説明

待機系計算機、クラスタシステム、サービス提供方法およびプログラム

【課題】スプリットブレインの発生を抑制しつつ、クラスタシステムを構成する計算機間で物理的に独立した複数の通信回線を必要とせずに、サービスの完全停止時間を短縮することが可能な待機系計算機、クラスタシステム、サービス提供方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】サービスに関するデータを保持し該データを用いてサービスを提供しサービスの提供に伴って該データを更新する現用系計算機と通信可能な待機系計算機は、該データの写しを保持する保持手段と、現用系計算機から待機系計算機宛に送信される、現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、該データの写しを用いてサービスを提供する提供手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現用系計算機で障害が発生した場合に、現用系計算機が実行しているサービスを引き継ぐ待機系計算機、クラスタシステム、サービス提供方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
システムが提供するサービスの停止時間を短くするために、同一のサービスを提供可能な複数の計算機を有するクラスタシステムが知られている。
【0003】
クラスタシステムでは、アプリケーションプログラムを実行してサービスを提供している現用系計算機に障害が発生した場合、待機系計算機は、そのアプリケーションプログラムの実行を引き継ぐことでサービスを引き継ぐ。このサービスの引き継ぎ(フェイルオーバ)にて、サービスの停止時間を短くすることができる。
【0004】
待機系計算機は、現用系計算機から出力されるハートビート(ハートビートパケット)の途絶を契機にして、現用系計算機に障害が発生したか否かを判別する。具体的には、待機系計算機は、ハートビートの途絶の原因が、通信障害(ネットワーク・パーティション)であるか、現用系計算機での障害であるか、を判別する。ハートビートの途絶の原因が通信障害か現用系計算機での障害かを判別するためには、クラスタシステムを構成する計算機間で物理的に独立した複数の通信回線が必要となる。
【0005】
なお、ハートビートの途絶の原因が通信障害であるにもかかわらず、待機系計算機が、ハートビートの途絶の原因を現用系計算機での障害であると誤って判別すると、現用系計算機と待機系計算機のそれぞれが、サービスを提供してしまう。この場合、現用系計算機が有するデータ(サービスの実行に基づいて更新されるデータ)と待機系計算機が有するデータ(サービスの実行に基づいて更新されるデータ)との整合性が取れていない状態(スプリットブレイン)が発生する。
【0006】
特許文献1には、スプリットブレインが生じた後にハートビートの途絶が解消されると、複数の計算機のそれぞれのデータの不整合を解消するための復旧処理を実行するスプリットブレインリカバリ方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−146299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、スプリットブレインに起因するデータの不整合を解消する技術は記載されているが、スプリットブレインの発生を抑制する技術は記載されていない。
【0009】
スプリットブレインの発生を抑制する1つの手法としては、クラスタシステムを構成する計算機間で物理的に独立した複数の通信回線を設け、ハートビートの途絶の原因が、通信障害か現用系計算機での障害かを高精度で判別する手法が考えられる。
【0010】
しかしながら、この手法では、スプリットブレインの発生を抑制するために、クラスタシステムを構成する計算機間で物理的に独立した複数の通信回線が必要になるという課題があった。この課題は、災害対策のために、待機系計算機が、現用系計算機の設置場所に対して遠隔な場所に設置された場合に、特に顕著になる。
【0011】
また、スプリットブレインの発生を抑制する他の手法としては、オペレータが、現用系計算機の停止を確認してから手動操作で待機系計算機へのフェイルオーバを指示するという手法も考えられる。
【0012】
しかしながら、この手法では、現用系計算機が動作を停止してから、オペレータがフェイルオーバを指示するまで、サービスが停止してしまうという課題があった。
【0013】
