説明

微小孔性膜及びその製造及び使用

本発明は高い透過性及び耐熱性だけでなく、優れた電気化学的安定性と、低い熱収縮率を含む重要な性質を好適なバランスで有する多層微小孔性膜に関する。本発明の多層微小孔性膜は1つ以上の微小孔性膜第二層を第二層の片面又は両面に微小孔性膜第一層を石勝して製造する。本発明は更に、この多層微小孔性膜を含むバッテリーセパレーター及び/又はこのバッテリーセパレーターを含むバッテリーにも関する。

選択図なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリーセパレーターとして用いた時に、高い透過性及び耐熱性だけでなく、優れた電気化学的安定性と、低い熱収縮率を含む重要な性質を好適なバランスで有する多層微小孔性膜に関する。この多層微小孔性膜は良好な機械的強度、電解液吸収、及び圧縮耐性性質を有する。本発明はそのような多層微小孔性膜を製造する方法、そのような微小孔性膜を含むバッテリーセパレーター、及びそのようなバッテリーセパレーターを用いたバッテリーにも関する。
【背景技術】
【0002】
微小孔性ポリオレフィン膜は一次バッテリー、並びにリチウムイオン二次バッテリー、リチウム−ポリマー二次バッテリー、ニッケル−水素二次バッテリー、ニッケル−カドミウム二次バッテリー、ニッケル−亜鉛二次バッテリー、銀−亜鉛二次バッテリー等の二次バッテリーのセパレーターとして有用である。微小孔性ポリオレフィン膜がバッテリーセパレーターとして、特にリチウムイオンバッテリーに用いられたときに、この膜の性能は、バッテリーの性質、生産性、及び安全性に有意に影響を与える。即ち、この微小孔性ポリオレフィン膜は、機械的性質、熱安定性、好適な透過性、寸法安定性、シャットダウン性質、メルトダウン性質を有していなければならない。そのようなバッテリーは、特にバッテリーが製造、チャージ、再チャージ、及び/又は貯蔵の間に高温に曝されたときに、改善されたバッテリーの安全性を示すように、比較的低いシャットダウン温度と、比較的高いメルトダウン温度を有していなければならない。セパレーターの透過性を改善すると、通常、バッテリーの貯蔵性質も改善する。高いシャットダウン速度はバッテリーの安全性、特にバッテリーがオーバーチャージで使用されたときに、好ましい。バッテリーの電極の凹凸がセパレーターを傷つけて、製造の間にショートすることがあるので、ピン破裂強度を改善することも好ましい。コア上にフィルムを巻くといに、厚みのばらつきが製造を困難にすることから、厚みの均一性を改善することも好ましい。厚みにばらつきがあると、バッテリー中に非等方性温度のばらつきが生じて、セパレーターが相対的に薄いところに、バッテリーホットスポット(高温の領域)を生じる。
【0003】
通常、ポリエチレン(即ち、膜がポリエチレン、又は主にポリエチレンからなる)のみを含む微細孔性膜は低いメルトダウン温度を有し、ポリプロピレンのみを含む微細孔性膜は高いシャットダウン温度を有する。即ち、ポリエチレン及びポリプロピレンを主成分として含む微細孔性膜が改善されたバッテリーセパレーターとして提案されてきた。それゆえ、ポリエチレンレジン及びポリプロピレンレジンから形成された微細孔性膜及びポリエチレンとポリプロピレンとを含む多層微細孔性膜を提供することが望まれている。
【0004】
JP7−216118Aは好適なシャットダウン性質及び機械的強度を有するバッテリーセパレーターを開示する。この出願公報は2つの細孔性層を有する多層性細孔性フィルムを含むバッテリーセパレーターを開示する。この両方の層はポリエチレン及びポリプロピレンを含むことができるが、相対量が異なる。例えば、第一の微細孔性層においてポリエチレンのパーゼンテージは、ポリエチレンとポリプロピレンの重量に基づいて、0乃至20%であり、第二微細孔性層では21乃至60wt%である。両微細孔性層におけるポリエチレンの総量はこの多層微細孔性膜に重量に基づいて、2乃至40wt%である。
【0005】
JP10−195215Aは許容可能なシャットダウン及びピン引き抜き性質を有する比較的薄いバッテリーセパレーターを開示する。「ピン引き抜き」とはドーナツ型の積層体を形成する、ピンの周りに巻きつけられた、セパレーター、陽極シート、及び陰極シート、の積層体からピンを引き抜く容易さを意味する。この多層細孔性フィルムはポリエチレン及びポリプロピレンを含むが相対量が異なる。内部層のポリエチレンのパーゼンテージは、ポリエチレンとポリプロピレンの総重量に基づいて、0乃至20wt%であり、外部層は61乃至100wt%である。
【0006】
JP10−279718Aはバッテリーがオーバーチャージしたときに、リチウムバッテリーにおいて温度上昇を起こしにくいセパレーターを開示する。このセパレーターはポリエチレンとポリプロピレンとから作られた多層性の細孔性フィルムから作られ、各層におけるポリエチレンとポリプロピレンの相対量が異なる。このフィルムはポリエチレン含量の少ない層の重量に基づいて、0乃至20wt%のポリエチレンを含む、ポリエチレンを低含有層を有する。第二の層はメルトインデックスが3以上のポリエチレンを0.5%以上含み、この層の重量に基づいて、61乃至100wt%のポリエチレン含量の、ポリエチレン高含有層である。
【0007】
微細孔性ポリオレフィン膜の透過性、ピン破裂強度、及びシャットダウン速度を改善することが望まれている。更に、微細孔性ポリマーオレフィン膜の厚みを改善して、バッテリーセパレーターとして用いたときに、ショートの可能性を減らすことも望まれている。特に、バッテリーセパレーターとして用いたときに、高い透過性及び熱耐性だけでなく、優れた電気化学的安定性及び低い熱収縮率を有する微細孔性膜を提供することが好ましい。
【発明の概要】
【0008】
1つの態様において、本発明はポリエチレン及びポリプロピレンを含み、3500mN以上のピン破裂強度、700秒/cm以下の熱圧縮後の空気透過性、及び20%以下の最大収縮率を有する多層微細孔性膜に関する。
【0009】
他の態様において、本発明は多層微細孔性膜により形成されたバッテリーセパレーターに関する。他の態様において、本発明はそのような多層微細孔性膜から形成されたセパレーターを含むバッテリーに関する。
【0010】
1つの態様において、本発明は第一層及び第二層を含む多層微細孔性膜に関する。この第一層は第一ポリオレフィン溶液から製造された第一層物質を含む。第二層は第二ポリオレフィン溶液から製造される第二層物質を含む。この多層微細孔性膜は即ち、2つの層を含み、任意で追加的な層を含むこともできる。例えば、この多層微細孔性膜は第一層に面接触している第二層に面接触している第三の層を更に含んでいてもよい。別の言葉で言えば、この第二層は第一層及び第三層の間にある中間層である。この態様では、通常、第一及び第三層は第一層物質を含み、第二層は第二層物質を含む。更なる他の態様において、この多層微細孔性膜は(第一層物質を含む)第一層が中間層となり、第二層と第三層が膜の外層(又はスキン)となる。この態様において、第二及び第三層は第二層物質を含むことができる。他の態様において、この膜は第一層物質を含む1つ以上の層と、第二層物質を含む1つ以上の第二層を含み、例えば、第二層物質を含む層の片面又は両面上に第一層物質がある。ここで、第一層物質はポリエチレンとポリプロピレンを含み、第二物質層はポリエチレンを含む。即ち、1つの態様において、第一層物質を含む少なくとも1つの層と第二層物質を含む少なくとも1つの層を含む。ここで、(i)第一層物質は、該物質の重量に基づいて、約30乃至約65%、例えば、約35乃至約60%の第一ポリエチレン、約5乃至約15%、例えば、約5乃至約12%の第二ポリエチレン、約20乃至約40%、例えば、約25乃至約40%の第一ポリプロピレン、及び約10乃至約30%、例えば、約10乃至約25%の第二ポリプロピレンを含む。(ii)第二層物質は、該物質の重量に基づいて、約60乃至約90%、例えば、約70%乃至85%の第一ポリエチレン及び約10乃至約40%、例えば、約15乃至約30%の第二ポリエチレンを含む。
【0011】
