説明

形材の製造方法および形材

【課題】大きさが制限されることなく、効率的に製造でき、優れた外観を有する形材の製造方法および形材を提供することを課題とする。
【解決手段】形材本体2の表面側に開口する凹溝10に、形材本体2よりも強度の高い材質からなる補強材20を挿入し、凹溝10の開口部分に蓋板11を挿入し、凹溝10の側壁12bと蓋板11の側面11aとの突合せ部15に沿って摩擦撹拌を施して、補強材20と凹溝10との間の空隙部6に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材7を流入させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形材の製造方法および形材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フォークリフトのビームやヨーク等として用いられる形材は、フランジとウェブを有する断面H字状に形成されて、強度を大きくするように構成されている。近年、軽量化を達成するためにアルミニウム等の軽金属で形材を形成するようになっている一方で、被搬送物の大型化により、形材の強度をさらに大きくすることが要求されている。
【0003】
形材の強度を大きくするには、断面形状を大型化することが考えられるが、レイアウト上、大型化には限度があった。そこで、断面H字状の形材内部に形材本体よりも高強度の補強部材を設けることで強度を大きくしている形材が案出されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−33446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の形材は、形材に形成された凹溝に補強材を挿入して、ろう付けにて補強材を形材に一体的に固着するようになっている。特許文献1においては、形材は、多数のコア材を一対の表面板で挟み込んで形成されるサンドイッチパネルの外周縁に設けられているが、多数のコア材を表面板で挟み込んで固着するのにろう付作業が行われるので、コア材と表面板との固着と、形材と補強材との固着を、一度のろう付作業でまとめて行うことができる。また、形材の表面は表面板によって覆われるので、凹溝に固着された補強材が露出されることはなく、優れた外観を得ていた。
【0005】
しかしながら、ろう付には、温度管理が難しく製造が困難であるといった問題や、炉の大きさに形材の製造可能な大きさが制限されてしまうといった問題があった。すなわち、特許文献1のように、元々多数のコア材を表面板で挟み込んで固着するのにろう付を行う場合には、形材と補強材との固着も同時に効率的に行うことができるが、形材を単体で用いる場合に、ろう付をわざわざ行うと、大きさが制限される上に、製造効率が悪化してしまう問題があった。
【0006】
さらに、特許文献1の形材では、これを単体で用いると、補強材が露出してしまい、外観が悪化してしまう問題があった。
【0007】
そこで、本発明は前記の問題を解決するために案出されたものであって、大きさが制限されることなく、効率的に製造でき、優れた外観を有する形材の製造方法および形材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、形材本体の表面側に開口する凹溝に、前記形材本体よりも強度の高い材質からなる補強材を挿入し、前記凹溝の開口部分に蓋板を挿入し、前記凹溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って摩擦撹拌を施して、前記補強材と前記凹溝との間の空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させることを特徴とする形材の製造方法である。
【0009】
このような方法によれば、摩擦撹拌によって、補強材を形材本体に固着させているので、回転ツールを所定の位置に押し付けるだけでよく、簡単な加工で効率的に形材を製造できるとともに、特許文献1の形材のように炉に入れる必要がないので、形材の大きさが制限されることはなく、炉の温度管理も必要ない。また、蓋板は、摩擦撹拌によって、形材本体と一体的に固定され、補強材が形材表面に露出することはないので、表面がすっきりとした優れた外観を得ることができる。さらに、摩擦撹拌によって流動化した塑性流動材を補強材と凹溝との間の空隙部に流入させているので、従来よりも補強材と形材との固定強度を高めることができ、形材の強度を高めることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記凹溝が、その開口部分に前記蓋板を収容する拡幅部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の形材の製造方法である。
【0011】
このような方法によれば、蓋板が凹溝の拡幅部に載置されて安定した状態で摩擦撹拌が行われるので、接合加工を行いやすく、形材の精度向上を達成できる。
【0012】
