説明

形状データ作成システム及び形状データ作成方法

【課題】車両の設計の初期段階において、成形性の検討に必要な設計情報を作成することができる形状データ作成システム及び形状データ作成方法を提供すること。
【解決手段】形状データ作成システム1は、変形ルール作成部14により、新規のデザイン形状データが示すデザイン形状と、既存のデザイン形状データが示すデザイン形状との形状の差異を算出し、算出した差異に基づいて、既存のデザイン形状データが示すデザイン形状を新規のデザイン形状データが示すデザイン形状に近づける変形ルールを作成する。また、形状データ作成システム1は、形状データ作成部15により、変形ルール作成部14により作成された変形ルールに基づいて、既存のデザイン形状データに関連付けられている内板形状データ及び成形形状データが示す内部形状及び成形形状を変形することにより、新規のデザイン形状データに対応する新規の内板形状データ及び成形形状データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状データ作成システム及び形状データ作成方法に関する。詳しくは、車両における第1形状を示す第1形状データに対応し、第1形状に対応する第2形状を示す第2形状データを作成する形状データ作成システム及び形状データ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の設計では、初期段階において、車両の外観を決定するデザイン形状が設計され、その後の段階において、このデザイン形状に対応し、車両の内部形状を決定する内板形状、及びプレス加工時に必要となる成形形状が設計される。続いて、このデザイン形状、内板形状、及び成形形状に基づいて、実際に成形性のシミュレーションを行い、成形可能か否かの検討が行われる。続いて、成形可能という検討結果を得られた場合、デザイン形状、内板形状、及び成形形状が確定される。
【0003】
しかしながら、デザイン形状、内板形状、及び成形形状は、主に、この順番に設計されるため、デザイン形状が設計された直後には、内板形状及び成形形状の設計されておらず、検証シミュレーションを行うことができない。このため、内板形状及び成形形状が設計されてから検証シミュレーションを行う必要があり、成形不可能という検討結果が得られた場合、デザイン形状の再設計を行う必要があり、大幅な手戻りが生じてしまう。
【0004】
そこで、初期段階において、車両の形状の設計を効率的に行う方法が求められている。例えば、特許文献1には、他の車両等の構成要素の部材を予めデータベースに記憶しておき、形状等の初期デザインの情報の入力を受け付けることにより、車両の構成要素ごとに初期デザインの形状に適合する部材を選択し、設計案を作成する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−366606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の装置では、初期デザインの形状に適合する部材をデータベースから選択するため、初期デザインの形状に適合する部材を予めデータベースに記憶させておく必要がある。しかしながら、初期デザインの形状は、未知のものであるため、特許文献1に記載の装置では、データベースに対して、初期デザインの形状に適合する部材を全て記憶させておくことは困難である。よって、特許文献1に記載の装置では、初期デザインの形状に適合する部材がデータベースに記憶されていない場合、成形性の検討に必要な設計情報を得ることができない。
【0007】
本発明は、車両の設計の初期段階において、成形性の検討に必要な設計情報を作成することができる形状データ作成システム及び形状データ作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の形状データ作成システム(例えば、後述の形状データ作成システム1)は、車両における第1形状(例えば、後述のデザイン形状)を示す第1形状データ(例えば、後述のデザイン形状データ)に対応し、該第1形状に対応する第2形状(例えば、後述の内板形状及び成形形状)を示す第2形状データ(例えば、後述の内板形状データ及び成形形状データ)を作成する形状データ作成システムであって、既存の第1形状データと既存の第2形状データとを関連付けて記憶する記憶手段(例えば、後述の形状DB11)と、新規の第1形状データの入力を受け付ける受付手段(例えば、後述の受付部12)と、前記新規の第1形状データが示す第1形状に類似する第1形状を示す既存の第1形状データを前記記憶手段から抽出する抽出手段(例えば、後述の抽出部13)と、前記新規の第1形状データが示す第1形状と、前記抽出手段により抽出された前記既存の第1形状データが示す第1形状との形状の差異を算出し、該算出した差異に基づいて、前記既存の第1形状データが示す第1形状を前記新規の第1形状データが示す第1形状に近づける変形ルールを作成する変形ルール作成手段(例えば、後述の変形ルール作成部14)と、前記変形ルール作成手段により作成された前記変形ルールに基づいて、前記抽出手段により抽出された前記既存の第1形状データに関連付けられている前記既存の第2形状データを変形することにより、前記新規の第1形状データに対応する新規の第2形状データを作成する形状データ作成手段(例えば、後述の形状データ作成部15)と、を備える。
