説明

形状可変型音響発生装置

【課題】基台を有し、面スピーカの姿勢の可変により、扱い易くすると共に利用態様を拡大する。
【解決手段】音響発生装置100は、薄型で平面視正三角形の基台10と、静電型スピーカを備えて1枚の板状で正三角形に構成された4枚の面スピーカ20とを有する。面スピーカ20のうち固定型面スピーカ20Zが基台10に対して固定的に配設され、可動型面スピーカ20A〜20Cが固定型面スピーカ20Zに対して独立して回動自在に連結される。可動型面スピーカ20A〜20Cを立て、互いの係合部23、24と被係合部39、38とを係合させることで、三角錐型の立体状態にできる。また、係合部23、24と被係合部39、38の係合を解除して、各可動型面スピーカ20を基台10の上面10aに対して平行にした面一展開状態にすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型スピーカを利用した形状可変型音響発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電型スピーカを利用した音響発生装置が知られている。例えば、下記特許文献1の装置では、静電型の複数の面スピーカをカーテン状に折り畳み可能に連結し、折り畳みの程度によって音場を自在に制御できる。
【0003】
一方、下記特許文献2の装置のように、箱形のコンポーネントステレオの左右両側部に薄型のスピーカを枢着し、薄型のスピーカを旋回することで、展開状態と収納状態とに形態を可変にしたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−28652号公報
【特許文献2】特開2001−78291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、面スピーカ同士が連結されているだけなので、扱いにくく、設置する上で姿勢を安定させることが容易でないという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2の装置では、薄型のスピーカを拡げたとしても、コンポ本体の側面分しか面積を大きくできない。ここで、静電型スピーカは、コーンスピーカに比べれば音響伝達効率は高くない。そのため、上記特許文献2の装置において、仮に薄型のスピーカに静電型スピーカを適用した場合でも、音響を発する面積があまり広くならず、音響伝達効率が良くないという問題がある。
【0007】
さらに、上記特許文献1の装置では、面スピーカの折り畳み状態を可変にできるだけで、上記特許文献2の装置では、コンポ本体に対して薄型のスピーカを左右に開閉できるだけであるので、利用態様を広くする観点からは改善の余地があった。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、基台を有し、面スピーカの姿勢の可変により、扱い易くすると共に利用態様を拡大することができる形状可変型音響発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の形状可変型音響発生装置は、平面視多角形に形成された(10)基台と、前記基台の平面視における縁部(11)に対応する数だけ設けられ、各々、静電型スピーカ(21)を備えて1枚の板状に構成され、第1、第2及び第3の辺部(26、27、28)で三角形を呈する複数の面スピーカ(20A〜20C)とを有し、前記基台の前記各縁部に対して各1つの前記面スピーカ(20)の前記第1の辺部(26)が実質的に回動自在に連結状態とされて、各々の面スピーカが前記基台に対して独立して姿勢を変えられるように構成され、前記各面スピーカの前記第2の辺部(27)、前記第3の辺部(28)には、それぞれ、前記基台の隣接する縁部に連結状態とされている面スピーカの前記第3の辺部(28)、前記第2の辺部(27)と係合するための係合部(23、24、38、39)が設けられ、隣接する面スピーカ同士の前記第2の辺部の係合部(23、38)と前記第3の辺部の係合部(39、24)とを係合させることで、前記基台の上面(10a)を底辺とする角錐型の立体状態にすることができると共に、隣接する面スピーカ同士の前記第2の辺部の係合部と前記第3の辺部の係合部との係合を解除して前記複数の全ての面スピーカを前記基台の前記上面に対して平行にした面一展開状態にすることができるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記基台をその前記上面に垂直な方向から見た形状は正三角形である(請求項2)。また、好ましくは、前記基台をその前記上面に垂直な方向から見た形状及び前記面スピーカをそれに垂直な方向から見た形状はいずれも正三角形であり、前記第3の辺部の係合部(39、24)を、当該形状可変型音響発生装置と同じ構成の他の形状可変型音響発生装置における面スピーカの前記第2の辺部の係合部(23、38)に係合させることで、2つ以上の形状可変型音響発生装置を一体に連結することが可能である(請求項3)。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の請求項4の形状可変型音響発生装置は、多面体に形成された基台と、各々、静電型スピーカ(71)を備えて1枚の板状に構成された複数の面スピーカ(70A〜70C)とを有し、前記複数の面スピーカのうち一部の面スピーカ(70A)は、前記基台のいずれかの面の周縁に相当する稜部(67A)に実質的に回動自在に連結状態とされて前記基台に対して独立して姿勢を変えられるように構成されると共に、前記複数の面スピーカのうち前記一部以外の面スピーカ(70B、70C)は、前記一部の面スピーカ(70A)または前記基台に対して連結状態とされていない面スピーカ(70B)に回動自在に連結状態とされて、前記一部の面スピーカ(70A)または前記基台に対して連結状態とされていない面スピーカ(70B)に対して独立して姿勢を変えられるように構成され、前記複数の面スピーカが前記基台の面(60A、60B、60C)をそれぞれ覆う被覆状態と前記複数の全ての面スピーカを面一状態で平行にした面一展開状態とに姿勢が可変に構成されたことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記複数の面スピーカの少なくとも1つ(70C)には、増結用の係合部(73)が設けられ、該増結用の係合部と、当該形状可変型音響発生装置と同じ構成の他の形状可変型音響発生装置における前記面スピーカの前記増結用の係合部(73)とを係合させることで、2つ以上の形状可変型音響発生装置を一体に連結することが可能である(請求項5)。また、好ましくは、前記基台は直方体である(請求項6)。
