説明

微多孔膜ならびにかかる膜の製造および使用方法

本発明は、電池セパレータフィルムとしての使用に好適な微多孔性ポリマー膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造方法、電池セパレータとしてかかる膜を含む電池、かかる電池の製造方法、およびかかる電池の使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年11月17日出願の米国仮特許出願番号第61/115410号、2008年11月17日出願の米国仮特許出願番号第61/115405号、2009年1月26日出願の欧州特許出願第09151320.0号および2009年1月26日出願の欧州特許出願第09151318.4号の優先権を主張し、それぞれの内容は参照によりその全体が組み入れられたものとする。
【0002】
本発明は、電池セパレータフィルムとしての使用に好適な多層微多孔性ポリマー膜に関する。本発明はまた、かかる膜の製造方法、電池セパレータとしてかかる膜を含む電池、かかる電池の製造方法およびかかる電池の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、例えば、リチウム一次電池および二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛二次電池等における電池セパレータとして用いることができる。微多孔性ポリオレフィン膜を電池セパレータ、特にリチウムイオン電池セパレータに用いる場合、膜の特徴が、電池の特性、生産性および性能に大きく影響する。したがって、微多孔膜が、特に高温において、熱による収縮に対して耐性を有することが望ましい。耐性がなければ、高温においてセパレータが収縮して電池の電極の端部から離れるため内部短絡が起こる恐れがあるが、熱による収縮(すなわち「熱収縮」)に対する耐性によって、内部短絡に対する電池の防御性を向上させることができる。
【0004】
欧州特許出願公開第1905586号(2008年2月2日公開)には、電池セパレータフィルムとして有用な多層ポリマー膜が開示されている。例示されている膜の1つは、2%の105℃における横方向の熱収縮率を有する。
【0005】
日本特許文献第2000198866号(2000年7月18日公開)には、10%の熱収縮値を有する多層電池セパレータフィルムが開示されている。この膜は、α−オレフィン−COコポリマーと無機種(架橋シリコーンパウダー)とを含有する層を含む。
【0006】
PCT公開WO2007−049568(2007年5月3日公開)にはまた、4%の機械方向の熱収縮値、および3%の横方向の熱収縮値を有する多層電池セパレータフィルムが開示されている。この文献のフィルムは、耐熱性ポリマーまたは無機充填剤を含有するコア層を含む。
【0007】
米国特許公開第2007/0218271号には、4%以下の機械方向および横方向の熱収縮値を有する単層微多孔性フィルムが開示されている。この文献のフィルムは、2×10〜4×10の重量平均分子量を有し、分子量1×10以下の分子5重量%以下、および1×10以上の分子量を有する分子5重量%以下を含有する高密度ポリエチレンから製造される。
【0008】
特開2001−192487号には、1.8%と低い横方向の熱収縮値を有する単層微多孔膜が開示されているが、これは比較的低い透気度(ガーレー値:684秒)においてである。同様に、特開JP2001−172420号には、1.1%と低い横方向の熱収縮値を有する単層微多孔膜が開示されているが、これはガーレー値が800超においてである。
【0009】
改善はされてきてはいるが、耐熱収縮性が向上した電池セパレータフィルムに対するニーズが依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一実施形態においては、本発明は、Mw>0.9×10のポリプロピレンを含む微多孔膜であって、少なくとも1つの平面方向への130℃熱収縮率が8.0%以下、および正規化透気度が4.0×10秒/100cm以下である微多孔膜に関する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造方法であって、
(a)第1の層が第1のポリオレフィンおよび少なくとも第1の希釈剤を含み、第2の層が第2のポリオレフィンおよび少なくとも第2の希釈剤を含み、第2のポリオレフィンが第2のポリオレフィンの重量を基準として1.0重量%〜40.0重量%の範囲の量でポリプロピレンを含み、ポリプロピレンが0.9×10超のMwおよび100.0J/g以上のΔHmを有する、少なくとも第1および第2の層を含む多層層押出物を、MDまたはTDの少なくとも1方向に延伸し、
(b)延伸押出物から、第1および第2の希釈剤の少なくとも一部を除去し、MDに沿った第1の長さおよびTDに沿った第1の幅を有する乾燥膜を製造し、
(c)膜を、第1の長さから、約1.1〜約1.5の範囲の第1の倍率で第1の長さより長い第2の長さへMDに延伸し、かつ膜を、第1の幅から、約1.1〜約1.3の範囲の第2の倍率で第1の幅より広い第2の幅へTDに延伸し、次いで
(d)第2の幅を、第1の幅から第1の幅の約1.1倍までの範囲である第3の幅に縮小させる工程、
を含む微多孔膜の製造方法に関する。
【0012】
さらに別の実施形態においては、本発明は、負極、正極、電解質、および負極と正極の間に位置し、前述の実施形態のうちのいずれかの微多孔膜を含む少なくとも1個の電池セパレータを含む電池に関する。電池は、例えば、リチウムイオン一次電池または二次電池であってもよい。電池は、電力源として、例えば、電動ノコギリまたはドリル等の電動工具用の電力源として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の電極アセンブリを備えた円筒型リチウムイオン二次電池の一例を示す断面斜視図である。
【0014】
【図2】図2は、図1の電池を示す断面図である。
【0015】
【図3】図3は、図2の部分Aを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ある電池の故障モードでは、電池セパレータフィルムとして用いる膜の高温軟化、および特に膜の端の付近での寸法安定性の喪失を伴う。仮に、膜の幅が膜のシャットダウン温度(通常は105℃よりもはるかに高い)より高い温度で縮小したとすると、負極、正極、およびセパレータの間の空間が狭いと、電池内の内部短絡につながる恐おそれがある。これは特に角柱型および円筒型電池の場合に当てはまり、それらの場合、膜幅が少しでも変化すると、電池の端またはその付近で負極と正極が接触する可能性がある。
【0017】
本発明は、比較的高いメルトダウン温度(≧170.0℃)、比較的高い突刺強度(≧2.0×10mN、例えば、≧3.0×10mN)、および向上した熱収縮特性、すなわち高温でのよりよい寸法安定性を有する微多孔膜の発見に関する。熱収縮特性の向上は、比較的低い温度(例えば、従来のリチウムイオン電池の作動温度範囲内である、約110℃未満)においてのみならず、比較的高温(例えば、125℃超または135℃超、例えば、リチウムイオン電池用の従来の電池セパレータフィルムのシャットダウン温度より上)においても認められる。
【0018】
電池セパレータフィルムは、105℃では、十分に軟化せず熱収縮が不十分である可能性があるため、105℃におけるフィルムの熱収縮性能は、必ずしも、電池の内部短絡の可能性を示す信頼できる指標ではない。これに対し、溶融状態におけるフィルムの最大熱収縮率は、膜のシャットダウン温度よりも高い温度で測定するため、このタイプの内部短絡のよりよい指標となり得る。溶融状態における最大熱収縮率は、通常、105℃における膜の熱収縮性能のみからは予測出来ない。
多層微多孔膜の構造および組成
【0019】
ひとつの実施形態においては、微多孔膜は第1および第2の層を含む。第1の層は、第1の層材料を含み、第2の層は、独立して選択される第2の層材料を含む。第1および第2の層材料は、例えば、独立して選択されるポリオレフィンであってもよい。例えば、膜は、膜の長さおよび幅に沿った平面軸とほぼ垂直の軸方向上方から見た場合に平坦な最上層、およびこの最上層と平行またはほぼ平行である平坦な最下層を有する。別の実施形態においては、多層微多孔膜は、3つ以上の層、例えば、第1および第3の層ならびに第1の層と第3の層の間に位置する第2の層を有する膜を含む。第3の層は、独立して選択される第3の層材料を含んでもよいが、これは必須ではない。多層微多孔膜が3つ以上の層を有する場合、少なくとも1つの層は、第1の微多孔性層材料を含み、少なくとも1つの層は、第2の微多孔性層材料を含む。ひとつの実施形態においては、第1および第3の層は、実質的に同じポリマーまたはポリマーの混合物から製造される(かつ、通常はそれらを含む)(例えば、両方とも第1の層材料から製造される)。
【0020】
ひとつの実施形態においては、多層微多孔膜は、第1および第3の層(「表面」層または「スキン」層とも呼ぶ)が膜の外層を構成し、第2の層が第1の層と第3の層の間に位置する中間層(または「コア」層)である、3つの層を含む。関連する実施形態においては、多層微多孔膜は、さらなる層、すなわち、2つのスキン層およびコア層以外の層を含んでもよい。例えば、膜は、第1の層と第3の層の間にさらなるコア層を含んでもよい。膜は塗布された膜であってもよい。すなわち、第1および第3の層の上に1つまたは複数のさらなる層があってもよいし、第1および第3の層として1つまたは複数の層が塗布されていてもよい。通常、膜の第2の層は、膜の全厚さの5%〜15%の厚さを有し、膜の第1および第3の層は、同じ厚さを有し、第1および第3の層の厚さは、それぞれ膜の全厚さの42.5%〜47.5%の範囲である。
【0021】
所望により、コア層は、例えばA/B/Aといった配置で層が対面で積み重ねられたスキン層の1つまたは複数と平面接触している。膜がポリオレフィンを含む場合、膜を「ポリオレフィン膜」と呼んでもよい。膜はポリオレフィンのみを含んでいてもよいが、これは必須ではなく、ポリオレフィン膜が、ポリオレフィン、およびポリオレフィンではない材料を含むことは、本発明の範囲内である。所望により、ポリオレフィンは、例えば、クロム触媒、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセスで製造することができる。本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語「ポリマー」は、1種または複数のモノマーに由来する繰返し単位を含む複数の高分子を含んだ組成物を意味する。高分子は、大きさ、分子構造、原子含有量、等が異なっていてもよい。用語「ポリマー」は、コポリマー、ターポリマー等の高分子を含み、個々のポリマー成分および/または反応器ブレンドを包含する。用語「ポリオレフィン」は、オレフィンに由来する繰返し単位を含むポリマー、例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレン等のポリ−αオレフィンを意味する。「ポリプロピレン」は、例えば、繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン単位であるポリプロピレンホモポリマーおよび/またはポリプロピレンコポリマー等の、プロピレン由来の繰返し単位を含むポリオレフィンを意味する。「ポリエチレン」は、例えば、繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン単位であるポリエチレンホモポリマーおよび/またはポリエチレンコポリマー等の、エチレン由来の繰返し単位を含むポリオレフィンを意味する。以下、第1および第2の層材料についてさらに詳細に説明する。
