説明

強化複合材料、それを調製する方法、製造物を調製するのにそれを使用する方法、ならびにこのような方法で形成した製造物およびその製造物の使用方法

アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムをベースとし、ガラス繊維で強化した強化複合材料、それを調製する方法、製造物を調製するのにそれを使用する方法、ならびにこのような方法で形成した製造物およびその製造物の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、複合材料の加工容易性を付与する良好な機械特性を同時に維持しつつ、改良した電気抵抗、電気絶縁性および断熱性を有する、セメント母材(マトリックス)に基づく強化複合材料に関し、さらにシリコーン成形型を使用する成形方法によってこの強化複合体に基づく形成体および製造物の製造にも関する。
【背景技術】
【0002】
(技術水準)
長年にわたり、セメントをベースとする複合材料は開発されてきており、ガラス繊維の粗撚り素材(ロービング)で形成した裏打ち材又は強化材を含み、この補強材は、セメント混合物の硬化ステップ中にセメント混合物に機械的に組み合せ、また浸漬し、この場合、前記強化材の前記複合材料に対する重量パーセント(%)は、850g/mの単位面積あたり重量の少なくとも5重量%とする(特許文献1[米国特許第4,898,769号])、特許文献2[英国特許出願公開第2218670号]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4898769号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2218670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この材料は良好な電気絶縁特性を有していたが、特に所望のプロファイルを有する最終製造物を得るよう加工を受けるとき、機械的特性の点で不適切であった。特に、数ミリおきに平行に配列されたガラス繊維の織物で作られたロービングで特徴付けられるこれら材料は、適切な用途形状を有する製造物又は最終仕上げ製品を得るよう、フライス加工などの必要な機械的加工を受けるとき、機械的特性の著しい低下を伴い、このことは、極めて低い機械的強度として特徴付けられる。
【0005】
事実、このような加工は、互いに重なり合ったロービングという骨格付着物を破壊または相当脆弱化させるので、機械的特性を極めて低下させ、このことにより、得ようとする輪郭(プロファイル)が複雑であるとき、加工中に、存続させることができない多量のスクラップ品及び欠陥品を生ずる。さらに、これらの機械的加工は極めて高コスト要因となり、また、多量の塵埃も引き起こすので、健康および環境を保護するためには厳重な汚染防止対策を必要とする。
【0006】
したがって機械的、電気的および熱的特性を満足のいく程度に兼ね備えるとともに、従来技術に典型的な材料における上述の深刻な欠点を未然に防ぐことができる、強化セメントをベースとする複合材料を得る必要性が強く感じられていた。
【0007】
(発明の概要)
本出願人は、当該技術分野における不断の研究により、驚くべきことにまた予想外にも、アルミナセメント、およびタビュラーアルミナまたはコランダムをベースとし、ガラス繊維で強化した新規な複合強化材料、また、前記強化複合材料をベースとする耐火物製の形成体もしくは製造物、または断熱性/電気絶縁性材料で形成した形成体もしくは製造物が得られることを見出した。
【0008】
本発明の他の目的は、アルミナセメント、およびタビュラーアルミナまたはコランダムをベースとした、ガラス繊維で強化された強化複合材料を調製する方法、ならびに、耐火物で形成した形成体もしくはこの強化複合材料をベースとした電気的絶縁性/断熱性材料で形成した形成体もしくは製造物を調整する方法(プロセス)を得るにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、ブローアウトチャンバ用のプレート、特に高電圧接触器用のブローアウトチャンバ、耐熱・耐電圧の絶縁プレート、リブ付きアイソレータ、電気抵抗用ホルダー、ならびに高温炉用コーティングおよび熱交換機用パイプとしての使用方法であり、上述した耐火物または電気的絶縁性/断熱性材料で形成した形成体または製造物を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明の詳細な説明)
本発明が目的とする複合材料は、アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとする、ガラス繊維で強化した強化複合材料であって、70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムと、シリカおよびジルコンをベースとしたガラス繊維と、シリコーン樹脂と、ポリアクリル酸電解液と、水硬性結合材としての水と、を含む複合材料である。
