説明

弾性表面波装置

【課題】複数の通過帯域を有し、良好なフィルター特性を実現しながらも従来より小型化することが可能な弾性表面波装置を提供すること。
【解決手段】弾性表面波装置1は、圧電基板6上に形成され、入力端子同士及び出力端子同士が互いに接続された、通過帯域が互いに重複しない複数のSAWフィルターを含む。少なくとも、最も高い通過帯域を有するSAWフィルター以外のSAWフィルターは、反射器13及び反射器14と、反射器13と反射器14の間に配置され、入力端子11に接続されたIDT15と、IDT15によって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って反射器13と反射器14の間に配置され、出力端子12に接続されたIDT17と、IDT15とIDT17の間に配置され、入力端子11及び出力端子12に接続されていないIDT16(又は反射器18)と、を含む縦結合3重モードSAWフィルター10として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電基板上に形成されたIDT(Interdigital Transducer)により励振される弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用した弾性表面波(SAW)フィルターは、高周波帯域の周波数フィルターとして携帯電話機やキーレスエントリーシステム等、様々な電子機器やシステムに用いられている。これらの電子機器やシステムの中には、複数の周波数帯域を使用して通信が行われるものもある。そのような電子機器やシステムでは、例えば、受信回路のSAWフィルターを、1つの通過帯域内にすべての受信周波数が含まれるように設計すると通過帯域内の周波数の妨害波を受信してスプリアスが発生したり通過帯域が広いため不要なノイズを受信してしまい受信感度が悪くなるおそれがある。そのため、複数の通過帯域を持ち、各受信周波数付近の信号のみを通過させる複通過型のSAWフィルターが要求され、例えば、特許文献1や特許文献2においてそのような複通過型のSAWフィルターを用いた装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、中心周波数の異なる2つのラダー型SAWフィルターを並列接続し、一方のラダー型SAWフィルターの前後に伝送線路からなる位相調整回路を接続し、他方のラダー型SAWフィルターの前後にインダクターとコンデンサーからなる位相調整回路を接続し、通過帯域外を高インピーダンス状態にすることで良好なフィルター特性を実現する複通過型のSAWフィルターを用いたフィルター装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、中心周波数の異なる2つの縦結合1次−3次2重モードSAWフィルター(縦結合1次−3次DMS(Double Mode SAW)フィルター)を並列接続し、入力端子又は出力端子と少なくとも一方の縦結合1次−3次DMSフィルターの間に少なくとも1つの一端子対弾性表面波共振子を直列に接続し、入力端子及び出力端子とアース電位の間にインダクタンス素子を接続し、良好なフィルター特性を実現する複通過型のSAWフィルターを用いた弾性表面波装置が提案されている。
【0005】
図11に示すように、縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性は、通過帯域の高域側近傍(図11における周波数f付近の周波数領域)で減衰量が小さいため、特許文献2に記載された弾性表面波装置では、一端子対弾性表面波共振子の反共振周波数を減衰量が小さい周波数付近と一致させることにより、フィルター特性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−121138号公報
【特許文献2】特開2001−326557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、良好なフィルター特性を実現するために、特許文献1に記載されたフィルター装置では伝送線路又はインダクターとコンデンサーからなる位相調整回路が必要であり、特許文献2に記載された弾性表面波装置では一端子対弾性表面波共振子が必要であるため、ともにチップサイズが大型になってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、複数の通過帯域を有し、良好なフィルター特性を実現しながらも従来より小型化することが可能な弾性表面波装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、圧電基板上に形成され、入力端子同士及び出力端子同士が互いに接続された、通過帯域が互いに重複しない複数の弾性表面波フィルターを含む弾性表面波装置であって、少なくとも、最も高い通過帯域を有する前記弾性表面波フィルター以外の前記弾性表面波フィルターは、第1の反射器と、第2の反射器と、前記第1の反射器と前記第2の反射器の間に配置され、前記入力端子に接続された第1のIDTと、前記第1のIDTによって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って前記第1の反射器と前記第2の反射器の間に配置され、前記出力端子に接続された第2のIDTと、前記第1のIDTによって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って前記第1のIDTと前記第2のIDTの間に配置され、前記入力端子及び前記出力端子に接続されていない第3のIDT又は第3の反射器と、を含み、前記第1のIDT、前記第2のIDT及び前記第3のIDT又は前記第3の反射器に閉じ込められた1次、2次、3次の3つの振動モードに基づいて前記通過帯域が決定される縦結合3重モード弾性表面波フィルターとして構成されることを特徴とする。
