
(a) 溶液の製造
以下のLMWH/カプリン酸ナトリウムの組み合わせを脱イオン水15mLを用いて作製した:
(i) 20,000IU LMWH,カプリン酸ナトリウム0.55g;
(ii) 20,000IU LMWH,カプリン酸ナトリウム1.1g;
(iii) 45,000IU LMWH,カプリン酸ナトリウム0.55g;
(iv) 45,000IU LMWH,カプリン酸ナトリウム1.1g;
(v) 45,000IU LMWH,カプリン酸ナトリウム1.65g。
【0088】
(b) ヒトでの生体試験評価
11人までの健康なヒトボランティアでのオープンラベル6処置期間クロスオーバー試験において、経鼻空腸挿管を経由して上記溶液の各15mLを空腸内投与した。3,200IU FluxumTM SCを皮下投与基準として研究に含めた。種々の間隔で血液サンプルを採取し、抗第X因子活性を測定した。得られた平均抗第X因子レベルを図13に示す。
【0089】
この研究での各処置に関する平均%相対バイオアベイラビリティは、実施例6で溶液剤形に関して観察された平均%バイオアベイラビリティよりかなり高く;この研究での処置に関して5%〜9%の範囲の平均%バイオアベイラビリティが観察されたことに留意すべきである。これは、カプリン酸ナトリウムを含む好ましいLMWH経口投与剤形が胃での薬物および強化剤の放出を最小にし、かつ小腸での薬物および強化剤の放出を最大にするよう設計されるべきであることを示唆する。
【0090】
実施例8
LMWHおよび強化剤を含む遅延放出錠剤剤形の製造
(a) LMWH/カプリン酸ナトリウム顆粒の製造
Kollidon 30の50%水溶液を顆粒化溶媒として使用して、パルナパリンナトリウム:カプリン酸ナトリウム(0.92:1)の500gバッチをGral 10中で顆粒化した。得られた顆粒をNiro Aeromatic流動床ドライヤー中で25℃の最終産物温度で60分間乾燥した。Fitzmill M5A中で30メッシュスクリーンに通して乾燥済み顆粒を細砕した。得られた乾燥済み顆粒の効力はラベル表示の114.8%と測定された。
【0091】
(b) 22,500IU LMWH/カプリン酸ナトリウム275mgの即時放出錠剤の製造
上記顆粒(77.5%)を10 IVコーンブレンダー中のマンニトール(16%)、PolyplasdoneTM XL(ISP, Wayne, N.J.)(5%)およびAerosilTM(1%)(Degussa, Rheinfelden, Germany)に加え、10分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(0.5%)を加え、混合をさらに3分間継続した。得られた混合物を、Piccola打錠機で13mm円形標準凹型を使用して錠剤化し、772mgの平均錠剤重量および140Nの平均錠剤硬度にした。得られた錠剤の実際の効力は錠剤あたり24,017IU LMWHと測定された。
【0092】
(c) 22,500IU LMWH/カプリン酸ナトリウム275mgの遅延放出錠剤の製造
Hi-Coater中で、Eudragit L 12.5(50%)、イソプロピルアルコール(44.45%)、セバシン酸ジブチル(dibutyl sebecate)(3%)、タルク(1.3%)、および水(1.25%)を含むコーティング溶液で上記錠剤をコーティングして、5.66%の最終重量増加%にした。
【0093】
得られた腸溶コーティング錠剤はpH1.2溶液中での1時間の崩壊試験後に無傷のままであった;完全な崩壊はpH6.2媒体中で32〜33分後に観察された。
【0094】
実施例9
LMWHおよび強化剤を含む即時放出カプセル剤形の製造
(a) 22,500IU LMWH/カプリン酸ナトリウム275mgの即時放出カプセルの製造
前の実施例のパートaから得られた顆粒を、サイズ00のゼラチン硬カプセルに手動で充填して、前の実施例の錠剤の顆粒含量と等価な目標充填重量にした。
【0095】
実施例10
LMWHを含むが強化剤を含まない遅延放出錠剤剤形の製造
(a) LMWH顆粒の製造
Kollidon 30の50%水溶液を顆粒化溶媒として使用して、パルナパリンナトリウム:AvicelTM pH 101(0.92:1)(FMC, Little Island, Co. Cork, Ireland)の500gバッチをGral 10中で顆粒化した。得られた顆粒をNiro Aeromatic流動床ドライヤー中で38℃の排出温度で60分間乾燥した。Fitzmill M5A中で30メッシュスクリーンに通して乾燥済み顆粒を細砕した。得られた乾燥済み顆粒の効力はラベル表示の106.5%と測定された。
【0096】
(b) 22,500IU LMWH即時放出錠剤の製造
上記顆粒(77.5%)を25 L Vコーンブレンダー中でマンニトール(21%)およびAerosil(1%)に加え、10分間混合した。得られた混合物にステアリン酸マグネシウム(0.5%)を加え、混合をさらに1分間継続した。得られた混合物を、Piccola打錠機で13mm円形標準凹型を使用して錠剤化し、671mgの平均錠剤重量および144Nの平均錠剤硬度にした。
【0097】
得られた錠剤の実際の効力は錠剤あたり21,651IU LMWHと測定された。
【0098】
(c) 22,500IU LMWH遅延放出錠剤の製造
Hi-Coater中de,
Eudragit L 12.5(50%)、イソプロピルアルコール(44.45%)、セバシン酸ジブチル(dibutyl sebecate)(3%)、タルク(1.3%)、および水(1.25%)を含むコーティング溶液で上記錠剤をコーティングして、4.26%の最終重量増加%にした。
【0099】
得られた腸溶コーティング錠剤はpH1.2溶液中での1時間の崩壊試験後に無傷のままであった;完全な崩壊はpH6.2媒体中で22分間で観察された。
【0100】
実施例11
イヌにおける経口投与後のLMWHの全身的アベイラビリティに対する強化剤を含む制御放出剤形の効果
(a) イヌでの研究評価
