説明

後処理装置及び画像形成装置

【課題】本発明は、舌部を切り込みに挿入することにより綴じ処理が施された用紙束を搬送する際に、この舌部が用紙束の搬送の妨げとなることを抑制する。
【解決手段】本発明の後処理装置は、用紙束Bにスリット521を形成し、かつ用紙束Bの一部を予め定めた形状に切ることにより一端部522aが用紙束Bと連続する部分を残す舌部522を用紙束Bに形成するとともに、舌部522を折り舌部522の他端部522bをスリット521に挿入し用紙束Bを綴じる綴じ部と、綴じ部により綴じられた用紙束Bの舌部522における一端部522aが他端部522bよりも搬送方向S3の下流側となる向きに用紙束Bを搬送する用紙束搬送部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
封かん装置として、上下に移動できる上型に切り刃、ナイフ、カムを取り付け、これらに対抗して所定の穴が設けられかつ封かんすべき書類を受ける下型に上記上型が接近したとき、前記切刃が書類の一部をこの書類から離れないように打ち抜き、それと同時に前記ナイフが前記の打抜部分に隣接して書類に溝を開け、次に前記カムが前記の打抜部分を折り曲げ、そして、前記上型が前記下型から離れるときに前記ナイフが前記打抜部分の先端を前記溝に差し込み書類の封かんを行い、さらに、前記上型に上刃を取り付け、前記下型に下刃を取り付けて、上型が下型に接近したときに書類の切断を行うものが存在する(特許文献1参照)。
【0003】
また、レバーの操作により下降して紙束の端部に三方を切り込みで囲んだ舌状片を形成する第1ポンチと、その近傍に同じく三方を切り込みで囲んだ逆向きの舌状片を形成する第2ポンチとを備え、その第1ポンチの下降に連動して回転することにより第1ポンチが形成した下向きの舌状片を側方へ押して折り曲げる回転爪を設けるとともに、その回転爪が側方へ折り曲げた舌状片の先端部を下から支えた状態で上昇することによりその舌状片を持ち上げて第2ポンチが形成した舌状片を押し上げることにより生じる抜き穴へその舌状片を差し込ませて係止する引掛部を第2ポンチに設けたものが存在する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭49−5960号明細書
【特許文献2】特許第2903492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、舌部を切り込みに挿入することにより綴じ処理が施された用紙束を搬送する際に、この舌部が用紙束の搬送の妨げとなることを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、用紙束に切り込みを形成し、かつ当該用紙束の一部を予め定めた形状に切ることにより一方の端部が当該用紙束と連続する部分を残す舌部を当該用紙束に形成するとともに、当該舌部を折り当該舌部の他方の端部を当該切り込みに挿入し当該用紙束を綴じる綴じ部と、前記綴じ部により綴じられた前記用紙束の前記舌部における前記一方の端部が前記他方の端部よりも搬送方向の下流側となる向きに当該用紙束を搬送する用紙束搬送部とを有することを特徴とする後処理装置である。
請求項2記載の発明は、前記用紙束搬送部は、前記切り込みに挿入された前記舌部の長手方向に沿う方向に前記用紙束を搬送することを特徴とする請求項1記載の後処理装置である。
請求項3記載の発明は、前記綴じ部は、前記用紙束における複数の箇所において当該用紙束を綴じることを特徴とする請求項1または2記載の後処理装置である。
請求項4記載の発明は、前記綴じ部は、前記複数の箇所において形成されるそれぞれの前記舌部が同じ向きであることを特徴とする請求項3記載の後処理装置である。
請求項5記載の発明は、用紙に画像を形成する画像形成機構と、前記画像形成機構によって画像が形成された複数枚の用紙を束ねて用紙束を形成する用紙束形成機構と、前記用紙束形成機構によって形成された用紙束に切り込みを形成し、かつ当該用紙束の一部を予め定めた形状に切ることにより一方の端部が当該用紙束と連続する部分を残す舌部を当該用紙束に形成するとともに、当該舌部を折り当該舌部の他方の端部を当該切り込みに挿入し当該用紙束を綴じる綴じ部と、前記綴じ部により綴じられた前記用紙束の前記舌部における前記一方の端部が前記他方の端部よりも搬送方向の下流側となる向きに当該用紙束を搬送する用紙束搬送部とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、舌部を切り込みに挿入することにより綴じ処理が施された用紙束を搬送する際に、この舌部が用紙束の搬送の妨げとなることを抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