【0011】
より詳細には、前記シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は、5〜10mmの長さ、より好ましくは6〜9mmの長さとする。
【0012】
より詳細には、本発明による前記高アルミナセメントは、高耐火特性を有するセメント、すなわち1700℃超の耐熱性または耐火性を備えるアルミナセメントとすることが好ましい。
【0013】
より詳細には、本発明による前記タビュラーアルミナまたはコランダムは、0.4mm以下の粒度分布を有するタビュラーアルミナまたはコランダムであることが好ましく、より好ましくは0.3mm以下の粒度分布を有するタビュラーアルミナまたはコランダムであり、最も好ましくは0.1〜0.3mmの粒度分布を有するタビュラーアルミナまたはコランダムとする。
【0014】
より詳細には、本発明による複合材料の他の好適実施形態として、タビュラーアルミナまたはコランダムは、少なくとも98.0%の純度、少なくとも99.5%を有することが好ましい。
【0015】
本発明が目的とする強化複合材料のさらに他の好適実施形態において、本発明によるシリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は、2.5〜2.7g/cmの密度を含む繊維、さらに好適には、シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は、0.1〜0.15g/cm、より好ましくは0.11〜0.12g/cmの重量配分で本発明による複合材料に存在し、さらに、シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は、本発明による複合材料において800〜1200本/cm、好適には900〜1100本/cmの分量で存在する。
【0016】
アルミナセメントと、タビュラーセメントまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した本発明対象の強化複合材料の好適実施形態において、前記高アルミナセメントは22〜27重量%、好ましくは24〜26重量%であり、前記タビュラーアルミナは58〜63重量%、好ましくは60〜62重量%であり、前記ガラス繊維は3.9〜4.5重量%、好ましくは4.1〜4.4重量%であり、前記シリコーン樹脂は0.14〜0.18重量%、好ましくは0.15〜0.17重量%であり、前記ポリアクリル酸電解液は0.14〜0.18重量%、好ましくは0.15〜0.17重量%であり、残部は水硬性結合材を意図した水であり、前記パーセントは本発明が目的とする複合材料の100重量部で計算される。
【0017】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維で強化した本発明が目的とする強化複合材料の特に好適な実施形態において、前記強化材料は以下のステップ:
(a)シリコーン樹脂およびポリアクリル酸電解液の存在の下に連続撹拌しながら、予め、70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとを水に分散させ、それに続いて、依然として撹拌しながらシリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維を添加してスラリを生ずるよう、水中で混合するステップと、
(b)ステップ(a)で得られたスラリを、振動し続ける成形型または容器内に注入するステップと、
(c)ステップ(a)で得られたスラリを「固化」または硬化する硬化ステップであって、注入後に成形型からの脱型およびそれに続くプロセスとしての、制御した温度および湿度の調節、空気乾燥および強制対流式オーブン内での調節によるエージングを行う、該硬化ステップと、
を含む手順によって得られた/得ることが可能とする。
【0018】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した本発明が目的とする強化複合材料を調整する方法は、上述したステップ(a)、(b)および(c)を有する。
【0019】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した本発明が目的とする強化複合材料を調整する方法、ならびにこれに対応する上述のような製造方法の好適な実施形態において、水中で混合するステップ(a)中に水性エマルションおよび水溶液としてのポリアクリル酸電解液へのシリコーン樹脂を分散させる。