請求項3に係る発明は、形材本体に形成された中空部に、前記形材本体よりも強度の高い材質からなる補強材を挿入し、前記中空部に対応する前記形材本体の表面部に沿って摩擦撹拌を施して、前記補強材と前記中空部との間の空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させることを特徴とする形材の製造方法である。
【0013】
このような発明によれば、請求項1の発明と同様に、形材の大きさが制限されることなく、効率的に製造でき、優れた外観を有するといった作用効果を得られる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記補強材が、棒状部材にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の形材の製造方法である。
【0015】
このような方法によれば、補強材と塑性流動材との接触面積が大きくなり、固着強度がさらに高くなる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記補強材が、炭素繊維を混入した複数の線材を撚り合わせて形成される撚り線ケーブルにて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の形材の製造方法である。
【0017】
このような方法によれば、撚り線ケーブルを用いることによって、補強材の表面積が大きくなり、補強材と塑性流動材との接触面積がさらに大きくなる。さらに、塑性流動材は凹凸形状の撚り線ケーブル表面に接触するように流入するので、補強材がその長手方向に係止されることとなり、補強材と形材との固着強度がさらに高くなる。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記形材本体が、アルミニウム製の押出形材にて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の形材の製造方法である。
【0019】
このような方法によれば、押出形材を適宜な長さで切断するだけで複雑な形状の形材本体を容易に製造することができる。また、アルミニウム製の押出形材は、寸法精度が高く、また、強度の割に軽量であるので、現場での取り回しが容易になる。
【0020】
請求項7に係る発明は、形材本体に形成された挿入部に、前記形材本体よりも強度の高い材質からなる補強材が挿入され、前記補強材と前記挿入部との間の空隙部に摩擦撹拌の摩擦熱によって流動化させた塑性流動材が流入されたことを特徴とする形材である。
【0021】
このような構成によれば、補強材と前記挿入部との間の空隙部に摩擦撹拌の摩擦熱によって流動化させた塑性流動材が流入されて、補強材を形材本体に固着させているので、回転ツールを所定の位置に押し付けるだけでよく、簡単な加工で効率的に形材を製造できる。また、特許文献1の形材のように炉に入れる必要がないので、形材の大きさが制限されることはなく、炉の温度管理も必要ない。また、補強材が形材表面に露出することはないので、表面がすっきりとした優れた外観を得ることができる。さらに、従来よりも補強材と形材との固定強度を高めることができ、形材の強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、形材の大きさが制限されることなく、効率的に製造でき、優れた外観を得ることができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第一実施形態]
次に、本発明を実施するための最良の第一の形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、断面H字状の形材のフランジ部分を補強する場合を例に挙げて本発明に係る形材の製造方法および形材について説明する。
【0024】
まず、本発明に係る形材の構成を説明する。図1に示すように、本実施形態に係る形材1の形材本体2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる押出形材にて構成されており、フランジ3,3とウェブ4とからなる断面H字状を呈している。
【0025】
本実施形態に係る形材1は、フランジ3,3に形成された挿入部5に、形材本体2であるアルミニウムよりも強度の高い材質、具体的には、アルミニウムのヤング率(70.3(GPa))よりもヤング率の高い材質からなる補強材20が挿入され、補強材20と挿入部5との間の空隙部6に摩擦撹拌の摩擦熱によって流動化させた塑性流動材7が流入されていることを特徴とする。
【0026】
挿入部5は、形材本体2の押出方向に沿って貫通して形成されており、断面略円形を呈している。本実施形態では、挿入部5は、後記する凹溝10の下部内表面と蓋板11の下面にて区画されて構成されている。
【0027】