、用紙束が搬送される際に舌部が抵抗力を受け用紙束が斜行することを抑制することができる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、用紙束が綴じられた状態をより確実に維持しながら用紙束を搬送することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、用紙束に形成された各舌部が用紙束の搬送の妨げとなることを抑制しながら用紙束を搬送することができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比較して、舌部を切り込みに挿入することにより綴じ処理が施された用紙束を搬送する際に、この舌部が用紙束の搬送の妨げとなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態が適用される画像形成システムを示す概略構成図である。
【図2】コンパイル用積載部周辺を示す概略構成図である。
【図3】図2のIII方向から見たコンパイル用積載部周辺を示す概略構成図である。
【図4】針無綴じ機構及びその周辺部材を示す概略構成図である。
【図5】針無綴じ機構によって綴じられた部分を示す説明図である。
【図6】綴じ処理が施された用紙束を示す概略構成図である。
【図7】針無綴じ機構の向きと綴じ部の向きとを示す説明図である。
【図8】綴じ処理を施された用紙束の他の態様を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成システム1>
図1は、本実施の形態が適用される画像形成システム(画像形成装置)1を示す概略構成図である。図1に示す画像形成システム1は、例えば、電子写真方式によって画像を形成するプリンタや複写機等の画像形成装置2と、画像形成装置2によって例えばトナー像が形成された用紙Sに後処理を施す用紙処理装置3とを備えている。
【0010】
<画像形成装置2>
画像形成装置2は、画像が形成される用紙Sを供給する用紙供給部6と、用紙供給部6から供給された用紙Sに画像を形成する画像形成部(画像形成機構)5とを備える。また、画像形成装置2は、この画像形成部5で画像が形成された用紙Sの面を反転させる用紙反転装置7と、画像が形成された用紙Sを排出する排出ロール9とを備える。さらに、画像形成装置2は、ユーザから綴じ処理に関する情報を受け付けるユーザ・インターフェイス90を備えている。
【0011】
<用紙処理装置3>
用紙処理装置3は、画像形成装置2から出力された用紙Sを更に下流側に搬送する搬送装置10と、例えば用紙Sを集めて束ねるコンパイル用積載部35や用紙Sの端部を綴じる針無綴じ機構(綴じ部)150などを含む後処理装置30とを備えている。また、図示の例においては、用紙処理装置3が画像形成システム1全体を制御する制御部80を備えている。
用紙処理装置3の搬送装置10は、画像形成装置2の排出ロール9を介して出力される用紙Sを受け取る一対のロールである入口ロール11と、この入口ロール11にて受け取られた用紙Sに必要に応じて穴あけを施すパンチャ12とを備えている。また、搬送装置10は、パンチャ12のさらに下流側に、用紙Sを下流側へと搬送する一対のロールである第1搬送ロール13と、後処理装置30に向けて用紙Sを搬送する一対のロールである第2搬送ロール14とを有する。
【0012】
用紙処理装置3の後処理装置30は、搬送装置10から用紙Sを受け取る一対のロールである受け取りロール31を備えている。また、後処理装置30は、受け取りロール31の下流側に設けられ用紙Sを複数枚集めて収容するコンパイル用積載部35と、コンパイル用積載部35に向けて用紙Sを排出する一対のロールであるエグジットロール34とを備えている。
また、後処理装置30は、用紙Sをコンパイル用積載部35のエンドガイド35b(後述)に向けて押し込むよう回転するパドル37を備えている。さらに、後処理装置30は、用紙Sの端部を揃えるためのタンパ38を備えている。さらにまた、後処理装置30は、コンパイル用積載部35にて集積された用紙Sを押さえ、かつ回転することにより、綴じられた用紙束Bを搬送するイジェクト(eject)ロール(用紙束搬送部)39を備えている。
【0013】
さらに、後処理装置30は、コンパイル用積載部35に集積された用紙束Bの端部を綴じる針無綴じ機構150を有する。さらにまた、後処理装置30は、用紙束Bをイジェクトロール39によって後処理装置30の外側へ排出するための開口部69を備える。そして、開口部69から排出された用紙束Bをユーザが取りやすいようにして積み重ねる積載部70を備える。