45,000IU LMWHを、オープンラベル非無作為化クロスオーバーブロックデザインにおいて、(a)カプリン酸ナトリウム550mgを含む即時放出カプセル剤形(実施例9にしたがって製造された2カプセルに相当);(b)カプリン酸ナトリウム550mgを含む遅延放出錠剤剤形(実施例8にしたがって製造された2錠に相当);および(c)いかなる強化剤をも含まない遅延放出錠剤剤形(実施例10にしたがって製造された2錠に相当)として、8匹のビーグル犬(10.5〜13.6Kg)に投与した。3,200IU FluxumTM SCを皮下投与基準として研究に含めた。種々の間隔で頸静脈から血液サンプルを採取し、抗第X因子活性を測定した。得られた平均抗第X因子レベルを図14に示す。
【0101】
カプリン酸ナトリウムの不存在下で、強化剤を含まない遅延放出固体剤形からのLMWHの全身送達が最小であったことに留意すべきである。対照的に、カプリン酸ナトリウムを含む遅延放出LMWH固体剤形の投与後に良好な抗第X因子応答が観察された。カプリン酸ナトリウムを含む遅延放出剤形から得られる抗第X因子応答の平均値は、同じレベルの薬物および強化剤を含む即時放出剤形よりかなり高かった。
【0102】
実施例12
強化剤と同時投与した後のイヌにおけるLMWHの全身的アベイラビリティに対する投与部位の影響
4匹のビーグル犬(10〜15Kg)にそれぞれ空腸および結腸へのカテーテルを外科手術によって取り付けた。脱イオン水中で再調製されたカプリン酸ナトリウムとともにLMWHを含む試験溶液(10mL)をイヌに経口でまたは腸内カテーテル経由で投与した。3,200IU FluxumTM SCを皮下投与基準として研究に含めた。種々の間隔で前肢静脈から血液サンプルを採取し、抗第X因子活性を測定した。得られた平均抗第X因子レベルを図15に示す。結果は、強化剤の存在下でのLMWHの腸管吸収が胃からの吸収よりかなり高いことを示す。
【0103】
実施例13
ロイプロリド含有錠剤
実施例1および2で使用されたアプローチと同じタイプのアプローチにしたがって、表10で詳説した製剤化によってロイプロリド含有IR錠剤を製造することができる。
【0104】
実施例14
ビーグル犬におけるロミデプシンの製剤の生物学的同等性研究
ロミデプシンの3種の実験製剤を用いてビーグル犬での生物学的同等性研究を行い、ロミデプシンおよびカプリン酸ナトリウムの数種の経口投与剤形を試験した。研究は2〜5匹のイヌを使用する一回用量クロスオーバー試験であった。絶食させた動物に、毎週、静脈内投与(参照)を行うか、または3種の実験ロミデプシン製剤のうちの1種を、外科手術によって移植されたカニューレ経由で十二指腸に直接投与した。全例で、投与された用量は0.1mg/体重kgであった。投薬後の選択された時間間隔で血液サンプルを取得し、ロミデプシン分析のために血漿をJapan Clinical Laboratories(JCL)に送った。
【0105】
JCLから生物学的分析データを受け取ったら、個々の動物の血漿データをExcelスプレッドシート(Microsoft(登録商標)Office Excel 2003)にロードし、各被験体に関して濃度・時間データから以下の薬物動態学パラメータ:Cmax,Tmax,T1/2,AUC(0−t)および%バイオアベイラビリティ(%F)を算出した。薬物動態学パラメータは、Excel用に書かれたマクロ(Usansky et al., PK Functions for Microsoft Excel (1999): www.boomer.org/pkin/xcel/pkf/pkf.docで入手可能)を使用して算出した。強化剤製剤に関するFパーセントは、静脈内投与に関するAUCが100%に相当すると仮定して算出した。
【0106】
3種の製剤に関する薬物動態学データの概要を表11に示し、各製剤に関する詳細な薬物動態学データを表12〜14に示す。
【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0107】
研究の全体にわたって、投与経路に関係なく、すべての動物に0.1mg/kgのロミデプシン用量を投与した。製剤中のカプリン酸ナトリウムの量の増加に伴ってバイオアベイラビリティが増加した。製剤2の場合で最大の経口バイオアベイラビリティが観察された。製剤2はいずれの実験製剤のうちでも最大量のカプリン酸ナトリウムを含んでいた。3種の十二指腸内投与群に関する群平均データを図16にプロットする。
【0108】
十二指腸内投与によってイヌに投与されたロミデプシンおよびカプリン酸ナトリウムの溶液は生物学的に利用可能であった。投与溶液中のカプリン酸ナトリウムの濃度を増加させると吸収が増加した。ロミデプシンの経口バイオアベイラビリティは、カプリン酸ナトリウムを含む溶液中で十二指腸内投与された場合、28%であった。
【0109】
本発明の組成物および剤形はまた、上記中鎖脂肪酸および中鎖脂肪酸誘導体以外の強化剤の使用を含む。吸収強化剤、例えば中鎖脂肪酸以外の脂肪酸;イオン性、非イオン性および親油性界面活性剤;脂肪アルコール;胆汁酸塩および胆汁酸;ミセル;キレート剤などを使用して、バイオアベイラビリティを増加させることができる。
【0110】
本発明の範囲内であると見なされる非イオン性界面活性剤には、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリオキシアルキレンエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;グリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸、およびステロールからなる群の少なくとも1メンバーとポリオールの親水性エステル交換反応産物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体、およびアナログ;ポリオキシエチル化ビタミンおよびその誘導体;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ラウリン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、ラウリン酸PEG−20、ラウリン酸PEG−32、ジラウリン酸PEG−32、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、オレイン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−32、オレイン酸PEG−200、オレイン酸PEG−400