説明

後部車体構造

【課題】車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両において、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる後部車体構造を提供する。
【解決手段】ウインドガラス11に、その上縁に沿う部分を不透明とする不透明部60を設けると共に、ハイマウントランプ30を、該ウインドガラス11の不透明部60の直下方から後方を臨むように配置し、かつ、ウォッシャノズル40の貫通部11aを、ウインドガラス11におけるハイマウントランプ30(33)に前後方向で対向する範囲Xの側方に設けると共に、前記不透明部60に、前記ウインドガラス11におけるウォッシャノズル40の貫通部11aの周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部60aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両の後部車体構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバックタイプ車両のバックドアやセダンタイプ車両の車室後面部(以下、バックドア及び車室後面部を総称して、車室後面部という)には、後方視界確保用の窓が一般に設けられる。そして、該車室後面部における窓を構成するウインドガラスの上方に位置する部分の外面には、該ウインドガラスに洗浄液を噴射するウォッシャノズルや、ブレーキランプ等のハイマウントランプが設けられることがあるが、例えばリヤスポイラを取り付けたい場合もあり、この場合、ウォッシャノズルやハイマウントランプをどのように配設するかという課題がある。
【0003】
この課題に対しては、ハイマウントランプをウインドガラス上部の車内側に配設すると共に、ウォッシャノズルをウインドガラスを貫通して設けて該ガラスの外面に洗浄液を噴射可能に構成することが考えられる。しかし、このような構造の場合、ウインドガラスにおけるウォッシャノズルの貫通部の車内側で配策されて、該ノズルに洗浄液を供給する管がウインドガラスを通して車体後方から見えることとなり、見栄えの点で問題がある。
【0004】
この問題に対処可能な技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。すなわち、特許文献1に記載のものにおいては、ハイマウントランプは、発光部(バルブ)と、該発光部を支持し、かつ発生した光を後方に反射するリフレクタとを有しており、ウォッシャノズルは発光部の上方に配置され、該ノズルに洗浄液を供給する管は前記リフレクタの後方に配設されている。これによれば、ウォッシャノズルに接続される管がリフレクタで隠蔽されて車体後方から見えなくなり、見栄えが改善されることとなる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−29392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハイマウントランプをウインドガラスの上部の車内側に配置すると、後方視界が上部側において悪化することとなるが、前記特許文献1に記載のものにおいては、ハイマウントランプの発光部とウォッシャノズルとが上下に配置されているから、上下方向に大きなスペースが占有され、その結果、後方視界への悪影響が顕著となる。
【0007】
そこで、本発明は、車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両において、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる後部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両の後部車体構造であって、前記ウインドガラスには、その上縁に沿う部分を不透明とする不透明部が設けられていると共に、前記ハイマウントランプは、該ウインドガラスの不透明部の直下方から後方を臨むように配置されており、かつ、前記ウォッシャノズルの貫通部は、該ウインドガラスにおけるハイマウントランプに前後方向で対向する範囲の側方に設けられていると共に、前記不透明部に、前記ウインドガラスにおけるウォッシャノズルの貫通部の周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の後部車体構造において、前記ウォッシャノズルの貫通部は、前記ウインドガラスにおけるハイマウントランプに前後方向で対向する範囲に近接して設けられていると共に、前記ウインドガラスの不透明部の下方延長部は、前記対向する範囲側の側端が、前記対向する範囲の側端とほぼ同じ車幅方向位置で、かつ下端が、前記対向する範囲の下端とほぼ同じ高さ位置となるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の後部車体構造において、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の内面を車内側から覆うトリムが設けられていると共に、該トリムに、下方に突出し、前記ハイマウントランプ及びウォッシャノズルを車内側から覆う突出部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の外面に、リヤスポイラが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の外面は、車幅方向中央部が両側部よりも低くされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果について説明する。