【0013】
好ましくは、前記基台には、低音域の音響を発生可能なスピーカ(13、66)が配設されている(請求項7)。また、好ましくは、前記複数の面スピーカ(20、70)は各々、周縁部が枠体(22、72)で補強されている(請求項8)。
【0014】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、基台を有し、面スピーカの姿勢の可変により、一方向への音響伝達効率を高める用途と近傍での単独スピーカとしての用途とに安定した状態で利用可能にして、扱い易くすると共に利用態様を拡大することができる。
【0016】
請求項3によれば、展開面積を所望に応じて大きくできると共に、利用態様をさらに拡大することができる。
【0017】
本発明の請求項4によれば、基台を有し、面スピーカの姿勢の可変により、一方向への音響伝達効率を高める用途と近傍での単独スピーカとしての用途とに安定した状態で利用可能にして、扱い易くすると共に利用態様を拡大することができる。
【0018】
請求項5によれば、展開面積を所望に応じて大きくできると共に、利用態様をさらに拡大することができる。
【0019】
請求項7によれば、低音域を補完することができる。
【0020】
請求項8によれば、面スピーカの回動操作を行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る形状可変型音響発生装置の外観図である。
【図2】基台の斜視図、A−A線に沿う水平断面図である。
【図3】面一展開状態にした音響発生装置の平面図、B−B線に沿い、回動部及びその近傍の構成を示す断面図である。
【図4】音響発生装置を2つ以上連結した図、連結ブロックの変形例を示す図、変形例の音響発生装置を示す図、音響発生装置の組付図等を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る形状可変型音響発生装置の外観図である。
【図6】図5のC−C線に沿う縦断面図である。
【図7】可動型面スピーカを固定型面スピーカと平行にした状態を示す外観図である。
【図8】2つ以上の音響発生装置を連結して用いる例を示す図である。
【図9】音響発生装置の変形例を示す模式図、2つ以上の音響発生装置を連結して用いる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る形状可変型音響発生装置の外観図である。
【0024】
本音響発生装置100は、薄型の基台10を有し、基台10に、各々1枚の板状に構成された複数(4つの)の面スピーカ20(20A、20B、20C、20Z)が配設される。これら4つの面スピーカ20で面スピーカ組体20SPが構成される。面スピーカ20のうち、可動型面スピーカ20A〜20Cの姿勢が基台10に対して相対的に独立して可変であり、固定型面スピーカ20Zが基台10に対して平行で固定的である。音響発生装置100は、可動型面スピーカ20A〜20Cを可動させることで、四面体、特に三角錐型の「立体状態」にでき、さらに、互いに面一に展開し、且つ基台10の上面10aに対して平行にした「面一展開状態」にもできる。さらにそれらの間(回動途中)の状態にもすることができるように構成されている。図1が、立体状態を示している。
【0025】
図2(a)は、基台10の斜視図、図2(b)は、図2(a)のA−A線に沿う水平断面図である。図3(a)は、面一展開状態にした音響発生装置100の平面図である。基台10は、床面や机等に載置したとき、平面視(上面10aに垂直な方向視)で略正三角形を呈し、上面10a(図2(a))が真上を向く。以降、上下方向については、基台10が床面等に載置された状態を基準として呼称する。また、ポート14がある側を手前側とする。また、各可動型面スピーカ20の両面につき、図3(a)の面一展開状態において下側を向く面は図1の立体状態において外側となるので、外側面とも呼称する。一方、図3(a)の面一展開状態において可動型面スピーカ20の上側を向く面は図1の立体状態において内側となるので、内側面とも呼称する。
【0026】
図2(a)に示すように、基台10は、板型の三角形の2つの頂部に連結ブロック15、16が設けられ、樹脂等で一体に形成されている。さらに、上面10aには低音域の音響を発生可能なコーンスピーカ13が配設される。基台10の三角形の各辺に相当する部分には、上面10aにおいて縁部11(11A、11B、11C)が突設されている。各縁部11には、固定型面スピーカ20Zを取り付けるための締結穴12が複数設けられている。
【0027】
連結ブロック15、16の各下面側には、縁部11Aの長手方向に沿って凹状の溝部15a、16aが形成されている。連結ブロック16の側面には、2つのピン17が対角線上の位置に突設されると共に、2つの穴18が対角線上の位置に形成されている。連結ブロック16については、ピン17は、下側のものが溝部16aよりコーンスピーカ13寄り(図2(b)参照)、上側のものが溝部16aより手前寄りである。一方、連結ブロック15についても、連結ブロック16とは対称に、外側面にピン17及び穴18が2つずつ設けられる。ただし、連結ブロック15では、ピン17は上側のものが溝部16aよりコーンスピーカ13寄り、下側のものが溝部16aより手前寄りである(図2(b)参照)。