、ステアリン酸PEG−15、ジステアリン酸PEG−32、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−100、ジラウリン酸PEG−20、トリオレイン酸PEG−25グリセリル、ジオレイン酸PEG−32、ラウリン酸PEG−20グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ステアリン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−40グリセリル、PEG−40パーム核油、PEG−50水添ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40水添ヒマシ油、PEG−60水添ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、カプリン酸/カプリル酸PEG−6グリセリド、カプリン酸/カプリル酸PEG−8グリセリド、ラウリン酸ポリグリセリル−10、PEG−30コレステロール、PEG−25植物ステロール、PEG−30ダイズステロール、トリオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−40ソルビタン、ラウリン酸PEG−80ソルビタン、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG−100コハク酸、PEG−24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル−10、モノステアリン酸スクロース、モノラウリン酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10〜100ノニルフェノールシリーズ、PEG15〜100オクチルフェノールシリーズ、およびポロキサマーが含まれる。
【0111】
本発明の範囲内であると見なされるイオン性界面活性剤には、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチド、およびポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチンおよび水添レシチン;リゾレシチンおよび水添リゾレシチン;リン脂質およびその誘導体;リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸の塩;脂肪酸塩;ナトリウムドキュセート;アシルラクチラート;モノおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノおよびジグリセリド;モノおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ラウリル硫酸ナトリウム;および四級アンモニウム化合物が含まれる。
【0112】
本発明の範囲内であると見なされる親油性界面活性剤には、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロールおよびステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロールおよびステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノおよびジグリセリドの乳酸誘導体;グリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1メンバーとポリオールの疎水性エステル交換反応産物;脂溶性ビタミン/ビタミン誘導体;およびその混合物が含まれる。この群内で、好ましい親油性界面活性剤には、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびその混合物が含まれるか、または植物油、硬化植物油、およびトリグリセリドからなる群の少なくとも1メンバーとポリオールの疎水性エステル交換反応産物である。
【0113】
本発明の範囲内であると見なされる胆汁酸塩および酸には、ジヒドロキシ胆汁酸塩、例えばデオキシコール酸ナトリウム、トリヒドロキシ胆汁酸塩、例えばコール酸ナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸(「ケノジオール」または「ケン酸(chenic acid)」とも称される)、ウルソデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロリトコール酸、タウロケノデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、グリコリトコール酸、グリコケノデオキシコール酸、およびグリコウルソデオキシコール酸が含まれる。
【0114】
本発明の範囲内であると見なされる可溶化剤には、アルコールおよびポリオール、例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド(trgycerides)およびその誘導体;グリセリドシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えばテトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテルまたはメトキシPEG;アミドおよび他の窒素含有化合物、例えば2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドン;エステル、例えばプロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセタート、プロピレングリコールジアセタート、イプシロン−カプロラクトンおよびその異性体、デルタ−バレロラクトンおよびその異性体、ベータ−ブチロラクトンおよびその異性体;および当技術分野において公知の他の可溶化剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、および水が含まれる。
【0115】
さらに他の好適な界面活性剤は当業者に自明であり、および/または関連する教科書および文献に記載されている。
【0116】
