後方乱気流検出装置
【課題】仰角が高い場合も後方乱気流を検出できる後方乱気流検出装置を得る。
【解決手段】航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ光パルスを発射し、その大気からの反射光を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部1と、受信信号から空間断面のドップラ風速分布を算出し、ドップラ風速分布から空間断面の後方乱気流の位置を算出する信号処理部2と、空間断面の後方乱気流の位置を表示する表示部3とを備え、信号処理部2は、受信信号に基づき、処理単位毎に風速値を算出して空間断面のドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部21と、算出されたドップラ風速分布と、パラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理から、後方乱気流を検出する検出処理部22と、相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面の後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部23とを有する。
【解決手段】航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ光パルスを発射し、その大気からの反射光を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部1と、受信信号から空間断面のドップラ風速分布を算出し、ドップラ風速分布から空間断面の後方乱気流の位置を算出する信号処理部2と、空間断面の後方乱気流の位置を表示する表示部3とを備え、信号処理部2は、受信信号に基づき、処理単位毎に風速値を算出して空間断面のドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部21と、算出されたドップラ風速分布と、パラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理から、後方乱気流を検出する検出処理部22と、相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面の後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部23とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気中に対する電磁波の送受信によって、飛行する航空機の後方に発生する後方乱気流を検出し、検出した後方乱気流に関する情報を表示する後方乱気流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠隔点に存在する物体の位置を計測するものとして、レーダ装置が知られている。レーダ装置は、電磁波や音波などの波動を空間に放射し、対象となる物体で反射された波動を受信し、その信号を解析することにより、レーダ装置から物体までの距離や角度を計測する。
【0003】
レーダ装置の中でも、大気中に浮遊する微小な液体または固体の粒子(エアロゾル)を対象とし、反射された波動の位相回転量からエアロゾルの動く速度、すなわち風の速度を知ることができる気象レーダ装置が知られている。
【0004】
気象レーダ装置の中でも特に電磁波として光を用いるレーザーレーダ装置は、放射するビームの広がりが極めて小さく、高い角度分解能で物体を観測することが可能であり、風向風速レーダ装置として使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
国内で過去に生じた大型機による人的被害を伴う航空事故の約60%が乱気流を事故の要因としている。また、世界的にもニューヨークで乱気流が事故の一因とみられている墜落事故が起きるなど、乱気流の危険性は重大視されている。
【0006】
これらの乱気流を後方乱気流といい、この後方乱気流は、図8に示すように、航空機の飛行に伴い航空機の両翼端を中心として航空機の後方に発生する二組の渦状の乱気流である。上記のような事故抑止のために、航空管制当局では離発着にはある程度の時間間隔を空けるといった対処を行っているが、その時間間隔の定量的な値は明らかになっていない。このため、航空機の離着陸において、後方乱気流を適切に捉えることは、飛行計画の効率化や、後続機の安全を確保する上で重要である。これを解決するために、近年、上記のようなレーザーレーダ装置による風向風速の観測技術を用いて、航空機の後方乱気流を観測する例がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
例として、図8の観測環境におけるレーザーレーダ装置10の観測状況を図9に示す。従来のレーザーレーダ装置10は、図9に示すように、レーザーレーダ装置10が航空機の側面に向けられることにより、大気中における航空機の飛行方向(進行方向)に直交する断面(以下、これを空間断面と呼ぶ)を観測し、当該観測結果に基づいて航空機の通過によって生じた後方乱気流の位置及び強度を検出するようになされている。また、一定の距離分解能、及びクロスレンジ分解能(角度分解能)を持つレーザーレーダ装置10のビームをビーム走査範囲内において走査させ、処理単位(所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる単位)毎に、視線方向の風速を得ることができる。
【0008】
レーザーレーダ装置10によって後方乱気流を観測した場合の模擬図を図10に示す。この図10は、観測領域の空間断面における後方乱気流を示している。図10に示すように、レーザーレーダ装置10に対して向かい風を正とした場合、一様に存在する背景風に対して、渦上においては背景風に対して小さい風と大きい風が観測される。
【0009】
この観測模擬図を図11に示す。図11(1)に示すように、地上付近に航空機が飛行し、レーザーレーダ装置10の仰角が低い状況下において、レーザーレーダ装置10による観測結果よりドップラ風速の分布図を作成すると、航空機の通過時に発生する後方乱気流は、背景風を基準とすると正と負のマトリクス構造を持つ後方乱気流が観測される。
【0010】
また、等レンジビン上で風速と高度のプロットを作成すると、図11(2)のように、極大値と極小値を持つ距離分解能毎(等レンジビン)の風速プロットが作成できる。このように、従来では後方乱気流は正と負のマトリクス構造を持つ結果を利用して、レーザーレーダ装置10による乱気流観測において得られるドップラ風速の分布図から、正と負のマトリクスで構築されるテンプレートを用いたテンプレートマッチング処理によって、後方乱気流渦の検出が行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−172779号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】深尾昌一郎、浜津享助、「気象と大気のレーダーリモートセンシング」、京都大学学術出版会、2005年3月30日発行
【非特許文献2】小松原健史、加来信之、「出発航空機から発する後方乱気流の観測」電子航法研究所研究発表会、第5回、平成17年(2005年)6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。すなわち、航空機の飛行高度が高い場合、その後方乱気流を観測しようとすると、レーザーレーダ装置10の仰角を上げる必要がある。その際に得られるドップラ風速の分布図は図12のようになる。仰角が低い図11の場合とは違い、仰角が高い図12の場合は渦がレンジをまたぎやすくなる。またがない場合には、従来の正と負で構成されるマトリクスのテンプレートを用いる。渦がレンジをまたいでレンジ内に両渦が観測された場合は、レーザーレーダ装置10の距離分解能の制約により、渦と渦の間付近を通るレーザービームでは両渦の風速を観測するため、顕著な正の渦風速を得ることができるが、レンジからはみ出した渦領域はレンジに対してその領域は小さいため、領域内の背景風の風速の方が支配的となり、得られるデータは渦の風速ではなく、背景風の値が得られる。このため、従来の正と負で構成されるマトリクスのテンプレートを用いたテンプレートマッチングでは渦の検出は不可能となる。
