説明

弾性波装置及びその製造方法

【課題】圧電基板の上にIDT電極を覆うように形成されている酸化ケイ素膜を備える弾性波装置であって、圧電基板に反りが生じ難く、かつ製造に際して煩雑な製造工程を要さない弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置1は、圧電基板10と、圧電基板10の上に形成されているIDT電極11と、圧電基板10の上にIDT電極11を覆うように形成されている酸化ケイ素膜12とを備えている。圧電基板10は、IDT電極が形成されている第1の領域10Aと、IDT電極が形成されていない第2の領域10Bとを含む。酸化ケイ素膜12は、第1の領域10Aの上に形成されている第1の部分12Aと、第2の領域10Bの上に形成されている第2の部分12Bとを含む。第2の部分12Bの少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量は、第1の部分12AにおけるSi−OH結合の含有量よりも多い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、圧電基板の上にIDT電極を覆うように形成されている酸化ケイ素膜を備える弾性波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波や弾性境界波などの弾性波を利用した弾性波装置が、共振子やフィルタとして広く用いられるようになってきている。
【0003】
弾性境界波を用いた弾性境界波装置では、圧電基板の上に、例えば、酸化ケイ素膜などからなる媒質層が形成されている。そして、圧電基板と媒質層との間の境界にIDT電極が設けられている。
【0004】
一方、弾性表面波を用いた弾性表面波装置においては、酸化ケイ素膜などからなる媒質層を圧電基板上に形成することは必ずしも必要ない。しかしながら、周波数温度特性の改善や、例えば下記の特許文献1に記載のように、IDT電極の劣化等の抑制などのために、圧電基板上に酸化ケイ素膜などが形成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005/002049 A1号公報
【特許文献2】特開2001−111378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、圧電基板上に酸化ケイ素膜を形成した弾性波装置においては、酸化ケイ素膜と圧電基板との熱膨張率の差などに起因して、圧電基板に反りが生じてしまう場合があった。圧電基板に反りが生じると、後工程において、圧電基板に割れや欠けが生じたり、高い加工精度が得られなくなったりするおそれがあった。
【0007】
圧電基板の反り量を低減する方法としては、例えば上記特許文献1に記載のように、IDT電極が形成されている領域のみに酸化ケイ素膜を形成し、それ以外の領域に酸化ケイ素膜を形成しない方法が考えられる。しかしながら、その場合は、酸化ケイ素膜をエッチングによりパターニングする必要がある。このため、弾性波装置の製造工程が煩雑になると共に、弾性波装置の製造コストが増大するという問題があった。また、酸化ケイ素膜のエッチング工程において、圧電基板やIDT電極等にダメージが加わりやすいという問題もあった。
【0008】
また、圧電基板の反り量を低減する別の方法として、例えば上記特許文献2に記載されているように、圧電基板のIDT電極が形成されている側とは反対側の裏面に伸縮規制板を接合する方法も考えられる。しかしながら、この場合は、圧電基板の裏面に伸縮規制板を接合する必要がある。このため、弾性波装置の製造工程が煩雑になると共に、弾性波装置の製造コストが増大するという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電基板の上にIDT電極を覆うように形成されている酸化ケイ素膜を備える弾性波装置であって、圧電基板に反りが生じ難く、また、製造に際して煩雑な製造工程を要さない弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る弾性波装置は、圧電基板と、IDT電極と、酸化ケイ素膜とを備えている。IDT電極は、圧電基板の上に形成されている。酸化ケイ素膜は、圧電基板の上にIDT電極を覆うように形成されている。圧電基板は、第1の領域と、第2の領域とを含む。第1の領域は、IDT電極が形成されている領域である。第2の領域は、IDT電極が形成されていない領域である。酸化ケイ素膜は、第1の部分と、第2の部分とを含む。第1の部分は、第1の領域の上に形成されている。第2の部分は、第2の領域の上に形成されている。第2の部分の少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量は、第1の部分におけるSi−OH結合の含有量よりも多い。
