説明

徐放性核酸マトリックス組成物

本発明は、核酸剤、生分解性ポリマーの持続放出のための組成物を提供する。本発明はまた、マトリックス組成物を製造する方法および核酸剤を制御放出するためにマトリックス組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性ポリマーと共に脂質をベースにしたマトリックスを含む、核酸をベースにした薬物/剤の持続および/または制御放出のための組成物を提供する。本発明はまた、マトリックス組成物を製造する方法および核酸活性剤を制御放出するためにマトリックス組成物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
治療用核酸
遺伝子治療は、薬物開発における主要な研究分野である。遺伝子治療は、特定のタンパク質を製造することができないことに関連する疾患をもたらす遺伝子欠陥を修正し、自己免疫疾患およびがんなどの後天性疾患を克服するための望ましい機構と考えられてきた。遺伝子治療は、多くの疾患の治療のための新たな予防的アプローチを提供することができるだろう。しかしながら、遺伝子治療の商業化の技術的障壁は、ポリヌクレオチド送達ならびに徐放および/または制御放出のための実用的で、有効かつ安全な手段の必要性である。負に帯電した膜とポリヌクレオチド上の高い負電荷との間の電荷反発のために、ポリヌクレオチドは、細胞膜を容易には透過しない。結果として、ポリヌクレオチドは、生物学的利用能が低く、典型的には1%未満しか細胞へ取り込まれない。動物モデルでは、遺伝子を所望の組織に投与するためにウイルスをベースにしたベクターがうまく使用されてきた。いくつかの場合、これらのアプローチは、治療レベルのタンパク質の長期(2年を超える)発現をもたらした。しかしながら、ウイルスをベースにしたアプローチの限界が広く報告されてきた。例えば、ウイルスタンパク質に対して生成される液性免疫応答のために、これらのベクターでの再投与は不可能である。十分な再現性のあるベクター供給を得るための製造上の課題に加えて、ウイルスベクター、特に、遺伝子発現のために肝臓を標的化するものに関連する重要な安全性の懸念も存在する。ウイルス遺伝子治療に関連する問題にもかかわらず、ウイルスは、非ウイルス性送達媒体よりも効率的であると多くの人によって考えられてきた。
【0003】
細胞中の特定の遺伝子発現のサイレンシングまたは下方制御は、アンチセンス療法、RNA干渉(RNAi)および酵素的核酸分子として知られている技術を使用したオリゴ核酸により影響され得る。アンチセンス療法とは、相補的DNAまたはRNAオリゴ核酸の使用を通して、標的DNAまたはmRNA配列を不活性化し、それによって遺伝子転写または翻訳を阻害するプロセスを指す。アンチセンス分子は、一本鎖、二本鎖または三重螺旋であり得る。発現を阻害することができる他の剤は、例えば、目的のmRNA転写産物を特異的に切断することができる、DNAザイムおよびリボザイムなどの酵素的核酸分子である。DNAザイムは、一本鎖および二本鎖標的配列の両方を切断することができる一本鎖デオキシリボヌクレオチドである。リボザイムは、目的のタンパク質をコードするmRNAの切断により遺伝子発現を配列特異的に阻害するためにますます使用されている触媒リボ核酸分子である。RNA干渉は、多くの真核生物で保存されている遺伝子発現の転写後阻害の方法である。これは、どの遺伝子が活性で、その遺伝子がどれくらい活性であるかを制御するのを助ける。2種類の低分子RNA分子−マイクロRNA(miRNA)および低分子干渉RNA(siRNA)−は、RNA干渉の中心である。RNAは、遺伝子の直接産物であり、これらの低分子RNAは、特定の他のRNAに結合し、例えば、メッセンジャーRNAがタンパク質を産生するのを防ぐことにより、その活性を増加させるまたは減少させることができる。RNA干渉は、寄生遺伝子−ウイルスおよびトランスポゾン−から細胞を守るだけでなく、一般に発達ならびに遺伝子発現を指示するのにも重要な役割を有する。低分子干渉RNA(siRNA)またはマイクロRNAにより媒介されるRNA干渉効果は、ヒト治療への潜在的用途を有するが、オリゴヌクレオチドの迅速な投与に通常使用される流体力学法は、ヒトでの使用に不適である。RNAiをベースにした治療の開発は、医薬品産業にとって比較的新しいものである。このような薬物の開発に対する障害の多くは克服されてきたが、適当な組織および細胞中へのRNAi化合物の最適な送達がまだ課題である。
【0004】
核酸の送達
非ウイルス性遺伝子治療の問題は、確実な生理学的に関連する発現をもたらすのに十分な核酸の送達および発現を達成することである。等張食塩水中のDNAプラスミド(いわゆる「ネイキッド」DNA)は、数年前に、生体内で種々の細胞にトランスフェクトすることが示されたが、このような無保護のプラスミドは、酵素的分解に感受性であり、動物モデルにおいて、取り込みの非再生性ならびに非常に可変性の発現および生体応答をもたらす。大半の組織における「ネイキッド」プラスミドの非常に低い生物学的利用能はまた、薬理反応を生成するために高用量のプラスミドが投与されることを要する。そのため、非ウイルス性遺伝子送達の分野は、プラスミド送達の効率を高め、長期発現をもたらし、他の医薬製剤で期待されるような貯蔵安定性のある製剤を提供することができるより効率的な合成送達系の開発に向けられてきた。
【0005】
細胞によるDNAの取り込みを促進する化学的方法には、DEAE−デキストランの使用が含まれる。しかしながら、この方法は、細胞生存率の低下をもたらし得る。リン酸カルシウムもまた、DNAと共沈殿して、DNAを細胞に導入する、一般的に使用される化学薬剤である。
【0006】
DNAを導入するための物理的方法は、再現性よく細胞にトランスフェクトする有効な手段となってきた。直接微量注入は、DNAを細胞の核に直接送達することができる1つの方法である(Capecchi 1980、Cell、22、479)。これは、単一細胞トランスフェクタントの分析を可能にする。いわゆる「微粒子銃」法は、DNAでコーティングした高速粒子を使用して、DNAを細胞および/または細胞小器官に物理的に挿入する。電気穿孔法は、DNAをトランスフェクトするための最も一般的な方法の1つである。この方法は、細胞膜を瞬間的に透過性にして、細胞膜を巨大分子複合体に透過性にするための高電圧電荷の使用を伴う。しかしながら、DNAを導入するための物理的方法は、細胞内損傷による細胞生存率のかなりの低下をもたらす。最近では、免疫穿孔法(immunoporation)と呼ばれる方法が、核酸を細胞に導入するための認識された技術となってきている(Bildirici等 2000、Nature、405、298)。使用する核酸に応じて、40〜50%の間のトランスフェクション効率が達成可能である。そのため、これらの方法は、大規模な最適化を必要とし、高価な機器も必要とする。
【0007】
核酸、典型的にはプラスミドDNA(「pDNA」)もしくはsiRNA/マイクロRNAの分解の問題を克服し、遺伝子導入の効率を高めるために、静電相互作用を通して核酸を縮合することにより核酸を保護するカチオン性縮合剤(ポリブレン、デンドリマー、キトサン、脂質およびペプチドなど)が開発されてきた。しかしながら、例えば、生体内の多数の筋肉細胞のトランスフェクションのための縮合プラスミド粒子の使用は、「ネイキッド」DNAのトランスフェクションに比べて成功してこなかった。
【0008】
保護的で相互作用的な非縮合系との相互作用によるプラスミド表面電荷および疎水性の調節を含む追加の戦略は、固形組織への直接投与に関して、「ネイキッド」DNAの使用より有利さを示した(例えば、国際出願公開第WO96/21470号)。
【0009】
核酸をカプセル化する生分解性マイクロスフェアも遺伝子送達に使用されてきた。例えば、国際出願公開第WO00/78357号は、ジヒドラジドにより誘導体化され、核酸と架橋して遅効放出マイクロスフェアを形成するヒアルロン酸を含む、マトリックス、ゲルおよびハイドロゲルを開示した。
【0010】
脂質をベースにした薬物送達システムは、薬学の分野で周知である。典型的には、これらのシステムは、生物学的利用能が低いもしくは毒性が高いまたはこの両方である薬物を製剤化するために使用される。受け入れられた一般的剤形には、小単層小胞、多層小胞および多くの他の種類のリポソームを含む多くの異なる種類のリポソーム;油中水型乳剤、水中油型乳剤、水中油中水型複乳剤、サブミクロン乳剤、微小乳剤を含む異なる種類の乳剤;ミセルならびに多くの他の疎水性薬物担体がある。これらの種類の脂質をベースにした送達システムは、標的化薬物送達または毒性の減少または代謝安定性の増加などを可能にするよう高度に特殊化することができる。日、週およびそれ以上の範囲の持続放出は、生体内の脂質をベースにした薬物送達システムに一般的に関連する特性ではない。両親媒性カチオン性分子からなるリポソームは、試験管内および生体内の遺伝子送達のための有用な非ウイルス性ベクターである。理論上、脂質のカチオン性頭部は、DNAの負に帯電した核酸骨格と会合して、脂質:核酸複合体を形成する。脂質:核酸複合体は、遺伝子導入ベクターとしていくつかの利点を有する。ウイルスベクターと異なり、脂質:核酸複合体は、本質的に無限の大きさの発現カセットを導入するために使用することができる。複合体はタンパク質を欠くので、誘起する免疫原性および炎症反応を少なくすることができる。さらに、複合体は、複製または組換えにより感染因子を形成することができず、組込み頻度が低い。化学的方法により示される毒性度を有さないので、カチオン性脂質(例えば、リポソーム)の使用は一般的な方法になってきている。
【0011】
試験管内で培養細胞中のレポーター遺伝子の検出可能な発現を示すことにより、両親媒性カチオン性脂質が生体内および試験管内で遺伝子送達を媒介することができることを、説得力をもって示すいくつかの刊行物が存在する。脂質:核酸複合体は、時々、遺伝子導入の成功を達成するにはウイルスベクターほど効率的ではないので、トランスフェクション効率が増加したカチオン性脂質の発見に、多くの努力がなされてきた(Gao等、1995、Gene Therapy 2、710〜722)。
【0012】
いくつかの研究が、動物およびヒトの両方で、生体内トランスフェクションのための両親媒性カチオン性脂質:核酸複合体の使用を報告した(Thierry等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1995、92、9742〜9746に概説されている)。しかしながら、安定な有効期間を有する複合体を調製するための技術的な問題は取り組まれてこなかった。例えば、ウイルスベクター製剤とは異なり、脂質:核酸複合体は、粒径の点から不安定である。そのため、全身注射に適した粒度分布を有する均一な脂質:核酸複合体を得ることは困難である。脂質:核酸複合体の大半の製剤は、準安定である。結果的に、これらの複合体は、典型的には、30分〜数時間に及ぶ短期間に使用しなければならない。DNA送達のための担体としてカチオン性脂質を使用した臨床試験では、2種の成分がベッドサイドで混合され、直ちに使用された。時間による脂質:核酸複合体のトランスフェクション活性の低下と共に構造的不安定性が、脂質媒介性遺伝子治療のさらなる開発のための課題であった。この分野での最近の開発の多くは、証明されたカチオン性送達剤を別の成分と結合させることによるカチオン性システムの修飾に焦点を当ててきた。しかしながら、カチオン性骨格抱合体は、毒性を克服するのに成功しておらず、治療用途に承認されているものはない。
【0013】
国際出願公開第WO95/24929号は、生体適合性マトリックス、好ましくは生分解性ポリマーマトリックスへの遺伝子のカプセル化または分散を開示しており、ここでは遺伝子は長期間にわたってマトリックスから拡散することができる。好ましくは、マトリックスは、マイクロスフェア、マイクロカプセル、フィルム、インプラントまたはステントなどの機器上のコーティングなどの微粒子の形である。
【0014】
米国特許第6048551号は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタル酸セルロース、ならびにLudragit R、LおよびEシリーズのポリマーおよびコポリマーマイクロスフェアを利用して、遺伝子ベクターをカプセル化する制御放出遺伝子送達システムを開示した。
【0015】
米国出願公開第20070141134号は、細胞膜を横切るポリヌクレオチドの送達を促進するために、ポリヌクレオチドをPEG遮蔽したミセル粒子に組み込むことができる、ポリヌクレオチドの細胞内送達を強化する組成物を開示している。遮蔽したミセル粒子へのポリヌクレオチドの組み込みは、共有結合性および非共有結合性の手段により提供される。体内での局在化を強化するために、他の細胞標的化剤を、遮蔽したミセル粒子に共有結合させることもできる。
【0016】
国際特許出願公開第WO2008/124634号は、核酸、特にsiRNA、shRNA、マイクロRNA、遺伝子治療プラスミドおよび他のオリゴヌクレオチドを生分解性ポリマー中にカプセル化し、それによって核酸をナノ沈殿によるナノ粒子形成前に無毒性および/または天然起源の脂質から構成される逆ミセル中に製剤化する方法を開示している。
【0017】
国際出願公開第WO2009/127060号は、核酸に加えて、カチオン性脂質、非カチオン性脂質および粒子の凝集を阻害する複合脂質を含む核酸−脂質粒子を開示している。
【0018】
本発明の優先日後に公開された、本発明の何人かの発明者等の国際特許出願公開第WO2010/007623号は、生分解性ポリマーを含む脂質をベースにしたマトリックスを含む、ステロイドおよび抗生物質などの疎水性分子の持続放出のための組成物を開示している。
【0019】
理想的な徐放性薬物送達システムは、使用する特定の添加剤の種類および比により容易に制御される動力学的特徴および他の特徴を示すべきである。遺伝子治療のための適当な組織および細胞中への治療用核酸剤の制御送達および持続送達のための核酸組成物および方法の改善への未だ対処されていない必要性が残っている。従来技術のどこにも、脂質および生体適合性ポリマーを含むマトリックス組成物が、核酸をベースにした剤を送達するための改善された特性を有することが示唆されてこなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、核酸剤、特に生体適合性ポリマーを含む脂質をベースにしたマトリックスを含む核酸をベースにした薬物の持続放出のための組成物を提供する。マトリックス組成物は、核酸剤の局所送達または局所適用に特に適している。本発明はまた、マトリックス組成物を製造する方法ならびに活性核酸成分を制御放出および/または徐放するためにマトリックス組成物を使用する方法を提供する。
【0021】
本発明は、一部は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む水性溶液中に存在する負に帯電した核酸を、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーまたはこれらの組み合わせであり得る少なくとも1種の生体適合性ポリマーを含む脂質をベースにしたマトリックスに効率的に担持させることができるという予想外の発見に基づく。さらに、核酸は、制御および/または持続様式でマトリックスから放出され得る。
【0022】
本発明のマトリックス組成物は、細胞または組織への核酸剤の効率的局所送達と核酸剤の制御放出および/または徐放を組み合わせるという点で、今までに知られている核酸送達のための組成物およびマトリックスより有利である。
【0023】
一態様では、本発明は、核酸を徐放および/または制御放出するのに適合した、(a)極性基を有する少なくとも1種の脂質を含む第1脂質成分と会合した薬学的に許容される生体適合性ポリマーと;(b)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有する少なくとも1種のリン脂質を含む第2脂質成分と;(c)少なくとも1種の核酸剤と;(d)ポリエチレングリコール(PEG)とを含むマトリックス組成物を提供する。
【0024】
治療上のまたは診断上の有用性を有する任意の核酸分子を、本発明のマトリックス組成物の一部として使用することができる。核酸剤は、一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖のDNA分子、RNA分子を含むことができる。核酸剤の非限定的列挙には、一本鎖および二本鎖のプラスミドDNA、直鎖DNA(ポリ−およびオリゴ−ヌクレオチド)、染色体DNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスDNA/RNA、RNAi、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA、固定化核酸類似体(locked nucleic acia analogue)(LNA)、オリゴヌクレオチドDNA(ODN)、免疫刺激配列(immunostimulating sequence)(ISS)ならびにリボザイムが含まれる。
【0025】
本発明による核酸剤は、天然分子、修飾分子または人工分子を含むことができる。
【0026】
特定の実施形態によると、核酸は、PEGとの非共有相互作用を有する。
【0027】
特定の実施形態によると、PEGは、1000〜10000の範囲の分子量を有する直鎖状PEGである。典型的な実施形態によると、PEG分子量は、1000〜8000の範囲、より典型的には8000未満である。生分解性PEG分子、特により高分子量を有する分解性スペーサーを含むPEG分子もまた、本発明の教示にしたがって使用することができる。
【0028】
5000以下の分子量を有するPEG分子は、医薬品用途が現在承認されている。したがって、特定の典型的な実施形態によると、活性PEG分子は、5000までの分子量を有する。
【0029】
いくつかの実施形態によると、マトリックス組成物は、少なくとも1種のカチオン性脂質を含む。特定の実施形態によると、カチオン性脂質は、DCコレステロール、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC)、1,2−ジ−O−オクタデセニル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)などからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0030】
特定の実施形態によると、生体適合性ポリマーは、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態によると、生分解性ポリマーは、PLA(ポリ乳酸)、PGA(ポリグリコール酸)、PLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸))およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエステルを含む。他の実施形態によると、非生分解性ポリマーは、単独のまたはコポリマー混合物としての、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGアクリレート、PEGメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、ポリメチルアクリレート、シリコーン、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸およびこれらの誘導体からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0031】
追加の実施形態によると、非生分解性ポリマーおよび生分解性ポリマーは、ブロックコポリマー、例えば、PLGA−PEG−PLGAなどを形成する。
【0032】
特定の実施形態によると、極性基を有する脂質は、ステロール、トコフェロールおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。特定の具体的な実施形態によると、極性基を有する脂質は、ステロールまたはその誘導体である。典型的な実施形態によると、ステロールはコレステロールである。
【0033】
特定の実施形態によると、第1脂質成分は、生体適合性ポリマーと混合されて、非共有会合を形成する。
【0034】
特定の具体的な実施形態によると、第1脂質成分は、ステロールまたはその誘導体であり、生体適合性ポリマーは、生分解性ポリエステルである。これらの実施形態によると、生分解性ポリエステルは、非共有結合を通してステロールと会合している。
【0035】
いくつかの実施形態によると、第2脂質成分は、ホスファチジルコリンまたはその誘導体を含む。他の実施形態によると、第2脂質成分は、ホスファチジルコリンまたはその誘導体の混合物を含む。なお他の実施形態によると、第2脂質成分は、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン、またはこれらの誘導体の混合物を含む。追加の実施形態によると、第2脂質成分は、ステロールおよびその誘導体をさらに含む。典型的な実施形態によると、ステロールはコレステロールである。なおさらなる実施形態によると、第2脂質成分は、種々の種類のリン脂質の混合物を含む。特定の典型的な実施形態によると、第2脂質成分は、スフィンゴ脂質、トコフェロールおよびペグ化脂質の少なくとも1つをさらに含む。
【0036】
追加の実施形態によると、総脂質と生体適合性ポリマーの重量比は、1:1と9:1との間(1:1と9:1を含めて)である。
【0037】
特定の実施形態によると、マトリックス組成物は、均一である。他の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界が生分解性ポリマーによって決定される脂質をベースにしたマトリックスの形である。なおさらなる実施形態では、マトリックス組成物は、インプラントの形である。
【0038】
特定の具体的な実施形態では、本発明は、(a)生分解性ポリエステルと;(b)ステロールと;(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと;(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと;(e)核酸剤と;(f)PEGとを含むマトリックス組成物を提供する。