【0014】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる後方乱気流検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る後方乱気流検出装置は、航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部と、前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部と、前記信号処理部により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部とを備え、前記信号処理部は、前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部と、前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布と、後方乱気流を模擬するためのパラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部と、前記相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部とを有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る後方乱気流検出装置によれば、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の電磁波送受信部から発射される光パルス(ビーム)の仰角に応じてテンプレートを変化させる様子を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置により使用される正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレート例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置により使用される正とゼロ(0)のマトリクス構造を持ち、かつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレート例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置により使用される相互相関型テンプレート例を示す図である。
【図8】航空機が発生する後方乱気流とそれを観測するレーザーレーダ装置を示す図である。
【図9】レーザーレーダ装置を用いた後方乱気流の観測例を示す図である。
【図10】観測領域の空間断面における後方乱気流の概念を示す図である。
【図11】レーザーレーダ装置を用いた、仰角が低い場合の後方乱気流の観測例を示す図である。
【図12】レーザーレーダ装置を用いた、仰角が高い場合の後方乱気流の観測例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の後方乱気流検出装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0019】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置について図1及び図2を参照しながら説明する。この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置は、ドップラ風速分布モデルを使用して後方乱気流を検出するものである。図1は、この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の構成を示すブロック図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0020】
図1において、この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置は、大気中に対する電磁波の送受信によって、飛行する航空機の後方に発生する後方乱気流を検出し、検出した後方乱気流に関する情報を表示するもので、航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部1と、この電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部2と、この信号処理部2により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部3とが設けられている。
【0021】
また、信号処理部2は、電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部21と、このドップラ風速分布算出部21により算出されたドップラ風速分布と、後方乱気流を模擬するためのパラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部22と、相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部23とが設けられている。
【0022】
図2は、この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。
【0023】
図2において、検出処理部22は、後方乱気流を模擬するための航空機に関するパラメータを使用して後方乱気流モデルを含んだドップラ風速分布モデルを算出するドップラ風速分布モデル算出部101と、このドップラ風速分布モデル算出部101により算出したドップラ風速分布モデルとドップラ風速分布算出部21により算出されたドップラ風速分布との相互相関処理により相関値を求める相互相関処理部102と、この相互相関処理部102により求められた相関値のうち最も高い相関値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する相関値比較部103と、最も高い相関値が閾値を超えていない場合は、パラメータを変更してドップラ風速分布モデル算出部101へ出力するパラメータ出力部104とが設けられている。
【0024】
つぎに、この実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0025】
まず、電磁波送受信部1は、図8及び図9に示したように、航空機の飛行方向(進行方向)に直交する方向に大気中へ電磁波である光パルスを所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射光を受信し、当該受信した反射光を一空間断面の受信信号として信号処理部2へ送出する。この電磁波送受信部1が受信した反射光には、図10に示すように、反射光の反射位置における風速に応じてドップラ効果が生じている。
【0026】
次に、信号処理部2は、電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する。この信号処理部2の詳細な処理については以下に説明する。
【0027】
信号処理部2内のドップラ風速分布算出部21は、電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に、風速値を算出する。それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出する。
【0028】
その後、信号処理部2内の検出処理部22は、観測により得られたドップラ風速分布と、パラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する。この検出処理部22の詳細な処理については以下に説明する。
【0029】
検出処理部22内のドップラ風速分布モデル算出部101は、パラメータ出力部104から、観測を行う航空機の種類(翼の幅)、当該後方乱気流検出装置前を通過する航空機の高度とその速度、大気密度等のパラメータを取得し、このパラメータを使用して処理単位毎にモデル値を求めて、渦モデル(後方乱気流モデル)を含んだドップラ風速分布モデルを算出する。航空機の翼の幅は後方乱気流渦の大きさを与え、航空機の高度は渦が発生すると想定される場所(高度)の参考値となる。航空機の速度や大気密度は渦の強度を算出させることができる。このドップラ風速分布モデルを作成できるものならば上記のパラメータ以外を使用してもよい。
【0030】
次に、検出処理部22内の相互相関処理部102は、算出したドップラ風速分布モデルと観測により得られたドップラ風速分布との相互相関処理を行う。その際、処理単位毎に、相互相関処理を行い、分布の処理単位毎に相関係数(相関値)を求め、その結果を相関値比較部103へ送出する。
【0031】
次に、検出処理部22内の相関値比較部103は、得られた最も高い相関係数(相関値)と閾値との比較を行い、最も高い相関係数が閾値を超えていない場合は、後方乱気流が検出できない場合として、パラメータを変更すべくパラメータ出力部104へ移行する。パラメータを種々変えても、最も高い相関係数が閾値を超えていない場合は、その分布上に後方乱気流がないと判断する。最も高い相関係数が閾値を超えている場合(両者が等しい場合を含む)は、後方乱気流を検出できた場合として、乱気流位置算出部23へ移行する。
【0032】