【0022】
ひとつの実施形態においては、第1の層材料は、重量平均分子量(「Mw」)≦1.0×10の第1のポリエチレンおよびMw>1.0×10の第2のポリエチレンを含む。第3の層材料は、Mw≦1.0×10の第1のポリエチレンおよびMw>1.0×10の第2のポリエチレンを含む。第2の層材料は、ポリプロピレンを含む。BSF(電池セパレータフィルム)として用いる微多孔膜が、例えば170.0℃以上といった高いメルトダウン温度を達成するためにはポリプロピレンを含む、ということは一般的なことである。しかしながら、高いメルトダウン温度を達成するために十分なポリプロピレン(例えば、膜の重量を基準として2.0重量%以上)を加えると、通常は、高温安定度が低下し(例えば、特に高温において熱収縮が増大する)、かつ突刺強度が低下する。ひとつの実施形態において、本発明の膜はこの難点を克服する。
【0023】
例えば、一実施形態においては、第2の層材料は、Mw≦1.0×10の第1のポリエチレン、Mw>0.9×10のポリプロピレン、および所望によりMw>1.0×10の第2のポリエチレンを含む。所望により、第2および/または第3の層材料の第1のポリエチレンは、第1の層材料の第1のポリエチレンと同じである。所望により、第2および/または第3の層材料の第2のポリエチレンは、第1の層材料の第2のポリエチレンと同じである。ひとつの実施形態においては、第1および第3の層材料のいずれも、0.5重量%超の量のポリプロピレンを含まない。関連する実施形態においては、第1および/または第3の層材料は、本質的に、ポリエチレン、例えば、実質的に同じポリエチレンまたはポリエチレンの組合せからなる。
【0024】
ひとつの実施形態においては、第1の層材料は、例えば92.5重量%〜約97.5重量%といった約90.0重量%〜約99.0重量%の第1のポリエチレン、および例えば約2.5重量%〜約7.5重量%といった約1.0重量%〜約1.0重量%の第2のポリエチレンを含む。重量パーセントは第1の層材料の重量が基準である。ひとつの実施形態においては、第3の層材料のポリエチレンは、第1の層材料とほぼ同じ濃度範囲の実質的に同じポリエチレンの中から選択される。
【0025】
ひとつの実施形態においては、第2の層材料は、第1のポリエチレン、ポリプロピレン、例えば40.0重量%以下のポリプロピレン、および所望により第2のポリエチレンを含む。例えば、第2の層材料は、約60.0重量%〜約95.0重量%の第1のポリエチレン、約5.0重量%〜約40.0重量%のポリプロピレン、および約0.0重量%〜約10.0重量%の第2のポリエチレンを含んでもよい。重量パーセントは第2の層材料の重量が基準である。別の実施形態においては、第2の層材料は、約60.0重量%〜約75.0重量%の第1のポリエチレン、約25.0重量%〜約35.0重量%のポリプロピレン、および約0.5重量%〜約5.0重量%の第2のポリエチレンを含む。重量パーセントは第2の層材料の重量が基準である。ひとつの実施形態においては、微多孔膜は、微多孔膜の総重量を基準として8.0重量%以下、例えば2.2重量%〜7.0重量%の範囲の量でポリプロピレンを含む。
【0026】
所望により、微多孔膜は、コポリマー、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、および/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含む。ひとつの実施形態においては、膜はかかる材料を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる材料の量が、微多孔膜の製造に用いるポリマーの総重量を基準として1.0重量%以下であることを意味する。
【0027】
最終微多孔膜は通常、押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、通常、微多孔膜の重量を基準として1.0重量%以下の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ひとつの実施形態においては、膜中のポリマーのMwは、膜の製造に用いるポリマーのMwの10%以下、例えば1.0%以下または0.1%以下だけ低下する。
【0028】
以下、ポリプロピレン、第1および第2のポリエチレン、ならびに押出物および微多孔膜の製造に用いる希釈剤、についてさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、以下の説明は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を除外することを意図するものではない。
微多孔膜の製造に用いる材料
【0029】
ひとつの実施形態においては、第1および第3の層材料は、第1の希釈剤ならびに第1および第2のポリエチレンから製造し、第2の層材料は、第2の希釈剤、第1のポリエチレン、ポリプロピレン、および所望により第2のポリエチレンから製造する。所望により、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174(共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを用いて、第1、第2、および/または第3の層材料を製造してもよい。ひとつの実施形態においては、これらの任意である種は使用しない。
A.第1のポリエチレン
【0030】
ひとつの実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば約1.0×10〜約0.90×10の範囲といった1.0×10以下のMw、約2.0〜約50.0の範囲の分子量分布(「MWD」)、および炭素原子1.0×10個当たり0.20未満の末端不飽和基量(「PE1」)を有する。所望により、第1のポリエチレンは、約4.0×10〜約6.0×10の範囲のMw、および約3.0〜約10.0のMWDを有する。所望により、第1のポリエチレンは、炭素原子1.0×10個当たり0.14以下、または炭素原子1.0×10個当たり0.12以下、例えば、炭素原子1.0×10個当たり0.05〜0.14の範囲(例えば、測定の検出限界よりも下)の末端不飽和基量を有する。PE1は、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、例えば、旭(Asahi)社製のSH-800(登録商標)ポリエチレンであってもよい。
【0031】
別の実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば約2.0×10〜約0.9×10の範囲といった1.0×10未満のMw、約2〜約50の範囲のMWD、および炭素原子10,000個当たり0.20以上の末端不飽和基量(「PE2」)を有する。所望により、第1のポリエチレンは、炭素原子1.0×10個当たり0.30以上、または炭素原子1.0×10個当たり0.50以上、例えば、炭素原子1.0×10個当たり0.6〜10.0の範囲の末端不飽和基量を有する。第1のポリエチレンの非限定的な例としては、例えば約7.5×10といった約3.0×10〜約8.0×10の範囲Mw、および約4〜約15のMWDを有するポリエチレンが挙げられる。PE2は、HDPE、例えば、バセル(Basell)社製のルポレン(Lupolen)(登録商標)であってもよい。第1のポリエチレンはPE1とPE2の混合物であってもよい。
【0032】
第1のポリエチレンは、例えば、エチレンホモポリマー、または、α−オレフィン等の1種または複数のコモノマーを、モル比で100%のコポリマーを基準として5.0モル%以下で含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。所望により、α−オレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1種または複数である。PE1は、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセスで製造することができるが、これは必須ではない。末端不飽和基量は、例えばPCT公開WO97/23554に記載の手順に従って測定することができる。PE2は、例えばクロム含有触媒を用いて製造することができる。
【0033】
第1のポリエチレンのMwおよびMWD(MWDはMw/Mnと定義され、Mnは数平均分子量である)は、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定する。3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLである。トランスファーライン、カラムおよびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に入っていた。測定は、“Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)”に開示されている手順に従って行う。
【0034】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済のアルドリッチ社製試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBは、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。ポリマー溶液を、乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量の上記TCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより調製する。UHMWPE溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlであった。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0035】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義される)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正し、これを検量線の作成に用いる。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