【0039】
特定の実施形態では、マトリックス組成物は、少なくとも50重量%の脂質を含む。特定の追加の実施形態では、マトリックス組成物は、標的化部分をさらに含む。
【0040】
特定の実施形態では、マトリックス組成物は、生体内で分解されて、放出される核酸のいくらかまたは全ての質量が吸収された小胞を形成することができる。他の実施形態では、マトリックス組成物は、生体内で分解されて、活性剤および標的化部分が吸収された小胞を形成することができる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0041】
追加の態様によると、本発明は、本発明のマトリックス組成物および薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
特定の実施形態によると、本発明のマトリックス組成物は、有機溶媒および水の除去後に、インプラントの形である。別の実施形態では、インプラントは、均一である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0043】
特定の実施形態によると、本発明の組成物からインプラントを製造する方法は、(a)バルク材料の形で本発明の方法によりマトリックス組成物を製造するステップと;(b)バルク材料を所望の形状の鋳型または固体容器に移すステップとを含む。
【0044】
別の態様によると、本発明は、
(a)(i)生体適合性ポリマーおよび(ii)極性基を有する少なくとも1種の脂質を含む第1脂質成分を第1揮発性有機溶媒の中に混合するステップと;
(b)ポリエチレングリコールを核酸剤の水性溶液の中に混合するステップと;
(c)ステップ(b)で得られた溶液を第2揮発性有機溶媒および少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有する少なくとも1種のリン脂質を含む第2脂質成分と混合するステップと;
(d)ステップ(a)および(c)で得られた溶液を混合して、均一な混合物を形成するステップと;
(e)揮発性溶媒および水を除去し、
それによって核酸剤を含む均一なポリマー−リン脂質マトリックスを製造するステップと
を含む核酸剤の送達ならびに徐放および/または制御放出のためのマトリックス組成物を製造する方法を提供する。
【0045】
特定の実施形態によると、ステップ(c)は、任意選択により、(i)蒸発、凍結乾燥または遠心分離により溶媒を除去して沈殿を形成するステップと;(ii)結果として生じた沈殿を第2揮発性有機溶媒に懸濁させるステップとをさらに含む。
【0046】
特定の溶媒の選択は、特定の核酸および特定の処方で使用される他の物質および活性核酸の所期の用途にしたがって、ならびに本明細書に記載する本発明の実施形態にしたがってなされる。本発明のマトリックスを形成する特定の脂質は、核酸の所望の放出速度にしたがって、および本明細書に記載する本発明の実施形態にしたがって選択される。
【0047】
溶媒は、典型的には、得られる溶液の特性にしたがって決定される制御温度で行われる蒸発により除去される。有機溶媒および水の残渣は真空を使用してさらに除去される。
【0048】
本発明によると、異なる種類の揮発性有機溶液の使用は、均一な耐水性の脂質をベースにしたマトリックス組成物の形成を可能にする。種々の実施形態によると、第1および第2溶媒は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態によると、一方の溶媒は非極性であってよく、他方の溶媒は好ましくは水混和性である。
【0049】
特定の実施形態によると、マトリックス組成物は、水を実質的に含まない。用語「水を実質的に含まない」とは、1重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.8重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.6重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.4重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.2重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、マトリックスの耐水特性に影響を及ぼす量の水がないことを指す。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0050】
他の実施形態では、マトリックス組成物は、水を基本的に含まない。「基本的に含まない」とは、0.1重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.08重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.06重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.04重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.02重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.01重量%未満の水を含む組成物を指す。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0051】
別の実施形態では、マトリックス組成物は、水を含まない。別の実施形態では、この用語は、検出可能な量の水を含まない組成物を指す。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0052】
特定の典型的な実施形態によると、本発明は、
(a)(i)生分解性ポリエステルおよび(ii)ステロールを非極性揮発性有機溶媒の中に混合するステップと;
(b)1000〜8000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールを核酸剤の水性溶液の中に混合するステップと;
(c)ステップ(b)で得られた溶液をホスファチジルエタノールアミンおよび/またはホスファチジルコリンおよび/またはステロールを含む水混和性揮発性有機溶媒と混合するステップと;
(d)ステップ(a)および(c)で得られた溶液を混合して、均一な混合物を形成するステップと;
(e)有機溶媒および水を除去するステップと;
(f)真空により残っている溶媒をさらに除去するステップと
を含む、マトリックス組成物を製造する方法を提供する。
【0053】
特定の実施形態によると、生分解性ポリエステルは、PLA、PGAおよびPLGAからなる群から選択される。他の実施形態では、生分解性ポリエステルは、当技術分野で既知の他の任意の適当な生分解性ポリエステルまたはポリアミンである。なお追加の実施形態では、非極性有機溶媒を含む混合物は、水混和性揮発性有機溶媒混合物と混合する前に均質化される。他の実施形態では、水混和性有機溶媒を含む混合物は、非極性有機溶媒を含む混合物と混合する前に均質化される。特定の実施形態では、ステップ(a)の混合物中のポリマーは、脂質飽和である。追加の実施形態では、マトリックス組成物は、脂質飽和である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0054】
本発明のマトリックス組成物は、異なる基板の表面を完全にまたは部分的にコーティングするために使用することができる。特定の実施形態によると、コーティングされる基板は、炭素繊維、ステンレス鋼、コバルト−クロム、チタン合金、タンタル、セラミックおよびコラーゲンもしくはゼラチンからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む。他の実施形態では、基板は、任意の医療機器および骨充填材粒子を含むことができる。骨充填材粒子は、同種の(すなわち、ヒト供給源からの)、異種の(すなわち、動物供給源からの)および人工骨粒子のいずれか1つであり得る。他の実施形態では、コーティングされた基板を使用した治療およびコーティングされた基板の投与は、類似のコーティングされていない基板の治療および投与について当技術分野で既知の手順に従う。
【0055】
本発明の組成物を使用した徐放期間は、以下の4つの主要な因子を考慮して計画することができることが強調されなければならない:(i)ポリマーと脂質含量、特に少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するリン脂質との間の重量比、(ii)バイオポリマーおよび脂質の生化学的および/または生物物理学的特性、(iii)所与の組成物に使用される異なる脂質間の比、ならびに(iv)核酸剤とポリエチレングリコールとのインキュベーション時間。
【0056】
具体的には、ポリマーの分解速度および脂質の流動性を考慮すべきである。例えば、PLGA(85:15)ポリマーは、PLGA(50:50)ポリマーよりも遅く分解するだろう。ホスファチジルコリン(14:0)は、体温で、ホスファチジルコリン(18:0)よりも流動性である(より強固でなく、より規則正しくない)。したがって、例えば、PLGA(85:15)およびホスファチジルコリン(18:0)を含むマトリックス組成物に組み込まれた核酸剤の放出速度は、PLGA(50:50)およびホスファチジルコリン(14:0)から構成されるマトリックスに組み込まれた核酸剤の放出速度よりも遅いだろう。放出速度を決定する別の態様は、核酸の物理的特性である。さらに、核酸剤、特に核酸をベースにした薬物の放出速度は、第2脂質成分の製剤への他の脂質の添加によりさらに制御することができる。これには、ラウリン酸(C12:0)などの異なる長さの脂肪酸、膜活性ステロール(コレステロールなど)、またはホスファチジルエタノールアミンなどの他のリン脂質が含まれ得る。核酸剤とポリエチレングリコールとのインキュベーション時間は、マトリックスからの核酸の放出速度に影響を及ぼす。数時間の範囲のより長いインキュベーション時間は、より高い放出速度をもたらす。種々の実施形態によると、活性剤は、数日から数ヶ月の間に及ぶ所望の期間にわたって組成物から放出される。
【0057】
特定の実施形態によると、核酸をベースにした剤の少なくとも30%は、ゼロ次反応速度論でマトリックス組成物から放出される。他の実施形態によると、核酸をベースにした剤の少なくとも50%は、ゼロ次反応速度論でマトリックス組成物から放出される。
【0058】
本発明のこれらのおよび他の特徴ならびに利点は、以下の本発明の詳細な説明からより容易に理解され、認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ssDNA濃度とssDNAの5’末端に結合した蛍光プローブの蛍光強度との間の関係を示す標準曲線を示す図である。
【図2】ポリエチレングリコール(PEG)なしで調製したマトリックス組成物に担持されたssDNAの時間(日)に対する放出速度を示す図である。放出速度は、担持されたssDNAの推定量に正規化した。
【図3】実施例2に記載されるマトリックス組成物から、ssDNAの水和後に放出された脂質小胞の光学顕微鏡(X400)写真を表す図である。図3Aは、水和後に媒体中に放出された典型的な脂質小胞を示す。図3Bは、同一小胞からの緑色蛍光発光を示し、これらの小胞が蛍光プローブを含んでいたことを示している。
【図4】マトリックス組成物から放出されたssDNAを使用して増幅させたPCR産物のアガロースゲルを示す図である。
【図5−1】GeneScan解析により測定した、マトリックス組成物から放出されたssDNAのサイズを示す図である。
【図5−2】GeneScan解析により測定した、マトリックス組成物から放出されたssDNAのサイズを示す図である。
【図5−3】GeneScan解析により測定した、マトリックス組成物から放出されたssDNAのサイズを示す図である。
【図5−4】GeneScan解析により測定した、マトリックス組成物から放出されたssDNAのサイズを示す図である。
【図5−5】GeneScan解析により測定した、マトリックス組成物から放出されたssDNAのサイズを示す図である。
【図6】ポリエチレングリコール(PEG)を使用して、ssDNAおよびPEGの異なるインキュベーション時間で調製したマトリックス組成物に担持されたssDNAの時間(日)に対する放出速度を示す図である。
【図7】マトリックス組成物中の主な脂質として異なる長さの脂肪酸鎖を有するリン脂質を使用することの、担持されたssDNAの放出速度への影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、生体適合性ポリマーと共に脂質をベースにしたマトリックスを含む、核酸の持続および/または制御放出のための組成物を提供する。特に、本発明のマトリックス組成物は、核酸の局所放出に適している。本発明はまた、マトリックス組成物を製造する方法、および有効成分を、それを必要とする被験体の体内に制御放出するためにマトリックス組成物を使用する方法を提供する。
【0061】
一態様によると、本発明は、核酸を徐放するのに適合した、(a)極性基を有する少なくとも1種の脂質を含む第1脂質成分と会合した薬学的に許容される生体適合性ポリマーと;(b)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有する少なくとも1種のリン脂質を含む第2脂質成分と;(c)少なくとも1種の核酸剤と;(d)ポリエチレングリコール(PEG)とを含むマトリックス組成物を提供する。
【0062】
特定の実施形態によると、生体適合性ポリマーは、生分解性である。他の実施形態によると、生体適合性ポリマーは、非生分解性である。追加の実施形態によると、生体適合性ポリマーは、任意選択によりブロックコポリマーとして、生分解性および非生分解性ポリマーの組み合わせを含む。
【0063】
特定の実施形態によると、本発明は、(a)薬学的に許容される生分解性ポリエステルと;(b)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するリン脂質と;(c)薬学的に活性な核酸剤と;(d)PEGとを含むマトリックス組成物を提供する。
【0064】
核酸剤は、治療上のまたは診断上の有用性を有する任意の核酸分子を含む。いくつかの実施形態によると、核酸剤は、一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖のDNA分子、RNA分子を含む。他の実施形態によると、核酸をベースにした剤は、一本鎖および二本鎖のプラスミドDNA、直鎖DNA(ポリ−およびオリゴ−ヌクレオチド)、染色体DNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスDNA/RNA、RNAi、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA、固定化核酸類似体(LNA)、オリゴヌクレオチドDNA(ODN)、免疫刺激配列(ISS)ならびにリボザイムからなる群から選択される。特定の典型的な実施形態によると、核酸剤は、治療用途のためのものである。
【0065】
いくつかの実施形態によると、脂質飽和マトリックス組成物は、少なくとも1種のカチオン性脂質を含む。用語「カチオン性脂質」とは、生理的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を運ぶいくつかの脂質種のいずれかを指す。このような脂質には、それだけに限らないが、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);3−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が含まれる。さらに、カチオン性脂質のいくつかの市販の調製物が入手可能であり、本発明に使用することができる。これらには、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(GIBCO/BRL、Grand Island、N.Y.、USAから商業的に入手可能な、DOTMAおよび1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(「DOPE」)を含むカチオン性リポソーム);LIPOFECTAMINE(登録商標)(GIBCO/BRLから商業的に入手可能な、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)および(「DOPE」)を含むカチオン性リポソーム);ならびにTRANSFECTAM(登録商標)(Promega Corp.、Madison,Wis.、USAから商業的に入手可能な、エタノール中ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)を含むカチオン性脂質)が含まれる。以下の脂質は、カチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMAなど。いかなる特定の理論または作用機構にも拘束されることを望むものではないが、マトリックスのカチオン性脂質は、核酸剤を含む本発明のマトリックスの、細胞または組織中への内部移行を促進する。特定の実施形態によると、細胞および/または組織は、ヒトの体の一部を形成する。
【0066】
他の実施形態によると、生分解性ポリマーは、カチオン化グアーガム、ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミドコポリマー、四級化ポリビニルピロリドンおよびこれらの誘導体、ならびに種々のポリクオタニウム化合物(polyquaternium−compound)などのカチオン性ポリマーを含む。
【0067】
特定の実施形態によると、第2脂質成分のリン脂質は、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンである。別の実施形態では、第2脂質成分のリン脂質は、少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンを含む。別の実施形態では、第2脂質成分のリン脂質は、ステロール、特にコレステロールをさらに含む。
【0068】
特定の実施形態では、マトリックス組成物は、脂質飽和である。本明細書で使用する「脂質飽和」とは、マトリックス中に存在する任意の核酸剤および任意選択により標的化部分と結合したリン脂質ならびに存在し得る他の任意の脂質を含む、脂質によるマトリックス組成物のポリマーの飽和を指す。マトリックス組成物は、存在するどんな脂質によっても飽和される。本発明の脂質飽和マトリックスは、ポリビニルアルコールなどの合成乳化剤または界面活性剤を必要としないという追加の利点を示す。したがって、本発明の組成物は、典型的には、ポリビニルアルコールを実質的に含まない。脂質飽和を達成するポリマー:脂質比を決定する方法およびマトリックスの脂質飽和の程度を測定する方法は、当技術分野で既知である。
【0069】
他の実施形態では、マトリックス組成物は、均一である。なお追加の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界が生分解性ポリマーにより決定される脂質飽和マトリックスの形である。特定の実施形態によると、マトリックス組成物は、インプラントの形である。
【0070】
特定の具体的な実施形態では、本発明は、(a)生分解性ポリエステルと;(b)ステロールと;(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと;(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと;(e)少なくとも1種の核酸をベースにした薬物と;(f)PEGとを含むマトリックス組成物を提供する。他の典型的な実施形態では、マトリックス組成物は、脂質飽和である。
【0071】
他の典型的な実施形態では、本発明は、(a)生分解性ポリエステルと;(b)ステロールと;(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと;(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと;(e)核酸をベースにした活性剤と;(f)PEGとを含むマトリックス組成物を提供する。
【0072】
特定の実施形態によると、生分解性ポリエステルは、非共有結合を通してステロールと会合している。
【0073】
本明細書で提供する場合、本発明のマトリックスは、変化する厚さおよび形状の三次元形状に成形することができる。したがって、形成されるマトリックスは、球、立方体、棒、チューブ、シートまたは紐を含む特定の形状をとるよう製造することができる。マトリックスの調製中に凍結乾燥ステップを使用する場合、任意の不活性材料から作ることができ、球もしくは立方体に関しては全ての面でまたはシートに関しては限られた数の面でマトリックスと接触することができる、鋳型または支持体の形状によって形状が決定される。マトリックスは、インプラントの設計の必要に応じて、体腔の形に成形することができる。ハサミ、メス、レーザー光または他の任意の切断器具を使用してマトリックスの一部を除去することにより、三次元構造で必要とされる緻密化を行うことができる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0074】
追加の実施形態によると、本発明のマトリックス組成物は、骨移植材のコーティングを提供する。特定の実施形態によると、骨移植材は、同種移植片、アロプラストおよび異種移植片からなる群から選択される。さらなる実施形態によると、本発明のマトリックスは、コラーゲンまたはコラーゲンマトリックスタンパク質と組み合わせることができる。
【0075】
脂質
「ホスファチジルコリン」とは、ホスホリルコリン頭部基を有するホスホグリセリドを指す。ホスファチジルコリン化合物は、別の実施形態では、以下の構造:
【化1】