1つの態様において、第一層物質は(a)約30乃至約65%、例えば、約35%乃至約60%の、1.0x10未満、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲の重量平均分子量(Mw/Mnで定義されるMw)、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDを有する第一ポリエチレン、(b)約5乃至約15%、例えば、約5%乃至約12%の、1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至約5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約4乃至約6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレン、(c)約20乃至約40%、例えば、約25乃至約40%の、0.8x10以上、例えば、約0.9x10乃至約2x10の範囲のMw、100以下、例えば、約1.5乃至約10、又は約2乃至約6の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、105J/g以上乃至125J/g以下の範囲、又は110J/g乃至120J/gの範囲の融解熱(△Hm)を有する第一ポリプロピレン、及び(d)約10乃至約30%、例えば、約10乃至約25%の、0.8x10未満、例えば、4x10乃至約7.5x10の範囲のmW、100以下、約2乃至約20の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、約90以上105J/g未満の△Hmを有する第二ポリプロピレンを含む。パーゼンテージは第一層物質の重量に基づいている。第二層物質は(a)約60乃至約90%。例えば、約70乃至約85%の、1.0x10未満、例えば、約4.5x105乃至約6.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDの第一ポリエチレン、及び(b)約10乃至約40%、例えば、約15乃至約30%の、1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至のMw、及び約2乃至約10、又は約4乃至約6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンを含む。パーセンテージは第二ポリエチレンの重量に基づく。
【0012】
本発明の更なる態様において、本発明の多層微細孔性膜は第一層物質を含む1つ以上の層と、第二層物質を含む1つ以上の層とを、例えば、共押出しにより、積層させる工程を含む方法により製造される。第一層物質を含む層は、第二層物質を含む層の片面又は両面上に積層される。第一層物質は(1)第一ポリオレフィン組成物及び少なくとも1つの希釈剤(又は溶媒、例えば、膜形成溶媒)を組み合わせて第一混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を得る工程、第一ポリオレフィン組成物は、第一ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、(a)約30乃至約65%、例えば、約35乃至約60%の1.0x10未満、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲の重量平均分子量(Mw)、100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲の分子量分布(MWD)、を有する第一ポリエチレンレジン、(b)約5乃至約15%、例えば、約5乃至約12%の1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至約5x10のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンレジン、(c)約20乃至約40%の、例えば、約25乃至約40%の、0.8x10以上、例えば、0.9x10乃至2x10の範囲のMw、100以下、例えば、約1.5乃至約10、又は約2乃至約6の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、105J/g以上125J/g以下、又は110J/g乃至120J/gの△Hm、を有する第一ポリプロピレンレジン、及び(d)約10乃至約30%、例えば、約10乃至25%の0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7.5x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約20の範囲のMWD、及び80J/g以上、約90J/g以上105J/g未満の△Hmを有する第二ポリプロピレンレジンを含む、(2)この第一混合物をダイを通じて押出し成形をして、押出し成形物を製造する工程、(3)この押出し成形物を冷却して、冷却した押出し成形物を製造する工程、(4)少なくとも1つの方向に冷却した押出し成形物を延伸して、延伸シートを形成する工程、(5)この延伸シートから希釈剤又は溶媒の少なくとも一部分を除去して第一膜を形成する工程、(6)この膜を少なくとも1方向に高い延伸倍率で延伸して延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(6)の膜生成物を熱硬化して第一層物質を含む第一微細孔性層を形成する工程を含む。第二層物質は(1)第二ポリオレフィン組成物及び少なくとも1つの希釈剤(又は溶媒、例えば、膜形成溶媒)を組み合わせて第二混合物(例えば、第二ポリオレフィン溶液)を得る工程、第二ポリオレフィン組成物は、第二ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、(a)約60乃至約90%、例えば、約70乃至約85%の1.0x10未満、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWD、を有する第一ポリエチレンレジン、並びに(b)約10乃至約40wt%、例えば、約15乃至30%の、1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至5x10の範囲のMw及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約4乃至約6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含む、(2)この第二混合物をダイを通じて押出し成形をして、押出し成形物を製造する工程、(3)この押出し成形物を冷却して、冷却した押出し成形物を製造する工程、(4)少なくとも1つの方向に押出し成形して冷却した押出し成形物を延伸して、延伸シートを形成する工程、(5)この延伸シートから希釈剤又は溶媒の少なくとも一部分を除去して膜を形成する工程、(6)この膜を少なくとも1方向に、高い倍率で延伸して延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(6)の膜生成物を熱硬化して第二層物質を含む第二微細孔性層を形成する工程を含む。多層膜を形成するために、第一層物質を含む膜層(即ち、第一膜)と第二層物質を含む膜層(即ち、第二膜)を前述の工程(7)の下流で、積層する。又は工程(3)乃至(7)の間のいずれかの工程でお互いに積層される。又は工程(2)において分離ダイを通じて、共押出し、即ち、同時に押出しされる。第一微細孔性層物質を含む層を「a」とし、第二微細孔性層物質を含む層を「b」とすると、多層膜は、例えば、a/b、a/b/a、b/a/b、a/b/a/b、b/a/b/a/b、a/b/a/b/a等の形態をとる。第二積層物質を含む層の厚みの合計に対する、第一層物質を含む組成物の厚みの合計の比は約10/90乃至約75/25、例えば、約20/80乃至約50/50である。
【0013】
