説明

弾性波素子

【課題】弾性波素子10の電気特性の向上と歩留まり劣化を抑制すること。
【解決手段】本発明の弾性波素子10は、圧電基板15と、圧電基板15の上に設けられた2つの反射器電極と、2つの反射器電極12、13の間に設けられたインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極11と、IDT電極11と反射器電極12または13との間のギャップからIDT電極11の電極指の伸延方向の延長線上に反射器電極12または13またはIDT電極11から所定距離をあけて設けられたダミー電極16A、16B、16C、16Dを備える。この構成によって、ドライエッチングを行う際、エッチングガスをダミー電極16A、16B、16C、16Dと反射器電極12または反射器電極13またはIDT電極11との間の隙間からギャップに充分にエッチングガスを供給でき、エッチングを安定的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの通信機器に用いられる弾性波素子に関するものである。
【0002】
図5は、従来の弾性波素子70の上面模式図である。弾性波素子70は、圧電基板75の上面に形成されたインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極71と反射器電極72、73とを備える。IDT電極71は反射器電極72と反射器電極73の間に設置されている。
【0003】
IDT電極71は、バスバー71A、交差電極指71B、及び非交差電極指71Cから構成されている。
【0004】
弾性波素子70において、IDT電極71と反射器電極72、73の間のギャップ74A、74B、74C、74Dに切欠部が設けられている。切欠部は、IDT電極71と反射器電極72、73の短絡を防止する目的で設けられている。
【0005】
この出願に関する先行文献として、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−84162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の弾性波素子70は、ドライエッチング工程によってIDT電極71と反射器電極72、73を形成する際、ドライエッチング工程でIDT電極71と反射器電極72、73間のギャップ74A、74B、74C、74D部分の電極膜を充分に除去することができず、不要な電極膜が残存し、IDT電極71と反射器電極72、73間のギャップ74A、74B、74C、74Dで短絡が生じ、歩留まりが劣化する可能性がある。
【0008】
これは、ドライエッチング工程において、IDT電極と反射器電極との間のギャップの開口率が大きくなり、ドライエッチングする面積が大きくなる。結果、ドライエッチングを行う際に用いるエッチングガスが十分に供給されず、安定的にエッチングが行えなくなるためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の弾性波素子は、圧電基板と、圧電基板の上に設けられた2つの反射器電極と、2つの反射器電極の間に設けられたインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極と、IDT電極と反射器電極との間のギャップからIDT電極の電極指の伸延方向の延長線上に反射器電極またはIDT電極から所定距離をあけてダミー電極を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の弾性波素子において、IDT電極と反射器電極との間のギャップからIDT電極の電極指の伸延方向の延長線上に、反射器電極またはIDT電極から所定距離をあけてダミー電極を設置することによって、ドライエッチング工程において、IDT電極と反射器電極との間のギャップ近傍の開口率を小さくし、ドライエッチングする面積を減少することができる。結果、ドライエッチングを行う際に用いるエッチングガスの反応量を抑え、安定的にエッチングを行うことができる。これにより、不要な電極膜の発生を抑制し、IDT電極と反射器電極との短絡を防止することができ、歩留まり劣化を抑制する効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性波素子の上面模式図
【図2】同弾性波素子の他の上面模式図
【図3】本発明の実施の形態2における弾性波素子の上面模式図
【図4】同弾性波素子の他の上面模式図