を有する。
【0076】
RおよびR’部分は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体である。いくつかの実施形態では、脂肪酸部分は、飽和脂肪酸部分である。いくつかの実施形態では、脂肪酸部分は、不飽和脂肪酸部分である。「飽和」とは、炭化水素鎖中に二重結合が存在しないことを指す。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、16〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、結果として生じるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるよう選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方パルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方アラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、パルミトイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、パルミトイルおよびアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、アラキドイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ミリストイルである。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0077】
別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、天然起源のホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、合成ホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、天然起源の同位体の分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、重水素化ホスファチジルコリンである。典型的には、ホスファチジルコリンは、対称性ホスファチジルコリン(すなわち、2個の脂肪酸部分が同一であるホスファチジルコリン)である。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、非対称性ホスファチジルコリンである。
【0078】
ホスファチジルコリンの非限定的な例は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリンおよび本明細書上に列挙された脂肪酸部分のいずれかにより修飾されたホスファチジルコリンである。特定の実施形態では、ホスファチジルコリンは、DSPC、DPPCおよびDMPCからなる群から選択される。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、当技術分野で既知の他の任意のホスファチジルコリンである。各ホスファチジルコリンは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0079】
重水素化ホスファチジルコリンの非限定的な例は、重水素化1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(重水素化DSPC)、重水素化ジオレオイルホスファチジルコリン(重水素化DOPC)および重水素化1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリンである。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、重水素化DSPC、重水素化DOPCおよび重水素化1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリンからなる群から選択される。別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、当技術分野で既知の他の任意の重水素化ホスファチジルコリンである。
【0080】
特定の実施形態では、ホスファチジルコリン(PC)は、マトリックス組成物の総脂質含量の少なくとも30%を構成する。他の実施形態では、PCは、総脂質含量の少なくとも35%、あるいは総脂質含量の少なくとも40%、なおあるいは総脂質含量の少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%を構成する。別の実施形態では、PCは、総脂質含量の95%超を構成する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0081】
「ホスファチジルエタノールアミン」とは、ホスホリルエタノールアミン頭部基を有するホスホグリセリドを指す。ホスファチジルエタノールアミン化合物は、別の実施形態では、以下の構造:
【化2】

を有する。
【0082】
RおよびR’部分は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、飽和脂肪酸部分である。別の実施形態の「飽和」とは、炭化水素鎖中に二重結合が存在しないことを指す。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、14〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、14〜16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、16〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、結果として生じるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるよう選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方パルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方アラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、ミリストイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、ミリストイルおよびアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、ミリストイルおよびパルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、パルミトイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、パルミトイルおよびアラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、アラキドイルおよびステアロイルである。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0083】
別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、天然起源のホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、合成ホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、重水素化ホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、天然起源の同位体の分布を含む。典型的には、ホスファチジルエタノールアミンは、対称性ホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、非対称性ホスファチジルエタノールアミンである。
【0084】
ホスファチジルエタノールアミンの非限定的な例は、ジメチルジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)および本明細書上に列挙された脂肪酸部分のいずれかにより修飾されたホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、DMPEおよびDPPEからなる群から選択される。
【0085】
重水素化ホスファチジルエタノールアミンの非限定的な例は、重水素化DMPEおよび重水素化DPPEである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、重水素化DMPEおよび重水素化DPPEからなる群から選択される。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、当技術分野で既知の他の任意の重水素化ホスファチジルエタノールアミンである。
【0086】
別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、当技術分野で既知の他の任意のホスファチジルエタノールアミンである。各ホスファチジルエタノールアミンは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0087】
一実施形態の「ステロール」とは、A環の3位にヒドロキシ基を有するステロイドを指す。別の実施形態では、この用語は、以下の構造:
【化3】

