説明

徐放性製剤

長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを組み合わせてなる徐放性製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを組み合わせてなる新規な徐放性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
GnRH(もしくはLHRH)として知られる黄体形成ホルモン放出ホルモンは視床下部から放出され、下垂体のレセプターに結合する。これによって放出されるLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)は性腺に作動してステロイド性ホルモンを合成する。
ところが、黄体形成ホルモン放出ホルモン作用が強い化合物を連続投与すると、利用可能なレセプター数が減少し、性腺由来ステロイド性ホルモンの形成が抑制されることがわかってきた。このことを利用してGnRH作用を有する化合物は、前立腺癌、良性前立腺肥大、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、乳癌等の性ホルモン依存性疾患などの治療薬として臨床適応されている。
このようなGnRH作用を有する化合物としては、具体的には酢酸リュープロレリン、酢酸ブセレリン、酢酸ゴセレリンなどがあり、これらを含む徐放性製剤が上記疾患等の治療薬として販売されている。これらの化合物を含む製剤は、当初1日1回投与製剤として使用されていたが、その後徐放製剤化され、現在1ヶ月、3ヶ月または4ヶ月の徐放性製剤として販売されており、例えばそれらの徐放性製剤は、特許文献1や特許文献2に開示されている。
上述のようにGnRH作用を有する化合物は、前立腺癌などの治療薬として広く使用され、特に前立腺癌などの進行の遅い病気においては、製剤における徐放期間の延長は、治療効果の向上、および患者のQOL(quality of life、生活の質)向上だけでなく、通院回数を減らせることなどから医療経済上も好ましいものとされている。
【0003】
【特許文献1】EP190833号公報
【特許文献2】EP442671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、長期にわたり安定した徐放性を示す製剤を製造することは難しく、特に長期徐放に重点をおくと、投与初期の薬物の放出量が足りず、投与初期の効果発現が遅れることがある。また、投与初期の薬物の放出量が過剰になると、徐放期間後期の薬物放出量が不足し、長期にわたり安定した徐放性を保つことが困難な場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、徐放期間の異なるGnRHアゴニスト徐放製剤を組み合わせることにより、意外にも投与初期の放出量が増大し、長期にわたる安定した徐放性が確保できることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを組み合わせてなる徐放性製剤;
〔2〕GnRHアゴニストまたはその塩が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表わされるペプチドまたはその塩である前記〔1〕記載の製剤;
〔3〕GnRHアゴニストまたはその塩が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5
で表わされるペプチドの酢酸塩である前記〔1〕記載の製剤;
〔4〕長期が5ヶ月以上であり、短期が5ヶ月未満である前記〔1〕記載の製剤;
〔5〕長期が5ヶ月以上8ヶ月以下であり、短期が1週間以上5ヶ月未満である前記〔1〕記載の製剤;
〔6〕マイクロカプセルが乳酸重合体または乳酸−グリコール酸重合体を基剤とするマイクロカプセルである前記〔1〕記載の製剤;
〔7〕短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとの組み合わせ比率が、各マイクロカプセルに含まれるGnRHアゴニストまたはその塩の重量比として、1:約5〜約20である前記〔1〕記載の製剤;
〔8〕長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが、
(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量約18,000〜約30,000の乳酸重合体とを含有するマイクロカプセルで、
短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが、
(1)(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量約8,000〜約12,000の乳酸−グリコール酸重合体(75/25(モル%))とを含有するマイクロカプセルまたは
(2)(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量約13,000〜約18,000の乳酸重合体とを含有するマイクロカプセルである前記〔1〕記載の製剤;
〔9〕長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが、
(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量約15000〜約50000の乳酸重合体とを含有してなるマイクロカプセルで、
短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが
(1)(i)GnRHアゴニストまたはその塩および(ii)重量平均分子量(Mw)が約8,000〜約11,500で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.9よりも大きく、乳酸とグリコール酸の組成モル比が99.9/0.1〜60/40である乳酸−グリコール酸重合体を含み、薬物保持物質を含まないマイクロカプセル、または
(2)GnRHアゴニストまたはその塩を約20〜70重量%含有してなる内水相液と、乳酸/グリコール酸の組成比が80/20〜100/0で重量平均分子量が約7,000〜約30,000であるコポリマーないしホモポリマーを放出制御物質として含有してなる油相液とから調製されたW/Oエマルションをマイクロカプセル化して調製される、2カ月以上にわたってGnRHアゴニストまたはその塩をゼロ次放出するマイクロカプセルである前記〔1〕記載の製剤;
〔10〕長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放する前記〔1〕〜〔9〕記載の徐放性製剤;
〔11〕長期が5ヶ月以上である前記〔10〕記載の徐放性製剤;
〔12〕前記〔1〕記載の徐放性製剤を含有してなる前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、月経困難症もしくは乳癌の予防・治療剤または避妊剤;
〔13〕長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを混合することからなる前記〔1〕記載の徐放性製剤の製造方法;
〔14〕哺乳動物に対して請求項1記載の徐放性製剤の有効量を投与することを特徴とする前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、月経困難症もしくは乳癌の予防・治療方法または避妊方法;および
〔15〕前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、月経困難症もしくは乳癌の予防・治療剤または避妊剤を製造するための請求項1記載の徐放性製剤の使用などに関する。
【発明の効果】
【0006】
徐放期間の異なるGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルを組み合わせることにより、投与初期の薬物の放出量が増大した、かつ長期にわたって安定した徐放性を示す製剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
GnRHアゴニストとしては、ホルモン依存性疾患、特に性ホルモン依存性癌(例、前立腺癌、子宮癌、乳癌、下垂体腫瘍など)、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、思春期早発症、月経困難症、無月経症、月経前症候群、多房性卵巣症候群、前記癌の術後再発、小人症、アルツハイマー病、更年期障害、不定愁訴、前記癌の転移、カルシウム・リン骨代謝障害等の性ホルモン依存性の疾患および避妊(もしくは、その休薬後のリバウンド効果を利用した場合には、不妊症)に有効なGnRHアゴニストが挙げられる。さらに性ホルモン非依存性であるがGnRH感受性である良性または悪性腫瘍などに有効なGnRHアゴニストも挙げられる。
このGnRHアゴニストの例としては、例えばトリートメント ウイズ GnRH アナログ:コントラバーシス アンド パースペクテイブ(Treatment with GnRH analogs: Controversies and perspectives)[パルテノン バブリッシング グループ(株)(The Parthenon Publishing Group Ltd.)発行1996年]、特表平3−503165号公報、特開平3−101695号、同7−97334号および同8−259460号公報などに記載されているペプチド類などが挙げられる。
GnRHアゴニストとして具体例を挙げれば、例えば、一般式〔I〕
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z 〔I〕
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表わされる生理活性ペプチドまたはその塩などが用いられる。特に、YがDLeuで、ZがNH-C2H5であるペプチドまたはその塩(即ち、5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5で表わされるペプチドまたはその塩、特にその酢酸塩(酢酸リュープロレリン:武田薬品工業株式会社製))などが好適である。
該GnRHアゴニストとして例示したペプチドは薬理学的に許容される塩であってもよい。このような塩としては、該ペプチドがアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等)、有機酸(例、炭酸、重炭酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)などとの塩があげられる。
該ペプチドがカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属など)や有機塩基(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩があげられる。また、該ペプチドは金属錯体化合物(例、銅錯体、亜鉛錯体等)を形成していてもよい。
これらのペプチドまたはその塩は、前記文献あるいは公報記載の方法あるいはこれに準じる方法で製造することができる。
GnRHアゴニストとして、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の他に好ましい具体例としては、例えば、
【0008】
(1)ゴセレリン(Goserelin)
【化1】

(米国特開第4100274号,特開昭52−136172号)、
(2)ブセレリン(Buserelin)
【化2】

(米国特許No.4,024,248、ドイツ特許第2438352号,特開昭和51−41359号)、
(3)トリプトレリン(Triptorelin)
【化3】

(米国特開第4010125号,特開昭52−31073号)、
(4)ナファレリン(Nafarelin)
【化4】

(米国特開第4234571号,特開昭55−164663号,同昭63−264498号,同昭64−25794号)、
(5)ヒストレリン(Histrelin)
【化5】


(6)デスロレリン(Deslorelin)
【化6】

(米国特開第4569967号,同4218439号)、
(7)メテレリン(Meterelin)
【化7】

(PCT WO 91/18016)、
(8)ゴナドレリン(Gonadrelin)
【化8】

(ドイツ特許第2213737号)など、またはそれらの塩などがあげられる。
【0009】
短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセル(以下、単に「短期徐放マイクロカプセル」と称する場合がある)としては、5ヶ月未満の期間内にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが用いられ、好ましくは約1週間以上約5ヶ月未満の期間内に、より好ましくは約2週間以上約4ヶ月以下の期間内に、さらに好ましくは約3週間以上約4ヶ月以下の期間内に、さらにより好ましくは約1ヵ月以上約4ヶ月以下の期間内に、特に好ましくは約1ヵ月以上約2ヶ月以下、あるいは約2ヶ月以上約4ヶ月以下の期間内に、最も好ましくは約1ヶ月または約3ヶ月の期間内に、GnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが用いられる。