1つの態様において、第一層物質を含む層が第二層物質を含む層と、例えば、共押出しにより積層される場合、本発明の多層微細孔性膜は、(1a)第一ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤又は溶媒、例えば、膜形成溶媒と組み合わせて、第一混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を形成する工程、この第一ポリオレフィン組成物は、第一ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、(a)約30乃至約65%、例えば、約35乃至約60%の1.0x10未満、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、100以下、例えば、約3乃至約5の範囲のMWD、を有する第一ポリエチレンレジン、(b)約5乃至約15%、例えば、約5乃至約12%の1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至約5x10のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンレジン、(c)約20乃至約40%の、例えば、約25乃至約40の、0.8x10以下、例えば、0.9x10乃至2x10の範囲のMw、100以下、例えば、約1.5乃至約10、又は約2乃至約6の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、105J/g以上125J/g以下の△Hm、を有する第一ポリプロピレンレジン、及び(d)約10乃至約30%、例えば、約10乃至25%の、0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7.5x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約20の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、約90J/g以上105J/g以下の△Hmを有する第二ポリプロピレンレジンを含む、(1b)第二ポリオレフィン組成物を少なくとも1つの希釈剤、例えば、膜形成溶媒と組み合わせて、第二混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を形成する工程、この第二ポリオレフィン組成物は第二ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、(a)約60乃至約90%、例えば、約70乃至約85%の、1.0x10未満、例えば、4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWD、を有する第一ポリエチレンレジン、並びに(b)約10乃至約40wt%、例えば、約15乃至30%の、1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至5x10の範囲のMw及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約4乃至約6の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを含む、(2)第一及び第二混合物をダイを通じて同時に押出し成形をして、お互いに面接合している第一及び第二押出し成形物を製造する工程、(3)第一及び第二押出し成形物を、例えば、同時に冷却して、ポリオレフィン濃度の高い冷却押出し成形物を形成する工程、(4)冷却された押出し成形物を少なくとも1方向に、例えば、同時に高い延伸温度で延伸して、第一層物質及び第二層物質を含む延伸シートを形成する工程、(5)延伸シートから希釈剤の少なくとも一部分を除去して、第一層物質と第二層物質とを含む膜を形成する工程、(6)少なくとも1つの方向に高い倍率で膜を延伸して、第一層物質を含む第一層及び第二層物質を含む第二層を含む延伸された膜を形成する工程、及び(7)工程(6)で延伸された膜生成物を熱硬化して、第一微細孔性層及び第二微細孔性層を含む微細孔性膜を形成する工程。
【0014】
もちろん、共押出しを用いて、3層以上の多層膜を形成することができる。この膜は、1つ以上の第一層物質を含む層及び1つ以上の第二層物質を含む層を含む。このことは、例えば、本発明の方法の工程(2)のようにそれぞれのポリオレフィン組成物を含むポリオレフィン溶液を任意に押出し成形して、お互いに面接合している、押出し成形物とすることにより達成することができる。例えば、他のものに1つが面接合している押出し成形物は第一層及び第二層を含み、第一層、第二層、及び第三層を含み、又は第一層、第二層、第一層、及び第二層を含む場合がある。
【0015】
本発明は前述の任意の1つの態様における多層微細孔性膜により形成されたバッテリーセパレーターにも関する。
【0016】
本発明は前述の任意の代用における多層微細孔性膜により形成されたセパレーターを含むバッテリー及び例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車における動力源としてのバッテリーの使用にも関する。
【0017】
関連する態様において、本発明のこの多層微細孔性膜は以下に列挙する性質を、独立して、又は組み合わせて有している。
(1)第一ポリエチレンは4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw及び約3乃至約5の範囲のMWDを有する。
(2)第二ポリエチレンは1.1x10乃至約5x10の範囲のMw及び約4乃至約6の範囲のMWDを有する。
(3)第一ポリエチレンは1つ以上の高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐低密度ポリエチレン、又は直鎖低密度ポリエチレンから選択される。
(4)第一ポリエチレンは(i)エチレンホモポリマー、又は(ii)エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、及び1,9−デカジエンからなる群から選択される第三のαオレフィンとのコポリマーの少なくとも1つである。
(5)第二ポリチレンは超高分子量ポリエチレンである。
(6)第二ポリエチレンは(i)エチレンホモポリマー又は(ii)エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、及び1,9−デカジエンの1つ以上から選択される第三のαオレフィンとのコポリマーの少なくとも1つである。
(7)第一及び第二ポリプロピレンは(i)プロピレンホモポリマー又は(ii)プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、及び1,9−デカジエン等の1つ以上のαオレフィンとのコポリマーの少なくとも1つである。
(8)第一ポリプロピレンは約0.9x10乃至約2x10の範囲のMw及び約2乃至約6の範囲のMWD、110J/g乃至120J/gの△Hmを有する。
(9)第二ポリプロピレンは約4x10乃至約7.5x10の範囲のMw、約2乃至約20の範囲のMWD、及び約90J/g以上105J/g以下の△Hmを有する。
(10)本発明の多層微細孔性膜は2層、即ち、第一層物質からなるスキン層と第二層物質からなるコア層、からなる。
(11)多層微小孔性膜は3つの層、例えば、第一層物質を含む厚みT1の第一層、第一層物質を含み厚みT3の第三層、及び第二相物質を含みT2の厚みを有する第二(コア)層を有し、この第二相の(両)側にこの第一層及び第三層が反対に面接合している。
(12)この多層微小孔性膜は約25%乃至約80%の孔隙率を有する。
(13)多層微小孔性膜は約20秒/100cm乃至約400秒/100cm(20μmの厚みの微小孔性ポリオレフィン膜についての空気透過性)を有する。
(14)この多層微小孔性膜は少なくとも約3,000mN/20μm乃至約3,500mN/20μmのピン破裂強度を有している。
(15)この多層微小孔性膜は少なくとも約49,000kPa、好ましくは約60,000kPa、の引張強度を有している。
(16)この多層微小孔性膜は少なくとも約100%の引張伸びを有している。
(17)この多層微小孔性膜は約105℃で8時間この膜を維持した後で測定される縦方向及び横方向の熱収縮率が約12%以下である。
(18)この多層微小孔性膜は約20%を超えない厚い変化率を有する。