【0014】
<コンパイル用積載部35周辺の構造>
次に、図2及び3を用いて、コンパイル用積載部35およびその周辺の構造を説明する。ここで、図2は、コンパイル用積載部35周辺を示す概略構成図であり、図3は、図2の矢印III方向から見たコンパイル用積載部35周辺の概略構成図である。
なお、図3における下側は、画像形成システム1のユーザ側を示し、図1および図2における紙面手前側を示す。
【0015】
まず、コンパイル用積載部(用紙束形成機構)35は、用紙Sを積載する上面を有する底部35aを備える。図3に示すように、底部35aは第1部材35a1と第2部材35a2とからなり、第1部材35a1と第2部材35a2とは接合部Gaを介して接続されている。また、底部35aの第2部材35a2には、支持部材(図示せず)にボルト(図示せず)等により底部35aを固定するための固定用孔35a20が形成されている。また、図2に示すように、底部35aは、上面に沿って用紙Sが落下するよう傾斜して設けられる。
さらに、コンパイル用積載部35は、底部35aに沿って落下する用紙Sの進行方向先端側の端部を揃えるよう配置されるエンドガイド35bを有する。
【0016】
なお、詳しくは後述するが、コンパイル用積載部35周辺における用紙Sの動きは、まずコンパイル用積載部35に向けて供給され(図2の第1の進行方向S1参照)、次に進行方向を反転させてコンパイル用積載部35の底部35aに沿って落下する(図2の第2の進行方向S2参照)。その後、各用紙Sの端部が揃えられ、用紙束Bが形成される。そして、この用紙束Bは、進行方向を反転させてコンパイル用積載部35の底部35aに沿って上昇する(図2の第3の進行方向S3参照)。
【0017】
ここで、図3に示すように、本実施の形態においてはコンパイル用積載部35の底部35aの各端部を次のように定義する。まず、用紙Sがコンパイル用積載部35の底部35aの上面に沿って落下する方向を示す第2の進行方向S2の先端側の端部を先端側端部Taと呼ぶ。この先端側端部Taは、エンドガイド35bと接触する端部である。また、第2の進行方向S2の方向に沿う端部であって画像形成システム1のユーザ側(図3における下側)の端部を、側方端部Tbと呼ぶ。
【0018】
次に、パドル37は、コンパイル用積載部35の上方であって、かつエグジットロール34に対して、用紙Sの第1の進行方向S1の下流側に設けられる。また、パドル37は、図示しないモータ等の駆動を受けてコンパイル用積載部35の底部35aとの距離が変化するように備えられている。具体的には、パドル37は、図2の矢印U1およびU2の方向に移動可能に備えられており、矢印U1方向に移動してコンパイル用積載部35の底部35aに接近し(実線で描かれた位置Pb)、矢印U2方向に移動することでコンパイル用積載部35の底部35aから離間する(破線で描かれた位置Pa)。そして、パドル37は、図2の矢印R方向に回転することで、図2の第1の進行方向S1方向に沿って搬送された用紙Sを、コンパイル用積載部35上にて第2の進行方向S2に押し込むよう構成されている。
【0019】
タンパ38(図1参照)は、図3に示すように、コンパイル用積載部35を挟んで対向する第1タンパ38a及び第2タンパ38bとからなる。具体的には、第1タンパ38a及び第2タンパ38bは、第2の進行方向S2と交差する方向(図3における上下方向)で互いに対向するよう配置される。そして、第1タンパ38a及び第2タンパ38bは、図示しないモータ等の駆動を受けて第1タンパ38a及び第2タンパ38bの互いの距離が変化するように備えられている。
【0020】
ここで、このタンパ38は、底部35aに沿って落下する用紙Sの進行方向に沿う端部を揃えるよう構成される。具体的には、第1タンパ38aは、コンパイル用積載部35に接近する位置(実線で描かれた位置Pax)とコンパイル用積載部35から離間する位置(破線で描かれた位置Pay)との間を移動する(矢印C1及びC2)よう配置されている。一方、第2タンパ38bは、コンパイル用積載部35に接近する位置(実線で描かれた位置Pbx)とコンパイル用積載部35から離間する位置(破線で描かれた位置Pby)との間を移動する(矢印C3及びC4)よう配置されている。
なお、本実施の形態における第1タンパ38a及び第2タンパ38bのそれぞれの位置Pax、Pay、Pbx、Pbyは、コンパイル用積載部35に供給される用紙Sの用紙サイズや向きに応じて、それぞれの位置を変化させることができる。
【0021】
イジェクトロール39は、第1イジェクトロール39aと第2イジェクトロール39bとからなり、第1イジェクトロール39aと第2イジェクトロール39bとがコンパイル用積載部35の底部35aを挟んでこの底部35aの上側と下側とで対向するように配置されている。
