説明

弾性ローラの形成方法、および、それに用いられる弾性層端部裁断装置

【課題】同心円筒状ではない突起を有する端面に有する弾性層を具える弾性ローラを、金型で端面を成形することなく形成することのできる弾性ローラの形成方法、および、その方法に用いられる弾性ローラの弾性層端部裁断装置を提供する。
【解決手段】全長にわたって一様な断面を有する弾性層2に対して、第一平面上に刃面35aが配置された裁断刃35を、弾性ローラ10の軸線と直交する方向に相対変位させて弾性層2に第一表面を形成する工程と、第二平面上に刃面36aが配置された裁断刃36を、前記軸線と平行な方向に相対変位させて弾性層2に前記第二表面を形成する工程とを有するとともに、前記裁断刃を弾性ローラに対して相対変位させるに際して、それらの裁断刃の刃線35b、36bを、それぞれの相対変位方向Yに対して角度θだけ傾斜させる弾性ローラを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部の周囲に配置された弾性層の少なくとも一方の端に、軸部の軸線と平行な第一平面上の第一表面と、この軸線と直交する第二平面上の第二表面とで特定される切欠部を1個以上、有する弾性ローラの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、感光ドラム等の潜像担持体の表面に電荷を付与したり、現像剤を供給したり、等の目的で種々の弾性ローラが用いられている。これらの弾性ローラとして、図1に断面図で示すように、芯金の周囲に弾性層92を配置した構造のものが広く用いられており、また、弾性層の長さ方向端部の形状として、平面で終端するもののほか、図1に示すように、芯金91の軸線を中心とする円柱状突起93を有するものも知られている。このような同心円柱状突起93を端面に設けた弾性層92を形成する方法として、突起93を有する端面を金型で成形する場合もあるが、このような特殊な端部形状を有するサイズが少量生産のものである場合には、金型に対する投資が大きいため、平面で終端する弾性層を有する、生産量の多いサイズの弾性ローラ90を、金型を用いて形成したあと、その弾性層の端部を、図2に示すように、弾性ローラ90を高速で回転しながら、研削バイト94で、円柱状突起93だけが残るように研削する方法が用いられている。
【特許文献1】特開平6−198502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この方法は、同心円筒状の突起を端面に有する弾性層92を具えた弾性ローラには適用することはできるが、例えば、図3に示すような同心円筒状ではない突起を有する弾性ローラに適用することができず、その場合、研削して端部の一部を除去することができず、生産量が少ない場合でも、投資コストのかかる、金型による方法に頼らざるをえないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、同心円筒状ではない突起を有する端面に有する弾性層を具える弾性ローラを、金型で端面を成形することなく形成することのできる弾性ローラの形成方法、および、その方法に用いられる弾性ローラの弾性層端部裁断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>は、軸部の周囲に配置された弾性層の少なくとも一方の端に、軸部の軸線と平行な第一平面上の第一表面と、この軸線と直交する第二平面上の第二表面とで特定される切欠部を1個以上、有する弾性ローラの形成方法において、
全長にわたって一様な断面を有する弾性層に対して、前記第一平面上に刃面が配置された裁断刃を、前記軸線と直交する方向に相対変位させて弾性層に前記第一表面を形成する工程と、前記第二平面上に刃面が配置された裁断刃を、前記軸線と平行な方向に相対変位させて弾性層に前記第二表面を形成する工程とを有するとともに、
前記裁断刃を弾性ローラに対して相対変位させるに際して、それらの裁断刃の刃線を、それぞれの相対変位方向に対して傾斜させる弾性ローラの形成方法である。
【0006】
<2>は、<1>において、前記裁断刃の刃線の、それぞれの相対変位方向に対しする傾斜角度を1〜20度にして前記相対変位を行う弾性ローラの形成方法である。
【0007】
<3>は、<2>において、前記傾斜角度を5〜10度として前記相対変位を行う弾性ローラの形成方法である。
【0008】
<4>は、<1>〜<3>のいずれの弾性ローラの形成方法に用いられる弾性層端部裁断装置であって、
前記弾性ローラを、その軸線を所定方向に向けて把持する弾性ローラ把持手段と、この弾性ローラ把持手段を、前記所定方向と直交する方向に変位させる弾性ローラ変位手段と、前記所定方向および前記変位方向のいずれにも平行となる向きに配置された第一平面上に刃面を有し弾性ローラ変位手段によって変位される弾性ローラに刃を入れて前記第一表面を形成する第一裁断刃と、前記所定方向に直交するとともに前記変位方向と平行となる向きに配置された第二平面上に刃面を有し弾性ローラ変位手段によって変位される弾性ローラに刃を入れて前記第二表面を形成する第二裁断刃とを具え、第一裁断刃および第二裁断刃のそれぞれを、それらの刃線が前記変位方向に対して傾斜するよう配置してなる弾性ローラの弾性層端部裁断装置である。