挿入部5の内部に挿入された補強材20は、棒状部材であって、炭素繊維を混入した複数の線材20a,20a・・・を撚り合わせて形成される撚り線ケーブルにて構成されている。撚り線ケーブル(補強材20)は、炭素繊維をエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂に混入し、これを複合化して成形硬化して線材20a,20a・・・を形成し、これらを撚り合わせて形成したものである。本実施形態では、例えば、中心に1本、その周囲に6本の合計7本の線材20a,20a・・・が撚り合わされて、外径が例えば12.5mmの撚り線ケーブルが形成されている。この撚り線ケーブルは、ヤング率が137(GPa)であり、アルミニウムよりも高強度となっている。なお、撚り線ケーブルの外径やヤング率は一例であって、形材本体よりもヤング率が高ければよく、形材本体の大きさに応じて適宜選択される。
【0028】
また、本実施形態では、炭素繊維をエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂に混入し、これを複合化して線材20aを形成しているが、これに限られるものではない。例えば、Al−Si−Mg−Cu系合金粉末にSiC、Alなどのセラミックス系粉末を混合した混合粉末を、熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Pressing)または冷間等方圧加圧法(Cold Isostatic Pressing)でビレット状に成形し、これを押出加工した後にマトリックスであるAl−Si−Mg−Cu系合金を時効硬化させて、形材本体2よりもヤング率の高い線材を製造し、これを補強材として用いてもよい。また、その他にS45C、SKD等の鋼丸棒、SUS303,304等のステンレス丸棒を、そのままの形状で補強材として用いても構わない。あるいはこれら鋼線材、ステンレス線材を複数撚り合わせて撚り線ケーブル(補強材)を形成してもよい。
【0029】
補強材20と挿入部5との間の空隙部6に流入された塑性流動材7は、撚り線ケーブルの外周面の凹凸に沿って隣接する線材20a,20a間の凹部に流動し、撚り線ケーブルと塑性流動材7とが互いに噛み合うように構成されている。塑性流動材7は、空隙部6の形材本体2の表面2a(図3の(a)参照)側の略半分の領域に流動して充填されるようになっている。なお、塑性流動材7は、補強材20の外周面全体に沿った空隙部6の全体に充填するようにしてもよいのは勿論である。
【0030】
次に、前記構成の形材1の製造方法を説明する。
【0031】
まず、図2の(a)に示すように、フランジ3(図2では片側のみ図示)とウェブ4とからなる断面H字状の形材本体2を形成する。形材本体2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出形材によって構成されている。フランジ3には、その表面側に開口する凹溝10が押出時に一体的に形成されている。凹溝10の開口部分は、蓋板11(図3の(a)参照)を収容する拡幅部12を備えている。拡幅部12は、凹溝10の底部側の補強材収容部13と連続的に形成されている。補強材収容部13は、底部側半分に断面半円形を呈する底面13aを有し、開口部側半分に互いに平行な内側壁13b,13bを有している。内側壁13b,13bは、形材本体2のフランジ3の表面2aに対して直交する方向に形成されている。補強材収容部13は、撚り線ケーブルからなる補強材20(図2の(b)参照)の最外周径と同等の幅および高さを有しており、拡幅部12よりも底部側で補強材20全体を収容できるように構成されている。
【0032】
拡幅部12は、凹溝10の下部の補強材収容部13の幅方向両側の内側壁13b,13bから直交して(形材本体2のフランジ3の表面2aと平行になる)両外側へ広がる支持面12a,12aと、これら支持面12a,12aの幅方向両端で、支持面12aと直交する側壁12b,12bとを備えて構成されている。支持面12a,12aは、蓋板11を、その幅方向両端でそれぞれ支持するように構成されている。
【0033】
凹溝10は、形材本体2の押出方向の全長に亘って連続して形成されている。凹溝10は、フランジ3の幅方向に所定の間隔をあけて複数列(本実施形態では4列)形成されており、互いに平行になっている。
【0034】
なお、本実施形態では、拡幅部12を含む凹溝10を、形材本体2の押出時に一体的に形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、押出形材によって、拡幅部を有さない凹溝を形成しておき、公知のエンドミル加工や切削加工等により、拡幅部を形成するようにしてもよい。さらに、押出形材によって、凹溝を有さない形材本体を形成しておき、公知のエンドミル加工や切削加工等により、拡幅部を含む凹溝を形成するようにしてもよい。
【0035】
次に、図2の(b)に示すように、フランジ3の表面2a側から、複数の補強材20を各凹溝10内に順次挿入する。このとき、撚り線ケーブルからなる補強材20の最外周部は、補強材収容部13の断面半円形の底面13aと螺旋状に線接触する。また、補強材20は、補強材収容部13の内部に完全に収容され、補強材20の開口部側端部は、拡幅部12の支持面12aよりも底部側に位置する。
