説明

形状追従性のコーティングを有する低熱拡散性工具での光学フィルム複製

微細複製による光学フィルムを作製する、微細構造の押出成形により複製を行うシステム及び方法である。このシステムはプレスロール及び複製部材を含む。この複製部材は、微細複製により複製された外面を有する低熱拡散性材料又は微細複製により複製された外面を有する有機材料を含む。形状追従性の無機コーティングを有機又は低熱拡散性材料のパターン付き外面の上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
押出成形による複製は、押出成形機で樹脂を融解して得た溶融フィルムをダイで形成してから2つのロールの間で鋳造又はプレスしてフィルムを形成するプロセスでよく使用される。典型的には一方のロールは滑らかな表面を有するが、第2のロールは多くの場合パターン付き表面を有する。2つのロールの間の高いニップ荷重が、パターン付き表面を有するロールの窪んだ区域に溶融樹脂を強制する。その結果得られるフィルムはパターン付きロール表面の陰像を有する。微細複製によるフィルムのパターンは、押出成形プロセス中に使用される数多くの因子に依存して様々なレベルの精度を有する。そのような重要な変数は、融解樹脂及び2つのロールの温度、ロール間のニップ力、ロール、及び樹脂粘度など、ロールと融解樹脂との両方の材料特性を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
高忠実度の微細複製に特定の1つの課題は、複製ロールのパターン付き表面の窪んだ区域の充填を高レベルで達成することである。微細複製でのパターンの忠実度を改善する追加的な押出成形により複製を行う方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示に基づく方法は、押出成形フィルムに微細複製による表面を作り出すことができる。押出成形により複製を行う方法は、樹脂材料を加熱して流動可能な溶融材料を形成する工程と、この流動可能な溶融材料をプレスロールと複製部材との間の接触区域に放出する工程とを含む。複製部材は、微細複製パターン付き外面を有する低熱拡散性材料と、この有機材料のパターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機コーティングとを含む。最後に、この方法は、この溶融材料から、微細複製パターン付きの複製部材外面に対応する複製パターンを有するフィルムを形成する工程を含む。
【0004】
別の態様で、本開示は、押出成形により複製を行うための第1のシステムを含む。第1のシステムはプレスロール及び複製部材を含む。複製部材はプレスロールに隣接して位置づけられており、プレスロールと複製部材との間の材料を押出成形して複製することが可能である。複製部材は、微細複製パターン付き外面を有する低熱拡散性材料と、この有機材料のパターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機コーティングとを含む。
【0005】
第3の態様で、本開示は、押出成形式複製システムで使用するための複製部材を含む。この複製部材は円筒形ロールコアと、この円筒形ロールコア上に配置された微細複製パターン付き外面を有する低熱拡散性材料層と、を含む。形状追従性の無機材料層を有機材料のパターン付き外面の上に配置する。
【0006】
更に別の態様で、本開示は、押出成形により複製を行うための第2のシステムを含む。第2のシステムはプレスロール及び複製部材を含む。複製部材はプレスロールに隣接して位置づけられており、プレスロールと複製部材との間の材料を押出成形して複製することが可能である。複製部材は、微細複製パターン付き外面を有する有機材料と、この低熱拡散性材料のパターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機コーティングとを含む。
【0007】
添付の図面と共に以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】押出成形により複製を行う代表的なシステムの概略図である。
【図2】代表的な複製部材の断面図である。
【図3】複製部材の外面の代表的なレンズパターンの断面図である。
【図4】複製部材の外面の代表的なプリズムパターンの斜視図である。