【0011】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面において、第2の部分におけるSi−OH結合の含有量は、第1の部分におけるSi−OH結合の含有量よりも多い。この構成によれば、第2の部分全体に残存する残留応力の大きさをより小さくすることができる。このため、圧電基板に反りが生じることをより効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面において、第1の部分よりもSi−OH結合の含有量が多い第2の部分の少なくとも一部は、酸化ケイ素と水との反応により、Si−O−Si結合の少なくとも一部を加水分解させることにより形成されたものである。
【0013】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面において、弾性波装置は、酸化ケイ素膜の上に形成されている窒化珪素膜をさらに備えている。この構成によれば、例えば、弾性波装置が弾性表面波装置である場合は、窒化珪素膜の膜厚を調整することにより、周波数温度係数等の他の特性の変化を抑制しつつ周波数調整を行うことが可能となる。また、弾性波装置が弾性境界波装置である場合は、弾性境界波を酸化ケイ素膜中に効果的に閉じ込めることができる。
【0014】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面において、弾性波装置は、弾性表面波装置または弾性境界波装置である。
【0015】
本発明に係る弾性波装置の製造方法は、圧電基板と、圧電基板の上に形成されているIDT電極と、圧電基板の上にIDT電極を覆うように形成されている酸化ケイ素膜とを備え、圧電基板は、IDT電極が形成されている第1の領域と、IDT電極が形成されていない第2の領域とを含み、酸化ケイ素膜は、第1の領域の上に形成されている第1の部分と、第2の領域の上に形成されている第2の部分とを含む弾性波装置の製造方法に関する。本発明に係る弾性波装置の製造方法は、圧電基板の上に、IDT電極を覆うように酸化ケイ素膜を形成する工程と、第2の部分の少なくとも一部を、水と反応させることにより、Si−O−Si結合の少なくとも一部を加水分解する加水分解工程とを備えている。
【0016】
本発明に係る弾性波装置の製造方法のある特定の局面において、加水分解工程は、第1の部分をマスクで覆う工程と、マスクで覆われた酸化ケイ素膜を水蒸気と接触させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、第2の部分の少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量が、第1の部分におけるSi−OH結合の含有量よりも多い。このため、第2の部分の少なくとも一部に残存する残留応力の大きさを比較的小さくできる。よって、圧電基板に反りが生じ難い。従って、後工程において圧電基板に割れや欠けが生じることを効果的に抑制できると共に、加工精度を向上することができる。また、本発明の弾性波装置は、製造に際して、エッチング工程等を必要としないため、煩雑な製造工程を要さず、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性波装置の模式的断面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるIDT電極の形成工程を表す模式的断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における酸化ケイ素膜の形成工程を表す模式的断面図である。
【図4】本発明の一実施形態における加水分解工程を表す模式的断面図である。
【図5】比較例に係る弾性波装置の模式的断面図である。
【図6】第1の変形例に係る弾性波装置の模式的断面図である。
【図7】第2の変形例に係る弾性波装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す弾性波装置を例に挙げて説明する。但し、図1に示す弾性波装置は、単なる例示である。本発明は、図1に示す弾性波装置に何ら限定されない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る弾性波装置の模式的断面図である。図1に示す弾性波装置1は、弾性表面波を利用した弾性表面波装置である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の弾性波装置1は、圧電基板10を備えている。圧電基板10の種類は特に限定されない。圧電基板10は、例えば、LiNbO、LiTaO、水晶などの適宜の圧電材料により形成することができる。
【0022】