検出処理部22内のパラメータ出力部104は、当初は予め認識している、観測を行う航空機の種類(翼の幅)、当該後方乱気流検出装置前を通過する航空機の高度とその速度、大気密度等のパラメータをドップラ風速分布モデル算出部101に出力するが、最も高い相関係数が閾値を超えていない場合は、観測を行う航空機の種類(翼の幅)、当該後方乱気流検出装置前を通過する航空機の高度とその速度、大気密度等のパラメータのいずれか、あるいはいくつかを変更してドップラ風速分布モデル算出部101に出力する。このドップラ風速分布モデル算出部101は、変更されたパラメータに基づき新しいドップラ風速分布モデルを作成する。
【0033】
信号処理部2内の乱気流位置算出部23は、最も高い相関係数が閾値を超えている場合は、その結果から後方乱気流の渦構造の場所を算出し、さらに渦の移動予測を行う。相関位置(処理単位の位置)から、実空間での後方乱気流の位置を算出する。乱気流位置算出部23は、相関係数が高い処理単位の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する。後方乱気流の位置は、2つの渦のそれぞれの中心や、2つの渦の間の中心などである。
【0034】
そして、表示部3は、信号処理部2内の乱気流位置算出部23により算出された、実空間での後方乱気流の位置を表示する。空間断面における後方乱気流の位置をディスプレイに表示する。
【0035】
以上のように、実施の形態1によれば、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる。
【0036】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置について図3から図7までを参照しながら説明する。この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置は、テンプレートを使用して後方乱気流を検出するものである。図3は、この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。なお、この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の全体構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0037】
図3において、検出処理部22は、空間断面におけるドップラ風速分布に後方乱気流の検出範囲である所定のフレームを設定するフレーム設定部201と、電磁波送受信部1から発射されるビームの仰角に応じた複数種類のテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を行うテンプレートマッチング部202と、テンプレートマッチング処理により得られた特徴量のうち、所定の特徴量を後方乱気流候補として選出する特徴量算出部203と、背景風の風速値を算出し、前記後方乱気流候補の風速値と前記背景風の風速値の差分から背景風比較値を算出する背景風比較値算出部204と、この背景風比較値算出部204により算出された背景風比較値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する背景風比較値比較部205と、背景風比較値が閾値を超えていない場合は、前記テンプレートを変更してテンプレートマッチング部202へ出力するテンプレート出力部206とが設けられている。
【0038】
つぎに、この実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0039】
まず、検出処理部22内のフレーム設定部201は、空間断面におけるドップラ風速分布に後方乱気流の検出範囲である、航空機の翼の幅で決まるフレーム(ウィンドウとも言う)幅を設定する。後述するテンプレートマッチング部202において、その処理を行わせる範囲を決定するためである。つまり、航空機が通過した場所または後方乱気流があると想定される領域に任意の大きさのフレームを設定する。このフレームは、テンプレートの大きさを示す。なお、このフレーム設定部201をなくし、空間断面におけるドップラ風速分布全体にテンプレートマッチング処理を行わせてもよい。
【0040】
次に、検出処理部22内のテンプレートマッチング部202は、テンプレート出力部206から取得した仰角に応じたテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を行う。その際、テンプレートマッチング処理では、航空機の飛行高度によってテンプレートを図4のように変更する。図4に示すように、後方乱気流検出装置10Aの電磁波送受信部1から発射される光パルス(ビーム)の仰角や、後方乱気流の渦構造によってテンプレートを変化させる。例えば、仰角が高い場合には、テンプレートAやテンプレートBを使用し、仰角が低い場合には、テンプレートCやテンプレートDを使用する。
【0041】
次に、検出処理部22内の特徴量算出部203は、設定された航空機の翼の幅で決まるフレームをドップラ風速分布上で任意に動かし、テンプレートマッチング(相互相関)処理することにより、空間断面内における後方乱気流が存在する位置が強調され、すなわち、処理単位における後方乱気流が存在する位置に対応する積分値が積み上がり、実際に後方乱気流が存在する場合には、そのフレーム部分には渦があるものとして後方乱気流を検出することができる。この特徴量算出部203は、処理単位毎に得られた積分値(特徴量)の中から最も大きい特徴量、または所定の相関値(特徴量を算出するための閾値)を超えた特徴量を後方乱気流候補(渦候補)として選出する。フレームサイズは任意で、上記以外の手法を用いてもよい。
【0042】
その後、検出処理部22内の背景風比較値算出部204は、まず、処理単位毎に背景風の風速値を算出する。背景風の風速値の算出手法については、各レンジビンの風速の平均や、その他過去の観測によって得られた渦構造のないドップラ風速分布、または風速の高度分布モデルといった背景風の風速値を得られるものならばどのような手法でもよい。上述したように、テンプレートマッチング部202によってテンプレートマッチング処理を行って、特徴量算出部203により選出された特徴量を後方乱気流候補(渦候補)とする。
【0043】
背景風比較値算出部204は、次に、その後方乱気流候補(渦候補)と背景風の風速値から、次の式(1)を用いて処理単位毎に背景風比較値(m/s)を算出する。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、Vcompは背景風比較値、Vobsは観測された後方乱気流候補(渦候補)の風速値、Vbgは背景風の風速値をそれぞれ表す。
【0046】
この背景風比較値の結果より誤検出を除去し、高精度に渦構造を抽出する。なお、背景風比較値の評価の詳細については後述する。
【0047】
ここで、テンプレート出力部206から出力されるテンプレートについて説明する。テンプレート例として、フレーム高度が低い、すなわち当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が低い場合は、図5(1)に示すような、正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレートを用いる。図5(2)及び(3)は、上記のマトリクス型テンプレートにおいて、後方乱気流の2つの渦が隣り合っている場合で、渦風速変化が高い領域に大きい重みがかかり、渦構造の端、つまり正と負の境界において渦風速変化が小さいため小さい重みがかかるような重み関数をかけている。さらに、図5(4)は、渦構造が離れている場合を想定したもので、正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレートであるが、2つに分かれているマトリクス型テンプレートである。
【0048】
図5のようなマトリクス型テンプレートに対して、フレーム高度が高い、すなわち当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が高い場合には、図6(1)−(4)に示すような、正とゼロ(0)のマトリクス構造を持ち、かつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートを用いる。この所定の傾きは、図6に示す傾きだけでなく、種々の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートを用意する。また、正と負のマトリクス構造を持ち、かつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートを用いる。このテンプレートは、図6(1)−(4)に示すゼロ(0)の位置に負を割り当てたものである。本実施の形態2は、当該後方乱気流検出装置10Aの仰角によって、図5及び図6に示すテンプレートを変えて使用することを特徴としている。
【0049】