長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセル(以下、単に「長期徐放マイクロカプセル」と称する場合がある)としては、5ヶ月以上の期間内にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが用いられ、好ましくは5ヶ月以上2年未満の期間内に、より好ましくは5ヶ月以上1年6ヶ月以下の期間内に、さらに好ましくは5ヶ月以上1年以下の期間内に、さらにより好ましくは5ヶ月以上8月以下の期間内に、特に好ましくは5ヶ月以上6月以下の期間内に、最も好ましくは約6ヶ月の期間内に、GnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが用いられる。
本発明においては、「短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセル」と「長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセル」として、前記のそれぞれの徐放期間を有するマイクロカプセルを適宜組み合わせて用いることができる。例えば(i)約1ヶ月GnRHアゴニストもしくはその塩を徐放するマイクロカプセルまたは約3ヶ月GnRHアゴニストもしくはその塩を徐放するマイクロカプセルと、(ii)約6ヶ月GnRHアゴニストもしくはその塩を徐放するマイクロカプセルとを組み合わせて用いることができる。具体的には、(i)EP190833号公報に記載の徐放性マイクロカプセルまたはEP442671号公報に記載の徐放性マイクロカプセルと(ii)WO03/002092号公報に記載の徐放性マイクロカプセルとを組み合わせて用いることができる。
【0010】
ここで「組み合わせて用いる」とは、短期徐放マイクロカプセルを含有する製剤(以下、単に「短期徐放製剤」と称する場合がある)と長期徐放マイクロカプセルを含有する製剤(以下、単に「長期徐放製剤」と称する場合がある)とを順次投与しても良く、短期徐放製剤と長期徐放製剤を混合後同時に投与しても良く(なお、この場合、短期徐放マイクロカプセルと長期徐放マイクロカプセルとを混合後製剤化する場合も含む)、短期徐放製剤を投与した後一定期間経過後(例えば数時間から数日をおいて)長期徐放製剤を投与することをも含む。しかし、ここでは短期徐放製剤と長期徐放製剤製剤の薬物の徐放期間が重なるように投与することを言い、ある製剤の薬物の徐放期間が経過した後に別の製剤を投与することは、ここでの組み合わせて用いることには含まれない。例えば1ヶ月徐放製剤と3ヶ月徐放製剤を組み合わせて用いるという場合に、1ヶ月徐放製剤を投与後1ヶ月経過後に3ヶ月徐放製剤を投与するような場合は含まれない。
短期徐放製剤と長期徐放製剤を組み合わせる比率は、GnRHアゴニストの重量比として、通常短期徐放製剤1に対して長期徐放製剤1〜40であり、好ましくは短期徐放製剤1に対して長期徐放製剤5〜20であり、より好ましくは短期徐放製剤1に対して長期徐放製剤7〜18(特に、9〜16)であり、より好ましくは短期徐放製剤1に対して長期徐放製剤7〜15であり、さらに好ましくは短期徐放製剤1に対して長期徐放製剤9〜12である(なお、短期徐放マイクロカプセルと長期徐放マイクロカプセルとを混合後徐放製剤として製剤化する場合には、前記「短期徐放製剤」を「短期徐放マイクロカプセル」と、「長期徐放製剤」と「長期徐放マイクロカプセル」と読み替えて、その組合わせ量比を決定することができる。)。
長期徐放マイクロカプセルと短期徐放マイクロカプセルとを組み合わせてなる本発明の徐放性製剤は、長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放することができる。
長期とは、例えば5ヶ月以上の期間をいい、好ましくは5ヶ月以上2年未満の期間、より好ましくは5ヶ月以上1年6ヶ月以下の期間、さらに好ましくは5ヶ月以上1年以下の期間、さらにより好ましくは5ヶ月以上8月以下の期間、特に好ましくは5ヶ月以上6ヶ月以下の期間、最も好ましくは約6ヶ月の期間をいう。
【0011】
上記のGnRHアゴニスト、好ましくは式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5で表わされるペプチドまたはその塩(以下、単に「リュープロレリンまたはその塩」と称する場合がある)、より好ましくは酢酸リュープロレリンは、徐放型マイクロカプセルとして、より好ましくは徐放型マイクロカプセルからなる注射剤として投与される。
リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリンを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって上記製剤を製造することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、上記製剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプル、バイアルなどの密封容器に充填される。
具体的には、上記のGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる徐放性製剤(特に徐放型マイクロカプセル)は、自体公知の方法、例えば、短期徐放製剤(または短期徐放マイクロカプセル)の場合は、EP190833、EP442671、WO03/002091などに記載の方法に従って、長期徐放製剤(または長期徐放マイクロカプセル)の場合は、WO03/002092などに記載の方法に従って製造することができる。
【0012】
本発明製剤は長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを混合することによって製造することができる。つまり、本発明にかかる長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを組み合わせてなる徐放性製剤は、長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを別々に製造し、適宜適当な混合比で混合し、製剤化することによって製造することができる。長期徐放マイクロカプセルと短期徐放マイクロカプセルとの混合は、後述する一次乾燥工程及び二次乾燥工程の前であっても、後であっても良い。
ただし、一定時間をおいて別々に投与する場合は、長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを混合する必要はなく、それぞれ投与用の製剤として製剤化された後に各々用いることができる。また、それぞれ短期または長期の徐放マイクロカプセルからなる2つの徐放性製剤を用時混合して投与しても良い。
上記徐放型マイクロカプセルの製造方法の一例を以下に記載する。
まず、水にGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を約20〜70%(W/W)、好ましくは25〜65%(W/W)、より好ましくは35〜60%(W/W)溶解し、これに必要であればゼラチン、あるいは塩基性アミノ酸などの薬物保持物質を溶解もしくは懸濁し、内水相液とする。
これらの内水相液中には、GnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の安定性、溶解性を保つためのpH調整剤として、炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アルギニン、リジンおよびそれらの塩などを添加してもよい。また、さらにGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の安定化剤として、アルブミン、ゼラチン、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、デキストリン、亜硫酸水素ナトリウム、ポリエチレングリコールなどのポリオール化合物などを、あるいは保存剤として、一般に用いられるパラオキシ安息香酸エステル類(メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チメロサールなどを添加してもよい。
【0013】
このようにして得られた内水相液を、高分子重合物(ポリマー)を含む溶液(油相)中に加え、ついで乳化操作を行い、W/O型乳化物をつくる。該乳化操作は、公知の分散法が用いられ、たとえば、断続振とう法、プロペラ型攪はん機あるいはタービン型攪はん機などのミキサーによる方法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法などが挙げられる。
ついで、このようにして調製されたW/O型エマルションをマイクロカプセル化工程に付するが、該工程としては水中乾燥法あるいは相分離法が適用できる。水中乾燥法によりマイクロカプセルを製する場合は、該W/Oエマルションをさらに第3相目の水相中に加え、W/O/W型の3相エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を蒸発させ、マイクロカプセルを調製する。
上記外相の水相中に乳化剤を加えてもよく、その例としては、一般に安定なO/W型エマルションを形成するものであればいずれでもよいが、たとえば、アニオン界面活性剤(オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[Tween 80、Tween 60、アトラスパウダー社]、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体[HCO−60、HCO−50、日光ケミカルズ]など)、あるいはポリビニールピロリドン、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチンなどが挙げられ、これらの中の1種類か、いくつかを組み合わせて使用してもよい。使用の際の濃度は、約0.01%から20%の範囲から適宜選択でき、より好ましくは約0.05%から10%の範囲で用いられる。
油相の溶媒の蒸発には、通常用いられる方法が採用される。該方法としては、プロペラ型攪はん機、あるいはマグネチックスターラーなどで攪はんしながら徐々に減圧して行うか、ロータリーエバポレーターなどを用いて、真空度を調節しながら行う。この場合、高分子重合物の固化がある程度進行した時点で、溶媒の脱着をより完全にする目的で、W/O/W型エマルションを徐々に加温して行うと所要時間を短縮することができる。
【0014】
このようにして得られたマイクロカプセルは遠心分離あるいは濾過して分取した後、マイクロカプセルの表面に付着している遊離のGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)、薬物保持物質、乳化剤などを、蒸留水で数回繰り返し洗浄した後、再び、蒸留水などに分散して凍結乾燥する。この際に糖などの凝集防止剤を加えてもよい。必要であれば加温し、減圧下でマイクロカプセル中の水分および有機溶媒の脱離をより完全に行う。
凍結乾燥は具体的には、このようにして得られたマイクロカプセルに、該マイクロカプセルに対し、約2〜約60重量%の糖を添加し、凍結乾燥する。この工程を一次乾燥工程と呼ぶ。次いで、ポリマーのガラス転移温度から該ガラス転移温度より約40℃高い温度の範囲で適宜加熱する。この工程を二次乾燥工程と呼ぶ。
用いられる糖としては、例えばD−マンニトール、アルギン酸ナトリウム、果糖、デキストラン、デキストリン、白糖、D−ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、マルトース、デンプン類、あるいはトレハロースなどが挙げられる。これらの糖は、単独で用いても適宜混合して用いてもよい。これらの中で、凍結乾燥が容易で毒性が少ないD−マンニトールが特に好ましい。糖の添加方法は、特に限定されないが、例えば糖の水溶液にマイクロカプセルをよく分散する方法、マイクロカプセルに糖を単に添加した後、混合機などを用いて混合する方法等が挙げられる。糖の添加量は、好ましくはマイクロカプセルに対し、約5〜約40重量%である。なお、マイクロカプセルが既に糖と混合されている場合、例えば水中乾燥あるいは噴霧乾燥時またはその前に糖が用いられ、それが混合されている場合などでは、その量を考慮して合計量が前記範囲内になるように加えればよい。
凍結乾燥は、公知の方法にしたがって行えばよい。
【0015】
二次乾燥工程の加熱温度は、好ましくはポリマーのガラス転移温度から該ガラス転移温度より約20℃高い温度の範囲である。加熱温度は、通常品温が約30〜約60℃の温度範囲となるように選択される。ここで、ガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、加温速度を毎分10または20℃で昇温した際に得られる中間点ガラス転移温度を言う。
二次乾燥工程の加熱時間は、特に限定されないが、通常、約1〜約240時間、好ましくは約10〜約120時間、さらに好ましくは約20〜約72時間である。
加熱温度、加熱時間、乾燥の程度、加熱方法は、マイクロカプセルの粒子径、安定性、ガラス転移温度、融点、融着、変形のしやすさ、中に含有される薬物の安定性、それに添加した糖の種類および量、マイクロカプセルの分散性の程度によって決定される。このように加熱することにより、マイクロカプセル中の水分および有機溶媒の除去をより完全に行なうことができる。
【0016】
相分離法によりマイクロカプセルを製する場合は、該W/Oエマルションに攪はん下、コアセルベーション剤を徐々に加え、高分子重合物を析出、固化させる。