本発明の目的は、上述した課題を解決可能な待機系計算機、クラスタシステム、サービス提供方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の待機系計算機は、サービスに関するデータを保持し前記データを用いて前記サービスを提供し前記サービスの提供に伴って前記データを更新する現用系計算機と、通信可能な待機系計算機であって、前記データの写しを保持する保持手段と、前記現用系計算機から前記待機系計算機宛に送信される、前記現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、前記保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する提供手段と、を含む。
【0015】
本発明のクラスタシステムは、上記待機系計算機と、前記現用系計算機と、を含む。
【0016】
本発明のサービス提供方法は、サービスに関するデータを保持し前記データを用いて前記サービスを提供し前記サービスの提供に伴って前記データを更新する現用系計算機と、通信可能な待機系計算機でのサービス提供方法であって、前記データの写しを保持手段に保持する保持ステップと、前記現用系計算機から前記待機系計算機宛に送信される、前記現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、前記保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する提供ステップと、を含む。
【0017】
本発明のプログラムは、サービスに関するデータを保持し前記データを用いて前記サービスを提供し前記サービスの提供に伴って前記データを更新する現用系計算機と通信可能なコンピュータに、前記データの写しを保持手段に保持する保持手順と、前記現用系計算機から前記待機系計算機宛に送信される、前記現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、前記保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する提供手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スプリットブレインの発生を抑制しつつ、クラスタシステムを構成する計算機間で物理的に独立した複数の通信回線を必要とせずに、サービスの完全停止時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態のクラスタシステム1を示したブロック図である。
【図2】現用系計算機11が正常状態であるときのクラスタシステム1を示したブロック図である。
【図3】現用系計算機11からのハートビートパケットが途絶したときのクラスタシステム1を示したブロック図である。
【図4】スクリプト101、102および103を用いたサービスSの制御状態を説明するための図である。
【図5】待機系計算機12内のサービス実行部32aの状態遷移を示した図である。
【図6】クラスタシステム1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】クラスタシステム1の変形例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態のクラスタシステム1を示したブロック図である。
【0022】
図1において、クラスタシステム1は、現用系計算機11と、待機系計算機12と、を含む。現用系計算機11と待機系計算機12とは、ネットワーク2を介して相互に通信可能である。また、現用系計算機11と待機系計算機12とは、ネットワーク2を介してクライアント端末13と接続可能である。待機系計算機12は、例えば、現用系計算機11の設置場所に対して遠隔な場所に設置される。
【0023】
現用系計算機11は、予め定められたサービスSに関するデータ11a1を保持する保持部11aと、提供部11bと、を含む。提供部11bは、記憶部11b1と制御部11b2と、を含む。制御部11b2は、クラスタ制御部21aと、サービス実行部31aと、を含む。
【0024】
待機系計算機12は、データ11a1の写し12a1を保持する保持部12aと、提供部12bと、を含む。提供部12bは、記憶部12b1と制御部12b2と、を含む。制御部12b2は、クラスタ制御部22aと、サービス実行部32aと、を含む。
【0025】
まず、現用系計算機11について説明する。
【0026】
保持部11aは、例えば、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体であるハードディスクである。なお、記録媒体は、ハードディスクに限らず適宜変更可能である。
【0027】
保持部11a内のデータ11a1は、例えば、サービスSの顧客のデータ(顧客の名前、年齢)である。なお、サービスSが商品の在庫を管理するサービスである場合、データ11a1は、商品の在庫を示す在庫データとなる。なお、データ11a1は、顧客のデータまたは在庫データに限らず適宜変更可能である。
【0028】
提供部11bは、保持部11a内のデータ11a1を用いてサービスSを提供する。