テンプレート出力部206から出力されるテンプレートで、当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が高い場合は、図6(1)のように、正の部分のみを特徴量として抽出を行う。また、観測状況、渦の構造によっては2つの正の部分の位置関係は変化することも考慮すべきであるため、図6(2)のように、2つの正の部分を任意にずらした傾斜マトリクス型テンプレートも用意する。さらに、図6(3)及び(4)のように、抽出精度向上のため、渦構造の中心部分に大きい重みがかかるような重み関数をかけた、傾斜マトリクス型を用意する。これにより、観測されたデータの渦構造の不要部分による影響を抑止できる。
【0050】
テンプレート出力部206は、図6のような汎用型である、傾斜マトリクス型テンプレートの他にも、仰角に応じた過去の観測例または観測される渦のモデルをテンプレートとして出力することも可能である。図7(2)のように得られる等レンジビンプロットの過去の渦観測または渦モデルを用意し、観測結果に対して等レンジビンプロットの相互相関をとらせることによって、渦を検出することも可能である。また、渦を観測している図7(2)のような等レンジビンプロットの渦部分のみを切り出し、それを図6(1)−(4)の正の部分にテンプレートとして使用し、相互相関と同様な効果を得ることも可能である。その際、上述した重みをかけてもよい。図7(3)のような相互相関型テンプレートは、図6に示す傾斜マトリクス型テンプレートだけでなく、図5に示すマトリクス型テンプレートにも適用することが可能である。
【0051】
背景風比較値算出部204は、上述したように、式(1)を用いて背景風比較値を算出する。図5に示すマトリクス型テンプレートの正領域/負領域や、図6に示す傾斜マトリクス型テンプレートの正領域においては、背景風比較値が大きければ大きい程有意となる。後述する背景風比較値比較部205は、この背景風比較値が閾値を超えている、または最も大きい場合は、それを後方乱気流の渦として検出する。ただし、当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が高い場合には、すなわち図6及び図7の背景風比較領域においては、背景風と同等の値が得られていることが後方乱気流の条件であるため、背景風比較値が0に近いほど後方乱気流であると判断する。
【0052】
背景風比較値比較部205は、算出された背景風比較値(m/s)と所定の閾値(m/s)を比較する。背景風比較値が閾値を超えていない場合は、後方乱気流が検出できない場合として、テンプレートを変更すべくテンプレート出力部206へ移行する。テンプレートを種々変えても、背景風比較値が閾値を超えていない場合は、その空間断面上に後方乱気流がないと判断する。背景風比較値が閾値を超えている場合(両者が等しい場合を含む)は、後方乱気流を検出できた場合として、乱気流位置算出部23へ移行する。
【0053】
検出処理部22内のテンプレート出力部206は、当初は予め認識している、電磁波送受信部1から発射される光パルス(ビーム)の仰角に応じたテンプレートをテンプレートマッチング部202へ出力するが、背景風比較値が閾値を超えていない場合は、当初と異なる仰角に対応した異なるテンプレートや、観測した後方乱気流の渦構造によって異なるテンプレートに変更してテンプレートマッチング部202へ出力する。このテンプレートマッチング部202は、変更されたテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を再び行う。
【0054】
なお、背景風比較値が閾値を超えていない場合おいては、フレーム設定部201によりフレームを広げたりして、フレームを変更して再処理を行ってもよい。
【0055】
乱気流位置算出部23は、背景風比較値が閾値を超えている場合は、その結果から後方乱気流の渦構造の場所を算出し、さらに渦の移動予測を行う。当該背景風比較値の処理単位の位置から、実空間での後方乱気流の位置を算出する。乱気流位置算出部23は、当該背景風比較値に対応する処理単位の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する。後方乱気流の位置は、2つの渦のそれぞれの中心や、2つの渦の間の中心などである。
【0056】
そして、表示部3は、信号処理部2内の乱気流位置算出部23により算出された、実空間での後方乱気流の位置を表示する。空間断面における後方乱気流の位置をディスプレイに表示する。
【0057】
以上のように、実施の形態2によれば、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電磁波送受信部、2 信号処理部、3 表示部、10A 後方乱気流検出装置、21 ドップラ風速分布算出部、22 検出処理部、23 乱気流位置算出部、101 ドップラ風速分布モデル算出部、102 相互相関処理部、103 相関値比較部、104 パラメータ出力部、201 フレーム設定部、202 テンプレートマッチング部、203 特徴量算出部、204 背景風比較値算出部、205 背景風比較値比較部、206 テンプレート出力部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気中に対する電磁波の送受信によって、飛行する航空機の後方に発生する後方乱気流を検出し、検出した後方乱気流に関する情報を表示する後方乱気流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠隔点に存在する物体の位置を計測するものとして、レーダ装置が知られている。レーダ装置は、電磁波や音波などの波動を空間に放射し、対象となる物体で反射された波動を受信し、その信号を解析することにより、レーダ装置から物体までの距離や角度を計測する。
【0003】
レーダ装置の中でも、大気中に浮遊する微小な液体または固体の粒子(エアロゾル)を対象とし、反射された波動の位相回転量からエアロゾルの動く速度、すなわち風の速度を知ることができる気象レーダ装置が知られている。
【0004】
気象レーダ装置の中でも特に電磁波として光を用いるレーザーレーダ装置は、放射するビームの広がりが極めて小さく、高い角度分解能で物体を観測することが可能であり、風向風速レーダ装置として使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
国内で過去に生じた大型機による人的被害を伴う航空事故の約60%が乱気流を事故の要因としている。また、世界的にもニューヨークで乱気流が事故の一因とみられている墜落事故が起きるなど、乱気流の危険性は重大視されている。
【0006】
これらの乱気流を後方乱気流といい、この後方乱気流は、図8に示すように、航空機の飛行に伴い航空機の両翼端を中心として航空機の後方に発生する二組の渦状の乱気流である。上記のような事故抑止のために、航空管制当局では離発着にはある程度の時間間隔を空けるといった対処を行っているが、その時間間隔の定量的な値は明らかになっていない。このため、航空機の離着陸において、後方乱気流を適切に捉えることは、飛行計画の効率化や、後続機の安全を確保する上で重要である。これを解決するために、近年、上記のようなレーザーレーダ装置による風向風速の観測技術を用いて、航空機の後方乱気流を観測する例がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
例として、図8の観測環境におけるレーザーレーダ装置10の観測状況を図9に示す。従来のレーザーレーダ装置10は、図9に示すように、レーザーレーダ装置10が航空機の側面に向けられることにより、大気中における航空機の飛行方向(進行方向)に直交する断面(以下、これを空間断面と呼ぶ)を観測し、当該観測結果に基づいて航空機の通過によって生じた後方乱気流の位置及び強度を検出するようになされている。また、一定の距離分解能、及びクロスレンジ分解能(角度分解能)を持つレーザーレーダ装置10のビームをビーム走査範囲内において走査させ、処理単位(所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる単位)毎に、視線方向の風速を得ることができる。
【0008】
レーザーレーダ装置10によって後方乱気流を観測した場合の模擬図を図10に示す。この図10は、観測領域の空間断面における後方乱気流を示している。図10に示すように、レーザーレーダ装置10に対して向かい風を正とした場合、一様に存在する背景風に対して、渦上においては背景風に対して小さい風と大きい風が観測される。
【0009】
この観測模擬図を図11に示す。図11(1)に示すように、地上付近に航空機が飛行し、レーザーレーダ装置10の仰角が低い状況下において、レーザーレーダ装置10による観測結果よりドップラ風速の分布図を作成すると、航空機の通過時に発生する後方乱気流は、背景風を基準とすると正と負のマトリクス構造を持つ後方乱気流が観測される。
【0010】
