説明

後部作業機の座席装置

【課題】座席装置の後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢のときに雨水等が座部に極力付着しないようにし、かつ後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢にあるときにこの後ろ向き座席の姿勢変更動作を規制して所定の姿勢を維持できるようにする。
【解決手段】トラクタ2の後部に装着される後部作業機4の支持フレーム21に操縦装置31を設けるとともにこの操縦装置31の前方に支持脚37を設け、この支持脚37の上部後側に、後ろ向き座席36の座部36aの下側を横軸47を介して、オペレータが着座する着座姿勢Cと、背もたれ面36cが下方を向くように折り畳まれる後方折り畳み姿勢Dとに姿勢変更可能に支持し、前記支持脚37と後ろ向き座席36との間に、後ろ向き座席36の後方折り畳み姿勢Dから着座姿勢Cへの戻り動作を規制する規制手段61を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタの後部にバックホーとして備えられた後部作業機の座席装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトラクタの前部にフロントローダを備え、トラクタの後部にバックホー等の後部作業機を備えたTLB(トラクタ・ローダ・バックホー)とよばれる作業車がある。この作業車のトラクタには前向き運転席が設けられており、後部作業機の支持フレームにはこの後部作業機を操作するための後ろ向き座席が設けられている。
この後ろ向き座席は、シート支持装置によって支持されており、オペレータが着座する着座姿勢と、その座部が下方に向かうに従って後方に移行する傾斜状となる非使用姿勢とに姿勢を変更できるようになっている。
【特許文献1】特開2004−142479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の後部作業機では、後ろ向き座席が非使用姿勢にある場合、座部は後方傾斜状に配置されることとなるが、この座部は上方に露出しているため、雨が降った場合等に雨水が座部に付着し、着座姿勢に戻して使用する場合にこの雨水等をふき取らなければならなかった。
本発明は、上記の事情に鑑み、後ろ向き座席を着座姿勢と後方折り畳み姿勢とに姿勢変更可能とするとともに、後方折り畳み姿勢のときに雨水等が座部に極力付着しないようにし、かつ後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢にあるときにこの後ろ向き座席の姿勢変更動作を規制して所定の姿勢を維持できるようにした後部作業機の座席装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために以下の手段を講じた。
すなわち、第1に、トラクタの後部に装着される後部作業機の支持フレームに操縦装置を設けるとともにこの操縦装置の前方に支持脚を設け、この支持脚の上部後側に、後ろ向き座席の座部の下側を横軸を介して、オペレータが着座する着座姿勢と、背もたれ面が下方を向くように折り畳まれる後方折り畳み姿勢とに姿勢変更可能に支持し、前記支持脚と後ろ向き座席との間に、後ろ向き座席の後方折り畳み姿勢から着座姿勢への戻り動作を規制する規制手段を設けたことを特徴とする。
【0005】
これによれば、後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢にあるときは、背もたれ面が下方に向いて座部を覆っているので、雨等が降った場合に座部に雨水等が付着することを防止できる。また、規制手段によって後方折り畳み姿勢にある後ろ向き座席が不意に着座姿勢へ移動することを防止でき、この後ろ向き座席を所定の姿勢で維持することができる。
第2に、前記規制手段は、前記支持脚に設けられている係止部材と、後ろ向き座席の座部の下側に設けられていて前記係止部材に係合する係合部材とを有し、前記係止部材に、後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢にあるときに係合部材が係合して着座姿勢への戻り動作を規制する第1係止部と、後ろ向き座席が着座姿勢にあるときに前記係合部材が係合して後ろ向き座席への戻り動作を規制する第2係止部とを形成していることを特徴とする。
【0006】
これによれば、規制手段は、係合部材と係止部材を備えることによって、後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢にあるときの着座姿勢への戻り動作、および後ろ向き座席が着座姿勢にあるときの後方折り畳み姿勢への戻り動作の両方の動作を規制でき、これによって、この後ろ向き座席を所定の姿勢に維持できるようになる。
第3に、前記支持脚の上部前側に後ろ向き座席の下面を支持するクッション部材を設け、前記規制手段は、着座姿勢にある後ろ向き座席が前記クッション部材を弾性変形する方向の係合部材の移動を許容していることを特徴とする。