【図5】従来の弾性波素子の上面模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における弾性波素子10について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態1における弾性波素子10の上面模式図である。弾性波素子10は、圧電材料よりなる圧電基板15と、インターディジタルトランスデューサ(IDT)電極11と、反射器電極12、13と、ダミー電極16A、16B、16C、16Dとを備える。IDT電極11と反射器電極12、13とダミー電極16A、16B、16C、16Dは圧電基板15の上面15Aに形成されている。IDT電極11と反射器電極12との間にはギャップG11が設けられており、IDT電極11はギャップG11を介して反射器電極12と離れて対向している。IDT電極11と反射器電極13との間にはギャップG12が設けられており、IDT電極11はギャップG12を介して反射器電極13と離れて対向している。IDT電極11の電極指は方向D11に延びる。ダミー電極16A、16Cは、ギャップG11を通って方向D11に延びる直線L11上に位置し、反射器電極12とIDT電極11から所定距離をあけて設けられている。ダミー電極16B、16Dは、ギャップG12を通って方向D11と平行に延びる直線L12上に設けられており、反射器電極13とIDT電極11から所定距離をあけて設けられている。
【0014】
IDT電極11は櫛歯電極11A、11Cを備える。櫛歯電極11Aは、方向D11と非平行で直角の方向D12に延びるバスバー11Eと、バスバー11Eから方向D11で櫛歯電極11Cに向かって延びる複数の交差電極指11Bと、バスバー11Eから方向D11で櫛歯電極11Cに向かって延びる複数の非交差電極指11Gとを備える。櫛歯電極11Cは、方向D12に延びるバスバー11Fと、バスバー11Fから方向D11で櫛歯電極11Aに向かって延びる複数の交差電極指11Dと、バスバー11Fから方向D11で櫛歯電極11Aに向かって延びる複数の非交差電極指11Hとを備える。櫛歯電極11Aは、複数の交差電極指11Bと複数の交差電極指11Dが交差するように櫛歯電極11Cに対向している。IDT電極11は反射器電極12と反射器電極13の間に設置されている。IDT電極11によって圧電基板15に励振される主要弾性波は方向D12の伝播方向に伝搬する。反射器電極12、13は方向D12においてIDT電極11の両側に形成されている。
【0015】
弾性波素子10のIDT電極11と反射器電極12、13とダミー電極16A、16B、16C、16DはAl、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、W、Ta、Pt、Mo、Cr、Ti、Zn、Ru、Co、RuO2、ZnOおよびITOの中から選択された少なくとも一つの材料を主成分とする主電極層を有する。これらの電極は、この主電極層と、これらの材料から選択される他の材料よりなる層の2層以上の積層構造で構成されてもよい。実施の形態1において、IDT電極11と反射器電極12、13とダミー電極16A、16B、16C、16Dは、圧電基板15の上面15A上に設けられたTiよりなる密着層と、この密着層上に設けられたAlよりなる主電極層からなる。
【0016】
ダミー電極16A、16B、16C、16Dは、それら全てが設けられていなくともよく、これらのうち少なくとも1つのみが設けられていてもよい。
【0017】
IDT電極11と反射器電極12、13の短絡を防止するために、ギャップG11、G12に面するIDT電極11と反射器電極12、13の部分に切欠部11Pが形成されていてもよい。
【0018】
弾性波素子10は、反射器電極12、13及びIDT電極11及びダミー電極16A、16B、16C、16Dを覆うように圧電基板15の上面15A上に設けられた例えば酸化ケイ素(SiO2)等の誘電体からなる誘電体層10Aを備えていても良い。
【0019】
複数の交差電極指11B、11Dは互いに交差するように配置されているが、複数の非交差電極指11G、11Hは互いに交差しないように配置されている。なお、IDT電極11は複数の非交差電極指11G、11Hを備えていなくてもよい。
【0020】
IDT電極11と反射器電極12とはギャップG11の方向D12の幅である所定距離(最短距離)W11だけ離れている。IDT電極11と反射器電極13とはギャップG12の方向D12の幅である所定距離(最短距離)W12だけ離れている。
【0021】
ダミー電極16Aは、IDT電極11の櫛歯電極11Aと反射器電極12とから所定距離(最短距離)W116A、W216Aだけそれぞれ離れている。所定距離W116A、W216Aは所定距離W11より大きい。所定距離W116A、W216Aのうちの少なくとも一方が所定距離W11より大きくてもよい。
【0022】
ダミー電極16Bは、IDT電極11の櫛歯電極11Aと反射器電極13から所定距離(最短距離)W116B、W216Bだけそれぞれ離れている。所定距離W116B、W216Bは所定距離W12より大きい。所定距離W116B、W216Bのうちの少なくとも一方が所定距離W12より大きくてもよい。
【0023】
