説明

強磁性粉末組成物、及びその製造方法

本発明は、軟磁性鉄系コア粒子を含む強磁性粉末組成物であって、コア粒子の表面に少なくとも1のリン系無機絶縁層が設けられ、次いで金属−有機化合物(単数又は複数)で少なくとも部分的に被覆され、金属−有機化合物(単数又は複数)の全量が、粉末組成物の0.005から0.05重量%の間であり、粉末組成物が潤滑剤をさらに含む強磁性粉末組成物に関する。本発明は、さらに、該組成物を製造するための方法及び該組成物から調製される軟磁性複合部品を製造するための方法、並びに得られた部品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁された鉄系粉末を含む粉末組成物、及びその製造方法に関する。本発明は、さらに、該組成物から調製される軟磁性複合部品の製造方法、並びに得られた部品に関する。
【背景技術】
【0002】
軟磁性材料は、電気機械、作動器、センサ及び変圧器磁心のための誘導子、固定子及び回転子における磁心材料などの用途に使用される。従来、電気機械における回転子及び固定子などの軟磁性磁心は、積層鋼積層体で作製されている。軟磁性複合(SMC)材料は、各粒子に電気絶縁コーティングを有する通常は鉄系軟磁性粒子に基づく。SMC部品は、場合により潤滑剤及び/又は結合剤とともに、従来の粉末冶金(PM)成形法を用いて絶縁粒子を成形することによって得られる。SMC材料は、三次元の磁束を保持することができ、成形法によって三次元の形状を得ることができるため、粉末冶金技術を用いることによって、鋼積層体を使用するよりも、SMC部品の設計において高い自由度を有する材料を製造することが可能である。
【0003】
鉄心部品の2つの重要な特性は、その透磁率及び磁心損失特性である。材料の透磁率は、磁化するその能力、又は磁束を保持するその能力の指標である。透磁率は、誘導磁束と、磁化力又は磁場強度との比で定義される。磁性材料が変動磁場に曝されると、ヒステリシス損失及び渦電流損失の両方によるエネルギー損失が生じる。たいていの電動機用途における全磁心損失の大部分を占めるヒステリシス損失(DC損失)は、鉄心部品内の保持磁力を克服するのに必要なエネルギー消費によってもたらされる。磁力を、基材粉末の純度及び品質を向上させることによって、最小限に抑えることができるが、最も重要なことは部品の熱処理(即ち応力緩和)の温度及び/又は時間を増大させることによって最小限に抑えることができる。渦電流損失(AC損失)は、交流電流(AC)条件によって引き起こされる磁束変化による鉄心部品における電流の生成によってもたらされる。渦電流を最小限に抑えるために、部品の電気抵抗が大きいことが望ましい。AC損失を最小限に抑えるために必要な電気抵抗のレベルは、用途の種類(動作周波数)及び部品のサイズに依存する。
【0004】
ヒステリシス損失は、交流電場の周波数に比例するのに対して、渦電流損失は、周波数の二乗に比例する。したがって、高周波数では、主として渦電流損失が重要であり、渦電流損失を低減しながら低レベルのヒステリシス損失を維持することが特に必要とされる。絶縁軟磁性粉末が使用される、高周波数で動作する用途では、個々の粉末粒子の電気絶縁(粒子内部渦電流)が十分であれば生成する渦電流をより小さな容量に制限することができるため、より微細な粒径を有する粉末を使用することが望ましい。したがって、高周波数で機能する部品にとっては、微粉末並びに高電気抵抗がより重要になる。粒子絶縁が如何に良好に働くかということとは無関係に、部品の原体の内部に無制限の渦電流の一部が常に存在して損失を引き起こす。原体渦電流損失は、磁束を保持する成形部の断面積に比例する。したがって、磁束を保持する大きな断面積を有する部品には、原体渦電流損失を制限するために、より高い電気抵抗が必要になる。
【0005】
絶縁された鉄系軟磁性粉末は、10〜600μm、例えば100〜400μmの平均粒径を有する。約180μmから250μmの間の平均粒径及び、粒子の10%未満が45μm未満の粒径を有する粉末(40メッシュ粉末)は、通常、1kHzまでの周波数で機能する部品に使用される。50〜150μm、例えば約80μmから120μmの間の平均粒径を有し、10〜30%が45μm未満である粉末(100メッシュ粉末)は、200Hzから10kHzまでの周波数で機能する部品に使用され得るのに対して、2kHzから50kHzの周波数で機能する部品は通常、約20〜75μm、例えば約30μmから50μmの間の平均粒径を有し、40%を超える粒子が45μm未満である絶縁軟磁性粉末(200メッシュ粉末)に基づく。平均粒径及び粒径分布は、用途の要件に応じて最適化されるのが好ましい。したがって、重量平均粒径の例は、10〜450μm、20〜400μm、20〜350μm、30〜350μm、30〜300μm、20〜80μm、30〜50μm、50〜150μm、80〜120μm、100〜400μm、150〜350μm、180〜250μm、120〜200μmである。
【0006】
一部の特殊な用途では、より微細な粒径が好ましい。これらの用途において、好ましい重量平均粒径は、10〜50μmであり、粉末の約90重量%が、通常、75μm未満である。
【0007】
コーティングされた鉄系粉末を使用する磁心部品の粉末冶金製造における研究が、最終部品の他の特性に悪影響を及ぼすことなく特定の物理特性及び磁気特性を向上させる鉄粉末組成物の開発に向けられてきた。所望の部品特性としては、例えば、広い周波数範囲にわたって透磁率が高いこと、磁心損失が小さいこと、飽和磁気誘導が大きいこと、及び機械強度が高いことが挙げられる。所望の粉末特性としては、さらに、粉末を、部品の表面に損傷を与えずに成形装置から容易に抜き出しできる高密度の部品に容易に成形できることを意味する圧縮成形技術への適合性が挙げられる。