【0007】
これによれば、規制手段は、後ろ向き座席が着座姿勢にあるときは、後方折り畳み姿勢
への戻り動作を規制するとともに、クッション部材が弾性変形する方向に係合部材を移動を許容しているので、着座姿勢にある後ろ向き座席は、所定の姿勢を維持しながらもクッション部材によって後ろ向き座席に加わる衝撃を吸収できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後ろ向き座席を着座姿勢と後方折り畳み姿勢とに姿勢変更可能とするとともに、後方折り畳み姿勢のときに雨水等が座部に極力付着しないようにし、かつ後ろ向き座席が後方折り畳み姿勢にあるときにこの後ろ向き座席の姿勢変更動作を規制して所定の姿勢を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図6は本発明の第1実施形態を示している。図5、図6は、トラクタ2の前部にフロントローダ等の前部作業機(図示略)を設け、トラクタ2の後部に後部作業機(バックホー)4を設けた作業車(TLB)1を示している。
トラクタ2は、エンジン、フライホイールハウジング、クラッチハウジング、ミッションケース等を直結することで走行車体5が構成され、この走行車体5の前部に左右一対の前輪6が設けられ、走行車体5の後部に左右一対の後輪7が設けられて走行可能とされている。
【0010】
また、走行車体5の後部には、左右の後輪7を覆う左右の後輪フェンダ8が設けられ、左右の後輪フェンダ8間に前向き運転席9が設けられ、前向き運転席9の前方の操縦部10から前向き運転席9の下方にかけてフロアシート11が設けられている。
後輪フェンダ8の前部はフロアシート11に連結されており、後輪フェンダ8の後部同士は連結部材12によって連結されている。
前記前向き運転席9は、走行車体5の後上部に設けられており、走行車体5上に設けられた支持台16に支持されている。この前向き運転席9は、図5、図6に示すように、座部9aと背もたれ部9bを有しており、座部9aは、横向きの枢軸17を介して支持台16に連結されている。この枢軸17は支持台16の前部と座部9aの前部を連結しており、前向き運転席9は、横向きの枢軸17によって枢支されることでこの枢軸17廻りに前後回動自在となっている。
【0011】
このように前向き運転席9を回動自在とすることによって、オペレータが着座する着座姿勢Aから前方に折り畳み可能となっている。図6に示すように、前向き運転席9を前方に折り畳んだ折り畳み姿勢(前方退避姿勢)Bでは座部9aが上下方向を向いた状態となっている。前向き運転席9を前方に折り畳み姿勢としたときは、この運転席9の背もたれ面9cが下方に向くように配置され、この運転席9の座部9aを覆い、雨が降った場合でも雨水が座部9aに付着するのを防止できるようになっている。
走行車体5の後部には、オペレータを保護する保護枠18が上方に突出して設けられている。この実施形態では、保護枠18の例としてロプスを示しており、このロプスは、左右の各後輪フェンダ8の上面から上方に突出した支持脚部18aを有している。この支持脚部18aの下側部分は、後輪フェンダ8の上部に形成された挿通孔8aに挿通されて後輪7の内側に迂回するように折曲されるとともに、その下端部が支持ステイを介して走行車体5に固定されている。この支持脚部18aの上部には、パイプを略コ字状の折曲した枠本体18bの下部両端を屈曲部18cを介して折り畳み自在に連結しており、オペレータの居住空間を確保している。なお、この保護枠18には、ロプスに限らず、キャノピ等を用いることができる。
【0012】
トラクタ2の走行車体5の左右両側には連結フレーム20が設けられ、この連結フレーム20に後部作業機4が着脱自在に取り付けられている。
後部作業機4は、前記連結フレーム20の後部に着脱自在に連結される支持フレーム21を備えており、この支持フレーム21の左右両側にはアウトリガー22が設けられ、支持フレーム21の後部には作業装置(掘削装置)23が設けられ、支持フレーム21の前部には連結フレーム20に連結される被連結フレーム24が設けられている。
作業装置23は、支持フレーム21の後部に、その前部側が上下方向の軸心回りに左右
揺動自在に枢支連結されたスイングブラケット27と、このスイングブラケット27に、基部側が左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されて上下揺動自在なブーム28と、このブーム28の先端部に、左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されて上下揺動自在なアーム(図示略)と、このアームの先端側に、左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結された作業具としてのバケット(図示略)とを備えている。
【0013】