【0028】
また、縁部11Aの下方にはポート14が開口している。図2(b)に示すように、基台10の内部には、リブによってダクト9が形成されている。ダクト9が、コーンスピーカ13からポート14まで連通されており、これにより、コーンスピーカ13から発した低音の放音効率が高められている。連結ブロック15、16の各溝部15a、16aの部分には、後述する連結バー37(図4(b)参照)を固定するためのネジ穴19が形成されている。
【0029】
ところで、音響発生制御等の各種の制御を行う制御部が、基台10の内部に配設されるが、それらの図示は省略する。また、音量、音色、モード等、ユーザによって操作される操作子や画面、あるいは外部機器、電子楽器と接続するための端子等のインターフェイスも基台10に設けられるが、それらの図示は省略する。
【0030】
固定型面スピーカ20Zは、平面視で基台10が呈するのとほぼ同じ大きさの正三角形に構成され、面スピーカ部21Zを有する(図3(a))。面スピーカ部21Zの上側及び下側の各周縁部には、枠体22Zが配設固定され(図3(a)、図3(b)も参照)、周縁部が補強されている。可動型面スピーカ20A、20B、20Cは、それぞれ、回動部25A、25B、25Cにて、固定型面スピーカ20Zの3つの辺部に回動自在に連結されている。
【0031】
可動型面スピーカ20の基本構成はいずれも同じである。可動型面スピーカ20Aを例にとる。可動型面スピーカ20Aは、面スピーカ部21Aを有する(図1、図3(a))。面スピーカ部21Aは、第1、第2、第3の辺部26A、27A、28Aを有して、面スピーカ部21Aの面方向に垂直な方向からみた形状が正三角形に構成される。面スピーカ部21Aの内側面及び外側面において、第1〜第3の辺部26A〜28Aにかけて枠体22Aが配設固定され(図1、図3(a)、図3(b)も参照)、面スピーカ部21Aの周縁部が補強されている。これにより、可動型面スピーカ70の回動操作が行い易く、扱いやすくなっている。面スピーカ部21Aの1辺(例えば、第1の辺部26A)の長さは面スピーカ部21Zと同じであり、5〜50cm程度、好ましくは20cmである。
【0032】
図3(a)に示すように、可動型面スピーカ20Aの第2の辺部27Aにおいて、第1の辺部26A側の半部には、係合部23Aが設けられ、第1の辺部26Aの反対側の半部には、被係合部38Aが設けられる。第3の辺部28Aにおいて、第1の辺部26A側の半部には、被係合部39Aが設けられ、第1の辺部26Aの反対側の半部には、係合部24Aが設けられる。
【0033】
図3(a)に示すように、可動型面スピーカ20Bは、3辺が第1、第2、第3の辺部26B、27B、28Bである正三角形の面スピーカ部21Bを有する。可動型面スピーカ20Cは、3辺が第1、第2、第3の辺部26C、27C、28Cである正三角形の面スピーカ部21Cを有する。面スピーカ部21B、21Cには、枠体22Aと同様の枠体22B、22Cが配設固定される。係合部23B、23Cの構成及び相対的な配設位置は係合部23Aと同様で、係合部24B、24Cの構成及び相対的な配設位置は係合部24Aと同様である。また、被係合部38B、38Cの構成及び相対的な配設位置は被係合部38Aと同様で、被係合部39B、39Cの構成及び相対的な配設位置は被係合部39Aと同様である。
【0034】
係合部23(23A、23B、23C)と被係合部39(39B、39C、39A)とは、それぞれ互いに嵌合状態となるように構成され、係合部24(24A、24B、24C)と被係合部38(38B、38C、38A)とは、それぞれ互いに嵌合状態となるように構成される。これら係合部23、24、被係合部39、38は、互いに係合して面スピーカ部21同士を連結状態にできればよく、その構成や組み合わせは問わない。一例として、係合部23、24が凸型の鉤状に形成され、被係合部39、38が、それらが嵌合するような溝や穴として形成されるが、磁力を利用したものでもよい。係合部23、24及び被係合部39、38は、面スピーカ部21に設けられていてもよいが、枠体22に設けられていてもよい。
【0035】
回動部25A、25B、25Cは、それぞれ第1の辺部26A、26B、26Cのほぼ全長に亘って構成される。回動部25A、25B、25Cはいずれも同様に構成されるが、代表として回動部25Aについて説明する。図3(b)は、図3(a)のB−B線に沿い、回動部25A及びその近傍の構成を示す断面図である。
【0036】
図3(b)に示すように、面スピーカ部21Aは、静電型スピーカでなり、振動板31、絶縁材32及び固定電極33を主要部として構成される。絶縁材32は、毛糸や綿状等のやわらかい素材でなる。振動板31が2枚の絶縁材32に挟まれ、それらがさらに2枚の固定電極33で挟まれている。両側の固定電極33の外面側(上側と下側)からは保護用のカバー材34が被覆されている。面スピーカ部21B、21C、21Zの構成も面スピーカ部21Aと同様である。
【0037】
面スピーカ20A、20Zにおける枠体22A、22Zは、それぞれネジ36で固定されている。すなわち、カバー材34の外面側に補強材35が配設され、補強材35を介してネジ36が貫通し、両面の枠体22A、22Zを固定している。なお、枠体22の固定方法はこれに限られず、接着、挟着等であってもよい。
【0038】