B.第2のポリエチレン
【0036】
ひとつの実施形態においては、第2のポリエチレンは、例えば約1.0×10〜約5.0×10の範囲といった1.0×10超のMw、および約1.2〜約50.0のMWDを有する。第2のポリエチレンの非限定的な例としては、例えば約2.0×10といった約1.0×10〜約3.0×10のMw、および約2.0〜約20.0、好ましくは約4.0〜15.0のMWDを有するポリエチレンが挙げられる。第2のポリエチレンは、例えば、エチレンホモポリマー、または、モル比で100%のコポリマーを基準として、α−オレフィン等の1種または複数のコモノマーを5.0モル%以下で含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1種または複数であってもよい。かかるコポリマーは、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト重合触媒を用いて製造することができるが、これは必須ではない。第2のポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、例えば、三井(Mitsui)社製240-m(登録商標)ポリエチレンであってもよい。
【0037】
第2のポリエチレンのMw、MnおよびMWDは、第1のポリエチレンと同様の方法で決定する。
C.ポリプロピレン
【0038】
ひとつの実施形態においては、ポリプロピレンは、例えば約1.0×10〜約2.0×10、例えば約1.1×10〜約1.5×10といった0.9×10超のMwを有する。所望により、ポリプロピレンは、例えば約1.1〜約50.0または約2.0〜約6.0といった100以下のMWD、および/または、例えば110J/g〜120J/g、例えば約113J/g〜119J/gまたは114J/g〜約116J/gといった100.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有する。ポリプロピレンは、例えば、(i)プロピレンホモポリマー、または(ii)プロピレンと、モル比で100%の全コポリマーを基準として10.0モル%以下のコモノマーとのコポリマーの1つまたは複数であってもよい。コポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。コモノマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等のα−オレフィン、ならびにブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンの1種または複数であってもよい。所望により、ポリプロピレンは以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)立体規則性はアイソタクチックである;(ii)230℃の温度および25sec−1のひずみ速度において少なくとも約50,000Pa秒の伸張粘度;(iii)少なくとも約160℃、例えば約166℃超、さらには約168℃超、またはさらには約170℃超の融解ピークTm(第2融解)(融点は、従来の方法、例えば示差走査熱量測定(DSC)で求めることができる);(iv)約230℃の温度および25sec−1のひずみ速度において測定した場合に少なくとも約15のトルートン比;(v)230℃の温度および25秒−1のひずみ速度において少なくとも約5.0×10Pa秒の伸張粘度;(vi)Mw≧1.75×10、または≧2.0×10、または≧2.25×10、例えば≧2.5×10;(vii)230℃および2.16kg重量において約0.01dg/分以下のメルトフローレート(MFR)(すなわち、値が低く事実上MFRが測定不能、メルトフローレートは、ASTM D 1238−95の条件L等の、従来の方法に従って決定する);(viii)炭素原子1.0×10個当たり50.0以下、40.0以下、30.0以下、またはさらには炭素原子1.0×10個当たり20.0以下の立体的欠陥を示し、例えば、ポリプロピレンは、炭素原子1.0×10個当たり約10.0未満、または約5.0未満の立体的欠陥を有し得る;(ix)約96mol%mmmmペンタッド超のメソペンタッド分率;および/または(x)抽出可能な種(ポリプロピレンと沸騰キシレンとを接触させることにより抽出可能)の量が、ポリプロピレンの重量を基準として0.5重量%以下、または0.2重量%以下または0.1重量%以下。
【0039】
ポリプロピレンのΔHmは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に開示されている方法で決定する。Tmは、PerkinElmer Instrument, model Pyris 1 DSCによって得た示差走査熱量測定(DSC)デ−タから決定することができる。約5.5〜6.5mgの重量の試料をアルミニウム製の試料パンに封入する。第1融解(デ−タは記録せず)と呼ぶ、最初に試料を150℃/分の速度で200℃に加熱すること、によりDSCデ−タを記録する。冷却加熱サイクルを適用する前に、試料を10分間200℃に保持する。次いで、試料を10℃/分の速度で200℃から25℃に冷却(「結晶化」と呼ぶ)した後、10分間25℃に保持し、次いで10℃/分の速度で200℃に加熱(「第2融解」と呼ぶ)する。結晶化と第2融解の両方における熱事象を記録する。融解温度(T)は、第2の融解曲線のピーク温度であり、結晶化温度(T)は、結晶化ピークのピーク温度である。
【0040】
メソペンタッド分率は、Varian VXR 400 NMR分光計にて、100MHz、125℃で得た13C NMRデ−タから決定することができる。90℃パルス、3.0秒の取り込み時間および20秒のパルス遅延を用いる。スペクトルは、デカップルしたブロードバンドであり、ゲート付きデカップリング無しで得られる。一般的には定量目的に用いられる唯一のホモポリマー共鳴である、ポリプロピレンのメチル共鳴についても、同様の緩和時間および核オーバーハウザー効果が期待される。収集されるトランジェントの典型的な数は2500である。試料を、15重量%の濃度で、テトラクロロエタン−d中に溶解させる。内部テトラメチルシラン標準について、全てのスペクトル周波数を記録する。ポリプロピレンホモポリマーの場合、メチル基の共鳴はmmmmについて21.81ppmで記録され、報告されている文献値の、内部テトラメチルシラン標準に対する21.855ppmに近い。このペンタッド帰属は十分に確立されている。
【0041】
抽出可能な種(比較的低分子量かつ/または非晶質の材料、例えば非晶質ポリエチレン等)の量は、以下の手順に従って、135℃におけるキシレンへの溶解度により決定する。試料(ペレットまたは粉砕ペレットのいずれかの形態)を2グラム秤取し、300ml三角フラスコに入れる。キシレン200mlを攪拌子とともにこの三角フラスコに注ぎ、加熱油浴にフラスコを固定する。加熱油浴のスイッチを入れ、135℃で約15分間フラスコを油浴に入れたままにしてポリマーを融解させる。融解したら加熱を止めるが、攪拌は冷却プロセス中続ける。融解したポリマーを一晩自然冷却させる。沈殿物をテフロンろ紙で濾過し、次いで90℃で真空乾燥させる。キシレン溶解物の量を、室温で、全ポリマー試料(「A」)から沈殿物(「B」)を引いた重量パーセントを計算することにより決定する[溶解量=((A−B)/A)×100]。
【0042】
ポリプロピレンのMwおよびMnは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に開示されている方法で決定する。
微多孔膜の製造方法
【0043】
ひとつの実施形態においては、本発明の多層微多孔膜は二層膜である。別の実施形態においては、多層微多孔膜は少なくとも3つの層を有する。本発明はそれらに限定されるものではないが、主に、第1の層材料を含む第1および第3の層と、第1の層と第3の層の間に位置する第2の層材料を含む第2の層とを有する三層膜に関して、微多孔膜の製造方法を説明する。
【0044】
多層微多孔膜の製造方法の1つでは、押出物または膜、例えば単層押出物または単層微多孔膜、を積層または共押出しすることによる層化が行われる。例えば、第1の層材料を含む1つまたは複数の層は、第2の層材料を含む1つまたは複数の層、例えば、第2の層材料を含む層(または複数の層)の片側または両側に位置する第1の層材料を含む層と共に共押出ししてもよい。
【0045】
ひとつの実施形態においては、膜の製造プロセスでは、第1の平面方向(例えば、押出しの機械方向または「MD」)および直交する第2の平面方向(例えば、MDに横行する方向、横方向または「TD」と呼ぶ)を有する多層押出物の冷却が行われる。押出物は、第2の層が第1の層と第3の層の間に位置する、少なくとも第1、第2、および第3の層を含んでいてもよい。押出物の第1および第3の層は、第1の層材料および少なくとも第1の希釈剤を含み、押出物の第2の層は、第2の層材料および少なくとも第2の希釈剤を含む。第1および第3の層は、スキン層とも呼ばれる、押出物の外層であってもよい。当業者であれば、押出物の第3の層が、異なる層材料、例えば第3の層材料から製造することができ、かつ第1の層とは異なる厚さを有してもよいということが理解できよう。このプロセスはまた、冷却押出物のMDおよび/またはTD方向に延伸し、ならびに少なくとも一部の第1および第2の希釈剤を延伸押出物から除去することを含み、第1の平面方向の第1の乾燥長さおよび第2の平面方向の第1の乾燥幅を有する乾燥膜が製造される。次にこのプロセスでは、MDおよび所望によりTDに沿って乾燥膜を延伸することにより最終膜が形成される。以下、三層膜を製造するための実施形態をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、以下の説明は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を除外することを意図するものではない。
第1の層材料と第1の希釈剤との混合
【0046】