ダミー電極16Cは、IDT電極11の櫛歯電極11Cと反射器電極12から所定距離(最短距離)W116C、W216Cだけそれぞれ離れている。所定距離W116C、W216Cは所定距離W11より大きい。所定距離W116C、W216Cのうちの少なくとも一方が所定距離W11より大きくてもよい。
【0024】
ダミー電極16Dは、IDT電極11の櫛歯電極11Cと反射器電極13から所定距離(最短距離)W116D、W216Dだけそれぞれ離れている。所定距離W116D、W216Dは所定距離W12より大きい。所定距離W116D、W216Dのうちの少なくとも一方が所定距離W12より大きくてもよい。
【0025】
所定距離W116A〜W116D、W216A〜W216DはIDT電極11に励振される主要弾性波の波長より小さい。
【0026】
以下、弾性波素子10の製造方法について説明する。
【0027】
まず、圧電基板15の上面15Aに上述の材料から構成された電極膜を蒸着、スパッタ、またはCVD等の方法で成膜する。次に、電極膜の上面にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト膜を所望の形状に加工する。次に、ドライエッチング技術を用いて電極膜をIDT電極11や反射器電極12、13、ダミー電極16A、16B、16C、16D等の所望の形状に加工した後、レジスト膜を除去する。そして、ダイシングにより、圧電基板15を切断することにより、個片の弾性波素子10を得る。
【0028】
図5に示す従来の弾性波素子70では、ドライエッチング工程によってIDT電極71と反射器電極72、73を形成する際、ドライエッチング工程でIDT電極71と反射器電極72、73間のギャップ74A、74B、74C、74Dでの電極膜を充分に除去することができず、不要な電極膜が残存する場合がある。この場合には、IDT電極71と反射器電極72、73間のギャップ74A、74B、74C、74Dで短絡が生じ、歩留まりが劣化する場合がある。
【0029】
ドライエッチング工程において、IDT電極71と反射器電極72、73との間のギャップ74A〜74Dの開口率が大きくなり、ドライエッチングする面積が大きくなる。なお、開口率とは、上記製造工程において、レジスト膜を形成する部分とレジスト膜を形成しない部分の和の面積に対するレジスト膜を形成しない部分の面積の割合である。結果、ドライエッチングを行う際に用いるエッチングガスが十分に供給されず、安定的にエッチングが行えなくなり、上記電極間に電極膜が残存する。
【0030】
実施の形態1における弾性波素子10では、ダミー電極16A、16B、16C、16Dを設けることによって、レジスト膜を用いたドライエッチング工程において、局所的にIDT電極11と反射器電極12、13との間のギャップG11、G12の近傍のレジスト膜の開口率を小さくし、エッチングする面積を減少することができる。従って、ドライエッチングを行う際に使用するエッチングガスの反応量を抑えることで、エッチングガスをダミー電極16A、16B、16C、16Dと反射器電極12または反射器電極13またはIDT電極11との所定距離W116A〜W116D、W216A〜W216Dの隙間からギャップG11、G12に充分にエッチングガスを供給でき、電極膜を安定にエッチングすることができる。結果、不要な電極膜の残存を抑制し、IDT電極11と反射器電極12または反射器電極13との短絡を防止し、歩留まり劣化を抑制することができる。所定距離W116A〜W116D、W216A〜W216Dが所定距離W11、W12より大きく、かつIDT電極11に励振される主要弾性波の波長より小さい場合に、上記効果が顕著に得られる。
【0031】
図2は実施の形態1における他の弾性波素子1010の上面模式図である。図2において、図1に示す弾性波素子10と同じ部分には同じ参照番号を付す。図2に示す弾性波素子1010は、図1に示す弾性波素子10のダミー電極16A、16B、16C、16Dの代わりにダミー電極66A、66B、66C、66Dを備える。ダミー電極66A〜66DとIDT電極11と反射器電極12、13との距離の関係は、図1に示す弾性波素子10のダミー電極16A〜16DとIDT電極11と反射器電極12、13との距離の関係と同じである。
【0032】
ダミー電極66Aの部分166Aの方向D12の幅は、ダミー電極66Aの部分166Aに比べてギャップG11からより遠い部分266Aの方向D12の幅より狭いことが好ましい。特に、ダミー電極66Aは、ギャップG11に向かって細くなる突出部366Aを有することが好ましい。
【0033】
同様に、ダミー電極66Bの部分166Bの方向D12の幅は、ダミー電極66Bの部分166Bに比べてギャップG12からより遠い部分266Bの方向D12の幅より狭いことが好ましい。特に、ダミー電極66Bは、ギャップG12に向かって細くなる突出部366Bを有することが好ましい。
【0034】