本発明は、本明細書中に記載の具体的実施形態によって範囲を限定されない。実際、本明細書中に記載の実施形態に加えて本発明の種々の改変が、前記説明および添付の図面から当業者に明らかであろう。そのような改変は特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ以下に規定する、治療上有効量の薬物と強化剤とを腸に送達するのに有効な医薬組成物であって、該組成物はDACインヒビターおよび強化剤を含み、該強化剤は6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸または中鎖脂肪酸誘導体を含み、室温で固体である、上記組成物。
【請求項2】
炭素鎖長が8〜14炭素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
炭素鎖長が8〜12炭素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
炭素鎖長が8、10、または12炭素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
強化剤が中鎖脂肪酸のナトリウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
強化剤が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、およびラウリン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
薬物および強化剤が1:100,000〜10:1(薬物:強化剤)の比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の補助賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
DACインヒビターが、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、プロペンアミド、アロイルピロリルヒドロキシアミド、トリコスタチン、スピルコスタチン(spiruchostatins)、サリナミド(salinamides)、環状テトラペプチド、アンタナペプチン(antanapeptins)、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド、トラポキシン、ベンズアミド、三環系ラクタム誘導体、三環系スルタム誘導体、アミジオール(amijiol)の酢酸誘導体、有機硫黄化合物、プサマプリン(psammaplins)、および求電子性ケトンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
DACインヒビターが、ブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアート、バルプロ酸、スベロイル−アニリドヒドロキサム酸、オキサムフラチン、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート(suberic bishydroxamate)、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド(N-hydroxy-7-(2-naphthylthio) heptanomide)、ニコチンアミド、スクリプタイド(scriptaid)、スクリプチド(scriptide)、スプリトマイシン(splitomicin)、ルナシン、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド(pyroxamide)、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、MC 1293、APHA化合物8、トリコスタチンA、トリコスタチンC、トラポキシンA、トラポキシンB、ロミデプシン、HC−トキシン、クラミドシン、アンタナペプチンA、アンタナペプチンB、アンタナペプチンC、アンタナペプチンD、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチンA、スピルコスタチンB、スピルコスタチンC、サリナミドA、サリナミドB、M344、MS−275、CI−994、タセジナリン、シルチノール(sirtinol)、ジアリルジスルフィド、スルフォラファン、α−ケトアミド、トリフルオロメチルケトン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、デプデシン、プサマプリンA、プサマプリンF、チューバシン(tubacin)、クルクミン、ヒスタシン(histacin)、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781、CRA−026440、CG1521、PXD101、G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
DACインヒビターがロミデプシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
治療上有効量のロミデプシンを送達するのに有効な医薬組成物であって、該組成物はロミデプシンおよび強化剤を含み、該強化剤は、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、およびその組み合わせからなる群より選択される、上記組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の補助賦形剤をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
補助賦形剤がポリビニルピロリドンである、請求項9bに記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含む固体経口投与剤形。
【請求項16】
剤形が、錠剤、カプセル、または多粒子剤形である、請求項15に記載の剤形。
【請求項17】
剤形が遅延放出剤形である、請求項15に記載の剤形。
【請求項18】
剤形が錠剤である、請求項15に記載の剤形。
【請求項19】