【0015】
まず、請求項1に記載の発明によれば、ハイマウントランプが、車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置され、ウォッシャノズルが、前記ウインドガラスを貫通して設けられている場合に、ウォッシャノズルの貫通部は、ウインドガラスにおける、該ガラスの上縁に沿う部分を不透明とする不透明部の直下方から後方を臨むように配置されたハイマウントランプに前後方向で対向する範囲の側方に設けられているから、ハイマウントランプの発光部とウォッシャノズルとを上下に並べて配置する場合よりも、これらを配置するための上下スペースを狭くできる。すなわち、車内からの後方視界が上部側において悪化するのを抑制することができる。
【0016】
また、前記不透明部には、前記ウォッシャノズルの貫通部の周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部が設けられているから、車体後方から見たときに、不透明部の下方延長部の前方に位置するものが隠蔽されることとなる。その場合に、この所定範囲を、ウインドガラスにおけるノズルに接続される管に前後方向で対向する範囲を含む範囲、すなわち車体後方から見たときにノズルに接続される管が隠蔽される範囲とすることにより、管を下方延長部により隠蔽することができる。つまり、車体後方からの見栄えが管により損なわれるのを防止することができる。なお、所定範囲には、ウインドガラスにおけるウォッシャズルの基部(ウォッシャノズルにおけるウインドガラスの車内側に存在する部分。ウインドガラスへの固定部や、管の接続部)に前後方向で対向する範囲を含むようにしてもよく、こうすることにより、基部が意匠的に優れていない場合、これを隠蔽することができる。
【0017】
このように、本発明によれば、車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両において、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる。なお、自動車のウインドガラスには、上縁に沿う不透明部が一般に設けられており、下方延長部は、この不透明部の一部を下方に延長するだけで容易に形成することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記ウォッシャノズルの貫通部は、前記ウインドガラスにおけるハイマウントランプに前後方向で対向する範囲に近接して設けられていると共に、前記ウインドガラスの不透明部の下方延長部は、前記対向する範囲側の側端が、前記対向する範囲の側端とほぼ同じ車幅方向位置で、かつ下端が、前記対向する範囲の下端とほぼ同じ高さ位置となるように形成されているから、不透明部の下方延長部とハイマウントランプとが、車体後方から見て外形上一体となる。したがって、車体後部の見栄えが向上することとなる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の内面を車内側から覆うトリムが設けられていると共に、該トリムに、下方に突出し、前記ハイマウントランプ及びウォッシャノズルを車内側から覆う突出部が設けられているから、車内側から見て、車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の内面、ハイマウントランプ、及びウォッシャノズルが一体的に隠蔽されることとなる。また、ハイマウントランプやウォッシャノズルに接続されるハーネスや管を隠蔽することもできる。したがって、車室内の見栄えも改善されることとなる。また、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の内面を車内側から覆うトリムは、従来においても設けられることがあり、そのトリムの形状等を若干変更するだけで、ハイマウントランプやウォッシャノズル等を隠蔽することができる。
【0020】
また、請求項4に記載のように、前記車室後面部の外面におけるウインドガラスよりも上方の部分に、車両の空力性能向上のためにリヤスポイラを設けた場合に、請求項1に記載の構成が特に有効となる。すなわち、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の外面にリヤスポイラを設けると、該部分にハイマウントランプ及びウォッシャノズルを配置できない場合が生じ、その場合、背景技術で説明したような問題が生じることとなるが、請求項1に記載の発明により、当該問題が解決されることとなる。
【0021】
また、請求項5に記載のように、車両の空力性能向上のために、前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の外面の車幅方向中央部を両側部よりも低くなるように後ろ下りに傾斜させた場合に、請求項1に記載の構成が特に有効となる。すなわち、前述のように傾斜させた場合、車幅方向中央部の上下幅が狭くなり、ハイマウントランプ及びウォッシャノズルを配置できない場合が生じ、その場合、背景技術で説明したような問題が生じることとなるが、請求項1に記載の発明により、当該問題が解決されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る後部車体構造について説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る後部車体構造が適用された自動車1の斜め後方からの斜視図である。自動車1は、ハッチバックタイプの車両であり、車室の後部は、上面部を構成するルーフ2と、側面部を構成するリヤフェンダ3と、下面部を構成する車体下部構成部材(フロアやリヤバンパ4等)(図示せず)と、後面部を開閉可能に構成するバックドア5とで構成されている。