【0008】
米国特許第6309748号(Lashmore)には、直径サイズが約40から約600ミクロンであり、各粒子に無機酸化物のコーティングがなされた強磁性粉末が記載されている。
【0009】
米国特許第6348265号(Jansson)には、薄いリン及び酸素含有コーティングでコーティングされた鉄粉末であって、コーティングされた粉末が、熱処理できる軟磁性磁心への成形に好適である鉄粉末が教示されている。
【0010】
米国特許第4601765号(Soileau)には、最初にアルカリ金属珪酸塩の膜でコーティングされ、次いでシリコーン樹脂ポリマーが上塗りされた鉄粉末を利用した成形鉄心が教示されている。
【0011】
米国特許第6149704号(Moro)には、フェノール樹脂及び/又はシリコーン樹脂のコーティング、並びに場合により酸化チタン又は酸化ジルコニウムのゾルで電気的に絶縁された強磁性粉末が記載されている。得られた粉末は、ステアリン酸金属潤滑剤と混合され、圧粉磁心に成形される。
【0012】
米国特許第7153594号(Kejzelmanら)には、軟磁性鉄系コア粒子と、シラン、チタネート、アルミネート、ジルコネート又はそれらの混合物からなる群から選択される潤滑量の化合物とを含む強磁性粉末組成物について教示されている。
【0013】
米国特許第7235208号(Moro)には、強磁性粉末が分散された絶縁性結合剤を有する強磁性粉末で作製された圧粉磁心であって、絶縁性結合剤が、三官能性アルキル−フェニルシリコーン樹脂、及び場合により無機酸化物、炭化物又は窒化物を含む圧粉磁心が教示されている。
【0014】
特許出願PCT/SE2009/050278には、軟磁性鉄系コア粒子を含む強磁性粉末組成物であって、コア粒子の表面が、第1の無機絶縁層と、第1の層の外側に位置する、一般式R[(R(R(MOn−1)]を有する金属−有機化合物の少なくとも1の金属−有機層とを備え、3.5未満のモース硬度を有する金属又は半金属微粒子化合物が少なくとも1の金属−有機層に接着され、粉末組成物が微粒子潤滑剤をさらに含む強磁性粉末組成物について教示されている。
【0015】
軟磁性の分野のさらなる文献は、公開番号がJP2007−129154である特願2005−322489(Yuuichi);公開番号がJP2007−088156である特願2005−274124(Maeda);公開番号がJP2006−0244869である特願2004−203969(Masaki);公開番号が2006−233295である特願2005−051149(Ueda)、及び公開番号が2006−245183である特願2005−057193(Watanabe)である。
【0016】
例えば、磁心損失特性及び抵抗の向上などの軟磁性粉末組成物の性能のさらなる向上に対する継続的な必要性が存在する。したがって、軟磁性粉末組成物の性能を向上させる製品及び方法を見いだすことが極めて望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、軟磁性鉄系コア粒子を含む強磁性粉末組成物であって、コア粒子の表面に少なくとも1のリン系無機絶縁層が設けられ、次いで金属−有機化合物(単数又は複数)で少なくとも部分的に被覆され、金属−有機化合物(単数又は複数)の全量が、粉末組成物の0.005から0.05重量%の間であり、少なくとも1の金属−有機化合物が加水分解性であり、アルキルアルコキシシラン、アルキルアルコキシ(ポリ)シロキサン、アルキルアルコキシシルセスキオキサン、又は加水分解性金属−有機化合物の中心金属原子が代わりにTi、Al若しくはZrで構成される対応する化合物から選択され、粉末組成物が、潤滑剤をさらに含む強磁性粉末組成物に関する。
【0018】
リン系無機絶縁層は、好ましくは液体の形の少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物で全面的又は部分的に被覆されている。添加金属−有機化合物(単数又は複数)の全量は、好ましくは、組成物の0.05重量%未満である。
【0019】
粉末組成物は、潤滑剤をも含む。潤滑剤は、好ましくは液体の形の少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物で部分的又は全面的に被覆された少なくとも1のリン系無機絶縁層を備えたコア粒子を含む組成物に添加される。
【0020】
本発明は、さらに、軟磁性複合材料を調製するための方法であって、本発明による組成物を少なくとも約600MPaの成形圧力でダイにて一軸成形するステップと、ダイを、例えば、添加微粒子潤滑剤の溶融温度より低い温度まで場合により予備加熱するステップと、得られたグリーン体を抜き出すするステップと、グリーン体を場合により熱処理するステップとを含む方法に関する。本発明による複合部品は、典型的には、リン(P)の含有量が約0.01〜0.15重量%であり、基材粉末に対するSi、Ti、Zr、Alの群から選択される添加金属元素の含有量が部品の約0.001〜0.03重量%である。
【0021】
本発明の一実施形態において、電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を、抵抗が高く、磁心損失が小さい軟磁性部品に成形することができる。
【0022】