また、支持フレーム21上には、スイングブラケット27、ブーム28、アーム及びバケット等を操作する操作レバー30を有する操縦装置31が設けられている。
図1、図5、図6において、操縦装置31の前方には、後部作業機4を操作するためにオペレータが着座する座席装置35が設けられている。座席装置35は、後ろ向き座席36と、この支持フレーム21から上方に突出していて後ろ向き座席36を支持する支持脚37とを有している。
支持脚37は前方に傾斜して設けられており、この支持脚37の上部には後ろ向き座席36を支持する支持部材38が設けられ、後ろ向き座席36は、支持フレーム21の前部でこの支持部材38を介して支持脚37に支持されている。
【0014】
図3、図4において、前記支持脚37は、金属製で横断面がコ字状とされており、上部材40と下部材41に分割されている。上部材40および下部材41はそれぞれ左右の側壁40a、41aと前壁40a、40bとを有している。上部材40と下部材41の各左右側壁には、上下方向に間隔をおいて複数の貫通孔42が形成されている。
下部材41の下部には支持フレーム21への取付板43が設けられており、この取付板43はボルト等によって支持フレーム21の上面に固定されている。
下部材41は、上部材40よりもやや小さく形成されていて上部材40の下部側から内側に挿入されている。上部材40側の貫通孔42と下部材41側の貫通孔42を一致させ、ボルト等を差し込んでナット等によって固定し、これによって上部材40と下部材41が連結固定されている。各貫通孔42は、上部材40、下部材41の各側壁に上下方向に沿って複数形成されているので、一致させる貫通孔42を変えることで、支持脚37はその長さを伸縮自在に変更でき、これによって後ろ向き座席36の上下位置を変更できるようになっている。
【0015】
図1乃至図3において、前記後ろ向き座席36は、座部36aと背もたれ部36bを備えており、座部36aの底面には、この座部36aを支持部材38に取り付ける左右1対の取付部材44がボルト等によって固定されている。
この取付部材44は、板部材をL字状に屈曲形成したものであり、後ろ向き座席36の底面に固定される固定部45と、この固定部45から直角に折曲されていて支持部材38に連結される連結部46を備えている。これらの取付部材44は、連結板52を介して連結されている。
【0016】
前記固定部45にはボルト等を挿通する複数(図例では3つ)の孔が所定間隔をおいて形成されており、この孔のいくつか(図例では2つ)にボルト等を挿通して座部36aの底面に形成したねじ孔に螺入することで、取付部材45は座部36aに固定されている。上述のように固定部45には複数の孔が形成されているので、ボルトを挿通する孔を変更することで取付部材の座部36aに対する固定位置を前後に変更できるようになっている。
前記支持部材38は、板状に形成されていて、支持脚37の上端部に固定されている。支持部材38の後部には、後ろ向き座席36を枢支する横軸47が設けられており、この横軸47は前記連結部46に形成された貫通孔に挿通されている。
【0017】
前記横軸47は支持部材38の後部上面に設けられた支持部48によってその軸心廻り回転自在に支持されている。支持部48は左右対の円筒状とされており、各支持部48の内部に前記横軸(枢支ボルト)47が挿通されている。
横軸47の端部には雄ねじが形成されており、連結部46に形成された貫通孔に横軸47を挿通し、連結部46から左右方向外方に突出した横軸47の端部にナット49を螺合させることによって、連結部46に横軸47が連結される。このように連結された横軸47は、後ろ向き座席36の座部36aの前後方向ほぼ中央部を支持する支持脚37よりも後方位置で、前記後ろ向き座席36を支持することになる。
【0018】
上述のように、後ろ向き座席36は、前記横軸47に枢支されることによって、この横軸47廻りに回動自在となり、オペレータが着座する着座姿勢Cから後方に折り畳まれた後方折り畳み姿勢Dに姿勢変更可能となる。この後方折り畳み姿勢Dにおいては、後ろ向き座席36の背もたれ面36cが下方を向くように配置され、これによって後ろ向き座席36の座部36aが背もたれ部36bに覆われ、雨等が降った場合でも雨水等が極力付着しないようになっている。
支持脚37の上部前側、すなわち支持部材38の前部には、着座姿勢Cにある後ろ向き座席36の座部36aを受持するクッション部材51が設けられている。このクッション部材51は、ゴム等の弾性体によって円錐台状に形成されている。なお、前記支持部材38には左右2つのクッション部材51が設けられているが、このクッション部材51の数は、1または3以上であってもよい。
【0019】
後ろ向き座席36が着座姿勢Cになっているとき、この後ろ向き座席36の背もたれ部36bは、前向き運転席9が着座姿勢Aにあるときの当該前向き運転席9の背もたれ部9bの位置にくるように配置されている。
前向き運転席9に着座して作業車1を運転したり、前部作業機を操作している場合には、後ろ向き座席36を後方に折り畳んでおき、この状態から後部作業機4を操作する場合には、前向き運転席9を前方に折り畳み、後ろ向き座席36を後方折り畳み姿勢Dから着座姿勢Cに変更する。