第1の層材料は、第1のポリエチレンおよび所望により第2のポリエチレンを、例えば乾燥混合または溶融ブレンドによって混合することにより調製する。混合したポリマーを1種または複数の希釈剤と混合してポリマーと希釈剤との混合物を形成し、第1の混合物を調製することができる。ポリマーは、ポリマー樹脂の形態であってもよい。希釈剤は、例えば、第1の層材料のポリマー用の溶媒であってもよい。希釈剤がこのような溶媒である場合、希釈剤は膜形成溶媒と呼ぶことができ、ポリマーと希釈剤との混合物は、ポリマー溶液、例えばポリオレフィン溶液と呼ぶことができる。第1の混合物は、所望により1種または複数の酸化防止剤等の添加剤を含んでもよい。ひとつの実施形態においては、かかる添加剤の量は、ポリマーと希釈剤との混合物の重量を基準として1.0重量%以下である。
【0047】
次に、第1の希釈剤および第1の層材料を含む第1の混合物を調製する。所望により、第1の希釈剤は室温で液体である溶媒であるが、希釈剤は、押し出し温度にて第1の層材料とともに単相を形成することが可能な、いずれかの種またはこれらの種の混合物であってもよい。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、液体溶媒を用いて第1のポリオレフィン溶液を形成することにより、比較的高い延伸倍率で押出物(通常はゲル状シート)の延伸を行うことが可能になると考えられている。
【0048】
希釈剤としては、ノナン、デカン、デカリンおよびパラフィン油等の脂肪族または環状炭化水素、ならびにフタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルの少なくとも1種が挙げられる。動粘度が40℃で20〜200cStであるパラフィン油を用いてもよい。第1の希釈剤、混合条件、押出し条件等の選択は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2008/016174に開示されている選択と同じであってもよい。
【0049】
第1のポリオレフィン溶液の中の、希釈剤と第1の層材料との混合物中の第1の希釈剤の量は重要ではない。ひとつの実施形態においては、第1の希釈剤の量の範囲は、第1の希釈剤と第1の層材料を合わせた重量を基準として、20.0重量%〜9.09重量%、例えば、25.0重量%〜50.0重量%である。
第2の層材料と第2の希釈剤との混合
【0050】
第2の混合物(第2の層材料および第2の希釈剤を含む)は、第1の混合物の調製に用いた同様の方法で混合してよい。例えば、第2の層材料を含むポリマーは、第1のポリエチレンと、ポリプロピレンと、所望により第2のポリエチレンとを溶融ブレンドすることにより混合してよい。第2の希釈剤は、第1の希釈剤と同じ希釈剤の中から選択してよい。また、第2の希釈剤は第1の希釈剤とは独立して選択してよい(また通常は独立して選択される)が、希釈剤は、第1の希釈剤と同じであってもよく、また、第1の希釈剤を第1のポリオレフィン溶液中で使用するのと同じ相対濃度で使用してよい。
【0051】
ひとつの実施形態においては、第2の混合物の調製方法は、混合温度がポリプロピレンの融点(Tm2)からTm2+90℃の範囲であることが好ましいという点において第1の混合物の調製方法とは異なっている。
押出し
【0052】
ひとつの実施形態においては、第1の混合物は、第1の押出機から第1および第3のダイへと導かれ、第2の混合物は、第2の押出機から第2のダイへと導かれる。シート状の層状押出物(すなわち、厚さ方向よりも平面方向の方が著しく大きい物体)を第1、第2、および第3のダイから押し出して(例えば、共押出し)、第1の混合物を含むスキン層、および第2の混合物を含むコア層を有する多層押出物を製造することができる。
【0053】
ダイまたは複数のダイおよび押出し条件の選択は、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に開示されている選択と同じであってよい。
多層押出物の冷却
【0054】
多層押出物を15℃〜25℃の範囲の温度にさらして冷却押出物を形成することができる。冷却速度はとくに重要ではない。例えば、押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してよい。冷却の処理条件は、例えば、PCT公開番号WO2008/01617に開示されている条件と同じであってよい。ひとつの実施形態においては、冷却押出物は、例えば0.1mm〜1.0mmまたは0.5mm〜5.0mmの範囲といった10mm以下の厚さを有する。通常、冷却押出物の第2の層は、冷却押出物の全厚さの5.0%〜15.0%の厚さを有し、冷却押出物の第1および第3の層は、実質的に同じ厚さを有し、第1および第3の層の厚さは、それぞれ冷却押出物の全厚さの42.5%〜47.5%の範囲である。
押出物の延伸
【0055】
押出物を少なくとも一つの方向(例えば、MDまたはTD等の少なくとも1つの平面方向)に延伸して(希釈剤が押出物中に存在したままであるため、「湿式」延伸(stretching)または湿式延伸(orientation)と呼ばれる)、延伸押出物を製造する。所望により、押出物は、4〜6の範囲の倍率まで、TDおよびMDに同時に延伸することができる。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムを、TDに4倍の倍率まで延伸すると、最終幅が8.0cmとなる。好適な延伸方法は、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に記載されている。必須ではないが、MDおよびTDの倍率は同じであってもよい。ひとつの実施形態においては、延伸倍率はMDおよびTDにおいて5に等しい。
【0056】
必須ではないが、延伸は、押出物をおよそTcd温度からTmの範囲の温度にさらしながら行ってもよい。TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融点の低いポリエチレン(すなわち、第1および第2のポリエチレン)の融点と定義される。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90.0〜100.0℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、約90〜125℃、好ましくは約100.0〜125.0℃、より好ましくは105.0〜125.0℃であってよい。
【0057】
ひとつの実施形態においては、延伸押出物は、希釈剤除去の前に所望により熱処理を受ける。熱処理では、延伸押出物は、押出物が延伸中にさらされる温度より高い(温かい)温度にさらされる。延伸押出物がそのより高い温度にさらされている間、延伸押出物の平面寸法(MDの長さおよびTDの幅)は一定に保つことができる。押出物はポリマーおよび希釈剤を含有しているため、その長さおよび幅は、「湿潤」長さおよび「湿潤」幅と呼ばれる。ひとつの実施形態においては、延伸押出物は、1.0秒〜1.0×10秒の範囲の時間、120.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらされるが、その間は、例えば、テンタークリップを用いて延伸押出物をその外周に沿って保持することにより、湿潤長さおよび湿潤幅は一定に保たれる。言い換えれば、熱処理の間、MDまたはTDへの延伸押出物の拡大または縮小(すなわち、寸法変化)はない。
【0058】
この工程、および試料(例えば、押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす乾燥延伸および熱処理等のその他の工程において、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
第1および第2の希釈剤の除去
【0059】
ひとつの実施形態においては、第1および第2の希釈剤(例えば、膜形成溶媒)の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)して乾燥膜を形成する。置換(または「洗浄」)溶媒を用いて第1および第2の希釈剤を除去(洗浄、または置換)することができる。第1および第2の希釈剤を除去するための処理条件は、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に開示されている条件と同じであってよい。用語「乾燥膜」は、希釈剤の少なくとも一部が除去されている押出物を指す。全ての希釈剤を延伸押出物から除去する必要はないが、希釈剤を除去すると最終膜の空孔率が増加するので、そうすることが望ましい。
【0060】
ひとつの実施形態においては、洗浄溶媒等の残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を、希釈剤除去後のいずれかの時点において乾燥膜から除去してよい。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えば、PCT公開番号WO2008/016174および同WO2007/132942に開示されている条件と同じであってよい。
乾燥膜の延伸
【0061】
乾燥膜を少なくともMDに延伸する(「乾燥延伸」と呼ばれる)。乾燥延伸した乾燥膜は、「配向」膜と呼ばれる。乾燥延伸の前には、乾燥膜は、MDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜の横方向への大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜の機械方向への大きさを指す。例えば、WO2008/016174に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0062】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、約1.1〜約1.5の範囲の第1の倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへMDに延伸してよい。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、第2の倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へTDに延伸してよい。所望により、TD乾燥延伸倍率はMD乾燥延伸倍率以下である。TD乾燥延伸倍率は、約1.1〜約1.3、例えば約1.15〜約1.25の範囲であってよい。延伸(希釈剤を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってもよい。通常、TD熱収縮率はMD熱収縮率よりも電池の特性に与える影響が大きいため、ひとつの実施形態においては第1の倍率は第2の倍率より大きい。
【0063】
TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸は、MDおよびTDに同時的、または逐次的であってよい。乾燥延伸が逐次的の場合、通常はMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0064】
乾燥延伸は、通常、乾燥膜を、例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といったTm以下の温度にさらしながら行う。膜が、ポリエチレンを含む第1および第3の層と、当該第1の層と第3の層の間に位置するポリプロピレンを含む第2の層とを有する多層膜である実施形態においては、延伸温度は、通常、例えば約80.0℃〜約132.0℃といった約70.0℃〜約135.0℃の範囲の温度にさらした膜で行う。ひとつの実施形態においては、MD延伸はTD延伸の前に行い、
(i)MD延伸は、膜を、例えば70.0℃〜約125.0℃、または約80.0℃〜約120.0℃といったTcd−30.0℃〜およそTm−10.0℃の範囲の第1の温度にさらしながら行い、
(ii)TD延伸は、膜を、例えば約70.0℃〜約135.0℃、約127.0℃〜約132.0℃または約129.0℃〜約131.0℃といった第1の温度より高いがTmよりは低い第2の温度にさらしながら行う。
【0065】
ひとつの実施形態においては、MD乾燥延伸倍率は、例えば1.2〜1.4といった約1.1〜約1.5の範囲であり、TD乾燥延伸倍率は、例えば1.15〜1.25といった約1.1〜約1.3の範囲であり、MD延伸が最初で、続いてTD方向への延伸を行う。
【0066】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3.0%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10.0%/秒以上、例えば5.0%/秒〜25.0%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50.0%/秒であることが好ましい。
膜の幅の制御された縮小
【0067】
乾燥延伸に続き、乾燥膜に、第2の乾燥幅から第3の幅への幅の制御された縮小を施すが、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1倍の範囲である。通常、幅の縮小は、Tcd−30.0℃以上であるがTm未満である温度に膜をさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約127.0℃〜約132.0℃、例えば約129.0℃〜約131.0℃といった約70.0℃〜約135.0℃の範囲の温度にさらしてよい。ひとつの実施形態においては、膜の幅の減少は、膜をTmよりも低い温度にさらしながら行う。ひとつの実施形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.1倍、例えば、第1の乾燥幅の1.0倍〜第1の乾燥幅の約1.05倍の範囲である。
【0068】
制御された幅の縮小中に、膜を、TD延伸中に膜がさらされた温度以上の温度にさらすと、最終膜の耐熱収縮性がより高くなると考えられている。
任意の熱処理
【0069】
所望により、例えば、乾燥延伸の後、制御された幅の縮小の後、またはその両方の後、希釈剤の除去に続いて、一回または複数回、膜を熱的に処理(熱処理)する。熱処理により、結晶が安定化して膜中に均一な薄層が形成されると考えられている。ひとつの実施形態においては、熱処理は、例えば約100℃〜約135℃の範囲、例えば約127.0℃〜約132.0℃または約129.0℃〜約131.0℃といったTcdからTmの範囲の温度に膜をさらしながら行われる。通常、熱処理は、膜中に薄層を形成するのに十分な時間、例えば1.0〜100.0秒の範囲の時間行う。ひとつの実施形態においては、熱処理は、一般的な熱処理「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱処理中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅を実質的に一定に維持しながら行う熱処理を指す。
【0070】
所望により、アニーリング処理は、熱処理工程の後に行ってよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等を用いて行うことができる。アニーリングは、熱処理の後にテンターを緩めた状態で連続的に行うこともできる。アニーリング中、膜を、例えば約60℃〜およそTm−5℃の範囲といったTmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてよい。アニーリングによって微多孔膜の透過度および強度が向上すると考えられている。
【0071】
任意の、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理およびコーティング処理を、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に記載されているように、所望により行なってよい。
【0072】
所望により、アニーリング処理は、熱処理の前、間、または後に行ってよい。アニーリングは、膜には負荷をかけない加熱処理であり、例えば、ベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型加熱室を用いて行うことができる。アニーリングは、例えば熱処理の後にテンターを緩めた状態で連続的に行うことができる。アニーリング中に膜がさらされる温度(アニーリング温度)は、例えば約126.9℃〜128.9℃の範囲であってよい。アニーリングによって、微多孔膜に熱収縮および強度の向上がもたらされると考えられている。
【0073】
任意の、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理およびコーティング処理を、例えば、PCT公開番号WO2008/016174に記載されているように、所望により行なってよい。
多層微多孔膜の特性
【0074】
ひとつの実施形態においては、膜は多層微多孔膜である。膜の厚さは、通常3.0μm以上の範囲である。例えば、膜は、例えば約10.0μm〜約50.0μmといった約5.0μm〜約200.0μmの範囲の厚さを有していてよい。膜の厚さは、例えば、縦方向に1.0cm間隔で10.0cmの幅にわたって接触式厚さ計(contact thickness meter)により測定でき、次いで平均値を出して膜厚さを得る。株式会社ミツトヨ製ライトマチック等の厚さ計が好適である。この方法は、後述の通り、熱圧縮後の厚さ変化を測定するのにも好適である。例えば光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定方法もまた好適である。
【0075】
所望により、膜は、以下の特性の1つまたは複数を有する。
A.空孔率
【0076】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば約25.0%〜約80.0%、または30.0%〜60.0%の範囲といった25.0%以上の空孔率を有する。膜の空孔率は、膜の実重量と、同じ組成の同等の非多孔性膜(同じ長さ、幅および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより、従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実重量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する同等の非多孔膜の重量である。
B1.正規化透気度
【0077】
ひとつの実施形態においては、膜の正規化透気度(ガーレー値、同等の膜厚20.0μmに正規化)は、4.0×10秒/100cm/20μm以下である。透気度値は、フィルム厚20μmに正規化するため、単位は「秒/100cm/20μm」で表す。ひとつの実施形態においては、正規化透気度は、100.0秒/100cm/20μm〜約400.0秒/100cm/20μm、または150.0秒/100cm/20μm〜390.0秒/100cm/20μmの範囲である。正規化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=20μm*(X)/T(式中、Xは実厚さTを有する膜の透気度の測定値であり、Aは厚さ20μmにおける正規化透気度である)の式を用いて、厚さ20μmにおける値に正規化する。
B2.熱圧縮後の透気度
【0078】
ひとつの実施形態においては、膜の熱圧縮後の透気度は、例えば500.0秒/100cm〜750.0秒/100cmといった1.0×10秒/100cm以下である。熱圧縮後の透気度は、膜を90.0℃の温度にさらしながら、厚さ方向に2.2MPa(22kgf/cm)で5分間圧縮した後、JIS P8117に従って測定する。
C.正規化突刺強度
【0079】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば3.0×10mN/20μm〜5.0×10mN/20μmの範囲といった2.0×10mN/20μm以上の突刺強度を有する。突刺強度は、厚さTを有する微多孔膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1.0mmの針を用いて2.0mm/秒の速度で突き刺した時に測定した最大荷重と定義される。この突刺強度を、式S=20μm*(S)/Tを用いて、膜の厚さ20μmにおける値に正規化する。式中、Sは突刺強度の測定値であり、Sは正規化突刺強度であり、Tは膜の平均厚さである。
D.引張強さ
【0080】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば1.0×10〜1.1×10kPaの範囲といった9.0×10kPa以上のMD引張強さ、および、8.0×10kPa〜1.0×10kPaの範囲といった5.5×10以上のTD引張強さを有する。引張強さは、ASTM D−882Aに従って、MDおよびTDにおいて測定する。
E.引張伸度≧100%
【0081】
引張伸度は、ASTM D−882Aに従って測定する。ひとつの実施形態においては、膜のMDおよびTD引張伸度はそれぞれ、例えば150%〜350%の範囲といった150%以上である。別の実施形態においては、膜のMD引張伸度は、例えば150%〜250%の範囲であり、TD引張伸度は、例えば150%〜250%の範囲である。
F.シャットダウン温度