また、等レンジビン上で風速と高度のプロットを作成すると、図11(2)のように、極大値と極小値を持つ距離分解能毎(等レンジビン)の風速プロットが作成できる。このように、従来では後方乱気流は正と負のマトリクス構造を持つ結果を利用して、レーザーレーダ装置10による乱気流観測において得られるドップラ風速の分布図から、正と負のマトリクスで構築されるテンプレートを用いたテンプレートマッチング処理によって、後方乱気流渦の検出が行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−172779号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】深尾昌一郎、浜津享助、「気象と大気のレーダーリモートセンシング」、京都大学学術出版会、2005年3月30日発行
【非特許文献2】小松原健史、加来信之、「出発航空機から発する後方乱気流の観測」電子航法研究所研究発表会、第5回、平成17年(2005年)6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。すなわち、航空機の飛行高度が高い場合、その後方乱気流を観測しようとすると、レーザーレーダ装置10の仰角を上げる必要がある。その際に得られるドップラ風速の分布図は図12のようになる。仰角が低い図11の場合とは違い、仰角が高い図12の場合は渦がレンジをまたぎやすくなる。またがない場合には、従来の正と負で構成されるマトリクスのテンプレートを用いる。渦がレンジをまたいでレンジ内に両渦が観測された場合は、レーザーレーダ装置10の距離分解能の制約により、渦と渦の間付近を通るレーザービームでは両渦の風速を観測するため、顕著な正の渦風速を得ることができるが、レンジからはみ出した渦領域はレンジに対してその領域は小さいため、領域内の背景風の風速の方が支配的となり、得られるデータは渦の風速ではなく、背景風の値が得られる。このため、従来の正と負で構成されるマトリクスのテンプレートを用いたテンプレートマッチングでは渦の検出は不可能となる。
【0014】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる後方乱気流検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る後方乱気流検出装置は、航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部と、前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部と、前記信号処理部により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部とを備え、前記信号処理部は、前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部と、前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布と、後方乱気流を模擬するためのパラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部と、前記相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部とを有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る後方乱気流検出装置によれば、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の電磁波送受信部から発射される光パルス(ビーム)の仰角に応じてテンプレートを変化させる様子を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置により使用される正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレート例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置により使用される正とゼロ(0)のマトリクス構造を持ち、かつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレート例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置により使用される相互相関型テンプレート例を示す図である。
【図8】航空機が発生する後方乱気流とそれを観測するレーザーレーダ装置を示す図である。
【図9】レーザーレーダ装置を用いた後方乱気流の観測例を示す図である。
【図10】観測領域の空間断面における後方乱気流の概念を示す図である。
【図11】レーザーレーダ装置を用いた、仰角が低い場合の後方乱気流の観測例を示す図である。
【図12】レーザーレーダ装置を用いた、仰角が高い場合の後方乱気流の観測例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の後方乱気流検出装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0019】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置について図1及び図2を参照しながら説明する。この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置は、ドップラ風速分布モデルを使用して後方乱気流を検出するものである。図1は、この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の構成を示すブロック図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0020】
図1において、この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置は、大気中に対する電磁波の送受信によって、飛行する航空機の後方に発生する後方乱気流を検出し、検出した後方乱気流に関する情報を表示するもので、航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部1と、この電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部2と、この信号処理部2により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部3とが設けられている。
【0021】
また、信号処理部2は、電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部21と、このドップラ風速分布算出部21により算出されたドップラ風速分布と、後方乱気流を模擬するためのパラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部22と、相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部23とが設けられている。
【0022】
図2は、この発明の実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。
【0023】
図2において、検出処理部22は、後方乱気流を模擬するための航空機に関するパラメータを使用して後方乱気流モデルを含んだドップラ風速分布モデルを算出するドップラ風速分布モデル算出部101と、このドップラ風速分布モデル算出部101により算出したドップラ風速分布モデルとドップラ風速分布算出部21により算出されたドップラ風速分布との相互相関処理により相関値を求める相互相関処理部102と、この相互相関処理部102により求められた相関値のうち最も高い相関値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する相関値比較部103と、最も高い相関値が閾値を超えていない場合は、パラメータを変更してドップラ風速分布モデル算出部101へ出力するパラメータ出力部104とが設けられている。
【0024】
つぎに、この実施の形態1に係る後方乱気流検出装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0025】
まず、電磁波送受信部1は、図8及び図9に示したように、航空機の飛行方向(進行方向)に直交する方向に大気中へ電磁波である光パルスを所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射光を受信し、当該受信した反射光を一空間断面の受信信号として信号処理部2へ送出する。この電磁波送受信部1が受信した反射光には、図10に示すように、反射光の反射位置における風速に応じてドップラ効果が生じている。
【0026】
次に、信号処理部2は、電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する。この信号処理部2の詳細な処理については以下に説明する。