枠体22Aと枠体22Zとの間が回動部25Aとなっている。回動部25Aにおいては、膜状の振動板31及び2枚の固定電極33は不連続となるが、面スピーカ部21A側と面スピーカ部21Z側との電気的な接続は図示しない箇所でなされている。回動部25Aにおいては、面スピーカ部21Zに対して面スピーカ部21Aが図3(b)の時計及び反時計方向に回動自在になっている。ここで、補強材35は、可撓性及び高い耐久性を有する鉄等の材料でなり、可動型面スピーカ20Aを手で回動させることができ、且つ、所望の回動角度においてその姿勢を維持できるようになっている。
【0039】
面スピーカ部21Aだけでなく、面スピーカ部21B、21Cも面スピーカ部21Zに対して電気的に接続されており、電源供給部30によってそれらに電源が供給される。これらの可動型面スピーカ20の基本構成は、例えば、特開2008−227832号公報等の文献に示されるような公知のものと同じで、給電方法も従来と同様である。例えば、電源供給部30から、固定電極33へ所定の電圧が印加されると共に、振動板31上にバイアス電圧が印加される。静電力によって振動板31が振動することで音響が発生する。振動板31はPETやPPのフィルムに金属膜を蒸着、あるいは導電性塗料を塗布したものである。
【0040】
かかる構成において、各可動型面スピーカ20の姿勢(回動角度)がいかなる状態であっても、それぞれの面スピーカ部21からは音響が発生する。しかし、静電型スピーカは指向性が強く、しかも、特に低音域において音量が大きくないため、可動型面スピーカ20の姿勢によって適する状況や用途が異なる。
【0041】
例えば、図1に示すように、可動型面スピーカ20A、20B、20Cをいずれも立てて、基台10(正確には上面10a)を底辺とした立体状態にして用いる。そのためには、可動型面スピーカ20Aの係合部24A、被係合部39Aを可動型面スピーカ20Cの被係合部38C、係合部23Cと係合させ、可動型面スピーカ20Aの被係合部38A、係合部23Aを可動型面スピーカ20Bの係合部24B、被係合部39Bと係合させ、さらに可動型面スピーカ20Bの被係合部38B、係合部23Bを可動型面スピーカ20Cの係合部24C、被係合部39Cと係合させる。
【0042】
立体状態にした本音響発生装置100は、例えば、電子楽器に接続し、奏者の近傍への音響提供に用いる。また、コーンスピーカ13からの低音の音が、ダクト9及びポート14を経由して大音量で発せられる。コーンスピーカ13の音は低周波数であるため、ポート14からだけでなく、一部が可動型面スピーカ20A〜20Cを貫通して放音される。これにより、低音域を補完することができる。
【0043】
また、面一展開状態にして用いる場合は、上記係合している係合部と被係合部との係合を解除し、図3(a)に示すように、可動型面スピーカ20A〜20Cを固定型面スピーカ20Zと平行になるように回動させる。そして、可動型面スピーカ20A〜20Cの内側面(図3(a)でいう上側の面)を、客席等、音を伝えたい方向に向ける。その際、基台10は床面に載置することは必須でなく、専用のスタンドを設け、該スタンドに基台10を取り付けて、放音方向を調節してもよい。立体状態に比し、同じ方向を向く面スピーカ部21の総面積が大きくなるので、音響伝達効率が高まる。基台10が本体として載置に安定するので、可動型面スピーカ20の回動操作が行いやすい。
【0044】
また、図4(a)に示すように、本音響発生装置100は、同じ構成のものを2つ以上連結して用いることも可能である。図4(a)は、5つの音響発生装置100を面一展開状態にして平行に連結した状態を示す平面図である。
【0045】
ここで、係合部23と被係合部39とは、同じ構成の別の音響発生装置100同士のものであっても、互いに嵌合可能に構成される。同様に、係合部24と被係合部38とは、同じ構成の別の音響発生装置100同士のものであっても、互いに嵌合可能に構成される。
【0046】
図4(a)の例では、左側の音響発生装置100から順に、隣接する音響発生装置100の水平方向における向きを180度互い違いに異ならせてある。従って、例えば、左側の2つの音響発生装置100に着目すると、最も左側の音響発生装置100の係合部24A、被係合部39A、係合部23C、被係合部38Cと、その右側に隣接する音響発生装置100の被係合部38C、係合部23C、被係合部39A、係合部24Aとをそれぞれ係合状態にする(図3(a)も参照)。
【0047】
このような、複数の音響発生装置100を連結した場合であっても、一部の可動型面スピーカ20の向きを少し異ならせ、他の可動型面スピーカ20とは平行でない状態で使用することは自由である。例えば、1枚を除くすべての可動型面スピーカ20を客側に向けると共に、1枚の可動型面スピーカ20だけ奏者である自分に向け、モニタ用に用いるという使用態様も考えられる。
【0048】
上記のように、各係合部及び被係合部は、立体状態では、隣接する面スピーカ部21同士の第2の辺部27と第3の辺部28とを連結できると共に、面一展開状態では、隣接する音響発生装置100同士の第2の辺部27と第3の辺部28とを連結することもできる。なお、図4(a)は一例であり、例えば、同じ構成のものを2つ以上連結して用いる場合、隣接する音響発生装置100同士の第2の辺部27と第3の辺部28とが連結されるような位置に配置すればよく、各音響発生装置100の水平方向の相対的な向きは、3つのうちどれを選択してもよい。例えば、図4(a)の左から2番目の音響発生装置100については、可動型面スピーカ20Aが図面上側であるが、左下側あるいは右下側であってもよい。
【0049】
ところで、2つ以上の音響発生装置100を連結する上で、連結ブロック15同士、連結ブロック16同士、または連結ブロック15と連結ブロック16とを、連結バー37を用いて連結できる。図4(a)の例の場合は、連結ブロック15同士、連結ブロック16同士を接続することになる。連結バー37の必要長さは、連結しようとする音響発生装置100の固定型面スピーカ20Zの1辺の長さLと固定型面スピーカ20Zの連結数とで定まり、その値より長くてもよい。また、面一展開状態でなく立体状態にした音響発生装置100を2つ以上連結することも当然に可能である。その際、同じ向きにして連結する場合は、連結ブロック15と連結ブロック16とを連結することになる。