【0082】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば132.0℃〜138.0℃の範囲といった、140.0℃以下のシャットダウン温度を有する。微多孔膜のシャットダウン温度は、以下の通り、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)により測定する。3.0mm×50.0mmの長方形の試料を、試料の長軸が膜のTDと一直線になり、かつ短軸がMDと一直線になるように、微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10.0mmで、熱機械分析装置にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10.0mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30.0℃で開始し、管の内部の温度を5.0℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200.0℃まで上昇させる。「シャットダウン温度」は、膜の製造に用いるポリマーの中で融点が最も低いポリマーの融点付近で観察される変曲点の温度と定義される。
G.メルトダウン温度
【0083】
ひとつの実施形態においては、膜のメルトダウン温度は、例えば171.0℃〜200.0℃または172.0℃〜190.0℃の範囲といった170.0℃以上である。膜のメルトダウン温度は以下の手順で測定する。3.0mm×50.0mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されると同時に、試料の長軸が微多孔膜のTDと一直線になり、かつ短軸がMDと一直線になるように、微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10.0mmで、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30.0℃で開始し、管の内部の温度を5.0℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200.0℃まで上昇させる。試料のメルトダウン温度は、試料が破壊する温度と定義され、通常は約145℃〜約200℃の範囲の温度である。
【0084】
ひとつの実施形態においては、メルトダウン温度は、170.0℃〜180.0℃の範囲である。膜は、望ましいほどに高いメルトダウン温度を有するため、電気自動車およびハイブリッド電気自動車に動力を供給するために用いる電池等の、高出力、高容量リチウムイオン電池における電池セパレータとして使用するのに好適である。
H.熱圧縮後の厚さ変動率
【0085】
ひとつの実施形態においては、熱圧縮後の膜の厚さ変動率は、熱圧縮前の膜の厚さの20.0%以下、例えば5.0%〜10.0%の範囲である。熱圧縮後の厚さ変動は、膜を90.0℃の温度にさらしながら、厚さ方向に2.2MPa(22kgf/cm)で5分間圧縮することにより測定する。膜の厚さ変動率は、(圧縮後の平均厚さ−圧縮前の平均厚さ)/(圧縮前の平均厚さ)×100の絶対値と定義される。
I.電解液吸収速度
【0086】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば3.2〜5.0の範囲といった3.0以上の電解液吸収速度を有する。動的表面張力測定装置(英弘精機株式会社製、精密電子天秤付きDCAT21)を用いて、18.0℃に保持した電解液(電解質:1mol/LのLiPF、溶媒:容積比3/7のエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート)に微多孔膜試料を600秒間浸漬し、[浸漬後の微多孔膜の重量(グラム)/浸漬前の微多孔膜の重量(グラム)]の式により、電解液吸収速度を求める。電解液吸収速度は、比較例1の微多孔膜の電解液吸収速度を1.0として、相対値で表す。比較的高い電解液吸収速度(例えば、≧3.0)を有する電池セパレータフィルムが望ましいが、これは、電池製造中の、セパレータが電解質を吸収するために必要な時間が減り、それにより電池を製造することができる速度が上昇するためである。
J.少なくとも1つの平面方向への105℃における熱収縮率≦1.0%
【0087】
ひとつの実施形態においては、膜は、例えば0.5%以下、例えば0.1%〜0.25%の範囲といった、少なくとも1つの平面方向(例えば、MDまたはTD)への105℃における熱収縮率1.0%以下を有する。MDおよびTDへの105℃における膜の収縮率は、次のようにして測定する:(i)微多孔膜の試験片の大きさを、室温にてMDおよびTDの両方向について測定し、(ii)微多孔膜の試験片を、荷重をかけずに、8時間105℃の温度にて平衡化させ、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方向について測定する。MDおよびTDへの熱(すなわち「熱による」)収縮率は、測定結果(i)を測定結果(ii)で割り、得られた商を百分率で表すことによって得られる。
K.130℃におけるTD熱収縮率
【0088】
ひとつの実施形態においては、膜は、130℃において測定したTD熱収縮率が、例えば1%〜7.5%といった8.0%以下である。130℃は、上限(シャットダウン)には近いけれども、通常、充電中および放電中のリチウムイオン二次電池の作動温度範囲内であるため、例えば8.0%以下といった比較的低い熱収縮値は特に重要性を持ち得る。
【0089】
測定値は、105℃における熱収縮率の測定値とはわずかに異なるが、これは、膜のTDと平行である膜の端が、通常は電池内で固定され、特に膜のMDと平行である端の中心付近において、TDへの拡大または縮小(収縮)を可能にする自由度が限られているという事実を反映している。したがって、TDに沿って50mm、MDに沿って50mmの、正方形の微多孔性フィルムの試料を、TDと平行である端を(テープ等により)フレームに固定して、MDに35mmでTDに50mmの開放口を残し、フレームに設置する。次に、試料を取り付けたフレームを30分間130℃の温度で(オーブン内等で)熱平衡状態で加熱し、次いで冷却する。通常、TD熱収縮によって、MDと平行であるフィルムの端が、内側に(フレームの開口の中心に向かって)わずかに弓なりに曲がる。TD方向の収縮率(パーセントで表す)は、加熱前の試料のTDの長さを、加熱後の試料のTDの(フレーム内の)最短長さで割り、100パーセントを掛けたものと等しい。
L.溶融状態における最大熱収縮率
【0090】
膜の平面方向への溶融状態における最大収縮率は、以下の手順で測定する。
【0091】
メルトダウン温度の測定において記載したTMA手順を用いて、135℃〜145℃の温度範囲で測定した試料の長さを記録する。膜が収縮し、チャック間の距離は膜が収縮するにつれて減少する。溶融状態における最大収縮率は、23.0℃で測定したチャック間の試料の長さ(L1:10mmに等しい)から通常約135℃〜約145.0℃の範囲で測定した最小長さ(L2に等しい)を引き、L1で割ったもの、すなわち、[L1−L2]/L1*100%と定義される。TD最大収縮率を測定する場合、使用する3.0mm×50.0mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されている時に、試料の長軸が微多孔膜の横方向と一直線になり、かつ短軸が機械方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。MD最大収縮率を測定する場合、使用する3.0mm×50.0mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されている時に、試料の長軸が微多孔膜の機械方向と一直線になり、かつ短軸が横方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。
【0092】
ひとつの実施形態においては、溶融状態における膜の最大MD熱収縮率は、例えば1.0%〜25.0%または2.0%〜20.0%の範囲といった25.0%以下または20.0%以下である。ひとつの実施形態においては、溶融状態における膜の最大TD熱収縮率は、例えば1.0%〜10.0%または2.0%〜5.5%の範囲といった11.0%以下または6.0%以下である。
電池
【0093】
本発明の微多孔膜は、例えばリチウムイオン一次電池および二次電池等における、電池セパレータとして有用である。かかる電池はPCT公開WO2008/016174に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
図1は、2枚の電池セパレータを備える円筒型リチウムイオン二次電池の例を示す。本発明の微多孔膜は、このタイプの電池の電池セパレータとして使用するのに好適である。この電池は、第1のセパレータ10と、第2のセパレータ11と、正極シート13と、負極シート12とを備えた巻回型電極アセンブリ1を有する。セパレータの厚さの縮尺は一定の比率ではなく、図示するために大きく拡大してある。巻回型電極アセンブリ1は、例えば、第2のセパレータ11が正極シート13の外側に配置され、第1のセパレータ10が正極シートの内側に配置されるようにして巻回されていてもよい。この例では、図2に示されるように、第2のセパレータ11は巻回型電極アセンブリ1の内面側に配置されている。
【0095】
この例では、図3に示すように、負極活物質層12bが集電体12aの両側に形成されており、正極活物質層13bが集電体13aの両側に形成されている。図2に示されるように、負極シート12の端部に負極リード20が取り付けられ、正極シート13の端部に正極リード21が取り付けられている。負極リード20は電池蓋27に接続され、正極リード21は電池缶23に接続されている。
【0096】
円筒型の電池について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のセパレータは、例えば、積層された負極と正極の間に位置するセパレータと、平行に、交互に接続された負極(1つまたは複数)12および正極(3)13の積層プレートの形態の電極を含む電池等の、角柱型電池における使用に好適である。
【0097】
電池を組み立てる際、負極シート12、正極シート13、および第1および第2のセパレータ10、11に電解液を含浸させ、その結果セパレータ10、11(微多孔膜)にイオン透過性が付与される。含浸処理は、例えば電極アセンブリ1を室温で電解液に浸漬すること等により行うことができる。円筒型リチウムイオン二次電池は、底部に絶縁板22を有する電池缶23に巻回型電極アセンブリ1(図1参照)を挿入し、電池缶23に電解液を注入し、電極アセンブリ1を絶縁板22で覆い、ガスケット28を介して電池蓋(24、25、26および27)を電池缶23にかしめること、により製造することができる。電池蓋は、負極端子として機能する。
【0098】