【0029】
記憶部11b1は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体であり、クラスタ制御ソフトウェア(クラスタ制御プログラム)21と、サービス提供ソフトウェア(サービス提供プログラム)31と、を記憶する。なお、記憶部11b1は、保持部11a内に設けられてもよい。
【0030】
制御部11b2は、例えば、コンピュータの一例であるCPU(Central Processing Unit)である。
【0031】
制御部11b2は、記憶部11b1からクラスタ制御ソフトウェア21を読み取り実行してクラスタ制御部21aとして機能する。クラスタ制御部21aは常駐する。
【0032】
制御部11b2は、記憶部11b1からサービス提供ソフトウェア31を読み取り実行してサービス実行部31aとして機能する。なお、制御部11b2は、サービスSを提供しないときには、サービス提供ソフトウェア31を実行せず、サービス実行部31aとして機能しない。
【0033】
サービス実行部31aは、保持部11a内のデータ11a1を用いてクライアント端末13に対してサービスSを提供する。サービス実行部31aは、サービスSの提供に伴ってデータ11a1を更新することがある。例えば、サービスSが在庫管理サービスである場合、データ11a1は、在庫の変動に応じて更新される。
【0034】
クラスタ制御部21aは、待機系計算機12宛にハートビートパケットを定期的(例えば、10秒間隔)に送信する。なお、ハートビートパケットは、現用系計算機11が動作していることを証明するための所定信号の一例である。また、ハートビートパケットの送信間隔は10秒に限らず適宜変更可能である。
【0035】
また、クラスタ制御部21aは、サービス実行部31aがデータ11a1を更新することをフックして、クラスタ制御部22aを介して、保持部12a内のデータの写し12a1に、データ11a1と同様の更新(ミラーリング)を行う。なお、クラスタ制御部21aは、定期的に、データ11a1を保持部12aにコピーする。または、クラスタ制御部21aは、データ11a1とデータの写し12a1との間の更新差分を、定期的に、保持部12aに追記する。このため、保持部12a内には、データ11a1の写し12a1が保持される。
【0036】
次に、待機系計算機12について説明する。
【0037】
保持部12aは、一般的に保持手段と呼ぶことができる。
【0038】
保持部12aは、例えば、ハードディスクである。保持部12aは、現用系計算機11内の保持部11aに保持されたデータ11a1の写し12a1を保持する。
【0039】
提供部12bは、一般的に提供手段と呼ぶことができる。
【0040】
提供部12bは、現用系計算機11から待機系計算機12宛に送信されるハートビートパケットを所定時間(例えば、90秒)受信できない場合に、保持部12a内のデータの写し12a1を更新する更新動作を制限しつつ、データの写し12a1を用いてサービスSを提供する。なお、所定時間は90秒に限らず、例えば、ハートビートパケットの送信間隔と、各計算機およびネットワーク2の性能と、に応じて適宜変更可能である。
【0041】
記憶部12b1は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体であり、クラスタ制御ソフトウェア(クラスタ制御プログラム)22と、サービス提供ソフトウェア(サービス提供プログラム)32と、スクリプト101と、スクリプト102と、スクリプト103と、を記憶する。なお、サービス提供ソフトウェア32は、サービス提供ソフトウェア31が規定する処理手順と同一の処理手順を規定する。また、記憶部12b1は、保持部12a内に設けられてもよい。
【0042】
制御部12b2は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0043】
制御部12b2は、記憶部12b1からクラスタ制御ソフトウェア22を読み取り実行してクラスタ制御部22aとして機能する。クラスタ制御部22aは常駐する。
【0044】
制御部12b2は、記憶部12b1からサービス提供ソフトウェア32を読み取り実行してサービス実行部32aとして機能する。なお、制御部12b2は、サービスSを提供しないときには、サービス提供ソフトウェア32を実行せず、サービス実行部32aとして機能しない。
【0045】
クラスタ制御部22aは、クラスタ制御部21aから定期的に送信されるハートビートパケットを受信することで、現用系計算機11の死活を監視する。
【0046】
本実施形態では、クラスタ制御部22aは、現用系計算機11から待機系計算機12宛に送信されるハートビートパケットを所定時間(例えば、90秒)受信できないか否かを監視する。
【0047】