【0027】
信号処理部2内のドップラ風速分布算出部21は、電磁波送受信部1からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に、風速値を算出する。それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出する。
【0028】
その後、信号処理部2内の検出処理部22は、観測により得られたドップラ風速分布と、パラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する。この検出処理部22の詳細な処理については以下に説明する。
【0029】
検出処理部22内のドップラ風速分布モデル算出部101は、パラメータ出力部104から、観測を行う航空機の種類(翼の幅)、当該後方乱気流検出装置前を通過する航空機の高度とその速度、大気密度等のパラメータを取得し、このパラメータを使用して処理単位毎にモデル値を求めて、渦モデル(後方乱気流モデル)を含んだドップラ風速分布モデルを算出する。航空機の翼の幅は後方乱気流渦の大きさを与え、航空機の高度は渦が発生すると想定される場所(高度)の参考値となる。航空機の速度や大気密度は渦の強度を算出させることができる。このドップラ風速分布モデルを作成できるものならば上記のパラメータ以外を使用してもよい。
【0030】
次に、検出処理部22内の相互相関処理部102は、算出したドップラ風速分布モデルと観測により得られたドップラ風速分布との相互相関処理を行う。その際、処理単位毎に、相互相関処理を行い、分布の処理単位毎に相関係数(相関値)を求め、その結果を相関値比較部103へ送出する。
【0031】
次に、検出処理部22内の相関値比較部103は、得られた最も高い相関係数(相関値)と閾値との比較を行い、最も高い相関係数が閾値を超えていない場合は、後方乱気流が検出できない場合として、パラメータを変更すべくパラメータ出力部104へ移行する。パラメータを種々変えても、最も高い相関係数が閾値を超えていない場合は、その分布上に後方乱気流がないと判断する。最も高い相関係数が閾値を超えている場合(両者が等しい場合を含む)は、後方乱気流を検出できた場合として、乱気流位置算出部23へ移行する。
【0032】
検出処理部22内のパラメータ出力部104は、当初は予め認識している、観測を行う航空機の種類(翼の幅)、当該後方乱気流検出装置前を通過する航空機の高度とその速度、大気密度等のパラメータをドップラ風速分布モデル算出部101に出力するが、最も高い相関係数が閾値を超えていない場合は、観測を行う航空機の種類(翼の幅)、当該後方乱気流検出装置前を通過する航空機の高度とその速度、大気密度等のパラメータのいずれか、あるいはいくつかを変更してドップラ風速分布モデル算出部101に出力する。このドップラ風速分布モデル算出部101は、変更されたパラメータに基づき新しいドップラ風速分布モデルを作成する。
【0033】
信号処理部2内の乱気流位置算出部23は、最も高い相関係数が閾値を超えている場合は、その結果から後方乱気流の渦構造の場所を算出し、さらに渦の移動予測を行う。相関位置(処理単位の位置)から、実空間での後方乱気流の位置を算出する。乱気流位置算出部23は、相関係数が高い処理単位の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する。後方乱気流の位置は、2つの渦のそれぞれの中心や、2つの渦の間の中心などである。
【0034】
そして、表示部3は、信号処理部2内の乱気流位置算出部23により算出された、実空間での後方乱気流の位置を表示する。空間断面における後方乱気流の位置をディスプレイに表示する。
【0035】
以上のように、実施の形態1によれば、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる。
【0036】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置について図3から図7までを参照しながら説明する。この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置は、テンプレートを使用して後方乱気流を検出するものである。図3は、この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の検出処理部の構成を示すブロック図である。なお、この発明の実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の全体構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0037】
図3において、検出処理部22は、空間断面におけるドップラ風速分布に後方乱気流の検出範囲である所定のフレームを設定するフレーム設定部201と、電磁波送受信部1から発射されるビームの仰角に応じた複数種類のテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を行うテンプレートマッチング部202と、テンプレートマッチング処理により得られた特徴量のうち、所定の特徴量を後方乱気流候補として選出する特徴量算出部203と、背景風の風速値を算出し、前記後方乱気流候補の風速値と前記背景風の風速値の差分から背景風比較値を算出する背景風比較値算出部204と、この背景風比較値算出部204により算出された背景風比較値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する背景風比較値比較部205と、背景風比較値が閾値を超えていない場合は、前記テンプレートを変更してテンプレートマッチング部202へ出力するテンプレート出力部206とが設けられている。
【0038】
つぎに、この実施の形態2に係る後方乱気流検出装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0039】
まず、検出処理部22内のフレーム設定部201は、空間断面におけるドップラ風速分布に後方乱気流の検出範囲である、航空機の翼の幅で決まるフレーム(ウィンドウとも言う)幅を設定する。後述するテンプレートマッチング部202において、その処理を行わせる範囲を決定するためである。つまり、航空機が通過した場所または後方乱気流があると想定される領域に任意の大きさのフレームを設定する。このフレームは、テンプレートの大きさを示す。なお、このフレーム設定部201をなくし、空間断面におけるドップラ風速分布全体にテンプレートマッチング処理を行わせてもよい。
【0040】
次に、検出処理部22内のテンプレートマッチング部202は、テンプレート出力部206から取得した仰角に応じたテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を行う。その際、テンプレートマッチング処理では、航空機の飛行高度によってテンプレートを図4のように変更する。図4に示すように、後方乱気流検出装置10Aの電磁波送受信部1から発射される光パルス(ビーム)の仰角や、後方乱気流の渦構造によってテンプレートを変化させる。例えば、仰角が高い場合には、テンプレートAやテンプレートBを使用し、仰角が低い場合には、テンプレートCやテンプレートDを使用する。
【0041】
次に、検出処理部22内の特徴量算出部203は、設定された航空機の翼の幅で決まるフレームをドップラ風速分布上で任意に動かし、テンプレートマッチング(相互相関)処理することにより、空間断面内における後方乱気流が存在する位置が強調され、すなわち、処理単位における後方乱気流が存在する位置に対応する積分値が積み上がり、実際に後方乱気流が存在する場合には、そのフレーム部分には渦があるものとして後方乱気流を検出することができる。この特徴量算出部203は、処理単位毎に得られた積分値(特徴量)の中から最も大きい特徴量、または所定の相関値(特徴量を算出するための閾値)を超えた特徴量を後方乱気流候補(渦候補)として選出する。フレームサイズは任意で、上記以外の手法を用いてもよい。
【0042】
その後、検出処理部22内の背景風比較値算出部204は、まず、処理単位毎に背景風の風速値を算出する。背景風の風速値の算出手法については、各レンジビンの風速の平均や、その他過去の観測によって得られた渦構造のないドップラ風速分布、または風速の高度分布モデルといった背景風の風速値を得られるものならばどのような手法でもよい。上述したように、テンプレートマッチング部202によってテンプレートマッチング処理を行って、特徴量算出部203により選出された特徴量を後方乱気流候補(渦候補)とする。
【0043】
背景風比較値算出部204は、次に、その後方乱気流候補(渦候補)と背景風の風速値から、次の式(1)を用いて処理単位毎に背景風比較値(m/s)を算出する。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、Vcompは背景風比較値、Vobsは観測された後方乱気流候補(渦候補)の風速値、Vbgは背景風の風速値をそれぞれ表す。