【0009】
この発明によれば、形状データ作成システムは、変形ルール作成手段により、新規の第1形状データが示す第1形状と、既存の第1形状データが示す第1形状との形状の差異を算出し、算出した差異に基づいて、既存の第1形状データが示す第1形状を当該新規の第1形状データが示す第1形状に近づける変形ルールを作成する。また、形状データ作成システムは、形状データ作成手段により、変形ルール作成手段により作成された変形ルールに基づいて、既存の第1形状データに関連付けられている既存の第2形状データを変形することにより、新規の第1形状データに対応する新規の第2形状データを作成する。
【0010】
よって、形状データ作成システムは、新規の第1形状データに対応し、成形性の検討に必要な新規の第2形状データを作成できるので、第1形状データしか設計されていない車両の設計の初期段階において、成形性の検討に必要な設計情報を作成することができる。
【0011】
また、車両の設計の初期段階から成形性の検討を行うことができるので、成形性の検討結果を第1形状の設計にフィードバックすることで、成形しやすい第1形状を再設計することもできる。よって、形状データ作成システムは、製品の設計期間や、この製品の製造開始までの期間を短縮することができる。
【0012】
本発明の形状データ作成方法は、車両における第1形状(例えば、後述のデザイン形状)を示す第1形状データ(例えば、後述のデザイン形状データ)に対応し、該第1形状に対応する第2形状(例えば、後述の内板形状及び成形形状)を示す第2形状データ(例えば、後述の内板形状データ及び成形形状データ)を形状データ作成システム(例えば、後述の形状データ作成システム1)が作成する形状データ作成方法であって、前記形状データ作成システムは、既存の第1形状データと既存の第2形状データとを関連付けて記憶する記憶手段(例えば、後述の形状DB11)を備え、新規の第1形状データを受け付ける受付ステップと、前記新規の第1形状データが示す第1形状に類似する第1形状を示す既存の第1形状データを前記記憶手段から抽出する抽出ステップと、前記新規の第1形状データが示す第1形状と、前記抽出ステップにおいて抽出された前記既存の第1形状データが示す第1形状との形状の差異を算出し、該算出した差異に基づいて、前記既存の第1形状データが示す第1形状を前記新規の第1形状データが示す第1形状に近づける変形ルールを作成する変形ルール作成ステップと、前記変形ルール作成ステップにおいて作成された前記変形ルールに基づいて、前記抽出ステップにおいて抽出された前記既存の第1形状データに関連付けられている前記既存の第2形状データを変形することにより、前記新規の第1形状データに対応する新規の第2形状データを作成する形状データ作成ステップと、を含む。
【0013】
この発明によれば、形状データ作成方法は、上述の効果と同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の設計の初期段階において、成形性の検討に必要な設計情報を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る形状データ作成システムの概要を示す図である。
【図2】本実施形態に係る形状データ作成システムの機能構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る形状データ作成システムにおける処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る形状データ作成システム1の概要を示す図である。形状データ作成システム1は、車両におけるデザイン形状(第1形状)を示す新規のデザイン形状データ(第1形状データ)に対応する新規の内板形状及び成形形状(第2形状)を示す内板形状データ及び成形形状データ(第2形状データ)を作成するシステムである。
【0018】
すなわち、形状データ作成システム1は、新規のデザイン形状データの入力を受け付け、この新規のデザイン形状データに類似する既存のデザイン形状データを抽出する(図1の手順1)。続いて、形状データ作成システム1は、この既存のデザイン形状データのデザイン形状を、新規のデザイン形状データのデザイン形状に近づける変形ルールを作成する(図1の手順2)。続いて、形状データ作成システム1は、この変形ルールに基づいて、既存の形状データが備える内板形状データ及び成形形状データを変形することで、新規のデザイン形状データに対応する新規の内板形状データ及び成形形状データを作成する(図1の手順3)。