【発明の効果】
【0009】
<1>によれば、前記第一平面上に刃面が配置された裁断刃を、その軸線と直交する方向に相対変位させて弾性層に前記第一表面を形成する工程と、前記第二平面上に刃面が配置された裁断刃を、弾性ローラに対して、その軸線と平行な方向に相対変位させて弾性層に前記第二表面を形成する工程とを有するとともに、前記裁断刃を弾性ローラに対して相対変位させるに際して、それらの裁断刃の刃線を、それぞれの相対変位方向に対して傾斜させるので、弾性層の端面に同心円状ではない突起を有するものであっても、金型の投資をすることなく、寸法精度の高い弾性層端面を形成することができる。
【0010】
<2>によれば、記裁断刃の刃線の、それぞれの相対変位方向に対しする傾斜角度を1〜20度にして前記相対変位を行うので、詳細を後述するように、高い裁断精度と高い生産性とを両立させることができる。
【0011】
<3>によれば、前記傾斜角度を5〜10度としたので、高い裁断精度と高い生産性との両立を一層効果的に行わせることができる。
【0012】
<4>によれば、前記弾性ローラを、その軸線を所定方向に向けて把持する弾性ローラ把持手段と、この弾性ローラ把持手段を、前記所定方向と直交する方向に変位させる弾性ローラ変位手段と、前記所定方向および前記変位方向のいずれにも平行となる向きに配置された第一平面上に刃面を有し弾性ローラ変位手段によって変位される弾性ローラに刃を入れて前記第一表面を形成する第一裁断刃と、前記所定方向に直交する向きに配置された第二平面上に刃面を有し弾性ローラ変位手段によって変位される弾性ローラに刃を入れて前記第二表面を形成する第二裁断刃とを具え、第一裁断刃および第二裁断刃のそれぞれを、それらの刃線が前記変位方向に対して傾斜するよう配置したので、前述の、弾性ローラの形成方法を簡易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図に基づいて説明する。図3は、本発明の弾性ローラの形成方法によって形成された弾性ローラを示す図であり、図3(a)は、弾性ローラ10の一方の端部を示す斜視図、図1(b)は、図1(a)のb−b矢視図、図1(c)は図1(a)のc−c矢視図、そして、図1(d)は図1(a)のd−d矢視図であり、弾性ローラ10は、軸部1の周囲に配置された弾性層2の少なくとも一方の端に、軸部1の軸線と平行な第一平面32a、32b上の第一表面33a、33bと、この軸線と直交する第二平面22上の第二表面23a、23bとで特定される切欠部20a、20bを1個以上(図示の場合2個)有する。弾性層2の、切欠部20a、20bによって切り欠かれた部分は軸方向端に向かって突出する突起4となって現れる。
【0014】
ここで、本発明が対象とする弾性ローラ10の弾性層2の材料としては、ゴム、ウレタン、シリコンなどを例示することができ、これらの硬度としては、ASKER F硬度で60〜70度の範囲にあるのが好ましい。
【0015】
本発明の弾性ローラの形成方法は、切欠部20a、20bも、突起4もない、全長さ方向にわたって一様な断面を有する弾性層2を軸部1の周囲に形成したあと、弾性層2の少なくとも一方の端部を裁断して切欠部20a、20bを形成して所望の端部形状に仕上げるものであり、図4は、そのための弾性層端部裁断装置30を示す概略平面配置図であり、図5は、図4のA−A矢視図、図6は、図4のB−B矢視図である。
【0016】
弾性層端部裁断装置30は、弾性ローラ10をその軸部1の軸線を所定方向Xに向けて把持する弾性ローラ把持手段31と、弾性ローラ把持手段31を、所定方向Xと直交する方向Yに変位させる弾性ローラ変位手34と、所定方向4および変位方向Yのいずれにも平行となる向きに配置された第一平面32aもしくは32b(すなわち、図4においては紙面と平行な面)上に刃面35aを有し弾性ローラ変位手段34によって変位される弾性ローラ10に刃を入れて第一表面33aもしくは33bを形成する第一裁断刃35と、所定方向Xに直交するとともに変位方向Yと平行となる向きに配置された第二平面22上に刃面36aを有し弾性ローラ変位手段34によって変位される弾性ローラ10に刃を入れて第二表面23aもしくは23bを形成する第二裁断刃36とを具え、第一裁断刃35および第二裁断刃36のそれぞれを、それらの刃線35b、36bが変位方向Yに対して角度θだけ傾斜するよう配置して構成される。
【0017】
ここで、弾性ローラ変位手段34は、例えば、弾性ローラ把持手段31を、往復駆動するエアシリンダ38と、弾性ローラ把持手段31の往復移動の方向が変位方向Yとなるよう規制する直動ガイド37とで構成することができる。
【0018】
また、弾性ローラ10と裁断刃35、36とは相対変位すればよく、ここで、「相対変位」とは、相互の位置関係が変化すれば良いことを意味しており、図示のように弾性ローラ10だけを変位させてもよく、また、裁断刃35、36だけを変位させてもよく、さらには、これらの両者を変位させてもよい。
【0019】