そして、第1イジェクトロール39aは、コンパイル用積載部35の底部35aであって、用紙Sが積載される面側に設けられている。さらに、第1イジェクトロール39aは、図示しないモータ等の駆動を受けて第2イジェクトロール39bに対して進退可能に備えられている。つまり、第1イジェクトロール39aとコンパイル用積載部35の底部35aに積載される用紙Sとの距離が変化するように構成されている。一方、第2イジェクトロール39bはコンパイル用積載部35の底部35aであって、用紙Sが積載される面の裏面側に配置されており、その位置は固定され、回転運動のみを行うよう備えられている。
【0022】
具体的には、第1イジェクトロール39aが矢印Q1方向に移動し、第1イジェクトロール39aがコンパイル用積載部35の底部35aに接近する(破線で描かれた位置P2)。一方、第1イジェクトロール39aが矢印Q2方向に移動し、第1イジェクトロール39aがコンパイル用積載部35の底部35aから離間する(実線で描かれた位置P1)。
そして、第1イジェクトロール39aは、用紙Sに接触した状態で図示しないモータ等の駆動を受けて、T1方向に回転することで用紙束Bを上昇(第3の進行方向S3方向)させて搬送するように構成されている。
なお、第1イジェクトロール39aの位置P1、P2は、コンパイル用積載部35に供給される用紙Sの枚数や厚みに応じて変化させることができる。
【0023】
<針無綴じ機構150及びその周辺部材>
次に、図4を参照しながら針無綴じ機構150及びその周辺部材について説明する。ここで、図4は、針無綴じ機構150及びその周辺部材を示す概略構成図である。
画像形成システム1(図1参照)は、図4に示すように、制御部80に制御され針無綴じ機構150を駆動させる針無綴じモータM1を有する。また、画像形成システム1(図1参照)は、針無綴じモータM1より駆動を受けて回転することで針無綴じ機構150に駆動力を伝達するカム82と、このカム82により伝達される駆動力とは反対向きの力を針無綴じ機構150に付与するスプリング84とを有する。
【0024】
さらに、画像形成システム1(図1参照)は、用紙束Bにおける綴じ処理を行う位置に応じて針無綴じ機構150を移動させるためのレールを有する移動機構44(図2参照)と、用紙束Bにおける綴じ処理を行う向き(後述)に応じて針無綴じ機構150の基部503(後述)を回転させるモータを有する回転機構46(図3参照)とを有する。なお、本実施の形態における針無綴じ機構150は、移動機構44によって底部35aの先端側端部Ta及び側方端部Tbに沿って移動する(図3の矢印A参照)。
【0025】
<針無綴じ機構150の構造>
次に、図4を参照しながら針無綴じ機構(綴じ機構)150の構造について説明する。針無綴じ機構150は、ステープラ用つづり針(所謂ステープル針)を用いることなく、用紙束Bを構成する用紙Sを変形させることにより用紙束Bの端部を綴じる。具体的には、次のように構成されている。
針無綴じ機構150は、対向して配置された基台501と基部503とを有する。図4に示すように基台501に用紙束Bを挟んだ状態で、基部503が基台501に接近(図中F1方向)することにより、用紙束Bを綴じるよう構成されている。
【0026】
図4に示すように、基台501には、基台501と略平行となるよう配置されている抑え部材502が設けられている。基台501と抑え部材502とは、コンパイル用積載部35の底部35a(図2参照)を挟んで設けられており、コンパイル用積載部35に積載された用紙束Bは、基台501と抑え部材502とに挟まれる。また、図4に示すように、基台501は、基部503に向けて延伸し基台501と一体的に形成された突出部506を有する。
【0027】
基部503は、用紙束Bに切り込みを入れるブレード504と、用紙束Bに舌部522(後述)を形成し折り曲げ、かつブレード504によって形成された切り込みに舌部522を挿入する打ち抜き部材505とを有する。
このブレード504は、基台501と抑え部材502との間に挟まれた用紙束Bに向けて延伸する略長方形の板状部材からなる。具体的には、ブレード504は、略長方形状の面に目穴504aを有し、さらに用紙束Bに接近するに従いその幅が減少する先端部504bを有する。
【0028】
打ち抜き部材505はL字状の屈曲部を有する部材である。打ち抜き部材505の一方の端部は主部505aであり、他方の端部が副部505bである。