【0020】
上述のように、後ろ向き座席36の背もたれ部36bを前向き運転席9の背もたれ部9bと同位置になるように配置することによって、後ろ向き座席36を走行車体5の後部に対して可及的前方位置に設けることができ、これによって後ろ向き座席36を操縦装置31から離して後ろ向き座席36まわりの空間をできるだけ広く確保できる。
また、後ろ向き座席36を走行車体5に対して可及的前方位置に設けているので、その分支持フレーム21の前後長さを短くして発進角度α(後部作業機4の後下部から後輪に引いた接線と平坦路面とのなす角度)を大きくでき、しかも作業装置23を支持する支点を可及的前方位置に設定できる。したがって、支持フレーム21にかかる作業装置23の重量等による荷重の作用点をできるだけ前方に設定でき、これによって作業車1の前後の重量バランスをより良いものにでき、走行車体5の後部と支持フレーム21との連結部の耐久性も向上する。
【0021】
また、後ろ向き座席36の座部36aは、後輪フェンダ8の連結部材12よりも上方位置に設けられており、これによって後ろ向き座席36を連結部材12に当たることなく、走行車体5に対して可及的前方位置に配置できるようになっている。
図6に示すように、後ろ向き座席36の背もたれ部36bは、後ろ向き座席36が着座姿勢Cにあるとき、前記保護枠18と前後方向にオーバラップした状態になっている。
したがって、オペレータが後部作業機4を操作している場合にこの保護枠18によってオペレータを適切に保護できる。さらに、前向き運転席9が着座姿勢Aにあるとき、その背もたれ部9bは、着座姿勢Cの後ろ向き座席36の背もたれ部36bと同じ位置になるため、オペレータが前向き運転席9に着座している場合にも、このオペレータを保護枠18によって適切に保護できる。
【0022】
後ろ向き座席36と支持脚37との間には、後ろ向き座席36の姿勢変更動作を規制する規制手段61が設けられている。この規制手段61は、前記支持脚37に設けられている係止部材62と、後ろ向き座席36の座部36aの下側に設けられていて、前記係止部材62に係合する係合部材63を有している。
係合部材63には棒状部材の中途部を折曲したものを用いており、この係合部材63は、オペレータが掴んで操作する操作部64と、支持脚37に係合する係合軸部65とを有している。
【0023】
係合部材63は、後ろ向き座席36に設けられた保持部材67を介して後ろ向き座席36の下側に取り付けられている。この保持部材67は、互いに平行な第1壁部68、第2壁部69と、これら第1壁部68と第2壁部69とほぼ直交する第3壁部70とを有している。
保持部材67の第1壁部68は、その一端部が後ろ向き座席36の座部36aの底面に設けられた前記取付部材44の連結部46に固定されている。また、第1壁部68の他端部側には、係合部材63を挿通するための第1挿通孔72が形成されている。
【0024】
また、前記第2壁部69には前記係合部材63を挿通する第2挿通孔73が側面からみて前記第1挿通孔72と一致するように形成されている。
第1壁部68と第2壁部69との間には、コイルバネ75が設けられている。前記係合部材63の係合軸部65は、前記第2挿通孔73、コイルバネ75、第1挿通孔72に挿通されており、これによって、係合部材63の係合軸部65は、第1挿通孔72と第2挿通孔73が対向する対向方向にほぼ水平にスライド自在となっている。図1、図2に示すように、保持部材67を介して後ろ向き座席36に取り付けられた係合部材63は、側面からみると、その係合軸部65が前記横軸47を挟んで後ろ向き座席36の反対側に位置している。
【0025】
前記係合部材63の係合軸部65には軸心方向に直交する貫通孔76が形成されており、この貫通孔76に止めピン77が挿通され、この係合部材63は、この止めピン77を介して前記コイルバネ75に係止され、このコイルバネ75によって係合軸部65の先端部に向かう方向に付勢されている。
このようにして係合部材63は、後ろ向き座席36の下側に設けられ、着座姿勢Cと後方折り畳み姿勢Dとの姿勢変更動作の際に、後ろ向き座席36の前記横軸47廻りに回動に伴って所定の円弧軌跡を描いて前後に移動するようになっている。
【0026】
上述したように、係合部材63は、横軸47を挟んで後ろ向き座席36の反対側に位置しているため、後ろ向き座席36が着座姿勢Cから後方に回動して後方折り畳み姿勢Dに姿勢を変更するときには、後ろ向き座席36の反対方向、すなわち後方に移動し、一方、後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dから前方に回動して着座姿勢Cに姿勢を変更する場合には、後方に移動するようになっている。
図1乃至図4に示すように、係止部材62は、側面視で円弧状の棒形状とされている。また係止部材62は、後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dにあるときに係合部材63が係合して着座姿勢Cへの戻り動作を規制する第1係止部80を有している。