【0024】
バックドア5は、上端部において、前記ルーフ2の後端部に、車幅方向に間隔を空けて配置された左右一対のヒンジ6,6を介して上部側を中心として回動可能に支持されている。
【0025】
また、バックドア5の上部には、車室内からの後方視界を確保するための窓を構成する透明なウインドガラス11が設けられている。
【0026】
また、バックドア5におけるウインドガラス11よりも上方(前方)の部分5a(以下、バックドア5のウインドガラス上方部分5aという)の外面の後部側には、車体の空力特性を向上させるためのリヤスポイラ20が取り付けられている。
【0027】
また、ルーフ2の上面、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの外面の前部、及びリヤスポイラ20の上面は、滑らかに連続するように構成されていると共に、ルーフ2の車体前後方向中央付近から後方部分、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの外面の前部、及びリヤスポイラ20の上面は、車体の空力特性を向上させるため、図1、図2に矢印αで示すように、車幅方向中央部が両側部よりも低くされ、所定の傾斜角度(例えば10°程度)で後ろ下りに傾斜している。
【0028】
また、ウインドガラス11上部の車内側の略車幅方向中央に、該ガラス11の上部を通して後方を臨むようにハイマウントランプ30が配置されていると共に、前記ウインドガラス11の上部を貫通してウォッシャノズル40が設けられている。また、ウインドガラス11の下端付近には、ウインドワイパ50が配設されている。
【0029】
次に、前記各構成部材のうち主要な構成部材について詳しく説明する。
【0030】
まず、バックドア5は、図3に示すように、主要な構成部材としてバックドア本体10と前記ウインドガラス11とを有している。
【0031】
バックドア本体10は、上部に窓用の開口10aが形成されており、該開口10aに対応する開口を有する所定形状のインナパネル13及びアウタパネル14の外周縁部同士及び開口周縁部同士を接合することにより中空体として構成されている(図4参照)。
【0032】
図4に示すように、ウインドガラス11は、その周縁に沿う部分が、バックドア本体10の窓開口縁部の車外側の面に接着剤15により固定されている。なお、接着剤15よりも開口内方側には、該接着剤15がウインドガラス11の内方側に流れ出るのを防止するダム部材16が設けられている。
【0033】
また、ウインドガラス11には、バックドア本体10の開口10aの開口縁部や、前記接着剤15、ダム部材16等が車外から見えないように隠蔽するために、図3にも示すように、当該ガラス11の周縁に沿う部分を不透明とする不透明部60が設けられている。この不透明部60は、例えばウインドガラス11の周縁に沿う部分の車内側の面にセラミックの皮膜を形成することにより構成されており、例えば黒色とされている。
【0034】
図3に示すように、バックドア本体10のアウタパネル14におけるウインドガラス11よりも上方の部分には、本体10の左右両端部間において車幅方向に延び、リヤスポイラ20が取り付けられる凹凸部14aが形成されている。この凹凸部14aには、リヤスポイラ取付用の複数の取付孔14b…14bが形成されている。
【0035】
リヤスポイラ20は、車幅方向に延びる樹脂製の中空体であり、図4に示すように、その下面の前部側は、前記アウタパネル14の凹凸部14aにほぼ沿うように形成されていると共に、該下面における前記取付孔14b…14bに対応する位置にはそれぞれ、雄ファスナ17またはボルト(図示せず)が固着されており、これらがアウタパネル14の凹凸部14aの取付孔14bに挿通されて、該パネル14側に設けられた雌ファスナ18と係合し、またはナット(図示せず)と螺合されることにより、凹凸部14aに固定されるようになっている。
【0036】
ルーフ2の後端側には、段下げ部2aが車幅方向全幅に亘って形成されており、バックドア5の前端部(上端部)が上方から重畳されている。また、この段下げ部2aに、バックドア5支持用の前記ヒンジ6,6が取り付ける。この段下げ部2aの車内側には、リヤルーフヘッダパネル25とリヤルーフヘッダレイル26とで左右のリヤフェンダ3の上端部間において車幅方向に延びる閉断面が形成されており、これにより、ルーフ2の後端部が補強されている。また、段下げ部2aの後端に沿って、凹状の雨樋部2bが設けられていると共に、その後端部(上端部)には、バックドア5との隙間をシールするウェザーストリップ19が取り付けられている。
【0037】