図3(図1の電池蓋、すなわち負極端子が右側にあるものとする)は、電池の温度が上昇するにつれて横方向(セパレータ製造プロセス方向に対して)への収縮率が少ない傾向のセパレータを用いることの利点を図示している。セパレータの役割の1つに、負極活物質層と正極活物質層との接触を防ぐことがある。著しいTD熱収縮があった場合、セパレータ10および11の薄い端が電池蓋から剥がれ(図3の左側に動く)、それにより負極活物質層と正極活物質層とが接触するようになり、短絡が生じる。セパレータは、通常は200μm未満とかなり薄い場合があるため、負極活物質層と正極活物質層はかなり接近する場合がある。このため、電池が高温の時のセパレータのTD収縮量をほんの少し減少させるだけで、内部短絡に対する電池の耐性を大幅に向上させることができる。
【0099】
電池は、1つまたは複数の電気部品または電子部品の電力源または電力集積装置として有用であり、かかる部品としては、例えば変圧器等を含む、抵抗器、コンデンサ、誘導器等の受動素子、電動機および発電機等の電動デバイス、ならびにダイオード、トランジスタおよび集積回路等の電子デバイスが挙げられる。これらの部品を、直列および/または並列電気回路にて電池に接続して電池システムを形成することができる。回路は、直接的または間接的に電池に接続してもよい。例えば、電池から流れる電気は、これらの部品の1つまたは複数の中で電気が消散または蓄積される前に、(例えば二次電池または燃料電池によって)電気化学的に、かつ/または(例えば発電機を動かしている電動機によって)電気機械的に変換することができる。電池システムは、例えば、電気自動車またはハイブリッド電気自動車を動かすための電源として用いることができる。ひとつの実施形態においては、電池は、電気自動車またはハイブリッド電気自動車に動力を供給するための電動機および/または発電機に電気的に接続されている。
【0100】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
[実施例]
実施例1
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0101】
(a)5.6×10のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂68.6重量%と、(b)1.9×10のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂1.4重量%と、(c)1.1×10のMw、114J/gの融解熱および5.0のMWDを有するポリプロピレン樹脂30重量%とを乾燥混合することにより、第1のポリオレフィン組成物を調製する。パーセンテージは第1のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0102】
得られた第1のポリオレフィン組成物35重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第1の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)65.0重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリオレフィン溶液を作製する。重量パーセントは第1のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは、210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0103】
上記と同様の方法で、(a)5.6×10のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂9.0重量%と、(b)1.9×10のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂5.0重量%とを乾燥混合することにより、第2のポリオレフィン溶液を調製する。パーセンテージは、第2のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0104】
得られた第2のポリオレフィン組成物35.0重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第2の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)65.0重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリオレフィン溶液を作製する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは、210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0105】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が45/10/45である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。押出物を、20.0℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、119℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、MDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させて乾燥膜を製造する。次いで乾燥膜を乾燥延伸する。乾燥延伸の前には、乾燥膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。まず乾燥膜を、115℃の温度(「MD延伸温度」)にさらしながら1.4倍の倍率にMDに乾燥延伸し、第2の乾燥長さを得る。膜の幅(TD)は、MD乾燥延伸中、最初の乾燥幅とほぼ等しいままである。次いで乾燥膜を、130℃の温度(「TD延伸温度」)にさらしながら、1.2倍の倍率にTDに乾燥延伸する(第2の乾燥幅が得られる)。膜の長さ(MD)は、TD乾燥延伸中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。TD乾燥延伸に続いて、膜を、130.0℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.0倍の最終倍率へ制御された幅の縮小(TD)を受ける。最終倍率は、乾燥延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。換言すれば、幅の縮小は、膜の最終幅が膜の最初の乾燥幅と実質的に同じになるまで行われる。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間130.0℃の温度(「熱処理温度」)にさらしながら熱処理して、最終の多層微多孔膜が製造される。
実施例2
【0106】
第1のポリオレフィン組成物が、70重量%の第1のポリエチレン樹脂および30重量%のポリプロピレン樹脂を含み、第2のポリエチレン樹脂は加えられず、二軸延伸温度が118.5℃であり、MD乾燥延伸が、120.0℃のMD延伸温度で1.25の倍率まで行われることを除き、実施例1を繰り返す。
比較例1
【0107】
第1のポリオレフィン組成物が、80重量%の第1のポリエチレン樹脂、20.0重量%の第2のポリエチレン樹脂を含み、第2のポリオレフィン溶液は存在せず、第1のポリオレフィン溶液が、20.0重量%の第1のポリオレフィン組成物および80.0重量%の流動パラフィンを含み、押出物が層状押出物ではない、すなわち押出物が、第1のポリオレフィン溶液から作製される単層を有し、二軸延伸温度が115.0℃であり、MDおよびTDへの乾燥延伸は行わず、幅縮小の工程は行わず、熱処理温度が127.0℃であることを除き、実施例1を繰り返す。
比較例2
【0108】
二軸延伸温度が117.0℃であり、MD乾燥延伸は行わず、TD乾燥延伸が、126.0℃のTD延伸温度で1.4倍の倍率まで行われ、幅縮小の工程は行わず、熱処理温度が126.0℃であることを除き、実施例2を繰り返す。
比較例3
【0109】
MD乾燥延伸は行わず、乾燥延伸開始前の最初の乾燥幅を基準として1.2倍の倍率までTD幅縮小を行い、TD延伸温度、幅縮小温度および熱処理温度が全て126.0℃であることを除き、比較例2を繰り返す。
比較例4
【0110】
ポリプロピレン樹脂が、1.56×10のMw、78.4J/gの融解熱および3.2のMWDを有することを除き、比較例2を繰り返す。
比較例5
【0111】
第1のポリオレフィン組成物が、(a)49.0重量%の第1のポリエチレン樹脂、(b)1.0重量%の第2のポリエチレンおよび(c)50.0重量%のポリプロピレン樹脂を含み、第2のポリオレフィン樹脂が、(a)70.0重量%の第1のポリエチレン樹脂および(b)30.0重量%の第2のポリエチレン樹脂を含み、第1のポリオレフィン溶液が、25.0重量%の第1のポリオレフィン組成物および75.0重量%の流動パラフィンを含み、第2のポリオレフィン溶液が、28.5重量%の第2のポリオレフィン組成物および71.5重量%の流動パラフィンを含み、第1および第2のポリオレフィン溶液を押し出して第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液の層厚さ比が10/80/10である層状押出物を製造し、TD延伸温度、幅縮小温度および熱処理温度が全て128.0℃であることを除き、実施例1を繰り返す。
比較例6
【0112】
第1のポリオレフィン組成物の第1のポリオレフィン組成物が、30.0重量%の第1のポリエチレン樹脂および70.0重量%のポリプロピレン樹脂を含み、二軸延伸温度が117.5℃であり、MD乾燥延伸倍率が1.3倍でMD延伸温度が80℃であり、制限された幅縮小が、乾燥延伸開始時の膜の大きさを基準として1.1倍の倍率まで行われ、TD延伸温度、幅縮小温度および熱処理温度が全て130.0℃であることを除き、実施例2を繰り返す。
【0113】
実施例および比較例の多層微多孔膜の特性を表1に示す。
【表1】

【0114】
表1から、本発明の微多孔膜は、他の熱特性および機械的特性とよくバランスの取れた、0.5%以下の105℃におけるTD熱収縮率等の、バランスの良い重要な特性を示していることがわかる。
【0115】
一方、比較例の微多孔膜生成物は、より劣る105℃における熱収縮率、および全体的により高い透気度(比較例1)、より高い熱圧縮後の透気度、より低いメルトダウン温度(比較例1)、およびより高い、約140℃の溶融状態における熱機械分析(TMA)最大TD熱収縮率を示している。比較例5および6は105℃におけるTD熱収縮率が比較的高いが、それは、これらの膜が、40重量%超のポリプロピレンを含有するコア層を有するためであると考えられる。