また、打ち抜き部材505は、L字状の屈曲部に設けられた主部回転軸505rを有する。この打ち抜き部材505は、主部回転軸505rを中心に回転可能である。より詳細には、主部505aがブレード504側に傾斜可能である。なお、副部505bと基部503との間には、打ち抜き部材505が回転できるよう間隙を有する。
【0029】
ここで、主部505aは基台501に向けて延伸する。さらに、主部505aは、主部回転軸505rが設けられた側とは反対側、すなわち基台501に対向する側に刃部505cを有する。この刃部505cは、舌部522の形状を打ち抜く刃からなる。なお、刃部505cのうちブレード504と対向する側には刃が形成されておらず、後述する一端部522aによって舌部522と用紙Sとが連続するように構成されている。さらに、主部505aは、主部505aの側部、具体的にはブレード504と対向する側に、ブレード504へ向けて延伸する突起505dを有する。
【0030】
<針無綴じ機構150の動作>
ここで、図1乃至図5を参照しながら、針無綴じ機構150によって、コンパイル用積載部35に積載された用紙束Bの端部を綴じる動作について具体的に説明をする。ここで、図5は、針無綴じ機構150によって綴じられた部分を示す説明図である。より詳細には、図5(a)はスリット521及び舌部522の位置関係を示す説明図であり、図5(b)は針無綴じ機構150により綴じられる際のスリット521及び舌部522の関係を示す説明図であり、図5(c)は綴じ部分51の表面側を示す説明図であり、図5(d)は綴じ部分51の裏面側を示す説明図である。
まず、コンパイル用積載部35に綴じ処理を施す用紙束Bが積載されると、制御部80からの信号を受けて、移動機構44と回転機構46とが、用紙束Bにおける綴じ処理を施す位置及び向きに針無綴じ機構150を移動させる。
【0031】
この位置において、制御部80からの指示を受けた針無綴じモータM1が駆動し、カム82を回転させる。このことにより基部503が基台501に接近し(図中F1方向)、ブレード504の先端部504bと、打ち抜き部材505の刃部505cとが用紙束Bを貫通する。そして、用紙束Bを構成するそれぞれの用紙Sに、スリット(切り込み)521と、一端部522aを残して用紙Sが打ち抜かれた舌部522とが形成される(図5(a)参照)。
【0032】
そして、図4に示すように、カム82が回転して基部503を更に押下すると、打ち抜き部材505の副部505bが、基台501に一体に形成された突出部506に突き当たり、打ち抜き部材505が、主部回転軸505rを中心として図4において時計周りに回転する。これにより、主部505aがブレード504側に傾斜し、打ち抜き部材505の突起505dがブレード504に接近する。そして、打ち抜き部材505の突起505dが、図5(b)に示すように、舌部522を折り曲げ、ブレード504の目穴504aに向けて図中F2方向に押し込む。尚、図5(b)では打ち抜き部材505を図示していない。
【0033】
そして、図4に示すように、カム82がさらに回転し下死点を通過した後は、スプリング84による力を受けながら基部503が基台501から離れる方向に移動する(図中F3参照)。基部503が図中F3方向に上昇すると、舌部522がブレード504の目穴504aに引っ掛かった状態で上昇する。そして図5(c)及び図5(d)に示すように、スリット521に舌部522が挿入(織り込み)されることにより、用紙束Bが綴じられる。このとき用紙束Bには、舌部522が打ち抜かれた箇所に綴じ穴523が形成されている。なお、本実施の形態においては、スリット521、舌部522、及び綴じ穴523を綴じ処理が施された部分(綴じ部分)51とする。
【0034】
<画像形成システム1の動作>
次に、図1〜図3を参照して画像形成システム1の動作について説明する。
まず、本実施の形態においては、パーソナルコンピュータ(図示せず)あるいはユーザ・インターフェイス90等を介して、用紙Sに形成する画像及び綴じ処理に関する情報を受け付ける。制御部80が、これらの情報を受けることにより、画像形成システム1の動作が開始される。
なお、画像形成装置2の画像形成部5によって1番目の用紙Sにトナー像が形成される前の状態は次のように各部材が配置される。すなわち、第1イジェクトロール39aは位置P1に、パドル37は位置Paに配置され、第1タンパ38aは位置Payに配置され、そして第2タンパ38bは位置Pbxに配置される。
【0035】
そして、画像形成装置2の画像形成部5によって1番目の用紙Sにトナー像が形成される。図1に示すように、トナー像が形成された1番目の用紙Sは、必要に応じて用紙反転装置7によって反転された後、排出ロール9を介して、1枚ごとに用紙処理装置3に供給される。