圧電基板10の形状寸法も特に限定されない。圧電基板10の平面形状は、例えば、矩形状などの四辺形状、円形状、楕円形状等であってもよい。圧電基板10の厚みは、例えば、0.15mm〜0.5mm程度とすることができる。
【0023】
圧電基板10の一方の表面10a上には、IDT電極11が形成されている。IDT電極11は、適宜の導電材料により形成することができる。IDT電極11は、例えば、Al、Ag,Au,Pt,Cu,Ni,Crなどの金属や、これらの金属のうちの一種以上を含む合金により形成することができる。IDT電極11は、複数の導電層の積層体であってもよい。
【0024】
なお、図1においては、模式的にひとつのIDT電極11のみを描画しているが、弾性波装置1は、少なくともひとつのIDT電極を有するものである限りにおいて特に限定されない。例えば、弾性波装置1は、弾性波伝搬方向に沿って配列された複数のIDT電極を有するものであってもよい。また、弾性波装置1は、IDT電極が設けられた領域の弾性波伝搬方向の両側に位置する一対の反射器を有するものであってもよい。
【0025】
圧電基板10には、上記IDT電極11が設けられており、IDT電極が形成されている第1の領域10Aと、IDT電極が形成されていない第2の領域10Bとが含まれる。
【0026】
圧電基板10上には、酸化ケイ素膜12が形成されている。酸化ケイ素膜12は、IDT電極11を覆うように形成されている。具体的には、酸化ケイ素膜12は、第1の領域10Aと、第2の領域10Bの少なくとも一部とを覆うように形成されている。すなわち、酸化ケイ素膜12は、第1の領域10Aを覆う第1の部分12Aと、第2の領域10Bの少なくとも一部を覆う第2の部分12Bとを含んでいる。本実施形態では、詳細には、第2の部分12Bは、第2の領域10Bの全体を実質的に覆っており、詳細には、第2の領域10Bの全体を覆っている。
【0027】
ここで、「酸化ケイ素膜」とは、酸化ケイ素を主成分とする膜を意味する。即ち、「酸化ケイ素膜」には、例えば、SiOなどの酸化ケイ素のみからなる膜のみならず、酸化ケイ素を主成分とし、Si−OH結合を有する膜なども含まれる。
【0028】
本実施形態において、第2の領域10Bの少なくとも一部を覆っている第2の部分12Bの少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量は、第1の領域10Aを覆っている第1の部分12AにおけるSi−OH結合の含有量よりも多い。具体的には、本実施形態では、第2の部分12BにおけるSi−OH結合の含有量は、第1の領域10Aを覆っている第1の部分12AにおけるSi−OH結合の含有量よりも多い。
【0029】
次に、本実施形態の弾性波装置1の製造方法について、主として図2〜図4を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
まず、図2に示すように、圧電基板10上にIDT電極11を形成する。IDT電極11の形成方法は、特に限定されない。IDT電極11は、スパッタリング法や蒸着法などの適宜の薄膜形成方法と、フォトリソグラフィー法などの適宜のパターニング方法とにより形成することができる。
【0031】
次に、図3に示すように、圧電基板10上に酸化ケイ素膜13を形成する。酸化ケイ素膜13の形成方法は特に限定されない。酸化ケイ素膜13は、例えば、スパッタリング法や蒸着法などの適宜の薄膜形成方法により形成することができる。
【0032】
次に、図4に示すように、酸化ケイ素膜13の第1の部分となる部分をマスク14で覆う。マスク14は、耐水性を有するものである限りにおいて特に限定されない。マスク14は、例えば、フォトレジストにより形成することができる。また、マスク14の形成方法も特に限定されない。マスク14は、例えば、スパッタリング法や蒸着法、スクリーン印刷法などの適宜の薄膜形成方法と、フォトリソグラフィー法などの適宜のパターニング方法とにより形成することができる。
【0033】
次に、加水分解工程を行う。具体的には、マスク14の上から、酸化ケイ素膜13に水を接触させることにより、酸化ケイ素膜13のマスク14により覆われていない部分を水と反応させる。これにより、酸化ケイ素膜13のマスク14により覆われていない部分に含まれるSi−O−Si結合の少なくとも一部を加水分解し、Si−OH結合を生成させる。その結果、酸化ケイ素膜13から、図1に示す酸化ケイ素膜12を得る。
【0034】
なお、酸化ケイ素膜13のマスク14により覆われていない部分に含まれるSi−O−Si結合の全てを加水分解してもよいし、一部のみを加水分解してもよい。
【0035】