【0020】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した本発明が目的とする強化複合材料、ならびに上述した対応する製造プロセスの好適実施形態によれば、前記水中で混合するステップ(a)において、前記高アルミナセメントは22〜27重量%、好ましくは20〜25重量%であり、前記タビュラーアルミナは55〜60重量%、好ましくは53〜57重量%であり、前記ガラス繊維は3.5〜4.5重量%、好ましくは4.0〜4.5重量%であり、前記シリコーン樹脂(有効成分)は0.12〜0.19重量%、好ましくは0.14〜0.17重量%であり、前記ポリアクリル酸電解液(有効成分)は0.11〜0.18重量%、好ましくは0.13〜0.16重量%であり、残部は水であり、前記パーセントは生成したスラリの100重量部で計算する。
【0021】
本発明による強化複合材料、ならびに上述した対応する製造方法の他の特別な好適実施形態においては、水中で混合するステップ(a)において、高アルミナセメントは23〜27重量%、好ましくは20〜25重量%であり、タビュラーアルミナは55〜60重量%、好ましくは53〜57重量%であり、ガラス繊維は3.5〜4.5重量%、好ましくは4〜4.5重量%であり、シリコーン樹脂は0.22〜0.27重量%、好ましくは0.24〜0.26重量%であり、ポリアクリル酸電解液は0.38〜0.44重量%、好ましくは0.40〜0.43重量%であり、残部は水であり、前記パーセントは生成したスラリの100重量部で計算する。
【0022】
本発明によるシリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は、当技術分野でよく知られているガラス繊維であり、このガラス繊維はジルコニアまたは酸化ジルコニウムの形で存在するジルコニウムによって、耐アルカリ性であるガラス繊維であるため、一般にこれらガラス繊維は、ガラス繊維重量に対して、10〜25重量%、好ましくは12〜20重量%、より好ましくは13〜15重量%のジルコニアを含むガラス繊維である。
【0023】
このガラス繊維において、シリカ成分SiOは、ガラス繊維重量に対して55〜75重量%、60〜70重量%の範囲にわたり変化させることができるために優位成分であり、また、極めて少ない劣位成分としてのフラックス成分、例えばカルシウムおよび酸化ナトリウムが、ガラス繊維重量に対して、せいぜい20重量%の割合で存在する。
【0024】
SiO、およびジルコンすなわちケイ酸ジルコニウムZr(SiO)に関する上記の割合を表現すると、このような割合は以下のように表現でき、すなわち、14〜36%のZrSiOおよび66〜44%のSiO、17〜29%のZrSiOおよび63〜51%のSiO、18〜22%のZrSiOおよび62〜58%のSiO、これら全ての例において残部の割合はフラックス成分を含む。
【0025】
ガラス繊維は、得られる複合体の機械的強度を極めて強くする。さらに、曲げ破壊が偽塑性的に発生するが、この用語は、ピーク負荷に達した後、致命的な破壊により著しく軟化した分岐欠損が存在することを意味する。
【0026】
確かに、曲げ強度試験中、本発明による複合材料で形成した試料は、曲げ強度試験中偽塑性的に破損するが、この用語は、荷重−変位プロットが、初期の直線的な遷移傾向の後に、最大負荷に向かって減少する微分係数(偽硬化)を伴う単調な上り勾配を示すことを意味し、最大負荷後に幾分顕著に「軟化」する分岐が続き、この特徴により製造物の急激な破壊を阻止する。
【0027】
ポリアクリル酸電解液は、より良い構造の均質性を促進し、より低い空隙率を促進するので、機械的耐性および耐アーク性の面で、全般により優れて機能する。
【0028】
高アルミナセメントと組み合わせるタビュラーアルミナは、極めて高い耐火性、高い機械的強度および優れた誘電特性をもたらす。
【0029】
シリコーン樹脂は、本発明による複合材料内に均一に分散され、複合材料の最適な疎水性、ならびにその熱的および電気的な絶縁性の改善をもたらす。
【0030】
水硬性結合材としての水は、複合体自体を調製および形成する方法の終了時に、強化複合材料中に残存した水和水を意味する。
【0031】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した本発明が他の目的とする強化複合材料を得るためのスラリにおいて、該スラリは、水と、70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、
・タビュラーアルミナまたはコランダムと、
・シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維と、
・シリコーン樹脂と、
・ポリアクリル酸電解液と、
を含む。
【0032】
本発明にて得られた/得ることができる生成物としての複合材料は、したがって、70%以上のAlを備える高アルミナセメントと、
−タビュラーアルミナまたはコランダムと、
−シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維と、