錠剤が多層錠剤である、請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
速度制御ポリマー材料をさらに含む、請求項15に記載の剤形。
【請求項21】
速度制御ポリマー材料がHPMCである、請求項20に記載の剤形。
【請求項22】
速度制御ポリマー材料が、アクリル酸またはメタクリル酸およびそのそれぞれのエステルから誘導されるポリマー、またはアクリル酸またはメタクリル酸およびそのそれぞれのエステルから誘導されるコポリマーである、請求項20に記載の剤形。
【請求項23】
速度制御ポリマー材料が剤形を覆うコーティングである、請求項20に記載の剤形。
【請求項24】
錠剤が多層錠剤である、請求項23に記載の剤形。
【請求項25】
剤形が多粒子剤形である、請求項15に記載の剤形。
【請求項26】
多粒子剤形が、離散粒子、ペレット、ミニタブレット、またはその組み合わせを含む、請求項25に記載の剤形。
【請求項27】
多粒子剤形が、粒子、ペレット、ミニタブレット、またはその組み合わせの2以上の集団の混合物を含み、各集団が異なるin vitroおよび/またはin vivo放出特性を有する、請求項26に記載の剤形。
【請求項28】
多粒子材料がゼラチンカプセル中にカプセル化されている、請求項25に記載の剤形。
【請求項29】
カプセルが速度制御ポリマー材料でコーティングされている、請求項28に記載の剤形。
【請求項30】
多粒子がサシェに包含されている、請求項25に記載の剤形。
【請求項31】
離散粒子、ペレット、ミニタブレット、またはその組み合わせが錠剤に圧縮されている、請求項26に記載の剤形。
【請求項32】
錠剤が速度制御ポリマー材料でコーティングされている、請求項31に記載の剤形。
【請求項33】
錠剤が多層錠剤である、請求項31に記載の剤形。
【請求項34】
錠剤が多層錠剤である、請求項32に記載の剤形。
【請求項35】
DACインヒビターおよび強化剤が1:100,000〜10:1(薬物:強化剤)の比で剤形中に存在する、請求項15に記載の剤形。
【請求項36】
比が1:1,000〜10:1(薬物:強化剤)である、請求項30に記載の剤形。
【請求項37】
DACインヒビターが、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、プロペンアミド、アロイルピロリルヒドロキシアミド、トリコスタチン、スピルコスタチン、サリナミド、環状テトラペプチド、アンタナペプチン、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド、トラポキシン、ベンズアミド、三環系ラクタム誘導体、三環系スルタム誘導体、アミジオールの酢酸誘導体、有機硫黄化合物、プサマプリン、および求電子性ケトンからなる群より選択される、請求項10に記載の剤形。
【請求項38】
DACインヒビターが、ブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアート、バルプロ酸、スベロイル−アニリドヒドロキサム酸、オキサムフラチン、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド、ニコチンアミド、スクリプタイド、スクリプチド、スプリトマイシン、ルナシン、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、MC 1293、APHA化合物8、トリコスタチンA、トリコスタチンC、トラポキシンA、トラポキシンB、ロミデプシン、HC−トキシン、クラミドシン、アンタナペプチンA、アンタナペプチンB、アンタナペプチンC、アンタナペプチンD、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチンA、スピルコスタチンB、スピルコスタチンC、サリナミドA、サリナミドB、M344、MS−275、CI−994、タセジナリン、シルチノール、ジアリルジスルフィド、スルフォラファン、α−ケトアミド、トリフルオロメチルケトン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、デプデシン、プサマプリンA、プサマプリンF、チューバシン、クルクミン、ヒスタシン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781、CRA−026440、CG1521、PXD101、G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521からなる群より選択される、請求項15に記載の剤形。
【請求項39】
DACインヒビターがロミデプシンである、請求項15に記載の剤形。
【請求項40】
約1mg/m〜約300mg/mのロミデプシンを含む、請求項15に記載の剤形。
【請求項41】
組成物が遅延放出腸溶コーティング錠剤の形態である、請求項15に記載の剤形。
【請求項42】
DACインヒビターおよび強化剤が1:1,000〜10:1(薬物:強化剤)の比で剤形中に存在する、請求項41に記載の剤形。
【請求項43】
強化剤がカプリン酸ナトリウムである、請求項41に記載の剤形。
【請求項44】
強化剤がカプリル酸ナトリウムである、請求項41に記載の固体経口投与剤形。
【請求項45】
強化剤がラウリン酸ナトリウムである、請求項41に記載の固体剤形。
【請求項46】
治療上有効量のDACインヒビターおよび強化剤を腸に送達するのに有効な医薬組成物であって、該組成物はDACインヒビターおよび強化剤を含み、該強化剤は、以下のもの:
(i)6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸の塩またはその塩;
(ii)6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する、中鎖脂肪酸ハロゲン化物誘導体、中鎖脂肪酸無水物誘導体、または中鎖脂肪酸グリセリド誘導体;
(iii)脂肪酸塩の反対側の末端に、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはグリセリド部分を有する、上記項(i)の脂肪酸塩;
(iv)ハロゲン化物部分の反対側の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分、またはグリセリド部分を有する、上記項(ii)の酸ハロゲン化物誘導体;