(19)この多層微小孔性膜は約140℃以下のシャットダウン温度を有する。
(20)この多層微小孔性膜は少なくとも約150℃のメルトダウン温度を有する。
(22)この多層微小孔性膜は約20%未満の溶融状態(約140℃)における最大収縮率を有する。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明は高い透過性及び熱耐性と、好適な機械的強度、圧縮耐性及び電気的安定性を維持しつつ、優れた電機化学的安定性及び低い熱収縮を含む重要な性質を好適なバランスで有している特定の多層微小孔性膜に関する。特に重なことは、バッテリーセパレーターとして用いた時に、本発明の多層微小孔性膜は好適な熱収縮率、メルトダウン温度、及び熱機械的性質、即ち、溶融状態における低い最大収縮率を有する。本発明のこの多層微小孔性膜は1つ以上の微小孔性膜第一層と1つ以上の微小孔性膜第二層を第一層の両側に、共押出し等により積層させて製造する。この第一層は、通常、第一層物質を含むか、第一層物質からなる。第二層は、通常、第二層物質を含むが第二層物質からなる。膜が3つ以上の層を含む場合、3層、4層等は第一及び第二層物質のいずれかを含み、又はいずれかからなり、又は主にいずれかからなっている。即ち、1つの態様において、本発明は、透過性、ピン破裂強度、シャットダウン温度、シャットダウン速度、メルトダウン温度、及び厚みの均一性を好適なバランスで有しており、更に高められた電気化学的安定性及び低い熱収縮率を有する多層微小孔性膜に関する。他の態様において、本発明は、この多層微小孔性膜を製造する方法に関する。本明細書の文脈上の「好適バランス」の意味は、膜の特定の性質を改善しても(例えば電気化学的安定性及び低い熱収縮率)、他の膜の性質(例えば、透過性)が好ましくない範囲までに損なわれないことを意味する。
[1]多層微小孔性膜の組成及び構造
【0019】
1つの態様において、この多層微小孔性膜は2つの層を含む。この第一層は第一層物質を含み、この第二層は第二層物質を含む。例えば、この膜は膜の横方向及び縦方向に対しておよそ垂直な軸上から見たときに、平面の上層を有していいて、ボトム層はこの上層からは見えない。他の態様において、この多層微小孔性膜は3層以上の層を有している。ここにおいて、外層(「表面」又は「スキン」層とも呼ぶ)は第一微小孔性膜物質と第二微小孔性膜層物質を含む少なくとも1つの内部層を含む複数の微小孔性膜である。代替的に、この多層微小孔性膜は3層以上の層を含む。ここにおいて、外層(「表面」又は「スキン」層よも呼ぶ)は第二微小孔性膜を含む複数の層と、第一微小孔性膜物質を含む少なくとも1つの内部層を含む。関連する態様において、この多層微小孔性膜が2層を含む場合、この第一層は基本的に第一微小孔性膜物質を含み、第二層は基本的に第二微小孔性膜物質からなる。他の関連する態様において、この多層微小孔性膜3層以上である場合、外層は基本的に第一(又は第二)微小孔性層物質からなり、少なくとも1つの内部層は第二(又は第一)微小孔性層物質から基本的になる。
【0020】
この多層微小孔性膜が3層以上である場合、この膜は少なくとも1つの第一微小孔性層物質を含む1つの層と、少なくとも1つの第二微小孔性層物質を含む層を有する。
【0021】
第一層物質を含む膜の微細孔性層と第二層物質を含む膜の微細孔性層とは、通常第一ポリエチレンと第二ポリエチレンを含んでいる。第二層物質(文脈上「第二微細孔性層物質」ともいう)は第一層物質(文脈上「第一微細孔性層物質」ともいう)よりも多くのポリエチレンを含んでいる。多層微小孔性膜における第一ポリエチレンの総量は、多層微小孔性膜の重量基づいて、少なくとも37.5%である。第一微細孔性層物質は第一ポリプロピレン及び第二ポリプロピレンも含む。
【0022】
1つの態様において、第一微小孔性層物質は約30乃至約65%、例えば、約35乃至約60wt%の第一ポリエチレン、約5乃至約15%、例えば、約5乃至約12wt%の第二ポリエチレン、約20乃至約40%、例えば、約25乃至40wt%の第一ポリプロピレン、及び約10乃至約30%、例えば、約10乃至約25wt%の第二ポリプロピレンを含む。パーセンテージは第一層物質の重量に基づく。第一ポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)であり、第二ポリエチレンは例えば、超高密度ポリエチレン(UHMWPE)である。
【0023】
1つの態様において、第二微小孔性層物質は第一ポリエチレン及び第二ポリエチレンを含む。この第二微小孔性層物質は約60%乃至約90%、例えば、約70%乃至約85wt%の第一ポリエチレン、約10乃至約40%、例えば、約15乃至約30%の第二ポリエチレンを含む。パーセンテージは第二微小孔性層物質の重量に基づいている。第一微小孔性層物質と同様に、第一ポリエチレンは高密度ポリエチレン(HDPE)であり、第二ポリエチレンは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。
A.第一ポリエチレン
【0024】
第一ポリエチレンレジンは1.0x10未満、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDを有する。例えば、第一ポリエチレンは1つ以上のHPED、中密度ポリエチレン、分岐低密度ポリエチレン、又は直鎖低密度ポリエチレンでもよい。他の態様において、第一ポリエチレンは(i)エチレンホモポリマー、又は(ii)エチレンと第三のαオレフィンとのコポリマーの1つ以上でよい。この第三のαオレフィンはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等であり、通常エチレンの量よりも少ない量で含まれる。第三のオレフィンの量はコポリマー全体のモルを100%としたときに、10モル%未満でよい。そのようなコポリマーは一部位触媒を用いて製造することができる。
B.第二ポリエチレン
【0025】
第二ポリエチレンは1.0x10以上、例えば、1.1x10乃至5x10の範囲のMw及び100以下、例えば、約2乃至約20、又は約4乃至約6の範囲のMWDを有する。例えば、第二ポリエチレンはUHMWPEでよい。1つの態様において。第二ポリエチレンは(i)エチレンホモポリマー、又は(ii)エチレンと第三のαオレフィンとのコポリマーの少なくとも1つである。第三のαオレフィンの量はエチレンエチレンよりも少ない。この第三のαオレフィンは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、又はスチレンの1つ以上でよい。第三のαオレフィンの量はコポリマー全体のモル数を100%とすると、10モル%未満である。
C.第一ポリプロピレン
【0026】
本発明に用いる第一ポリプロピレンレジンは0.8x10以上、例えば、約0.9x10乃至約2x10の範囲のMw、100以下、例えば、約1.5乃至10、又は約2乃至約6の範囲のMWD、80J/g以上、例えば、105J/g以上125J/g以下、又は約110乃至約120J/gの範囲の(融解熱)△Hmを有する。第一ポリプロピレンは(i)プロピレンホモポリマー、又は(ii)プロピレンと第四のオレフィンとのコポリマーでよい。コポリマーはランダム又はブロックコポリマーの1つ以上でよい。第四のオレフィンは、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン等、及びのブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンでよい。このコポリマーにおける第四のオレフィンの量は好ましくは、熱耐性、圧縮耐性、熱収縮耐性等の微小孔性膜の性質を損なわない範囲であることが好ましい。例えば、この量はコポリマー全体のモル数を100%とすると、10モル%未満である。任意で、第一ポリプロピレンは1つ以上の以下の性質を有する。(i)このポリプロピレンはアイソタクチックである。(ii)このポリプロピレンは少なくとも約90J/g、例えば、約90乃至120J/gの融解熱を有する。(iii)このポリプロピレンは少なくとも約160℃の融解ピーク(第二融解)を有する。(iv)このポリプロピレンは約230℃の温度及び25秒−1の歪み速度で測定されるトルートン比が少なくとも約15である。及び/又は(v)このポリプロピレンは230℃の温度及び25秒−1の歪み速度で測定される延伸粘度が少なくとも50,000Pa秒である。