現用系計算機11の動作停止、あるいは、現用系計算機11と待機系計算機12との間の通信経路(例えば、ネットワーク2)上の障害に起因して、クラスタ制御部21aからのハートビートパケットを所定時間受信できないと、クラスタ制御部22aは、記憶部12b1内のスクリプト101を読み出し実行する。
【0048】
スクリプト101は、サービス実行部32aが保持部12a内のデータの写し12a1を用いてサービスSを機能制限付きで開始する処理(以下「第1処理」と称する)を行う旨の指示を、クラスタ制御部22aに実行させるためのプログラムである。
【0049】
本実施形態では、第1処理では、保持部12a内のデータの写し12a1を更新する更新動作を制限しつつ、データの写し12a1を用いてサービスSが提供される。例えば、第1処理では、待機系計算機12上でデータの写し12a1を更新しない(参照のみ)か、データの写し12a1のうち更新可能な部分を所定の部分(例えば、更新が元に戻されてもサービスSには支障がない範囲)に限定して、サービスSが開始される。
【0050】
クラスタ制御部22aは、スクリプト101を実行することで、サービス実行部32aを起動して、第1処理をサービス実行部32aに実行させる。
【0051】
現用系計算機11が停止しておらず、通信系路上の障害が復旧して、クラスタ制御部21aからのハートビートパケットを再び受信すると、クラスタ制御部22aは、記憶部12b1内のスクリプト102を読み出し実行する。
【0052】
スクリプト102は、サービス実行部32aの動作を停止し、かつ、現用系計算機11内のデータ11a1を保持部12aにコピーして保持部12a内のデータの写し12a1を更新する処理(以下「第2処理」と称する)を、クラスタ制御部22aに実行させるためのプログラムである。
【0053】
クラスタ制御部22aは、スクリプト102を実行することで第2処理を実行する。第2処理が実行されると、サービス実行部32aが動作を停止し、データの写し12a1が最新のものとなる。
【0054】
なお、オペレータが、現用系計算機11の停止を確認し、待機系計算機12に対して、サービスの機能制限を解除する操作を行うと、更新動作の制限を解除する旨の指示がクラスタ制御部22aで受け付けられる。
【0055】
クラスタ制御部22aは、更新動作の制限を解除する旨の指示を受け付けると、記憶部12b1内のスクリプト103を読み出し実行する。
【0056】
スクリプト103は、サービス実行部32aが更新動作の制限を解除してデータの写し12a1を用いてサービスSを提供する処理(以下「第3処理」と称する)を行う旨の指示を、クラスタ制御部22aに実行させるためのプログラムである。
【0057】
クラスタ制御部22aは、スクリプト103を実行することで、第3処理をサービス実行部32aに実行させる。以降は、待機系計算機12内のデータの写し12a1がマスタ(コピー元)となる。
【0058】
次に、クラスタシステム1の動作の概要を説明する。
【0059】
現用系計算機11は、正常状態でサービスSを提供する。
【0060】
待機系計算機12では、クラスタ制御部22aは、現用系計算機11内のクラスタ制御部21aから定期的に送信されるハートビートパケットを受信することで、現用系計算機11の生存を確認する。
【0061】
図2は、現用系計算機11が正常状態であるときのクラスタシステム1を示したブロック図である。なお、図2において、図1に示したものと同一構成のものには同一符号を付してある。
【0062】
現用系計算機11が正常状態であるとき、現用系計算機11でサービス実行部31aが参照・更新するデータ11a1は、クラスタ制御部21aとクラスタ制御部22aにて、待機系計算機12内の保持部12aにコピーされる。
【0063】
図3は、現用系計算機11からのハートビートパケットが途絶したときのクラスタシステム1を示したブロック図である。なお、図3において、図1に示したものと同一構成のものには同一符号を付してある。
【0064】
現用系計算機11からのハートビートパケットが途絶し、現用系計算機11の生存が確認できなくなると、クラスタ制御部22aは、待機系計算機12でサービス実行部32aを起動する。
【0065】
サービス実行部32aは、停止状態と、待機系計算機12内のデータ更新を制限した状態と、待機系計算機12でのデータ更新の制限のない状態と、を有する。
【0066】
クラスタ制御部22aは、これらの状態遷移を行うための処理を記述したスクリプト101、102または103を実行することで、サービス実行部32aの状態遷移を制御する。
【0067】
図4は、スクリプト101、102および103を用いたサービスSの制御状態を説明するための図である。また、図5は、待機系計算機12内のサービス実行部32aの状態遷移を示した図である。
【0068】