1番目の用紙Sが供給された用紙処理装置3の搬送装置10では、入口ロール11にて1番目の用紙Sを受け取り、この1番目の用紙Sに対して必要に応じてパンチャ12により穴あけ処理が施される。その後、第1搬送ロール13および第2搬送ロール14を介して、1番目の用紙Sが下流側の後処理装置30に向けて搬送される。
【0036】
後処理装置30では、受け取りロール31により1番目の用紙Sを受け取る。受け取りロール31を経た1番目の用紙Sは、エグジットロール34によって第1の進行方向S1に沿って搬送される。このとき、1番目の用紙Sはコンパイル用積載部35と第1イジェクトロール39aとの間、およびコンパイル用積載部35とパドル37との間をそれぞれ通過するように搬送される。
1番目の用紙Sの第1の進行方向S1の先端が、コンパイル用積載部35とパドル37との間を通過した後、パドル37が位置Paから下降し(図2の矢印U1方向に移動)位置Pbに配置される。このことによりパドル37は、1番目の用紙Sと接触する。そして、1番目の用紙Sは、図2に示すパドル37の矢印R方向の回転により、図2の第2の進行方向S2方向に押し込まれ、その1番目の用紙Sのエンドガイド35b側の端部がエンドガイド35bと接触する。その後、パドル37は上昇(図2の矢印U2方向に移動)し1番目の用紙S1から離れ、位置Paに再び配置される。
【0037】
さらに、1番目の用紙Sがコンパイル用積載部35に受け入れられ、エンドガイド35b側の端部がエンドガイド35bに到達した後に、第1タンパ38aが、位置Payからコンパイル用積載部35に接近(図3の矢印C2方向に移動)して、位置Paxに配置される。このとき、第2タンパ38bは、位置Pbxに配置されたままである。このことにより、第1タンパ38aが1番目の用紙Sを押し、1番目の用紙Sが第2タンパ38bに接触する。その後、第1タンパ38aがコンパイル用積載部35から離間(図3の矢印C1方向に移動)することで1番目の用紙Sから離れ、位置Payに再び配置される。
【0038】
この1番目の用紙Sに続く、画像形成部5によってトナー像が形成された2番目以降の用紙Sが、それぞれ順に後処理装置30に供給された際も、上述の動作と同様に、パドル37およびタンパ38によって、用紙Sの端部が揃えられる。すなわち、1枚目の用紙Sが揃えられた状態で2枚目の用紙Sが供給され、1枚目の用紙Sに対して2枚目の用紙Sが揃えられる。このことは、3枚目の以降に用紙Sが供給される場合についても同様である。このようにすることで、予め設定された枚数の用紙Sをコンパイル用積載部35に収容し、各用紙Sの端部を揃えて、用紙束Bを形成する。
そして、第1イジェクトロール39aは位置P1から下降(図2の矢印Q1方向に移動)し、位置P2に配置される。このことにより、揃えられた状態の用紙束Bは、第1イジェクトロール39aと第2イジェクトロール39bとによって挟まれて固定される。
【0039】
次に、移動機構44によって、針無綴じ機構150が綴じ処理を施す部分に移動(矢印A参照)した後、針無綴じ機構150はコンパイル用積載部35に積載された用紙束Bに綴じ処理を施す。
針無綴じ機構150によって綴じられた用紙束Bは、第1イジェクトロール39aが回転する(図2の矢印T1)ことにより、コンパイル用積載部35の底部35aに沿って上昇し(図2の第3の進行方向S3参照)、コンパイル用積載部35から排出される。そして、用紙束Bは開口部69を通って、積載部70へと排出される。
【0040】
<舌部522の向きと用紙束Bの搬送方向との関係>
さて、図1乃至図7を参照しながら、用紙束Bに形成された舌部522の向きと用紙束Bの搬送方向との関係について説明する。ここで、図6は、綴じ処理が施された用紙束Bを示す概略構成図である。より詳細には、図6(a)は綴じ処理が施された用紙束Bの斜視図であり、図6(b)は図6(a)の矢印VIb方向から見た綴じ部分51の断面図である。また、図7は、針無綴じ機構150の向きと綴じ部分51の向きとを示す説明図である。
【0041】
図5(c)に示すように、本実施の形態においては、舌部522の根元(一端部522a)が、舌部522の先端(他端部522b)に対して、用紙束Bが搬送される方向(第3の進行方向S3)における下流側となるように舌部522は配置されている。言い替えると、第3の進行方向S3に搬送される用紙束Bの搬送経路におけるある位置において、用紙束Bに形成された舌部522の根元が通過した後に、舌部522の先端が通過する向きに綴じ部分51が進む。さらに言い替えると、用紙束Bに形成された綴じ穴523を先頭として、この綴じ穴523に舌部522が続く向きに綴じ部分51が進む。
【0042】