図7は、裁断刃35、36を示す図であり、図7(a)は正面図、図7(b)は、図7(a)のS−S矢視に対応する矢視図であり、刃線35b、36bの変位方向Yと直交する面への投影長さdは、刃線35bの場合は、弾性層2に形成する第一表面33a、33bの弾性層端面よりの深さよりも大きくする必要があり、また、刃線36bの場合は、弾性層2に形成する第二表面23a、23bの弾性層周面よりの深さよりも大きくする必要があり、このことを考慮して、S=d/sinθで表される刃渡りSを決定しなければならない。
【0020】
裁断刃35、36の変位方向Yに対する傾斜角度θは、1〜20度とするのが好ましく、傾斜角度が20度を越えると、柔らかい材料よりなる弾性層2に刃を滑らかに入れることができず、弾性層2は、それに切れ目が入る前に変形してしまいこれを裁断することが難しくなる。また、傾斜角度θを、1度未満とした場合には、上記に説明した関係から、刃渡りSが長くなってしまいスペースと加工時間とにおいてあまり有利ではなくなる。同様の点において、傾斜角度θは、5〜10度とするのが一層好ましい。
【0021】
また、裁断刃35、36の厚さtは、0.1〜0.5mmとするのが、裁断位置の精度を確保できる点で好ましく、刃先角度αは、0〜10°とするのが、軟質材料に対する裁断時の歯による負荷を抑えることができるという点で好ましい。
【0022】
弾性層端部裁断装置30を用いて、弾性ローラ10を形成するには、まず、軸部1の周囲に、例えば金型成型法によって、全長にわたって均一断面を有する弾性層2を形成したあと、この弾性ローラを弾性ローラ把持手段31で把持させ、弾性ローラ変位手段34によって弾性ローラ把持手段31を変位方向Yに変位させることにより、弾性ローラ10を裁断刃35、36に対して相対変位させて、切欠部20a、20bを形成して製品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の端部形状を有する弾性ローラを示す斜視図である。
【図2】従来の端部形状を有する弾性ローラの端部を形成する方法を示す図である。
【図3】本発明の形成方法によって形成される弾性ローラの端部を示す斜視図および矢視図である。
【図4】本発明に係る弾性層端部裁断装置を示す概略平面配置図である。
【図5】図4のA−A矢視に対応する矢視図である。
【図6】図4のB−B矢視に対応する矢視図である。
【図7】裁断刃35、36を示す正面図および矢視図である。
【0024】
1 軸部
2 弾性層
4 突起
10 弾性ローラ
22 第二平面
23a、23b 第二表面
20a、20b 切欠部
30 弾性層端部裁断装置
31 弾性ローラ把持手段
32a、32b 第一平面
33a、33b 第一表面
34 弾性ローラ変位手段
35 第一裁断刃
35a 第一裁断刃の刃面
35b 第一裁断刃の刃線
36 第二裁断刃
36a 第二裁断刃の刃面
36b 第二裁断刃の刃線
37 直動ガイド
38 エアシリンダ
X 所定方向
Y 変位方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の周囲に配置された弾性層の少なくとも一方の端に、軸部の軸線と平行な第一平面上の第一表面と、この軸線と直交する第二平面上の第二表面とで特定される切欠部を1個以上、有する弾性ローラの形成方法において、
全長にわたって一様な断面を有する弾性層に対して、前記第一平面上に刃面が配置された裁断刃を、前記軸線と直交する方向に相対変位させて弾性層に前記第一表面を形成する工程と、前記第二平面上に刃面が配置された裁断刃を、前記軸線と平行な方向に相対変位させて弾性層に前記第二表面を形成する工程とを有するとともに、
前記裁断刃を弾性ローラに対して相対変位させるに際して、それらの裁断刃の刃線を、それぞれの相対変位方向に対して傾斜させる弾性ローラの形成方法。
【請求項2】
前記裁断刃の刃線の、それぞれの相対変位方向に対しする傾斜角度を1〜20度にして前記相対変位を行う請求項1に記載の弾性ローラの形成方法。
【請求項3】
前記傾斜角度を5〜10度として前記相対変位を行う請求項2に記載の弾性ローラの形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された弾性ローラの形成方法に用いられる弾性層端部裁断装置であって、
前記弾性ローラを、その軸線を所定方向に向けて把持する弾性ローラ把持手段と、この弾性ローラ把持手段を、前記所定方向と直交する方向に変位させる弾性ローラ変位手段と、前記所定方向および前記変位方向のいずれにも平行となる向きに配置された第一平面上に刃面を有し弾性ローラ変位手段によって変位される弾性ローラに刃を入れて前記第一表面を形成する第一裁断刃と、前記所定方向に直交する向きに配置された第二平面上に刃面を有し弾性ローラ変位手段によって変位される弾性ローラに刃を入れて前記第二表面を形成する第二裁断刃とを具え、第一裁断刃および第二裁断刃のそれぞれを、それらの刃線が前記変位方向に対して傾斜するよう配置してなる弾性ローラの弾性層端部裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−122456(P2008−122456A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302999(P2006−302999)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】