−シリコーン樹脂と、
−ポリアクリル酸電解液と、
を含む。
【0033】
本発明による強化複合材料のさらに好適な実施形態、ならびに対応する上述の製造方法の好適な実施形態において、上述の水中で混合するステップ(a)において、シリコーン樹脂が水性エマルションの形で分散するとき、シリコーン樹脂水溶液は樹脂重量に対して50〜70重量%を含むことが好ましく、樹脂重量に対して60重量%のエマルションがさらに好ましく、および/またはポリアクリル酸電解液が水溶液の形で分散するとき、前記ポリアクリル酸電解液はアクリル電解液重量に対して25〜45重量%を含むことが好ましく、アクリル電解液重量に対して35重量%水溶液がさらに好ましく、および/または高アルミナセメントはAlの72%以上を有し、および/またはタビュラーアルミナもしくはコランダムは純度98.0%以上、より好ましくは99.5%以上を有することが好ましく、および/または前記タビュラーアルミナもしくはコランダムは0.4mm以下、好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1〜0.3mmの粒度分布を有し、および/または前記シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は5〜10mmの長さ、好ましくは6〜9mmの長さとする。
【0034】
本発明による強化複合材料、ならびに対応する上述の製造方法のより好適な実施形態において、上述の注入ステップ(b)における成形型または容器は、連続的または断続的に、好ましくは一定の周波数で振動させ、この振動は、ガラス繊維が部分的に整列するものの、ガラス繊維の一様かつ異方性を示す分布、ならびに気泡除去を意図する。
【0035】
ステップ(b)における成形型または容器は、金属、セラミック、木材/セルロース、プラスチック、とりわけシリコーンまたはそれらを組み合わせたものによって形成する。
【0036】
本発明による強化複合材料、ならびに対応する上述の製造方法のさらに他の好適な実施形態において、前述のステップ(c)における硬化又は固化は、材料を少なくとも24時間静置する、および/または好適には湿度制御した20℃の温度制御室に静置し、エージング中、湿度制御した温度制御キャビネット/室を調節し、好適には湿度95%、好適には5日間行う、および/または空気乾燥を少なくとも10日間行う、および/または強制対流式オーブンの調節は、好適には20〜24時間の周期で、105℃に昇温させて行う。本発明が目的とする強化複合材料は、高電圧に対する最適耐性の他に、熱衝撃に対する高い耐性を優れた機械的強度とともに兼ね備え、さらに、硬化または固化ステップ中の収縮現象がなく、ならびに化学的にはほぼ不活性を示す。
【0037】
このことによって、高質の製造公差および優れた精度を有する成形型の使用を可能とし、それゆえ、製造公差および極めて高い表面精度を満たしつつ、極めて高い寸法再現性に関する質的標準に合致して本発明強化複合材料で形成した製造物を得ることができる。
【0038】
したがって、本発明のさらに他の目的は以下のとおりである。
・上述した本発明による、アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した強化複合材料で形成した製造物、
・アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した強化複合材料で形成した製造物の製造方法であって、
(a)シリコーン樹脂およびポリアクリル酸電解液の存在の下に連続撹拌しながら、予め、70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとを水に分散させ、それに続いて、依然として撹拌しながらシリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維を添加してスラリを生ずるよう、水中で混合するステップと、
(b)ステップ(a)で得たスラリを、振動し続ける成形型または容器内に注入する注入ステップと、
(c)ステップ(a)で得たスラリを「固化」または硬化する硬化ステップであって、注入後に成形型からの脱型およびそれに続くプロセスとしての、制御した温度および湿度の調節、空気乾燥および強制対流式オーブン内での調節によるエージングを行う、該硬化ステップと、
を有する製造方法であり、
このプロセスにおいて、ステップ(a)、(b)および(c)は、強化複合材料を調製する方法のステップ(a)、(b)および(c)と同じ特徴を有し、好適には、水中で混合するステップ(a)において、シリコーン樹脂は、水性エマルションおよび水溶液としてのポリアクリル酸電解液に分散させておく、および/またはステップ(b)における成形型または容器はシリコーン材料で形成し、ステップ(a)で用いるシリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は5〜10mmの長さ、好適には6〜9mmの長さとし、ステップ(a)で用いるタビュラーアルミナまたはコランダムの粒度分布は0.4mm以下、好適には0.3mm以、さらに好適には0.1〜0.3mmとした、該製造物の製造方法、
−アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した本発明による強化複合材料で形成した、ブローアウトチャンバ用のプレート、特に高電圧接触器、耐アーク、耐高温および耐高電流の絶縁板用のブローアウトチャンバ、リブ付きアイソレータ、抵抗ホルダー、さらに高温炉塗装、熱交換パイプとしての製造物に使用する使用方法
である。
【発明の効果】
【0039】
上記のような複合材料で形成した強化複合材料および製造物は、電気的抵抗性及び電気絶縁性並びに断熱性に関して改善された特性を示し、また従来技術で入手可能材料と比べて良好な機械強度を示す。
【0040】
それゆえ、本発明の他の目的は、本発明による複合材料を、耐火性材料として、ならびに/または電気絶縁性および/もしくは断熱性の材料として、使用することにある。
【0041】
特に、本発明が目的とする強化複合材料、ならびにこの材料で形成した製造物は、30±1.2MPa以上の機械的曲げ強度(UNI EN ISO178規格に準拠して測定)、450秒超の耐アーク性(ASTM D495規格に準拠して測定)、2.60kV/mm超の誘電強度又は絶縁耐力(IEC60243規格に準拠して測定)、並びに、上記規格に準拠する同一測定条件で測定して、TENMAT社製の複合材料である「Refraver」のような現在市販されている材料が示す特性よりも一層改善した特性を示す。同一測定条件でIEC60234規格に準拠して測定した材料「Refraver」の誘電強度(絶縁耐力)の測定値は、1.7Kv/mm以下である。
【0042】
本発明による強化複合材料の他の特別な特性を、以下の表1に概略的に記載する。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明が目的とする強化複合材料およびこれと同一材料で形成した製造物は、以下の明らかな利点、すなわち上述した規格の耐アーク性、高温衝撃耐性および加工容易性の改善に結びつく良好な機械強度を示し、後者は強化複合材料の構造的特徴、および、ひいてはその調製方法および前記強化複合材料でつくられる製造物の調製方法に起因する。実際、材料およびこの材料で形成した製造物の、上述の改善した電気的、熱的および機械的特性を達成すると同時に、この材料で形成した製造物であって、製造公差に従う寸法再現性および製造物の優れた表面精度を有して、極めて高い品質標準を持つ、該製造物を生産する上でのより良い簡素化を遂行し、寸法再現性および製造物の優れた表面精度は、成形型または容器に収容した材料の固化又は硬化ステップ中に、本発明による強化複合材料の収縮現象がなく得られる。すなわち、複合体のセメント成分が成形型に化学的侵襲をせず、複合体、およびひいてはこの材料で形成した製造物をその硬化後に成形型から即座に釈放し、シリコーン成形型の使用を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を説明するものである。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
70%のAlを含有するアルミナセメントの30%(600g)と、0.1〜0.3mmの範囲にわたる粒度分布および98.0%の純度を有するタビュラーアルミナの70%(1400g)と、からなり、シリカおよびジルコンをベースとした長さ6mmのガラス繊維100gと混合した混合物2000gを、300gの水に混合し、この場合、予め、60%のシリコーン樹脂の水性エマルションを6g、水溶液としての分散剤である、活性物質としての35%ポリアクリル酸アンモニウムを10g、溶解させた。混合ステップが完了したら、液体の複合材料をシリコーン成形型に注入し、振動し続ける。
【0047】
成形型および複合体は、温度制御室内に、20℃、相対湿度95%にして、24時間配置する。
【0048】
成形型から取り出した製造物は、95%に湿度制御した温度制御キャビネット内での処理、空気乾燥およびこれに続く24時間周期で105℃まで昇温する強制対流式オーブン内での調整によるエージング後、以下の表2にまとめた、その技術的特性を定義するための現行規格に従う特徴付けを加える。
【0049】
【表2】

【0050】
(実施例2 機械的特性の実験的試験)
実施例1の、本発明が目的とする複合体を製造する手順に従い、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの寸法を有する5つの試料を調製した。
【0051】