D.第二ポリプロピレン
【0027】
第二ポリプロピレンは、0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7.5x10、の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約20、例えば、約3乃至約15の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、90以上105J/gの△Hmを有する。第二ポリプロピレンは、例えば、(i)プロピレンホモポリマー、又は(ii)プロピレンと第四のオレフィンとのコポリマーの1つ以上でよい。このコポリマーはランダム又はブロックコポリマーでよい。第四のオレフィンはエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン等のαオレフィン及びブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンの1つ以上を含む。プロピレンコポリマー中の第五のオレフィンのパーゼンテージは熱耐性、圧縮耐性、熱収縮耐性等の微小孔性膜の性質を損なわない範囲であることが好ましい。この量はコポリマー全体のモル数を100%とすると、10モル%未満である。任意で、第二ポリプロピレンは1つ以上の以下の性質を有する。(i)このポリプロピレンはアイソタクチックである。(ii)このポリプロピレンは少なくとも約90J/g、例えば、約90乃至120J/gの融解熱を有する。(iii)このポリプロピレンは少なくとも約160℃の融点(第二融解)を有する。(iv)このポリプロピレンは約230℃の温度及び25秒−1の歪み速度で測定されるトルートン比が少なくとも約15である。及び/又は(v)このポリプロピレンは230℃の温度及び25秒−1の歪み速度で測定される延伸粘度が少なくとも50,000Pa秒である。任意で、第一ポリプロピレンは1つ以上の以下の性質を有する。(i)このポリプロピレンはアイソタクチックである。(ii)このポリプロピレンは少なくとも約90J/g、例えば、約90乃至120J/gの融解熱を有する。(iii)このポリプロピレンは少なくとも約160℃の融解ピーク(第二融解)を有する。(iv)このポリプロピレンは約230℃の温度及び25秒−1の歪み速度で測定されるトルートン比が少なくとも約15である。及び/又は(v)このポリプロピレンは230℃の温度及び25秒−1の歪み速度で測定される延伸粘度が少なくとも50,000Pa秒である。1つの態様において、この第二ポリプロピレンは第一ポリプロピレンの△Hm未満の△Hmを有する。
[2]材料
A.第一ポリオレフィン組成物に用いるポリマーレジン
【0028】
第一微小孔性層物質は第一ポリオレフィン溶液から製造される。この第一溶液は第一ポリオレフィン組成物及び希釈剤を含む。製造方法は微小孔性膜を形成することから、希釈剤は膜形成溶媒とも言われる。この第一ポリオレフィン組成物は第一ポリエチレンレジン、第二ポリエチレンレジン、第一ポリプロピレンレジン、及び第二ポリプロピレンレジンを含む。第一ポリオレフィン組成物中の第一ポリエチレンレジンの量は、第一ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、約30乃至約65%、例えば、約35乃至約60%である。第一ポリオレフィン組成物中の第二ポリエチレンレジンの量は、第一ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、約5乃至約15%、例えば、約5乃至約12%である。第一ポリオレフィン組成物中の第一ポリプロピレンの量は第一ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、約20乃至約40%、例えば、約25乃至約40%である。第一ポリオレフィン組成物中の第二ポリプロピレンの量は第一ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、約10乃至約30%、例えば、約10乃至約25%である。
【0029】
第一ポリエチレンレジンは1.0x10未満、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約3乃至約5の範囲のMWDを有する。本発明に用いる第一ポリエチレンレジンの非限定的な例としては、4.5x10乃至約6x10のMw及び3乃至5のMWDを有するものがある。第一ポリエチレンレジンはエチレンホモポリマー、又は少量、例えば、約5モル%の第三αオレフィンを含むような、エチレン/アルファオレフィンコポリマーでよい。この第三のαオレフィンは、エチレン以外のものであり、好ましくは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、又はスチレン又はこれらの組み合わせである。そのようなコポリマーは好ましくは一部位触媒を用いて製造される。
【0030】
第二ポリエチレンレジン(例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は1.0x10以上、例えば、約1.1x10乃至約5x10の範囲のMw、及び100以下、例えば、約2乃至約10、又は約4乃至約6の範囲のMWDを有する。本発明に用いる第二ポリエチレンレジンの非限定的な例としては、1.1x10乃至約5x10のMw及び4乃至6のMWDを有するものがある。第二ポリエチレンレジンはエチレンホモポリマー、又は少量、例えば、約5モル%の第三αオレフィンを含むような、エチレン/アルファオレフィンコポリマーでよい。この第三のαオレフィンは、エチレン以外のものであり、好ましくは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、又はスチレン又はこれらの組み合わせである。そのようなコポリマーは好ましくは一部位触媒を用いて製造される。重要ではないが、第一ポリエチレンは、例えば、ポリエチレン中に、10,000炭素当り2つ以上の末端不飽和を含む。この末端不飽和は、例えば、従来の赤外線スペクトル法又は核磁気共鳴法により測定することができる。MWDはMw対数平均分子量(Mn)の比に等しい。この微細孔性膜の製造に用いるポリマーのMWDは、例えば、多段階重合により制御することができる。ポリエチレン組成物のMWDはポリエチレン成分の分子量及び混合比で制御することができる。
【0031】
ポリエチレンのMw及びMnは、示差走査屈折率検出計(DRI)を装備した高温サイズ排除クロマトグラフ法又は「SEC」(GPCPL220、ポリマーラブラトリーズ)を用いて決定する。3つのPLゲル Mixed−Bカラム(ポリマーラボラトリーズより入手)を用いる。通常の流速は0.5cm/分であり、通常の注入容量は300mlであった。輸送ライン、カラム及び/又はDRI検出器は145℃に維持されたオーブン内に設置されている。測定は「Macromolecules、Vol.34、No.19、pp.6812−6820(2001)」に記載の手順で行った。
【0032】
用いたGPC溶媒は約100ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含むろ過されたアルドリッチ試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。SECに導入する前に、オンライン脱気装置を用いて、このTCBを脱気して用いた。ポリマー溶液をガラス容器内に乾燥ポリマーを入れ、前述のTCB溶媒の所定量を入れ、この混合物を撹拌しながら160℃で約2時間加熱して、調製した。UHMWPEの濃度は0.25乃至0.75mg/mlであった。GCPに注入する前に、SP260サンプルプレップステーション(ポリマーラボラトリーズより入手)の2μmのフィルターで、サンプル溶液をオフラインでろ過した。
【0033】
