説明

復調回路およびアナログテレビジョン放送受信機

【課題】映像中間周波信号に含まれる位相変調成分の影響が抑制された発振器出力を生成することができ、音声信号にバズ音が発生することを防止して高品位な音声を復調することが可能な復調回路およびアナログテレビジョン放送受信機を提供すること。
【解決手段】制御電圧に応じた周波数で発振する電圧制御発振器と、この電圧制御発振器の発振信号と映像中間周波信号との位相差を検波する第1の位相検波器と、電圧制御発振器の発振信号と映像中間周波信号との位相差を検波する第2の位相検波器と、この第2の位相検波器の出力信号の極性を反転させる反転回路と、この反転回路の出力信号の高域成分のみを通過させるハイパスフィルタと、第1の位相検波器の出力信号とハイパスフィルタの出力信号との和を算出する加算器と、この加算器の出力信号の低域成分のみを通過させ電圧制御発振器に制御電圧を帰還させるループフィルタと、を備えた復調回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間周波信号の復調を行う復調回路およびこの復調回路を備えたアナログテレビジョン放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログテレビジョン(TV)放送受信機においては、音声信号が映像信号の影響を受けて音声の品位が悪化する現象(例えばバス音など)が知られている。
【0003】
TV放送では、周波数帯域を有効利用するため残留側波帯変調方式が採用されていることから、アナログTV放送受信機では、この残留側波帯変調を補償するために、映像中間周波増幅器の前段で映像中間周波信号にナイキストスロープを付与する。しかしながら、このナイキストスロープに起因して上下側波にアンバランスが生じることから、映像中間周波信号には位相変調成分が含まれることになる。
【0004】
一方、音声を復調する過程では、映像中間周波信号に同期した発振信号を用いるが、この発振信号を映像中間周波信号に基づいて発振器で生成する際に、この発振信号は上記位相変調成分の影響を受ける。その結果、上記位相変調成分が音声復調の際に変換され、音声にバズ音が発生してしまう。
【0005】
特許文献1では、上記位相変調成分の影響を受けずに電圧制御発振器(VCO)を発振させることができる検波回路が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の検波回路では、検波後の映像信号の高域成分を用いて検波前の映像中間周波信号の位相変調成分を打ち消すようにしているので、ゲイン関係の調整が複雑になるとともに、検波後の映像信号に時間遅れが生ずることから、信号波形にずれが生じ、位相変調成分の相殺が不十分となり、音声にバズ音が残ってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平03−71779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、映像中間周波信号に含まれる位相変調成分の影響が抑制された発振器出力を生成することができ、音声信号にバズ音が発生することを防止して高品位な音声を復調することが可能な復調回路およびアナログテレビジョン放送受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の一態様によれば、制御電圧に応じた周波数で発振する電圧制御発振器と、この電圧制御発振器の発振信号と映像中間周波信号との位相差を検波する第1の位相検波器と、前記電圧制御発振器の発振信号と前記映像中間周波信号との位相差を検波する第2の位相検波器と、この第2の位相検波器の出力信号の極性を反転させる反転回路と、この反転回路の出力信号の高域成分のみを通過させるハイパスフィルタと、前記第1の位相検波器の出力信号と前記ハイパスフィルタの出力信号との和を算出する加算器と、この加算器の出力信号の低域成分のみを通過させ前記電圧制御発振器に前記制御電圧を帰還させるループフィルタと、を備えることを特徴とする復調回路が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、映像中間周波信号に含まれる位相変調成分の影響が抑制された発振器出力を生成することができ、音声信号にバズ音が発生することを防止して高品位な音声を復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態に係るアナログテレビジョン放送受信機の概略構成を示すブロック図。
