説明

往復回転機構

【課題】簡単かつ低コストで製造できる往復回転機構を提供する。
【解決手段】往復回転機構1は、モータの駆動により一方向に回転する入力軸3と、入力軸3の回転に連動して往復回転する出力軸7と、入力軸3と出力軸7の間に設けられた板バネ8よりなる伝動部材とを有している。モータを作動させるとその動力により入力軸3が回転し、それに伴って、入力軸3の先端にあるクランクアーム4とクランクピン43が一体となって旋回し続ける。この旋回動作に連動して、板バネ8が撓曲を繰り返しながら出力軸7を回転軸として揺動し、この揺動に連動して出力軸7が往復回転する。例えばこの往復回転機構を攪拌機に応用することで、往復回転式攪拌機を低コストで簡単に製造することができる。また、従来の往復回転機構で用いていた伝動アームに代えて板バネを利用することで構成部材が減るので、その分組立て工数が減り、簡単かつ低コストで製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の一方向回転に連動して出力軸を往復回転させる往復回転機構の技術分野に属し、往復回転式攪拌機等に応用可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
攪拌機の技術分野では、攪拌軸が一方向に回転する攪拌機が、広く一般的に用いられている。通常、この種の攪拌機は、攪拌翼の回転数が一定で等速運動をするために、槽内の軸翼と攪拌される液体が同伴しやすく、そのことにより攪拌効果が低下し、また、渦を生じ槽璧部が液高となるといった問題があった。
【0003】
そこで、入力軸の一方向回転に連動して出力軸を往復回転させる「往復回転機構」が発明され、これを応用した往復回転式攪拌機が提供されている。この往復回転式攪拌機は、攪拌翼を備えた攪拌軸が一方回転でなく、1/4回転ごとに反転を繰り返し加速度が変化するものであり、低粘度液から高粘度液まで溶解、反応など広範囲にわたって使用されている。その代表例として島崎製作所製のアジター(登録商標)が広く知られており、非特許文献1には、その往復回転式攪拌機の概要が開示されている。
【0004】
従来の往復回転式攪拌機で用いられていた往復回転機構では、入力軸(横軸)の先端に設けたクランクの回転により、出力軸(縦軸)の頭部に取り付けてある伝動アームへ円すい運動を与えることによって、当該出力軸を往復回転させるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.ajiter-sme.co.jp/AjiterStory.html(図12、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の往復回転式攪拌機では、横の入力軸と縦の出力軸の間に設ける動力伝達機構に伝動アーム(揺動するリンク機構)を利用しているため、X軸・Y軸・Z軸のすべての方向において高い精度が求められる。そのため、精度を確保するための加工コストが高く、また各部材を精度よく位置決めする必要があるため組立に時間がかかるといった問題があった。
【0007】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、簡易な構造であって従来と同様の機能を発揮できる新たな往復回転機構を提供し、これを応用できる往復回転式攪拌機、その他の機械・器具・装置等を簡単かつ低コストで製造可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の目的は、一方向に回転する入力軸と、当該入力軸と直交する出力軸において、前記入力軸の回転に連動して往復回転する前記出力軸と、前記入力軸の半径方向に軸受を介して前記出力軸の間に設けられた板バネよりなる伝動部材と、を有する往復回転機構によって達成される。
この往復回転機構において、板バネは交換可能に設けられており、該板バネは捩れ防止構造を有していてもよい。
また、出力軸に外力を与えて往復回転させることで、それに連動して前記入力軸を任意の一方向に回転させるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入力軸と出力軸との間に伝動部材として板バネを配設している。このような構成によれば、従来のような伝動アーム(揺動するリンク機構)を利用する場合の如く高い精度が要求されることはないので、往復回転式攪拌機等を低コストで簡単に製造することができる。また、伝動アームに代えて板バネを利用することにより構成部材が減るので、その分組立て工数が減り、簡単かつ低コストで製造することができる。
【0010】
しかも、板バネを捩れることのないように構成することにより、入力軸の回転が確実に出力軸に伝達されるので、従来と同様に出力軸を確実に往復回転させることができる。
【0011】
また伝動部材を板バネで構成することにより、伝動部材の交換が容易になるので、不具合が生じても低コストでのメンテナンスが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る往復回転機構を応用した攪拌機を示しており、図1(A)は回転する入力軸が0°の位置にある状態を示しており、図1(B)は入力軸が180°の位置に回転して板バネが撓んだ状態を示している。