本実施の形態においては、図3に示すように、針無綴じ機構150が移動機構44(図2参照)によって、コンパイル用積載部35に対する位置が変化した場合(矢印A参照)であっても、用紙束Bに対する綴じ部分51(図5(c)参照)の向きは変化しないように構成される。具体的には、図7に示すように、針無綴じ機構150が、底部35aの先端側端部Ta側に配置されている場合も、底部35aの側方端部Tb側に配置されている場合も、ブレード504と打ち抜き部材505との位置関係は変化しないように構成される。
図示の例においては、回転機構46が基部503(図4参照)を回転させることにより、針無綴じ機構150が移動した場合であっても、ブレード504に対して打ち抜き部材505が第3の進行方向S3における下流側に配置される。このことにより、打ち抜き部材505により形成されスリット521に挿入された舌部522の根元は、舌部522の先端に対して、用紙束Bが搬送される方向(第3の進行方向S3)における下流側となる。
【0043】
さらに、例えば本実施の形態においては、上述のようにコンパイル用積載部35に形成された用紙束Bは、第1イジェクトロール39aと第2イジェクトロール39bとに挟まれた状態で針無綴じ機構150により綴じ処理を施される。そして、この綴じられた用紙束Bは、第1イジェクトロール39aと第2イジェクトロール39bとによって挟まれた状態を維持したまま第1イジェクトロール39aが回転する(図2の矢印T1)ことにより、コンパイル用積載部35の底部35aに沿って上昇する(図2の第3の進行方向S3参照)。
【0044】
したがって、針無綴じ機構150により形成された舌部522の根元が、舌部522の先端に対して、用紙束Bが搬送される方向(第3の進行方向S3)における下流側となる位置関係を維持したまま、用紙束Bは第1イジェクトロール39aと第2イジェクトロール39bとによって搬送され、用紙束Bは開口部69を通り積載部70へと排出される(図1参照)。
なお、舌部522の根元が先端に対して第3の進行方向S3における下流側となるように用紙束Bの向きを維持する構成として、例えば、第3の進行方向S3に沿って用紙束Bを案内するガイド部材(図示せず)を設けてもよい。
【0045】
ここで、図6(b)に示すように、スリット521に挿入された舌部522は、折り曲げられかつスリット521に挿入されることにともない用紙束Bの面から突出する。言い替えると、綴じ部分51は用紙束Bにおいて膨れた部分となる。したがって、用紙束Bが搬送される際に、用紙束Bの面から突出する舌部522は、用紙束Bの搬送経路に沿って配置される他の部材等に引っかかり得る。
本実施の形態においては、上述のように舌部522の根元が先端よりも第3の進行方向S3における下流側となる。このことにより、例えば舌部522の長手方向が第3の進行方向S3と直交して配置される態様や、本実施の形態とは逆に舌部522の先端が根元よりも第3の進行方向S3における下流側に配置される態様と比較して、舌部522が他の部材に引っかかることが抑制される。
【0046】
より詳細に説明をすると、用紙束Bが搬送されることにともない綴じ部分51が通過する領域に、例えば図3に示す接合部Gaや固定用孔35a20のような段差が存在する場合がある。この場合に、舌部522の根元を先端よりも第3の進行方向S3における下流側とすることにより、舌部522が引っかかることが抑制される。したがって、舌部522が他の部材に引っかかり、搬送される用紙束Bの向きが変化する(乱れる)ことや、用紙束Bが積載部70へ排出されずに搬送経路の途中で停止すること(排出不良)が抑制される。また、舌部522が他の部材に引っかかることにより、舌部522がスリット521から抜け綴じ部分51がばらけることや、舌部522がちぎれる(損傷する)ことが抑制される。
【0047】
付言すると、本実施の形態においては、図5(c)に示すように舌部522の根元が先端よりも第3の進行方向S3における下流側であって、かつ舌部522の長手方向が第3の進行方向S3沿うように搬送される。このことにより、例えば舌部522の長手方向が第3の進行方向S3に対して斜めの場合に、舌部522が摩擦力等により抵抗力を受けることにともない、用紙束Bが第3の進行方向S3に対して交差する向きに力を受けることが抑制される。したがって、例えば用紙束Bが斜行することが抑制される。
【0048】
<綴じ処理を施された用紙束Bの他の態様>
次に、図8を参照しながら、綴じ処理を施された用紙束Bの他の態様について説明をする。ここで、図8は、綴じ処理を施された用紙束Bの他の態様を示す概略構成図である。