本発明の別の実施形態において、電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を、高強度を有する軟磁性部品に成形することができ、その部品を、鉄系粉末の電気絶縁コーティングを許容不可能に劣化させることなく最適な熱処理温度で熱処理することができる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態において、電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を、抜き出し挙動を許容可能なレベルに維持しながら潤滑剤の最小限の添加を用いて軟磁性部品に成形することができる。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態において、電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を、渦電流損失を低レベルに維持しながら、ヒステリシス損失を最小限に抑えながら高強度、高最大透磁率及び高磁気誘導を有する軟磁性部品に成形することができる。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態において、例えばホールフローによって測定された粉末特性が許容可能である電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を製造するための方法を提供する。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態において、毒性の溶媒若しくは環境に好ましくない溶媒、又は乾燥処理をなにも必要としない、電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を製造するための方法を提供する。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態において、電気絶縁された鉄系粉末を含む鉄系粉末組成物を、抜き出し挙動、並びに成形軟磁性複合部品の電気抵抗を向上させるために添加剤の最小限の添加を用いて軟磁性部品に成形することができる方法を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態において、十分な機械強度及び許容可能な磁束密度(磁気誘導)並びに最大限の透磁率とともに低磁心損失を有する成形され、場合により熱処理された軟磁性鉄系複合部品を製造するための方法を提供する。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態において、渦電流損失を低レベルに維持しながらヒステリシス損失を最小限に抑えることによって得られる、高強度、高最大透磁率、高磁気誘導及び低磁心損失を有する成形及び熱処理された軟磁性部品を製造するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
基材粉末
鉄系軟磁性コア粒子は、水アトマイズ、ガスアトマイズ又は海綿鉄粉末であってもよいが、水アトマイズ粉末が好適である。
【0031】
鉄系軟磁性コア粒子は、本質的に純粋な鉄、7重量%まで、好ましくは3重量%までのケイ素を有する合金鉄Fe−Si、群:Fe−Al、Fe−Si−Al、Fe−Ni、Fe−Ni−Coから選択される合金鉄、又はそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。本質的に純粋な鉄、即ち不可避不純物を含む鉄が好適である。
【0032】
粒子は、球状又は不規則な形状であってもよいが、不規則な形状の粒子が好適である。見かけ密度(AD)は、2.8から4.0g/cmの間、好ましくは3.1から3.7g/cmの間であってもよい。
【0033】
100〜400μm、例えば約180μmから250μmの間の平均粒径を有し、粒子の10%未満が45μm未満の粒径を有する絶縁された鉄系軟磁性粉末(40メッシュ粉末)は、通常、1kHzまでの周波数で機能する部品に使用される。50〜150μm、例えば約80μmから120μmの間の平均粒径を有し、10〜30%が45μm未満である粉末(100メッシュ粉末)は、200Hzから10kHzまでの周波数で機能する部品に使用され得るのに対して、2kHzから50kHzまでの周波数で機能する部品は、通常、約20〜75μm、例えば約30μmから50μmのの間の平均粒径を有し、40%を超える粒子が45μm未満である粉末(200メッシュ粉末)に基づく。平均粒径及び粒径分布は、好ましくは要件に応じて最適化される。したがって、重量平均粒径の例は、10〜450μm、20〜400μm、20〜350μm、30〜350μm、30〜300μm、20〜80μm、30〜50μm、50〜150μm、80〜120μm、100〜400μm、150〜350μm、180〜250μm、120〜200μmである。しかし、一部の高周波数用途には、より微細な粒径が好適である。これらの用途では、好ましい重量平均粒径は10〜50μmである。
【0034】
無機コーティング層
コア粒子は、好ましくはリン系である第1の無機絶縁層を備える。この第1のコーティング層を、水又は有機溶媒に溶解したリン酸で鉄系粉末を処理することによって達成することができる。水性溶媒に、防錆剤及び界面活性剤が場合により添加される。鉄系粉末粒子をコーティングする好適な方法は、米国特許第6348265号に記載されている。リン酸化処理を繰り返してもよい。鉄系コア粒子のリン系絶縁無機コーティングは、好ましくは、ドープ剤、防錆剤又は界面活性剤などの添加剤をなにも含まない。
【0035】
層内のリンの含有量は、組成物の0.01から0.15重量%の間であってもよい。
【0036】
加水分解性金属−有機化合物の添加
鉄系粉末組成物への液体又は固体の添加はどれも、より複雑且つ高価な処理、又は最終複合材料の軟磁性性能の悪化をもたらす。したがって、どんな添加でも重量又は体積を最小限に抑えることが大きな関心事である。
【0037】
加水分解性金属−有機化合物の有機部分の長さ、サイズ及び化学的機能を利用して、疎水性又は湿潤性、並びに化合物の粘度を制御することができる。したがって、本発明による好適な加水分解性金属−有機化合物は、本明細書に記載の鉄系粉末に向けて、低粘度及び極めて高い湿潤性を示すものである。