コアセルベーション剤としては、高分子重合物の溶剤に混和する高分子系、鉱物油系または、植物油系の化合物で、カプセル化用重合体を溶解しないものであればよく、例えば、シリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどが挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
このようにして得られたマイクロカプセルは、濾過して分取した後、ヘプタン等により繰り返し洗浄し、コアセルベーション剤を除去する。さらに、水中乾燥法と同様の方法で遊離薬物の除去、溶媒の脱離を行う。洗浄中の粒子同志の凝集を防ぐために、凝集防止剤を加えてもよい。
上記で得られたマイクロカプセルは、必要であれば軽く粉砕した後、篩過して、大きすぎるマイクロカプセル部分を除去する。マイクロカプセルの粒子径は、平均径として約0.5〜1000μmの範囲が挙げられ、より好ましくは約2〜500μmの範囲にあることが望まれる。懸濁注射剤として使用する場合には、その分散性、通針性を満足させる範囲であればよく、たとえば、約2ないし約100μmの範囲にあることが望ましい。
【0017】
上記高分子重合物としては、生体内分解性ポリマー、例えば、α−ヒドロキシモノカルボン酸類(例、グリコール酸、乳酸等)、α−ヒドロキシジカルボン酸類(例、リンゴ酸)、α−ヒドロキシトリカルボン酸(例、クエン酸)等のα−ヒドロキシカルボン酸類の1種以上から合成され、遊離のカルボキシル基を有する重合体、共重合体、またはこれらの混合物;ポリ(α−シアノアクリル酸エステル);ポリアミノ酸(例、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタミン酸)等);無水マレイン酸系共重合体(例、スチレン−マレイン酸共重合体等)などが用いられる。
モノマーの結合様式としては、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい。また、上記α−ヒドロキシモノカルボン酸類、α−ヒドロキシジカルボン酸類、α−ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−、L−、DL−体のいずれを用いてもよい。これらの中でも、乳酸−グリコール酸重合体(以下、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)あるいは乳酸−グリコール酸共重合体と称することもあり、特に明示しない限り、乳酸、グリコール酸のホモポリマー(重合体)及びコポリマー(共重合体)を総称する。また乳酸ホモポリマーは乳酸重合体、ポリ乳酸、ポリラクチドなどと、またグリコール酸ホモポリマーはグリコール酸重合体、ポリグリコール酸、ポリグリコリドなどと称される場合がある)、ポリ(α−シアノアクリル酸エステル)などが好ましい。さらに好ましくは、乳酸−グリコール酸重合体であり、より好ましくは、末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸−グリコール酸重合体である。
生体内分解性ポリマーは塩であってもよい。塩としては、例えば、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属など)や有機塩基(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩、または遷移金属(例,亜鉛,鉄,銅など)との塩および錯塩などが挙げられる。
【0018】
生体内分解性ポリマーとして乳酸−グリコール酸重合体を用いる場合、その組成比(モル%)は約100/0〜約40/60が好ましく、約100/0〜約50/50がより好ましい。また、2カ月以上にわたってGnRHアゴニストをゼロ次放出する徐放型マイクロカプセルの場合、組成比が100/0である乳酸ホモポリマー(乳酸重合体)も好ましく用いられる。
該「乳酸−グリコール酸重合体」の最小繰り返し単位の一つである乳酸の光学異性体比は、D−体/L−体(モル/モル%)が約75/25〜約25/75の範囲のものが好ましい。このD−体/L−体(モル/モル%)は、特に約60/40〜約30/70の範囲のものが汎用される。
該「乳酸−グリコール酸重合体」または「乳酸重合体」の重量平均分子量は、通常、約3,000〜約100,000、好ましくは約3,000〜約60,000、さらに好ましくは約3,000〜約50,000のものが用いられる。
本発明において、例えば短期徐放マイクロカプセルの基剤として重量平均分子量8,000〜12,000の乳酸−グリコール酸重合体(75/25(モル%))または重量平均分子量13,000〜18,000の乳酸重合体を用いた製剤と、長期徐放マイクロカプセルの基剤として重量平均分子量18,000〜30,000の乳酸重合体を用いた製剤とを組み合わせることができる。
また、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、通常約1.2〜約4.0が好ましく、さらには約1.5〜約3.5が特に好ましい。
該「乳酸−グリコール酸重合体」または「乳酸重合体」の遊離のカルボキシル基量は、重合体の単位質量(グラム)あたり通常約20〜約1000μmol(マイクロモル)が好ましく、さらには約40〜約1000μmol(マイクロモル)が特に好ましい。
【0019】
上記の重量平均分子量、数平均分子量および分散度とは、分子量既知のポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量および算出した分散度をいう。
標準物質としては、例えば、以下のような組み合せが挙げられる。
(1)重量平均分子量が500付近、1,000付近、3,000付近、5,000付近、10,000付近、20,000付近、50,000付近及び100,000付近の分子量既知のポリスチレン(以下、標準物質A群)、
(2)500付近、1,000付近、2,500付近、5,000付近、10,000付近、20,000付近、50,000付近、100,000付近、200,000付近及び400,000付近の分子量既知の10種類のポリスチレン(以下、標準物質B群)、
(3)重量平均分子量が98900、37200、17100、9490、5870、2500、1051及び495の分子量既知の8種類のポリスチレン(以下、標準物質C群)。
測定は、GPC装置(東ソー製、HLC−8120GPC、検出器は示差屈折計による)、GPCカラム(東ソー製、TSK gel G4000HHR、TSK gel G3000HHR、TSK gel G2000HHR及びTSK gel G1000HHRを試料注入口から、排除限界の大きい順に接続したカラム)を使用し、移動相としてテトラヒドロフランを用いる。流速は1.0mL/minで行う。
【0020】
上記の遊離のカルボキシル基量とはラベル化法により求めたもの(以下、「ラベル化法によるカルボキシル基量」と称する)をいう。具体的にポリ乳酸の場合について述べると、ポリ乳酸 Wmgを5N塩酸/アセトニトリル(v/v=4/96)混液2mLに溶解し、0.01M o−ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(ONPH)溶液(5N塩酸/アセトニトリル/エタノール=1.02/35/15)2mLと0.15M 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩溶液(ピリジン/エタノール=4v/96v)2mLを加えて40℃で30分反応させた後溶媒を留去する。残滓を水洗(4回)した後、アセトニトリル2mLで溶解し、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液1mLを加えて60℃で30分反応させる。反応液を1.5N水酸化ナトリウム水溶液で希釈してYmLとし、1.5N水酸化ナトリウム水溶液を対象として544nm吸光度A(/cm)を測定する。一方、DL−乳酸水溶液を基準物質として、その遊離カルボキシル基量 Cmol/Lをアルカリ滴定で求め、またONPHラベル化法でDL−乳酸ヒドラジドとしたときの544nm吸光度を B(/cm)とするとき、重合体の単位質量(グラム)あたりの遊離のカルボキシル基のモル量は以下の数式で求められる。
[COOH](mol/g)=(AYC)/(WB)
また、該「カルボキシル基量」は生体内分解性ポリマーをトルエン−アセトン−メタノール混合溶媒に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてこの溶液をアルコール性水酸化カリウム溶液でカルボキシル基を滴定して求めることもできる(以下、この方法によって求めた値を「アルカリ滴定法によるカルボキシル基量」と称する)が、滴定中にポリエステル主鎖の加水分解反応を競合する結果、滴定終点が不明確になる可能性があり上記ラベル化法で定量するのが望ましい。
【0021】
該「乳酸−グリコール酸重合体」または「乳酸重合体」は、例えば、乳酸とグリコール酸、または乳酸からの無触媒脱水重縮合(特開昭61−28521号)あるいはラクチドとグリコリド、またはラクチド等の環状ジエステル化合物からの触媒を用いた開環重合(Encyclopedic Handbook of Biomaterials and Bioengineering Part A: Materials, Volume 2, Marcel Dekker, Inc. 1995年)で製造できる。上記の公知の開環重合方法によって得られる重合体は、得られる重合体の末端に遊離のカルボキシル基を有しているとは限らないが、例えば、EP−A−0839525号に記載の加水分解反応に付すことにより、単位質量当たりにある程度のカルボキシル基量を有する重合体に改変することができ、これを用いることもできる。
上記の「末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸−グリコール酸重合体」または「末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸重合体」は公知の製造法(例えば無触媒脱水重縮合法、特開昭61−28521号公報、特開平10−182496号公報、特開2000−234016号公報参照)と同様の方法またはそれに準じた方法により製造できる。
【0022】
より具体的に、長期徐放マイクロカプセルとしては、例えば、WO03/002092に記載されている、(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量約15000〜約50000の乳酸重合体とを含有してなるマイクロカプセル(A)などが用いられる。
マイクロカプセル(A)において、GnRHアゴニストまたはその塩の含有量としては、例えば、組成物全体に対して約0.001〜約50%(w/w)、好ましくは約0.02〜約40%(w/w)、さらに好ましくは約0.1〜約30%(w/w)、より好ましくは約0.1〜約24%(w/w)、特に好ましくは約3〜約24%(w/w)、最も好ましくは約14〜約24%(w/w)である。
乳酸重合体としては、好ましくは、分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下であり且つ分子量3000以下の重合体含有量が約1.5重量%以下のもの、さらに好ましくは分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下、分子量3000以下の重合体含有量が約1.5重量%以下であり且つ分子量1000以下の重合体含有量が約0.1重量%以下のものである。
また、乳酸重合体の重量平均分子量としては、好ましくは15000〜40000、さらに好ましくは約15000〜約30000、より好ましくは約17000〜約30000である。
この場合の重量平均分子量は、例えば、上記の標準物質B群を用いて測定することができる。
【0023】
短期徐放マイクロカプセルとしては、例えば、
(1)(i)GnRHアゴニストまたはその塩および(ii)重量平均分子量(Mw)が約8,000〜約11,500で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.9よりも大きく、乳酸とグリコール酸の組成モル比が99.9/0.1〜60/40である乳酸−グリコール酸重合体を含み、薬物保持物質を含まないマイクロカプセル(B)、または
(2)EP442671に記載されている、GnRHアゴニストまたはその塩を約20〜70重量%含有してなる内水相液と、乳酸/グリコール酸の組成比が80/20〜100/0で重量平均分子量が約7,000〜約30,000であるコポリマーないしホモポリマーを放出制御物質として含有してなる油相液とから調製されたW/Oエマルションをマイクロカプセル化して調製される、2カ月以上にわたってGnRHアゴニストまたはその塩をゼロ次放出するマイクロカプセル(C)などが用いられる。
【0024】
マイクロカプセル(B)は新規なマイクロカプセルであり、好ましくは、(i)GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液と(ii)重量平均分子量(Mw)が約8,000〜約11,500で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.9よりも大きく、乳酸とグリコール酸の組成モル比が99.9/0.1〜60/40である乳酸−グリコール酸重合体またはその塩を含む約25〜約35℃に調整した溶液とを混合して約25〜約35℃のW/O型乳化物を製造し、これを約15〜約20℃に冷却し、該W/O型乳化物を水相に分散させてW/O/W型乳化物を製造し、該W/O/W型乳化物を水中乾燥に付することによって製造されるマイクロカプセルである。