カラムセットの分離効率は、キャリブレーションカーブの作成に用いられる約580乃至約1,000,000のMpの範囲の17点のポリスチレン標準を用いて作成されたキャリブレーションカーブで較正した。このポリスチレン標準はポリマーラブラトリーズから入手した(Amherst、MA)。キャリブレーションカーブ(logMp対保持容量)を各PS標準のDRIシグナルにおけるピークでの保持容量を記録し、このデータセットに二次多項式を当てはめて作成した。サンプルを、ウェーブメトリクス社より入手したIGRO Proを用いて解析した。
ポリプロピレン
【0034】
本発明に用いる第一ポリプロピレンレジンは0.8x10以上、例えば、約0.9x10乃至約2x10の範囲のMw、100以下、例えば、約1.5乃至10、又は約2乃至6の範囲のMWD、及び80J/g以上、例えば、約105J/g以上125J/g以下、又は110以上120J/g以下の範囲の△Hmを有しする。この第一ポリプロピレンレジンは例えば、(i)プロピレンホモポリマー、又は(ii)プロピレンと第四のオレフィンとのコポリマーでよい。コポリマーはランダム又はブロックコポリマーでよい。第四のオレフィンは、プロピレン以外のものであり、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン等、及びのブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンである。このコポリマー中の第四のオレフィンの量は、熱耐性、圧縮耐性、熱収縮耐性等の微小孔性膜の性質を損なわない範囲であることが好ましい。例えば、コポリマー全体のモル数を100%とすると約10モル%未満、である。
【0035】
第二ポリプロピレンは、0.8x10未満、例えば、約4x10乃至約7.5x10、の範囲のMw、100以下、例えば、約2乃至約20、例えば、約3乃至約15の範囲のMWD、及び80J/g以上、90以上105J/g未満の△Hm、を有する。第二ポリプロピレンは、例えば、(i)プロピレンホモポリマー、又は(ii)プロピレンと第四のαオレフィンとのコポリマーでもよい。このコポリマーはランダム又はブロックコポリマーでよい。第四のオレフィンはプロピレン以外のものであり、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニルアセテート、メチルメタクリレート、スチレン等のαオレフィン及びブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンの1つ以上を含む。このコポリマー中の第五のオレフィンの量は熱耐性、圧縮耐性、熱収縮耐性等の微小孔性膜の性質を損なわない範囲であることが好ましい。例えば、コポリマー全体のモル数を100%とすると約10モル%未満、である。
【0036】
ポリプロピレンのMw、MWD、△HmをUS2008/0057389に記載の手順に従って測定した。該文献を参照により本明細書に援用する。
B.第二ポリオレフィン組成物に用いるポリマーレジン
【0037】
第二微小孔性層物質は第一ポリオレフィン溶液とは別に選択される第二ポリオレフィン溶液から製造される。この第二ポリオレフィン溶液は第二ポリオレフィン組成物と希釈剤とを含む。この希釈剤は第一ポリオレフィン溶液において用いるものと同じ希釈剤又は溶剤でよい。第一ポリオレフィン溶液の場合と同様に、この希釈剤は膜形成溶媒とも呼ばれる。この第二ポリオレフィン組成物は第一ポリエチレンレジン及び第二ポリエチレンレジンを含む。第二ポリオレフィン組成物中の第一ポリエチレンレジンの量は、第二ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、約60%乃至約90%、例えば、約70%乃至約85%である。第二ポリオレフィン組成物中の第二ポリエチレンレジンの量は、第二ポリオレフィン組成物の重量に基づいて、約10%乃至約40%、例えば、約15%乃至約30%である。
【0038】
第二ポリオレフィン組成物中に用いる第一及び第二ポリエチレンレジンは第一ポリオレフィン組成物で説明したものと同じでよいが、同じである必要はない。別の言葉で言えば、第二ポリマー組成物の第一ポリマーレジンは第一組成物の第一及び第二ポリマーレジンとは別に選択される。即ち、第二ポリオレフィン組成物の第一ポリエチレンレジンは第一ポリオレフィン組成物の第一ポリエチレンレジンのために説明されたポリエチレンレジンから選択される。同様に、第二ポリオレフィン組成物の第二ポリエチレンレジンは第一ポリオレフィン組成物の第二ポリエチレンレジンとして説明されたものの中から選択される。
C.他の成分
【0039】
前述の成分に加えて、ポリオレフィン溶液は(a)追加的なポリオレフィン及び/又は(b)約170℃以上の融点又はガラス転移温度(Tg)を有する熱耐性ポリマーレジンを微小孔性膜の性質を損なわない量で含んでいてもよい。そのような量は、ポリオレフィン組成物の容量に基づいて、10%以下である。
(a)追加的なポリオレフィン
【0040】
追加的なポリオレフィンは少なくとも1つの(a)ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、及び各成分が1x10乃至4x10のMwを有するエチレン/α−オレフィンコポリマー、並びに(b)1x10乃至1x10のMwを有するポリエチレンワックスでよい。ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、及びポリスプリットスチレンは、ホモポリマーに限らない、しかし、他のα−オレフィンを含むコポリマーでも良い。
(b)熱耐性レジン
【0041】
耐熱性レジンは例えば、(a)部分的に結晶化質である、約170℃以上の融点を有するアモルファスレジン、及び(b)約170℃以上のTgを有する完全なアモルファスレジン、及びこれらの混合物でよい。融点とTgはJISK7121の方法に従って、示差走査熱量計(DSC)を用いて決定する。耐熱性レジンの特定の例としては、ポリブチレンテレフタレート(融点:約160−230℃)、ポリエチレンテレフタレート(融点:約250乃至270℃)、等のポリエステル、フルオロレジン、ポリアミド(融点:215−265℃)、ポリアリーレンスルフィド、ポリイミド(Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド(Tg:280℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)、ポリカーボネート(融点220乃至240℃)、セルロースアセテート(融点:220℃)、セルローストリアセテート(融点:330℃)、ポリスルホン(Tg:190℃9、ポリエーテルイミド(融点:216℃)、等を含む。
[3]製造方法
【0042】
1つの態様において、本発明の多層微小孔性膜は2層の膜である。他の態様において、この多層微小孔性膜は3層である。説明を簡潔にするために、この微小孔性膜の製造は主に、2層又は3層の膜を用いて説明するが、当業者は少なくとも3層の膜を有する本発明の膜の製造に同様の技術を適用することができることを理解するだろう。そのような多層膜の非限定的な例は、膜のトップからボトムを見て、第一層物質を含む層、第二層物質を含む層及び第一層物質を含む層;第一層物質を含む層、第二層物質を含む層、第一層物質を含む層、及び第二層物質を含む層、等がある。
【0043】
1つの態様において、3層微小孔性膜は各サイド上に第一物質を有し、面接合している第二物質層を含む。1つの態様において、第二層は第二ポリオレフィン溶液から製造され、第一層は第一ポリオレフィン溶液から製造される。
【0044】
本発明の多層微小孔性膜におけるポリエチレンの総量はこの多層微小孔性膜の重量に基づいて、少なくとも約51wt%である。本発明の多層微小孔性膜を製造するための多くのオプションが存在する。
【0045】