【0038】
リン系無機絶縁層は、少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物で全面的又は部分的に被覆されている。金属−有機加水分解性化合物は、表面改質剤、カップリング剤又は架橋剤の群から選択されてもよい。加水分解性金属−有機化合物は、中心原子がSiからなるシラン、シロキサン及びシルセスキオキサン、又は中心原子がTi、Al若しくはZrからなる対応する化合物、又はそれらの混合物から選択されてもよい。化合物は、その誘導体、中間体又はオリゴマーであり得る。最も好適な化合物は、O/Si比が1より大きいポリシロキサン及びシルセスキオキサン、即ちx>1、好ましくはx>1.5であり、nが2より大きい(Si−Ox)nの群に見いだされる。
【0039】
加水分解性金属−有機化合物と比較して、非加水分解性金属−有機化合物は、ホールフローレートなどの粉末特性の低下をもたらす。したがって、加水分解性化合物が好適である。しかし、加水分解性でない金属−有機化合物を加水分解性化合物(単数又は複数)と組み合わせて添加してもよい。したがって、リン系無機絶縁層は、固体又は液体の形、好ましくは液体の形の、少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物と、加水分解性でない少なくとも1の金属−有機化合物との混合物で全面的又は部分的に被覆されてもよい。シルセスキオキサンの群は、また、加水分解性基をなにも含まずに水素のみで置換されたシルセスキオキサン、アリールのみで置換されたシルセスキオキサン、又はアルキルのみで置換されたシルセスキオキサンを含む。これらの場合、シルセスキオキサンをアルキル化若しくはアリール化アルコキシポリシロキサン、アルキル化若しくはアリール化アルコキシオリゴシロキサン、又はアルキル化若しくはアリール化アルコキシシランなどの加水分解性化合物に溶解させることができる。例えば水溶液で予め加水分解された配合物も本発明の範囲内である。
【0040】
加水分解性基は、好ましくは、4個未満、好ましくは3個未満の炭素原子を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はアセトキシ基から選択される。
【0041】
場合により、加水分解性金属−有機化合物は、向上した表面接着性又は反応を与える少なくとも1つの有機部、又は部分を含んでいてもよい。したがって、有機部は、アミン、アンモニウム、アミド、イミン、イミド、アジド、ウレイド、ウレタン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトライト、ベンジルアミン、ビニルベンジルアミンの化学種から選択される1つ又は複数の官能基を含んでいてもよい。また、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、フェニル、ビニル、メルカプト、硫黄及び硫化物などの化学種が場合により含まれていてもよい。好ましくは、少なくとも1つの有機部が、窒素を含む少なくとも1つの基を含んでいてもよい。より好ましくは、少なくとも1つの有機部が、少なくとも1つのアミノ基を含んでいてもよい。
【0042】
最も好適な加水分解性化合物は、アルキルアルコキシシラン、アルキルアルコキシ(ポリ)シロキサン、アルキルアルコキシシルセスキオキサン、アリールアルコキシシラン、アリールアルコキシ(ポリ)シロキサン、及びアリールアルコキシシルセスキオキサンから選択されてもよい。アルキルアルコキシポリシロキサン及びアリールアルコキシポリシロキサンは、それぞれアルキルアルコキシオリゴシロキサン及びアリールアルコキシオリゴシロキサンであってもよい。加水分解性化合物と組み合わせられるのであれば、水素シルセスキオキサン、アリールシルセスキオキサン及び/又はアルキルシルセスキオキサンのような他の金属−有機化合物を使用してもよい。記載の化合物のアルキル基又はアリール基は、少なくとも1つのアミノ官能基を好ましくは含む。特定の理論に縛られずに、非加水分解性金属−有機化合物、特にシルセスキオキサンは、たとえ本発明のように少量で添加されても、最終部品の電気抵抗を向上させることができると考えられる。非加水分解性金属−有機化合物(単数又は複数)の添加量は、金属−有機化合物(単数又は複数)の全添加量の95重量%未満、好ましくは80重量%未満を占めるべきである。
【0043】
金属−有機化合物がモノマーである場合は、それは、トリアルコキシ及びジアルコキシシラン、チタネート、アルミネート、又はジルコネートの群から選択されてもよい。したがって、金属−有機化合物のモノマーは、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−アミノプロピル−メチル−ジエトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−メチル−ジメトキシシラン、1,7−ビス(トリエトキシシリル)−4−アザヘプタン、トリアミノ−官能性プロピル−トリメトキシシラン、3−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピル−トリエトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)−イソシアヌレート、3−グリシジルオキシプロピル−N−トリエトキシシリルプロピル−ウレタン、1−アミノメチル−トリエトキシシラン、1−アミノエチル−メチル−ジメトキシシラン、又はそれらの混合物から選択されてもよい。水性無アルコールアミノシランヒドロシレートも含まれる。