を有するステロイドを指す。
【0088】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のステロールは、動物ステロールである。別の実施形態では、ステロールは、コレステロールである:
【化4】

【0089】
別の実施形態では、ステロールは、当技術分野で既知の他の任意の動物ステロールである。別の実施形態では、ステロールのモルは、存在する総脂質のモルの40%までになる。別の実施形態では、ステロールは、マトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0090】
別の実施形態では、コレステロールは、マトリックス組成物の脂質含量の総重量の10〜60%の量で存在する。別の実施形態では、重量パーセントは、20〜50%である。別の実施形態では、重量パーセントは、10〜40%である。別の実施形態では、重量パーセントは、30〜50%である。別の実施形態では、重量パーセントは、20〜60%である。別の実施形態では、重量パーセントは、25〜55%である。別の実施形態では、重量パーセントは、35〜55%である。別の実施形態では、重量パーセントは、30〜60%である。別の実施形態では、重量パーセントは、30〜55%である。別の実施形態では、重量パーセントは、20〜50%である。別の実施形態では、重量パーセントは、25〜55%である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0091】
別の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンまたはステロール以外の脂質をさらに含む。特定の実施形態によると、追加の脂質は、ホスホグリセリドである。他の実施形態によると、追加の脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルイノシトールからなる群から選択される。なお追加の実施形態では、追加の脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびスフィンゴミエリンからなる群から選択される。なおさらなる実施形態によると、上記追加の脂質の任意の2種以上の組み合わせが、本発明のマトリックス中に存在する。特定の実施形態によると、ポリマー、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ステロールおよび追加の脂質は全て、マトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0092】
なお追加の実施形態によると、本発明の組成物は、ホスファチジルセリンをさらに含む。本明細書で使用する「ホスファチジルセリン」とは、ホスホリルセリン頭部基を有するホスホグリセリドを指す。ホスファチジルセリン化合物は、別の実施形態では、以下の構造:
【化5】

を有する。
【0093】
RおよびR’部分は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、結果として生じるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるよう選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方パルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方アラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、ミリストイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、上記脂肪酸部分の2種の組み合わせである。
【0094】
他の実施形態では、ホスファチジルセリンは、天然起源のホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、合成ホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、重水素化ホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、天然起源の同位体の分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、対称性ホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、非対称性ホスファチジルセリンである。
【0095】
ホスファチジルセリンの非限定的な例は、本明細書上に列挙された脂肪酸部分のいずれかにより修飾されたホスファチジルセリンである。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、当技術分野で既知の他の任意のホスファチジルセリンである。各ホスファチジルセリンは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0096】
他の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルグリセロールをさらに含む。本明細書で使用する「ホスファチジルグリセロール」とは、ホスホリルグリセロール頭部基を有するホスホグリセリドを指す。ホスファチジルグリセロール化合物は、別の実施形態では、以下の構造:
【化6】

を有する。
【0097】
左部との2つの結合は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体と結合している。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、天然起源のホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、合成ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、重水素化ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、天然起源の同位体の分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、対称性ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、非対称性ホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、この用語は、以下の構造:
【化7】

を有するジホスファチジルグリセロール化合物を含む。
【0098】
RおよびR’部分は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、結果として生じるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるよう選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方パルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方アラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、ミリストイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、上記脂肪酸部分の2種の組み合わせである。
【0099】
ホスファチジルグリセロールの非限定的な例は、本明細書上に列挙された脂肪酸部分のいずれかにより修飾されたホスファチジルグリセロールである。別の実施形態では、ホスファチジルグリセロールは、当技術分野で既知の他の任意のホスファチジルグリセロールである。各ホスファチジルグリセロールは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0100】
なお追加の実施形態では、本発明の組成物は、ホスファチジルイノシトールをさらに含む。本明細書で使用する「ホスファチジルイノシトール」とは、ホスホリルイノシトール頭部基を有するホスホグリセリドを指す。ホスファチジルイノシトール化合物は、別の実施形態では、以下の構造:
【化8】

を有する。
【0101】
RおよびR’部分は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、飽和脂肪酸部分である。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、結果として生じるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるよう選択される。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ミリストイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方パルミトイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方ステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、両方アラキドイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、ミリストイルおよびステアロイルである。別の実施形態では、脂肪酸部分は、上記脂肪酸部分の2種の組み合わせである。
【0102】
別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、天然起源のホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、合成ホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、重水素化ホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、天然起源の同位体の分布を含む。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、対称性ホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、非対称性ホスファチジルイノシトールである。
【0103】
ホスファチジルイノシトールの非限定的な例は、本明細書上に列挙された脂肪酸部分のいずれかにより修飾されたホスファチジルイノシトールである。別の実施形態では、ホスファチジルイノシトールは、当技術分野で既知の他の任意のホスファチジルイノシトールである。各ホスファチジルイノシトールは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0104】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、スフィンゴ脂質をさらに含む。特定の実施形態では、スフィンゴ脂質は、セラミドである。なお他の実施形態では、スフィンゴ脂質は、スフィンゴミエリンである。「スフィンゴミエリン」とは、スフィンゴシン由来のリン脂質を指す。スフィンゴミエリン化合物は、別の実施形態では、以下の構造:
【化9】

を有する。
【0105】
R部分は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体である。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは、天然起源のスフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは、合成スフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは、重水素化スフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは、天然起源の同位体の分布を含む。
【0106】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物のスフィンゴミエリンの脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、結果として生じるマトリックスのゲル−液晶転移温度が少なくとも40℃となるよう選択される。
【0107】
スフィンゴミエリンの非限定的な例は、本明細書上に列挙された脂肪酸部分のいずれかにより修飾されたスフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴミエリンは、当技術分野で既知の他の任意のスフィンゴミエリンである。各スフィンゴミエリンは、本発明の別々の実施形態を表す。
【0108】
「セラミド」とは、構造:
【化10】

を有する化合物を指す。
【0109】
左部との2つの結合は、脂肪酸、典型的には天然起源の脂肪酸または天然起源の脂肪酸の誘導体と結合している。別の実施形態では、脂肪酸は長鎖(C24またはそれより大きい)である。別の実施形態では、脂肪酸は、飽和脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸は、モノエン脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸は、n−9モノエン脂肪酸である。別の実施形態では、脂肪酸は、2位にヒドロキシ基を含む。別の実施形態では、脂肪酸は、当技術分野で既知の他の適当な脂肪酸である。別の実施形態では、セラミドは、天然起源のセラミドである。別の実施形態では、セラミドは、合成セラミドである。別の実施形態では、セラミドは、マトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0110】
各スフィンゴ脂質は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0111】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ペグ化脂質をさらに含む。別の実施形態では、PEG部分は、500〜5000ダルトンのMWを有する。別の実施形態では、PEG部分は、他の任意の適当なMWを有する。適当なPEG修飾脂質の非限定的な例には、メトキシ末端基を有するPEG部分、例えば、以下に示すPEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸(構造AおよびB)、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロール(構造CおよびD)、PEG修飾ジアルキルアミン(構造E)およびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミン(構造F)が含まれる。別の実施形態では、PEG部分は、当技術分野で使用される他の任意の末端基を有する。別の実施形態では、ペグ化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、PEG修飾ジアルキルアミンおよびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミンからなる群から選択される。別の実施形態では、ペグ化脂質は、当技術分野で既知の他の任意のペグ化リン脂質である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【化11】

【0112】
特定の実施形態によると、ペグ化脂質は、マトリックス組成物中の総脂質の約50モル%の量で存在する。他の実施形態では、その割合は、約45モル%、あるいは約40モル%、約35モル%、約30モル%、約25モル%、約20モル%、約15モル%、約10モル%および約5モル%またはそれ未満である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0113】
ポリマー
特定の実施形態によると、生体適合性ポリマーは、生分解性である。特定の現在の典型的な実施形態によると、生分解性ポリマーは、ポリエステルである。
【0114】
特定の実施形態によると、本発明の教示にしたがって使用される生分解性ポリエステルは、PLA(ポリ乳酸)である。典型的な実施形態によると、「PLA」とは、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)およびポリ(DL−ラクチド)を指す。ポリ(DL−ラクチド)の代表的な構造を以下に示す:
【化12】

【0115】
他の実施形態では、ポリマーは、PGA(ポリグリコール酸)である。なお追加の実施形態では、ポリマーは、PLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸))である。PLGAに含まれるPLAは、当技術分野で既知の任意のPLA、例えば、エナンチオマーまたはラセミ混合物であり得る。PLGAの代表的な構造を以下に示す:
【化13】