ハイマウントランプ30は、図2からわかるように、ウインドガラス11の不透明部60の直下方から後方を臨むように配置されている。そして、図4、図5にも示すように、発光部としてのバルブ31と、該バルブ31で発生した光を車体後方に反射させるリフレクタ32と、バルブ31で発生した光を所定方向に収束させるレンズ33とを有している。リフレクタ32及びレンズ33は、図2、図5からわかるように、車体後方から見て車幅方向に長い矩形形状をしており、その高さは、バルブ31の直径よりも若干大きい程度の高さとされ、極力高くならないようされている。また、リフレクタ32の上部には、バックドア本体10におけるウインドガラス11よりも上方の部分のインナパネル13に形成された取付孔13aに係合可能な係合部34が形成されている。バルブ31に電力を供給するハーネス35は、後方に延びた後、上方に延び、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの内部空間に導入されている。なお、本発明は、例えば、これ以外のハイマウントランプに対しても適用可能である。
【0038】
図2、図6からわかるように、前記ウインドガラス11におけるウォッシャノズル40の貫通部(孔)11aは、該ウインドガラス11におけるハイマウントランプ30のレンズ33に前後方向で対向する範囲Xの側方に設けられていると共に、前記ハイマウントランプ30に近接して配置されている。なお、図2は車体後方から見た図であり、この図2において前記範囲Xはハイマウントランプ30のレンズ33の範囲と同範囲となる。
【0039】
また、図6からわかるように、ウォッシャノズル40に接続される洗浄液供給用の管41は、後方に延びた後、上方に延び、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの内部空間に導入されている。
【0040】
図7に示すように、前記バックドア5のウインドガラス上方部分5aの後部の下方には、該上方部分5aの下面における、前記ルーフ2の後端とバックドア本体10の開口10aの上縁との間の部分を覆うトリム70が設けられている。このトリム70は、図5からわかるように、車幅方向に延びており(左右のフェンダ3の内面近傍間で)、後方視界の上部側の妨げとなりにくいように、図7にも示すように、上下の高さが低い樋状の形状をしている。一方、図4、図6からわかるように、ハイマウントランプ30及びウォッシャノズル40が設けられている部分においては、前記ハイマウントランプ30及びウォッシャノズル40、並びにこれらに接続されるハーネス35や管41を覆うことが可能なように、下方及び後方へ突出している(以下、突出部という70a)。
【0041】
また、図5に示すように、トリム70には、前後方向に延びる補強用の縦壁70b…70bが複数設けられており、これらの突出部70b…70bの一つ70b(70b1)は、マウントランプ30とウォッシャノズル40との間に配置され、これらを仕切っている。これにより、図6からもわかるように、ハイマウントランプ30側からウォッシャノズル40の基部40a(ウインドガラス11への固定部や管41の接続部)や管41が、またウォッシャノズル40側からハイマウントランプ30の構成部材の非意匠面やハーネス45が隠蔽されて、見えないようになっている。
【0042】
また、本実施の形態においては、前記ウインドガラス11の不透明部60に、図2、図6に示すように、前記ウインドガラス11におけるウォッシャノズル40の貫通部11aの周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部60aが設けられている。その場合に、この所定範囲は、ウインドガラス11における、ノズル40に接続される管41及びウォッシャノズル40の基部40aに前後方向で対向する範囲を含む範囲、すなわち車体後方から見たときにノズル40に接続される管41及びウォッシャノズル40の基部40aが隠蔽される範囲とされている。詳しくは、下方延長部60aは、図5からわかるように、トリム70の突出部0aの左側壁70c(図において左側の側壁)と、突出部70aの下壁70dと、前記縦壁部70b(70b1)とで区画される範囲に設けられている。すなわち、図2からわかるように、前記ウインドガラス11の不透明部60の下方延長部60aは、前記対向する範囲X側の側端が、前記対向する範囲Xの側端とほぼ同じ車幅方向位置で、かつ下端が、前記対向する範囲Xの下端とほぼ同じ高さ位置となるように形成されている。
【0043】
次に、本実施の形態に係る後部車体構造の作用、効果について説明する。
【0044】
まず、本実施の形態においては、ハイマウントランプ30が、バックドア5の窓を構成するウインドガラス11の車内側に配置され、ウォッシャノズル40が、前記ウインドガラス11を貫通して設けられているが、ウォッシャノズル40の貫通部11aは、ウインドガラス11における、該ガラス11の上縁に沿う部分を不透明とする不透明部60の直下方から後方を臨むように配置されたハイマウントランプ30に前後方向で対向する範囲Xの側方に設けられている。したがって、ハイマウントランプの発光部(バルブ等)とウォッシャノズルとを上下に並べて配置する場合(矢印γで示す仮想線)よりも、ハイマウントランプ及びウォッシャノズルを配置するための上下スペースを狭くでき、その結果、これらが設けられている部位における後方視界の上端位置が、ラインβ(一例として運転者からの後方視界のラインを示している)で示すように高くなる。すなわち、車内からの後方視界が上部側において悪化するのを抑制することができる。
【0045】