同様に、ダミー電極66Cの部分166Cの方向D12の幅は、ダミー電極66Cの部分166Cに比べてギャップG11からより遠い部分266Cの方向D12の幅より狭いことが好ましい。特に、ダミー電極66Cは、ギャップG11に向かって細くなる突出部366Cを有することが好ましい。
【0035】
同様に、ダミー電極66Dの部分166Dの方向D12の幅は、ダミー電極66Dの部分166Dに比べてギャップG12からより遠い部分266Dの方向D12の幅より狭いことが好ましい。特に、ダミー電極66Dは、ギャップG12に向かって細くなる突出部366Dを有することが好ましい。
【0036】
この構成により、エッチングガスをダミー電極66A、66B、66C、66Dと反射器電極12または反射器電極13またはIDT電極11との所定距離W116A〜116D、216A〜216Dの隙間からギャップG11、G12にエッチングガスを効率よく供給できる。これにより、電極膜を安定にエッチングすることができる。結果、不要な電極膜の残存を抑制し、IDT電極11と反射器電極12または反射器電極13との短絡を防止し、歩留まり劣化を抑制することができる。
【0037】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における弾性波素子20の上面模式図である。図3において、弾性波素子20は、圧電基板25と、IDT電極21、22と、反射器電極23、24と、ダミー電極26A、26Bとを備える。IDT電極21、22と、反射器電極23、24と、ダミー電極26A、26Bは圧電基板25の上面25Aに設けられている。IDT電極21、22間にはギャップG21が設けられており、IDT電極21はギャップG21を介してIDT電極22と離れて対向している。IDT電極21と反射器電極23との間にはギャップG22が設けられており、IDT電極21はギャップG22を介して反射器電極23と離れて対向している。IDT電極22と反射器電極24との間にはギャップG23が設けられており、IDT電極22はギャップG23を介して反射器電極24と離れて対向している。IDT電極21、22の電極指は方向D21に延びる。ダミー電極26A、26Bは、ギャップG21を通って方向D21と平行に延びる直線L21上に位置し、IDT電極21、22から所定距離をあけて設けられている。
【0038】
IDT電極21は櫛歯電極27、28を備える。櫛歯電極27は、方向D21と非平行で直角の方向D22に延びるバスバー27Cと、バスバー27Cから方向D21で櫛歯電極28に向かって延びる複数の交差電極指27Aと、バスバー27Cから方向D21で櫛歯電極28に向かって延びる複数の非交差電極指27Bとを備える。櫛歯電極28は、方向D22に延びるバスバー28Cと、バスバー28Cから方向D21で櫛歯電極27に向かって延びる複数の交差電極指28Aと、バスバー28Cから方向D21で櫛歯電極27に向かって延びる複数の非交差電極指28Bとを備える。櫛歯電極27は、複数の交差電極指27Aと複数の交差電極指28Aが交差するように櫛歯電極28に対向している。
【0039】
IDT電極22は櫛歯電極29、30を備える。櫛歯電極29は、方向D22に延びるバスバー29Cと、バスバー29Cから方向D21で櫛歯電極30に向かって延びる複数の交差電極指29Aと、バスバー29Cから方向D21で櫛歯電極30に向かって延びる複数の非交差電極指29Bとを備える。櫛歯電極30は、方向D22に延びるバスバー30Cと、バスバー30Cから方向D21で櫛歯電極29に向かって延びる複数の交差電極指30Aと、バスバー30Cから方向D21で櫛歯電極29に向かって延びる複数の非交差電極指30Bとを備える。櫛歯電極29は、複数の交差電極指29Aと複数の交差電極指30Aが交差するように櫛歯電極30に対向している。
【0040】
IDT電極21、22は反射器電極23、24間に設置されている。IDT電極21、22によって励振される主要弾性波は方向D22の伝搬方向に伝播する。反射器電極23、24は方向D22においてIDT電極21、22の両側に形成されている。
【0041】
IDT電極21、22と反射器電極23、24とダミー電極26A、26BはAl、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、W、Ta、Pt、Mo、Cr、Ti、Zn、Ru、Co、RuO2、ZnOおよびITOの中から選択された少なくとも一つの材料を主成分とする主電極層を有する。これら電極は、この主電極層と、これらの材料から選択される他の材料よりなる層の2層以上の積層構造で構成されてもよい。実施の形態2において、IDT電極21、22と反射器電極23、24とダミー電極26A、26Bは、圧電基板25の上面25A上に設けられたTiよりなる密着層と、この密着層上に設けられたAlよりなる主電極層からなる。
【0042】
ダミー電極26A、26Bは、それら双方が設けられていなくともよく、これらのうち少なくとも1つのみが設けられていてもよい。