【0036】
その後、図3の(a)に示すように、各凹溝10の開口部分の拡幅部12に、複数の蓋板11を順次挿入する。蓋板11は、形材本体2と同種のアルミニウムまたはアルミニウム合金にて構成されており、拡幅部12の側壁12b,12b間の距離と同等の幅と、拡幅部12の深さと同等の厚さを備えている。よって、蓋板11の幅方向両側の側面11a,11aは、拡幅部12の側壁12b,12bとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向し、蓋板11の表面11bは、形材本体2の表面2aと面一になる。そして、蓋板11の幅方向両端には、形材本体2と蓋板11との突合せ部15,15がそれぞれ位置することとなる。
【0037】
次に、図3の(b)に示すように、蓋板11の幅方向両端の、形材本体2との突合せ部15,15に沿って、摩擦撹拌(Friction Stir Welding)を順次施す。ここで、摩擦撹拌とは、先端に突起のある円筒状の回転ツール25を回転させながら、突合せ部15の形材本体2および蓋板11の母材に押圧して、突合せ部15に貫入させて摩擦熱を発生させて母材を軟化させるとともに、回転ツール25の回転力によって突合せ部15の周囲を塑性流動化させて練り混ぜることで、部材同士を一体化させることをいう。
【0038】
回転ツール25は、例えば、工具鋼からなり、円柱形のツール本体26と、その底面の中心部から同心軸で垂下するピン27とを有する。ピン27は、先端に向けて幅狭となるテーパ状に形成されている。なお、ピン27の周面には、その軸方向に沿って図示しない複数の小溝や径方向に沿ったネジ溝が形成されていてもよい。
【0039】
摩擦撹拌を施すに際しては、形材本体2および蓋板11を図示しない冶具により拘束した状態で、各突合せ部15に高速回転する回転ツール25を押し込んで、突合せ部15に沿って移動させる。高速回転するピン27により、その周囲の形材本体2および蓋板11のアルミニウム合金材料は、摩擦熱によって加熱され流動化する。そして、この流動した物質(塑性流動材7)が、補強材20と凹溝10との間の空隙部6に流入する。
【0040】
このとき、空隙部6に流入した塑性流動材7は、補強材20の表面に付着して、補強材20と形材本体2を固着させることができる。特に、本実施形態では、補強材20を撚り線ケーブルにて構成しているので、図4に示すように、塑性流動材7は、撚り線ケーブルの開口部分側の外周面の凹凸に沿って、隣接する線材20a,20a間の凹部に入り込むように流動して硬化し、補強材20を係止するようになる。なお、塑性流動材7は、撚り線ケーブルの軸方向にも流動し、蓋板11の底面と、互いに隣接する線材20a,20aとで形成される空隙部6aにも流入することができる。したがって、補強材20は、その周方向および軸方向(長手方向)への移動が確実に規制されて、形材本体2と補強材20との固定強度が大幅に高められる。これによって、形材1の強度を確実かつ効率的に高めることができる。
【0041】
また、凹溝10の開口部分に蓋板11を収容する拡幅部12が形成されているので、蓋板11がその挿入時に案内されて容易に位置決めされるとともに、拡幅部12に載置されて安定した状態で摩擦撹拌が行われるので、摩擦撹拌の加工を行いやすく、形材1の精度向上を達成できる。
【0042】
以上説明したような形材の製造方法および形材1によれば、摩擦撹拌により補強材20を形材本体2に固着させているので、蓋板11と形材本体2との突合せ部15に沿って回転ツール25を回転させながら押圧するだけでよく、簡単な加工で効率的に形材1を製造することができる。さらに、形材1を製造するのに特許文献1の形材のように炉に入れる必要がないので、形材1の大きさが制限されることはなく、炉の温度管理も必要なく容易に精度の高い形材1を製造することができる。
【0043】
また、蓋板11は、摩擦撹拌によって形材本体2と一体的に固定され、補強材20が形材1の表面に露出することはないので、形材1の表面が平面状ですっきりとした優れた外観を得ることができる。
【0044】
さらに、摩擦撹拌によって流動化した塑性流動材7を、補強材20と凹溝10との間の空隙部6に流入させて補強材20の表面に付着させているので、従来よりも補強材20と形材本体2との固定強度を高めることができ、形材1の強度を高めることができる。特に、補強材20を棒状の撚り線ケーブルにて構成していることで、体積に対する表面積が大きくなり、補強材20と塑性流動材7との接触面積が大きくなるので、補強材20と形材本体2との固定強度を大幅に高めることができる。また、摩擦撹拌によって、蓋板11は形材本体2と一体化されるので、接着剤等で固定するよりも形材本体2と蓋板11の固定強度が高く、形材本体2の強度が高くなる。
【0045】
また、撚り線ケーブルは、炭素繊維を樹脂に混入して構成されているので強度が高くかつ軽量であって、湾曲可能であるので製造加工時の取扱いが容易である。
【0046】