【0010】
1次、2次、3次の3つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される縦結合3重モード弾性表面波フィルター(以下、「縦結合3重モードSAWフィルター」という。)は、縦結合1次−3次DMSフィルターと比較して通過帯域の高域側近傍における減衰量が大きいので共振子を接続する必要がない。そのため、通過帯域が互いに重複しない複数の縦結合3重モードSAWフィルターを互いに並列接続し、必要に応じて簡易な構成のインピーダンス整合回路を付加すれば、複数の通過帯域を有する弾性表面波装置を実現することができる。すなわち、本発明によれば、共振子や位相調整回路が不要であるので、良好なフィルター特性を実現しながらも従来より小型化することが可能な弾性表面波装置を提供することができる。
【0011】
(2)この弾性表面波装置において、前記最も高い通過帯域を有する前記弾性表面波フィルターも、前記縦結合3重モード弾性表面波フィルターであってもよい。
【0012】
(3)この弾性表面波装置において、前記圧電基板は、水晶基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の弾性表面波装置の構成について説明するための図。
【図2】縦結合3重モードSAWフィルターの概略平面図。
【図3】縦結合3重モードSAWフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【図4】縦結合3重モードSAWフィルターの振動モードと通過帯域の関係について説明するための図。
【図5】本実施形態の弾性表面波装置のフィルター特性の一例を示す図。
【図6】縦結合3重モードSAWフィルターの変形例の概略平面図。
【図7】弾性表面波装置の変形例の構成について説明するための図。
【図8】弾性表面波装置の変形例の構成について説明するための図。
【図9】弾性表面波装置の変形例の構成について説明するための図。
【図10】縦結合1次−3次DMSフィルターの概略平面図。
【図11】縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態の弾性表面波装置の構成について説明するための図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の弾性表面波装置1は、縦結合3重モードSAWフィルター10及び20を含んで構成されている。
【0017】
縦結合3重モードSAWフィルター10及び20は並列に接続されている。具体的には、縦結合3重モードSAWフィルター10の入力端子11と縦結合3重モードSAWフィルター20の入力端子21は、弾性表面波装置1の入力端子2に接続されている。また、縦結合3重モードSAWフィルター10の出力端子12と縦結合3重モードSAWフィルター20の出力端子22は、弾性表面波装置1の出力端子3に接続されている。
【0018】
縦結合3重モードSAWフィルター10の通過帯域と縦結合3重モードSAWフィルター20の通過帯域は重複しないように構成されている。すなわち、縦結合3重モードSAWフィルター10の中心周波数がf、通過帯域幅がΔfであり、縦結合3重モードSAWフィルター20の中心周波数がf、通過帯域幅がΔfであり、f<fかつf+Δf/2<f−Δf/2の関係が満たされている。
【0019】
このように、弾性表面波装置1は、入力端子2と出力端子3の間に通過帯域が重複しない2つの縦結合3重モードSAWフィルター10及び20が並列接続されているので、2つの通過帯域を有する複通過フィルターとして機能する。
【0020】
必要に応じて、弾性表面波装置1の入力端子2や出力端子3とグランドの間にインピーダンス整合回路を接続してもよい。例えば、図1に示すように、インピーダンス整合回路として、入力端子2及び出力端子3とグランドの間にそれぞれインダクター4、5を接続することができる。なお、インダクター4、5等のインピーダンス整合回路は、弾性表面波装置1の内部に設けられていてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態における縦結合3重モードSAWフィルターの概略平面図である。
【0022】
図2に示すように、縦結合3重モードSAWフィルター10(20)は、圧電基板6の主表面上に形成された、反射器13(本発明における「第1の反射器」に相当する)、IDT15(本発明における「第1のIDT」に相当する)、IDT16(本発明における「第3のIDT」に相当する)、IDT17(本発明における「第2のIDT」に相当する)、反射器14(本発明における「第2の反射器」に相当する)を含んで構成されている。
【0023】
圧電基板6は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ほう酸リチウム(Li2B4O7, LBO)等の単結晶材料や、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電性薄膜、圧電性セラミックス材料などを用いて製造することができる。
【0024】
IDT15は、反射器13と反射器14の間に、一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極15a、15bが、電極15aの1本の電極指と電極15bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT15の電極指ピッチは一定値didtになっている。電極15aは入力端子11(21)と接続され、電極15bは接地されている。