(v)無水物の反対側の末端に、酸無水物部分、酸ハロゲン化物部分、またはグリセリド部分を有する、上記項(ii)の無水物誘導体;または
(vi)グリセリド部分の反対側の末端に、グリセリド部分、酸ハロゲン化物部分、または酸無水物部分を有する、上記項(ii)のグリセリド誘導体;
を含み、かつ該強化剤は室温で固体である、上記組成物。
【請求項47】
治療上有効量のDACインヒビターおよび強化剤を腸に送達するのに有効な医薬組成物であって、該組成物はDACインヒビターおよび強化剤を含み、該強化剤は、(1)6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸または中鎖脂肪酸誘導体を含み、(2)該組成物中に存在する唯一の強化剤であり、かつ(3)下層循環へのHDACインヒビターの腸送達を促進する、上記組成物。
【請求項48】
強化剤が、8〜14炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪酸の塩である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
炭素鎖長が8〜12炭素原子である、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
炭素鎖長が8、10、または12炭素原子である、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
脂肪酸塩がナトリウム塩である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
脂肪酸塩が、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、およびラウリン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
DACインヒビターが、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、プロペンアミド、アロイルピロリルヒドロキシアミド、トリコスタチン、スピルコスタチン、サリナミド、環状テトラペプチド、アンタナペプチン、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド、トラポキシン、ベンズアミド、三環系ラクタム誘導体、三環系スルタム誘導体、アミジオールの酢酸誘導体、有機硫黄化合物、プサマプリン、および求電子性ケトンからなる群より選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項54】
DACインヒビターが、ブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアート、バルプロ酸、スベロイル−アニリドヒドロキサム酸、オキサムフラチン、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド、ニコチンアミド、スクリプタイド、スクリプチド、スプリトマイシン、ルナシン、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、MC 1293、APHA化合物8、トリコスタチンA、トリコスタチンC、トラポキシンA、トラポキシンB、ロミデプシン、HC−トキシン、クラミドシン、アンタナペプチンA、アンタナペプチンB、アンタナペプチンC、アンタナペプチンD、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチンA、スピルコスタチンB、スピルコスタチンC、サリナミドA、サリナミドB、M344、MS−275、CI−994、タセジナリン、シルチノール、ジアリルジスルフィド、スルフォラファン、α−ケトアミド、トリフルオロメチルケトン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、デプデシン、プサマプリンA、プサマプリンF、チューバシン、クルクミン、ヒスタシン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781、CRA−026440、CG1521、PXD101、G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521からなる群より選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項55】
DACインヒビターがロミデプシンである、請求項47に記載の組成物。
【請求項56】
錠剤、カプセル、または多粒子組成物の形態である、請求項47に記載の組成物。
【請求項57】
強化剤が、以下のもの:
(a)6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪酸の酸塩、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはグリセリド;および
(b)酸塩の基の反対側の炭素鎖の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分、またはグリセリド部分を有する点で二官能性である、上記項(a)の誘導体
からなる群より選択される、請求項47に記載の組成物。
【請求項58】
室温で固体である、請求項47に記載の組成物。
【請求項59】
剤形の製造方法であって、以下のステップ:
(a)DACインヒビター、および室温で固体であり、DACインヒビターの下層循環への腸送達を促進する強化剤を含む混合物を用意するステップであって、該強化剤が、以下のもの:
(i)6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する中鎖脂肪酸塩;
(ii)6〜20炭素原子の炭素鎖長を有する、中鎖脂肪酸ハロゲン化物誘導体、中鎖脂肪酸無水物誘導体、または中鎖脂肪酸グリセリド誘導体;
(iii)脂肪酸塩の反対側の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分、またはグリセリド部分を有する、上記項(i)の脂肪酸塩;