さらに、形材本体2が、アルミニウム製の押出形材にて構成されているので、押出形材を適宜な長さで切断するだけで、複数の凹溝10を備えた複雑な形状の形材本体2を容易に製造することができる。また、アルミニウム製の押出形材は、寸法精度が高く、さらに、強度の割に軽量であるので、製造加工時の取り回しが容易になるといった作用効果も得られる。
【0047】
[第二実施形態]
次に、本発明を実施するための最良の第二の形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。
【0048】
図5に示すように、本実施形態では、形材101の形材本体102のサイズが、第一実施形態よりも小さく、挿入部105および補強材20の個数が、3箇所ずつに少なくなっている。3つのうち、中央の挿入部105および補強材20は、ウェブ104の延長線上に設けられている。上下それぞれのフランジ103,103で、3つの挿入部105および補強材20が、形材本体102の幅方向に対して対照的に配置されている。
【0049】
また、図6の(a)および(b)に示すように、本実施形態では、形材本体102に形成された凹溝110は、第一実施形態の凹溝10のような拡幅部12(図2の(a)参照)を備えておらず、断面U字状を呈している。これによって、凹溝110の幅を、第一実施形態の凹溝10よりも小さくすることができ、隣り合う凹溝110,110の設置ピッチを小さくすることができる。
【0050】
なお、その他の構成は、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
以下、前記構成の形材101の製造方法を説明する。
【0052】
まず、図6の(a)に示すように、フランジ103(図6では片側のみ図示)とウェブ104とからなる断面H字状の形材本体102を形成する。フランジ103には、その表面側に開口する凹溝110が押出時に一体的に形成されている。凹溝110は、底部から開口部分まで一定の幅に形成されており、その内部に、補強材20(図6の(a)参照)と蓋板111(図7の(a)参照)とが挿入されるようになっている。凹溝110の幅は、撚り線ケーブルからなる補強材20(図6の(b)参照)の最外周径とおよび蓋板111の幅と略同等となっており、凹溝110の深さは、補強材20の最外周径と蓋板111の厚さとを加えた寸法と略同等となっている。
【0053】
凹溝110は、形材本体102の押出方向の全長に亘って連続して形成されている。凹溝110は、フランジ103の幅方向に所定の間隔をあけて複数列(本実施形態では3列)形成されており、互いに平行になっている。
【0054】
なお、本実施形態では、凹溝110は、形材本体102の押出時に一体的に形成されているが、これに限られるものではない。例えば、押出形材によって、凹溝を有さない形材本体を形成しておき、公知のエンドミル加工や切削加工等により、凹溝を形成するようにしてもよい。
【0055】
次に、図6の(b)に示すように、複数の補強材20を各凹溝110内に順次挿入する。このとき、撚り線ケーブルからなる補強材20の最外周部は、凹溝110の断面半円形の底面110aと螺旋状に線接触する。また、補強材20は、凹溝110の内部に完全に収容される。
【0056】
その後、図7の(a)に示すように、各凹溝110の開口部分110bに、複数の蓋板111を順次挿入する。蓋板111は、アルミニウム合金にて構成されており、凹溝110の側壁110c,110c間の距離と同等の幅と、凹溝110に挿入された補強材20の上端部と形材本体102の表面102aとの距離と同等の厚さを備えている。よって、蓋板111の幅方向両側の側面111a,111aは、凹溝110の側壁110c,110cとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向し、蓋板111の表面111bは、形材本体102の表面102aと面一になる。そして、蓋板111の幅方向両端には、形材本体102と蓋板111との突合せ部115,115がそれぞれ位置することとなる。
【0057】
次に、図7の(b)に示すように、蓋板111の幅方向両端の、形材本体102との突合せ部115,115に沿って、摩擦撹拌を順次施す。突合せ部115の周囲の形材本体102および蓋板111のアルミニウム合金材料は、摩擦撹拌の摩擦熱によって加熱され流動化する。そして、この流動した物質(塑性流動材7)が、補強材20と凹溝110との間の空隙部106に流入する。ここで、補強材20が撚り線ケーブルにて構成されているので、図8に示すように、塑性流動材7は隣接する線材20a,20a間の凹部に入り込んで、塑性流動材7と補強材20との接触面積が大きくなるとともに、補強材20が係止されることになるので、固定強度が高くなる。
【0058】
そして、空隙部106に流入した塑性流動材7は、補強材20の表面に付着して固化し、補強材20と形材本体2を固着させて形材101が完成する。
【0059】