【0019】
本実施形態は、形状データ作成システム1としてのコンピュータ及びその周辺装置に適用される。本実施形態における各機能は、コンピュータ及びその周辺装置が備えるハードウェア並びにこのハードウェアを制御するソフトウェアによって構成される。
【0020】
上記ハードウェアには、CPU等により構成される制御部の他、記憶部、通信部、表示部及び入力部が含まれる。記憶部としては、例えば、メモリ、ハードディスクドライブ等が挙げられる。通信部としては、例えば、各種有線及び無線インターフェース装置が挙げられる。表示部としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイが挙げられる。入力部としては、例えば、キーボード、マウス等が挙げられる。
【0021】
上記ソフトウェアには、上記ハードウェアを制御するプログラムやデータが含まれる。プログラムやデータは、記憶部により記憶され、制御部により適宜実行、参照される。また、プログラムやデータは、通信回線を介して配布したり、CD−ROM等のコンピュータ可読媒体に記録して配布したりすることも可能である。
【0022】
図2は、本実施形態に係る形状データ作成システム1の機能構成を示す図である。形状データ作成システム1の記憶部は、記憶手段としての形状DB11を備える。また、形状データ作成システム1の制御部は、受付手段としての受付部12と、抽出手段としての抽出部13と、変形ルール作成手段としての変形ルール作成部14と、形状データ作成手段としての形状データ作成部15と、結合部16を備える。
【0023】
形状DB11は、複数の車両の機種それぞれの、デザイン形状データと、内板形状データと、成形形状データとを関連付けて既存の形状データとして記憶する。
【0024】
ここで、デザイン形状データは、車両の設計の初期段階において作成されるデータであり、車両の外観形状、すなわち、デザイン形状を示すデータである。デザイン形状データは、複数の部位それぞれにおける形状、寸法、部材といった設計情報を含んでいる。また、複数の部位それぞれは、その部位を示す識別情報に対応付けられている。つまり、デザイン形状データは、複数の部位それぞれの識別情報と、複数の部位それぞれの設計情報とが関連付けられて形状DB11に記憶されている。
【0025】
また、内板形状データは、デザイン形状が設計されてから、このデザイン形状に基づいて作成されるデータであり、デザイン形状データのデザイン形状に対応する車両の内部形状を決定する形状を示すデータである。内板形状データは、デザイン形状データと同様に、複数の部位における形状、寸法、部材といった設計情報を含んでいる。また、内部形状データにおける複数の部位それぞれは、識別情報に対応付けられている。
【0026】
また、成形形状データは、デザイン形状が設計されてから、このデザイン形状に基づいて作成されるデータであり、プレス加工時に必要となる形状を示すデータである。成形形状データは、デザイン形状データと同様に、複数の部位における形状、寸法、部材といった設計情報を含んでいる。また、内部形状データにおける複数の部位それぞれは、識別情報に対応付けられている。
【0027】
このように、内板形状データ及び成形形状データは、デザイン形状が設計されてから、このデザイン形状に基づいて作成されるデータである。つまり、デザイン形状データの複数の部位それぞれの設計情報は、内板形状データ及び成形形状データの複数の部位それぞれの設計情報と対応付けられており、また、デザイン形状データの複数の部位それぞれの識別情報も、内板形状データ及び成形形状データの複数の部位それぞれの識別情報と対応付けられている。
【0028】
受付部12は、新規のデザイン形状データの入力を受け付ける。具体的には、受付部12は、新規のデザイン形状データと、この新規のデザイン形状データにおける作成対象部位の情報(例えば、作成対象部位の名称又は識別情報)の入力を、入力部を介して形状データ作成システム1のオペレータから受け付ける。なお、受付部12は、新規のデザイン形状データにおける作成対象部位の情報の入力を、受け付けることとしたが、新規のデザイン形状データ全体を作成対象部位として受け付けてもよいし、新規のデザイン形状データ全体を複数の部位に分割し、それぞれの部位を作成対象部位として受け付けてもよい。
【0029】
抽出部13は、受付部12により受け付けられた新規のデザイン形状データが示すデザイン形状に類似するデザイン形状を有するデザイン形状データを形状DB11から抽出する。
【0030】