(iv)ハロゲン化物部分の反対側の末端に、酸ハロゲン化物部分、酸無水物部分、またはグリセリド部分を有する、上記項(ii)の酸ハロゲン化物誘導体;
(v)無水物の反対側の末端に、酸無水物部分、酸ハロゲン化物部分、またはグリセリド部分を有する、上記項(ii)の無水物誘導体;または
(vi)グリセリド部分の反対側の末端に、グリセリド部分、酸ハロゲン化物部分、または酸無水物部分を有する、上記項(ii)のグリセリド誘導体
を含むステップ;および
(b)該混合物から固体経口投与剤形を形成するステップ
を含む、上記方法。
【請求項60】
形成ステップが、混合物を直接圧縮して錠剤にするステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
形成ステップが、混合物を顆粒化して、該固体経口投与剤形に組み込むための顆粒を形成するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
形成ステップが、混合物をカプセル化するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
固体経口投与剤形上に腸溶コーティングを形成するステップをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
DACインヒビターが、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、プロペンアミド、アロイルピロリルヒドロキシアミド、トリコスタチン、スピルコスタチン、サリナミド、環状テトラペプチド、アンタナペプチン、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド、トラポキシン、ベンズアミド、三環系ラクタム誘導体、三環系スルタム誘導体、アミジオールの酢酸誘導体、有機硫黄化合物、プサマプリン、および求電子性ケトンからなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
DACインヒビターが、ブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアート、バルプロ酸、スベロイル−アニリドヒドロキサム酸、オキサムフラチン、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド、ニコチンアミド、スクリプタイド、スクリプチド、スプリトマイシン、ルナシン、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、MC 1293、APHA化合物8、トリコスタチンA、トリコスタチンC、トラポキシンA、トラポキシンB、ロミデプシン、HC−トキシン、クラミドシン、アンタナペプチンA、アンタナペプチンB、アンタナペプチンC、アンタナペプチンD、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチンA、スピルコスタチンB、スピルコスタチンC、サリナミドA、サリナミドB、M344、MS−275、CI−994、タセジナリン、シルチノール、ジアリルジスルフィド、スルフォラファン、α−ケトアミド、トリフルオロメチルケトン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、デプデシン、プサマプリンA、プサマプリンF、チューバシン、クルクミン、ヒスタシン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781、CRA−026440、CG1521、PXD101、G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521からなる群より選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
DACインヒビターがロミデプシンである、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
治療上有効量の請求項1に記載の組成物を、患者に経口投与するステップを含む、医学的状態を治療または予防する方法。
【請求項68】
医学的状態が癌である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
医学的状態が増殖性疾患である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
医学的状態が抗炎症性疾患である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
医学的状態が自己免疫疾患である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
DACインヒビターが、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、プロペンアミド、アロイルピロリルヒドロキシアミド、トリコスタチン、スピルコスタチン、サリナミド、環状テトラペプチド、アンタナペプチン、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド、トラポキシン、ベンズアミド、三環系ラクタム誘導体、三環系スルタム誘導体、アミジオールの酢酸誘導体、有機硫黄化合物、プサマプリン、および求電子性ケトンからなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