【0044】
ポリマー及びオリゴマー金属−有機化合物、又は金属−有機化合物のポリマー及びオリゴマーは、シラン、チタネート、アルミネート、又はジルコネートのポリマー又はオリゴマーから選択されてもよい。したがって、金属−有機化合物のポリマー又はオリゴマーは、アルコキシ変性アリール/アルキル/水素シルセスキオキサン、アルコキシ変性アリール/アルキル/水素シロキサン、アルコキシ変性アリール/アルキル/水素ポリシロキサン、又はそれらの誘導体及び中間体から選択されてもよい。したがって、金属−有機化合物のポリマー及びオリゴマーは、メチルメトキシシロキサン、エチルメトキシシロキサン、フェニルメトキシシロキサン、メチルエトキシシロキサン、水素メトキシシロキサン、若しくは対応する予め加水分解されたシラノール、アルコキシ変性水素/メチル/フェニル若しくはビニルシルセスキオキサン、又はそれらの混合物から選択されてもよい。より好ましくは、金属−有機化合物のポリマー及びオリゴマーは、オリゴマーの3−アミノプロピル−メトキシ−シラン、3−アミノプロピル/プロピル−メトキシ−シラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−メトキシ−シラン、若しくはN−アミノエチル−3−アミノプロピル/メチル−アルコキシ−シラン、3−アミノプロピル−メトキシ−シロキサン、1−アミノ−エチル−メトキシ−シロキサン、3−アミノプロピル/プロピル−メトキシ−シロキサン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル/メチル−メトキシ−シロキサン、1−アミノエチル−シルセスキオキサン、メトキシ末端メチルシルセスキオキサン、メトキシ末端フェニルシルセスキオキサン、メトキシ末端若しくはエトキシ末端アミノシルセスキオキサン、例えば、メトキシ末端3−アミノプロピル−シルセスキオキサン及びメトキシ末端3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル−シルセスキオキサン、又はそれらの混合物から選択されてもよい。シルセスキオキサンは、閉又は開酸化ケイ素ケージ、即ちT−8、T−10、T−12等から選択されてもよい。
【0045】
好ましくは、少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物は、3−アミノプロピル−トリエトキシ−シラン、オリゴマーの3−アミノプロピル−メトキシ−シラン、メチルメトキシシロキサン、フェニルメトキシシロキサン、メトキシ末端メチルシルセスキオキサン、メトキシ末端フェニルシルセスキオキサン、メトキシ末端3−アミノプロピルシルセスキオキサン、若しくはメトキシ末端3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルシルセスキオキサン、又はそれらの混合物から選択される。
【0046】
加水分解性金属−有機化合物を潤滑剤と組み合わせて極めて少量添加すると、成形及び熱処理複合部品の見かけ密度、ホールフローレート、鋳型抜き出し力及び電気抵抗などの粉末及び磁気特性に対して驚くほど良好な影響が及ぼされる。
【0047】
金属−有機化合物(単数又は複数)の全量は組成物の0.005〜0.050重量%であり、好ましくは、上限は0.050重量%未満、例えば、0.005〜0.045重量%、0.010〜0.045重量%、0.020〜0.040重量%、又は0.020〜0.035重量%である。これらの種類の金属−有機化合物をEvonik Ind.、Wacker Chemie AG、Dow Corning Corp.、Gelest Ltd.、Mitsubishi Int. Corp.及びFamas Technology Sarl等の企業から商業的に入手することができる。
【0048】
場合により、触媒化合物を加水分解性金属−有機化合物に補給物として添加することができる。触媒化合物は、好ましくは、tert−nブチル−チタネートなどのチタネート、錫又はジルコネートの金属−有機エーテル又はエステルから選択される。
【0049】
潤滑剤
本発明による粉末組成物は、潤滑剤、例えば、油又は固体状の潤滑剤を含む。好ましくは、潤滑剤は、非金属の非溶融接着微粒子潤滑剤である。微粒子潤滑剤は、重要な役割を果たし、ダイ壁潤滑を施す必要のない成形を可能にする。微粒子潤滑剤は、第一級及び第二級脂肪酸アミド、脂肪酸アルコール又はビスアミドからなる群から選択されてもよい。微粒子潤滑剤の潤滑部分は、12〜22個の炭素原子を含む飽和又は不飽和鎖であってもよい。微粒子潤滑剤は、好ましくは、ステアラミド、エルカミド、ステアリル−エルカミド、エルシル−ステアラミド、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、エチレン−ビスオレイルアミド、エチレン−ビスステアラミド(即ち、EBS若しくはアミドワックス)、又はメチレン−ビスステアラミドから選択されてもよい。潤滑剤は、組成物の0.01〜1重量%、又は0.01〜0.6重量%、又は0.05〜1重量%、又は0.05〜0.6重量%、又は0.1〜0.6重量%、又は0.2〜0.4重量%、又は0.3〜0.5重量%、又は0.2〜0.6重量%の量で存在してもよい。
【0050】
組成物の調製方法
本発明による強磁性粉末組成物の調製のための方法は、以下のステップを含む。
−軟磁性鉄系コア粒子をリン系無機化合物でコーティングしてリン系無機絶縁層を得ることで、コア粒子の表面を電気絶縁させるステップ。
−触媒を加水分解性金属−有機化合物に場合により添加するステップ。
−コーティングされたコア粒子と、少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物とを混合して、以上に開示されているように前記粒子を前記金属−有機化合物で少なくとも部分的に被覆するステップ。