具体的には、抽出部13は、受付部12により受け付けられた作成対象部位の情報から、新規のデザイン形状データにおける、作成対象部位の設計情報を特定する。続いて、抽出部13は、この作成対象部位の設計情報であって、特定した作成対象部位の設計情報に類似する設計情報を備える既存のデザイン形状データを特定する。続いて、抽出部13は、特定したデザイン形状データを形状DB11から抽出する。
【0031】
なお、抽出部13は、例えば、以下の手法を用いて類似する設計情報の抽出を行う。すなわち、抽出部13は、新規のデザイン形状データ及び形状DB11に記憶されている既存のデザイン形状データの作成対象部位に対応する部位(以下、対応部位という)の形状に対して、複数の軸(例えば、X軸、Y軸、Z軸)から視認した場合の2次元形状を構成する頂点及び面等に対して複数の特徴点を定義する。続いて、抽出部13は、この複数の特徴点に基づいて、2次元形状の特徴量を算出し、その後、2次元形状の特徴量に基づいて、3次元形状の特徴量を算出する。続いて、抽出部13は、新規のデザイン形状の作成対象部位と既存のデザイン形状対応部位の特徴量を比較して、新規のデザイン形状の作成対象部位と既存のデザイン形状の対応部位との類似度を算出し、最も類似度が高い既存のデザイン形状を抽出する。
【0032】
なお、抽出部13は、新規のデザイン形状データ及び形状DB11に記憶されている既存のデザイン形状データの形状の大きさに基づいて、形状DB11に記憶されている既存のデザイン形状データに対して、大きさを揃える正規化を行ったうえで、上述の特徴量を算出するようにしてもよい。このようにすることで、形状DB11に記憶されている既存のデザイン形状データに対応する形状の大きさを新規のデザイン形状データに対応する形状の大きさに合わせて、精度よく形状の類似度を算出することができる。
【0033】
変形ルール作成部14は、受付部12により受け付けられた新規のデザイン形状データが示すデザイン形状(新規デザイン形状)の作成対象部位と、抽出部13により抽出された既存のデザイン形状データが示すデザイン形状(既存デザイン形状)の対応部位との形状の差異を算出し、この算出した差異に基づいて、既存デザイン形状を、新規デザイン形状に近づける変形ルールを作成する。
【0034】
具体的には、変形ルール作成部14は、FFD法(Free−Form Deformation法)を用いて行われる。ここで、FFD法は、3次元構造体である変形対象物を包含する変形対象空間に複数の制御点を格子状に配置し、これら複数の制御点を移動することにより、この変形対象物の形態の変形を行う手法である。
【0035】
すなわち、変形ルール作成部14は、既存デザイン形状の対応部位を包含する変形対象空間を定義し、この変形対象空間に複数の制御点を格子状に配置するとともに、既存デザイン形状の対応部位及び新規デザイン形状の作成対象部位に対して、形状の特徴を示す特徴点を複数個定義する。ここで、特徴点は、3次元座標情報であり、既存デザイン形状の特徴点と、新規デザイン形状の特徴点は、対応付けられている。続いて、変形ルール作成部14は、既存デザイン形状及び新規デザイン形状の特徴点の差異を算出し、算出した差異に基づいて、既存デザイン形状の対応部位が新規デザイン形状の作成対象部位に近づくように複数の制御点を移動させ、これら複数の制御点の移動ルールを、変形ルールとする。
【0036】
形状データ作成部15は、変形ルール作成部14により作成された変形ルールに基づいて、抽出部13により抽出された既存のデザイン形状データに関連付けられている既存の内板形状データ及び成形形状データを変形することにより、新規のデザイン形状データに対応する新規の内板形状データ及び成形形状データを作成する。なお、内板形状データ、成形形状データ以外に、デザイン形状に関連付けられている既存のデータがある場合、形状データ作成部15は、これら既存のデータについて、内板形状データ、成形形状データと同様に変形することにより、新規のデザイン形状データに対応するデータを作成してもよい。
【0037】
具体的には、形状データ作成部15は、形状DB11の形状データを参照し、抽出部13により抽出された既存のデザイン形状データに対応する既存の内板形状データ及び成形形状データを抽出する。そして、抽出された既存の内板形状データ及び成形形状データの対応部位に対して、これらデータが示す形状を包含する変形対象空間を定義し、この変形対象空間上に複数の制御点を格子状に配置する。ここで、複数の制御点それぞれは、変形ルール作成部14において既存デザイン形状を包含する変形対象空間において配置された複数の制御点に対応している。
【0038】
続いて、形状データ作成部15は、変形ルール作成部14により作成された変形ルール、すなわち、複数の制御点の移動ルールに基づいて、既存の内板形状データ及び成形形状データの対応部位が示す内板形状及び成形形状を包含する変形対象空間の複数の制御点を移動させることにより、既存の内板形状データ及び成形形状データの対応部位に対応する内板形状及び成形形状を変形させる。続いて、形状データ作成部15は、変形された内板形状及び成形形状に対応する内板形状データ及び成形形状データにおける対応部位を、新規のデザイン形状データの作成対象部位に対応する新規の内板形状データ及び成形形状データとする。