【0050】
図4(b)は、連結ブロック16の変形例を示す図である。ただし、連結に用いる連結バー37は同じなので、図4(b)を用いて連結の態様を説明する。連結ブロック15に、隣接する音響発生装置100の連結ブロック15(または連結ブロック16)を、溝部15a(または溝部16a)が繋がるように当接させる。その際、連結ブロック15と連結ブロック15または連結ブロック16とが対向したとき、ピン17と穴18とは互いに位置が対応しているため、位置決め機能を果たす。そして、2つの連結ブロックの溝部(15aまたは16a)に連結バー37を挿通し、ネジ穴19(図2(b))を用いて下側から連結バー37を螺着固定する。
【0051】
ところで、連結ブロック15、16の高さについては、図4(b)に変形例を示すように、縁部11の上面(11Aa、11Ca等)と面一にしてもよい。こうすれば、隣接する音響発生装置100の可動型面スピーカ20の一部が連結ブロック15、16の上面(上面16b等)に支持されることとなり、連結作業が容易となり、連結後の姿勢も安定する。
【0052】
本実施の形態によれば、基台10に対して相対的に複数の可動型面スピーカ20を回動自在にし、基台10を底辺とする三角錐の立体状態と、全ての可動型面スピーカ20を基台10に対して平行にした面一展開状態とにすることができる。可動型面スピーカ20が基台10に実質的に回動自在に連結されるので、安定した状態で使用できる。また、可動型面スピーカ20を面一展開状態にすれば音波の直進性が高くなるので、音響伝達効率を高くでき、立体状態にすれば通常のスピーカとして利用できる。所望の一部の可動型面スピーカ20だけ姿勢を変えてモニタスピーカとして利用することもできる。よって、基台10を基準とした可動型面スピーカ20の姿勢の可変により、一方向への音響伝達効率を高める用途と近傍での単独スピーカとしての用途とに安定した状態で利用可能にして、扱い易くすると共に利用態様を拡大することができる。
【0053】
また、同じ構成の音響発生装置100同士の係合部23、24と被係合部39、38とを、互いに係合させて音響発生装置100同士を一体に連結状態にできるので、展開面積を所望に応じて大きくできると共に、利用態様をさらに拡大することができる。しかも、係合部23、24と被係合部39、38は、音響発生装置100を立体状態にするときにも互いに係合して、隣接する可動型面スピーカ20を連結状態にするので、機能を兼ねさせることで構成が複雑化しないで済む。
【0054】
ところで、上記例示した音響発生装置100は、立体状態で三角錐となるものであったが、これに限られない。すなわち、基台10を薄型で平面視多角形に形成し、基台10の縁部の数だけ可動型面スピーカ20を回動自在に設ける。例えば、図4(c)に模式図で例示するように、四角形の基台10に4枚の可動型面スピーカ20を設けて立体状態で四角錐としてもよい。あるいは、図4(d)に模式図で例示するように、五角形の基台10に5枚の可動型面スピーカ20を設けて立体状態で五角錐としてもよい。
【0055】
ところで、本実施の形態においては、図4(e)に組付図を模式的に示すように、基台10に対して4枚の可動型面スピーカ20を配設した。しかし、立体状態及び面一展開状態にする観点からは、固定型面スピーカ20Zを設けることは必須でない。例えば、固定型面スピーカ20Zを設けない場合は、図4(f)に組付図を模式的に示すように、可動型面スピーカ20A〜20Cの第1の辺部26A〜26Cを、基台10の3つの縁部(例えば、図2(a)の縁部11A〜11Cに相当する部位)に対して直接または間接に(実質的に)、独立して回動自在に配設すればよい。その場合の回動機構の構成は問わず、摩擦を有した蝶番等を用いてもよい。また、上記例示した回動部25(図3)についても、各可動型面スピーカ20が独立して回動できればよく、構成は限定されない。例えば、適当な摩擦を有した蝶番であってもよい。また、各可動型面スピーカ20を所望の回動角度で維持するための機構は、別途設けてもよい。
【0056】
ところで、枠体22は、各面スピーカ部21を補強するために設けるのが好ましいが、上記の立体状態及び面一展開状態を実現する観点からは必須でなく、また、片側の面にのみ設ける構成も採用可能である。
【0057】
ところで、床面に載置された基台10の上面10aが傾斜した構成であってもよい。例えば、図4(g)に変形例を示すように、側面視で基台10の底面に対して上面10aをθ(約30°)傾斜させる。上面10aに垂直な方向からみた基台10の形状は略正三角形である。これにより、図4(g)に示す立体状態において、可動型面スピーカ20Aがほぼ垂直になる。また、可動型面スピーカ20A〜20Cを上面10aに対して平行にした面一展開状態にすれば、可動型面スピーカ20A〜20Cが床面に対してθだけ傾いた状態にでき、楽器演奏時のモニタスピーカとしての利用に好適となる。
【0058】
また、基台10の底面には、複数の突起状脚部10fが一体に形成されている。基台10を床面等に載置する際、突起状脚部10fが床面に接し、基台10が床面から少し浮いた状態となる。それにより、基台10に傷や汚れが付きにくい。また、底面と床面との間に隙間ができ、コーンスピーカ13や面スピーカ部21Z等から発した音が下方からも放音され、放音効果が高まる。なお、突起状脚部10fについては、図1に示した構成にも適用が可能である。
【0059】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、基台10は扁平で平面的な形状であり、立体状態における音響発生装置100の1面を担っていた。これに対し、本発明の第2の実施の形態では、基台が箱形で、それを覆うように可動型面スピーカを設ける。
【0060】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る形状可変型音響発生装置の外観図である。
【0061】
本音響発生装置200は、立方体型の基台60を有し、基台60に複数の面スピーカ70(70A、70B、70C、70Z)が配設される。面スピーカ70のうち、固定型面スピーカ70Zが基台60に対して固定的に配設され、固定型面スピーカ70Zに、可動型面スピーカ70A、70B、70Cが順に回動自在に連結されている。
【0062】
図6は、図5のC−C線に沿う縦断面図である。図7は、可動型面スピーカ70Aを固定型面スピーカ70Zと平行にした状態を示す外観図であり、可動型面スピーカ70B、70Cの図示は省略されている。図8(a)は、2つの音響発生装置200を連結した状態を示す外観図である。図8(a)では、後述するコーンスピーカ66及びそれらの設置部60s等の図示が省略されている。
【0063】
以降、音響発生装置200の上下方向については、基台60が床面等に載置され、上面60Eが上を向いた状態を基準として呼称する。図8(a)において、2つの音響発生装置200の天地は逆転していて、右側の音響発生装置200は底面60Fが上を向いている。基台60は、上面60E、底面60Fの他に、前面60Z(図6)、右側面60A(図7)、後面60B(図6)、左側面60C(図8(a))を有する。また、上面60Eに設けられた低音域の音響を発生可能なコーンスピーカ66がある側(前面60Zの側)を手前側とする。
【0064】
本音響発生装置200は、可動型面スピーカ70A〜70Cが基台60の各面(60A、60B、60C)をそれぞれ覆う「被覆状態」と、可動型面スピーカ70A〜70Cを面一に展開し、且つ前面60Z及び固定型面スピーカ70Zに対して平行にした「面一展開状態」と、それらの間の(途中の)状態とに、姿勢が可変となっている。
【0065】
基台60は基本形が立方体であるが、面60A〜60C、60Zはそれぞれ内側に凹んでいて、被覆状態において面スピーカ70A〜70C、70Zとの間に間隙部60Aa〜60Ca、60Zaが生じる(図5、図6参照)。そのため、基台60は、図6、図7に示すように、上面60Eを上側に向けた状態における縦方向に沿った門柱67(67A、67B、67C、67Z)を四方に有している。門柱67A〜67C、67Zは、面60A〜60C、60Zのそれぞれの左右または前後の周縁に相当する稜部でもある。
【0066】
図5〜7に示すように、門柱67A〜67C、67Zの上下面には、突起状脚部60fが一体に形成されている。基台60を床面等に載置する際、床面側に対向する突起状脚部60fが床面に接し、基台60が床面から少し浮いた状態となる。それにより、基台60に傷や汚れが付きにくい。また、放音効果も高めることができる。例えば、底面60Fを下側にして載置した場合、底面60Fと床面との間に隙間ができ、コーンスピーカ66等から発した音が下方からも放音される。なお、音響発生装置200を上下方向に複数積層すること(図8(d)参照)を容易にするためには、上側または下側のいずれか一方の突起状脚部60fに、他方の突起状脚部60fが嵌入するような凹部を設けるのが望ましい。
【0067】
門柱67A〜67C、67Zの上下の端部の側面には、マグネット68が設けられている。図7では、門柱67Bの片側の平面に設けられた2つのマグネット68だけが図示され、他は表されていないが、面一展開状態において前後左右に露出する門柱67A〜67C、67Zの平面にも同様の2つのマグネット68が設けられている。
【0068】
図6に示すように、低音用のコーンスピーカ66は、基台60の上部の設置部60sだけでなく下部の設置部60sにも配設され、基台60は、外観上、上下対称となっている。基台60の内部の上下方向中間位置において、前面60Zに連接する筒状部62が後方に向かって延設されている。また、後面60Bに連接する筒状部61が前方に向かって延設されている。筒状部62は筒状部61の内部に挿通された状態となっている。筒状部62と筒状部61との間にダクト63が形成され、筒状部62の内側にダクト64が形成される。ダクト63とダクト64とは連通されており、さらに、ダクト64が、間隙部60Zaを含むポート65に連通されている。
【0069】
面スピーカ70は、形状が正方形であるが、基本構成は面スピーカ20(図3(a)等)と同様である。面スピーカ70A〜70C、70Zは、それぞれ面スピーカ部71A〜71C、71Zを有する(図8(a))。面スピーカ部71A〜71C、71Zの、被覆状態において外側となる面において、周縁部には枠体72A〜72C、72Zが配設固定され(図5)、各面スピーカ部71の周縁部が補強されている。これにより、可動型面スピーカ70の回動操作が行い易く、扱いやすくなっている。ただし、枠体72が必須でない点は第1の実施の形態と同様である。固定型面スピーカ70Zは、左右の縁部が門柱67A、67Zに対してネジ等で固定されている。
【0070】
可動型面スピーカ70Aは、固定型面スピーカ70Zに対して回動部76Aにて回動自在に連結されている(図5、図7、図8(a))。また、可動型面スピーカ70Bは、可動型面スピーカ70Aに回動部76Bにて回動自在に連結されている(図5、図8(a))。また、可動型面スピーカ70Cは、可動型面スピーカ70Bに回動部76Cにて回動自在に連結されている(図5、図8(a))。つまり、固定型面スピーカ70Zの、門柱67Aに沿う縁部に対して、可動型面スピーカ70A〜70Cが直列に連結された形となっている。
【0071】
回動部76A〜76Cの構成は、回動部25(図3(b)参照)と同様である。ただし、可動型面スピーカ20と同様に、面スピーカ部71A〜71C、71Zの内側面にも枠体を設けてもよい。各可動型面スピーカ70A〜70Cの、被覆状態において内側となる面の周縁部において、マグネット68に対向する位置に不図示の鉄等の磁性体が設けられる。これにより、各可動型面スピーカ70A〜70Cの縁部がマグネット68に吸着され、対応する門柱67に密着固定される。門柱67に可動型面スピーカ70の縁部を係合させて固定状態にする構成は、これらマグネット68に限定されない。例えば、第1の実施の形態で採用した被係合部39、38及び係合部23、24のように、嵌合関係のある係合部としてもよい。ところで、図示しないが、第1の実施の形態と同様に、制御部や各種のインターフェイスが基台60に設けられる。
【0072】
第1の実施の形態と同様に、立体状態にした音響発生装置200(図5)は、奏者の近傍への音響提供に好適である。各可動型面スピーカ70を手で操作して回動させ、縁部を対応するマグネット68に吸着させる。すると、可動型面スピーカ70A、70B、70Cが、右側面60A(図7)、後面60B(図6)、左側面60C(図8(a))を被覆する。また、コーンスピーカ66からの低音の音が、ダクト63、64及びポート65を経由して大音量で発せられ、低音域が補完される。
【0073】
また、面一展開状態にして用いる場合は、可動型面スピーカ70の縁部を対応するマグネット68から引き離し、図7、図8(a)に示すように、可動型面スピーカ70A〜70Cを固定型面スピーカ70Zと平行になるように回動させる。立体状態に比し、同じ方向を向く面スピーカ部71の総面積が大きくなり、音波の直進性が高くなるので、音響伝達効率が高まる。箱形の基台60が本体として載置の際に安定するので、可動型面スピーカ70の回動操作が行いやすい。
【0074】
音響発生装置200は1つでも用いることができるが、図8(a)に示すように、同じ構成のものを2つ以上連結して用いてもよい。他の音響発生装置200を連結するための増結用係合部73が、可動型面スピーカ70Cの自由端部となる縁部に設けられる(図5、図8(a))。増結用係合部73は、例えば、上半分がマグネットで下半分が鉄等の磁性体であるが、これに限られない。爪部と溝部を有して同じ構成同士で嵌合関係になる構成であってもよい。特に、連結する音響発生装置200の天地をどちらにしても係合可能な構成とするのが望ましい。
【0075】
図8(a)の例では、2つの音響発生装置200の天地を反対とし、増結用係合部73同士を係合させて連結している。1つの音響発生装置200に比し、同じ方向を向く面スピーカ部71の総面積がさらに大きくなるので、音響伝達効率が高まる。
【0076】
ところで、必ずしも、可動型面スピーカ70は平行にして用いる必要はない。例えば、図8(b)、(c)に例示するように、可動型面スピーカ70同士が角度を有して全体として湾曲した状態としてもよい。その際も、2つ以上の音響発生装置200を連結してもよい。また、図8(d)に例示するように、音響発生装置200を2つ一体に連結したものを、縦方向に複数積み重ねるように連結してもよい。そのようにする場合、基台60の上面60E及び底面60F、あるいは各門柱67の上下面に、積層用の係合部(嵌合される穴と突起等)を設けて、積層連結状態が維持されやすいようにしてもよい。複数の音響発生装置200を図8に示す積層状態として、壁に対して基台60を固定してもよい。
【0077】
本実施の形態によれば、可動型面スピーカ70の姿勢の可変により、一方向への音響伝達効率を高める用途と近傍での単独スピーカとしての用途とに安定した状態で利用可能にして、扱い易くすると共に利用態様を拡大することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、展開面積を所望に応じて大きくできると共に、利用態様をさらに拡大することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0078】
ところで、第1の実施の形態と同様に、被覆状態及び面一展開状態にする観点からは、固定型面スピーカ70Zを設けることは必須でない。固定型面スピーカ70Zを設けない場合は、まず、可動型面スピーカ70のうち少なくとも1つの可動型面スピーカ70を、独立して姿勢を変えられるように、基台60のいずれかの面の周縁に相当する稜部に対して直接または間接に(実質的に)、回動自在に連結する。そしてなおかつ、それ以外の可動型面スピーカ70については、独立して姿勢を変えられるように、上記少なくとも1つの可動型面スピーカ70に回動自在に連結状態とするか、または基台60に対して連結状態とされていない可動型面スピーカ70に回動自在に連結状態とする。
【0079】
また、その場合の回動機構の構成は問わず、適当な摩擦を有した蝶番等を用いてもよい。また、上記例示した回動部76についても、各可動型面スピーカ70が独立して回動できればよく、回動部25と同様に構成は限定されない。
【0080】
また、可動型面スピーカ70の配設は直列結合に限られないし、数も3つに限られない。例えば、図9(a)〜(c)に模式的に示す変形例を採用してもよい。例えば、図9(a)に示すように、固定型面スピーカ70Zの左右両側の縁部に対して可動型面スピーカ70A、70Cを実質的に回動自在に連結すると共に、可動型面スピーカ70Aに可動型面スピーカ70Bを回動自在に連結してもよい。あるいは、図9(b)に示すように、図9(a)の例に対してさらに、固定型面スピーカ70Zの上側の縁部に対して新たな可動型面スピーカ70Eを実質的に回動自在に連結し、上面60Eを被覆できるようにしてもよい。逆に底面60Fを被覆できるようにしてもよい。
【0081】
あるいは、図9(c)に示すように、図9(a)の例に対してさらに、可動型面スピーカ70Bの上側の縁部に対して新たな可動型面スピーカ70Eを実質的に回動自在に連結し、上面60Eを被覆できるようにしてもよい。逆に底面60Fを被覆できるようにしてもよい。
【0082】
このように、面スピーカ70で被覆される基台60の面は全ての面でなくてもよいし、全ての面であってもよい。ここで、図9(d)に示すように、図9(a)に例示した構成の音響発生装置200を、2つのうち1つの天地を逆にして連結することも可能である。
【0083】
ところで、上記第2の実施の形態及び変形例(図9(a)〜(c))において、増結用係合部73は、可動型面スピーカ70の回動用に連結されていない自由な縁部であれば、どの縁部に設けてもよいし、箇所も1箇所に限られない。
【0084】
ところで、基台60は、多面体に形成されていればよく、直方体に限られない。例えば、図9(e)に変形例を示すように、六角柱の形状に基台60を形成し、その上下6つの側面を固定型面スピーカ70Zと共に5つの可動型面スピーカ70で被覆できるよう直列に連結してもよい。また、上記した変形例を複数組み合わせ、異なる構成の音響発生装置200を2つ以上、一体に連結できるようにしてもよい。
【0085】
また、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、連結バー37(図4(b)参照)等を用いて基台60同士を連結できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10、60 基台、 11 縁部、 13、66 コーンスピーカ、 20、70 可動型面スピーカ(面スピーカ)、 21、71 面スピーカ部(静電型スピーカ)、 22、72 枠体、 23、24 係合部、 26、27、28 辺部、 38、39 被係合部(係合部)、 60A 右側面、 60B 後面、 60C 左側面、 67 門柱(稜部)、 73 増結用係合部、 100、200 音響発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視多角形に形成された基台と、
前記基台の平面視における縁部に対応する数だけ設けられ、各々、静電型スピーカを備えて1枚の板状に構成され、第1、第2及び第3の辺部で三角形を呈する複数の面スピーカとを有し、
前記基台の前記各縁部に対して各1つの前記面スピーカの前記第1の辺部が実質的に回動自在に連結状態とされて、各々の面スピーカが前記基台に対して独立して姿勢を変えられるように構成され、
前記各面スピーカの前記第2の辺部、前記第3の辺部には、それぞれ、前記基台の隣接する縁部に連結状態とされている面スピーカの前記第3の辺部、前記第2の辺部と係合するための係合部が設けられ、
隣接する面スピーカ同士の前記第2の辺部の係合部と前記第3の辺部の係合部とを係合させることで、前記基台の上面を底辺とする角錐型の立体状態にすることができると共に、隣接する面スピーカ同士の前記第2の辺部の係合部と前記第3の辺部の係合部との係合を解除して前記複数の全ての面スピーカを前記基台の前記上面に対して平行にした面一展開状態にすることができるように構成されたことを特徴とする形状可変型音響発生装置。
【請求項2】
前記基台をその前記上面に垂直な方向から見た形状は正三角形であることを特徴とする請求項1記載の形状可変型音響発生装置。
【請求項3】
前記基台をその前記上面に垂直な方向から見た形状及び前記面スピーカをそれに垂直な方向から見た形状はいずれも正三角形であり、前記第3の辺部の係合部を、当該形状可変型音響発生装置と同じ構成の他の形状可変型音響発生装置における面スピーカの前記第2の辺部の係合部に係合させることで、2つ以上の形状可変型音響発生装置を一体に連結することが可能であることを特徴とする請求項1または2記載の形状可変型音響発生装置。
【請求項4】
多面体に形成された基台と、
各々、静電型スピーカを備えて1枚の板状に構成された複数の面スピーカとを有し、
前記複数の面スピーカのうち一部の面スピーカは、前記基台のいずれかの面の周縁に相当する稜部に実質的に回動自在に連結状態とされて前記基台に対して独立して姿勢を変えられるように構成されると共に、前記複数の面スピーカのうち前記一部以外の面スピーカは、前記一部の面スピーカまたは前記基台に対して連結状態とされていない面スピーカに回動自在に連結状態とされて、前記一部の面スピーカまたは前記基台に対して連結状態とされていない面スピーカに対して独立して姿勢を変えられるように構成され、
前記複数の面スピーカが前記基台の面をそれぞれ覆う被覆状態と前記複数の全ての面スピーカを面一状態で平行にした面一展開状態とに姿勢が可変に構成されたことを特徴とする形状可変型音響発生装置。
【請求項5】
前記複数の面スピーカの少なくとも1つには、増結用の係合部が設けられ、該増結用の係合部と、当該形状可変型音響発生装置と同じ構成の他の形状可変型音響発生装置における前記面スピーカの前記増結用の係合部とを係合させることで、2つ以上の形状可変型音響発生装置を一体に連結することが可能であることを特徴とする請求項4記載の形状可変型音響発生装置。
【請求項6】
前記基台は直方体であることを特徴とする請求項4または5記載の形状可変型音響発生装置。
【請求項7】
前記基台には、低音域の音響を発生可能なスピーカが配設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状可変型音響発生装置。
【請求項8】
前記複数の面スピーカは各々、周縁部が枠体で補強されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の形状可変型音響発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−39294(P2012−39294A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176314(P2010−176314)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】