【0116】
バランスの良い特性を有する本発明の多層微多孔膜、およびかかる多層微多孔膜の電池セパレータとしての使用により、優れた安全性、耐熱性、保持特性および生産性を有する電池が提供される。
【0117】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0118】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0119】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mw>0.9×10のポリプロピレンを含む微多孔膜であって、少なくとも1つの平面方向への130℃熱収縮率が8.0%以下、および正規化透気度が4.0×10秒/100cm/20μm以下である微多孔膜。
【請求項2】
膜のTD105℃熱収縮率が0.5%以下である請求項1に記載の膜。
【請求項3】
膜のTD105℃熱収縮率が0.25%以下である請求項1に記載の膜。
【請求項4】
膜が、溶融状態におけるMD最大収縮率25.0%以下、および溶融状態におけるTD最大収縮率11.0%以下を有する請求項1〜3のいずれかに記載の膜。
【請求項5】
膜が、第1および第3の層ならびに第1の層と第3の層の間に位置する第2の層を含み、
(a)第1の層が、第1の層の重量を基準としてMw>1.0×10のポリエチレンを1.0重量%〜10.0重量%含み、
(b)第3の層が、第3の層の重量を基準としてMw>1.0×10のポリエチレンを1.0重量%〜10.0重量%含み;かつ
(c)第2の層が、第2の層の重量を基準として40重量%以下のポリプロピレンを含む請求項1〜4のいずれかに記載の膜。
【請求項6】
第1の層が、第1の層の重量を基準としてMw≦1.0×10のポリエチレンを90.0重量%〜99.0重量%の範囲の量でさらに含み、第3の層が、第3の層の重量を基準としてMw≦1.0×10のポリエチレンを90.0重量%〜99.0重量%の範囲の量でさらに含み、かつ第2の層がポリエチレンをさらに含む請求項5に記載の膜。
【請求項7】
第2の層が、重量パーセントは第2の層の重量を基準として、ポリプロピレンを5.0重量%〜40.0重量%、Mw>1.0×10のポリエチレンを0重量%〜10.0重量%、およびMw≦1.0×10のポリエチレンを60.0重量%〜95.0重量%含む請求項5または6に記載の膜。
【請求項8】
(a)第2の層が、第1の層および第3の層と平面接触しており、
(b)膜の全厚さが、3.0μm〜200.0μmの範囲であり、
(c)第1および第3の層が実質的に同じポリエチレンを含み、第1の層中のポリエチレンの量が第3の層中のポリエチレンの量と同じであり、
(d)第2の層が、膜の全厚さの5.0%〜15.0%の厚さを有し、かつ
(e)第1および第3の層が実質的に同じ厚さを有し、第1および第3の層の厚さがそれぞれ膜の全厚さの42.5%〜47.5%の範囲である請求項5〜7のいずれかに記載の膜。
【請求項9】
膜が、(1)150.0秒/100cm/20um〜390.0秒/100cm/20μmの範囲の正規化透過度、(2)25%以上の空孔率、(3)2.0×10mN/20μm以上の正規化突刺強度、(4)9.0×10kPa以上のMD引張強さ、(5)7.5×10kPa以上のTD引張強さ(6)50%以上のMD引張伸度、(7)100%以上のTD引張伸度、(8)170.0℃以上のメルトダウン温度、(9)140.0℃以下のシャットダウン温度、(10)20.0%以下の熱圧縮後厚さ変動率、および(11)1.0×10秒/100cm以下の熱圧縮後透気度の1以上を有する請求項1〜4のいずれかに記載の膜。
【請求項10】
ポリプロピレンのΔHmが113J/g〜119J/gの範囲である請求項1〜9のいずれかに記載の膜。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(a)第1の層が第1のポリオレフィンおよび少なくとも第1の希釈剤を含み、第2の層が第2のポリオレフィンおよび少なくとも第2の希釈剤を含み、第2のポリオレフィンが第2のポリオレフィンの重量を基準として1.0重量%〜40.0重量%の範囲の量でポリプロピレンを含み、ポリプロピレンが0.9×10超のMwおよび100.0J/g以上のΔHmを有する、少なくとも第1および第2の層を含む多層層押出物をMDまたはTDの少なくとも1方向に延伸し、;
(b)延伸押出物から、第1および第2の希釈剤の少なくとも一部を除去し、MDに沿った第1の長さおよびTDに沿った第1の幅を有する乾燥膜を製造し、;
(c)膜を、第1の長さから、約1.1〜約1.5の範囲の第1の倍率で第1の長さより長い第2の長さへMDに延伸し、かつ膜を、第1の幅から、約1.1〜約1.3の範囲の第2の倍率で第1の幅より広い第2の幅へTDに延伸し、;次いで
(d)第2の幅を、第1の幅から第1の幅の約1.1倍までの範囲である第3の幅に縮小させる工程、
を含む微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
工程(b)の後にいずれかの揮発性種の少なくとも一部を押出物から除去する工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)第1のポリオレフィンが、重量パーセントは第1のポリオレフィンの重量を基準として、90.0重量%〜99.0重量%の範囲の量の第1のポリエチレンおよび約1.0重量%〜10.0重量%の範囲の量の第2のポリエチレンを含み、第1のポリエチレンが1.0×10以下のMwを有し、第2のポリエチレンが1.0×10超の重量平均分子量を有し、
(ii)第2のポリオレフィンが、重量パーセントは第2のポリオレフィンの重量を基準として、5重量%〜40重量%の範囲の量のポリプロピレンを含み、かつさらに(i)60.0重量%〜90.0重量%の範囲の量のMw≦1.0×10の第1のポリエチレン、および(ii)0.0重量%〜10.0重量%の範囲の量のMw>1.0×10の第2のポリエチレンを含み、
(iii)第1の希釈剤が、第1のポリオレフィンと第1の希釈剤とを合わせた重量を基準として、約25.0重量%〜約99.0重量%の範囲の量で押出物の第1の層中に存在し、かつ
(iv)第2の希釈剤が、第2のポリオレフィンと第2の希釈剤とを合わせた重量を基準として、約25.0重量%〜約99.0重量%の範囲の量で押出物の第2の層中に存在する請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
押出物が、第3のポリオレフィンを含む第3の層をさらに含み、第3のポリオレフィンが、重量パーセントは第3のポリオレフィンの重量を基準として、90.0重量%〜99.0重量%の範囲の量の第1のポリエチレンおよび約1.0重量%〜10.0重量%の範囲の量の第2のポリエチレンを含み、第1のポリエチレンが1.0×10以下のMwを有し、第2のポリエチレンが1.0×10超のMwを有する請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
(i)押出物が三層押出物であり、
(ii)第2の層が、第1の層と第3の層の間に位置し、かつ第1および第3の層と平面接触しており、
(iii)第1のポリオレフィンと第2のポリオレフィンが同じポリオレフィンであり、
(iv)第2の層が、押出物の全厚さの5.0%〜15.0%の厚さを有し、かつ
(v)第1および第3の層が同じ厚さを有し、第1および第3の層の厚さがそれぞれ押出物の全厚さの42.5%〜47.5%の範囲である請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
第1、第2および第3の希釈剤が、ノナン、デカン、デカリン、および流動パラフィンの1以上から独立して選択される請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(a)の延伸が、押出物をMDおよびTDに同時に延伸することにより行われる請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(c)中、MD延伸がTD延伸の前に行われ、TD延伸が1.15〜1.25の範囲の第2の倍率まで行われ、第1の倍率が第2の倍率より大きく、
(i)MD延伸が、Tcd−30.0℃〜およそTm−10.0℃の範囲の第1の温度に膜をさらしながら行われ、
(ii)TD延伸が、第1の温度より高いがTmよりは低い第2の温度に膜をさらしながら行われ、
工程(d)の縮小が、第2の温度以上の温度に膜をさらしながら行われる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第3の幅が第1の幅の1.0〜1.05倍の範囲である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1の倍率が1.1〜1.4の範囲である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
負極、正極、電解質、およびMw>0.9×10のポリプロピレンを含む多層微多孔膜を含む電池であって、膜が、少なくとも1つの平面方向への130℃熱収縮率8.0%以下、および正規化透気度4.0×10秒/100cm/20μm以下を有し、少なくとも負極と正極が該多層微多孔膜によって隔てられている電池。
【請求項22】
電解質がリチウムイオンを含み、電池が二次電池である請求項21に記載の電池。
【請求項23】
電気的、電気化学的、かつ/または電気機械的に電池に接続されて電池システムを形成する抵抗性成分および/または反応性成分の1以上をさらに含み、電池が該成分の電力源または電力集積装置である請求項22または21に記載の電池。
【請求項24】
少なくとも1つの成分が、電気自動車またはハイブリッド電気自動車を動かすための手段を含む請求項23に記載の電池システム。
【請求項25】
手段が、電動機および/または電動機を含み、かつ電池が電動機に電気的に接続されている請求項23または24に記載の電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−508795(P2012−508795A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520255(P2011−520255)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/JP2009/069143
【国際公開番号】WO2010/055834
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム合同会社 (31)
【Fターム(参考)】