酸化ケイ素膜13と水とを反応させる方法としては、酸化ケイ素膜13に水蒸気を接触させる方法、酸化ケイ素膜13に水や水溶液を接触させる方法などが挙げられる。酸化ケイ素膜13に水蒸気を接触させる場合、例えば、マスク14を形成した素子を高温高湿槽に入れたり、大気中に暴露したりすることにより酸化ケイ素膜13と水とを反応させることができる。酸化ケイ素膜13に水や水溶液を接触させる場合、例えば、マスク14を形成した素子を水または水溶液に浸漬したり、マスク14を形成した素子に水または水溶液を滴下または塗布したりすることにより酸化ケイ素膜13と水とを反応させることができる。
【0036】
このようにして加水分解を行うことにより、酸化ケイ素膜13の第2の部分にSi−OH結合を生成させる。その結果、該第2の部分におけるSi−OH結合の含有量を、酸化ケイ素膜13の第1の部分におけるSi−OH結合の含有量よりも多くすることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の弾性波装置1では、IDT電極11を覆うように酸化ケイ素膜12が形成されている。このため、例えば、圧電基板10が、LiNbOやLiTaOなどからなる場合のように、圧電基板10が酸化ケイ素膜12とは逆の周波数温度係数(TCF)を有する場合に、弾性波装置1の周波数温度特性を改善することができる。
【0038】
また、IDT電極11や圧電基板10の表面10aを外気等から保護できるため、IDT電極11や圧電基板10の表面10aの劣化を抑制することができる。従って、弾性波装置1の特性安定性を高めることができる。
【0039】
ところで、例えば、上記のような効果は、圧電基板のIDT電極が設けられている側の表面上に酸化ケイ素を単に形成するだけでも得られる効果である。しかしながら、例えば図5に示すように、圧電基板100上に、IDT電極101を覆うように酸化ケイ素膜102を形成した場合は、酸化ケイ素膜102に残存する残留応力により圧電基板100に反りが発生してしまう場合がある。圧電基板100に反りが発生してしまうと、後工程において、圧電基板100に割れや欠けが発生してしまったり、後工程における加工精度が低下してしまったりする場合がある。
【0040】
それに対して本実施形態では、図1に示す第2の部分12Bの少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量が、第1の部分12AにおけるSi−OH結合の含有量よりも多くされている。特に、本実施形態では、第2の部分12BにおけるSi−OH結合の含有量が、第1の部分12AにおけるSi−OH結合の含有量よりも多くされている。このため、第2の部分12Bに残存する残留応力を低減することができる。よって、圧電基板10の反り量を少なくすることができる。従って、後工程において圧電基板10に割れや欠けが生じにくく、後工程における加工精度を高めることができる。その結果、高品位な弾性波装置1を高い良品率で製造することができる。
【0041】
また、酸化ケイ素膜の第2の部分の少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量を増大させる本実施形態においては、酸化ケイ素膜のエッチング工程等を要さない。また、製造工程において、水素ガス等の危険なガスを必ずしも使用する必要がない。このため、煩雑な製造工程を必要とせず、弾性波装置1を容易に製造することができる。さらに、酸化ケイ素膜12の第1の部分12Aの膜質劣化等も抑制することができる。
【0042】
さらに、酸化ケイ素膜12に成膜上の制約がなく、特性上好ましい酸化ケイ素膜12を形成することができる。従って、より高性能な弾性波装置1を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態の弾性波装置1では、圧電基板10のIDT電極11が設けられている側とは反対側の表面に、圧電基板10の反りを緩和するための膜を形成する必要は必ずしもない。従って、弾性波装置1の製造工程をより簡略化し得る。
【0044】
なお、酸化ケイ素膜13に残存する残留応力をより低減する観点からは、酸化ケイ素膜13全体に対して加水分解処理を行うことも考えられる。しかしながら、酸化ケイ素膜13全体に対して加水分解処理を行った場合は、第1の部分における弾性波伝搬特性が変化してしまい、所望の特性が得られなくなる場合がある。
【0045】
それに対して本実施形態では、第1の部分12Aは、加水分解処理されていないため、弾性波装置1の特性に実質的に影響を与えることなく、圧電基板10の反りを効果的に低減することができる。
【0046】
(実施例)
下記の条件で、図1に示す弾性波装置1を実際に作製した。そして、図3に示す加水分解処理を行う前の装置における最大反り量と、図1に示す加水分解処理後の弾性波装置1における最大反り量とを測定した。その結果、図3に示す加水分解処理を行う前の装置における最大反り量は、95μmであったのに対して、図1に示す加水分解処理後の弾性波装置1における最大反り量は、62μmであった。この結果から、Si−OH結合の含有量が多い第2の部分12Bを形成することにより、圧電基板10の反り量を低減できることが分かる。