かかる形材101の製造方法および形材101によれば、第一実施形態と同様の作用効果の他に、隣り合う凹溝110,110間の距離を小さくすることができるので、形材本体102のフランジ103の幅が狭い場合であっても、多くの補強材20を設けることができ、形材101の強度をより一層高めることができる。さらに、これによって、形材101の寸法を小さくすることができるので、レイアウト性が高くなり、設計の自由度を高めることができる。
【0060】
[第三実施形態]
次に、本発明を実施するための最良の第三の形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図9に示すように、本実施形態では、形材201の形材本体202のサイズが、第一実施形態よりも大きく、挿入部205および補強材20の個数が、上下のフランジ103で5箇所ずつに多くなっている。5つのうち、中央の挿入部205および補強材20は、ウェブ204の延長線上に設けられており、上下それぞれのフランジ203,203で、5つの挿入部205および補強材20が、形材本体202の幅方向に対して対照的に配置されている。
【0062】
また、図10の(a)および(b)に示すように、本実施形態では、補強材20が挿入される挿入部205(図9参照)は、形材本体202に形成された中空部である貫通孔210にて構成されている。貫通孔210は、断面円形を呈しており、形材本体202の押出方向の全長に亘って連続して形成されている。貫通孔210は、撚り線ケーブルからなる補強材20(図10の(b)参照)の最外周径と略同等あるいは若干大きい内径を有しており、内部に補強材20が挿入されている。この貫通孔210の内周面と、補強材20の表面との間の空隙部206には、貫通孔210に対応する形材本体202の表面部202aに沿って施された摩擦撹拌の摩擦熱によって流動化された塑性流動材7が流入されている。詳しくは、図12の(a)および(b)に示すように、塑性流動材7は、空隙部206の形材本体202の表面部202a側の略半分に流動して充填されている。
【0063】
以下、前記構成の形材201の製造方法を説明する。
【0064】
まず、図10の(a)に示すように、フランジ203(図10では片側のみ図示)とウェブ204とからなる断面H字状の形材本体202を形成する。フランジ203には、押出方向の両端に開口する貫通孔(中空部)210が押出時に一体的に形成されている。貫通孔210は、断面円形を呈しており、撚り線ケーブルからなる補強材20(図10の(b)参照)の最外周径と略同等あるいは若干大きい内径を有している。貫通孔210は、フランジ203の幅方向に所定の間隔をあけて複数列(本実施形態では5列)形成されており、互いに平行になっている。
【0065】
なお、本実施形態では、貫通孔210は、形材本体202の押出時に一体的に形成されているが、これに限られるものではない。例えば、押出形材によって、貫通孔を有さない形材本体を形成しておき、公知の穴あけ加工等により、貫通孔を形成するようにしてもよい。
【0066】
次に、図10の(b)に示すように、複数の補強材20を各凹溝110内に順次挿入する。このとき、撚り線ケーブルからなる補強材20の最外周部は、断面円形の貫通孔210の内周面と螺旋状に線接触する。
【0067】
その後、図11に示すように、貫通孔210に対応する形材本体202の表面部202a(貫通孔210を表面部202aに投影した場合の貫通孔210の幅方向両端部分)に沿って、摩擦撹拌を順次施す。このとき、形材本体202の表面部202aおよびその内側のアルミニウム合金材料は、摩擦撹拌の摩擦熱によって加熱され流動化する。そして、この流動した物質(塑性流動材7)が、補強材20と貫通孔210との間の空隙部206に流入する。ここで、補強材20は撚り線ケーブルにて構成されているので、図12の(a)および(b)に示すように、塑性流動材7が隣接する線材20a,20a間の凹部に入り込んで、塑性流動材7と補強材20との接触面積が大きくなるとともに、補強材20が係止されることになるので、形材本体202と補強材20との固定強度が高くなる。
【0068】
そして、空隙部206に流入した塑性流動材7は、補強材20の表面に付着して固化し、補強材20と形材本体202とを固着させて形材201が完成する。
【0069】
かかる形材201の製造方法および形材201によれば、第一実施形態と同様の作用効果の他に、第一実施形態と比較して、蓋板を設ける工程が不要となるので製作時間および手間の縮小を達成できるといった作用効果を得ることができる。
【0070】
一方、第一実施形態および第二実施形態のように、蓋板11,111を設ける場合は、形材本体2,102との突合せ部15,115が、表面2a,102aに現れるので、摩擦撹拌の案内線として利用でき、作業を行いやすいといった作用効果を得ることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、断面H字状の形材本体2(102,202)のフランジ3(103,203)に補強材20を挿入・固定して補強するようにしているが、これに限られることはなく、ウェブに補強材を設けてもよい。また、断面L字状、断面コ字状、平板状やパイプ状等の他の形態の形材に補強材を挿入・固定して補強するようにしてもよい。