【0043】
複数の交差電極指27A、28Aは互いに交差するように配置されているが、複数の非交差電極指27B、28Bは互いに交差しないように配置されている。なお、IDT電極21は複数の非交差電極指27B、28Bを備えていなくてもよい。同様に、複数の交差電極指29A、30Aは互いに交差するように配置されているが、複数の非交差電極指29B、30Bは互いに交差しないように配置されている。なお、IDT電極22は複数の非交差電極指29B、30Bを備えていなくてもよい。
【0044】
IDT電極21、22はギャップG21の方向D22の幅である所定距離(最短距離)W21だけ離れている。
【0045】
ダミー電極26Aは、IDT電極21の櫛歯電極27とIDT電極22の櫛歯電極29とから所定距離(最短距離)W126A、W226Aだけそれぞれ離れている。所定距離W126A、W226Aは所定距離W21より大きい。所定距離W126A、W226Aのうちの少なくとも一方が所定距離W21より大きくてもよい。
【0046】
ダミー電極26Bは、IDT電極21の櫛歯電極28とIDT電極22の櫛歯電極30とから所定距離(最短距離)W126B、W226Bだけそれぞれ離れている。所定距離W126B、W226Bは所定距離W21より大きい。所定距離W126B、W226Bのうちの少なくとも一方が所定距離W21より大きくてもよい。
【0047】
以下、弾性波素子20の製造方法について説明する。
【0048】
まず、圧電基板25の上面25Aに上述の材料から構成された電極膜を蒸着、スパッタ、またはCVD等の方法で成膜する。次に、電極膜の上面にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト膜を所望の形状に加工する。次に、ドライエッチング技術を用いて電極膜をIDT電極21、22や反射器電極23、24、ダミー電極26A、26B等の所望の形状に加工した後、レジスト膜を除去する。そして、ダイシングにより圧電基板25を切断することにより、個片の弾性波素子20を得る。
【0049】
実施の形態2における弾性波素子20では、ダミー電極26A、26Bを設けることによって、ドライエッチング工程において、局所的にIDT電極21、22間のギャップG21の近傍の開口率を小さくし、ドライエッチングを行うときのエッチング面積を減少することができる。従って、ドライエッチングに使用するエッチングガスの反応量を抑えることで、エッチングガスをダミー電極26A、26BとIDT電極21、22との所定距離W126A、W126B、W226A、W226Bの隙間からギャップG21に充分にエッチングガスを供給でき、電極膜を安定にエッチングできる。結果、不要な電極膜の残存を抑制し、IDT電極21、22の短絡を防止し、弾性波素子20の歩留まり劣化を抑制することができる。
【0050】
特に、所定距離W126A、W126B、W226A、W226Bが所定距離W21より大きく、さらにIDT電極21、22に励振される主要弾性波の波長より小さい場合に、上記効果が顕著に得られる。
【0051】
図4は実施の形態2における他の弾性波素子1020の上面模式図である。図4において、図3に示す弾性波素子20と同じ部分には同じ参照番号を付す。図4に示す弾性波素子1020は、図3に示す弾性波素子20のダミー電極26A、26Bの代わりにダミー電極76A、76Bを備える。ダミー電極76A、76BとIDT電極21、22との距離の関係は、図3に示す弾性波素子20のダミー電極26A、26BとIDT電極21、22の距離の関係と同じである。
【0052】
ダミー電極76Aの部分176Aの方向D22の幅は、ダミー電極76Aの部分176Aに比べてギャップG21からより遠い部分276Aの方向D22の幅より狭いことが好ましい。特に、ダミー電極76Aは、ギャップG21に向かって細くなる突出部376Aを有することが好ましい。
【0053】
ダミー電極76Bの部分176Bの方向D22の幅は、ダミー電極76Bの部分176Bに比べてギャップG21からより遠い部分276Bの方向D22の幅より狭いことが好ましい。特に、ダミー電極76Bは、ギャップG21に向かって細くなる突出部376Bを有することが好ましい。
【0054】
この構成により、エッチングガスをダミー電極26A、26BとIDT電極21、22との所定距離W126A、125B、226A、226Bの隙間からギャップG21にエッチングガスを効率的に供給できる。これにより、電極膜を安定にエッチングすることができる。結果、不要な電極膜の残存を抑制し、IDT電極21、22の短絡を防止し、弾性波素子1020の歩留まり劣化を抑制することができる。
【0055】