【図5】表面に微細複製による代表的な湾曲側面円錐パターンを有するフィルムの画像の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、押出成形により複製を行う10システムを示す。システム10を使用する押出成形により複製を行うプロセスでは、樹脂材料14を加熱して流動性融解物にする。次いで、融解した樹脂材料14を押出成形機16によってダイ15を通して通過させ、連続樹脂シート材料又はフィルム17を生産する。連続フィルムを挟む複製部材12とプレスロール13との間で連続フィルム17にニップ荷重を与えることができる。複製部材から解放して得られるパターン付きフィルム18は複製部材の表面パターンの陰像を含む。
【0010】
樹脂材料14を加熱して流動性融解物にすることができる。樹脂材料14の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレートのような熱可塑性ポリマー、並びにスチレンアクリロニトリル共重合体、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、入核半結晶性ポリエステル、ポリエチレンナフサレートの共重合体、ポリイミド共重合体、ポリエーテルイミド、ポリエチレンオキシド、及びアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合体のような共重合体、並びにこれらの材料の相互の配合物及び他の樹脂との配合物が挙げられる。樹脂は、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、充填剤、又は静電防止剤のような添加剤(ただし限定せず)を含有し得る。押出成形プロセスの間、樹脂融解物は約250℃、又は約200℃〜300℃の温度であってよい。最終的なパターン付きフィルム18は、例えば125マイクロメートル又は約25マイクロメートル〜約500マイクロメートルの任意の適切な厚さを有することができる。最終的なパターン付きフィルム18は任意の適切な幅を有することができる。例えば、約10センチメートル〜約2メートルの幅を有することができる。
【0011】
押出成形機16は、単軸押出機でも2軸押出機でもよい。ダイ15を通して単一のタイプの樹脂14を押出してもよく、あるいは、2つ以上のタイプの樹脂14を単一の積層体構造物として共押出成形してもよい。共押出成形高分子材料を生産するためのダイ及びプロセスは、参照により本明細書にあたかも全体としてのように組み込まれる米国特許第6,767,492号に詳述されている。次いで、プレスロール13と複製部材12との間に押出成形フィルム17を通すことができる。
【0012】
プレスロール13は、例えばステンレススチールのような鋼鉄である金属、又は他の任意の適切な材料で作製することができる。プレスロール13は約30cm、又は例えば約20cm〜約60cm程度の直径を有することができる。プレスロール13は、例えばクロム、銅、ニッケル、ニッケル−リンメッキ、又は任意の他の有用なメッキで形成されたメッキ表面を有することができる。プレスロール13は鏡仕上げを有してもよく、あるいは所望により構造化された表面を有してもよい。
【0013】
複製部材12がそのパターン付き表面輪郭をフィルム18に転写することにより、フィルム18は複製部材12の表面輪郭と相補的な表面輪郭を有することができる。複製部材12は、例えば鋼鉄又は任意の他の適切な材料である内部金属コア122を有することができる。このコアを有機材料又は低熱拡散性材料の層124で囲むことができる。様々な方法により、有機又は低熱拡散性材料124にパターンを転写することができる。形状追従性のコーティング126は、ニッケル、銅若しくはクロム又は任意の他の適切な材料で作製することができ、有機又は低熱拡散性材料124の上に配置され、層124の表面パターンとぴったり一致することができる。本開示による形状追従性のコーティング126は、下層124のパターンとぴったり一致する外面及び内面の両方を有する。
【0014】
図2は、代表的な複製部材20の断面を示す。複製部材20は鋼鉄又はアルミニウムのような金属製の金属コア22を有することができる。金属コア22は約30cm、又は例えば約20cm〜約60cm程度の直径を有することができる。金属コア22の壁の厚さは必要な曲げ抵抗によって決定され得るが、多くの場合、約10mm〜約100mmの範囲である。押出成形プロセス中、金属コア22は、約5℃〜約270℃、より好ましくは約10℃〜約200℃、例えば90℃の温度で中央21を流れて通る水を有することができる。金属コア22の温度は融解した樹脂の温度より有意に低くてもよく、温度は任意の適切な方法で維持することができる。
【0015】
低熱拡散性又は有機層24は金属コア22の表面を覆うことができる。所与の材料の熱拡散性(α)は、密度(ρ)にその比熱容量(c)を掛けたものをその伝導性(k)で割って得られる比率として定義される。この比率は以下の等式で表される。
【0016】
【数1】

【0017】
低熱拡散性材料は、例えば、5×10−5/秒未満のα、又はより好ましくは5×10−6/秒未満のα、又は最も好ましくは5×10−7/秒のαを有することができる。低熱拡散性材料は、低熱伝導率もまた有することができる。
【0018】
有機材料の例としてはポリマーが挙げられ、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系、メタクリル系、又はこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、この層24をセラミックのような低熱拡散性材料で作製してもよい。有機又は低熱拡散性層24は、例えば約20マイクロメートル〜約250マイクロメートルである任意の適切な厚さを有することができる。パターンは、様々な手段によって層24の表面に転写することができる。例えば、層24の表面上に機械加工される像を形成する光学的システムと共にエキシマレーザを使用して表面をレーザーアブレーションしてもよい。レーザーアブレーションは様々な適切な方法によって達成することが可能である。例えば、パターンをレーザーアブレーションする際は、表面のそれぞれの像の位置に必要以下の光照射量を適用してから次の像の位置に移動することができる。次いで、それぞれの像の位置が適切な光量を受けてパターンが完全にアブレーションされるまでこのプロセスを繰り返すことになる。そのような方法は、米国特許第6,285,001号により詳細に記載されており、同文献は参照により本明細書に、あたかも全面的に記述されたと同様に組み込まれる。あるいは、ダイヤモンド旋盤、エッチング、切削、スコーリング、彫刻、印刷、リトグラフィ、鋳造などによってもパターンを作り出すことができる。例えば、ダイヤモンド旋盤を使用して層24の表面に連続パターンを形成してもよい。特定の一実施形態で、構造物は、ねじ切りとして既知の技法によって機械加工することができ、この場合、ダイヤモンド工具をロールの回転に対して横断方向に移動しながら表面24上を連続切削する。典型的なダイヤモンド旋盤は、工具がロールを貫く深さ、ロールに対する工具の水平角度及び垂直角度、及びロールの横断速度の独立制御を提供することができる。そのようなプロセスの更に詳しい説明は、PCT特許公報第00/48037号に述べられている。
【0019】
代表的な微細複製によるパターンとしては、湾曲側面円錐、レンズ、プリズム、円筒、柱、針、微細流体フローチャネル、エアブリードチャネル、抗反射構造、ポケット構造、及び任意の他の適切な微細構造パターンが挙げられる。
【0020】
形状追従性の無機コーティング26を有機又は低熱拡散性層24の外面に適用することにより、低拡散性層を少なくとも部分的に形状追従性のコーティング26で覆うことができる。層24は複製部材20のコア22と形状追従性のコーティング26との間のインスレーションとしての役割を果たすことができる。加熱された連続フィルムへの曝露につれて、このインスレーションは、微細複製プロセス中に形状追従性のコーティングの温度をコア22の温度より高くすることを可能にする。複製部材のパターン付き表面の充填の度合いは、融解した樹脂の液体粘性及び複製部材20とプレスロールとの間のニップ荷重の力に大きく依存する。低拡散性層24を含めることによって達成される形状追従性のコーティング26のより高い温度は、フィルム粘性の低下をもたらすことができる。これは、充填度の増加を促進して、又はニップ荷重の低下を可能にして、同じ複製精度を達成する。複製精度の増加に加えて、コア22をより低い温度で維持することができるために、本開示による押出成形により複製を行うシステムはより高いプロセス速度を有することができる。また、押出成形により複製を行うシステムを使用して、高温樹脂を用いて複製及び積層を同時に行うこともできる。加えて、そのようなシステムを使用して、単一工程で単一樹脂から、他のプロセスのための寸法の安定した工具を作製することができる。
【0021】
形状追従性のコーティング26は様々な材料から作製することができる。例としては、ニッケル、銅、クロム、又は任意の他の適切な材料が挙げられる。形状追従性のコーティング26は、約0.5マイクロメートル〜約200マイクロメートルのほぼ均一の厚さを有することができる。コーティング26の薄い性質は、微細複製プロセス中にその表面温度が増すのを可能にする。形状追従性のコーティング26はいくつかの利点を提供することができる。例えば、形状追従性のコーティング26は、複製部材20の外面の耐久性を増すことができる。より高い耐久性には、例えば、掻き傷に対するより高い抵抗力、及び溶媒又は他の方法によって洗浄したときのより高い耐久性が含まれる。
【0022】
形状追従性のコーティング26は、金属蒸着コーティング、スパッタリング、及び化学蒸着、プラズマ蒸着又はプラズマプロセスを含む様々なプロセスによって蒸着することができる。形状追従性のコーティングのために種金属層を種付けした後に電気化学的プロセスを使用することができる。無電解プロセスはより均一な厚さの形状追従性のコーティング26をもたらすことができるので、概して好ましい。
【0023】
所望により、表面張力を低下する薬品のような剥離剤コーティングで形状追従性のコーティング26の表面28を覆ってもよい。剥離剤コーティングは複製部材20の表面からパターン付きフィルムをきれいに剥離するのを助けることができる。剥離剤コーティングを蒸気又は溶液として例えば形状追従性のコーティング26の表面に所望により適用することができる。剥離剤コーティングとして使用可能な材料の例としては、シリコーン及びフッ素化化合物が挙げられ、例えば(この参照によりあたかもその全体が記述されたかのように本明細書に組み込まれる米国特許第6,376,065号に記述されているような)フッ素化ベンゾトリアゾール、フッ化炭素、フッ素化化合物であるトリクロロシラン、及び(この参照によりあたかもその全体が記述されたかのように本明細書に組み込まれる米国特許公報第20040043146号のような)フッ素化化合物一リン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、十分な量の剥離剤コーティング28を適用して、形状追従性のコーティング26の表面の少なくとも単層被覆を達成する。
【0024】
図3は異なる表面パターンを有する代表的な複製部材の断面図を、図4はその斜視図を示す。本開示によるパターンは規則的でも、ランダムでも、あるいは擬似ランダムでもよい。例えば、規則的なパターンは湾曲側面円錐、レンズ、プリズム、円筒、柱、針などを含むことができる。代表的なランダムパターンは、不規則な間隔に置かれた特定の平均高さを有する所与の高さ範囲内のピークを有することができる。加えて、複製部材の表面構造は3次元パターンを含むので、パターンがフィルム上に転写されたとき、フィルムは構造的に変化する。図3及び4に示したパターンは複製部材の長さに沿って延在するが、本開示による規則的なパターンは例えば複製部材の周辺を巻いて任意の適切な方向に延在してもよい。パターンは、湾曲側面円錐又は柱の場合のように不連続であってもよい。
【0025】
図3は金属コア32及び有機又は低熱拡散性層34を有する代表的な複製部材30を示す。レンズ38のパターンは周辺を巻いて繰り返し、有機又は低熱拡散性層34の表面の長さに沿って延在する。レンズパターンのそれぞれの構造は約1マイクロメートル〜約250マイクロメートルの深さ又は高さを有することができる。それぞれの構造のピッチは約5マイクロメートル〜約500マイクロメートル程度であってよい。形状追従性の無機コーティング36は有機又は低拡散性層34の表面を覆う。形状追従性のコーティング36は約0.5マイクロメートル〜約200マイクロメートル程度の厚さを有することができ、層34のレンズの形に対応する。
【0026】
図4は金属コア42及び有機又は低熱拡散性層44を有する複製部材40を示す。プリズム48のパターンは周辺を巻いて繰り返し、有機又は低熱拡散性層44の表面の長さに沿って延在する。プリズムパターンのそれぞれの構造は約1マイクロメートル〜約250マイクロメートルの深さ又は高さを有することができる。それぞれの構造のピッチは約5マイクロメートル〜約500マイクロメートル程度であってよい。形状追従性のコーティング46は約0.5マイクロメートル〜約200マイクロメートル程度の厚さを有することができ、層44のレンズの形に対応する。
【0027】
図5は、表面に微細複製による代表的な湾曲側面円錐パターンを有するフィルム50の上面の画像を示す。窪んだ湾曲側面円錐形52は、対応する凸面の湾曲側面円錐形を有する複製部材によって形成された。図の湾曲側面円錐は幅及びピッチ約10マイクロメートル、深さ約7マイクロメートルを有する。湾曲側面円錐形52は約1マイクロメートル〜約250マイクロメートル程度の深さ又は高さを有することができる。湾曲側面円錐形52は約5マイクロメートル〜約500マイクロメートル程度のピッチ又は幅を概ね有することができる。フィルム50は前述のように任意の適切な材料で作製することができる。この場合、フィルム50は約125マイクロメートルの厚さを有するが、本開示による一実施形態で例えば約25マイクロメートル〜約500マイクロメートルの任意の適切な厚さを有してもよい。
【0028】
以上、例示的実施形態に関連して本発明を説明したが、当業者には多くの修正が容易に明らかであり、本願は、例示的実施形態のあらゆる適合例及び変形例を包含することを意図したものであることが理解されよう。例えば、本発明の範囲から逸脱せずに様々なタイプのパターンを様々なフィルム上に複製することができる。本発明は、「特許請求の範囲」及びその等価物にのみ限定される。
【実施例】
【0029】
比較実施例:
銅でコーティングされた鋼鉄コアロールの表面に複製部材を形成された。ダイヤモンド旋盤技法を用いて、この部材の外面に総合角度90度及びピッチ50マイクロメートルのリニアプリズムパターンを周囲方向に切り込んだ。このロールをクロムメッキした。この複製部材の温度は約77℃に維持した。Dow Corporationから入手可能なSAN Tyril(商標)125のスキン層とBayer AGから入手可能なPolycarbonate Makrolon(商標)2407を含むコア層とを含む3層共押出成形フィルムを温度260℃でダイから押出して連続フィルムを形成した。この連続樹脂フィルムに約15m/分のライン速度で複製部材とプレス部材との間でニップ荷重42,000N/mを与えた。フィルムの微細構造の特徴の寸法を複製部材の表面上のその逆構造の特徴と比較して算出したところ、得られた微細構造化フィルムの充填度は約84%であった。
【0030】
実施例:
複製部材は、構造化された表面を鋼鉄ロールの外側に付着することによって形成した。紫外線硬化アクリレート樹脂で形成された、90度の総合角度及び50マイクロメートルのピッチを有するリニアプリズムを含む構造を備えるリニアプリズムフィルムをPETフィルムに鋳造した。このプリズムフィルムを厚さ10nmのクロム層と共に蒸着した。次いで、構造化されていない側面にフィルム構成体を厚さ50マイクロメートルのアクリル系感圧性接着フィルムと共に積層した。複製部材の構造化された表面に単層の鋳型剥離剤をコーティングした。次いで、このフィルム構成体を厚さ250マイクロメートルの鋼鉄シムに積層した。このシムを、ロールの外殻に埋め込まれた磁石による磁気で鋼鉄ロールに固定した。複製プロセス中、複製部材の工具内温度は約77℃に維持した。Dow Corporationから入手可能なSAN Tyril(商標)125のスキン層とBayer AGから入手可能なPolycarbonate Makrolon(商標)2407を含むコア層とを含む3層共押出成形フィルムを温度260℃でダイから押出して連続フィルムを形成した。ダイの前でのSAN融解物の温度は215℃であり、ポリカーボネート融解物の温度は260℃であった。この連続樹脂フィルムに約15m/分のライン速度で複製部材とプレス部材との間でニップ荷重42,000N/mを与えた。得られた微細構造化フィルムの充填度は約95%であり、比較実施例の金属のみの工具より高い精度の複製が実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により複製を行う方法であって、
樹脂材料を加熱して流動性融解材料を形成する工程と、
前記流動性融解材料をプレスロールと、微細複製パターン付き外面を有する低熱拡散性材料と、前記有機材料の前記パターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機コーティングと、を備える複製部材との間の接触区域内に放出する工程と、
前記融解材料から、前記微細複製パターン付きの前記複製部材外面に対応する微細複製パターンを有するフィルムを形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記低熱拡散性材料が、有機材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機材料が、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル系樹脂、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記形状追従性のコーティングが、ニッケル、クロム、及び銅のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微細複製パターン付き外面が、レーザーアブレーションプロセス、ダイヤモンド旋盤プロセス、及び鋳造プロセスのうちの少なくとも1つによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記形状追従性の無機コーティングが、プラズマ蒸着プロセスよって前記低熱拡散性材料の前記パターン付き外面の上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記形状追従性の無機コーティングが、溶剤適用プロセスよって前記低熱拡散性材料の前記パターン付き外面の上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
押出成形により複製を行うためのシステムであって、
プレスロールと、
前記プレスロールに隣接して位置づけられた、微細複製パターン付き外面を有する低熱拡散性材料と、前記有機材料の前記パターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機コーティングと、を備える複製部材であり、前記プレスロールと前記複製部材との間の材料を押出成形して複製することが可能な複製部材と、を備えるシステム。
【請求項9】
前記低熱拡散性材料が、有機材料を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記有機材料が、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル系樹脂、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記形状追従性のコーティングが、ニッケル、クロム、及び銅のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記低熱拡散性材料が、セラミック材料を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記微細複製パターン付き外面が、プリズム、レンズ、湾曲側面円錐、円筒、柱、及び針のうちの少なくとも1つを含むパターンを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記微細複製パターン付き外面が、規則的、ランダム、又は擬似ランダムなパターンを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
押出成形による複製システムで使用するための複製部材であって、
円筒形コアロールと、
前記円筒形ロールコア上に配置された微細複製パターン付き外面を有する低熱拡散性材料層と、
有機材料の前記パターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機材料層と、を備える、複製部材。
【請求項16】
前記微細複製パターン付き外面が、プリズム、レンズ、湾曲側面円錐、円筒、柱、及び針のうちの少なくとも1つを含むパターンを含む、請求項15に記載の複製部材。
【請求項17】
前記微細複製パターン付き外面が、規則的、ランダム、又は擬似ランダムなパターンを含む、請求項15に記載の複製部材。
【請求項18】
前記低熱拡散性材料が、有機材料を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記有機材料が、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル系樹脂、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の複製部材。
【請求項20】
押出成形により複製を行うシステムであって、
プレスロールと、
前記プレスロールに隣接して位置づけられた、微細複製パターン付き外面を有する無機材料と、低熱拡散性材料の前記パターン付き外面の上に配置された形状追従性の無機コーティングと、を備える複製部材であり、前記プレスロールと前記複製部材との間の材料を押出成形して複製することが可能な複製部材と、を備えるシステム。
【請求項21】
前記微細複製パターン付き外面が、プリズム、レンズ、湾曲側面円錐、円筒、柱、及び針のうちの少なくとも1つを含むパターンを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記微細複製パターン付き外面が、規則的、ランダム、又は擬似ランダムなパターンを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記形状追従性のコーティングが、ニッケル、クロム、及び銅のうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522670(P2012−522670A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504684(P2012−504684)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/027557
【国際公開番号】WO2010/117569
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】