【0027】
この第1係止部80は、この係止部材62の前側で前記係合部材63の係合軸部65に当接する第1当接面80aを有している。この第1当接面80aは上方に面して形成されており、後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dにあるときに前記係合部材63の係合軸部65の先端部がこの第1当接面80aに載るようになっている。
また、前記係止部材62は、後ろ向き座席36が着座姿勢Cにあるときに前記係合部材63が係合して後ろ向き座席36への戻り動作を規制する第2係止部82を有している。この第2係止部82は、後ろ向き座席36が着座姿勢Cにあるときに前記係合部材63の係合軸部65が当接する第2当接面82aを有している。この第2当接面82aは係止部材62の後側で後方に面して形成されている。
【0028】
後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dにある場合、前記係合部材63は、その係合軸部65が係止部材62の第1当接面80aに当接され、この状態では、後ろ向き座席36が着座姿勢Cに戻ろうとする戻り動作を規制しており、後ろ向き座席36は、規制手段61によって後方折り畳み姿勢Dのままで維持される。
また、この後方折り畳み姿勢Dにおいて、後ろ向き座席36を後方に押し倒す力が加わった場合には、前記取付部材44を連結している連結板52が支持脚37に当接し、後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dからさらに後方に倒れないように規制するようになっている。
【0029】
この後方折り畳み姿勢Dから着座姿勢Cに姿勢を変更する場合、オペレータは係合部材63をコイルバネ75の付勢力に抗して左右方向外側に引き、係合部材63の係合軸部65と係止部材62の第1係止部80との係合を解除する。このとき、後ろ向き座席36は、前方に向かって横軸47廻りに回動可能となり、後ろ向き座席36の下面(底面)がクッション部材51に当接する位置まで後ろ向き座席36を戻すことができる。
この位置では、係合部材63の係合軸部65がコイルバネ75の付勢力によって軸心方向にスライドして係止部材62の第2当接面82aに当接し、この当接した状態では、後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dに戻ろうとする戻り動作を規制し、後ろ向き座席36は着座姿勢Cを維持することができる。
【0030】
この着座姿勢Cにおいては、係合部材63の係合軸部65は第2当接面82aに当接し、係合部材63の前方への移動のみが規制されており、この係合軸部65は、第2当接面82aとの当接位置から後方へ移動できるようになっている。したがって、後ろ向き座席36は、係合軸部65が第2当接面82aに当接する位置でクッション部材51に支持されているが、この状態からオペレータが着座して後ろ向き座席36に荷重がかかったときに、クッション部材51の下方への弾性変形が可能になっている。
すなわち、規制手段61は、後ろ向き座席36が着座姿勢Cにあるときに後方折り畳み姿勢Dへの戻り動作を規制するとともに、着座姿勢Cにある後ろ向き座席36が前記クッション部材51を弾性変形させる方向への係合部材63の移動を許容している。したがって、この後部作業機4の座席装置35は、規制手段61を介して後ろ向き座席36を所定の着座姿勢Cに維持できるとともに、後ろ向き座席36にかかる衝撃等を吸収して快適な作業を行うことができるようになっている。
【0031】
図7、図8は、本発明の第2実施形態を示している。
この第2実施形態では、規制手段61と、保持部材67の構成が第1実施形態と異なる。規制手段61の係止部材62は、支持脚37の上部、すなわち支持部材38の上面で支持部48とクッション部材51の間に設けられている。
この係止部材には、四角形状の板材を用いており、係合部材63の係合軸部65を案内する案内溝85を板厚方向に貫通して形成している。この案内溝85は、前後方向に沿って水平状に形成された直線溝部86と、この直線溝部86の後部から斜め後に傾斜状に形成された傾斜溝部87を有している。
【0032】
規制手段61の係合部材63は、第1実施形態と同様に操作部64と係合軸部65を有している。この係合部材63を保持する保持部材67には、長尺状の板部材または棒状部材を用いており、この保持部材67は、その一端部に、係合部材63の係合軸部65を挿通する挿通孔89が形成され、その他端部に、後ろ向き座席36にこの保持部材67を取り付ける取付孔が形成されている。
前記係合部材63の係合軸部65は、前記挿通孔89に前記係合部材63の係合軸部65を挿通され、さらに、係止部材62の案内溝85に挿通されている。
【0033】