【0046】
この背景風比較値の結果より誤検出を除去し、高精度に渦構造を抽出する。なお、背景風比較値の評価の詳細については後述する。
【0047】
ここで、テンプレート出力部206から出力されるテンプレートについて説明する。テンプレート例として、フレーム高度が低い、すなわち当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が低い場合は、図5(1)に示すような、正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレートを用いる。図5(2)及び(3)は、上記のマトリクス型テンプレートにおいて、後方乱気流の2つの渦が隣り合っている場合で、渦風速変化が高い領域に大きい重みがかかり、渦構造の端、つまり正と負の境界において渦風速変化が小さいため小さい重みがかかるような重み関数をかけている。さらに、図5(4)は、渦構造が離れている場合を想定したもので、正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレートであるが、2つに分かれているマトリクス型テンプレートである。
【0048】
図5のようなマトリクス型テンプレートに対して、フレーム高度が高い、すなわち当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が高い場合には、図6(1)−(4)に示すような、正とゼロ(0)のマトリクス構造を持ち、かつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートを用いる。この所定の傾きは、図6に示す傾きだけでなく、種々の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートを用意する。また、正と負のマトリクス構造を持ち、かつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートを用いる。このテンプレートは、図6(1)−(4)に示すゼロ(0)の位置に負を割り当てたものである。本実施の形態2は、当該後方乱気流検出装置10Aの仰角によって、図5及び図6に示すテンプレートを変えて使用することを特徴としている。
【0049】
テンプレート出力部206から出力されるテンプレートで、当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が高い場合は、図6(1)のように、正の部分のみを特徴量として抽出を行う。また、観測状況、渦の構造によっては2つの正の部分の位置関係は変化することも考慮すべきであるため、図6(2)のように、2つの正の部分を任意にずらした傾斜マトリクス型テンプレートも用意する。さらに、図6(3)及び(4)のように、抽出精度向上のため、渦構造の中心部分に大きい重みがかかるような重み関数をかけた、傾斜マトリクス型を用意する。これにより、観測されたデータの渦構造の不要部分による影響を抑止できる。
【0050】
テンプレート出力部206は、図6のような汎用型である、傾斜マトリクス型テンプレートの他にも、仰角に応じた過去の観測例または観測される渦のモデルをテンプレートとして出力することも可能である。図7(2)のように得られる等レンジビンプロットの過去の渦観測または渦モデルを用意し、観測結果に対して等レンジビンプロットの相互相関をとらせることによって、渦を検出することも可能である。また、渦を観測している図7(2)のような等レンジビンプロットの渦部分のみを切り出し、それを図6(1)−(4)の正の部分にテンプレートとして使用し、相互相関と同様な効果を得ることも可能である。その際、上述した重みをかけてもよい。図7(3)のような相互相関型テンプレートは、図6に示す傾斜マトリクス型テンプレートだけでなく、図5に示すマトリクス型テンプレートにも適用することが可能である。
【0051】
背景風比較値算出部204は、上述したように、式(1)を用いて背景風比較値を算出する。図5に示すマトリクス型テンプレートの正領域/負領域や、図6に示す傾斜マトリクス型テンプレートの正領域においては、背景風比較値が大きければ大きい程有意となる。後述する背景風比較値比較部205は、この背景風比較値が閾値を超えている、または最も大きい場合は、それを後方乱気流の渦として検出する。ただし、当該後方乱気流検出装置10Aの仰角が高い場合には、すなわち図6及び図7の背景風比較領域においては、背景風と同等の値が得られていることが後方乱気流の条件であるため、背景風比較値が0に近いほど後方乱気流であると判断する。
【0052】
背景風比較値比較部205は、算出された背景風比較値(m/s)と所定の閾値(m/s)を比較する。背景風比較値が閾値を超えていない場合は、後方乱気流が検出できない場合として、テンプレートを変更すべくテンプレート出力部206へ移行する。テンプレートを種々変えても、背景風比較値が閾値を超えていない場合は、その空間断面上に後方乱気流がないと判断する。背景風比較値が閾値を超えている場合(両者が等しい場合を含む)は、後方乱気流を検出できた場合として、乱気流位置算出部23へ移行する。
【0053】
検出処理部22内のテンプレート出力部206は、当初は予め認識している、電磁波送受信部1から発射される光パルス(ビーム)の仰角に応じたテンプレートをテンプレートマッチング部202へ出力するが、背景風比較値が閾値を超えていない場合は、当初と異なる仰角に対応した異なるテンプレートや、観測した後方乱気流の渦構造によって異なるテンプレートに変更してテンプレートマッチング部202へ出力する。このテンプレートマッチング部202は、変更されたテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を再び行う。
【0054】
なお、背景風比較値が閾値を超えていない場合おいては、フレーム設定部201によりフレームを広げたりして、フレームを変更して再処理を行ってもよい。
【0055】
乱気流位置算出部23は、背景風比較値が閾値を超えている場合は、その結果から後方乱気流の渦構造の場所を算出し、さらに渦の移動予測を行う。当該背景風比較値の処理単位の位置から、実空間での後方乱気流の位置を算出する。乱気流位置算出部23は、当該背景風比較値に対応する処理単位の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する。後方乱気流の位置は、2つの渦のそれぞれの中心や、2つの渦の間の中心などである。
【0056】
そして、表示部3は、信号処理部2内の乱気流位置算出部23により算出された、実空間での後方乱気流の位置を表示する。空間断面における後方乱気流の位置をディスプレイに表示する。
【0057】
以上のように、実施の形態2によれば、航空機の飛行高度が高いため、仰角が高い状況で観測している場合においても後方乱気流を検出することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電磁波送受信部、2 信号処理部、3 表示部、10A 後方乱気流検出装置、21 ドップラ風速分布算出部、22 検出処理部、23 乱気流位置算出部、101 ドップラ風速分布モデル算出部、102 相互相関処理部、103 相関値比較部、104 パラメータ出力部、201 フレーム設定部、202 テンプレートマッチング部、203 特徴量算出部、204 背景風比較値算出部、205 背景風比較値比較部、206 テンプレート出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部と、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部と、
前記信号処理部により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部とを備え、
前記信号処理部は、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部と、
前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布と、後方乱気流を模擬するためのパラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部と、
前記相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部とを有する
ことを特徴とする後方乱気流検出装置。
【請求項2】
前記検出処理部は、
後方乱気流を模擬するための航空機に関するパラメータを使用して後方乱気流モデルを含んだドップラ風速分布モデルを算出するドップラ風速分布モデル算出部と、