【図2】図1の往復回転式攪拌機の入力軸、クランクアーム、板バネ、出力軸の位置関係を示す平面図であり、入力軸が90°の位置に回転した状態を示している。
【図3】図1の往復回転式攪拌機が備える板バネの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る往復回転機構を応用した往復回転式攪拌機の実施形態について説明する。なお、この実施形態で説明する往復回転式攪拌機は、本発明を適用可能な機械・器具・装置・その他の物の一例にすぎず、本発明の用途を限定するものではないことに留意されたい。例えば本発明の往復回転機構は、往復回転式攪拌機のほか、車椅子などにも応用することが可能である。
【0014】
(往復回転機構の構成)
往復回転機構1は、一方向に回転する入力軸3と、入力軸3の回転に連動して往復回転する出力軸7と、入力軸3と出力軸7の間に設けられた板バネ8よりなる伝動部材とを有している。入力軸3と出力軸7は、両者の軸芯が直交するように位置決めされている。出力軸7の下方には、攪拌翼を備えた攪拌軸が延設されている。
【0015】
横軸としての入力軸3は、軸受によって回転自在に保持されている。この入力軸3の一端は、図示しないモータに接続されており、入力軸の他端側には、軸芯に対し傾斜して延出するクランクアーム4及びアーム5が設けられている。本実施形態では、入力軸3に対しクランクアーム4及びアーム5が略Y字状に延設されている。
【0016】
クランクアーム4の内側(入力軸3の軸芯を向いた側)には、回転体であるクランクピン43が設けられている。このクランクピン43は、軸受によって回転自在に保持されており、その平坦な頭部には板バネ8の一端が固定されている。
【0017】
アーム5には、バランスウエイト53が設けられている。このバランスウエイト53は、攪拌機を高速運転させる場合に振動を抑制する役割を担っている。なお、アーム5及びバランスウエイト53は必須の構成ではなく、省略することも可能である。
【0018】
縦軸としての出力軸7は、入力軸3の軸芯と直交する位置に配設されている。この出力軸7は、軸受によって回転自在に保持されており、揺動する板バネ8の回転軸としても機能する。出力軸7の下方には、攪拌翼を備えた攪拌軸が連結されており、出力軸と一体となって往復回転する。
【0019】
板バネ8は、両端部分を除いて円弧を描くように略C字状に形成され、その両端は平坦に形成されている。この板バネ8は、弾性変形して略O字状に撓むことが可能であって、外力を受けても捩れ難いように構成されている。略C字状の板バネ8の一端側は、外側の面をクランクピン43の頭部に接触させた状態で、複数のネジで固定されている。板バネ8の他端側は、外側の面を出力軸7の頭部に接触させた状態で、複数のネジで固定されている。なお、板バネ8に不具合が生じた場合には、ネジを取り外して簡単に交換できるようになっている。
【0020】
このように板バネ8の一端をクランクピン43を介してクランクアーム4に接続することにより、クランクアーム4が旋回している間、板バネ8を直立姿勢のまま繰り返し撓曲させながら揺動させることが可能になる。
また、板バネ8の他端を出力軸7の頭部に固定することにより、板バネ8の揺動を介して、出力軸7を往復回転させることが可能になる。
なお前述したように、板バネ8は捩れることのないように構成されている。したがって、クランクアーム4の旋回時に、板バネ8は捩れることなく直立姿勢を保ったまま従動的に揺動し、出力軸7を確実に往復回転させる。
【0021】
(往復回転機構の動作)
モータを作動させるとその動力により入力軸3が回転し、それに伴って、入力軸3の先端にあるクランクアーム4とクランクピン43が一体となって旋回し続ける。この旋回動作に連動して、板バネ8が撓曲を繰り返しながら出力軸7を回転軸として揺動し、この揺動に従って出力軸7が往復回転する。具体的には以下のとおりに動作する。
【0022】
入力軸3の回転位置が0°(クランクピン43の旋回位置0°)のときには、板バネ8の変形量が最小で、出力軸7の回転位置は0°である。この状態を図1(A)に示す。
【0023】
入力軸3が0°から90°の位置へ回転する過程(クランクピン43の旋回位置0°から90°)では、クランクアーム4の旋回に伴ってクランクピン43の高さ位置が下がるので、板バネ8が徐々に撓曲する。このとき、板バネ8の一端に固定されたクランクピン43はクランクアーム4に対して相対回転可能なので、板バネ8は、捩れることなく撓みながら、クランクアーム4と正対する位置関係を保つように揺動する。そして、クランクピン43と一体となって揺動した板バネ8が、他端側に連結された出力軸7を回転させるので、入力軸3が90°の位置へ回転する過程で、出力軸7が+45°の位置まで正転する。この状態を図2に示す。
【0024】