本発明の多層微小孔性膜を製造する方法は、第一層物質を含む1つ以上の層と第二層物質を含む1つ以上の層とを、例えば、共押出しにより、積層させる工程を含む。この第一層物質を含む層は第二層物質を含む層の片面又は両面上に積層される。この第一層物質は、(1)第一ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせて第一混合物を形成する工程、(2)押出し成形器からダイを通じてこの第一混合物を押出し成形する工程、(3)押出し成形物を冷却して、冷却された押出し成形物を形成する工程、(4)冷却された押出し成形物を延伸して延伸シートを形成する工程、(5)延伸シートから少なくとも部分的に希釈剤を除去して、希釈剤を除去した膜を形成する工程、(6)希釈剤を除去した膜を延伸して延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(6)で形成された膜を熱硬化して微小孔性膜を形成する工程により製造される。この第二層物質は、(1)第二ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせて第二混合物を形成する工程、(2)押出し成形器からダイを通じてこの第二混合物を押出し成形する工程、(3)押出し成形物を冷却して、冷却された押出し成形物を形成する工程、(4)冷却された押出し成形物を延伸して延伸シートを形成する工程、(5)延伸シートから少なくとも部分的に希釈剤を除去して、希釈剤を除去した膜を形成する工程、(6)希釈剤を除去した膜を延伸して延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(6)で形成された膜を熱硬化して微小孔性膜を形成する工程により製造される。第一微小孔性層物質を含む層と第二微小孔性層物質を含む層は前記工程(7)の下流でお互いに積層されるか、又は工程(3)乃至(7)の間のいずれかの工程でお互いに積層される、又は工程(2)で分離ダイを通じて同時に押出し、つまり共押出しされる。第一層物質を含む層の厚みの和に対する第二層物質を含む総の厚みの和の比は、約10/90乃至約75/25、例えば、約20/80乃至約50/50の範囲である。この比は押出し成形器から押し出される第一ポリオレフィン溶液の量(重量による)を共押出しの間に押出し成形器から押し出される第二ポリオレフィン溶液の量を比較して計算することができる。
【0046】
第一及び第二層物質を含む層が共押出しによりお互いに積層される場合、本発明の多層微小孔性膜は(1a)第一ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせて第一混合物(例えば、ポリオレフィン溶液)を形成する工程、(1b)第二ポリオレフィン溶液と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせて第二混合物(例えば、第二ポリオレフィン溶液)を形成する工程、(2)第一及び第二混合物を同時にダイを通じて押出して、第一及び第二押出し押出し成形物がお互いに面接合するとうに押出し成形物を形成する工程、(3)この第一及び第二押出し成形物を同時に冷却して冷却された押出し成形物を形成する工程、(4)少なくとも1つの方向にこの冷却された押出し成形物を延伸して、第一層物質及び第二層物質を含む延伸シートを形成する工程、(5)この延伸シートから希釈剤の少なくとも一部分を除去して、第一層物質を含む第一層及び第二層物質を含む第二層を含む膜を形成する工程、(6)この膜を少なくとも1方向に延伸して、第一層物質及び第二層物質を含む延伸膜を形成する工程、及び(7)工程(6)で得られた膜を熱硬化して、第一層物質を含む第一層と第二層物質を含む第二層とを含む共押出しされた微小孔性膜を形成する工程により製造される。
【0047】
もちろん、共押出しは第一層物質を含む1つ以上の層、及び第二層物質を含む1つ以上の層を含んでいてもよく、それぞれのポリオレフィン組成物を含む任意の数のポリオレフィン溶液を押出し成形して、本発明の方法の工程(2)において、ダイを通じて各種ポリオレフィン溶液を同時に押出しして、それぞれがお互いに面接合する押出し成形物を形成するように行ってもよい。お互いに面接合している押出し成形物の例としては、第一層と第二層からなるもの、第一層と第二層と第一層とからなるもの、第一層と、第二層と、第一層と、第二層とからなるもの等がある。
1a.第一混合物の調整
【0048】
第一ポリレオフィン組成物は、前述のように、好適な第一希釈剤又は溶媒と乾燥ブレンド又は溶融ブレンドして、第一混合物を形成することができるポリオレフィンレジンを含む。任意で、この第一混合物は抗酸化剤、微細なシリケート粉末(細孔形成物質)等を多層微小孔性膜の所望の性質を有意に損なわない濃度で含むことができる。
【0049】
第一希釈剤は室温で液体のものである。理論又はモデルに限定することを意図するものではないが、液体希釈剤又は溶媒を用いて第一ポリオレフィン組成物を形成することは、ゲル様シートを相対的に高い倍率で延伸することを可能にすると信じられている。1つの態様において、この第一希釈剤又は溶媒は、例えば、ノネン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、液体パラフィン、前述の炭化水素に匹敵する沸点を有するミネラルオイル蒸留物、希釈ナフタレン、ジオクチルナフタレン等の室温で液体のナフタレン等の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素である。安定な液体溶媒含量の多層のゲル様シートを得るためには、液体パラフィンのような不揮発性溶媒を単独、又は他の溶媒と組み合わせて用いることが好ましい。任意で、溶融ブレンドの間にポリオレフィン組成物と混和するが室温では固形である、1つ以上の固形媒体も液体溶媒に添加することができる。そのような固形媒体は、好ましくは、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等である。重要ではないが、固形媒体は液体溶媒なしで用いることができる。しかしながら、固形媒体のみを用いた場合、延伸が不十分になることがある。
【0050】
この液体溶媒の粘度は重要ではない。例えば、この液体溶媒の粘度は25℃での温度で測定した場合、好ましくは約30乃至約500cSt、より好ましくは約30乃至約200cStである。25℃における粘度が30cSt未満である場合、ポリオレフィン溶液は発泡し、ブレンドするのが困難になる。一方、粘度が500cSt以上になると、液体溶媒の除去が難しくなる。
【0051】
1つの態様において、第一ポリオレフィン組成物を製造するために用いるレジンは、例えば、2軸押出し成形器又は混合器で溶融ブレンドされる。例えば、2軸押出し成形器等の従来の押出し成形器(又は混合器又は混合押出し成形器)を用いてレジン等を組み合わせて、第一ポリオレフィン組成物を形成する。この希釈剤又は溶媒はこの工程の任意の好適なポイントでポリオレフィン組成物(又は代替的には、ポリオレフィン組成物の製造に用いるレジン)に添加することができる。例えば、1つの態様において、第一ポリオレフィン組成物及び第一希釈剤又は溶媒は溶融ブレンドされ、この希釈剤又は溶媒は(i)溶融ブレンドの開始前、(ii)第一ポリオレフィン組成物の溶融ブレンドの間、又は(iii)溶融ブレンドの後、例えば、第二押出し成形器又はポリオレフィン組成物の溶融ブレンドに用いた押出し成形器の下流に位置する押出し成形器で、第一希釈剤又は溶媒を溶融ブレンドされた又は部分的に溶融ブレンドされたポリオレフィン組成物に供給して、行われる。
【0052】
溶融ブレンドを用いる場合、溶融ブレンド温度は重要ではない。例えば、第一ポリオレフィン溶液の溶融ブレンドは第一ポリオレフィン組成物のポリエチレンレジンの融点、Tm1よりも10℃高い温度から、Tm1よりも120℃高い温度の範囲で行われる。理解促進ために、そのような範囲はTm1+10℃乃至Tm1+120℃と記載する。第一ポリオレフィン組成物におけるポリエチレンレジンが約130℃乃至約140℃である場合、溶融ブレンド温度は約140℃乃至約250℃の範囲、又は約170℃乃至約240℃の範囲である。
【0053】
2軸押出し成形等の押出し成形器が溶融ブレンドに用いられる場合、スクリューパラメーターは重要ではない。例えば、2軸押出し成形におけるスクリュー直径に対するスクリュー長さLのL/D比は、約20乃至約100の範囲、より好ましくは約35乃至約70の範囲である。L/Dが20未満である場合、溶融ブレンドが不十分になる。L/Dが100を超える場合、2軸押出し成形におけるポリオレフィン溶液の滞留時間が長くなりすぎる。この場合、この膜の分子量は過剰な剪断及び加熱の結果、好ましいものではなくなる。2軸押出し成形器のシリンダーは好ましくは約40乃至約100nmの内部直径を有する。