DACインヒビターが、ブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアート、バルプロ酸、スベロイル−アニリドヒドロキサム酸、オキサムフラチン、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド、ニコチンアミド、スクリプタイド、スクリプチド、スプリトマイシン、ルナシン、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、MC 1293、APHA化合物8、トリコスタチンA、トリコスタチンC、トラポキシンA、トラポキシンB、ロミデプシン、HC−トキシン、クラミドシン、アンタナペプチンA、アンタナペプチンB、アンタナペプチンC、アンタナペプチンD、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチンA、スピルコスタチンB、スピルコスタチンC、サリナミドA、サリナミドB、M344、MS−275、CI−994、タセジナリン、シルチノール、ジアリルジスルフィド、スルフォラファン、α−ケトアミド、トリフルオロメチルケトン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、デプデシン、プサマプリンA、プサマプリンF、チューバシン、クルクミン、ヒスタシン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781、CRA−026440、CG1521、PXD101、G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521からなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
DACインヒビターがロミデプシンである、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
治療上有効量の請求項47に記載の組成物を、患者に経口的に投与するステップを含む、医学的状態を治療または予防する方法。
【請求項76】
医学的状態が癌である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
医学的状態が増殖性疾患である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
医学的状態が抗炎症性疾患である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
医学的状態が自己免疫疾患である、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
DACインヒビターが、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、プロペンアミド、アロイルピロリルヒドロキシアミド、トリコスタチン、スピルコスタチン、サリナミド、環状テトラペプチド、アンタナペプチン、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド、トラポキシン、ベンズアミド、三環系ラクタム誘導体、三環系スルタム誘導体、アミジオールの酢酸誘導体、有機硫黄化合物、プサマプリン、および求電子性ケトンからなる群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
DACインヒビターが、ブチラート、フェニルブチラート、ピバロイルオキシメチルブチラート、N−ヒドロキシ−4−(3−メチル−2−フェニル−ブチリルアミノ)−ベンズアミド、4−(2,2−ジメチル−4−フェニルブチリルアミノ)−N−ヒドロキシベンズアミド、バルプロアート、バルプロ酸、スベロイル−アニリドヒドロキサム酸、オキサムフラチン、M−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド、6−(3−ベンゾイル−ウレイド)−ヘキサン酸ヒドロキシアミド、スベリックビスヒドロキサマート、N−ヒドロキシ−7−(2−ナフチルチオ)ヘプタノミド、ニコチンアミド、スクリプタイド、スクリプチド、スプリトマイシン、ルナシン、ITF2357、A−161906、NVP−LAQ824、LBH589、ピロキサミド、CBHA、3−Cl−UCHA、SB−623、SB−624、SB−639、SK−7041、3−(4−ジメチルアミノ−フェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシ−デカノイル、3−(4−アロイル−1H−ピロール−2−イル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド、MC 1293、APHA化合物8、トリコスタチンA、トリコスタチンC、トラポキシンA、トラポキシンB、ロミデプシン、HC−トキシン、クラミドシン、アンタナペプチンA、アンタナペプチンB、アンタナペプチンC、アンタナペプチンD、ジヘテロペプチン、WF−3161、Cyl−1、Cyl−2、アピシジン、FR225497、FR901375、スピルコスタチンA、スピルコスタチンB、スピルコスタチンC、サリナミドA、サリナミドB、M344、MS−275、CI−994、タセジナリン、シルチノール、ジアリルジスルフィド、スルフォラファン、α−ケトアミド、トリフルオロメチルケトン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、デプデシン、プサマプリンA、プサマプリンF、チューバシン、クルクミン、ヒスタシン、ピメロイルアニリドo−アミノアニリド、6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド、CRA−024781、CRA−026440、CG1521、PXD101、G2M−777、CAY10398、CTPB、MGCD0103、およびBL1521からなる群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
DACインヒビターがロミデプシンである、請求項75に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−539862(P2009−539862A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514424(P2009−514424)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/013693
【国際公開番号】WO2007/146234
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508345254)メリオン リサーチ III リミテッド (2)
【Fターム(参考)】