【0025】
IDT17は、IDT15によって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って、反射器13と反射器14の間に、IDT15と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極17a、17bが、電極17aの1本の電極指と電極17bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT17の電極指ピッチはIDT15と同じ一定値didtになっている。電極17aは接地され、電極17bは出力端子12(22)と接続されている。
【0026】
IDT16は、IDT15によって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って、IDT15とIDT17の間に、IDT15と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極16a、16bが、電極16aの1本の電極指と電極16bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図2に示すように、IDT16の電極指ピッチはIDT15と同じ一定値didtになっている。電極16a、16bは、入力端子11(21)及び出力端子12(22)のいずれにも接続されておらず、接地もされていない。
【0027】
反射器13、14は、IDT15、IDT16、IDT17の両側に近接して配置され、一定のグレーティングピッチ(dref)で電極が形成されている。
【0028】
このように構成された縦結合3重モードSAWフィルター10(20)において、f=v/2didt(vは弾性表面波が圧電基板6の表面を伝搬する速度)付近の周波数を有する信号が入力端子11(21)に入力されると、IDT15により1波長(λidt)が2didtに等しい弾性表面波が励起される。そして、IDT15により励起された弾性表面波がIDT17に到達すると、出力端子12(22)にf=v/2didt付近の周波数を有する信号が発生する。すなわち、中心周波数をf=v/2didtとするバンドパスフィルターを実現することができる。
【0029】
縦結合3重モードSAWフィルター10では中心周波数がfになるように電極指ピッチdidtが決められ、縦結合3重モードSAWフィルター20では中心周波数がfになるように電極指ピッチdidtが決められる。そして、反射器13と反射器14がIDT15、IDT16及びIDT17を挟むように近接して配置されているため、反射器13と反射器14の間に1次、2次、3次の3つの振動モードを閉じ込めることが可能になり、これら3つの振動モードに基づいて通過帯域ΔfやΔfが決定される。
【0030】
圧電基板6の材料として温度による周波数シフトが少ない−52°回転Yカット90°X伝搬水晶を使用することにより、例えば、中心周波数fが数100MHz、通過帯域幅Δfが数100kHz(すなわち、比帯域Δf/fが0.1%程度)の縦結合3重モードSAWフィルター10を実現することができる。
【0031】
なお、反射効率を高め低損失のフィルターを実現すべく、反射器13および反射器14のグレーティングピッチdrefをIDT15、IDT16及びIDT17の電極指ピッチdidtよりも少しく大きく設定することが望ましい。
【0032】
図3に、本実施形態における縦結合3重モードSAWフィルター10のフィルター特性の一例を示す。図3に示すフィルター特性は、圧電基板6が−52°回転Yカット90°X伝搬の水晶基板、励振波がSH波、電極材料がアルミニウム(Al)、電極膜厚(波長換算膜厚)が6%λ、IDT15、IDT17の電極指がそれぞれ65対、IDT16の電極指が40対、反射器13及び反射器14の電極が100本の条件でのフィルター特性である。
【0033】
図3に示すように、縦結合3重モードSAWフィルター10は、中心周波数f=314MHz、通過帯域幅Δf=540kHz(通過帯域は313.73MHz〜314.27MHz)であり、通過帯域外の信号を十分に減衰させることができる。さらに、図11に示した縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性と比較して、通過帯域の高域側近傍の周波数領域(図3における周波数f付近の周波数領域)における減衰量が大きい。
【0034】
図4は、縦結合3重モードSAWフィルター10単体(インピーダンス整合回路がない条件)での減衰特性の一例を示す図であり、図4に示すように、図3の通過帯域に相当する位置にほぼ同じ共振レベルを有する1次、2次及び3次の3つの振動モードが現われる。このように、縦結合3重モードSAWフィルター10は、1次、2次、3次の3つの振動モードをすべて利用して通過帯域が形成されるので、縦結合1次−2次−3次3重モードフィルターと呼ばれる。縦結合1次−2次−3次3重モードフィルターは、縦結合1次−3次DMSフィルターと同等の通過帯域幅を維持しながら、通過帯域のリップルや群遅延歪みを縦結合1次−3次DMSフィルターよりも小さくすることができる。フィルター特性に寄与する共振が2つから3つに増えることにより、通過域近傍の急峻度が改善され減衰域の減衰量が改善されると共にインピーダンスが高くなる。また、並列接続により複通過フィルターを実現する場合の相手側フィルターのインピーダンスの影響を受け難くなり、位相調整回路や減衰量改善のための付加共振子が不要となる。
【0035】