【0047】
(条件)
圧電基板10:直径10.16cm(4インチ)、厚み0.25mmの円板状のLiNbO基板
IDT電極11の構成:Ti100nm/Al150nm
酸化ケイ素膜12:膜厚1000nmのSiO
加水分解処理:温度60℃、湿度93%の高温高湿槽内に240時間放置
以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0048】
(第1の変形例)
図6は、第1の変形例に係る弾性波装置の模式的断面図である。図6に示すように、酸化ケイ素膜12の上に窒化珪素膜15が形成されていてもよい。この場合、例えば、窒化珪素膜15の膜厚を調整することにより、周波数温度係数等の他の特性の変化を抑制しつつ周波数調整を行うことが可能となる。
【0049】
(第2の変形例)
図7は、第2の変形例に係る弾性波装置2の模式的断面図である。
【0050】
上記実施形態及び第1の変形例では、弾性表面波装置である弾性波装置1について説明した。但し、本発明において、弾性波装置は、弾性表面波装置に限定されない。本発明において、弾性波装置は、例えば図7に示すような、弾性境界波を利用した弾性境界波装置であってもよい。この場合、弾性境界波を酸化ケイ素膜12中に効果的に閉じ込めることができる。このため、弾性波に対する外乱を少なくすることができる。従って、より高い特性安定性を実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,2…弾性波装置
10…圧電基板
10A…圧電基板の第1の領域
10B…圧電基板の第2の領域
10a…圧電基板の表面
11…IDT電極
12…酸化ケイ素膜
12A…酸化ケイ素膜の第1の部分
12B…酸化ケイ素膜の第2の部分
13…酸化ケイ素膜
14…マスク
15…窒化珪素膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の上に形成されているIDT電極と、
前記圧電基板の上に前記IDT電極を覆うように形成されている酸化ケイ素膜とを備え、
前記圧電基板は、IDT電極が形成されている第1の領域と、IDT電極が形成されていない第2の領域とを含み、
前記酸化ケイ素膜は、前記第1の領域の上に形成されている第1の部分と、前記第2の領域の上に形成されている第2の部分とを含み、
前記第2の部分の少なくとも一部におけるSi−OH結合の含有量は、前記第1の部分におけるSi−OH結合の含有量よりも多い、弾性波装置。
【請求項2】
前記第2の部分におけるSi−OH結合の含有量は、前記第1の部分におけるSi−OH結合の含有量よりも多い、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記第1の部分よりもSi−OH結合の含有量が多い前記第2の部分の少なくとも一部は、酸化ケイ素と水との反応により、Si−O−Si結合の少なくとも一部を加水分解させることにより形成されたものである、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記酸化ケイ素膜の上に形成されている窒化珪素膜をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
弾性表面波装置または弾性境界波装置である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
圧電基板と、
前記圧電基板の上に形成されているIDT電極と、
前記圧電基板の上に前記IDT電極を覆うように形成されている酸化ケイ素膜とを備え、
前記圧電基板は、IDT電極が形成されている第1の領域と、IDT電極が形成されていない第2の領域とを含み、
前記酸化ケイ素膜は、前記第1の領域の上に形成されている第1の部分と、前記第2の領域の上に形成されている第2の部分とを含む弾性波装置の製造方法であって、
前記圧電基板の上に、前記IDT電極を覆うように前記酸化ケイ素膜を形成する工程と、
前記第2の部分の少なくとも一部を、水と反応させることにより、Si−O−Si結合の少なくとも一部を加水分解する加水分解工程とを備える、弾性波装置の製造方法。
【請求項7】
前記加水分解工程は、前記第1の部分をマスクで覆う工程と、前記マスクで覆われた酸化ケイ素膜を水蒸気と接触させる工程とを含む、請求項6に記載の弾性波装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−124823(P2011−124823A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281219(P2009−281219)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】