【0039】
つまり、形状データ作成部15は、変形ルール作成部14により作成された変形ルールに基づいて、既存の形状データが備える内板形状データ及び成形形状データの対応部位が示す内部形状及び成形形状を変形し、この変形した内部形状及び成形形状に対応する内板形状データ及び成形形状データの対応部位を、新規のデザイン形状データの作成対象部位に対応する新規の内板形状データ及び成形形状データとする。
【0040】
結合部16は、受付部12により受け付けられた新規のデザイン形状データと、形状データ作成部15により作成された新規の内板形状データ及び成形形状データの作成対象部位と、を関連付けて、新規の形状データを作成する。なお、結合部16は、これら新規のデザイン形状データ、内板形状データ、及び成形形状データに対応するデザイン形状、内板形状、及び成形形状の位置合わせを行い、表示部に表示させるようにしてもよい。
【0041】
なお、受付部12により、新規のデザイン形状データ全体を複数の部位に分割し、それぞれの部位を作成対象部位として受け付けた場合、形状データ作成部15により複数の部位に対応する内板形状データ及び成形形状データが複数生成される。この場合、結合部16は、複数生成された内板形状データ及び成形形状データを合成することにより、新規のデザイン形状データ全体に対応する内板形状データ、及び成形形状データを生成する。
【0042】
図3は、本実施形態に係る形状データ作成システム1における処理を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS1(受付ステップ)において、受付部12は、入力部を介して新規のデザイン形状データの作成対象部位の入力を受け付ける。
【0044】
ステップS2(抽出ステップ)において、抽出部13は、ステップS1にて受け付けられた新規のデザイン形状データの作成対象部位が示すデザイン形状に類似するデザイン形状を有するデザイン形状データを形状DB11から抽出する。
【0045】
ステップS3(変形ルール作成ステップ)において、変形ルール作成部14は、ステップS1にて受け付けられた新規のデザイン形状データの作成対象部位が示すデザイン形状(新規デザイン形状)と、ステップS2にて抽出されたデザイン形状データが示すデザイン形状(既存デザイン形状)の対応部位との形状の差異を算出し、この算出した差異に基づいて、既存デザイン形状の対応部位を、新規デザイン形状の作成対象部位に近づける変形ルールを作成する。
【0046】
ステップS4(形状データ作成ステップ)において、形状データ作成部15は、ステップS3にて作成された変形ルールに基づいて、ステップS2にて抽出されたデザイン形状データに関連付けられている内板形状データ及び成形形状データの対応部位が示す内板形状及び成形形状を変形することにより、ステップS1にて受け付けられた新規のデザイン形状データの作成対象部位に対応する新規の内板形状データ及び成形形状データを作成する。
【0047】
ステップS5(結合ステップ)において、結合部16は、ステップS1にて受け付けられた新規のデザイン形状データと、ステップS4にて作成された新規の内板形状データ及び成形形状データの作成対象部位と、を関連付けて、新規の形状データを作成する。
【0048】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)形状データ作成システム1は、変形ルール作成部14により、新規のデザイン形状データが示すデザイン形状と、既存のデザイン形状データが示すデザイン形状との形状の差異を算出し、当該算出した差異に基づいて、当該既存のデザイン形状データが示すデザイン形状を当該新規のデザイン形状データが示すデザイン形状に近づける変形ルールを作成する。また、形状データ作成システム1は、形状データ作成部15により、変形ルール作成部14により作成された変形ルールに基づいて、既存のデザイン形状データに関連付けられている既存の内板形状データ及び成形形状データが示す内部形状及び成形形状を変形することにより、新規のデザイン形状データに対応する新規の内板形状データ及び成形形状データを作成する。
【0049】
よって、形状データ作成システム1は、新規のデザイン形状データに対応し、成形性の検討に必要な新規の内板形状データ及び成形形状データを作成できるので、デザイン形状データしか設計されていない車両の設計の初期段階において、成形性の検討に必要な設計情報を作成することができる。
【0050】