【0116】
特定の実施形態によると、PLGAは、1:1の乳酸/グリコール酸比を含む。別の実施形態では、比は60:40である。別の実施形態では、比は70:30である。別の実施形態では、比は80:20である。別の実施形態では、比は90:10である。別の実施形態では、比は95:5である。別の実施形態では、比は、本明細書に定義するような持続生体内放出プロファイルに適した別の比である。別の実施形態では、比は50:50である。特定の典型的な実施形態では、比は75:25である。PLGAは、ランダムまたはブロックコポリマーのいずれかであり得る。PLGAはまた、PEGなどの他のポリマーを含むブロックコポリマーであり得る。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0117】
別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、それが水素結合受容体部分を含むという条件で、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物およびポリアルキルシアノアクリレートからなる群から選択される。別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、PLA、PGA、PLGA、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物およびポリアルキルシアノアクリレートからなる群から選択される任意の2種のモノマーの組み合わせを含むブロックコポリマーである。別の実施形態では、生分解性ポリエステルは、上記モノマーの任意の2種の組み合わせを含むランダムコポリマーである。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0118】
本発明の教示による生分解性ポリエステルの分子量(MW)は、別の実施形態では、約10〜150KDaの間である。別の実施形態では、MWは、約20〜150KDaの間である。別の実施形態では、MWは、約10〜140KDaの間である。別の実施形態では、MWは、約20〜130KDaの間である。別の実施形態では、MWは、約30〜120KDaの間である。別の実施形態では、MWは、約45〜120KDaの間である。別の典型的な実施形態では、MWは、約60〜110KDaの間である。別の実施形態では、異なるMWのPLGAポリマーの混合物が利用される。別の実施形態では、異なるポリマーは共に、上記範囲の1つのMWを有する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0119】
別の実施形態では、生分解性ポリマーは、少なくとも10個のアミノ酸を含む、1種または複数種のアミノ酸を含むペプチドからなるポリアミンの群から選択される。
【0120】
本明細書で使用する「生分解性」とは、生理的pHで自然な生物学的過程により分解することができる物質を指す。「生理的pH」とは、体組織のpH、典型的には6〜8の間を指す。「生理的pH」は、典型的には1と3との間である胃液の強酸性pHは指さない。
【0121】
いくつかの実施形態によると、生体適合性ポリマーは、非生分解性ポリマーである。特定の実施形態によると、非生分解性ポリマーは、それだけに限らないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)アクリレート、ポリメタクリレート(例えば、PEGメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリメチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、シリコーン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレン−酢酸ビニルおよびアシル置換酢酸セルロールのポリマーのコポリマー、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ならびにこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0122】
核酸剤
本発明の核酸剤またはオリゴヌクレオチドは、好ましくは約1000塩基以下の長さ、典型的には約100塩基以下の長さである。他の典型的な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、30ヌクレオチド(または塩基対)以下の長さである。核酸剤は、一本鎖、二本鎖、三重螺旋またはこれらの任意の組み合わせであり得る。核酸剤が2本以上の鎖を含む場合、その鎖は必ずしも100%相補的である必要はない。
【0123】
用語「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ核酸」および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、リボ核酸(リボオリゴヌクレオチドもしくはリボオリゴヌクレオシド)またはデオキシリボ核酸のオリゴマーあるいはポリマーを指す。これらの用語は、天然起源の核酸塩基、糖および共有糖間結合から構成される核酸鎖ならびに同様に機能する非天然起源の部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。このような修飾または置換オリゴヌクレオチドは、例えば、細胞質ヌクレアーゼの存在下での安定性の増加および細胞内取り込みの増加を含む有用な特徴のために、天然型より好ましいだろう。
【0124】
特定の実施形態によると、本発明の教示にしたがって使用される核酸は、アンチセンス分子である。本明細書で使用する用語「アンチセンス分子」、「アンチセンスフラグメント」または「アンチセンス」とは、相当する遺伝子の内在性ゲノムコピーの発現の減少をもたらす、阻害アンチセンス活性を有する任意のポリヌクレオチドを指し得る。アンチセンス分子は、アンチセンス分子と遺伝子とのハイブリッド形成を可能にするのに十分な長さおよび標的遺伝子の配列内に存在する配列との相同性の配列を有する連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。アンチセンス分子は、標的DNAおよび/またはRNA(例えば、mRNA、マイクロRNAなど)配列を不活性化することができ、一本鎖、二本鎖または三重螺旋であり得る。アンチセンス分子が2本以上の鎖を含む場合、その鎖は必ずしも100%相補的である必要はない。
【0125】
RNA干渉(RNAi)
用語「RNA干渉」または「RNAi」とは、一般的に、二本鎖RNA分子が、二本鎖もしくは低分子ヘアピン型RNA分子が実質的なまたは完全な相同性を共有する核酸配列の発現を変化させる過程を指す。用語「RNAi剤」とは、RNAiを誘発するRNA配列を指す。
【0126】
2種類の低分子RNA分子−マイクロRNA(miRNA)および低分子干渉RNA(siRNA)−は、RNA干渉の中心である。RNAは、遺伝子の直接産物であり、これらの低分子RNAは、特定の他のRNAに結合し、例えば、メッセンジャーRNAがタンパク質を産生するのを防ぐことにより、その活性を増加させるまたは減少させることができる。RNA干渉は、寄生遺伝子−ウイルスおよびトランスポゾン−からの細胞の自然防御だけでなく、一般に発達ならびに遺伝子発現を指示するのにも重要な役割を有する。
【0127】
用語「マイクロRNA」または「miRNA」は、当技術分野におけるその通常の意味にしたがって本明細書で使用される。miRNAは、約18〜26ヌクレオチドの一本鎖非コードRNA分子である。miRNAは、pri−miRNAとして知られる一次転写産物から、pre−miRNAと呼ばれる短いステムループ構造に、そして最終的には機能的miRNAにプロセシングされる。典型的には、前駆体miRNAの一部が切断されて、最終miRNA分子が産生する。ステムループ構造は、例えば、約50〜約80ヌクレオチド、または約60ヌクレオチド〜約70ヌクレオチド(miRNA残基、miRNAと対形成しているものおよび任意の介在性セグメントを含む)に及び得る。成熟miRNA分子は、1個または複数のメッセンジャーRNA(mRNA)分子と部分的に相補的であり、遺伝子発現を制御するよう機能する。本発明の実施形態にしたがって使用されるmiRNAの例には、それだけに限らないが、miRBase(http://microrna.sanger.ac.uk/)として知られるmiRNAデータベース中に見出されるmiRNAが含まれる。
【0128】
「短鎖干渉RNA」または「siRNA」とも呼ばれる「低分子干渉RNA」は、細胞中に存在する、短鎖二本鎖RNA(「dsRNA」)分子である。dsRNAは、1ヌクレオチド分解能以内まで、siRNAと配列相同性を共有するメッセンジャーRNA(「mRNA」)の破壊を引き起こす。siRNAおよび標的化mRNAは、標的化mRNAを切断する「RNA誘導サイレンシング複合体」または「RISC」と結合すると考えられている。siRNAは、明らかに多重代謝回転酵素のように何度も再利用され、1個のsiRNA分子が約1000個のmRNA分子の切断を誘導することができる。そのため、mRNAのsiRNA媒介性RNA分解は、標的遺伝子の発現を阻害するために現在利用可能な技術よりも有効である。
【0129】
典型的には、siRNAは、2本のヌクレオチド鎖を含む二本鎖核酸分子である。各鎖の長さは、有意に異なっていてもよい。二本鎖干渉RNAに言及する際の用語「長さ」とは、アンチセンスおよびセンス鎖が独立に、センスおよびアンチセンス鎖がリンカー分子によって連結されている干渉RNA分子を含む、特定の長さを有することを意味する。siRNAは、よく定義された構造:両端に2−ヌクレオチド3’オーバーハングを有するRNAの短鎖二本鎖を有する。
【0130】
RNA干渉は2段階工程である。開始段階と呼ばれる第1段階中、投入dsRNAは、おそらくは、ATP依存的様式でdsRNA(直接または発現ベクター、カセットもしくはウイルスを通して導入された)を切断するdsRNA特異的リボヌクレアーゼのRNアーゼIIIファミリーに属するダイサーの作用により、21〜23ヌクレオチド(nt)低分子干渉RNA(siRNA)に消化される。
【0131】
用語「ddRNAi剤」とは、ベクターから転写されるRNAi剤を指す。用語「低分子ヘアピン型RNA」または「shRNA」とは、二本鎖領域およびループ領域を有するRNA構造を指す。
【0132】
低分子干渉RNA(siRNA)またはマイクロRNAにより媒介されるRNA干渉効果は、ヒト治療への潜在的適用が認識されているが、ヒトへの使用に適した送達手段がないために、その適用が限定されている。
【0133】
本発明の核酸剤は、酵素合成および固相合成の両方を含む当技術分野で既知の任意の核酸製造法にしたがって、ならびに当技術分野で周知の組換え法を使用して産生することができる。
【0134】
固相合成を行うための機器および試薬は、例えば、Applied Biosystemsから商業的に入手可能である。このような合成のための他の任意の手段も使用することができる;核酸剤の実際の合成は、十分当業者の能力内であり、例えば、Sambrook,J.およびRussell,D.W.(2001)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」;Ausubel,R.M.等編(1994、1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」、第I〜III巻、John Wiley & Sons、Baltimore、Maryland;Perbal,B.(1988)、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、New Yorkに詳述されている確立された方法論を通して達成することができる。
【0135】
本発明の核酸剤は、本明細書以下にさらに記載するような発現ベクターを使用して産生することもできることが認識されよう。
【0136】
任意選択により、本発明の核酸剤は修飾される。当技術分野で既知の種々の方法を使用して核酸剤を修飾することができる。
【0137】
特定の実施形態では、核酸剤は、当技術分野で既知のおよび本明細書以下に記載するように、骨格、ヌクレオシド間結合または塩基のいずれかで修飾される。
【0138】
本発明のこれらの実施形態による有用な核酸剤の特定の例には、修飾された骨格もしくは非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが含まれる。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの例には、骨格中にリン原子を保持しているものが含まれる。他の修飾されたオリゴヌクレオチド骨格には、例えば、ホスホロチオエート;キラルホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;ホスホトリエステル;アミノアルキルホスホトリエステル;メチルと3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート;ホスフィナート;3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含むホスホルアミダート;チオノホスホルアミダート;チオノアルキルホスホネート;チオノアルキルホスホトリエステル;ならびに通常の3’−5’結合を有するボラノリン酸、これらの2’−5’結合類似体、およびヌクレオシド単位の隣接対が3’−5’と5’−3’または2’−5’と5’−2’結合している逆極性を有するものが含まれる。上記修飾形の種々の塩、混合塩および遊離酸形を使用することもできる。
【0139】
あるいは、中にリン原子を含まない修飾されたオリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、あるいは1種もしくは複数の短鎖ヘテロ原子またはヘテロ複素環ヌクレオシド間結合により形成される骨格を有する。これらには、モルフォリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホナートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合N、O、SおよびCH成分部分を有する他のものを有するものが含まれる。
【0140】
本発明により意図されるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの他の非限定的な例には、「固定化核酸」、「固定化ヌクレオシド類似体」または「LNA」と呼ばれる二環式および三環式ヌクレオシドならびにヌクレオチド類似体を含む核酸類似体が含まれる(例えば、米国特許第6083482号参照)。
【0141】
本発明にしたがって使用することができる他の核酸剤は、糖およびヌクレオシド間結合の両方で修飾されている、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が新規の基に置換されているものである。塩基単位は、適当なポリヌクレオチド標的との相補性のために維持される。本発明の核酸剤はまた、塩基修飾または置換を含むこともできる。本明細書で使用する「無修飾」または「天然」塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。「修飾」塩基には、それだけに限らないが、5−メチルシトシン(5−me−C);5−ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2−アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの、6−メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの、2−プロピルおよび他のアルキル誘導体;2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン;5−ハロウラシルおよびシトシン;5−プロピニルウラシルおよびシトシン;6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン;5−ウラシル(シュードウラシル(pseudouracil));4−チオウラシル;8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換、アデニンおよびグアニン;5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換、ウラシルおよびシトシン;7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン;8−アザグアニンおよび8−アザアデニン;7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン;ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどの、他の合成および天然塩基が含まれる。
【0142】
本発明の核酸をベースにした剤は、当技術分野で周知の標準的な組換えおよび合成法を使用して製造することができる。単離核酸配列は、その天然供給源から、全(すなわち、完全な)遺伝子またはその部分のいずれかとして得ることができる。核酸分子はまた、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を使用して製造することもできる。核酸配列には、それだけに限らないが、天然対立遺伝子変異型ならびに修飾が核酸分子の機能を実質的に妨害しないようにヌクレオチドが挿入、欠失、置換および/または反転させられた修飾核酸配列を含む、天然核酸配列およびその相同体が含まれる。
【0143】
核酸相同体は、当業者に既知のいくつかの方法を使用して製造することができる。例えば、核酸分子は、それだけに限らないが、部位特異的変異誘発、突然変異を誘発するための核酸分子の化学処理、核酸フラグメントの制限酵素切断、核酸フラグメントのライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅ならびに/あるいは核酸分子の混合物を「構築する」ための核酸配列の選択された領域の突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成および混合物のライゲーション、ならびにこれらの組み合わせなどの、伝統的な突然変異誘発技術および組換えDNA技術を含む種々の技術を使用して修飾することができる。
【0144】
ポリエチレングリコール
本発明は、一部は、ポリエチレングリコール(PEG)と共にポリヌクレオチドを含む水溶液のインキュベーションが脂質をベースにしたマトリックス中のポリヌクレオチドの捕捉を強化し、適当な条件下でマトリックスからのポリヌクレオチドの放出速度に影響を及ぼすという予想外の発見に基づく。最も一般的な商業的に入手可能なPEGであるので、当技術分野で一般的に使用されるように、ポリ(エチレン)グリコールとは、一般的に、ポリ(エチレン)グリコールの直鎖形を指す。直鎖状PEGは、式OH−(CHCHO)−OH(ジオール)またはmPEG、CHO−(CHCHO)OH(式中、nは反復エチレンオキシド基の平均数である)で表すことができる。これらのPEG化合物は、1000〜300000に及ぶ種々の分子量で、例えば、Sigma−Aldrichから商業的に入手可能である。直鎖状PEGは、単官能または二官能形として入手可能である。PEGは、鎖の両端に官能性反応基を含むことができ、ホモ二官能性(2個の同一の反応基)またはヘテロ二官能性(2個の異なる反応基)であり得る。例えば、式NH−(CHCHO)COOHのヘテロ二官能性PEGが、商業的に入手可能であり、PEG誘導体を形成するのに有用である。その平均分子量で表される多くのグレードのPEG化合物が存在する。医薬品グレードのPEGは、典型的には5000までの分子範囲である。特定の典型的な実施形態によると、本発明の教示にしたがって使用されるPEGは、1000まで、典型的には約2000〜5000の分子量を有する。