上述の実施の態様においては、用紙束Bの角部の1箇所に綴じ部分51を形成することを説明したが、これに限定されない。綴じ部分51は、用紙束Bにおいて複数設けられてもよい。用紙束Bを複数の綴じ部分51で綴じることにより用紙束Bがより確実に綴じられ、用紙束Bの搬送中に用紙束Bがばらけることが抑制される。
【0049】
ここで、移動機構44によってコンパイル用積載部35に対する針無綴じ機構150の位置を移動させることにより、用紙束Bにおける綴じ部分51の位置が変更される。また、移動機構44によって針無綴じ機構150の位置を移動させるとともに綴じ動作を繰り返すことにより、1つの用紙束Bに施される綴じ部分51の数が変更される。さらに、回転機構46によって針無綴じ機構150の基部503を回転させることにより、用紙束Bにおける綴じ部分51の角度が変更される。
【0050】
移動機構44及び回転機構46を組み合わせて駆動させることにより、例えば、図8(a)に示すように第3の進行方向S3に沿って2つの綴じ部分51が配置されてもよい。また、図8(b)に示すように、第3の進行方向S3に交差する方向に2つの綴じ部分51が配置されてもよい。さらに、用紙束Bに3つ以上の綴じ部分51が形成されてもよい。
図8(a)及び図8(b)それぞれに示される用紙束Bにおける各綴じ部分51は、舌部522の根元が先端よりも第3の進行方向S3における下流側に配置されている。なお、図示の例においては、各綴じ部分51はそれぞれの用紙束Bに対して同一の方向を向くように配置されている。このことにより、いずれの舌部522においても、用紙束Bの搬送に伴い舌部522が他の部材に引っかかることが抑制される。
【0051】
なお、上述の実施形態においては、第3の進行方向S3に沿って舌部522が配置される構成を説明したが、これに限定されない。舌部522の根元が先端よりも第3の進行方向S3における下流側に配置される構成であれば、例えば舌部522の長手方向が第3の進行方向S3に対して斜めとなる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…画像形成システム、2…画像形成装置、3…用紙処理装置、10…搬送装置、30…後処理装置、34…エグジットロール、35…コンパイル用積載部、37…パドル、38…タンパ、39…イジェクトロール、51…綴じ部分、69…開口部、70…積載部、80…制御部、150…針無綴じ機構、521…スリット、522…舌部、523…綴じ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束に切り込みを形成し、かつ当該用紙束の一部を予め定めた形状に切ることにより一方の端部が当該用紙束と連続する部分を残す舌部を当該用紙束に形成するとともに、当該舌部を折り当該舌部の他方の端部を当該切り込みに挿入し当該用紙束を綴じる綴じ部と、
前記綴じ部により綴じられた前記用紙束の前記舌部における前記一方の端部が前記他方の端部よりも搬送方向の下流側となる向きに当該用紙束を搬送する用紙束搬送部と
を有することを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
前記用紙束搬送部は、前記切り込みに挿入された前記舌部の長手方向に沿う方向に前記用紙束を搬送することを特徴とする請求項1記載の後処理装置。
【請求項3】
前記綴じ部は、前記用紙束における複数の箇所において当該用紙束を綴じることを特徴とする請求項1または2記載の後処理装置。
【請求項4】
前記綴じ部は、前記複数の箇所において形成されるそれぞれの前記舌部が同じ向きであることを特徴とする請求項3記載の後処理装置。
【請求項5】
用紙に画像を形成する画像形成機構と、
前記画像形成機構によって画像が形成された複数枚の用紙を束ねて用紙束を形成する用紙束形成機構と、
前記用紙束形成機構によって形成された用紙束に切り込みを形成し、かつ当該用紙束の一部を予め定めた形状に切ることにより一方の端部が当該用紙束と連続する部分を残す舌部を当該用紙束に形成するとともに、当該舌部を折り当該舌部の他方の端部を当該切り込みに挿入し当該用紙束を綴じる綴じ部と、
前記綴じ部により綴じられた前記用紙束の前記舌部における前記一方の端部が前記他方の端部よりも搬送方向の下流側となる向きに当該用紙束を搬送する用紙束搬送部と
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40043(P2013−40043A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179881(P2011−179881)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】