また、後ろ向き座席36の下面に取り付けられた取付部材44の連結部に保持部材67を取り付ける取付ピン91を設け、この取付ピン91を保持部材67の取付孔90に挿通しており、これによって保持部材67は、この取付ピン91廻りに揺動自在となっている。
この第2実施形態では、後ろ向き座席36が後方折り畳み姿勢Dにあるときに、係合部材63の係合軸部65が係止部材62の案内溝85の傾斜溝部87に入り、これによって規制手段61は、後ろ向き座席36の着座姿勢Cへの戻り動作を規制している。
【0034】
この後方折り畳み姿勢Dにある後ろ向き座席36を着座姿勢Cに変更するには、係合部材63の操作部64を上方に持ち上げて、係合軸部65と傾斜溝部87との係合を解除し、さらに係合部材63を直線溝部86に沿って前方に移動させる。これによって、後方折り畳み姿勢Dにあった後ろ向き座席36は、横軸47回りにかつ前方に回動して後ろ向き座席36の下面がクッション部材51に当たる着座姿勢Cに変更される。
以上により、この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、座席装置は、後方折り畳み姿勢Dにある後ろ向き座席36の座部36aに雨水等が付着しないようにでき、しかもこの後ろ向き座席36を所定の姿勢で維持できるのである。
【0035】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、種々の変形・変更が可能である。
例えば、規制手段61の係止部材62は、第1当接面80aと第2当接面82aの両方を有していなくとも良く、第1当接面80aのみを有する係止部材62と第2当接面82aのみを有する係止部材62を別々に支持脚37に設けて係合部材63を係止するように
してもよい。
この係止部材62の形状は円弧形状に限らず、その一部に上方に面する第1当接面80a、後方に面する第2当接面82aの一方または両方を形成してあれば、どのような形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る座席装置の側面図である。
【図2】同座席装置を示す要部拡大側面図である。
【図3】同座席装置の斜視図である。
【図4】同座席装置の分解斜視図である。
【図5】作業車の側面図である。
【図6】作業車の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る座席装置の分解斜視図である。
【図8】同座席装置の要部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 作業車
4 後部作業機
5 走行車体
8 後輪フェンダ
9 前向き運転席
9b 背もたれ部
12 連結部材
18 保護枠
36 後ろ向き座席
36b 背もたれ部
37 支持脚
38 支持部材
47 枢軸
51 クッション部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ(2)の後部に装着される後部作業機(4)の支持フレーム(21)に操縦装置(31)を設けるとともにこの操縦装置(31)の前方に支持脚(37)を設け、
この支持脚(37)の上部後側に、後ろ向き座席(36)の座部(36a)の下側を横軸(47)を介して、オペレータが着座する着座姿勢(C)と、背もたれ面(36c)が下方を向くように折り畳まれる後方折り畳み姿勢(D)とに姿勢変更可能に支持し、
前記支持脚(37)と後ろ向き座席(36)との間に、後ろ向き座席(36)の後方折り畳み姿勢(D)から着座姿勢(C)への戻り動作を規制する規制手段(61)を設けたことを特徴とする後部作業機の座席装置。
【請求項2】
前記規制手段(61)は、前記支持脚(37)に設けられている係止部材(62)と、後ろ向き座席(36)の座部(36a)の下側に設けられていて前記係止部材(62)に係合する係合部材(63)とを有し、前記係止部材(62)に、後ろ向き座席(36)が後方折り畳み姿勢(D)にあるときに係合部材(63)が係合して着座姿勢(C)への戻り動作を規制する第1係止部(80)と、後ろ向き座席(36)が着座姿勢(C)にあるときに前記係合部材(63)が係合して後ろ向き座席(36)への戻り動作を規制する第2係止部(82)とを形成していることを特徴とする請求項1に記載の後部作業機の座席装置。
【請求項3】
前記支持脚(37)の上部前側に後ろ向き座席(36)の下面を支持するクッション部材(51)を設け、前記規制手段(61)は、着座姿勢(C)にある後ろ向き座席(36)が前記クッション部材(51)を弾性変形させる方向への係合部材(63)の移動を許容していることを特徴とする請求項2に記載の後部作業機の座席装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−335206(P2006−335206A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161872(P2005−161872)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】