マイクロカプセル(B)で用いられる乳酸−グリコール酸重合体またはその塩は、重量平均分子量(Mw)が約8,000〜約11,500で、該乳酸−グリコール酸重合体の重量平均分子量(Mw)と該乳酸−グリコール酸重合体の数平均分子量(Mn)の比が1.9よりも大きく、乳酸とグリコール酸の組成モル比が99.9/0.1〜60/40である乳酸−グリコール酸重合体またはその塩である。
乳酸−グリコール酸重合体の塩としては、例えば、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属など)や有機塩基(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩、または遷移金属(例、亜鉛、鉄、銅など)との塩および錯塩などが挙げられる。
該乳酸−グリコール酸重合体の重量平均分子量(Mw)と該乳酸−グリコール酸重合体の数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)としては、好ましくは約1.95〜約4.0、約2.0〜約3.5、さらに好ましくは約2.3〜約3.1である。
乳酸-グリコール酸重合体の組成比(モル%)は99/1〜60/40が好ましく、より好ましくは90/10〜60/40、さらに好ましくは80/20〜60/40、特に好ましくは80/20〜70/30であり、なかでも75/25が好ましい。
上記の乳酸-グリコール酸重合体の重量平均分子量は、通常、約8,000〜約11,500、好ましくは約9,000〜約11,500、さらに好ましくは約9,500〜約11,000である。
【0025】
ここで言う重量平均分子量、数平均分子量および分散度とは、特定の重量平均分子量を有する数種類のポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量(重量平均及び数平均)および算出した分散度をいう。測定に用いるカラムと移動相は適宜選択できる。また、乳酸−グリコール酸共重合体をジクロロメタンに溶解し、水を加えて分配する。ジクロロメタン層を自動滴定装置を用いてエタノール性水酸化カリウム液で滴定し、末端カルボン酸量を算出することにより、数平均分子量を算出できる。以下これを末端基定量による数平均分子量と表記する。末端基定量による数平均分子量が絶対値であるのに対してGPC測定による数平均分子量は、分析または解析条件(例えば、移動相の種類、カラムの種類、基準物質、スライス幅の選択、ベースラインの選択等)によって変動する相対値であるため、一義的な数値化は困難であるが、例えば、乳酸とグリコール酸から無触媒脱水重縮合法で合成され、末端に遊離のカルボキシル基を有する重合体では、GPC測定による数平均分子量と末端基定量による数平均分子量とがほぼ一致する。この乳酸-グリコール酸重合体の場合にほぼ一致するとは、末端基定量による数平均分子量がGPC測定による数平均分子量の約0.2〜約1.5倍の範囲内であることをいい、好ましくは約0.3〜約1.2倍の範囲内であることをいう。
【0026】
参考例5のGPC法とは、GPC法で評価した重量平均分子量(Mw)が98900、37200、17100、9490、5870、2500、1051、495である8種類のポリスチレン標準品(標準物質C群)を用いて測定するGPC法である。
マイクロカプセル(B)で用いられる上記の乳酸-グリコール酸重合体またはその塩の重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、参考例5のGPC法を用いて測定することができる。
より具体的には、以下の乳酸−グリコール酸重合体などが好ましく用いられる。
(1)乳酸・グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=75/25、Mw=約10300、Mn=約4000、Mw/Mn比=2.6(参考例5のGPC法(旧法)による値))
(2)乳酸・グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=75/25、Mw=約10400、Mn=約4100、Mw/Mn比=2.5(参考例5のGPC法(旧法)による値))
【0027】
乳酸−グリコール酸重合体の分解・消失速度は組成あるいは分子量によって大きく変化するが、一般的にはグリコール酸分率が低いほど分解・消失が遅いため、グリコール酸分率を低くするかあるいは分子量を大きくすることによって放出期間を長くすることができる。逆に、グリコール酸分率を高くするかあるいは分子量を小さくすることによって放出期間を短くすることもできる。長期間(例えば、1〜12ヶ月、好ましくは1〜6ヶ月)型徐放性製剤とするには、上記の組成比および重量平均分子量の範囲の乳酸−グリコール酸重合体が好ましい。上記の組成比および重量平均分子量の範囲の乳酸−グリコール酸重合体よりも分解が早い乳酸−グリコール酸重合体を選択すると初期の放出の抑制が困難であり、逆に上記の組成比および重量平均分子量の範囲の乳酸−グリコール酸重合体よりも分解が遅い乳酸−グリコール酸重合体を選択すると有効量の薬物が放出されない期間を生じやすい。
乳酸−グリコール酸重合体は、例えば、乳酸とグリコール酸からの無触媒脱水重縮合(特開昭61−28521号)あるいはラクタイドとグリコライド等の環状体からの触媒を用いた開環重合(Encyclopedic Handbook of Biomaterials and Bioengineering PartA:Materials, Volume 2, Marcel Dekker, Inc. 1995年)で製造できる。
開環重合で合成される重合体はカルボキシル基を有しない重合体であるが、該重合体を化学的に処理して末端を遊離のカルボキシル基にした重合体(ジャーナル オブ コントロールド リリーズ(J. Controlled Release),41巻、249−257頁、1996年)を用いることもできる。
上記の末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸−グリコール酸重合体は公知の製造法(例えば、無触媒脱水重縮合法、特開昭61−28521号公報参照)で問題なく製造でき、さらには末端に特定されない遊離のカルボキシル基を有する重合体は公知の製造法(例えば、WO94/15587号公報参照)で製造できる。
また、開環重合後の化学的処理によって末端を遊離のカルボキシル基にした乳酸−グリコール酸重合体は、例えばベーリンガー エンゲルハイム(Boehringer Ingelheim KG)から市販されているものを用いてもよい。
【0028】
さらに、開環重合により製造した乳酸−グリコール酸重合体の加水分解は、公知の方法に従い、酸または塩基の存在下に行われる。さらに、加水分解は、水の存在下に行われる。
ここにおいて、酸としては、例えば塩酸,硝酸,硫酸,リン酸などの無機酸、乳酸,酢酸,酒石酸,クエン酸,コハク酸などの有機酸が挙げられる。また、塩基としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属、炭酸ナトリウム,炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。塩基の存在下に加水分解を行う場合、塩基の残存量によって、徐放性マイクロカプセルからのGnRHアゴニストまたはその塩の放出が影響を受けるため、酸の存在下に加水分解を行うことが好ましい。
加水分解は、通常反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で行われる。このような溶媒としては、例えばメタノール,エタノール,プロパノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン,ジオキサン,ジエチルエーテル,ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、水、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。また、上記した酸または塩基の過剰量を、溶媒として用いてもよい。
加水分解の際の温度は、例えば約0〜約100℃、好ましくは約10〜約100℃である。
加水分解に要する時間は、開環重合により製造したポリ乳酸の重量平均分子量、酸または塩基の種類、溶媒の種類、温度などによって異なるので、加水分解中に乳酸−グリコール酸重合体の一部を採取し、採取した乳酸−グリコール酸重合体の重量平均分子量を測定することによって適宜決定すればよい。加水分解に要する時間は、特に限定されないが、例えば約1時間〜約10日、好ましくは約10時間〜約5日である。
開環重合により製造した乳酸−グリコール酸重合体は、初期バーストの大きな徐放性マイクロカプセルしか製造できないが、加水分解された乳酸−グリコール酸重合体、すなわち本発明で用いられる乳酸−グリコール酸重合体では、初期バーストの小さい徐放性マイクロカプセルを製造することができる。
【0029】
加水分解された乳酸−グリコール酸重合体は、さらに精製工程に付すことが好ましい。精製工程は、加水分解された乳酸−グリコール酸重合体を有機溶媒に溶解し、得られる溶液を水または水と水溶性有機溶媒との混合溶液中に注入し、沈殿する乳酸−グリコール酸重合体を分離することにより行われる。
有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン,クロロホルム,クロロエタン,ジクロロエタン,トリクロロエタン,四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン等)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン,エチルエーテル,イソプロピルエーテル等)、エステル類(例、酢酸エチル,酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン,トルエン,キシレン等)等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、加水分解されたポリ乳酸に対し、例えば約3〜約20倍量(w/v)である。
水溶性有機溶媒としては、例えばアセトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。水または水と水溶性有機溶媒との混合液の使用量は、特に限定されないが、通常、加水分解されたポリ乳酸に対して大過剰量である。
精製工程における温度は、通常約0〜約90℃、好ましくは約20〜約70℃である。
上記した精製工程により、水可溶性の低分子化合物(例えば重量平均分子量約1,000以下のもの)を除去することができる。このような精製工程を経て得られる乳酸−グリコール酸重合体を用いれば、徐放性マイクロカプセルを製造する際のGnRHアゴニストまたはその塩の取り込み率(トラップ率)を高めることができ、また、初期バーストの低減された徐放性製剤を製造することができる。
さらに、開環重合により製造した乳酸−グリコール酸重合体を加水分解および精製工程に付すことにより、開環重合の際に使用される有害な触媒(例、酸化亜鉛等の亜鉛化合物およびオクタン酸第一スズ等のスズ化合物)等を実質的に含まない乳酸−グリコール酸重合体を製造することができる。
【0030】
薬物保持物質とは、水溶性で、油相の有機溶媒に溶解し難いもので、水に溶解した状態で、すでに粘性の高い半固体状となるか、あるいは、何かの外的因子、例えば温度、pH、金属イオン(例、Cu2+、Al3+、Zn2+など)、有機酸(例、酒石酸、クエン酸、タンニン酸など)あるいはその塩、化学縮合剤(例、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒドなど)などの作用を与えることによって、より著しく粘度が増大し、半固体状ないしは固体状のマトリックスとなる性質を有する物質である。
薬物保持物質の例としては、天然あるいは合成のゴム質または高分子化合物が用いられる。
天然のガム質としては、アカシアガム、アラビアガム、アイルランド苔、カラヤガム、トラガカントガム、グアヤクガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。天然の高分子化合物としては、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン(例、ヒト血清アルブミン)、グロブリン、フィブリンなどの蛋白質、セルロース、デキストリン、ペクチン、デンプン、寒天、マンナンなどの炭水化物が挙げられる。これらは、そのままでもよいし、あるいは、一部化学的に修飾した合成ガム質、例えば、上記の天然ガムをエステル、エーテルとしたもの(例、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、コハク酸ゼラチンなど)、加水分解処理したもの(例、アルギン酸ナトリウム、ペクチン酸ナトリウムなど)あるいはこれらの塩などの形でもよい。
合成の高分子化合物としては、例えば、ポリビニール化合物(例、ポリビニールピロリドン、ポリビニールアルコール、ポリビニールメチルエーテル、ポリビニルエーテルなど)、ポリカルボン酸(例、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、カーボポール(Goodrich社)など)、ポリエチレン化合物(例、ポリエチレングリコールなど)、ポリサッカライド(例、ポリシュークロース、ポリグルコース、ポリラクトースなど)およびこれらの塩などが挙げられる。
また、前記の外的因子によって縮合、架橋が進行し、高分子化合物となりうるものも含まれる。
これらの化合物の中でも、とりわけ、ゼラチン、アルブミン、ペクチンまたは寒天など、特にゼラチンが該当する。
【0031】
マイクロカプセル(B)は、GnRHアゴニストまたはその塩と乳酸−グリコール酸重合体またはその塩とを含有する微粒子(すなわちマイクロスフェア)を含有していればよい。該微粒子の具体例としては、例えば1個の粒子中に1個のGnRHアゴニストまたはその塩のコアーを含有するマイクロカプセル、1個の粒子中に多数のGnRHアゴニストまたはその塩のコアーを含有する多核マイクロカプセル、または分子状でGnRHアゴニストまたはその塩が固溶体として生乳酸−グリコール酸重合体またはその塩に溶解あるいは分散しているような細粒子などが挙げられる。
マイクロカプセル(B)中のGnRHアゴニストまたはその塩の含量は、GnRHアゴニストまたはその塩の種類、所望の薬理効果および効果の持続期間などによって異なるが、例えば約0.01〜約50%(w/w)、好ましくは約0.1〜約30%(w/w)、好ましくは約5〜約24%(w/w)である。
以下にマイクロカプセル(B)の製造法について詳細に説明する。
マイクロカプセル(B)は、(i)GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液と(ii)重量平均分子量(Mw)が約8,000〜約11,500で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.9よりも大きく、乳酸とグリコール酸の組成モル比が99.9/0.1〜60/40である乳酸−グリコール酸重合体またはその塩(以下、生体内分解性ポリマーと略記する)を含む約25〜約35℃に調整した溶液とを混合して約25〜約35℃のW/O型乳化物を製造し(一次乳化)、これを約15〜約20℃に冷却し、該W/O型乳化物を水相に分散させてW/O/W型乳化物を製造し(二次乳化)、該W/O/W型乳化物を水中乾燥に付して製造される。
【0032】
GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液を内水相とし、生体内分解性ポリマーを含む約25〜約35℃に調整した溶液を油相とするW/O型乳化物は、以下のようにして製造することができる。
まず、水(好ましくは注射用蒸留水)にGnRHアゴニストまたはその塩を、約0.001〜約90%(w/w)、好ましくは約0.01〜約80%(w/w)、さらに好ましくは約1〜約70%(w/w)、特に好ましくは約50%の濃度になるように溶解し、内水相とする。
内水相には、GnRHアゴニストまたはその塩の安定性、溶解性を保つためのpH調整剤として、炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アルギニン、リジンおよびそれらの塩などを添加してもよい。さらに、GnRHアゴニストまたはその塩の安定化剤として、アルブミン、ゼラチン、トレハロース、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、デキストリン、シクロデキストリン(α−,β−,γ−)およびそれらの誘導体(例、マルトシールβ−シクロデキストリン,β−シクロデキストリンスルフォブチルエーテルなど)、亜硫酸水素ナトリウム、ポリエチレングリコールなどのポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[例、Tween 80,Tween 60(花王、日本)]、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体[例、HCO−60,HCO−70(日光ケミカルズ、日本)]などの界面活性剤、パラオキシ安息香酸エステル類(例、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チメロサールなどを添加してもよい。
【0033】
このようにして得られる内水相と、約25〜約35℃に調整した生体内分解性ポリマーを含む溶液(油相)とを混合し、得られる混合物を乳化工程に付し、W/O型乳化物を調製する。
生体内分解性ポリマーを含む溶液(油相)としては、生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解したものが用いられる。該有機溶媒としては、沸点が約120℃以下、疎水性で、生体内分解性ポリマーを溶解するものであればよく、例えばハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素など)、脂肪酸エステル類(例、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなど)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。また、これらの有機溶媒の2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒は、好ましくは塩化メチレンである。
有機溶媒中の生体内分解性ポリマーの濃度は、生体内分解性ポリマーの種類、分子量、有機溶媒の種類により異なるが、通常約0.01〜約90%(w/w)、好ましくは約0.1〜約80%(w/w)、さらに好ましくは約1〜約70%(w/w)、特に好ましくは約35%である。
なお、内水相との相溶性、外水相への有機溶媒の分配、揮散などを変化させるため、油相に一部親水性の有機溶媒、例えばエタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフランなどを添加してもよい。また、内部のGnRHアゴニストまたはその塩を溶解あるいは安定化させるために、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤を添加してもよい。
このようにして得られる油相は、通常フィルターで除菌・除塵ろ過して用いる。また、生体内分解性ポリマーの安定性に依存するが、生体内分解性ポリマーを含む溶液を室温ないし冷所で密閉容器の中で保存してもよい。
【0034】
GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液と生体内分解性ポリマーの溶液との混合割合は、前者1重量部当たり、後者が約0.1〜約1000重量部、好ましくは約1〜約100重量部、さらに好ましくは約1〜約20重量部、特に好ましくは約10重量部である。
また、GnRHアゴニストまたはその塩の種類、所望の薬理効果および効果の持続期間などにより異なるが、生体内分解性ポリマーに対するGnRHアゴニストまたはその塩の割合が、約0.01〜約50%(w/w)、好ましくは約0.5〜約40%(w/w)、より好ましくは約0.1〜約30%(w/w)、特に好ましくは約10%であるように混合するのが良い。
乳化工程は、公知の分散法、例えば断続振とう法、プロペラ型攪拌機あるいはタービン型攪拌機などの攪拌機による方法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法などにより行われる。
【0035】
そして、GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液と生体内分解性ポリマーを含む溶液を約25〜約35℃、好ましくは約27〜約33℃の温度下で混合する。この温度調整により、製球性および/または通針性の良好な徐放性マイクロカプセルを製造することができる。
該乳化工程の好ましい形態を記載すると、例えば、まず、GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液を含有する容器に生体内分解性ポリマーを含む溶液を加えた後、該容器を振動もしくは揺動されることにより粗乳化を行う。粗乳化時において、GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液と生体内分解性ポリマーを含む溶液の混合物の温度を約25〜約35℃、好ましくは約27〜約33℃を調整することが好ましい。
一般的に、該粗乳化の目的は次工程の乳化工程(精乳化)を容易にするためであり、その撹拌時間、振動、揺動数は特に規定されるものではない。従って均一に精乳化が行われる場合は該粗乳化工程を省略してもよい。
【0036】
次に粗乳化後の混合物をプロペラ型攪拌機などにより乳化工程(精乳化)に付す。精乳化時において、GnRHアゴニストまたはその塩を含み、薬物保持物質を含まない溶液と生体内分解性ポリマーを含む溶液の混合物の温度を約25〜約35℃、好ましくは約27〜約33℃に調整することが好ましい。この温度調整により、製球性および/または通針性の良好な徐放性マイクロカプセルを製造することができる。精乳化時の乳化時間は、GnRHアゴニストまたはその塩及び生体内分解性ポリマーの特性に応じて選択できるが、一般に約0.1〜約60分の範囲で実施される。
混合する油相の体積は内水相の体積に対し、約1〜約1000倍、好ましくは約2〜約100倍、より好ましくは約3〜約10倍である。
得られたW/Oエマルションの粘度範囲は一般的には約12〜約25℃で、約10〜約10,000cpで、好ましくは約100〜約5,000cpである。特に好ましくは約500〜約2,000cpである。
精乳化によって得られるW/O型乳化物を約0〜約18℃の水浴等で冷却し、W/O型乳化物の温度を約0〜約30℃、好ましくは約10〜約25℃、さらに好ましくは約15〜約20℃に調整することが好ましい。
ついで、このようにして得られるW/O型乳化物を水相(以下、外水相と略記する)に分散させてW/O/W型乳化物を製造し、該W/O/W型乳化物を水中乾燥に付して徐放性マイクロカプセルを製造する。
【0037】
上記外水相中に乳化剤を加えてもよい。該乳化剤としては、一般に安定なO/Wエマルションを形成するものであればいずれでもよいが、例えばアニオン界面活性剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤(例、Tween 80、Tween 60、HCO−60、HCO−70など)、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ゼラチンなどが挙げられる。これらの乳化剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。本発明の製造法の場合、好ましくはポリビニールアルコールが乳化剤として好ましく用いられる。
外水相における乳化剤の濃度は、例えば約0.001〜約20%、好ましくは約0.01〜約10%、さらに好ましくは約0.05〜約5%、特に好ましくは約0.1%である。
【0038】
上記の外水相中には浸透圧調節剤を加えてもよい。該浸透圧調節剤としては、水溶液とした場合に浸透圧を示すものであればよい。
該浸透圧調節剤としては、例えば、多価アルコール類、一価アルコール類、単糖類、二糖類、オリゴ糖およびアミノ酸類またはそれらの誘導体、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
上記の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン等の三価アルコール類、アラビトール,キシリトール,アドニトール等の五価アルコール類、マンニトール,ソルビトール,ズルシトール等の六価アルコール類などが用いられる。なかでも、六価アルコール類が好ましく、特にマンニトールが好適である。
上記の一価アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、このうちエタノールが好ましい。
上記の単糖類としては、例えば、アラビノース,キシロース,リボース,2ーデオキシリボース等の五炭糖類、ブドウ糖,果糖,ガラクトース,マンオース,ソルボース,ラムノース,フコース等の六炭糖類が用いられ、このうち六炭糖類が好ましい。
上記のオリゴ糖としては、例えば、マルトトリオース,ラフィノース糖等の三糖類、スタキオース等の四糖類などが用いられ、このうち三糖類が好ましい。
上記の単糖類、二糖類およびオリゴ糖の誘導体としては、例えば、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ガラクツロン酸などが用いられる。
上記のアミノ酸類としては、L−体のものであればいずれも用いることができ、例えば、グリシン、ロイシン、アルギニンなどが挙げられる。このうちL−アルギニンが好ましい。
【0039】
これらの浸透圧調節剤は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
これらの浸透圧調節剤は、外水相の浸透圧が生理食塩水の浸透圧の約1/50〜約5倍、好ましくは約1/25〜約3倍、さらに好ましくは約1/12〜約2倍となる濃度で用いられる。
具体的には、浸透圧調節剤の外水相での濃度は、浸透圧調節剤が非イオン性物質の場合、約0.01〜約60%(w/w)、好ましくは約0.01〜約40%(w/w)、より好ましくは約0.05〜約30%(w/w)、特に好ましくは約0.5〜約1.5%(w/w)である。また、浸透圧調節剤がイオン性物質の場合、上記の濃度を全体のイオン価で除した濃度が用いられる。浸透圧調節剤の添加濃度は、溶解度以下である必要はなく、一部が分散状態であってもよい。
外水相に浸透圧調節剤を添加することにより、製造されたマイクロカプセルの分散性を改善させることができ、その程度は特に限定されないが、例えば、約400から700mgのマイクロカプセルを1.5mLの注射用分散媒に2分未満で分散できることが好ましい。
【0040】
有機溶媒の除去は、公知の方法に従って行えばよい。このような方法としては、例えばプロペラ型攪拌機あるいはマグネチックスターラーなどで攪拌しながら、常圧下もしくは徐々に減圧して溶媒を除去する方法、ロータリーエバポレーターなどを用いて、真空度、温度を調節しながら溶媒を除去する方法等が挙げられる。
このようにして得られる徐放性マイクロカプセルを、遠心分離あるいはろ過、湿式サイクロン等により分取した後、蒸留水で数回繰り返し洗浄して、マイクロカプセルの表面に付着している遊離のGnRHアゴニストまたはその塩、薬物保持物質、乳化剤等を除去する。ついで、洗浄されたマイクロカプセルを、減圧乾燥するか、あるいは蒸留水に再分散後凍結乾燥して、さらに有機溶媒の除去を行う。
【0041】
製造工程中、粒子同士の凝集を防ぐために凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えば、マンニトール,ラクトース,ブドウ糖,デンプン類(例、コーンスターチ等)などの水溶性多糖、グリシンなどのアミノ酸、フィブリン,コラーゲンなどのタンパク質などが用いられる。なかでも、マンニトールが好適である。
マンニトール等の凝集防止剤の添加量は、マイクロカプセル全体に対して、通常0〜約24重量%である。
【0042】
本発明の徐放性マイクロカプセルは、賦形剤を含有していることが好ましい。該賦形剤としては、生体内に投与しても毒性が少なく、凍結乾燥などの乾燥が容易で、生体内に投与した場合速やかに溶解するか、また、用時溶解するものであることが望まれる。このような賦形剤としては、例えば糖、セルロース誘導体、アミノ酸、タンパク質、ポリアクリル酸誘導体、有機塩、無機塩などが挙げられる。これらの賦形剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
ここにおいて、糖としては、例えばD−マンニトール、アルギン酸ナトリウム、果糖、デキストラン、デキストリン、白糖、D−ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、マルトース、デンプン類、トレハロースなどが挙げられる。
セルロース誘導体としては、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネートなどが挙げられる。
アミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、チロシン、アルギニン、リジンなどが挙げられる。
タンパク質としては、例えばフィブリン、コラーゲン、アルブミンなどが挙げられる。
ポリアクリル酸誘導体としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸/アクリル酸共重合体(オイドラギット、ローム社製、ドイツ)などが挙げられる。
有機塩としては、例えばクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどが挙げられる。
賦形剤としては、上記以外に、徐放性マイクロカプセル用基剤であるポリマーを溶解しない水溶性ポリマー、例えばポリビニールピロリドン、ポリビニールアルコールなども用いられる。
賦形剤は、好ましくは糖類であり、とりわけ凍結乾燥が容易で毒性が少ないD-マンニトールが好ましい。
【0043】
賦形剤の使用量は、賦形剤の溶解度、賦形剤を溶解して得られる溶液の張度,粘度,分散性,安定性などによって決定されるが、徐放性マイクロカプセルを乾燥した場合に、乾燥徐放性マイクロカプセル中の賦形剤の含量が、例えば約0.5〜約99%(w/w)、好ましくは約1〜約90%(w/w)、より好ましくは約2〜約60%(w/w)となるように用いられる。賦形剤としてD−マンニトールを用いる場合は、乾燥徐放性マイクロカプセル中の賦形剤の含量が約2〜約40%(w/w)、好ましくは約15%(w/w)となることが好ましい。
これらの賦形剤の添加によって、1)徐放性マイクロカプセルの乾燥時および乾燥後の粒子の接触および衝突の頻度が低下し、凍結乾燥時の粒子の均一性が保たれる、2)徐放性マイクロカプセルのガラス転移点以上の温度での乾燥が可能となり、より完全な水または有機溶媒の除去が可能となる、3)徐放性マイクロカプセルの経時的安定性が改善され、分散性が良好で、冷所保存に限定されることなく、例えば室温での長期使用期限を有する徐放性マイクロカプセルが得られるなどの優れた効果が得られる。
【0044】
賦形剤を含有するマイクロカプセル(B)は、例えば上記した水中乾燥法によって得られるマイクロカプセルと、賦形剤とを混合することによって製造することができる。該マイクロカプセルは、洗浄後に減圧乾燥したもの、あるいは洗浄後に蒸留水に再分散し凍結乾燥したものであってもよい。混合の方法は、特に限定されず、例えば混合機などを用いて行われる。
さらに、賦形剤を含有するマイクロカプセル(B)は、水中乾燥法において用いられるW/O/W型乳化物を製造する際に、外水相に賦形剤の水溶液を使用することによっても製造することができる。
賦形剤を含有するマイクロカプセル(B)は、好ましくは水中乾燥法によって得られるマイクロカプセルを洗浄し、洗浄されたマイクロカプセルを、賦形剤を溶解または懸濁した蒸留水に分散し、ついで凍結乾燥または減圧乾燥することによって製造される。また、洗浄されたマイクロカプセルを蒸留水に分散し、得られる分散液に賦形剤を溶解または懸濁した後に、凍結乾燥または減圧乾燥を行ってもよい。とりわけ、洗浄されたマイクロカプセルを賦形剤を溶解した蒸留水に分散するか、洗浄されたマイクロカプセルを蒸留水に分散して得られる分散液に賦形剤を溶解した後に、凍結乾燥することにより、均一な混合物が得られる。
【0045】
さらに、上記した水中乾燥法によって得られるマイクロカプセルを、所望により、基剤として用いたポリマーのガラス転移温度(Tg)以上で、該マイクロカプセルの各粒子が互いに付着しない程度の温度に加熱することより、マイクロカプセル中の水および有機溶媒の除去をより完全に行うとともに、徐放性の改善を行うことができる。この際、有機溶媒は、約1000ppm未満、好ましくは約500ppm未満、より好ましくは約100ppm未満程度まで除去することが好ましい。
ガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、加温速度を毎分10または20℃で昇温した際に得られる中間点ガラス転移温度を言う。
加熱の時期は、所望により賦形剤を添加した後、マイクロカプセルを凍結乾燥または減圧乾燥した後が好ましいが、特に限定されるものではなく、例えば小分け後でもよい。
加熱温度が基剤として用いたポリマーのガラス転移温度未満では、水または有機溶媒の除去が充分でない場合があり、また高温過ぎるとマイクロカプセルの融着,変形,GnRHアゴニストまたはその塩の分解,劣化等の危険性が増大するので、加熱温度は一概に定義できないが、基剤として用いたポリマーの物性(例、分子量,安定性等),GnRHアゴニストまたはその塩,マイクロカプセルの平均粒子径,加熱時間,マイクロカプセルの乾燥程度,加熱方法等を考慮し、適宜決定することができる。
加熱温度は、好ましくは基剤として用いたポリマーのガラス転移温度からガラス転移温度より約40℃高い温度以下の温度、好ましくはポリマーのガラス転移温度からガラス転移温度より約35℃高い温度以下の温度、さらに好ましくはポリマーのガラス転移温度からガラス転移温度より約25℃高い温度以下の温度、特に好ましくはポリマーのガラス転移温度から約20℃高い温度範囲の温度である。
【0046】
加熱時間は、加熱温度,処理するマイクロカプセル量などによって異なるが、一般的にはマイクロカプセル自体の温度が所定の温度に達した後、約6〜約120時間、さらに好ましくは約12〜約96時間である。また、加熱時間の上限は、残存有機溶媒、水分が許容値以下になれば特に限定されないが、ガラス転移温度以上の条件下ではマイクロカプセルが軟化し、マイクロカプセル同志の物理的接触あるいはマイクロカプセル積層時の荷重により変形するので、有機溶媒、水分の残存が許容値以下になったら、速やかに加熱を終了することが好ましい。
加熱方法は特に限定されないが、マイクロカプセルが均一に加熱される方法であればいかなる方法を用いてもよい。該加熱方法の好ましい具体例として、例えば凍結乾燥機、減圧恒温機等で減圧下に加熱乾燥する方法等が挙げられる。
マイクロカプセル(B)の粒子径は、その分散性、通針性を満足させる範囲であればよく、例えば平均径として約0.1〜約1000μm、好ましくは約1〜約300μm、さらに好ましくは約5〜約150μmである。
【0047】
マイクロカプセル(B)は、製造時の脱溶媒速度が速く、例えば、水中乾燥工程終了後(例、3時間後)の組成物中の残存塩化メチレン濃度は通常、約2,000ppm〜約20,000ppmであるため、脱溶媒性に優れている。
さらに、マイクロカプセル(B)は沈降速度が遅いという優れた性質を有している。沈降速度は、例えば、マイクロカプセル(B)末50mgをバイアル充填後、分散媒5mlで懸濁し、得られた懸濁液の約40μlを分散媒5mlに分散させ、濁度計にてNTUを測定することにより求めることができる。マイクロカプセル(B)は、懸濁直後の濁度を100%とした場合、濁度50%になるまでの時間が遅いという性質を有している。
【0048】
マイクロカプセル(C)において、乳酸/グリコール酸の組成比としては、好ましくは90/10〜100/0で、特に好ましくは100/0である。
コポリマーないしホモポリマーの重量平均分子量としては、好ましくは、乳酸/グリコール酸の組成比が100/0の場合は約7,000〜約25,000、90/10の場合は約7,000〜約30,000、80/20の場合は約12,000〜約30,000である。
この場合の重量平均分子量は、例えば、上記の標準物質A群を用いて測定することができる。
内水相液におけるGnRHアゴニストまたはその塩の濃度としては、通常約20〜70%(w/w)、好ましくは約25〜65%(w/w)、より好ましくは35〜60%(w/w)である。
油相液におけるコポリマーないしホモポリマーの濃度は、通常約0.5〜90%(w/w)、好ましくは約2〜60%(w/w)である。
GnRHアゴニストまたはその塩をゼロ次放出する期間としては、好ましくは2カ月以上4ヶ月以下、より好ましくは約3ヶ月である。
【0049】
長期徐放マイクロカプセル(A)としては、具体的には、後述する参考例2で製造されたマイクロカプセル(MC)#2などが用いられる。
短期徐放マイクロカプセル(B)としては、具体的には、後述する参考例1で製造されたマイクロカプセル(MC)#1などが用いられる。
短期徐放マイクロカプセル(C)としては、具体的には、後述する参考例3で製造されたマイクロカプセル(MC)#3などが用いられる。
【0050】
該マイクロカプセルを注射剤とするには、マイクロカプセルを分散剤(例、Tween 80、HCO−60、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖など)などと共に水性懸濁剤とするかゴマ油、コーン油などの植物油と共に分散して油性懸濁剤とし、実際に使用できる徐放性注射剤とする。
本発明の徐放性製剤は、長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルを上記のように徐放性製剤化、特に徐放性注射剤として製剤化したものと、短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルを上記のように徐放性製剤化、特に徐放性注射剤として製剤化したものとを組み合わせたものを用いることもでき、または長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを混合したマイクロカプセルを上記のように徐放性製剤化、特に徐放性注射剤として製剤化したものを用いることもできる。
上記のGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる剤(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩(好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる徐放型マイクロカプセルを含有してなる剤)は、そのまま皮下、筋肉内、血管など(好ましくは皮下及び筋肉内など)に容易に注射剤などとして投与することができる。
本発明にかかる徐放性製剤も同様にして、そのまま皮下、筋肉内、血管など(好ましくは皮下及び筋肉内など)に容易に注射剤などとして投与することができる。本発明において、短期徐放マイクロカプセルと長期徐放マイクロカプセルの混合物から徐放製剤化された製剤または、短期徐放製剤と長期徐放製剤とを混合して製剤化した製剤を投与する場合は、そのまま皮下、筋肉内、血管など(好ましくは皮下及び筋肉内など)に容易に注射剤などとして投与することができるが、短期徐放製剤と長期徐放製剤とを別々に投与する場合、それぞれそのまま皮下、筋肉内、血管など(好ましくは皮下及び筋肉内など)に容易に注射剤などとして投与することができる。通常、同一の投与経路が選択されるが、場合によっては短期徐放製剤と長期徐放製剤とを皮下と筋肉内など別の経路で投与することも可能である。
【0051】