入力軸3が90°から180°の位置へ回転する過程(クランクピン43の旋回位置90°から180°)では、クランクピン43の旋回に伴って板バネ8が更に撓むと同時に、板バネ8がクランクアーム4との正対姿勢を保つように捩れることなく揺動する。その結果この過程で、出力軸7が+45°の位置から0°の位置へ逆転する。また、板バネ8が略円形をなすように撓んで、撓み量が最大となる。この状態を図1(B)に示す。
なお、入力軸3が90°から180°の位置へ回転する過程では、図1(B)に示すように撓んだ板バネ8の一部がアーム4,5の間に進入するが、板バネ8が旋回するアーム4,5に接触することはない。
【0025】
入力軸3が180°から270°の位置へ回転する過程(クランクピン43の旋回位置180°から270°)では、クランクピン43の旋回に伴って板バネ8が徐々に原形に復帰すると同時に、板バネ8がクランクアーム4との正対姿勢を保つように捩れることなく揺動する。その結果この過程で、出力軸7が0°の位置から−45°の位置へ逆転する。
【0026】
入力軸3が270°から360°の位置へ回転する過程(クランクピン43の旋回位置270°から360°)では、クランクピン43の旋回に伴って板バネ8が更に原形に復帰すると同時に、板バネ8がクランクアーム4との正対姿勢を保つように捩れることなく揺動する。その結果この過程で、出力軸7が−45°の位置から0°の位置へ正転し、図1(A)の回転位置へ戻る。
【0027】
以上のとおり、入力軸3を一方向に回転させ続けることで、板バネ8が撓曲を繰り返し、捩れることなく出力軸7を回転軸として揺動するので、該出力軸を90°の回転角度で往復回転させることができる。
【0028】
(変形例)
本発明の往復回転機構の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で種々の改変が可能である。
例えば図3(A)に示すように、板バネ8の捩れを確実に防止するために、短手方向に配設された複数の補強筋11からなる捩れ防止構造を両面又は片面に有していてもよい。或いは図3(B)に示すように、略C字状の板バネ8の内側面に沿って波形の板バネ13を配設し、両者を重ね合わせた状態で両端をクランクピン43及び出力軸7の頭部に固定してもよい。
また、上述した実施形態では、入力軸3に動力を与えて出力軸7を往復回転させるように構成したが、これとは逆に、出力軸7に動力を与えて往復回転させ、それに連動して入力軸3を任意の一方向に回転させるように構成してもよい。この場合、往復回転させる出力軸7が入力軸として機能し、連動して一方向に回転する入力軸3が出力軸として機能する。
【0029】
(往復回転機構の効果)
上述した往復回転機構によれば、入力軸3と出力軸7との間に伝動部材として板バネ8を配設している。このような構成によれば、従来のような伝動アーム(揺動するリンク機構)を利用する場合の如く高い精度が要求されることはないので、例えば往復回転式攪拌機に応用する場合には、攪拌機を低コストで簡単に製造することができる。また、伝動アームに代えて板バネ8を利用することにより構成部材が減るので、その分組立て工数が減り、簡単かつ低コストで製造することができる。
【0030】
しかも、板バネ8を捩れることのないように構成することにより、入力軸3の回転が確実に出力軸7に伝達されるので、出力軸を確実に往復回転させることができる。
【0031】
また伝動部材を板バネ8で構成することにより、伝動部材の交換が容易になるので、不具合が生じた場合でも低コストでのメンテナンスが可能になる。
【符号の説明】
【0032】
1 往復回転機構
3 入力軸
4 クランクアーム
5 アーム
7 出力軸
8 板バネ
11 補強筋(捩れ防止構造)
13 波形の板バネ(捩れ防止構造)
43 クランクピン
53 バランスウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転する入力軸と、当該入力軸と直交する出力軸において、
前記入力軸の回転に連動して往復回転する前記出力軸と、
前記入力軸の半径方向に軸受を介して前記出力軸の間に設けられた板バネよりなる伝動部材と、を有することを特徴とする往復回転機構。
【請求項2】
前記板バネが交換可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の往復回転機構。
【請求項3】
前記板バネが捩れ防止構造を有することを特徴とする請求項1記載の往復回転機構。
【請求項4】
前記出力軸に外力を与えて往復回転させることで、それに連動して前記入力軸が任意の一方向に回転することを特徴とする請求項1記載の往復回転機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−252550(P2011−252550A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127182(P2010−127182)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(391023437)株式会社島崎製作所 (1)
【復代理人】
【識別番号】100166280
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 魂
【Fターム(参考)】