前記ドップラ風速分布モデル算出部により算出したドップラ風速分布モデルと前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布との相互相関処理により相関値を求める相互相関処理部と、
前記相互相関処理部により求められた相関値のうち最も高い相関値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する相関値比較部と、
最も高い相関値が閾値を超えていない場合は、前記パラメータを変更して前記ドップラ風速分布モデル算出部へ出力するパラメータ出力部とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の後方乱気流検出装置。
【請求項3】
航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部と、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部と、
前記信号処理部により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部とを備え、
前記信号処理部は、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部と、
前記電磁波送受信部から発射されるビームの仰角に応じたテンプレートを使用して、前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布にテンプレートマッチング処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部と、
前記相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部とを有する
ことを特徴とする後方乱気流検出装置。
【請求項4】
前記検出処理部は、
空間断面におけるドップラ風速分布に後方乱気流の検出範囲である所定のフレームを設定するフレーム設定部と、
前記電磁波送受信部から発射されるビームの仰角に応じた複数種類のテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を行うテンプレートマッチング部と、
前記テンプレートマッチング処理により得られた特徴量のうち、所定の特徴量を後方乱気流候補として選出する特徴量算出部と、
背景風の風速値を算出し、前記後方乱気流候補の風速値と前記背景風の風速値の差分から背景風比較値を算出する背景風比較値算出部と、
前記背景風比較値算出部により算出された背景風比較値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する背景風比較値比較部と、
背景風比較値が閾値を超えていない場合は、前記テンプレートを変更して前記テンプレートマッチング部へ出力するテンプレート出力部とを含む
ことを特徴とする請求項3記載の後方乱気流検出装置。
【請求項5】
前記テンプレートは、所定の角度以下である仰角が低い場合は、正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレートを使用し、前記所定の角度より仰角が高い場合には、正とゼロのマトリクス構造を持ちかつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレート、正と負のマトリクス構造を持ちかつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートの少なくとも1つを使用する
ことを特徴とする請求項3又は4記載の後方乱気流検出装置。
【請求項1】
航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部と、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部と、
前記信号処理部により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部とを備え、
前記信号処理部は、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部と、
前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布と、後方乱気流を模擬するためのパラメータにより算出されたドップラ風速分布モデルとの相互相関処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部と、
前記相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部とを有する
ことを特徴とする後方乱気流検出装置。
【請求項2】
前記検出処理部は、
後方乱気流を模擬するための航空機に関するパラメータを使用して後方乱気流モデルを含んだドップラ風速分布モデルを算出するドップラ風速分布モデル算出部と、
前記ドップラ風速分布モデル算出部により算出したドップラ風速分布モデルと前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布との相互相関処理により相関値を求める相互相関処理部と、
前記相互相関処理部により求められた相関値のうち最も高い相関値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する相関値比較部と、
最も高い相関値が閾値を超えていない場合は、前記パラメータを変更して前記ドップラ風速分布モデル算出部へ出力するパラメータ出力部とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の後方乱気流検出装置。
【請求項3】
航空機の飛行方向に直交する方向に大気中へ電磁波を所定仰角の範囲内で発射した後、その大気からの反射波を一空間断面の信号として受信する電磁波送受信部と、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、空間断面のドップラ風速分布を算出し、算出したドップラ風速分布から空間断面における後方乱気流の位置を算出する信号処理部と、
前記信号処理部により算出された空間断面における後方乱気流の位置を表示する表示部とを備え、
前記信号処理部は、
前記電磁波送受信部からの受信信号に基づき、所定の距離分解能及び所定の角度分解能からなる処理単位毎に風速値を算出し、それらの結果より空間断面におけるドップラ風速分布を算出するドップラ風速分布算出部と、
前記電磁波送受信部から発射されるビームの仰角に応じたテンプレートを使用して、前記ドップラ風速分布算出部により算出されたドップラ風速分布にテンプレートマッチング処理を行うことにより、後方乱気流を検出する検出処理部と、
前記相互相関処理の相関値が所定の値である空間断面の所定の位置から、空間断面における後方乱気流の位置を算出する乱気流位置算出部とを有する
ことを特徴とする後方乱気流検出装置。
【請求項4】
前記検出処理部は、
空間断面におけるドップラ風速分布に後方乱気流の検出範囲である所定のフレームを設定するフレーム設定部と、
前記電磁波送受信部から発射されるビームの仰角に応じた複数種類のテンプレートを使用して、設定されたフレームにテンプレートマッチング処理を行うテンプレートマッチング部と、
前記テンプレートマッチング処理により得られた特徴量のうち、所定の特徴量を後方乱気流候補として選出する特徴量算出部と、
背景風の風速値を算出し、前記後方乱気流候補の風速値と前記背景風の風速値の差分から背景風比較値を算出する背景風比較値算出部と、
前記背景風比較値算出部により算出された背景風比較値と所定の閾値との比較を行って空間断面における後方乱気流を検出する背景風比較値比較部と、
背景風比較値が閾値を超えていない場合は、前記テンプレートを変更して前記テンプレートマッチング部へ出力するテンプレート出力部とを含む
ことを特徴とする請求項3記載の後方乱気流検出装置。
【請求項5】
前記テンプレートは、所定の角度以下である仰角が低い場合は、正と負のマトリクス構造を持つマトリクス型テンプレートを使用し、前記所定の角度より仰角が高い場合には、正とゼロのマトリクス構造を持ちかつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレート、正と負のマトリクス構造を持ちかつ所定の傾きを持つ傾斜マトリクス型テンプレートの少なくとも1つを使用する
ことを特徴とする請求項3又は4記載の後方乱気流検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−190772(P2010−190772A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36369(P2009−36369)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]