なお、縦結合3重モードSAWフィルター20も、中心周波数と通過帯域が異なる点を除き、図3と同様のフィルター特性を有する。例えば、縦結合3重モードSAWフィルター20は、中心周波数f=316MHz、通過帯域幅Δf=540kHz(通過帯域は315.73MHz〜316.27MHz)になるように構成される。
【0036】
図5に、本実施形態の弾性表面波装置1のフィルター特性の一例を示す。図5のフィルター特性は、縦結合3重モードSAWフィルター10が中心周波数f=314MHz、通過帯域幅Δf=540kHz(通過帯域は313.73MHz〜314.27MHz)であり、縦結合3重モードSAWフィルター20が中心周波数f=316MHz、通過帯域幅Δf=540kHz(通過帯域は315.73MHz〜316.27MHz)である場合のフィルター特性である。図5に示すように、弾性表面波装置1は、例えば、帯域幅が540kHzの2つの通過帯域(313.73MHz〜314.27MHz及び315.73MHz〜316.27MHz)を有する複通過フィルターとして機能させることができる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、縦結合3重モードSAWフィルター10と縦結合3重モードSAWフィルター20を並列接続することにより、良好なフィルター特性を実現することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、縦結合1次−3次DMSフィルターを用いる場合には必要であった共振子を必要とせず、必要に応じて図1に示したような簡易なインピーダンス整合回路を付加するだけで2つの縦結合3重モードSAWフィルター10、20を接続することができるので、弾性表面波装置1を従来よりも小型化することが容易である。
【0039】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0040】
例えば、図1に示した弾性表面波装置1の縦結合3重モードSAWフィルター10及び20は、図6に示すように、IDT17の代わりに反射器18を配置するようにしてもよい。反射器18は、グレーティングピッチがIDT15及びIDT17の電極指ピッチdidtと同一となるように構成される。
【0041】
このように構成しても図3や図5と同様のフィルタ特性を実現することができる。さらに、反射効率を高め低損失のフィルタを実現すべく、反射器13および反射器14のグレーティングピッチdrefをIDT15及びIDT17の電極指ピッチdidtよりも少しく大きく設定することが望ましい。
【0042】
また、例えば、図7に示すように、弾性表面波装置1は、3つの縦結合3重モードSAWフィルター10、20及び30を並列に接続した構成としてもよい。すなわち、縦結合3重モードSAWフィルター10、20、30の各入力端子11、21、31を弾性表面波装置1の入力端子2に共通接続し、縦結合3重モードSAWフィルター10、20、30の各出力端子12、22、32を弾性表面波装置1の出力端子3に共通接続するように構成してもよい。
【0043】
ここで、縦結合3重モードSAWフィルター10、20、30の通過帯域は互いに重複しないように構成されている。すなわち、縦結合3重モードSAWフィルター10、20、30は、中心周波数がそれぞれf、f、fであり、通過帯域幅がそれぞれΔf、Δf、Δfであり、f<f<f、f+Δf/2<f−Δf/2、f+Δf/2<f−Δf/2の関係が満たされている。
【0044】
このように、図7に示す弾性表面波装置1は、入力端子2と出力端子3の間に通過帯域が重複しない3つの縦結合3重モードSAWフィルター10、20、30が並列接続されているので、3つの通過帯域を有する複通過フィルターとして機能する。同様に、通過帯域が互いに重複しない4個以上の縦結合3重モードSAWフィルターを並列接続することにより、4つ以上の通過帯域を有する複通過フィルターとして機能する弾性表面波装置1を実現することができる。
【0045】
また、例えば、図1に示した弾性表面波装置1は、図8に示すように、通過帯域が高い方の縦結合3重モードSAWフィルター20を縦結合2重モードSAWフィルター40に置き換えて構成することもできる。すなわち、縦結合3重モードSAWフィルター10の入力端子11と縦結合2重モードSAWフィルター40の入力端子41を弾性表面波装置1の入力端子2に共通接続し、縦結合3重モードSAWフィルター10の出力端子12と縦結合2重モードSAWフィルター40の出力端子42を弾性表面波装置1の出力端子3に共通接続するように構成してもよい。
【0046】
また、例えば、図7に示した弾性表面波装置1は、図9に示すように、通過帯域が最も高い縦結合3重モードSAWフィルター30を縦結合2重モードSAWフィルター40に置き換えて構成することもできる。すなわち、縦結合3重モードSAWフィルター10、20の各入力端子11、12と縦結合2重モードSAWフィルター40の入力端子41を弾性表面波装置1の入力端子2に共通接続し、縦結合3重モードSAWフィルター10、20の各出力端子12、22と縦結合2重モードSAWフィルター40の出力端子42を弾性表面波装置1の出力端子3に共通接続するように構成してもよい。
【0047】
図8及び図9に示した縦結合2重モードSAWフィルター40は、例えば、図10に示すように、圧電基板6の主表面上に形成された、反射器43、IDT45、IDT46、IDT47、反射器44を含む縦結合1次−3次DMSフィルターとして構成することができる。
【0048】