なお、実施の形態1、2において、「上面」等の方向を示す用語は、圧電基板やIDT電極等の弾性波素子の構成部品の相対的な位置関係にのみ依存する相対的な方向を示し、鉛直方向等の絶対的な方向を示すものでは無い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の弾性波素子は、弾性波素子の歩留まり劣化を抑制する効果を有し、移動体通信機器などの電子機器に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0057】
10、20 弾性波素子
11、21、22 IDT電極
11A、11C、27、28、29、30 櫛歯電極
11B、11D 交差電極指
11E、11F バスバー
11G、11H 非交差電極指
12、13、23、24 反射器電極
15、25 圧電基板
16A、16B、16C、16D、26A、26B ダミー電極
27A、28A、29A、30A 交差電極指
27B、28B、29B、30B 非交差電極指
27C、28C、29C、30C バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の上面に設けられて、所定の方向に延びる複数の電極指を有するインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極と、
前記圧電基板の前記上面に設けられて、前記IDT電極とギャップを介して対向する反射器電極と、
前記ギャップを通り前記所定の方向に延びる直線上に位置し、前記反射器電極と前記IDT電極から離れて設けられたダミー電極と、
を備え、
前記ダミー電極と前記IDT電極との間の第1の所定距離と、前記ダミー電極と前記反射器電極との間の第2の所定距離とのうちの少なくとも一方は、前記IDT電極と前記反射器電極との間の第3の所定距離より大きい、弾性波素子。
【請求項2】
前記第1の所定距離と前記第2の所定距離の双方は、前記第3の所定距離より大きい、請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項3】
前記第3の所定距離は、前記IDT電極で励振される主要弾性波の波長より小さい、請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項4】
前記反射器電極と前記IDT電極を覆う誘電体層をさらに備えた、請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項5】
前記ダミー電極は、第1の部分と、前記第1の部分に比べて前記ギャップからより遠い第2の部分とを有し、
前記IDT電極で励振される主要弾性波が伝播する伝播方向における前記第1の部分の幅は、前記伝播方向における前記第2の部分の幅より狭い、請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項6】
前記ダミー電極は前記ギャップに向けて細くなる突出部を有する、請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項7】
圧電基板と、
前記圧電基板の上面上に設けられて、所定の方向に延びる複数の第1の電極指を有する第1のインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極と、
前記圧電基板の前記上面上に設けられて、前記所定の方向に延びる複数の第2の電極指を有して、前記第1のIDT電極とギャップを介して対向する第2のインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極と、
前記ギャップを通り前記所定の方向に延びる直線上に位置し、前記第1のIDT電極または前記第2のIDT電極から所定距離だけ離れて設けられたダミー電極と、
を備え、
前記ダミー電極と前記第1のIDT電極との間の第1の所定距離と、前記ダミー電極と前記第2のIDT電極との間の第2の所定距離とのうちの少なくとも一方は、前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極との間の第3の所定距離より大きい、弾性波素子。
【請求項8】
前記第1の所定距離と前記第2の所定距離の双方は、前記第3の所定距離より大きい、請求項7に記載の弾性波素子。
【請求項9】
前記第3の所定距離は前記第1のIDT電極で励振される主要弾性波の波長より小さい、請求項7に記載の弾性波素子。
【請求項10】
前記ダミー電極は、第1の部分と、前記第1の部分に比べて前記ギャップからより遠い第2の部分とを有し、
前記第1のIDT電極で励振される主要弾性波が伝播する伝播方向における前記第1の部分の幅は、前記伝播方向における前記第2の部分の幅より狭い、請求項7に記載の弾性波素子。
【請求項11】
前記ダミー電極は前記ギャップに向けて細くなる突出部を有する、請求項7に記載の弾性波素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate