説明

往復動ポンプ

【課題】往復動部材のストロークを簡易に調整することができる往復動ポンプを提供する。
【解決手段】クランクシャフト1にコンロッド2を介して連結した往復動部材3が、クランクシャフト1の回転駆動に従いシリンダ部4内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ100であって、往復動部材3とコンロッド2との連結位置Cを、往復動部材3の往復動方向に沿った中心軸Aに対してオフセットさせるようにし、クランクシャフト1の形状や配置、コンロッド2の形状等を変更すること無く、往復動部材3のストロークを簡易に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共通のクランクシャフトに各コンロッドを介して連結された各往復動部材が、共通のクランクシャフトの回転駆動に従い各シリンダ部内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプであって、往復動部材及びシリンダ部が、共通のクランクシャフトの軸線方向に直交する方向(上下方向)に二段配列された往復動ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような往復動ポンプにあっては、往復動部材とコンロッドとの連結位置が、上下段の各々において往復動部材の往復動方向に沿った中心軸上に位置すると共に、クランクシャフトの回転中心が上下段の中心軸同士の間に位置するように配置されている。
【特許文献1】特許3534962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述の往復動ポンプにあっては、往復動部材のストロークを調整する場合、クランクシャフトの形状や配置、コンロッドの形状等を変更する必要がある。そのため、従来の往復動ポンプでは、往復動部材のストロークは簡易に調整し難い。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、往復動部材のストロークを簡易に調整することができる往復動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による往復動ポンプ(100)は、クランクシャフト(1)にコンロッド(2)を介して連結された往復動部材(3)が、クランクシャフト(1)の回転駆動に従いシリンダ部(4)内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ(100)において、往復動部材(3)とコンロッド(2)との連結位置(C)を、往復動部材(3)の往復動方向に沿った中心軸(A)に対してオフセットしたことを特徴としている。
【0006】
このような往復動ポンプ(100)によれば、往復動部材(3)とコンロッド(2)との連結位置(C)を、往復動部材(3)の往復動方向に沿った中心軸(A)に対してオフセットさせているため、クランクシャフト(1)の形状や配置、コンロッド(2)の形状等を変更すること無く、往復動部材(3)のストロークを簡易に調整することができる。
【0007】
ここで、往復動部材(3)が上死点に向かう場合において、中心軸(A)を間に挟みコンロッド(2)のクランクシャフト(1)との連結中心(P)がクランクシャフト(1)の回転中心(R)に対してオフセットしている側と同一側に、連結位置(C)がオフセットしていることが好ましい。このような構成を採用した場合、往復動部材(3)が上死点に向かう場合において、コンロッド(2)の往復動方向に対する傾き(往復動方向に対する傾斜角)が小さくなるため、往復動部材(3)の押圧される側の側面に作用する荷重(圧力)を軽減することができる。
【0008】
また、本発明による往復動ポンプ(110)は、共通のクランクシャフト(20)に各コンロッド(21)を介して連結された各往復動部材(22)が、クランクシャフト(20)の回転駆動に従い各シリンダ部(23)内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ(110)であって、往復動部材(22)及びシリンダ部(23)が、クランクシャフト(20)の軸線方向に直交する方向に二段配列された往復動ポンプ(110)において、往復動部材(22)とコンロッド(21)との連結位置(C1,C2)を、往復動部材(22)の往復動方向に沿った中心軸(A1,A2)に対してオフセットしたことを特徴としている。
【0009】
このような往復動ポンプ(110)によれば、各往復動部材(22)と各コンロッド(21)との各連結位置(C1,C2)を、各往復動部材(22)の往復動方向に沿った中心軸(A1,A2)に対してオフセットさせているため、クランクシャフト(20)の形状や配置、各コンロッド(21)の形状等を変更すること無く、各往復動部材(22)のストロークを簡易に調整することができる。
【0010】
ここで、往復動部材(22)及びシリンダ部(23)が、クランクシャフト(20)の軸線方向に直交する方向に二段配列されている場合には、往復動部材(22)及びコンロッド(21)の連結位置(C1,C2)とクランクシャフト(20)の回転中心(R)との間の距離(L1)、すなわちクランク機構のオフセット量(L1)が大きくなればなるほど、クランクシャフト(20)の正転と逆転で圧力振動のバランスが悪くなると共に、往復動部材(22)の押圧される側の側面に作用する荷重が増大し摩耗量が増大するという問題がある。
【0011】
このため、連結位置(C1,C2)は、往復動部材(22)の中心軸(A1,A2)よりクランクシャフト(20)の回転中心(R)寄りにオフセットしているのが好ましい。このような構成を採用した場合、往復動部材(22)及びコンロッド(21)の連結位置(C1,C2)とクランクシャフト(20)の回転中心(R)との間の距離であるクランク機構のオフセット量(L1)を小さくでき、その結果、クランクシャフト(20)の正転と逆転で圧力振動の均等化が図られると共に、往復動部材(22)の押圧される側の側面に作用する荷重が低減し摩耗量の低減が図られる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、往復動部材のストロークを簡易に調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る往復動ポンプの好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図、図2は、図1中の往復動部材のプランジャを拡大して示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)の一部断面平面図、(c)は(a)の右側面図である。
【0014】
図1に示すように、往復動ポンプ100は、クランクシャフト1にコンロッド2を介して連結されたプランジャ3a及びプランジャスリーブ3bから構成される往復動部材3が、クランクシャフト1の回転駆動に従いシリンダ部4内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプである。
【0015】
この往復動ポンプ100は、マニホルド5と、このマニホルド5に連結されたクランクケース6とにより外形が構成されている。マニホルド5には、プランジャ3aが往復動するシリンダ部4と、このシリンダ部4の先端側にポンプ室7とが形成され、一方、クランクケース6には、往復動部材3の駆動部を構成するクランクシャフト1、クランクシャフト1に回転可能に連結されたコンロッド2、及び、プランジャ3aとコンロッド2とを回転可能に連結するピストンピン8が配置されている。
【0016】
そして、クランクシャフト1が回転中心Rを中心に回転駆動すると、コンロッド2のクランクシャフト1に対する連結中心Pがクランクシャフト1の回転中心Rの周囲を円運動し、往復動部材3がクランクシャフト1側に向かって移動することによってポンプ室7が減圧され、マニホルド5に設けられた吸入弁9及び吐出弁10が各々開及び閉となり、作動液体は、吸入口11、吸入弁9を通してポンプ室7へ吸入され、一方、往復動部材3がクランクシャフト1と反対側に向かって移動することによってポンプ室7が加圧され、吸入弁9及び吐出弁10が各々閉及び開となり、ポンプ室7の作動流体は吐出弁10を通して吐出口12へ吐出され、作動液体を吸入し吐出するポンプ作用を行う構成とされている。なお、作動流体の漏洩を防止するための高圧シール13及び低圧シール14と、駆動部の潤滑油の漏洩を防止するためのオイルシール15とが、往復動部材3と液密に摺接するように、ポンプ室7側からクランクシャフト1側に向けてこの順に配設されている。
【0017】
ここで、特に本実施形態においては、往復動部材3とコンロッド2との連結位置(連結中心)C、すなわちピストンピン8の位置が、往復動部材3の往復動方向に沿った中心軸Aに対してオフセットされている。この中心軸Aは、クランクシャフト1の回転中心Rの位置と一致する。
【0018】
そして、ここでは、クランクシャフト1は反時計回りに回転し、連結位置Cは、往復動部材3が上死点(図1の図示左方向)に向かう場合において、中心軸Aを間に挟みコンロッド2のクランクシャフト1に対する連結中心Pがクランクシャフト1の回転中心Rに対してオフセットしている側と同一側にオフセットされている。
【0019】
プランジャ3aは、図2に示すように、円柱状に形成されており、コンロッド2が連結される部分(プランジャスリーブ3bの連結部と反対側)には、外周部分を平坦に切欠いた形状の平坦面(二平面部)16a,16bが一対対向して形成されている。そして、その平坦面16a,16bを貫通するように、ピストンピン8が挿通される挿通孔17が形成されている。この挿通孔17は、プランジャ3aの軸線(中心軸A)よりも図示上側にオフセットして形成されており、この挿通孔17の位置がプランジャ3aとコンロッド2との連結位置Cとなる。
【0020】
そして、この連結位置C(挿通孔17)を中心軸Aに対してオフセットさせることで、連結位置Cとクランクシャフト1の回転中心Rとの間の図示上下方向(図1)の距離L、すなわちクランク機構のオフセット量Lが生じ、このクランク機構のオフセット量Lの変化に伴い、往復動部材3のストロークを変えることができる。
【0021】
このように、本実施形態にあっては、往復動部材3(プランジャ3a)とコンロッド2との連結位置Cを、往復動部材3の往復動方向に沿った中心軸Aに対してオフセットさせているため、クランクシャフト1の形状や配置、コンロッド2の形状等を変更すること無く、挿通孔17の位置を変更したプランジャ3aを用いるというだけで、往復動部材3のストロークを簡易に調整することができる。
【0022】
また、往復動部材3が上死点に向かう場合(図1に示す状態)において、中心軸Aを間に挟みコンロッド2のクランクシャフト1に対する連結中心Pがクランクシャフト1の回転中心Rに対してオフセットしている側と同一側に、連結位置Cがオフセットされているため、往復動部材3が上死点に向かう場合において、コンロッド2の往復動方向に対する傾き(往復動方向に対する傾斜角)が小さくなり、往復動部材3のクランクケース6から反力を受け押圧される側の側面(図1の下側の面)に作用する荷重(圧力)を軽減することができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、クランクシャフト1の回転方向を反時計回りとしているが、クランクシャフト1の回転方向が時計回りである場合には、挿通孔17がプランジャ3aの軸線(中心軸A)よりも図示下側にオフセットされて形成されるのが好ましい。このような構成により、往復動部材3が上死点に向かう場合において、コンロッド2の往復動方向に対する傾き(往復動方向に対する傾斜角)が小さくなり、往復動部材3のクランクケース6から反力を受け押圧される側の側面に作用する荷重(圧力)を軽減することができる。
【0024】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図、図4は、図3中の往復動部材のピストンを拡大して示す図であり、(a)はピストンの一部断面側面図、(b)は(a)におけるIV−IV矢視図である。同図において、先の実施形態と同様な要素には同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0025】
この実施形態での往復動ポンプ110は、例えば特許3534962号公報に示されている往復動ポンプと同様の構成を有し、共通のクランクシャフト20に各コンロッド21を介して連結されたピストン22a及びピストンロッド22bから構成される各往復動部材22が、クランクシャフト20の駆動に従い各シリンダ部23内の先端側に形成されたポンプ室24でポンプ作用を行うもので、往復動部材22及びシリンダ部23が、クランクシャフト20の軸線方向に直交する方向(図示上下方向)に二段配列されているものである。
【0026】
この往復動ポンプ110は、第1実施形態と同様に、往復動部材22とコンロッド21との連結位置C1,C2、すなわちピストンピン25の位置が、シリンダ部23の上下段の各々において往復動部材22の往復動方向に沿った中心軸A1,A2に対してオフセットされている。
【0027】
そして、ここでは、各連結位置C1,C2が、往復動部材22の中心軸A1,A2よりクランクシャフト20の回転中心R寄りにオフセットされている。
【0028】
図4に示すピストン22aは、図3の図示上側に示すシリンダ部23内を往復動する往復動部材22を構成するものであり、このピストン22aは、ピストンロッド22bに連結される円柱状の円柱部材26が、コンロッド21に連結される連結部材27のネジ孔28に螺合し一体化されて構成されている。連結部材27には、コンロッド21が連結される位置(連結部材27内部)に、ネジ孔28に連通しクランクシャフト20側に開放された凹部29が形成されており、その凹部29を囲う周壁を貫くように、ピストンピン25が挿通される挿通孔30が形成されている。この挿通孔30は、ピストン22aの軸線(中心軸A1)よりも図示下側にオフセットして形成されており、この挿通孔30の位置がピストン22aとコンロッド21との連結位置C1となる。なお、連結部材27には、コンロッド21が回転する際のコンロッド21との干渉を避けるために、切欠部31が形成されている。また、図3の図示下側のピストン22aは、その挿通孔30が図4に示すピストン22aの軸線(中心軸A2)より図示上側に形成されており、この挿通孔30の位置がピストン22aとコンロッド21との連結位置C2となる。
【0029】
このシリンダ部23が二段配列された往復動ポンプ110にあっても、先の実施形態と同様に、連結位置C1,C2が、往復動部材22の往復動方向に沿った中心軸A1,A2に対してオフセットされているため、挿通孔30の位置を変更したピストン22aを用いるというだけで、往復動部材22のストロークを簡易に調整することができる。
【0030】
ここで、往復動部材22及びシリンダ部23が、図3に示すように、クランクシャフト20の軸線方向に直交する方向に二段配列されている場合には、往復動部材22及びコンロッド21の連結位置C1,C2とクランクシャフト20の回転中心Rとの間の距離L1(図3における上下方向の距離)、すなわちクランク機構のオフセット量L1が大きくなればなるほど、クランクシャフト20の正転と逆転で圧力振動のバランスが悪くなると共に、往復動部材22の押圧される側の側面に作用する荷重が増大し摩耗量が増大するという問題がある。
【0031】
そこで、本実施形態では、連結位置C1,C2が、往復動部材22の中心軸A1,A2よりクランクシャフト20の回転中心R寄りにオフセットされている。これにより、往復動部材22及びコンロッド21の連結位置C1,C2とクランクシャフト20の回転中心Rとの間の距離であるクランク機構のオフセット量L1を小さくでき、その結果、クランクシャフト20の正転と逆転で圧力振動の均等化が図られると共に、往復動部材22のクランクケース32から反力を受け押圧される側の側面に作用する荷重が低減し摩耗量の低減が図られる。
【0032】
なお、本実施形態によれば、往復動部材22及びシリンダ部23を、クランクシャフト20の軸線方向に直交する方向に二段配列することで、クランクケース32の全幅を縮小できるという利点がある。
【0033】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明に係る往復動ポンプは、上記実施形態に係る往復動ポンプに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図である。
【図2】図1中の往復動部材のプランジャを拡大して示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図である。
【図4】図3中の往復動部材のピストンを拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1,20…クランクシャフト、2,21…コンロッド,3,22…往復動部材、4,23…シリンダ部、100,110…往復動ポンプ、A,A1,A2…中心軸、C,C1,C2…往復動部材とコンロッドとの連結位置、R…クランクシャフトの回転中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(1)にコンロッド(2)を介して連結された往復動部材(3)が、前記クランクシャフト(1)の回転駆動に従いシリンダ部(4)内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ(100)において、
前記往復動部材(3)と前記コンロッド(2)との連結位置(C)を、前記往復動部材(3)の往復動方向に沿った中心軸(A)に対してオフセットしたことを特徴とする往復動ポンプ(100)。
【請求項2】
前記往復動部材(3)が上死点に向かう場合において、前記中心軸(A)を間に挟み前記コンロッド(2)の前記クランクシャフト(1)との連結中心(P)が前記クランクシャフト(1)の回転中心(R)に対してオフセットしている側と同一側に、前記連結位置(C)がオフセットしていることを特徴とする請求項1記載の往復動ポンプ(100)。
【請求項3】
共通のクランクシャフト(20)に各コンロッド(21)を介して連結された各往復動部材(22)が、前記クランクシャフト(20)の回転駆動に従い各シリンダ部(23)内を往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ(110)であって、前記往復動部材(22)及び前記シリンダ部(23)が、前記クランクシャフト(20)の軸線方向に直交する方向に二段配列された往復動ポンプ(110)において、
前記往復動部材(22)と前記コンロッド(21)との連結位置(C1,C2)を、前記往復動部材(22)の往復動方向に沿った中心軸(A1,A2)に対してオフセットしたことを特徴とする往復動ポンプ(110)。
【請求項4】
前記連結位置(C1,C2)は、前記往復動部材(22)の前記中心軸(A1,A2)より前記クランクシャフト(20)の回転中心(R)寄りにオフセットしたことを特徴とする請求項3記載の往復動ポンプ(110)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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