スクリプト101は、停止状態のサービス実行部32aをデータ更新制限付きの起動状態に遷移させ、スクリプト102は、データ更新制限付きで起動した状態のサービス実行部32aを停止状態に遷移させ、スクリプト103は、データ更新制限付きで起動した状態のサービス実行部32aをデータ更新の制限のない状態に遷移させる。
【0069】
次に、クラスタシステム1の動作を説明する。
【0070】
図6は、クラスタシステム1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0071】
待機系計算機12内のクラスタ制御部22aは、現用系計算機11からのハートビートパケットが途絶したか判別する(ステップS601)。
【0072】
現用系計算機11からのハートビートパケットが途絶すると、クラスタ制御部22aは、スクリプト101を実行する(ステップS602)。スクリプト101の実行に伴い、サービス実行部32aは、待機系計算機12内のデータの写し12a1の更新を制限した状態、例えば、データの写し12a1を更新しない(参照のみ)か、データの写し12a1のうち更新可能な部分を、更新が元に戻されても支障がない範囲に制限して、サービスSを開始する。
【0073】
その後、クラスタ制御部22aは、ハートビートパケットの受信が復旧したかを判別する(ステップS603)。
【0074】
ハートビートパケットの受信が復旧すると、現用系計算機11は停止しておらず、通信障害でハートビートパケットが途絶していたものと考えられるため、クラスタ制御部22aは、スクリプト102を実行する(ステップS604)。
【0075】
スクリプト102の実行に伴い、クラスタ制御部22aは、サービス実行部32aの動作を停止する。さらに、クラスタ制御部22aは、現用系計算機11内のデータ11a1を待機系計算機12内の保持部12aにコピーして両系のデータを再び一致させる(S605)。
【0076】
クラスタ制御部22aは、現用系計算機11内のデータ11a1を待機系計算機12内の保持部12aにコピーすると、ステップS601に戻って、ハートビートパケットの受信に基づく現用系死活監視を再開する。
【0077】
一方、ステップS603でハートビートが復旧しないと、クラスタ制御部22aは、オペレータが機能制限の解除操作を実施したか判別する(ステップS606)。
【0078】
オペレータが機能制限の解除操作を実施した場合、クラスタ制御部22aは、スクリプト103を実行する(ステップS607)。スクリプト103の実行に伴い、クラスタ制御部22aは、サービスの機能制限を解除し、サービス実行部32aの状態を、現用系計算機11と同様のサービスSを提供する状態に変更する。
【0079】
一方、ステップS606で、オペレータが機能制限の解除操作を実施していない場合、クラスタ制御部22aは、ステップS603に戻る。
【0080】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0081】
本実施形態では、ハートビート(ハートビートパケット)の途絶が確認された時点で、サービス実行部32aの機能を、途絶が通信障害に起因するものであっても問題のない範囲に制限して、待機系計算機12でサービスが自動的に起動する。このため、サービスの完全停止時間を短縮することができる。
【0082】
また、通信障害が復旧した時点で、自動的に待機系計算機12でのサービス提供を停止して、クラスタシステム1の状態を正常時の状態に戻すことができる。
【0083】
また、サービスの制御にスクリプトを用いることにより、サービスの実装から独立したクラスタ基盤機能として汎用的に利用できる。
【0084】
本実施形態によれば、保持部12aは、現用系計算機11が有するデータ11a1の写し12a1を保持する。提供部12bは、現用系計算機11から待機系計算機12宛に送信されるハートビートパケットを所定時間受信できない場合に、保持部12a内のデータの写し12a1を更新する更新動作を制限しつつ、データの写し12a1を用いてサービスSを提供する。
【0085】
提供部12bが、保持部12a内のデータの写し12a1を更新する更新動作を制限するため、クラスタシステムを構成する計算機間で物理的に独立した複数の通信回線を必要とせずにスプリットブレインの発生を抑制できる。また、提供部12bが、ハートビートパケットを所定時間受信できないと、制限付きだがサービスSを提供するため、サービスSの完全停止時間を短縮することが可能になる。
【0086】
また、本実施形態では、提供部12bは、ハートビートパケットを所定時間受信できない場合に、保持部12a内のデータの写し12a1の更新を禁止しつつ、データの写し12a1を用いてサービスを提供する。この場合、スプリットブレインの発生を禁止することが可能になる。
【0087】
また、本実施形態では、提供部12bは、サービスを提供した後に更新動作の制限を解除する旨の指示を受け付けると、更新動作の制限を解除して、データ12a1の写しを用いてサービスを提供する。