【0145】
追加の成分
本発明のマトリックス組成物は、任意選択により、遊離脂肪酸をさらに含む。特定の実施形態では、遊離脂肪酸は、ω−6脂肪酸である。他の実施形態では、遊離脂肪酸は、ω−9脂肪酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、ω−6およびω−9脂肪酸からなる群から選択される。さらなる実施形態では、遊離脂肪酸は、14個以上の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、16個以上の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、16〜22個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、16〜20個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、16〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、18〜22個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、18〜20個の炭素原子を有する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、リノール酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、リノレン酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、オレイン酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、リノール酸、リノレン酸およびオレイン酸からなる群から選択される。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、当技術分野で既知の別の適当な遊離脂肪酸である。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、マトリックス組成物に可撓性を付加する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、生体内放出速度を含む放出速度を遅くする。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、特に生体内で制御放出の一貫性を改善する。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、飽和している。別の実施形態では、少なくとも14個の炭素原子を有する飽和脂肪酸の組み込みにより、結果として生じるマトリックス組成物のゲル−流体転移温度が上昇する。
【0146】
別の実施形態では、遊離脂肪酸は、マトリックスに組み込まれる。
【0147】
別の実施形態では、遊離脂肪酸は、重水素化されている。別の実施形態では、脂質アシル鎖の重水素化により、ゲル−流体転移温度が低下する。
【0148】
各種類の脂肪酸は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0149】
特定の実施形態によると、本発明のマトリックス組成物は、トコフェロールをさらに含む。トコフェロールは、別の実施形態では、E307(α−トコフェロール)である。別の実施形態では、トコフェロールは、β−トコフェロールである。別の実施形態では、トコフェロールは、E308(γ−トコフェロール)である。別の実施形態では、トコフェロールは、E309(δ−トコフェロール)である。別の実施形態では、トコフェロールは、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロールおよびδ−トコフェロールからなる群から選択される。別の実施形態では、トコフェロールは、マトリックス組成物に組み込まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0150】
本発明のマトリックス組成物は、任意選択により、当技術分野で周知の生理学的に許容される緩衝塩をさらに含む。生理学的に許容される緩衝塩の非限定的な例は、リン酸緩衝液である。リン酸緩衝液の典型的な例は、NaCl40部、KCl1部、NaHPO・2HO7部およびKHPO1部である。別の実施形態では、緩衝塩は、当技術分野で既知の他の任意の生理学的に許容される緩衝塩である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0151】
放出速度およびマトリックス組成物の一般特性
適当な条件下での本発明のマトリックス組成物についての有効成分の90%の放出時間は、好ましくは4日と6ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、1週間と6ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、1週間と5ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、1週間と5ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、1週間と4ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、1週間と3ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、1週間と2ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、2週間と6ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、2週間と5ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、2週間と4ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、2週間と3ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、3週間と6ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、3週間と5ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、3週間と4ヶ月との間である。別の実施形態では、放出時間は、3週間と3ヶ月との間である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0152】
本発明の組成物を使用した徐放期間は、以下の4つの主要な因子を考慮して計画することができる:(i)ポリマーと脂質含量、特に少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するリン脂質との間の重量比、(ii)使用されるバイオポリマーおよび脂質の生化学的および/または生物物理学的特性、(iii)所与の組成物に使用される異なる脂質間の比、ならびに(iv)核酸剤とポリエチレングリコールとのインキュベーション時間。
【0153】
本明細書以下に例示するように、マトリックスが脂質部分を欠いている場合、担持されたポリヌクレオチドの大半は、最初の時間内に放出され、脂質集団がポリヌクレオチドのゆるやかな放出に不可欠であることを示している。脂質飽和を達成するための総脂質とポリマーの比は、本明細書に記載するいくつかの方法により決定することができる。特定の実施形態によると、本発明の組成物の脂質:ポリマー重量比は、1:1と9:1との間(1:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、1.5:1と9:1との間(1.5:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、2:1と9:1との間(2:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、3:1と9:1との間(3:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、4:1と9:1との間(4:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、5:1と9:1との間(5:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、6:1と9:1との間(6:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、7:1と9:1との間(7:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、8:1と9:1との間(8:1と9:1を含めて)である。別の実施形態では、比は、1.5:1と5:1との間(1.5:1と5:1を含めて)である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0154】
例示のための別の実施形態では、ポリマーが主に40KDa PLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸、比1:1))である場合、総脂質と40KDa PLGAのモル比は、典型的には20〜100の範囲(20と100を含めて)である。別の実施形態では、総脂質と40KDa PLGAのモル比は、20〜200の間(20と200を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、10〜100の間(10と100を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、10〜200の間(10と200を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、10〜50の間(10と50を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、20〜50の間(20と50を含めて)である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0155】
インプラントおよび他の医薬組成物
本発明のマトリックス組成物は、有機溶媒および水の除去後に、インプラントの形に成形することができる。溶媒の除去は、典型的には、室温と90℃との間の特定の温度下での蒸発、続いて真空により行われる。
【0156】
別の実施形態では、インプラントは、均一である。別の実施形態では、インプラントは、鋳型中で材料を凍結乾燥するステップを含む方法により製造される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0157】
追加の実施形態によると、本発明は、本発明の核酸をベースにした剤を含むマトリックス組成物を含むインプラントを提供する。
【0158】
本発明は、(a)バルク材料の形で本発明の方法によりマトリックス組成物を製造するステップと;(b)バルク材料を所望の形状の鋳型または固体容器に移すステップと;(c)バルク材料を凍結するステップと;(d)バルク材料を凍結乾燥するステップとを含む、本発明の組成物からインプラントを製造する方法をさらに提供する。
【0159】
追加の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態によると、医薬組成物は、追加の薬学的に許容される添加剤をさらに含む。追加の実施形態では、医薬組成物は、非経口的に注射可能な形である。他の実施形態では、医薬組成物は、注入可能な形(infusible form)である。なお追加の実施形態では、添加剤は、注射に適合性である。さらなる実施形態では、添加剤は、注入に適合性である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0160】
100nm〜50mに及ぶ微小胞の製造のための本発明のマトリックス組成物の使用もまた本発明の範囲内である。
【0161】
特定の実施形態によると、本発明のマトリックス組成物は、有機溶媒および水の除去後、マイクロスフェアの形である。他の実施形態では、マイクロスフェアは、均一である。特定の実施形態によると、マイクロスフェアは、噴霧乾燥のステップを含む方法により製造される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0162】
別の実施形態では、本発明は、本発明のマトリックス組成物から作られるマイクロスフェアを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明のマイクロスフェアおよび薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0163】
別の実施形態では、本発明のマイクロスフェアの粒径は、約500〜2000nmである。別の実施形態では、粒径は、約400〜2500nmである。別の実施形態では、粒径は、約600〜1900nmである。別の実施形態では、粒径は、約700〜1800nmである。別の実施形態では、粒径は、約500〜1800nmである。別の実施形態では、粒径は、約500〜1600nmである。別の実施形態では、粒径は、約600〜2000nmである。別の実施形態では、粒径は、700〜2000nmである。別の実施形態では、粒子は、医薬投与に適した他の任意の大きさである。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0164】
本発明のマトリックス組成物を製造する方法
本発明は、
(a)(i)生分解性ポリマーおよび(ii)極性基を有する少なくとも1種の脂質を含む第1脂質成分を第1揮発性有機溶媒の中に混合するステップと;
(b)ポリエチレングリコールを核酸剤の水性溶液の中に混合するステップと;
(c)ステップ(b)で得られた溶液を第2揮発性有機溶媒および少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有する少なくとも1種のリン脂質を含む第2脂質成分と混合するステップと;
(d)ステップ(a)および(c)で得られた溶液を混合して、均一な混合物を形成するステップと;
(e)揮発性溶媒および水を除去し、
それによって核酸剤を含む均一なポリマー−リン脂質マトリックスを製造するステップと
を含む核酸剤の徐放のためのマトリックス組成物を製造する方法をさらに提供する。
【0165】
特定の典型的な実施形態によると、本方法は、(a)(i)生分解性ポリエステルおよび(ii)ステロールを第1揮発性有機溶媒の中に混合するステップと;(b)(1)第2水混和性揮発性有機溶媒中のホスファチジルコリンおよび/または(2)第2水混和性揮発性有機溶媒中のホスファチジルエタノールアミンを、ポリエチレングリコールを含む水性溶液中の核酸剤をベースにした薬物を含む異なる容器の中に混合し、(3)所与の温度で得られた溶液を混合し、(4)任意選択により遠心分離または凍結乾燥により得られた材料を沈殿させ、任意選択により選択された揮発性溶媒に沈殿を再懸濁させるステップと;(c)ステップ(a)および(b)から得られた生成物を混合および均質化するステップとを含む。
【0166】
特定の実施形態によると、生分解性ポリマーは、PLGA、PGA、PLAまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される。他の実施形態では、生分解性ポリエステルは、当技術分野で既知の他の任意の適当な生分解性ポリエステルである。なお追加の実施形態によると、生分解性ポリマーは、ポリアミンである。第1有機溶媒の中で、ポリマーを、極性基を有する少なくとも1種の脂質(非限定的な例は、ステロール、特にコレステロールである)と混合するステップは、典型的には室温で行われる。任意選択により、α−および/またはγ−トコフェロールが溶液に添加される。脂質−ポリマーマトリックスが形成される。
【0167】
少なくとも1種の核酸をベースにした剤およびポリエチレングリコールを含む水性溶液は、典型的には攪拌下で、少なくとも1種のリン脂質を含む第2揮発性有機溶媒(それだけに限らないが、N−メチルピロリドン、エタノール、メタノール、酢酸エチルまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される)と混合される。特定の実施形態によると、リン脂質は、ホスホコリンもしくはホスファチジルコリンまたはこれらの誘導体である。他の実施形態によると、リン脂質は、ホスファチジルコリンまたはその誘導体である。追加の実施形態によると、第2揮発性有機溶媒は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリンまたはその誘導体の組み合わせを含む。特定の実施形態によると、ホスホコリンもしくはホスファチジルコリンまたはこれらの誘導体は、マトリックス中の全脂質の10〜90質量%、すなわち、リン脂質、ステロール、セラミド、脂肪酸等の10〜90質量%で存在する。他の実施形態によると、ホスファチジルエタノールアミンは、マトリックス中の全脂質の10〜90質量%で存在する。
【0168】
なお他の実施形態によると、ホスホコリンもしくはホスファチジルコリン誘導体またはホスファチジルエタノールアミンの比が異なるこれらの組み合わせは、核酸剤およびPEGを含む水性溶液へ添加する前に、有機溶媒中で混合される。
【0169】
別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンも第1脂質成分に含まれる。
【0170】
別の実施形態では、(a)有機溶媒を含む混合物は、水混和性有機溶媒を含む混合物と混合する前に均質化される。別の実施形態では、(c)水混和性有機溶媒を含む混合物は、別の種類の有機溶媒を含む混合物と混合する前に均質化される。別の実施形態では、ステップ(a)の混合物中のポリマーは、脂質飽和である。別の実施形態では、マトリックス組成物は、脂質飽和である。典型的には、ポリマーおよびホスファチジルコリンは、マトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、活性剤もマトリックス組成物に組み込まれる。別の実施形態では、マトリックス組成物は、その形状および境界が生分解性ポリマーによって決定される脂質飽和マトリックスの形である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0171】
別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、飽和脂肪酸部分を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、14〜18個の炭素原子を有する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0172】