また、前記不透明部60には、前記ウインドガラス11におけるウォッシャノズル40の貫通部11aの周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部60aが設けられているから、車体後方から見たときに、不透明部60の下方延長部60aの前方に位置するものが隠蔽されることとなる。その場合に、この所定範囲は、ウインドガラス11における、ノズル40に接続される管41及びノズル40の基部40aに前後方向で対向する範囲を含む範囲、つまり車体後方から見たときにノズル40に接続される管41及び基部40aが隠蔽される範囲とされているから、管41及び基部40aが下方延長部60aにより隠蔽されることとなる。したがって、管41及び基部40aにより車体後方からの見栄えが損なわれるのが防止されることとなる。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、バックドア5の窓を構成するウインドガラス11の車内側に配置されたハイマウントランプ30と、前記ウインドガラス11を貫通して設けられたウォッシャノズル40とを有する自動車1において、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる。なお、自動車のウインドガラスには、上縁に沿う不透明部が一般に設けられており、下方延長部は、この不透明部の一部を下方に延長するだけで容易に形成することができる。
【0047】
また、前記ウォッシャノズル40の貫通部11aは、前記ウインドガラス11におけるハイマウントランプ30に前後方向で対向する範囲Xに近接して設けられていると共に、前記ウインドガラス11の不透明部60の下方延長部60aは、前記対向する範囲X側の側端が、該範囲Xの側端とほぼ同じ車幅方向位置で、かつ下端が、前記対向する範囲Xの下端とほぼ同じ高さ位置となるように形成されているから、不透明部60の下方延長部60aとハイマウントランプ30とが、車体後方から見て外形上一体となる。したがって、車体後部の見栄えが一層改善されることとなる。
【0048】
また、前記バックドア5のウインドガラス上方部分5aの内面(インナパネル13)を覆うトリム70が設けられていると共に、該トリム70に、下方に突出し、前記ハイマウントランプ30及びウォッシャノズル40を車内側から覆う突出部70aが設けられているから、車内側から見て、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの内面、ハイマウントランプ30、及びウォッシャノズル40が一体的に隠蔽されることとなる。また、ハイマウントランプ30及びウォッシャノズル40に接続されるハーネス35や管41を隠蔽することもできる。したがって、車室内の見栄えも改善されることとなる。なお、バックドアにおけるウインドガラスよりも上方の部分の内面を車内側から覆うトリムは、従来においても設けられることがあり、そのトリムの形状を若干変更するだけで、ハイマウントランプ30やウォッシャノズル40等を隠蔽することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る自動車1のように、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの外面にリヤスポイラ20を設けると、該部分5aにハイマウントランプ30及びウォッシャノズル40を配置するのが困難となり、これを解決しようとして、ハイマウントランプ30をウインドガラス11の上部の車内側に配置すると共に、ウォッシャノズル40をウインドガラス11を貫通して設けると、従来においては、背景技術で説明したように、車体後部の見栄えの問題や後方視界の問題が生じることとなるが、本実施の形態によれば、ウォッシャノズル40の貫通部11aを、ウインドガラス11の上縁に沿う部分を不透明とする不透明部60の直下方から後方を臨むように配置されたハイマウントランプ30に前後方向で対向する範囲Xの側方に設け、かつ前記不透明部60に、前記ウインドガラス11におけるウォッシャノズル40の貫通部11aの周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部60aを設けたから、前述したように、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る自動車1のように、車両の空力性能向上のために、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの外面の車幅方向中央部を両側部よりも低くなるように後ろ下りに傾斜させた場合、車幅方向中央部の上下幅が狭くなり、該部分5aにハイマウントランプ30及びウォッシャノズル40を配置するのが困難となり、前段落で説明したような問題が生じることとなるが、これについても、本実施の形態によれば、同様に解決して、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる。
【0051】
なお、本実施の形態に係る自動車1において、バックドア5のアウタパネル14に凹凸部14aを設けているのは、標準的にリヤスポイラ20を設けることとしているためであるが(他形状のものでも可能)、このような場合、バックドア5の凹凸部14aはリヤスポイラ20により常に隠蔽されることとなり、滑らかな曲線仕上げや表面仕上げ等が不要となる。したがって、バックドア5のコストの削減が図れる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの外面に、リヤスポイラ20が設けられているが、本発明は、リヤスポイラが設けられていない車両にも適用可能である。