【図2】図2は、主に復調回路5の構成を示す図。
【図3】図3は、図2にて(A)〜(D)で示した箇所の信号を示した図。
【図4】図4は、図2にて(E)、(F)で示した箇所の信号を示した図。
【図5】図5は、図3(B)の信号波形の一部を拡大して示した図。
【図6】図6は、SAWフィルタ4を通過した映像信号成分について、キャリア、上側波、下側波、および変調波の関係をベクトル表示した図。
【図7】図7は、位相変調を受ける度合いΔφを周波数変化Δfに対して示した図。
【図8】図8は、PLL回路15の構成を示す図。
【図9】図9は、図8にて(G)〜(J)で示した箇所の信号を示した図。
【図10】図10は、PLL回路101の回路構成を示す図。
【図11】図11は、図10にて(K)〜(L)で示した箇所の信号を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る復調回路およびアナログテレビジョン放送受信機を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るアナログテレビジョン放送受信機の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態に係るアナログテレビジョン放送受信機は、アンテナ1、チューナ部2、SAWフィルタ3,4、復調回路5、音声多重出力制御部8、スピーカ9,10、ビデオ−クロマ−偏向(VCD:Video Chroma Deflection)処理部6、および表示部7を備えている。
【0014】
アンテナ1を介して受信された高周波信号はチューナ部2に入力され、増幅器50にて増幅された後、混合器52にて局部発振器51からの局部発振信号と混合され、IF(中間周波)信号に変換されて出力される。このIF信号は、映像信号成分および音声信号成分の双方を含む。
【0015】
チューナ部2から出力されたIF信号はSAW(表面弾性波)フィルタ3(第1のフィルタ)とSAWフィルタ4(第2のフィルタ)にそれぞれ入力される。SAWフィルタ3,4は互いに異なる周波数特性を有し、SAWフィルタ3は音声信号成分を抽出し、SAWフィルタ4は映像信号成分を抽出する。SAWフィルタ3、4の各出力は、復調回路5に入力される。
【0016】
復調回路5は、SAWフィルタ3,4の各出力に対して検波を行い、それぞれ音声検波出力および映像検波出力を出力する。
【0017】
音声検波出力は、音声多重出力制御部8を介してスピーカ9によりステレオ音声に変換され、あるいは、スピーカ10によりモノラル音声に変換される。
【0018】
一方、映像検波出力は、ビデオ−クロマ−偏向処理部6に入力される。ビデオ−クロマ−偏向処理部6は、輝度信号処理部55、色信号処理部56、偏向処理部57、およびマトリクス回路58を有する。映像検波出力は、それぞれ輝度信号処理部55、色信号処理部56、および偏向処理部57に入力される。輝度信号処理部55は映像検波出力に基づいて輝度信号を出力し、色信号処理部56は映像検波出力に基づいて色信号を出力する。輝度信号処理部55および色信号処理部56の各出力はマトリクス回路58によってRGB信号に変換された後、表示部7に入力される。偏向処理部57は、映像検波出力に基づいてRGB信号に対して偏向処理を施し、これにより表示部7にて映像が表示される。
【0019】
図2は、主に復調回路5の構成を示す図である。図2では、図1の構成のうち、SAWフィルタ3,4と復調回路5のみを示している。図3は、図2にて(A)〜(D)で示した箇所の信号を示した図、図4は、図2にて(E)、(F)で示した箇所の信号を示した図である。なお、図3、図4において横軸は周波数(f)、縦軸は信号の大きさを表す。
【0020】
復調回路5は、SAWフィルタ3に順に直列接続された増幅器10、検波器11(第1の検波器)、増幅器12、およびFM変調部13と、SAWフィルタ4に順に直列接続された増幅器14、検波器16(第2の検波器)、および増幅器17と、映像中間周波信号の中間周波数と同じ周波数の発振信号を生成し、この発振信号を検波器11と検波器16にそれぞれ出力するPLL回路15とを備えている。