IDT45は、反射器43と反射器44の間に、一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極45a、45bが、電極45aの1本の電極指と電極45bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図10に示すように、IDT45の電極指ピッチは一定値didtになっている。電極45aは接地され、電極45bは出力端子42と接続されている。
【0049】
IDT47は、IDT45によって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って、反射器43と反射器44の間に、IDT45と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極47a、47bが、電極47aの1本の電極指と電極47bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図10に示すように、IDT47の電極指ピッチはIDT45と同じ一定値didtになっている。電極47aは接地され、電極47bは出力端子42と接続されている。
【0050】
IDT46は、IDT45によって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って、IDT45とIDT47の間に、IDT45と同じ一定間隔で形成された複数の電極指を有する櫛状の電極46a、46bが、電極46aの1本の電極指と電極46bの1本の電極指を1対として互いに間挿し合うように対向して配置されている。すなわち、図10に示すように、IDT46の電極指ピッチはIDT45と同じ一定値didtになっている。電極46aは入力端子41と接続され、電極46bは接地されている。
【0051】
反射器43、44は、IDT45、IDT46、IDT47の両側に近接して配置され、一定のグレーティングピッチ(dref)で電極が形成されている。
【0052】
このように構成された縦結合2重モードSAWフィルター40は、反射器43と反射器44がIDT45、IDT46及びIDT47を挟むように近接して配置されているため、反射器43と反射器44の間に1次と3次の2つの振動モードを閉じ込めることが可能になり、これら2つの振動モードに基づいて通過帯域が決定される。
【0053】
縦結合1次−3次DMSフィルターのフィルター特性は、図11に示したように、通過帯域の高域側近傍(図11における周波数f付近の周波数領域)で減衰量が小さくインピーダンスが低いが、通過帯域の低域側近傍では減衰量が大きくインピーダンスが高い。そのため、図8及び図9に示したように、通過帯域が最も高いSAWフィルターを縦結合1次−3次DMSフィルターとして構成しても、簡易なインピーダンス整合回路を付加して複通過フィルターを実現することができる。
【0054】
なお、従来と同様に、縦結合2重モードSAWフィルター40に共振子を直列接続することにより通過帯域の高域側近傍(図11における周波数f付近の周波数領域)の減衰量を大きくすることができ、さらに良好なフィルター特性を実現することができる。その場合でも、縦結合3重モードSAWフィルター10や20には共振子を直列接続する必要がないため従来よりも小型化することが容易である。
【0055】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0056】
1 弾性表面波装置、2 入力端子、3 出力端子、4〜5 インダクター、6 圧電基板、10 縦結合3重モードSAWフィルター、11 入力端子、12 出力端子、13〜14 反射器、15〜17 IDT、18 反射器、20 縦結合3重モードSAWフィルター、21 入力端子、22 出力端子、30 縦結合3重モードSAWフィルター、31 入力端子、32 出力端子、40 縦結合1次−2次DMSフィルター、41 入力端子、42 出力端子、43〜44 反射器、45〜47 IDT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に形成され、入力端子同士及び出力端子同士が互いに接続された、通過帯域が互いに重複しない複数の弾性表面波フィルターを含む弾性表面波装置であって、
少なくとも、最も高い通過帯域を有する前記弾性表面波フィルター以外の前記弾性表面波フィルターは、
第1の反射器と、
第2の反射器と、
前記第1の反射器と前記第2の反射器の間に配置され、前記入力端子に接続された第1のIDTと、
前記第1のIDTによって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って前記第1の反射器と前記第2の反射器の間に配置され、前記出力端子に接続された第2のIDTと、
前記第1のIDTによって励起される弾性表面波の伝搬方向に沿って前記第1のIDTと前記第2のIDTの間に配置され、前記入力端子及び前記出力端子に接続されていない第3のIDT又は第3の反射器と、を含み、
前記第1のIDT、前記第2のIDT及び前記第3のIDT又は前記第3の反射器に閉じ込められた1次、2次、3次の3つの振動モードに基づいて前記通過帯域が決定される縦結合3重モード弾性表面波フィルターとして構成されることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記最も高い通過帯域を有する前記弾性表面波フィルターも、前記縦結合3重モード弾性表面波フィルターであることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記圧電基板は、水晶基板であることを特徴とする弾性表面波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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