また、車両の設計の初期段階から成形性の検討を行うことができるので、成形性の検討結果をデザイン形状の設計にフィードバックすることで、成形しやすいデザイン形状を再設計することもできる。よって、形状データ作成システム1は、製品の設計期間や、この製品の製造開始までの期間を短縮することができる。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0052】
例えば、抽出部13は、受付部12により受け付けられた新規のデザイン形状データが示すデザイン形状に類似するデザイン形状を有するデザイン形状データを備える既存のデザイン形状データを形状DB11から抽出することとしたが、これに限らない。例えば、抽出部13は、受付部12により受け付けられた新規のデザイン形状データが示すデザイン形状に類似するデザイン形状を有するデザイン形状データを形状DB11から複数抽出し、形状データ作成システム1のオペレータに、いずれか1の既存のデザイン形状データを選択させるようにしてもよい。そして、変形ルール作成部14は、受付部12により受け付けられた新規のデザイン形状データが示すデザイン形状と、オペレータに選択された既存の形状データが備えるデザイン形状データが示すデザイン形状に基づいて、変形ルールを作成してもよい。
【0053】
このようにすることで、形状データ作成システム1は、新規のデザイン形状データが示すデザイン形状に類似するデザイン形状を有するデザイン形状データを備える複数の既存の形状データについて、形状データ作成システム1のオペレータが適切であると判断した既存の形状データを選択させることができ、この選択された既存の形状データに基づいて、新規の内板形状データ及び成形形状データを作成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 形状データ作成システム
11 形状DB(記憶手段)
12 受付部(受付手段)
13 抽出部(抽出手段)
14 変形ルール作成部(変形ルール作成手段)
15 形状データ作成部(形状データ作成手段)
16 結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における第1形状を示す第1形状データに対応し、該第1形状に対応する第2形状を示す第2形状データを作成する形状データ作成システムであって、
既存の第1形状データと既存の第2形状データとを関連付けて記憶する記憶手段と、
新規の第1形状データの入力を受け付ける受付手段と、
前記新規の第1形状データが示す第1形状に類似する第1形状を示す既存の第1形状データを前記記憶手段から抽出する抽出手段と、
前記新規の第1形状データが示す第1形状と、前記抽出手段により抽出された前記既存の第1形状データが示す第1形状との形状の差異を算出し、該算出した差異に基づいて、前記既存の第1形状データが示す第1形状を前記新規の第1形状データが示す第1形状に近づける変形ルールを作成する変形ルール作成手段と、
前記変形ルール作成手段により作成された前記変形ルールに基づいて、前記抽出手段により抽出された前記既存の第1形状データに関連付けられている前記既存の第2形状データを変形することにより、前記新規の第1形状データに対応する新規の第2形状データを作成する形状データ作成手段と、を備える形状データ作成システム。
【請求項2】
車両における第1形状を示す第1形状データに対応し、該第1形状に対応する第2形状を示す第2形状データを形状データ作成システムが作成する形状データ作成方法であって、
前記形状データ作成システムは、既存の第1形状データと既存の第2形状データとを関連付けて記憶する記憶手段を備え、
新規の第1形状データを受け付ける受付ステップと、
前記新規の第1形状データが示す第1形状に類似する第1形状を示す既存の第1形状データを前記記憶手段から抽出する抽出ステップと、
前記新規の第1形状データが示す第1形状と、前記抽出ステップにおいて抽出された前記既存の第1形状データが示す第1形状との形状の差異を算出し、該算出した差異に基づいて、前記既存の第1形状データが示す第1形状を前記新規の第1形状データが示す第1形状に近づける変形ルールを作成する変形ルール作成ステップと、
前記変形ルール作成ステップにおいて作成された前記変形ルールに基づいて、前記抽出ステップにおいて抽出された前記既存の第1形状データに関連付けられている前記既存の第2形状データを変形することにより、前記新規の第1形状データに対応する新規の第2形状データを作成する形状データ作成ステップと、を含む形状データ作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−3396(P2012−3396A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136111(P2010−136111)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】