【0072】
さらに、前記実施形態では、補強材20は撚り線ケーブルからなる棒状部材にて構成されているが、これに限られるものではなく、プレート状やメッシュ状に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る形材の第一実施形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る形材の製造方法の第一実施形態を示した図であって、(a)は、形材本体を示した斜視図、(b)は、形材本体の凹溝に補強材を挿入した状態を示した斜視図である。
【図3】本発明に係る形材の製造方法の第一実施形態を示した図であって、(a)は、形材本体の凹溝に蓋板を挿入した状態を示した斜視図、(b)は、摩擦撹拌を施す状態を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る形材の塑性流動材の形状を示した側面図である。
【図5】本発明に係る形材の第二実施形態を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る形材の製造方法の第二実施形態を示した図であって、(a)は、形材本体を示した斜視図、(b)は、形材本体の凹溝に補強材を挿入した状態を示した斜視図である。
【図7】本発明に係る形材の製造方法の第二実施形態を示した図であって、(a)は、形材本体の凹溝に蓋板を挿入した状態を示した斜視図、(b)は、摩擦撹拌を施す状態を示した斜視図である。
【図8】本発明に係る形材の塑性流動材の形状を示した側面図である。
【図9】本発明に係る形材の第三実施形態を示した斜視図である。
【図10】本発明に係る形材の製造方法の第三実施形態を示した図であって、(a)は、形材本体を示した斜視図、(b)は、形材本体の凹溝に補強材を挿入した状態を示した斜視図である。
【図11】本発明に係る形材の製造方法の第三実施形態を示した図であって、摩擦撹拌を施す状態を示した斜視図である。
【図12】(a)および(b)は、ともに本発明に係る形材の塑性流動材の形状を示した側面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 形材
2 形材本体
5 挿入部
6 空隙部
7 塑性流動材
10 凹溝
11 蓋板
11a 側面
12 拡幅部
12a 側壁
15 突合せ部
20 補強材
20a 線材
101 形材
102 形材本体
105 挿入部
106 空隙部
110 凹溝
110c 側壁
111 蓋板
111a 側面
115 突合せ部
201 形材
202 形材本体
202a 表面部
205 挿入部
206 空隙部
210 貫通孔(中空部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形材本体の表面側に開口する凹溝に、前記形材本体よりも強度の高い材質からなる補強材を挿入し、
前記凹溝の開口部分に蓋板を挿入し、
前記凹溝の側壁と前記蓋板の側面との突合せ部に沿って摩擦撹拌を施して、前記補強材と前記凹溝との間の空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる
ことを特徴とする形材の製造方法。
【請求項2】
前記凹溝は、その開口部分に前記蓋板を収容する拡幅部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の形材の製造方法。
【請求項3】
形材本体に形成された中空部に、前記形材本体よりも強度の高い材質からなる補強材を挿入し、
前記中空部に対応する前記形材本体の表面部に沿って摩擦撹拌を施して、前記補強材と前記中空部との間の空隙部に摩擦熱によって流動化させた塑性流動材を流入させる
ことを特徴とする形材の製造方法。
【請求項4】
前記補強材は、棒状部材にて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の形材の製造方法。
【請求項5】
前記補強材は、炭素繊維を混入した複数の線材を撚り合わせて形成される撚り線ケーブルにて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の形材の製造方法。
【請求項6】
前記形材本体は、アルミニウム製の押出形材にて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の形材の製造方法。
【請求項7】
形材本体に形成された挿入部に、前記形材本体よりも強度の高い材質からなる補強材が挿入され、
前記補強材と前記挿入部との間の空隙部に摩擦撹拌の摩擦熱によって流動化させた塑性流動材が流入された
ことを特徴とする形材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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