−前記コーティング及び被覆されたコア粒子と潤滑剤、例えば微粒子潤滑剤とを混合するステップ。
【0051】
軟磁性部品を製造するための方法
本発明による軟磁性複合材料を調製するための方法は、本発明による組成物を少なくとも約600MPaの成形圧力でダイにて一軸成形するステップと、ダイを、例えば、添加微粒子潤滑剤の溶融温度より低い温度まで場合により予備加熱するステップと、成形前に粉末を25〜100℃に場合により予備加熱するステップと、得られたグリーン体を抜き出すステップと、グリーン体を真空雰囲気、非還元雰囲気、不活性雰囲気又は弱酸化雰囲気中で500〜750℃の温度にて熱処理するステップとを含む。ダイの温度は重要であり、密度、透磁率及び電気抵抗などの磁気特性を調整するために利用され得る。概して、成形圧力が高いほど、(微粒子)潤滑剤を少なくし、ダイ温度を高くすることができる。より微細な粒径の粉末(例えば、100及び200メッシュ粉末)は、粗い粉末(例えば40メッシュ)と比較して、高いダイ温度に対してより敏感である。ダイ温度は、好ましくは、約30〜120℃、又は50〜100℃、又は60〜90℃、又は50〜90℃、又は50〜80℃に設定される。
【0052】
グリーン体を熱処理する方法を大気雰囲気、真空雰囲気、非還元雰囲気、不活性雰囲気、又は例えば0.01から3%の酸素の弱酸化雰囲気中で実施してもよい。場合により、不活性雰囲気中で熱処理を実施し、その後、水蒸気などの酸化雰囲気に曝露して、より高強度の最外殻又は層を酸化又は構成する。温度は、750℃までであってもよい。
【0053】
熱処理条件は、潤滑剤を蒸発させ、部品を応力緩和させるものとする。潤滑剤の蒸発又は焼失は、約250から500℃を超える温度で熱処理サイクルの第1部の間に達成される。熱処理サイクルの最高温度(500〜750℃、又は520〜600℃、又は530〜580℃、又は530〜570℃)において、成形体が応力緩和されるため、複合材料のヒステリシス損失が低減される。
【0054】
本発明により調製された、成形及び熱処理された軟磁性複合材料は、好ましくは、リンの含有量が複合部品の0.01〜0.15重量%であり、基材粉末に対するSi、Ti、Zr及びAlの群から選択される添加金属元素の含有量が部品の0.001〜0.03重量%である。好ましくは、金属元素はSiである。
【実施例】
【0055】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示のみを目的とし、それに伴う様々な修正又は変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲内に含まれることになり、添付の特許請求の範囲内であると考えられると理解される。本発明を以下の実施例によって例示する。
【0056】
(例1)
約220μmの平均粒径を有し、粒子の5%未満が45μm未満の粒径を有する鉄系水アトマイズ粉末(40メッシュ粉末)に電気絶縁リン系薄層(Somaloy(いずれかの国における登録商標)700)をさらに設けた。その後、基準を除くすべての試料を、メチル及びフェニルメトキシシロキサン、メチルシルセスキオキサン、及びメトキシ変性フェニルシルセスキオキサンからなる0.03重量%の液体加水分解性金属−有機化合物と混合した。その後、すべての試料を表1に記載の微粒子潤滑剤と混合し、その後1100MPaにて、45mmの内径、55mmの外径及び5mmの高さを有するトロイドに成形した。ツールダイをステアリン酸アミド(SAA)試料に対して80℃に予備加熱し、EBS試料に対して100℃に予備加熱した。表1は、粉末特性及び抜き出し挙動を示す。
【表1】

【0057】
本発明により処理された試料については、静的抜き出し力(Fs)が低下している。基準と比較した試料A及びCは、ステアリン酸アミド(SAA)を使用する代わりにアミドワックス(EBS)を用いると粉末特性をさらに向上させることができることを示している。抜き出し挙動が向上するため、成形体密度及び例えば磁気誘導を向上させるために潤滑剤の量を減少させることができる。したがって、試料D及びEは、いずれも基準及びBと比較して向上した、又は少なくとも同等の静的抜き出し力(Fs)並びに動的力(Fd)を示している。
【0058】
(例2)
表2は、例1により処理された40メッシュ粉末の密度及び磁気特性を示す。大気の雰囲気中530℃での30分間にわたる熱処理法を実施した。得られた試料の比抵抗を4点測定によって測定した。磁気測定では、リングを一次回路用に100回、二次回路用に100回巻きつけて、ヒステリシスグラフを利用する測定を可能にした(Brockhaus MPG 100)。
【表2】

【0059】
表2において見られるように、本発明により製造された成形体の電気抵抗が大幅に向上されていることで、渦電流損失及び磁心損失が減少している。
【0060】
(例3)
試料を例1による加水分解性金属−有機化合物で処理し、さらにEBSと混合し、80℃のダイ温度を用いて800MPaで成形した。試料C及びDを0.2%のEBSのみと混合し、100℃のダイ温度を用いて1100MPaで成形した。基準試料を0.4重量%のKenolube(いずれかの国における登録商標)と混合し、800MPaで低温成形した。基準試料に対する熱処理は530℃で30分間であるのに対して、本発明による試料は、いずれも大気の雰囲気中で、表3に従って530℃又は550℃で30分間熱処理されている。その後、例2に従って磁気特性を測定した。
【表3】

【0061】