別の実施形態では、ホスファチジルコリンは、飽和脂肪酸部分を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも14個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、少なくとも16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、14〜18個の炭素原子を有する。別の実施形態では、脂肪酸部分は、16〜18個の炭素原子を有する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0173】
別の実施形態では、非極性有機溶媒中の総脂質とポリマーのモル比は、この混合物中のポリマーが脂質飽和であるようになっている。例示のための別の実施形態では、ポリマーが主に50KDa PLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸、比1:1))である場合、総脂質と50KDa PLGAのモル比は、典型的には10〜50の範囲(10と50を含めて)である。別の実施形態では、総脂質と50KDa PLGAのモル比は、10〜100の間(10と100を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、20〜200の間(20と200を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、20〜300の間(20と300を含めて)である。別の実施形態では、モル比は、30〜400の間(30と400を含めて)である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0174】
本発明の上記方法および他の方法の成分の各々は、本発明のマトリックス組成物の対応する成分と同様に定義される。
【0175】
別の実施形態では、製造法のステップ(a)は、ホスファチジルエタノールアミンを揮発性有機溶媒、典型的には非極性溶媒に添加するステップをさらに含む。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、ステップ(c)に含まれるのと同じホスファチジルエタノールアミンである。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、異なるホスファチジルエタノールアミンであり、当技術分野で既知の他の任意のホスファチジルエタノールアミンであり得る。別の実施形態では、ホスファチジルエタノールアミンは、ステップ(c)のホスファチジルエタノールアミンおよび異なるホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0176】
別の実施形態では、製造法のステップ(c)は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルイノシトールからなる群から選択されるリン脂質を、揮発性有機溶媒、典型的には水混和性溶媒に添加するステップをさらに含む。
【0177】
別の実施形態では、製造法のステップ(c)は、スフィンゴ脂質を、水混和性揮発性有機溶媒に添加するステップをさらに含む。別の実施形態では、スフィンゴ脂質は、セラミドである。別の実施形態では、スフィンゴ脂質は、スフィンゴミエリンである。別の実施形態では、スフィンゴ脂質は、当技術分野で既知の他の任意のスフィンゴ脂質である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0178】
別の実施形態では、製造法のステップ(c)は、ω−6またはω−9遊離脂肪酸を、水混和性揮発性有機溶媒に添加するステップをさらに含む。別の実施形態では、遊離脂肪酸は、16個以上の炭素原子を有する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0179】
ポリマーは、ステップ(a)の混合物中で脂質飽和であるので、混合すると、均一な混合物が形成される。別の実施形態では、均一な混合物は、均一な液体の形をとる。別の実施形態では、混合物を凍結乾燥または噴霧乾燥すると、小胞が形成される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0180】
別の実施形態では、製造法は、ステップ(d)の生成物中に存在する溶媒および水を除去するステップをさらに含む。特定の実施形態では、溶媒および水の除去は、混合物の微粒化を利用する。他の実施形態では、混合物は乾燥した加熱空気に微粒化される。典型的には、加熱空気への微粒化は、全ての水を即時に蒸発させ、その後の乾燥ステップの必要性を除去する。別の実施形態では、混合物は、水を含まない溶媒に微粒化される。別の実施形態では、液体除去は、噴霧乾燥により行われる。別の実施形態では、液体除去は、凍結乾燥により行われる。別の実施形態では、液体除去は、液体窒素を使用して行われる。別の実施形態では、液体除去は、エタノールと予混合した液体窒素を使用して行われる。別の実施形態では、液体除去は、当技術分野で既知の別の適当な技術を使用して行われる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0181】
別の実施形態では、本発明の方法は、組成物を真空乾燥するステップをさらに含む。別の実施形態では、真空乾燥のステップは、蒸発のステップ後に行われる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0182】
別の実施形態では、本発明の方法は、ステップ(d)の生成物を加熱することにより、有機揮発性溶媒を蒸発させるステップをさらに含む。加熱は、溶媒が除去されるまで、室温から90℃の間の典型的な温度で継続する。別の実施形態では、蒸発のステップの後に、真空乾燥のステップが行われる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0183】
脂質飽和および脂質飽和を測定するための技術
本明細書で使用する「脂質飽和」とは、マトリックス中に存在する核酸剤および任意選択により標的化部分と結合したリン脂質ならびに存在し得る他の任意の脂質によるマトリックス組成物のポリマーの飽和を指す。本明細書に記載するように、本発明のマトリックス組成物は、いくつかの実施形態では、ホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。他の実施形態では、マトリックス組成物は、リン脂質以外の脂質を含むことができる。マトリックス組成物は、存在するどんな脂質によっても飽和される。「飽和」とは、マトリックスが、マトリックスに組み込むことができる最大量の利用される種類の脂質を含む状態を指す。脂質飽和を達成するためのポリマー:脂質比を決定する方法およびマトリックスの脂質飽和の程度を測定する方法は、当業者に既知である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0184】
特定の典型的な実施形態によると、本発明の最終マトリックス組成物は、核酸送達のために設計された今までに知られている脂質をベースにしたマトリックスと対照的に、水を実質的に含まない。つまり、最初に有効成分を水溶液に溶解させる場合でさえ、脂質ポリマー組成物を調製する工程中に全溶媒が除去される。最終組成物に水が実質的に存在しないことにより、生理活性の核酸が、分解または化学修飾、特に酵素分解から保護される。含水生物学的環境に組成物を適用すると、マトリックス組成物の外表面は生物学的液体に接触するが、水を実質的に含まない内側部分が残っている有効成分を保護し、未損傷の有効成分の徐放を可能にする。
【0185】
特定の実施形態によると、用語「水を実質的に含まない」とは、1重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.8重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.6重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.4重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.2重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、マトリックスの耐水特性に影響を及ぼす量の水がないことを指す。
【0186】
別の実施形態では、マトリックス組成物は、水を基本的に含まない。「基本的に含まない」とは、0.1重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.08重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.06重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.04重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.02重量%未満の水を含む組成物を指す。別の実施形態では、この用語は、0.01重量%未満の水を含む組成物を指す。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0187】
別の実施形態では、マトリックス組成物は、水を含まない。別の実施形態では、この用語は、検出可能な量の水を含まない組成物を指す。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0188】
本発明のマトリックスを調製する方法は、水溶液を使用するただ1つのステップを含む。この溶液は、有機揮発性溶媒と混合され、その後全液体が除去される。したがって、本発明の方法は、脂質飽和を可能にする。脂質飽和は、マトリックス組成物に、生体内でバルク分解に耐える能力を与えるので、マトリックス組成物は、数週間または数ヶ月のスケールで持続放出を媒介する能力を示す。
【0189】
別の実施形態では、マトリックス組成物は、乾燥している。「乾燥」とは、別の実施形態では、検出可能な量の水または有機溶媒がないことを指す。
【0190】
別の実施形態では、マトリックス組成物の水透過性が最小化された。水透過性の「最小化」とは、添加された水の浸透に対する透過性を最小化すると決定された量の脂質の存在下で、本明細書に記載されるように、主に有機溶媒中でマトリックス組成物を製造する工程を指す。必要とされる脂質の量は、本明細書に記載するように、トリチウム標識水を含む溶液で小胞を水和することにより、決定することができる。
【0191】
別の実施形態では、「脂質飽和」とは、ポリマー骨格の外部境界により規定される脂質マトリックス中の内部間隙(自由体積)の充填を指す。空隙は、追加の脂質部分をもはや認識できる程度までマトリックスに組み込むことができない程度まで、マトリックス中に存在する他の任意の種類の脂質、核酸剤および任意選択により標的化部分と結合したリン脂質により充填される。
【0192】
「ゼロ次放出速度」または「ゼロ次放出反応速度論」とは、ポリマーマトリックスからの核酸剤の一定の、線形の、連続的な徐放および制御放出速度を意味する。すなわち、放出される核酸剤の量対時間のプロットは線形である。
【0193】
核酸剤の治療適用
本発明はまた、全真核生物、例えば、哺乳動物もしくは植物;またはこれらの一部、例えば、組織、器官、細胞等において、例えば、1種または複数の標的遺伝子、病原性ウイルスのウイルス複製等を調節することが望まれる種々の適用に関する。このような方法では、有効量の核酸活性剤が、宿主に投与されるまたは標的細胞に導入される。用語「有効量」とは、所望のように標的ウイルス遺伝子の発現を調節する、例えば、所望のウイルス複製の阻害を達成するのに十分な用量を指す。上記のように、この種の適用の特定の実施形態では、所望の治療成績を達成するために宿主中の1種または複数の標的遺伝子の発現を低下させるために本方法が使用される。
【0194】
標的遺伝子がウイルス遺伝子の場合、例えば、ウイルス複製の阻害が望まれる場合、標的ウイルス遺伝子は、いくつかの異なるウイルスからのものであり得る。代表的なウイルスには、それだけに限らないが、HBV、HCV、HIV、インフルエンザA型、A型肝炎、ピコルナウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルスなどが含まれる。
【0195】
本明細書に記載する方法はまた、腫瘍細胞中の標的遺伝子の発現を阻害するのにも適している。本発明は、固形腫瘍および非固形腫瘍を含む任意の種類のがんに関する。固形腫瘍は、それだけに限らないが、CNS腫瘍、肝がん、結腸直腸癌、乳がん、胃がん、膵がん、膀胱癌、子宮頸癌、頭頸部腫瘍、外陰がん、ならびに黒色腫、扁平上皮癌および基底細胞癌を含む皮膚新生物によって例示される。非固形腫瘍には、白血病およびリンパ腫を含むリンパ増殖性疾患が含まれる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0196】
本方法が用途を見出す別の適用は、真核細胞または非ヒト真核生物、好ましくは哺乳動物細胞もしくは生物、最も好ましくはヒト細胞、例えば、HeLaもしくは293などの細胞株または齧歯類動物、例えば、ラットおよびマウスの機能解析による遺伝子機能の解明である。適当なRNA分子をコードする所定の標的遺伝子と相同性のベクター分子のトランスフェクションにより、標的細胞中、例えば、細胞培養液中または標的生物中に特定のノックダウン表現型を得ることができる。
【0197】
本発明はまた、それだけに限らないが、生物的ならびに非生物的ストレス、昆虫侵襲、病原体感染に対する感受性の減少、および成熟特性を含む農業特性の改善を含む、特性が改善した植物を生産するのにも有用である。農業社会で有害であり得る任意の遺伝子(単数または複数)は、このような特別に選択された核酸の潜在的な標的(単数または複数)となり得るだろう。
【0198】
実施例
実施例1−核酸をベースにした剤の送達のための薬物担体組成物を製造するためのプラットフォーム技術
I.第1溶液の調製
ポリマー(例えば、PLGA、PGA、PLAもしくはこれらの組み合わせ)およびステロール(例えば、コレステロール)および/またはα−もしくはγ−トコフェロールを、揮発性有機溶媒(例えば、クロロホルムを含む/含まない酢酸エチル)の中で混合する。全工程は、室温で行う。こうして、脂質−ポリマーマトリックスを得る。
【0199】
II.第2溶液の調製
少なくとも1種の核酸をベースにした剤を水に溶解させ、ポリエチレングリコール(PEG)1000〜8000、典型的にはPEG5000を添加する。得られた溶液を、典型的には攪拌下で、
マトリックス中の全脂質の10〜90質量%、すなわち、リン脂質、ステロール、セラミド、脂肪酸等の10〜90質量%で存在する、ホスホコリンまたはホスファチジルコリン誘導体、例えば、重水素化1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)またはジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリンと;
任意選択により、マトリックス中の全脂質の10〜90質量%で存在する、ホスファチジルエタノールアミン−例えば、ジメチルジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)またはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)−と;
任意選択により、NA薬物水性溶液の添加前に、有機溶媒中で混合した、ホスホコリンもしくはホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンの比が異なるこれらの組み合わせと;
任意選択により、マトリックス中の全脂質の0.1〜10モル%で含まれるカチオン性脂質と;
任意選択により、マトリックス中の全脂質の0.1〜10質量%の、0.1〜15質量%の遊離脂肪酸、例えばリノール酸(LN)またはオレイン酸(OA)と;
を含む、揮発性有機溶媒(典型的には、N−メチルピロリドン、エタノール、メタノール、酢酸エチルまたはこれらの組み合わせ)と混合する。
【0200】
混合物を、均質化、超音波処理または医療機器の表面をコーティングするために使用する。典型的には、全工程を室温で行うが、典型的に高飽和脂質を使用する場合には、約90℃までの高温を使用することができる。
【0201】
III.ポリマーと核酸−PEG混合物との混合
第2懸濁液(または溶液)を、攪拌下で第1溶液に添加する。攪拌を約5時間まで続ける。特定の処方、使用している脂質の性質および特定の核酸剤に全てしたがって、全工程を室温および90℃までで行う。結果として生じる混合物は、均一であるはずであるが、わずかに混濁していてもよい。
【0202】
IV.溶媒の除去
表面のコーティングを行う際、ステージIIIの懸濁液を、コーティングする粒子または機器と混合し、続いて揮発性有機溶媒を蒸発させる。全コーティング工程を約30〜90℃の温度で行う。
【0203】
ステージIIIの溶液は、任意選択により、乾燥した加熱空気に微粒化することができる。
【0204】
あるいは、ステージIIIの溶液を、炭水化物を含み得る水性溶液に微粒化する、または液体窒素で覆ったエタノールもしくはエタノールを含まない液体窒素のみに微粒化し、その後窒素および/またはエタノール(上記の通り)を蒸発させる。
【0205】
V.真空乾燥
マトリックス組成物、コーティングされた粒子およびコーティングされた機器を真空乾燥する。全有機溶媒および水の残渣を除去する。核酸剤を含む脂質をベースにしたマトリックスの貯蔵の準備ができる。
【0206】
実施例2:PEGなしでの核酸剤を含むマトリックスの調製
マトリックス調製
ストック溶液:
ストック溶液1(SS1):PLGA75/25、酢酸エチル(EA)中300mg/ml。
ストック溶液2(SS2):コレステロール(CH)、EA中30mg/ml。
ストック溶液3(SS3):DPPC、メタノール:EA(3:1v/v)中300mg/ml。
5’末端でFAM(蛍光標識プローブ)により標識した一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssDNA)(23mer、配列CCATCAACGACCCCTTCATGGAC(配列番号1)を有する)、DDW中0.5mM。
溶液Aは、0.2倍容のSS1と1倍容のSS2を混合することにより得た(PLGA50mg/ml、CH25mg/ml)。
溶液Bは、ボルテックスにより、1:1容積対容積比でSS3およびSS4を混合することにより得た。
溶液ABは、ボルテックスにより、1倍溶の溶液Bを1.5倍溶の溶液Aと混合し、45℃で5分間混合物をインキュベートすることにより得た。
【0207】
1倍容のAB溶液に1倍容のMetOH:DDW(v/v)を添加し、続いてボルテックスし、45℃で10分間インキュベートした(溶液は均一で乳白色になった)。
【0208】
コーティング
市販の人工骨(リン酸三カルシウム粒子、TCP)100mgを、マトリックス溶液(溶液AB)0.25mlでコーティングした。
【0209】
液体が見えなくなるまで45℃で1時間インキュベートし、続いて一晩真空にすることにより溶媒を蒸発させた。
【0210】