【0088】
この場合、更新動作の制限を解除することが可能になる。
【0089】
また、本実施形態では、提供部12bは、サービスを提供した後にハートビートパケットを受信すると、現用系計算機11内のデータ11a1を保持部12aにコピーして保持部12a内のデータの写しを更新する。
【0090】
この場合、通信障害(ネットワーク・パーティション)の復旧に伴って、クラスタシステム1を自動的に正常な状態に戻すことが可能になる。
【0091】
なお、上記実施形態において、図7に示すように、クラスタ制御部22aは、サービス実行部32aの起動・停止制御では、データ更新についての機能制限を行わず、サービス実行部32aからデータの写しに対するアクセスを制御してサービス実行部32aに対してデータの写し12a1の参照のみ許可し、オペレータの手動操作によりデータ更新を許可してもよい。
【0092】
以上説明した実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
1 クラスタシステム
11 現用系計算機
11a 保持部
11b 提供部
11b1 記憶部
11b2 制御部
21a クラスタ制御部
31a サービス実行部
12 待機系計算機
12a 保持部
12b 提供部
12b1 記憶部
12b2 制御部
22a クラスタ制御部
32a サービス実行部
13 クライアント端末
2 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスに関するデータを保持し前記データを用いて前記サービスを提供し前記サービスの提供に伴って前記データを更新する現用系計算機と、通信可能な待機系計算機であって、
前記データの写しを保持する保持手段と、
前記現用系計算機から前記待機系計算機宛に送信される、前記現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、前記保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する提供手段と、を含む待機系計算機。
【請求項2】
請求項1に記載の待機系計算機において、
前記提供手段は、前記所定信号を前記所定時間受信できない場合に、前記更新動作を禁止しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する、待機系計算機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の待機系計算機において、
前記提供手段は、前記サービスを提供した後に前記更新動作の制限を解除する旨の指示を受け付けると、前記更新動作の制限を解除して、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する、待機系計算機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の待機系計算機において、
前記提供手段は、前記サービスを提供した後に前記所定信号を受信すると、前記現用系計算機内のデータを前記保持手段にコピーして前記保持手段内のデータの写しを更新する、待機系計算機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の待機系計算機と、前記現用系計算機と、を含むクラスタシステム。
【請求項6】
サービスに関するデータを保持し前記データを用いて前記サービスを提供し前記サービスの提供に伴って前記データを更新する現用系計算機と、通信可能な待機系計算機でのサービス提供方法であって、
前記データの写しを保持手段に保持する保持ステップと、
前記現用系計算機から前記待機系計算機宛に送信される、前記現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、前記保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する提供ステップと、を含むサービス提供方法。
【請求項7】
サービスに関するデータを保持し前記データを用いて前記サービスを提供し前記サービスの提供に伴って前記データを更新する現用系計算機と通信可能なコンピュータに、
前記データの写しを保持手段に保持する保持手順と、
前記現用系計算機から前記待機系計算機宛に送信される、前記現用系計算機が動作していることを証明するための所定信号を所定時間受信できない場合に、前記保持手段内のデータの写しを更新する更新動作を制限しつつ、前記データの写しを用いて前記サービスを提供する提供手順と、を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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