【0021】
PLL(Phase Locked Loop)回路15は、制御電圧に応じた周波数で発振する電圧制御発振器26と、この電圧制御発振器26の発振信号と増幅器14からの映像中間周波信号との位相差を検波する位相検波器20(第1の位相検波器)と、同様に電圧制御発振器26の発振信号と増幅器14からの映像中間周波信号との位相差を検波する位相検波器21(第2の位相検波器)と、この位相検波器21の出力の極性を反転させる反転回路22と、この反転回路22の出力の高周波成分のみを通過させるHPF(ハイパスフィルタ)23と、位相検波器20の出力とHPF23の出力との和を算出する加算器24と、この加算器24の出力の低周波成分のみを通過させて電圧制御発振器26に制御電圧を帰還させるループフィルタとしてのLPF(ローパスフィルタ)25と、を備えている。PLL回路15は、映像中間周波信号を入力としてこの映像中間周波信号のキャリア周波数と同じ周波数の信号を生成する。
【0022】
次に、復調回路5の動作について説明する。まず、IF信号(A)は、図3(A)に示すように、例えば58.75MHzをキャリア周波数とする映像中間周波信号(「P」で表示)と、例えば54.25MHzをキャリア周波数とする音声中間周波信号(「S」で表示)とを含んでいる。なお、映像中間周波信号はAM変調され、音声中間周波信号はFM変調されている。また、図3(A)に示すように、映像中間周波信号は残留側波帯変調され、58.75MHzを中心に左右非対称な波形となっている。
【0023】
SAWフィルタ4は、IF信号(A)に含まれる映像中間周波信号を抽出するとともに、抽出された映像中間周波信号にナイキストスロープを付与する。映像信号成分は残留側波帯変調されていることから、図3(A)の映像信号波形をそのまま検波した場合は検波後にフラットな検波特性を有しなくなる。そこで、ナイキストスロープ特性を有するSAWフィルタ4を通過させることにより、検波後の映像信号にフラットな検波特性が与えられるようにしたものである。SAWフィルタ4を通過した映像信号(B)は増幅器14に入力される。
【0024】
SAWフィルタ3は、IF信号(A)に含まれる音声中間周波信号を抽出する(図3(C)参照)。SAWフィルタ3を通過した音声信号は増幅器10に入力される。
【0025】
ここで、映像信号(B)の特性について説明する。図5は、図3(B)の信号波形の一部を拡大して示した図である。図5では、fは58.75MHzのキャリア周波数を表す。上述したように、SAWフィルタ4を通過した後の映像信号にはナイキストスロープが形成されていることから、図5に示すように、周波数f+Δfにおける信号(上側波)の大きさと、周波数f−Δfにおける信号(下側波)の大きさとでは偏差が生じ、具体的には後者が前者より大きくなる。ここで、Δf(>0)は、映像中間周波数fからの周波数変化を表す。
【0026】
図6は、SAWフィルタ4を通過した映像信号成分について、キャリア、上側波、下側波、および変調波の関係をベクトル表示した図である。図6では、キャリアは周波数fの映像搬送波であり、変調波はキャリアと周波数f+Δfの上側波と周波数f−Δfの下側波とのベクトル和として表されている。上述のように、上側波と下側波とでは大きさに偏差があることから、上側波と下側波はキャリアに対して非対称な配置であり、したがって変調波はキャリアと平行にならない。すなわち、変調波は本来AM変調のみがなされキャリアと平行であるところ、上下側波のアンバランスにより位相変調成分を有することとなる。位相変調の大きさ(位相変調を受ける度合い)Δφは、変調波とキャリアの相互の角度として与えられる。
【0027】
図7は、位相変調を受ける度合いΔφを周波数変化Δfに対して示した図である。図7に示すように、Δf=0のときは上下側波の大きさに差がないのでΔφ=0であり、Δfが増加するにつれて上側波の大きさは減少し下側波の大きさは増加するのでΔφは増加し、その増加の割合はナイキストスロープの傾きで決まる。また、Δfは、ナイキストスロープの周波数幅の半分であり、Δf>Δfとなると、上側波は0となりかつ下側波は一定となるので(図3(B)参照)、Δφも一定値となる。
【0028】
このように、映像信号(B)は位相変調を受けており、増幅器14にて増幅された後、この位相変調を受けた映像信号(B)が、PLL回路15に入力されることになる。
【0029】
図8は、PLL回路15の構成を示す図であり、図2に示したものと同じ構成である。図9は、図8にて(G)〜(J)で示した箇所の信号を示した図である。図8において、増幅器14からの信号は、それぞれ位相検波器20,21に入力される。
【0030】
位相検波器20は、電圧制御発振器26の発振信号と増幅器14からの信号との位相差を検波する。図9(G)では、位相検波器20の出力信号(G)がV1で示されており、さらに位相変調を受ける部分が斜線で示されている。この斜線部分は、図7に対応するものである。位相検波器21も同様に、電圧制御発振器26の発振信号と増幅器14からの信号との位相差を検波する。
【0031】
次に、位相検波器21の出力信号は、反転回路22にて(−1)が乗算された後、さらにHPF23を通過する。HPF23の出力信号(H)は、図9(H)のV2のようになる。すなわち、出力信号(H)は、反転回路22を経たことにより、出力信号(G)と比べて極性が反転しており、さらにHPF23を経たことにより、低周波成分が除去されている。なお、図9(H)でも、位相変調を受ける部分が斜線で示されている。
【0032】
つづいて、加算器24では、位相検波器20の出力信号(G)とHPF23の出力信号(H)との和が算出される。加算器24の出力信号(I)は、図9(I)のV3ようになる。すなわち、出力信号(G)と出力信号(H)の位相変調を受ける部分が互いに相殺され、出力信号(I)は、位相変調成分を含まない信号となる。ここで、HPF23は、ナイキストスロープに応じて決まる位相変調を受ける度合いΔφ(図5、図7参照)に相当する周波数特性を有する。すなわち、位相変調を受ける度合いΔφは、周波数変化Δfに対して、下側波(f−Δf)における信号の大きさから上側波(f+Δf)における信号の大きさ出力を差し引いたものであり、HPF23はかかる周波数特性を有することが好ましく、これにより出力信号(G)における位相変調を受ける部分を、HPF23通過後の出力信号(H)により打ち消すことができる。
【0033】
さらに、出力信号(I)は、LPF25を通過することにより、高周波成分が除去され、LPF25の出力信号(J)は、図9(J)のV4のようになる。そして、出力信号(J)は、制御電圧として電圧制御発振器26に帰還される。したがって、電圧制御発振器26は、位相変調の影響を受けていない制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する。
【0034】
次に、図2を再度参照して、映像検波および音声検波について説明する。図2に示すように、電圧制御発振器26の発振信号は、位相検波器20,21に出力されるとともに、検波器11と検波器16にそれぞれ出力される。発振信号(D)は、図3(D)に示すように、映像中間周波信号のキャリア周波数である58.75MHzの信号である。
【0035】
また、PLL回路15では、電圧制御発振器26の発振信号は、PLL回路15の入力信号(映像中間周波信号)との位相差が90°となるように制御される。一方、検波器16では、映像中間周波信号に発振信号を混合することにより、AM変調された映像信号の復調を行う。このAM検波のためには発振信号と映像中間周波信号とを同相にする必要がある。そのためには、例えば電圧制御発振器26と検波器16との間に移相器(図示せず)を介在させ、発振信号の位相を90°シフトさせればよい。他方、音声信号はFM変調されているため、電圧制御発振器26から検波器11に出力される発振信号は位相を調整することなく出力される。
【0036】
検波器16は、増幅器14からの映像中間周波信号に電圧制御発振器26からの発振信号を混合して検波する。そして、この検波信号は増幅器17にて増幅された後に映像検波出力として後段の処理に渡される。検波信号(E)は、図4(E)に示すように、約4.2MHzまでの帯域を備えたベースバンド型の信号となる。
【0037】
検波器11は、増幅器10からの映像中間周波信号に電圧制御発振器26からの発振信号を混合して検波し、この検波信号は増幅器12にて増幅される。検波信号(F)は、図4(F)に示すように、映像中間周波数と音声中間周波数の差である4.5MHzを中心とした信号として検波される。さらに、検波信号(F)は、FM復調部13にてFM復調され、音声検波出力として後段の処理に渡される。
【0038】
次に、本実施の形態の比較例として、PLL回路15の代わりに図10に示すPLL回路101を復調回路5に適用した場合を想定する。図10は、PLL回路101の回路構成を示す図である。また、図11は、図10にて(K)〜(L)で示した箇所の信号を示した図である。
【0039】
図10に示すように、PLL回路101は、電圧制御発振器(VCO)102と、位相検波器103と、ループフィルタとしてのLPF(ローパスフィルタ)104とを備えている。
【0040】
増幅器14からの信号は、位相検波器103に入力される。位相検波器103は、電圧制御発振器(VCO)102からの発振信号と増幅器14からの信号との位相差を検波する。位相検波器103の出力信号(K)は、図11(K)のV5のようになる。図11では、位相変調を受ける部分が斜線で示されている。この斜線部は、図7に対応するものである。出力信号(K)は、LPF104を通過後、高周波成分が除去され、LPF104の出力信号(L)は、図11(L)のV6のようになる。ここで、出力信号(L)には、位相変調を受ける部分(斜線部)が残っていることがわかる。このように位相変調を受けた部分を有する出力信号(L)は、制御電圧として電圧制御発振器102に帰還される。
【0041】
位相変調成分を有する制御電圧信号が電圧制御発振器102に帰還されると、電圧制御発振器102の発振信号も位相変調を受け、この位相変調を受けた発振信号が検波器11,16にそれぞれ出力される。検波器11にて位相変調を受けた発振信号が音声中間周波信号に乗算されて検波されると、検波信号は発振信号の位相ずれの分FM変調を受けることになる。この位相変調成分は、FM復調部13にてFM検波で復調されるため、検波後の音声信号中にバスノイズが含まれてしまうという問題がある。
【0042】
本実施の形態によれば、映像中間周波信号に含まれる位相変調成分の影響が抑制された発振器出力を生成することができ、音声信号にバズ音が発生することを防止して高品位な音声を復調することができる。
【0043】
ところで、特許文献1の検波回路は、映像中間IF信号を増幅する映像IF増幅回路と、映像IF信号周波数で発振するVCOと、該VCOの発振出力信号に応じて前記映像IF増幅回路の出力映像IF信号を検波する映像検波回路と、該映像検波回路の検波出力中の高域成分を抽出するフィルタと、前記映像IF増幅回路の出力映像IF信号と前記VCOの発振出力信号との位相比較を行う位相比較回路と、該位相比較回路の出力信号と前記フィルタの出力信号との混合を行う混合回路と、該混合回路の出力信号を平滑化し、平滑出力を前記VCOに制御電圧として印加する平滑回路とから成り、前記VCOの発振出力信号に応じて音声信号を検波するようにしている。このような構成により、位相比較回路の出力信号に含まれる映像IF信号のナイキストスロープによる寄生位相変調(PM)成分を、検波後の映像信号の高域成分を用いて低減させている。同文献では、これにより、寄生PMの影響を受けずにVCOを発振させることができるので、バズ音を含まない音声信号を得ることができるとしている。
【0044】
しかしながら、特許文献1の検波回路では、検波後の映像信号の高域成分を用いて映像IF信号の寄生PM成分を打ち消すようにしているので、寄生PM成分を打ち消すことができるようにゲイン関係の調整を行う必要が生ずるとともに、検波後の映像信号に時間遅れが生ずることから、信号波形にずれが生じ、寄生PM成分を十分に除去することが困難であるという問題があった。
【0045】
これに対して、本実施の形態では、位相検波器21の出力信号を反転回路22にて逆相にした後にHPF23を通過させた信号と、位相検波器21の出力信号とを加算しているので、従来のように一方の信号に対して他方の信号に時間遅れが生ずるということもない。
【0046】
また、本実施の形態では、位相検波器20,21に同じ構成のもの、例えば、同じ製造工程で製造されたものを用いることにより、双方のゲインも同じになり、よって高精度に寄生PM成分を打ち消すことができる。したがって、本実施の形態では、特許文献1のように特にゲインの調整を行う必要もない。
【0047】
なお、本実施の形態ではいわゆるスプリットキャリア方式を採用しているが、いわゆるインタキャリア方式でも同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 アンテナ 2 チューナ部 3,4 SAWフィルタ 5 復調回路 7 表示部
8 音声多重出力制御部 9,10 スピーカ 10 増幅器 11 検波器
12 増幅器 13 FM変調部 14 増幅器 15 PLL回路 16 検波器
17 増幅器 20 位相検波器 21 位相検波器 22 反転回路 24 加算器 26 電圧制御発振器 50 増幅器 51 局部発振器 52 混合器
55 輝度信号処理部 56 色信号処理部 57 偏向処理部
58 マトリクス回路 102 電圧制御発振器 103 位相検波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じた周波数で発振する電圧制御発振器と、
この電圧制御発振器の発振信号と映像中間周波信号との位相差を検波する第1の位相検波器と、
前記電圧制御発振器の発振信号と前記映像中間周波信号との位相差を検波する第2の位相検波器と、
この第2の位相検波器の出力信号の極性を反転させる反転回路と、
この反転回路の出力信号の高域成分のみを通過させるハイパスフィルタと、
前記第1の位相検波器の出力信号と前記ハイパスフィルタの出力信号との和を算出する加算器と、
この加算器の出力信号の低域成分のみを通過させ前記電圧制御発振器に前記制御電圧を帰還させるループフィルタと、
を備えることを特徴とする復調回路。
【請求項2】
前記ハイパスフィルタの周波数特性は、前記映像中間周波信号に付与されたナイキストスロープに応じて前記映像中間周波信号が受ける位相変調の周波数特性に対応して決められていることを特徴とする請求項1に記載の復調回路。
【請求項3】
音声中間周波信号と前記電圧制御発振器の出力信号とを混合して検波する第1の検波器と、
前記映像中間周波信号と前記電圧制御発振器の出力信号とを混合して検波する第2の検波器と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の復調回路。
【請求項4】
放送信号を受信して中間周波信号に変換するチューナ部と、
このチューナ部から出力される前記中間周波信号から音声中間周波信号を抽出する第1のフィルタと、
前記チューナ部から出力される前記中間周波信号から映像中間周波信号を抽出する第2のフィルタと、
制御電圧に応じた周波数で発振する電圧制御発振器と、
この電圧制御発振器の発振信号と前記第2のフィルタから出力された前記映像中間周波信号との位相差を検波する第1の位相検波器と、
前記電圧制御発振器の発振信号と前記第2のフィルタから出力された前記映像中間周波信号との位相差を検波する第2の位相検波器と、
この第2の位相検波器の出力信号の極性を反転させる反転回路と、
この反転回路の出力信号の高域成分のみを通過させるハイパスフィルタと、
前記第1の位相検波器の出力信号と前記ハイパスフィルタの出力信号との和を算出する加算器と、
この加算器の出力信号の低域成分のみを通過させ前記電圧制御発振器に前記制御電圧を帰還させるループフィルタと、
前記第1のフィルタから出力された前記音声中間周波信号と前記電圧制御発振器の出力信号とを混合して検波する第1の検波器と、
前記第2のフィルタから出力された前記映像中間周波信号と前記電圧制御発振器の出力信号とを混合して検波する第2の検波器と、
を備えることを特徴とするアナログテレビジョン放送受信機。
【請求項5】
前記第2のフィルタは、その信号出力にナイキストスロープを付与し、
前記ハイパスフィルタの周波数特性は、前記映像中間周波信号に付与された前記ナイキストスロープに応じて前記映像中間周波信号が受ける位相変調の周波数特性に対応して決められていることを特徴とする請求項4に記載のアナログテレビジョン放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−199775(P2011−199775A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66874(P2010−66874)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】