上述したように試料に対して、ファエンツァ(Faenza)社のCNR−ISTEC研究所で行った機械的特性は、UNI EN ISO178規格に準拠して測定した曲げ強度に対応し、5つの試料に関して平均値30±1.2Mpaを示した。
【0052】
(実施例3 電気特性の実験的試験)
実施例1の、本発明が目的とする複合体を製造する手順に従い、横幅100mm、厚さ3mmの寸法を有する6つの正方形プレートを調製した。
【0053】
上述したプレートに対して、ジェノバ大学電気工学部(electrical engineering department of the University of Genoa)で行った電気特性テストは、以下のような結果を示す。
【0054】
(耐アーク性試験)
ASTM D495規格およびCEI/IEC61621規格に準拠して測定した耐アーク性は、450秒超の平均値を示した(試験後のプレートには依然として損傷はなかった)。
【0055】
(誘電強度試験)
IEC60234規格に従って測定した誘電強度の平均値は、2.60kv/mm超であった。
【0056】
Refraver材料の誘電強度の値を、IEC60234規格に従う同一測定条件で測定すると、1.7kv/mm以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとする、ガラス繊維で強化した強化複合材料であって、
70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、
タビュラーアルミナまたはコランダムと、
シリカおよびジルコンをベースとしたガラス繊維と、
シリコーン樹脂と、
ポリアクリル酸電解液と、
水硬性結合材としての水と、
を含む、複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料において、前記シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は、5〜10mmの長さ、より好ましくは6〜9mmの長さとした、複合材料。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料において、前記高アルミナセメントは、高耐火特性を有するセメント、すなわち1700℃超の耐熱性または耐火性を有するアルミナセメントとした、複合材料。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材料において、前記タビュラーアルミナまたはコランダムは、0.4mm以下の粒度分布を有するタビュラーアルミナまたはコランダムとし、より好ましくは0.3mm以下の粒度分布を有するタビュラーアルミナまたはコランダム、最も好ましくは0.1〜0.3mmの粒度分布を有するタビュラーアルミナまたはコランダムとした、複合材料。
【請求項5】
請求項1に記載の複合材料において、前記高アルミナセメントは22〜27重量%、好ましくは24〜26重量%であり、前記タビュラーアルミナは58〜63重量%、好ましくは60〜62重量%であり、前記ガラス繊維は、3.9〜4.5重量%、好ましくは4.1〜4.4重量%であり、前記シリコーン樹脂は0.14〜0.18重量%、好ましくは0.15〜0.17重量%であり、前記ポリアクリル酸電解液は0.14〜0.18重量%、好ましくは0.15〜0.17重量%であり、残部は水硬性結合材を意図した水であり、前記パーセントは複合材料の100重量部で計算される、複合材料。
【請求項6】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維で強化した強化複合材料であって、以下のステップ:
(a)シリコーン樹脂およびポリアクリル酸電解液の存在の下に連続撹拌しながら、予め、70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとを水に分散させ、それに続いて、依然として撹拌しながらシリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維を添加してスラリを生ずるよう、水中で混合するステップと、
(b)ステップ(a)で得られたスラリを、振動し続ける成形型または容器内に注入する注入ステップと、
(c)ステップ(a)で得られたスラリを「固化」または硬化する硬化ステップであって、注入後に成形型からの脱型およびそれに続くプロセスとしての、制御した温度および湿度の調節、空気乾燥および強制対流式オーブン内での調節によるエージングを行う、該硬化ステップと、
を有する手順によって得られた/得ることが可能な、強化複合材料。
【請求項7】
請求項6に記載の強化複合材料において、前記水中で混合するステップ(a)において、前記高アルミナセメントは22〜27重量%、好ましくは20〜25重量%であり、前記タビュラーアルミナは55〜60重量%、好ましくは53〜57重量%であり、前記ガラス繊維は3.5〜4.5重量%、好ましくは4.0〜4.5重量%であり、前記シリコーン樹脂(有効成分)は0.12〜0.19重量%、好ましくは0.14〜0.17重量%であり、前記ポリアクリル酸電解液(有効成分)は0.11〜0.18重量%、好ましくは0.13〜0.16重量%であり、残部は水であり、前記パーセントは生成したスラリの100重量部で計算されるものとした、強化複合材料。