表3において見られるように、Aでは基準と比較して、電気抵抗とともにAC損失が大幅に向上している。熱処理中に温度が上昇しても、抵抗の著しい向上が可能である(B)。これによって、より低量の微粒子潤滑剤(試料C&D)及び/又はより高い熱処理温度(試料B&D)を用いることを容易にすることができることで、得られる部品の密度、磁気誘導及びDC損失が向上することになる。試料Dは、EBSが少量添加され、熱処理温度が高いが、それでも基準の抵抗とはさほど違わない抵抗を示し、磁心損失及びDC損失の顕著な向上を示している。
【0062】
(例4)
鉄系水アトマイズ粉末は、約40μmの平均粒径を有し、60%が45μm未満であり(200メッシュ粉末)、鉄粒子が、リン系電気絶縁コーティングによって囲まれている(Somaloy(いずれかの国における登録商標)110i)。その後、粉末を例1に記載されているように処理し、表4に記載の量の微粒子潤滑剤と混合した。
【0063】
本発明による試料をEBSと混合し、80℃のダイ温度を用いて800MPaで成形した。試料D及びEを0.3%のEBSのみと混合し、90℃のダイ温度を用いて1100MPaで成形した。
【0064】
試料F及びGを比較例として示す。200メッシュ粉末を使用し、加水分解性金属−有機化合物の量を0.03重量%に維持したことを除いては、PCT/SE2009/050278(A1)の表1に従って試料Fを調製した。試料Gを試料Fと同様に調製したが、加水分解性金属−有機化合物の含有量を0.4重量%とした。
【0065】
基準試料を0.5重量%のKenolube(いずれかの国における登録商標)と混合し、800MPaで低温成形した。基準試料に対する熱処理は500℃で30分間であるのに対して、本発明による試料は、いずれも大気の雰囲気中で、表4に従って500℃から550℃の間で30分間熱処理されている。磁気特性は、例2に従って測定されている。
【表4】

【0066】
表4において見られるように、基準とAとを比較すると、本発明により製造された成形体の電気抵抗とともにAC損失が大幅に向上している。同じ量のEBSを使用すると、温度が上昇しても(B&C)、基準以上の抵抗を維持し、向上した又は同等の磁心損失、DC損失及びAC損失を有することが示されている。より少量のEBSの添加で、良好な抵抗及びAC損失、並びに磁心損失及びDC損失の低下がもたらされることが開示されている。これによって、より少量の微粒子潤滑剤(試料D及びE)及び/又はより高い熱処理温度(試料BからE)を用いることを容易にすることができることで、密度、磁気誘導及びDC損失が向上することになる。より大きな断面積(即ち30×30mm)を有する部品ではAC損失に対する影響がはっきりと認められる。しかし、温度の過度の上昇及び潤滑剤量の過度の減少は、抵抗の低下及びAC損失の増加をもたらす場合がある。
【0067】
表4における結果は、本発明による試料(試料AからE)が、同じ熱処理温度において、F及びGのような最新技術の粉末と比較すると驚くほど高い抵抗及び密度、並びに小さな損失を有することを実証している。
【0068】
(例5)
鉄系水アトマイズ粉末は、約40μmの平均粒径を有し、60%が45μm未満であり(200メッシュ粉末)、鉄粒子が、リン系電気絶縁コーティングによって囲まれている(Somaloy(いずれかの国における登録商標)110i)。その後、試料を、表5に記載されているように、0.005から0.070重量%の間の量のメチルメトキシシロキサン、メチルシルセスキオキサン、及びオリゴマーの3−アミノプロピル/プロピル−メトキシシランからなる加水分解性金属−有機化合物と混合し、その後0.3重量%又は0.5重量%のEBSと混合した。本発明によるすべての粉末を1100MPaにて、45mmの内径、55mmの外径及び5mmの高さを有するトロイドに成形した。ツールダイを90℃に予備加熱した。60℃のダイ温度を用いて、基準試料粉末1及び2をKenolube(いずれかの国における登録商標)とともにそれぞれ800MPa及び1100MPaで成形した。すべての試料に対する熱処理は、大気の雰囲気中で530℃にて30分間であった。得られた試料の比抵抗を4点測定によって測定した。
【0069】
表5は、加水分解性金属−有機化合物の量及び潤滑剤添加量を変更した場合における粉末特性及び比抵抗に対する影響を示す。
【表5】

【0070】
表5は、本発明により処理された粉末を用いて製造された部品が、基準と比較して、向上した粉末特性並びに大幅に高い比抵抗を示すことを示している。必要とされる潤滑剤の量が小さくなるため、より高い成形圧力が容易になり得、より高い密度をもたらす。不十分な加水分解性化合物の量(<0.005重量%)は、コーティング分布不良及び許容不可能な低い比抵抗をもたらす(B5参照)。したがって、本発明によれば、加水分解性化合物の好適な量は、0.005から0.05重量%の間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性鉄系コア粒子を含む強磁性粉末組成物であって、該コア粒子の表面に少なくとも1のリン系無機絶縁層が設けられ、次いで金属−有機化合物(単数又は複数)で少なくとも部分的に被覆され、該金属−有機化合物(単数又は複数)の全量が、該粉末組成物の0.005から0.05重量%の間であり、該少なくとも1の金属−有機化合物が加水分解性であり、アルキルアルコキシシラン、アルキルアルコキシ(ポリ)シロキサン、アルキルアルコキシシルセスキオキサン、アリールアルコキシシラン、アリールアルコキシ(ポリ)シロキサン、アリールアルコキシシルセスキオキサン、又は該加水分解性金属−有機化合物の中心金属原子が代わりにTi、Al若しくはZrで構成される対応する化合物から選択され、該粉末組成物が潤滑剤をさらに含む、上記強磁性粉末組成物。
【請求項2】