実施例3−PEGなしで調製したマトリックス組成物からのssDNAの放出
本明細書上記の実施例2に記載するように調製したFAM標識ssDNAを含むマトリックスでコーティングしたTCP粒子を、水により水和させ、37℃でインキュベートした。1時間後、水を回収し、新鮮な水と交換した。この手順を23日間毎日繰り返した。回収した水試料へのオリゴヌクレオチドの放出を、定量的蛍光分析によりFAM(5カルボキシ−フルオレセイン)蛍光を測定することにより評価した(励起波長−485nm、発光波長−520nm)。放出されたssDNAの濃度を、プロットした標準曲線(蛍光対オリゴヌクレオチド濃度、図1)にしたがって測定した。0.05〜25pmol/μlの範囲で直線標準曲線が得られた。放出されたオリゴヌクレオチドの割合は、マトリックスに担持されたオリゴヌクレオチドの推定量に正規化した。
【0211】
図2は、1時間後、担持されたssDNAの約20%が水中に放出されることを示している。したがって、この図は、オリゴヌクレオチド溶液中にPEGがないことが、脂肪マトリックスに担持されるssDNAの量に悪影響を及ぼすことを明らかに示している。その後、次の2日間で、同様の量が放出された(約10%)。5日目から16日目まで、ssDNAのゼロ次放出が観察された;毎日、平均1〜1.8%の累積ssDNAが放出された。16日目から、試料中のssDNA濃度が検出限界未満となった23日目まで、ssDNAの放出は減少した。
【0212】
試料を、光学顕微鏡(X400)でも調査した。図3Aに示すように、水和後、媒体中に放出される典型的な種類の脂質小胞が存在した。図3Bは、同一小胞からの緑色蛍光発光を示し、これらの小胞が蛍光プローブを含んでいたことを示している。
【0213】
実施例4:放出されたオリゴヌクレオチドの機能性の試験
マトリックスに担持されるssDNA(配列番号1に示す核酸配列を有する)を、マウスのハウスキーピング遺伝子GapDHのフラグメントを増幅する順方向プライマーとして設計した。核酸配列GGATGACCTTGCCCACAGCCTTG(配列番号2)からなる、この遺伝子に相補的な逆方向プライマーも調製した。放出されたssDNAの濃度を評価した後、異なる時点からの放出されたオリゴヌクレオチド100pmolを、PCR反応のために取った。マウス脾臓由来のcDNAを鋳型として使用した。マトリックスから放出されたオリゴヌクレオチドおよび逆方向プライマーを使用して、約500bpの予想サイズを有するGapDHフラグメントを増幅した。ReadyMix(商標)(Sigma)成分を使用して、PCR反応を行った。
【0214】
図4は、PCR産物のアガロースゲルを示している。予想された500bpのフラグメントが得られ、試験した全時点で放出されたssDNAが活性であり、正しい遺伝子フラグメントを増幅することができることが確認された。
【0215】
いくつかの時点で放出されたssDNAのサイズを、GeneScan解析によるサイズ評価に送った。1、2、5、7、9、12、14、16および20日後に放出されたssDNAの試料を試験した。14日および16日に得られたものを除く全ての試料で、23bpのサイズのインタクトなオリゴヌクレオチドが検出された(図5)。ピーク強度の差は、試料中のssDNAの濃度および放出された複合体からのDNAの沈殿の品質が原因である。最初の観察されたピークは、おそらくオリゴの純度が原因である(脱塩により洗浄した)。
【0216】
実施例5:PEGを使用した核酸剤を含むマトリックスの調製
マトリックス調製
ストック溶液:
ストック溶液1(SS1):PLGA75/25、酢酸エチル(EA)中300mg/ml。
ストック溶液2(SS2):コレステロール(CH)、EA中30mg/ml。
ストック溶液3a(SS3a): 5’でFAMにより標識した一本鎖DNAオリゴ(23mer、配列番号1に示す核酸配列を有する)、DDW中0.5mM。
ストック溶液3b(SS3b): ストック溶液3aに溶解したポリエチレングリコール8000(PEG8000)(PEG最終濃度250mg/ml)。
ストック溶液3c(SS3c): MeOH:EA溶液(v/v)中に10倍希釈したストック溶液3b(ssDNA0.05mM;PEG25mg/ml)。
溶液Aは、0.2倍容のSS1と1倍容のSS2を混合することにより得た(PLGA50mg/ml、CH25mg/ml)。
溶液Bは、ssDNAおよびPEGを含む、SS3cに溶解したリン脂質(DPPC、DMPC、DSPCまたはDPPC/DPPE9:1w/w)を含んでいた。
溶液ABは、ボルテックスにより、1倍溶の溶液Bを1.5倍溶の溶液Aと混合し、45℃で5分間混合物をインキュベートすることにより得た。
【0217】
コーティング
市販の人工骨(リン酸三カルシウム粒子、TCP)100mgを、マトリックス溶液(溶液AB)0.25mlでコーティングした。液体が見えなくなるまで45℃で1時間インキュベートし、続いて一晩真空にすることにより溶媒を蒸発させた。
【0218】
実施例6:PEGを使用して調製したマトリックスからのssDNAの放出
上記実施例5に記載するように調製した(ssDNAとPEGとのインキュベーションを含む)FAM標識ssDNAを含むマトリックスでコーティングしたTCP粒子を、水により水和させ、37℃でインキュベートした。
【0219】
1時間後、水を回収し、新鮮な水と交換した。この手順を40日間毎日繰り返した。回収した水試料へのオリゴヌクレオチドの放出を、本明細書上記の実施例3に記載するように、FAM蛍光を測定することにより評価した。
【0220】
ssDNAとPEGとのインキュベーション時間の持続時間の、コーティングされた粒子からのssDNAの放出への影響も試験した。
【0221】
1時間のインキュベーション(短いインキュベーション)後および18時間のインキュベーション(長いインキュベーション)後、ストック溶液3b(ssDNAの水溶液中に溶解したPEG8000)を、MeOH/EA中に希釈した。
【0222】
図6は、時間に対する放出されたssDNAの累積量を示している。この図から、(i)マトリックスからのssDNAのゆるやかな徐放を得るためにはポリマーおよび脂質成分の両者の存在が必要であること。脂質(特定の例では、DPPC)がないと、ssDNAの大半は水和水中に即時放出されること;ならびに(ii)オリゴヌクレオチドとPEGとのインキュベーション時間が長いほど、いったんマトリックスが水和されると核酸の放出期間が長くなることが明確に示されている。
【0223】
実施例7:リン脂質組成のssDNAの放出速度への影響
リン脂質の種類、特にリン脂質アシル鎖の長さの、本発明のマトリックスからのssDNA放出速度への影響も試験した。図7は、DMPC(14:0)>DPPC(16:0)>DSPC(18:0)で、アシル鎖が長いほど、ssDNA放出速度が低いことを示している。DMPCの場合、ssDNAの大半は、最初の5日間以内に放出される。対照的に、DPPCを使用して調製したマトリックスは、30日まで定常速度(ゼロ次)でssを放出した。DSPCの場合、放出速度は、他の2種のリン脂質よりも有意に低い。
【0224】
したがって、本発明のマトリックスからのssDNAの放出速度は、リン脂質組成により制御することができる。
【0225】
特定の実施形態の前記記載は、本発明の一般的性質を十分に明らかにするので、現在の知識を適用することにより、過度な実験をせずに、一般的概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に修正するおよび/または種々の用途に適合させることができ、それゆえ、このような適合および修正は、開示される実施形態の同等物の意味および範囲内に含まれるべきであり、そのように意図される。本明細書で使用する語法または用語は、説明を目的とするものであり、限定を目的としていないことを理解すべきである。種々の開示される機能を実施するための意味、材料およびステップは、本発明を逸脱することなく種々の代替形態をとることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸成分を徐放および/または制御放出するのに適合した、
a.極性基を有する少なくとも1種の脂質を含む第1脂質成分と会合した生体適合性ポリマーと;
b.少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有する少なくとも1種のリン脂質を含む第2脂質成分と;
c.少なくとも1種の核酸をベースにした剤と;
d.ポリエチレングリコール(PEG)と;
を含むマトリックス組成物。
【請求項2】
前記PEGが、1000〜10000の範囲の分子量を有する直鎖状PEGである、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項3】
前記PEGが、5000までの分子量を有する、請求項2に記載のマトリックス組成物。
【請求項4】
前記極性基を有する脂質が、ステロール、トコフェロール、ホスファチジルエタノールアミンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項5】
前記ステロールが、コレステロールである、請求項4に記載のマトリックス組成物。
【請求項6】
前記コレステロールが、前記マトリックス組成物の総脂質含量の5〜50モル%の量で存在する、請求項5に記載のマトリックス組成物。
【請求項7】
前記第2脂質成分が、ホスファチジルコリンもしくはその誘導体;ホスファチジルコリンもしくはその誘導体の混合物;ホスファチジルエタノールアミンもしくはその誘導体;およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるリン脂質を含む、請求項1に記載のマトリックス。
【請求項8】
DCコレステロール、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC)、1,2−ジ−O−オクタデセニル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオン性脂質をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマーが、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項10】
前記生分解性ポリマーが、PLA(ポリ乳酸)、PGA(ポリグリコール酸)、PLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸))およびこれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性ポリエステルである、請求項9に記載のマトリックス組成物。
【請求項11】
前記非生分解性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGアクリレート、PEGメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、ポリメチルアクリレート、シリコーン、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載のマトリックス組成物。
【請求項12】
前記生体適合性ポリマーが、生分解性ポリマーおよび非生分解性ポリマーのコブロックを含む、請求項11に記載のマトリックス組成物。
【請求項13】
総脂質と前記生分解性ポリマーの重量比が、1:1と9:1との間(1:1と9:1を含めて)である、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項14】
均一である、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項15】
スフィンゴ脂質をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項16】
トコフェロールをさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項17】
水を実質的に含まない、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項18】
ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルイノシトールからなる群から選択される追加のリン脂質をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項19】
14個以上の炭素原子を有する遊離脂肪酸をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項20】
ペグ化脂質をさらに含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項21】
前記核酸をベースにした剤の少なくとも30%が、ゼロ次反応速度論で前記マトリックス組成物から放出される、前記剤の徐放のための請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項22】
前記核酸をベースにした剤の少なくとも50%が、ゼロ次反応速度論で前記マトリックス組成物から放出される、前記剤の徐放のための請求項21に記載のマトリックス組成物。
【請求項23】
前記核酸をベースにした剤が、一本鎖および二本鎖の、プラスミドDNA、ポリ−およびオリゴ−ヌクレオチドから選択される直鎖DNA、染色体DNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスDNA/RNA、RNAi、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA、オリゴヌクレオチドDNA(ODN)、siRNA、CpG免疫刺激配列(ISS)、固定化核酸類似体(LNA)ならびにリボザイムからなる群から選択される、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項24】
(a)生分解性ポリエステルと;(b)ステロールと;(c)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルエタノールアミンと;(d)少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有するホスファチジルコリンと;(e)核酸剤と;(f)PEGとを含む、請求項1に記載のマトリックス組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のマトリックス組成物を含むインプラント。
【請求項26】
請求項1に記載のマトリックス組成物を含む、核酸をベースにした剤を、それを必要とする被験体に投与するための医薬組成物。
【請求項27】
請求項1に記載のマトリックス組成物を被験体に投与し、それによって核酸をベースにした剤を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、核酸をベースにした剤を、それを必要とする被験体に投与する方法。
【請求項28】
基板と、前記基板の少なくとも一部分上に沈着させた請求項1に記載のマトリックスを含む生体適合性コーティングとを含む医療機器。
【請求項29】
前記生体適合性コーティングが、多層を含む、請求項28に記載の医療機器。
【請求項30】
a.(i)生体適合性ポリマーおよび(ii)極性基を有する少なくとも1種の脂質を含む第1脂質成分を第1揮発性有機溶媒の中に混合するステップと;
b.ポリエチレングリコールを核酸剤の水性溶液の中に混合するステップと;
c.ステップ(b)で得られた溶液を第2揮発性有機溶媒および少なくとも14個の炭素の脂肪酸部分を有する少なくとも1種のリン脂質を含む第2脂質成分と混合するステップと;
d.ステップ(a)および(c)で得られた溶液を混合して、均一な混合物を形成するステップと;
e.揮発性溶媒および水を除去し、
それによって前記核酸剤を含む均一なポリマー−リン脂質マトリックスを製造するステップと
を含む核酸剤の送達ならびに徐放および/または制御放出のためのマトリックス組成物を製造する方法。
【請求項31】
ステップ(c)が、(i)蒸発、凍結乾燥または遠心分離により前記溶媒を除去して沈殿を形成するステップと;(ii)結果として生じた沈殿を前記第2揮発性有機溶媒に懸濁させるステップとをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記PEGが、1000〜10000の範囲の分子量を有する直鎖状PEGである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記極性基を有する脂質が、ステロール、トコフェロール、ホスファチジルエタノールアミンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第2脂質成分が、ホスファチジルコリンもしくはその誘導体;ホスファチジルコリンもしくはその誘導体の混合物;ホスファチジルエタノールアミンもしくはその誘導体;およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるリン脂質を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記生体適合性ポリマーが、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記生分解性ポリマーが、PLA(ポリ乳酸)、PGA(ポリグリコール酸)、PLGA(ポリ(乳酸−コ−グリコール酸))、カチオン性生体適合性ポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性ポリエステルである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記非生分解性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGアクリレート、PEGメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、ポリスチレン、誘導体化ポリスチレン、ポリリジン、ポリN−エチル−4−ビニル−ピリジニウムブロミド、ポリメチルアクリレート、シリコーン、ポリオキシメチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
小胞を製造するために、ステップ(d)後、得られた溶液が、液体窒素中、水または熱気(噴霧乾燥機)に注入される、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
特定の構造化マトリックスを得るために、ステップ(d)後、得られた溶液が、鋳型に挿入され、その後前記液体が除去される、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−517265(P2013−517265A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548536(P2012−548536)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000054
【国際公開番号】WO2011/089595
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512173449)ポリピッド リミテッド (1)
【Fターム(参考)】