また、上記製剤の投与量は、GnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の含量、剤形、GnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の持続時間、投与対象動物[例、温血哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマなど)]により種々異なるが、該GnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の医薬としての有効量であればよい。たとえば、上記温血哺乳動物に1日あたり投与量として、約0.01mgないし 100mg/kg体重、好ましくは約0.02mgないし50mg/kg体重、さらに好ましくは0.05mgないし20mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。
また、上記製剤を注射剤として投与する場合、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)においては、1日につきGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.01から50mg程度、好ましくは約0.1から20mg程度、より好ましくは約0.1から15mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよい。また、上記のGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる徐放型マイクロカプセルを含有する注射剤として投与する場合には、徐放型マイクロカプセルの薬物徐放期間によって、投与量が異なり、例えば、約1ヶ月に一回の投与を行う場合には、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)において、一回につきGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.01から25mg程度、好ましくは約0.1から15mg程度、より好ましくは約0.1から10mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよく、例えば、約3ヶ月に一回の投与を行う場合には、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)において、一回につきGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.1から75mg程度、好ましくは約0.1から45mg程度、より好ましくは約1から30mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよい。例えば、約6ヶ月に一回の投与を行う場合には、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)において、一回につきGnRHアゴニスト(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.2から150mg程度、好ましくは約0.2から90mg程度、より好ましくは約2から60mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよい。
【0052】
他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができ、上記投与量を徐放期間に応じて適宜増減し投与することができる。
本発明にかかる短期徐放マイクロカプセルと長期徐放マイクロカプセルを組み合わせた製剤は、上記のGnRHアゴニスト投与量を長期徐放マイクロカプセルの徐放期間から換算し、適宜短期徐放マイクロカプセルおよび長期徐放マイクロカプセルに分配して投与することができる。
本明細書中に記載されるポリペプチドにおけるアミノ酸、ペプチド、保護基等に関し、略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものとし、また、アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
【0053】
略号の例を以下に示す。
Abu :アミノ酪酸
Aibu :2−アミノ酪酸
Ala :アラニン
Arg :アルギニン
Gly :グリシン
His :ヒスチジン
Ile :イソロイシン
Leu :ロイシン
Met :メチオニン
Nle :ノルロイシン
Nval :ノルバリン
Phe :フェニルアラニン
Phg :フェニルグリシン
Pro :プロリン
(Pyr)Glu :ピログルタミン酸
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Trp :トリプトファン
Tyr :チロシン
Val :バリン
D2Nal :D-3-(2-ナフチル)アラニン残基
DSer(tBu):O-tert-ブチル−D−セリン
DHis(ImBzl) :Nim-ベンジル−D−ヒスチジン
PAM :フェニルアセタミドメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
Fmoc :9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニル
Bzl :ベンジル
Cl−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Tos :p−トルエンスルホニル
HONb :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt :3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1、2、3−ベンゾトリアジン
MeBzl :4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Bum :t−ブトキシメチル
Trt :トリチル
DNP :ジニトロフェニル
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【実施例】
【0054】
以下に実施例、試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1 マイクロカプセル(B)の製造
【0055】
ナス型コルベンに5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Dleu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5(以下,ペプチドAと略記する)酢酸塩119.1gを秤量し、注射用水120gを加え、完全に溶解させた。これに、ジクロロメタン1600gに溶解した乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸・グリコール酸組成比=75:25、Mw=約10,400、Mn=約4,100、Mw/Mn=2.5(参考例5のGPC法で測定した値(標準物質C群を用いて測定した値)))975gを添加し、オートミニミキサーで約5800rpm、10分間の条件にて攪拌乳化しW/Oエマルションを得た。このW/Oエマルションを約19℃に冷却した後、予め約19℃に調節しておいた0.1%(w/w)ポリビニルアルコール(EG-40、日本合成化学製)水溶液200L中に注入し、HOMOMIC LINE FLOW(特殊機化製)を用いて約7000rpmで攪拌乳化してW/O/Wエマルションとした。このW/O/Wエマルションを約2500rpm、3時間の条件にて室温で攪拌してジクロロメタンを揮散ないしは外水相中に拡散させ、油相を固化させた。75μmの目開きの篩いを用いて篩過した後、遠心機で約2000rpmの条件にて連続的にマイクロカプセルを沈降させ、これを捕集した。捕集したマイクロカプセルを少量の蒸留水に分散し、90μmの目開きの篩いで篩過を施した後、マンニトール174.5gを加え溶解させた。これを凍結乾燥することによりマイクロカプセル末(以下、MC#1)を得た。ペプチドA含量は8.5%であった。
参考例2 マイクロカプセル(A)の製造
【0056】
ナス型コルベンにペプチドA酢酸塩123.3gを秤量し、2wt%酢酸水溶液129.4gを加え、完全に溶解させた。これに、ジクロロメタン1890gに溶解したDL-乳酸重合体(Mw=約21,400、標準物質B群を用いて測定した値)1080gを添加し、約2分間粗分散した後にオートミニミキサーで約5800rpm、4分間の条件にて攪拌乳化しW/Oエマルションを得た。このW/Oエマルションを約18℃に冷却した後、予め約18℃に調節しておいた1wt%マンニトール含有0.1wt%ポリビニルアルコール(EG-40、日本合成化学製)水溶液200L中に注入し、HOMOMIC LINE FLOW(特殊機化製)を用いて約7000rpmで攪拌乳化してW/O/Wエマルションとした。このW/O/Wエマルションを約2500rpm、3時間の条件にて室温で攪拌してジクロロメタンを揮散ないしは外水相中に拡散させ、油相を固化させた。75μmの目開きの篩いを用いて篩過した後、遠心機で約2000rpmの条件にて連続的にマイクロカプセルを沈降させ、これを捕集した。捕集したマイクロカプセルを少量の蒸留水に分散し、90μmの目開きの篩いで篩過を施した後、マンニトール169.7gを加え溶解させた。これを凍結乾燥することによりマイクロカプセル末(以下、MC#2)を得た。ペプチドA含量は7.5%であった。
参考例3 マイクロカプセル(C)の製造
【0057】
ナス型コルベンにペプチドA酢酸塩86.7gを秤量し、注射用水100gを加え、完全に溶解させた。これに、ジクロロメタン1280gに溶解したDL-乳酸重合体(Mw=約14,200、標準物質A群を用いて測定した値)765gを添加し、オートミニミキサーで約5800rpm、13.5分間の条件にて攪拌乳化しW/Oエマルションを得た。このW/Oエマルションを約15℃に冷却した後、予め約15℃に調節しておいた0.1%(w/w)ポリビニルアルコール(EG-40、日本合成化学製)水溶液200L中に注入し、HOMOMIC LINE FLOW(特殊機化製)を用いて約7000rpmで攪拌乳化してW/O/Wエマルションとした。このW/O/Wエマルションを約2500rpm、3時間の条件にて室温で攪拌してジクロロメタンを揮散ないしは外水相中に拡散させ、油相を固化させた。75μmの目開きの篩いを用いて篩過した後、遠心機で約2000rpmの条件にて連続的にマイクロカプセルを沈降させ、これを捕集した。捕集したマイクロカプセルを少量の蒸留水に分散し、90μmの目開きの篩いで篩過を施した後、マンニトール130gを加え溶解させた。これを50℃、48時間の二次乾燥条件で凍結乾燥することによりマイクロカプセル末(以下、MC#3)を得た。ペプチドA含量は7.8%であった。
参考例4 マイクロカプセル(C)の製造
【0058】
ナス型コルベンにペプチドA酢酸塩14.5gを秤量し、注射用水15.9gを加え、完全に溶解させた。これに、ジクロロメタン204gに溶解したDL-乳酸重合体(Mw=約14,100、標準物質A群を用いて測定した値)123gを添加し、1分間粗乳化した後オートミニミキサーで約10000rpm、3分間の条件にて攪拌乳化しW/Oエマルションを得た。このW/Oエマルションを約16℃に冷却した後、予め約16℃に調節しておいた0.1%(w/w)ポリビニルアルコール(EG-40、日本合成化学製)水溶液25L中に注入し、HOMOMIC LINE FLOW(特殊機化製)を用いて約7000rpmで攪拌乳化してW/O/Wエマルションとした。このW/O/Wエマルションを約2000rpm、3時間の条件にて室温で攪拌してジクロロメタンを揮散ないしは外水相中に拡散させ、油相を固化させた。75μmの目開きの篩いを用いて篩過した後、遠心機で約2000rpmの条件にて連続的にマイクロカプセルを沈降させ、これを捕集した。捕集したマイクロカプセルを少量の蒸留水に分散し、90μmの目開きの篩いで篩過を施した後、マンニトール17.5gを加え溶解させた。これを50℃の二次乾燥温度条件で、0時間、20時間、22時間、24時間、26時間及び48時間の二次乾燥時間で凍結乾燥したものについてそれぞれのマイクロカプセル末を分割回収した。
参考例5 ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定(GPC法)
【0059】
本品約0.05gを量り、テトラヒドロフラン(THF)を加えて溶かし5mLとし、試料溶液とする。
別に、分子量既知のポリスチレン標準品(F−10,F−2,A−5000及びA−1000)のそれぞれ約0.1gを量り、THFを加えて溶かし40mLとし、標準溶液Aとする。また、分子量既知のポリスチレン標準品(F−4,F−1,A−2500及びA−500)のそれぞれ約0.1gを量り、THFを加えて溶かし40mLとし、標準溶液Bとする。
試料溶液並びに標準溶液A及びB 100μLにつき、次の条件でゲル浸透クロマトグラフ法により試験を行う。各ポリスチレン標準品の分子量とそれらの保持時間から、分子量較正曲線を作成する。次に試料溶液から得た溶出成分のピーク高さ(Hi)を測定し、それらの保持時間と分子量較正曲線から、それらの分子量(Mi)を求める。次の式により、本品の重量平均分子量(Mw)を求める。
[計算式] Mw=Σ(Hi×Mi)/ΣHi
[試験条件]
検出器:示差屈折計(HLC−8120GPCシステムと同等の性能を有するもの)
カラム:TSK guardcolumn HHR−L(40x6.0mm i.d.)