前記金属−有機化合物(単数又は複数)が、水素シルセスキオキサン、アリールシルセスキオキサン及び/又はアルキルシルセスキオキサンをさらに含む請求項1に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項3】
金属−有機化合物(単数又は複数)の全量が、前記組成物の0.010〜0.045重量%、好ましくは0.020〜0.040重量%、より好ましくは0.020〜0.035重量%の範囲である請求項1又は2に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項4】
前記潤滑剤が、前記組成物の0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜1重量%、好ましくは0.05〜0.6重量%又は0.010〜0.06重量%、好ましくは0.1〜0.6重量%の量で存在する請求項1から3までのいずれか一項に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項5】
前記潤滑剤が微粒子潤滑剤である請求項1から4までのいずれか一項に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項6】
前記微粒子潤滑剤が、第一級及び第二級脂肪酸アミド、脂肪酸アルコール、又はビスアミドからなる群から選択される請求項4に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物がモノマーであり、トリアルコキシ及びジアルコキシ−シラン、チタネート、アルミネート又はジルコネートの群から選択される請求項1から6までのいずれか一項に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1の加水分解性金属−有機化合物がポリマー又はオリゴマーであり、アルキルアルコキシ(ポリ)シロキサン若しくはアリールアルコキシ(ポリ)シロキサン、又はそれらの誘導体及び中間体、或いは金属−有機化合物の中心金属原子が代わりにTi、Al若しくはZrで構成される対応する化合物から選択される請求項1から6までのいずれか一項に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1の金属−有機化合物が、3−アミノプロピル−トリエトキシ−シラン、オリゴマーの3−アミノプロピル−メトキシ−シラン、メチルメトキシシロキサン、フェニルメトキシシロキサン、メトキシ末端メチルシルセスキオキサン、メトキシ末端フェニルシルセスキオキサン、メトキシ末端3−アミノプロピルシルセスキオキサン、若しくはメトキシ末端3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルシルセスキオキサン、又はそれらの混合物であ
る請求項1から8までのいずれか一項に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項10】
前記絶縁された鉄系軟磁性粉末が、10〜600μmの平均粒径を有する請求項1から9までのいずれか一項に記載の強磁性粉末組成物。
【請求項11】
強磁性粉末組成物を調製するための方法であって、
a)軟磁性鉄系コア粒子をリン系無機絶縁層でコーティングすることで、該コア粒子の表面を該リン系無機絶縁層によって電気的に絶縁するステップ、
b)該コーティングされた軟磁性鉄系コア粒子と、少なくとも1の金属−有機化合物であって、加水分解性であり、アルキルアルコキシシラン、アルキルアルコキシ(ポリ)シロキサン、アルキルアルコキシシルセスキオキサン、アリールアルコキシシラン、アリールアルコキシ(ポリ)シロキサン、アリールアルコキシシルセスキオキサン、又は加水分解性金属−有機化合物の中心金属原子が代わりにTi、Al若しくはZrで構成される対応する化合物から選択される上記金属−有機化合物(単数又は複数)とを混合して、該コア粒子が該金属−有機化合物(単数又は複数)によって少なくとも部分的に被覆され、該金属−有機化合物(単数又は複数)の全量が該組成物の0.005から0.05重量%の間となるようにするステップ、並びに
c)コーティング及び被覆されたコア粒子と潤滑剤とを混合するステップ
を含む、上記方法。
【請求項12】
軟磁性複合材料を調製するための方法であって、
a)請求項1から10までのいずれか一項に記載の組成物を少なくとも約600MPaの成形圧力でダイにて一軸成形するステップ、
b)所望により、該ダイ予備加熱するステップ、
c)所望により、成形前に該粉末を25〜100℃に予備加熱するステップ、
d)得られたグリーン体を抜き出すステップ、並びに場合により
e)該グリーン体を真空雰囲気、非還元雰囲気、不活性雰囲気又は弱酸化雰囲気中で550〜750℃の温度にて熱処理するステップ、
を含む、上記方法。
【請求項13】
リンの含有量が複合部品の0.01〜0.15重量%であり、強磁性粉末における金属−有機化合物(単数又は複数)に由来するSi、Ti、Zr、Alの群から選択される添加金属元素の含有量が該複合部品の0.001〜0.03重量%である、請求項12により調製された、成形及び熱処理された軟磁性複合材料。

【公表番号】特表2013−520023(P2013−520023A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553262(P2012−553262)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051877
【国際公開番号】WO2011/101276
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(595054486)ホガナス アクチボラゲット (66)
【Fターム(参考)】