【0053】
また、バックドア5のウインドガラス上方部分5aの外面は、車幅方向中央部が両側部よりも低くされているが、本発明は、低くされていない車両にも適用可能である。
【0054】
また、本発明は、セダンタイプの自動車にも適用可能である。すなわち、車体後部のトランクルームの前方に車室が設けられていると共に、該車室の後面部に後方視界確保用の窓が設けられており、かつ該車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側にハイマウントランプが配置され、ウインドガラスを貫通してウォッシャノズルが設けられている場合においても、本発明は適用可能である。
【0055】
なお、図8に示すように、不透明部60′に、ウインドガラス11における、トリム70の突出部70aの後端部に前後方向で対向する部位に、下方延長部60a′に連続するように枠状部60b′を設けてもよい。こうすることにより、デザイン的な一体性が一層高まり、車体後部の見栄えが一層向上することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両において、車体後部の見栄えを改善し、かつ後方視界の悪化を抑制することができる後部車体構造を提供することができ、自動車産業に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る後部車体構造が適用された自動車の斜め後方からの斜視図である。
【図2】図1のA部分を拡大して後方から見た図である。
【図3】バックドアの主要構成品等の単品斜視図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】車室後面部におけるハイマウントランプ周辺部分についての図1と同方向からの要部斜視図である(バックドア本体は透視)。
【図6】図2のC−C断面図である。
【図7】図2のD−D断面図である。
【図8】その他の例についての図2相当の図である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動車
5 バックドア(車室後面部)
5a バックドアのウインドガラス上方部分(車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分)
11 ウインドガラス
11a 貫通部
20 リヤスポイラ
30 ハイマウントランプ
40 ウォッシャノズル
60 不透明部
60a 下方延長部
70 トリム
X ウインドガラスにおけるハイマウントランプに前後方向で対向する範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室後面部の窓を構成するウインドガラスの車内側に配置されたハイマウントランプと、前記ウインドガラスを貫通して設けられたウォッシャノズルとを有する車両の後部車体構造であって、
前記ウインドガラスには、その上縁に沿う部分を不透明とする不透明部が設けられていると共に、
前記ハイマウントランプは、該ウインドガラスの不透明部の直下方から後方を臨むように配置されており、
かつ、前記ウォッシャノズルの貫通部は、該ウインドガラスにおけるハイマウントランプに前後方向で対向する範囲の側方に設けられていると共に、
前記不透明部に、前記ウインドガラスにおけるウォッシャノズルの貫通部の周囲の所定範囲を不透明とする下方延長部が設けられていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の後部車体構造において、
前記ウォッシャノズルの貫通部は、前記ウインドガラスにおけるハイマウントランプに前後方向で対向する範囲に近接して設けられていると共に、
前記ウインドガラスの不透明部の下方延長部は、前記対向する範囲側の側端が、前記対向する範囲の側端とほぼ同じ車幅方向位置で、かつ下端が、前記対向する範囲の下端とほぼ同じ高さ位置となるように形成されていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の後部車体構造において、
前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の内面を車内側から覆うトリムが設けられていると共に、
該トリムに、下方に突出し、前記ハイマウントランプ及びウォッシャノズルを車内側から覆う突出部が設けられていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造において、
前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の外面に、リヤスポイラが設けられていることを特徴とする後部車体構造。
【請求項5】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造において、
前記車室後面部におけるウインドガラスよりも上方の部分の外面は、車幅方向中央部が両側部よりも低くされていることを特徴とする後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58628(P2010−58628A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225760(P2008−225760)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】