TSKgel G4000HHR(300x7.8mm i.d.)
TSKgel G3000HHR(300x7.8mm i.d.)
TSKgel G2000HHR(300x7.8mm i.d.)
TSKgel G1000HHR(300x7.8mm i.d.)
を充てん剤の孔径が減少する順に直列に接続する(またはこれらと同等の性能を有するもの)。
カラム温度:50℃付近の一定温度
移動相:THF
流 量:1.0mL/min
[システム適合性]
(1)システムの性能:
標準溶液A 100μLにつき、上記の条件で操作するとき、F−10のピークとF−2のピークの分離度は2.0以上であり、両ピークの理論段数及びシンメトリー係数はそれぞれ8000段以上及び1.5以下である。
(2)試験の再現性:
標準溶液A 100μLにつき、上記の条件で試験を2回繰り返すとき、各ピークの保持時間の相対標準偏差は3.3%以下である。
[操作法]
標準溶液:調製後、室温(約25℃)で少なくとも24時間まで安定である。
また、調製後冷凍庫(約−18℃)で少なくとも7ヶ月間は安定である。
試料溶液:調製後、室温(約25℃)で少なくとも24時間まで安定である。
面積測定範囲:48分(ただし、注入間隔は50分とする)
分子量較正曲線:折れ線で作成する。
重量平均分子量(Mw)のほか、数平均分子量[Mn=ΣHi/Σ(Hi/Mi)]も測定する。
[注入順序]
(1)標準溶液Aにつき、試験を2回繰り返し、1回目がシステムの性能の規定に適合することを確認する。各ピークの保持時間を求め、試験の再現性の規定(各ピークの保持時間の相対標準偏差は3.3%以下)に適合することを確認する。
(2)標準溶液Bを注入し、各ピークの保持時間を求める。
(3)移動相を注入し、(2)で注入した標準溶液Bの全ピークのキャリーオーバーをチェックし、ピーク面積値が規定(10%以下)に適合することを確認する。
(4)試料溶液の測定(最大12本)
(5)移動相を注入し、(4)で最後に注入した試料溶液のキャリーオーバーをチェックし、ピーク面積値が規定(10%以下)に適合することを確認する。
(6)標準溶液A及びBを注入し、各分子量の保持時間を求める。
(7)(1)で最後に注入した標準溶液A、(2)で注入した標準溶液B並びに(6)で注入した標準溶液A及びBの保持時間から分子量較正曲線を作成し、試料の重量平均分子量(Mw)を計算する。ただし、(1)で最後に注入した標準溶液A及び(6)で注入した標準溶液Aの保持時間の相対偏差[RD:平均値に対する、いずれかの保持時間の平均値からの差(絶対値)の%]は3.3%以下であることを確認する。適合しない場合は、システムチェック間の全データを無効とし、(1)から繰り返し試験する(ただし、システムの性能は調べなくて良い)。
[試薬・試液]
ポリスチレン標準品:TSK標準ポリスチレン/東ソー社製
ポリスチレン標準品のMwはGPC法で評価した値を使用する。
タイプ Mw
F−10 98900
F−4 37200
F−2 17100
F−1 9490
A−5000 5870
A−2500 2500
A−1000 1051
A−500 495
テトラヒドロフラン:和光純薬、液体クロマトグラフ用
実施例1
【0060】
参考例1で製造したMC#1(ペプチドA酢酸塩含量8.5%)0.141gに、参考例2で製造したMC#2(ペプチドA酢酸塩含量7.5%)1.920gを加えて混合し、2種混合型マイクロカプセル末(以下、コンボA)を調製した。この時の組合せ比率は1対12(ペプチドA酢酸塩の重量比として)であった。
実施例2
【0061】
参考例3で製造したMC#3(ペプチドA酢酸塩含量7.8%)0.184gに、参考例2で製造したMC#2(ペプチドA酢酸塩含量7.5%)1.720gを加えて混合し、2種混合型マイクロカプセル末(以下、コンボB)を調製した。この時の組合せ比率は1対9(ペプチドA酢酸塩の重量比として)であった。
実施例3
【0062】
参考例3で製造したMC#3(ペプチドA酢酸塩含量7.8%)0.154gに、参考例2で製造したMC#2(ペプチドA酢酸塩含量7.5%)1.920gを加えて混合し、2種混合型型マイクロカプセル末(以下、コンボC)を調製した。この時の組合せ比率は1対12(ペプチドA酢酸塩の重量比として)であった。
実施例4
【0063】
参考例1で製造したMC#1(ペプチドA酢酸塩含量8.5%)0.141gに、参考例2で製造したMC#2(ペプチドA酢酸塩含量7.5%)2.560gを加えて混合し、2種混合型マイクロカプセル末(以下、コンボD)を調製した。この時の組合せ比率は1対16(ペプチドAの重量比として)であった。
試験例1
【0064】
実施例2で調製した2種混合型マイクロカプセル末、コンボBの120mg(ペプチドA酢酸塩として9mg)を分散媒約0.3mLで懸濁しラットに皮下注射して、血清中のペプチドA濃度を測定した。MC#2の120mg(ペプチドA酢酸塩として9mg)を分散媒約0.3mLで懸濁しラットで同様の試験をし、1種単独での血中濃度推移と比べた。投与後5週までの血中濃度推移を図1に示す。投与後1週以内の血中濃度を比較した場合、コンボBはMC#2より高値を推移し、両者の徐放速度は異なっており、2種混合型マイクロカプセルの放出性への効果が確認された。
試験例2
【0065】
実施例1で調製した2種混合型マイクロカプセル末、コンボAの129mg(ペプチドA酢酸塩として9.75mg)を分散媒約0.3mLで懸濁しラットに皮下注射して、血清中のペプチドA濃度を測定した。MC#2の120mg(ペプチドA酢酸塩として9mg)を分散媒約0.3mLで懸濁しラットで同様の試験をし、1種単独での血中濃度推移と比べた。投与後6週までの血中濃度推移を図2に示す。投与後3週以内の血中濃度を比較した場合、コンボAはMC#2より高値を推移し、両者の徐放速度は異なっており、2種混合型マイクロカプセルの放出性への効果が確認された。
試験例3
【0066】
実施例4で調製した2種混合型マイクロカプセル末、コンボDの169mg(ペプチドA酢酸塩として12.75mg)を分散媒約0.3mLで懸濁しラットに皮下注射して、血清中のペプチドA濃度を測定した。MC#2の120mg(ペプチドA酢酸塩として9mg)を分散媒約0.3mLで懸濁しラットで同様の試験をし、1種単独での血中濃度推移と比べた。投与後6週までの血中濃度推移を図3に示す。投与後3週以内の血中濃度を比較した場合、コンボDはMC#2より高値を推移し、両者の徐放速度は異なっており、2種混合型マイクロカプセルの放出性への効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
徐放期間の異なるGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルを組み合わせることにより、投与初期の薬物の放出量を増大させ、かつ長期にわたって一定の薬物量を放出する徐放性に優れた製剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】試験例1の結果を示した図である。●はコンボBを投与したときのペプチドAの血中濃度を示し、○はMC#2を投与したときのペプチドAの血中濃度を示す。
【図2】試験例2の結果を示した図である。●はコンボAを投与したときのペプチドAの血中濃度を示し、○はMC#2を投与したときのペプチドAの血中濃度を示す。
【図3】試験例3の結果を示した図である。●はコンボDを投与したときのペプチドAの血中濃度を示し、○はMC#2を投与したときのペプチドAの血中濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを組み合わせてなる徐放性製剤。
【請求項2】
GnRHアゴニストまたはその塩が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表わされるペプチドまたはその塩である請求項1記載の製剤。
【請求項3】
GnRHアゴニストまたはその塩が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5
で表わされるペプチドの酢酸塩である請求項1記載の製剤。
【請求項4】
長期が5ヶ月以上であり、短期が5ヶ月未満である請求項1記載の製剤。
【請求項5】
長期が5ヶ月以上8ヶ月以下であり、短期が1週間以上5ヶ月未満である請求項1記載の製剤。
【請求項6】
マイクロカプセルが乳酸重合体または乳酸−グリコール酸重合体を基剤とするマイクロカプセルである請求項1記載の製剤。
【請求項7】
短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとの組み合わせ比率が、各マイクロカプセルに含まれるGnRHアゴニストまたはその塩の重量比として、1:約5〜約20である請求項1記載の製剤。
【請求項8】
長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが、
(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量約18,000〜約30,000の乳酸重合体とを含有するマイクロカプセルで、
短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが、
(1)(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量約8,000〜約12,000の乳酸−グリコール酸重合体(75/25(モル%))とを含有するマイクロカプセルまたは
(2)(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量約13,000〜約18,000の乳酸重合体とを含有するマイクロカプセルである請求項1記載の製剤。
【請求項9】
長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが、
(i)GnRHアゴニストまたはその塩と(ii)重量平均分子量5000以下の重合体含有量が約5重量%以下である、重量平均分子量約15000〜約50000の乳酸重合体とを含有してなるマイクロカプセルで、
短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルが
(1)(i)GnRHアゴニストまたはその塩および(ii)重量平均分子量(Mw)が約8,000〜約11,500で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.9よりも大きく、乳酸とグリコール酸の組成モル比が99.9/0.1〜60/40である乳酸−グリコール酸重合体を含み、薬物保持物質を含まないマイクロカプセル、または
(2)GnRHアゴニストまたはその塩を約20〜70重量%含有してなる内水相液と、乳酸/グリコール酸の組成比が80/20〜100/0で重量平均分子量が約7,000〜約30,000であるコポリマーないしホモポリマーを放出制御物質として含有してなる油相液とから調製されたW/Oエマルションをマイクロカプセル化して調製される、2カ月以上にわたってGnRHアゴニストまたはその塩をゼロ次放出するマイクロカプセルである請求項1記載の製剤。
【請求項10】
長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放する請求項1〜9記載の徐放性製剤。
【請求項11】
長期が5ヶ月以上である請求項10記載の徐放性製剤。
【請求項12】
請求項1記載の徐放性製剤を含有してなる前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、月経困難症もしくは乳癌の予防・治療剤または避妊剤。
【請求項13】
長期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルと短期にGnRHアゴニストまたはその塩を徐放するマイクロカプセルとを混合することからなる請求項1記載の徐放性製剤の製造方法。
【請求項14】
哺乳動物に対して請求項1記載の徐放性製剤の有効量を投与することを特徴とする前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、月経困難症もしくは乳癌の予防・治療方法または避妊方法。
【請求項15】
前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、月経困難症もしくは乳癌の予防・治療剤または避妊剤を製造するための請求項1記載の徐放性製剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/074896
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517805(P2005−517805)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001922
【国際出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】