【請求項8】
請求項6に記載の強化複合材料において、前記水中で混合するステップ(a)において、前記シリコーン樹脂は、好ましくは樹脂重量に対して50〜70重量%、さらに好ましくは60重量%の水性エマルションの形で分散し、および/または前記ポリアクリル酸電解液は、好ましくは電解液重量に対して25〜45重量%、さらに好ましくは35重量%の水溶液の形で分散し、および/または前記高アルミナセメントはAlの72%以上を含有し、および/または前記タビュラーアルミナもしくはコランダムは純度98.0%以上、より好ましくは99.5%以上を含有し、および/または前記タビュラーアルミナもしくはコランダムは0.4mm以下、好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1〜0.3mmの粒度分布を有し、および/または前記シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は5〜10mmの長さ、好ましくは6〜9mmの長さとした、強化複合材料。
【請求項9】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した強化複合材料を調製する方法であって、
(a)シリコーン樹脂およびポリアクリル酸電解液の存在の下に連続撹拌しながら、予め、70%以上のAlを含有する高アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとを水に分散させ、それに続いて、依然として撹拌しながら、シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維を添加してスラリを生ずるよう、水中で混合するステップと、
(b)ステップ(a)で得たスラリを、振動し続ける成形型または容器内に注入するステップと、
(c)ステップ(a)で得られたスラリを「固化」または硬化する硬化ステップであって、注入後に成形型からの脱型およびそれに続くプロセスとしての、制御した温度および湿度の調節、空気乾燥および強制対流式オーブン内での調節によるエージングを行う、該硬化ステップと、
を有する、調製方法。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか一項に記載のアルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した強化複合材料を含む製造物。
【請求項11】
アルミナセメントと、タビュラーアルミナまたはコランダムとをベースとし、ガラス繊維で強化した、請求項9に記載の方法による強化複合材料を含む製造物を調製する方法において、前記ステップ(b)における前記成形型または容器はシリコーン材料であり、前記ステップ(a)で用いる前記シリカおよびジルコンをベースとするガラス繊維は5〜10mm長、好ましくは6〜9mm長であり、前記ステップ(a)で用いる前記タビュラーアルミナまたはコランダムは0.4mm以下、好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1〜0.3mmの粒度分布を有する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により得られた/得ることができる強化複合材料を含む製造物の使用方法において、ブローアウトチャンバ用のプレート、特に高電圧接触器用のブローアウトチャンバ、耐アーク、耐熱・耐電流の絶縁プレート、リブ付きアイソレータ、電気抵抗用ホルダー、さらに高温炉用コーティングおよび熱交換機用パイプとして使用する、方法。
【請求項13】
請求項1〜8いずれか一項に記載の複合材料を使用する方法において、電気的および/または熱的なタイプの、耐火材料および/または絶縁材料として使用する、方法。

【公表番号】特表2013−520392(P2013−520392A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554459(P2012−554459)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050741
【国際公開番号】WO2011/104670
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512220167)
【氏名又は名称原語表記】FRATELLI BIGARAN DI BIGARAN DARIO E MARIO & C.S.A.S
【Fターム(参考)】