【0054】
1つの態様において、第一混合物中の第一ポリオレフィン組成物の量は、混合物の重量に基づいて、約1乃至約75wt%、例えば、約20乃至約70%の範囲で変えることができる。第一混合物中の第一ポリオレフィン組成物の量は重要ではないが、この量が約1%未満である場合、許容可能な効率速度で、多層微小孔性ポリオレフィン膜を製造することが困難となる。更に、この量が1wt%未満であると、押出し成形の間のダイの出口において、膨張又はネックインが生じやすくなり、製造工程の間に膜を形成するための前駆体である、多層ゲル様シートを形成又は支持することがより困難となる。一方、第一ポリオレフィン溶液の量が75wt%より多くなると、多層ゲル様シートを形成することが困難となる。
1b.第二混合物の調整
【0055】
第二混合物は第一混合物と同じ方法で調整することができる。例えば、第二混合物は第二ポリオレフィン組成物を第二希釈剤と溶融混合して調製できる。この第二希釈剤は第一希釈剤又は溶媒と同様のものの中から選択することができる。一方、第二希釈剤又は溶媒は第一希釈剤又は溶媒とは別に選択することもできるが、第二希釈剤又は溶媒は第一希釈剤又は溶媒と同じもので、第一混合物中に用いられた第一希釈剤又は溶媒と同じ相対濃度で用いることもできる。任意で、第二混合物は1つ以上の抗酸化剤、微細なシリケート粉末(細孔形成物質)等の1つ以上のような各種添加剤を、多層微小孔性膜の所望の性質を有意に損なわない濃度範囲で含んでいてもよい。
【0056】
第二ポリオレフィン組成物は第一ポリオレフィン組成物とは別に選択される。第二ポリオレフィン組成物は第一及び第二ポリエチレンレジンを含むことができる。第一及び第二微小孔性層物質は同じ組成物ではないので、第二ポリオレフィン組成物を製造するのに用いるレジン及びポリエチレンレジンの相対量は第一ポリオレフィン組成物の製造に用いたポリエチレンレジンの量とは異なる。
【0057】
重要ではないが、第二ポリオレフィン溶液のために行われる溶融ブレンドは第一ポリオレフィン組成物で説明した条件とは、第二ポリオレフィン組成物の溶融温度が第二ポリオレフィン組成物中のポリエチレンレジンの融点Tm2+10℃乃至Tm2+120℃である点において、異なる。
2.押出し成形
【0058】
1つの態様において、第一混合物は第一ダイへ押出し成形され、第二混合物は第二ダイへ押出し成形される。シート形状に積層された押出し成形物(即ち、厚み方向よりも水平方向に有意に大きい形状)は第一及び第二ダイから押出し成形することができる。任意で、第一及び第二混合物は第一及び第二ダイから共押出しされ、第一混合物から形成された第一押出し成形物の表面が第二混合物から形成された第二押出し成形物の表面に接触している押出し成形物になる。押出し成形物の表面は押出し成形物の機械方向の第一ベクトルと押出し成形物の横断方向の第二ベクトルにより定義することができる。
【0059】
1つの態様において、第一ダイ及び第二ダイが、第一混合物を含むダイ領域と第二混合物を含むダイ領域との間に共有の領域を持つような、第一ダイと第二ダイを含むダイアセンブリを用いることができる。
【0060】
1つの態様において、複数のダイが用いられ、各ダイは第一及び第二混合物のいずれかがそれぞれのダイへ押しだされるように結合されている。例えば、1つの態様において、第一混合物を含む第一押出し成形物は第一ダイ及び第三ダイへ結合されて、第二混合物を含む第二押出し成形物は第二ダイへ結合されている。前述の態様において、得られた層状押出し成形物は第一、第二、及び第三ダイから同時に共押出しされ、3層の押出し成形物となる。この押出し成形物は、第一混合物から形成された表面層を形成する第一及び第三層(例えば、トップ層及びボトム層)及び表面層の間に位置し、表面層に面接合している中間層又は介在組層を形成する第二層を含む。この第二層は第二混合物から形成される。
【0061】
更なる態様において、同じダイアセンブリを用いるが、混合物を反対に用いる、即ち、第二混合物を含む第二押出し成形物を第一及び第三ダイに結合し、第一混合物を含む第一押出し成形物を第二ダイに結合する。
【0062】
更なる態様において、このダイ押出し成形は従来のダイ押出し成形装置を用いて行うことができる。例えば、押出し成形はフラットダイ又はインフレーションダイにより行うことができる。多層ゲル様シートの共押出しに有用な1つの態様において、複数のマニホールド押出し成形を用いることができる。ここにおいて第一及び第二混合物は多層押出しダイにおけるマニホールドに分離されて、ダイリップの入り口で積層される。他のそのような態様において、ブロック押出し成形を用いることができる。ここにおいて、第一及び第二混合物が第一に(例えば、前もって)流層に結合され、この流層がダイに結合される。マルチマニホールドとブロック法はポリオレフィンフィルムの加工分野の当業者に知られているので(例えば、JP06−122142A、JP06−106599A参照)、これらは従来技術であると考えられ、それゆえ、これらの操作は本明細書において詳細に説明しない。
【0063】
ダイの選択は重要ではない。従来の多層シート形成、フラット又はインフレーションダイを用いることができる。ダイギャップは重要ではない。例えば、多層シート形成ダイは約0.1mm乃至約5mmのダイギャップを有する。ダイ温度及び押出し速度も重要なパラメーターではない。例えば、ダイは押出し成形の間、約140℃乃至約250℃のダイ温度に加熱される。この押出し成形スピードは、例えば、約0.2m/分乃至約15m/分である。積層された押出し成形物の層の厚さは適宜選択される。押出し成形が2層又は3層押出し成形物を製造するための態様において説明されているが、押出し工程はこれらに限定されない。例えば、複数のダイ及び/又はダイアセンブリが前述の態様の押出し法を用いて4層以上の多層押出し成形物の製造に用いることができる。そのような多層押出し成形物について、各表面又は中間層は第一混合物のいずれか、又は両方を用いて製造することができる。
3.複数押出し成形物の形成
【0064】
多層押出し成形物は、例えば、冷却されて、高ポリオレフィン含量の多層押出し成形物(通常ゲル様シートの形状)形成することができる。例えば、多層ゲル様シートは少なくとも約50℃/分の冷却速度で、この多層ゲル様シートの温度がおよそこのシートのゲル化温度に等しくなる(又はそれ以下)になるまで冷却することができる。1つの態様において、この押出し成形物は25℃以下の温度まで冷却して、多層ゲル様シートを形成する。いかなる理論又はモデルに限定することを意図しないけれども、多層押出し成形物の冷却は希釈剤又は溶媒による分離のために、第一及び第二ポリオレフィン溶液のポリオレフィンミクロ層を固定する。通常、緩やかな冷却速度(例えば、50℃/分未満)はより大きなプセウドセル単位を有するゲル様シートを提供し、その結果ざらついた高次元構造となる。一方、より高い冷却速度(例えば、80℃/分)は密度の高い細胞単位となる。重要なパラメーターではないが、50℃/分未満の冷却速度が高い結晶性を導き、好適な延伸性を有するゲル様シートを提供することが難しくなる。例えば、従来のシート冷却方法を用いることができる。1つの態様において、冷却方法は層状の押出し成形物を冷却空気、冷却水等の冷却媒体と接触させる工程を含む。代替的に、この押出し成形物は例各媒体等で冷却されたロールと接触させることにより冷却することもできる。
【0065】
本明細書で用いる、「高ポリオレフィン含有量」とは、冷却押出し成形物が冷却された押出し成形物の容量に基づいて、ポリオレフィン組成物のレジン由来のポリオレフィン単位を少なくとも約15%、例えば、約15%乃至約50%含むことを意味する。冷却押出し成形物が約15%未満のポリオレフィン含量である場合、優れた性質のセットを有する本発明の微細孔性膜を形成することがより困難になるであろう。約50%より多いポリオレフィン含量は高粘度となり、所望の膜構造を形成することをより困難にする。この冷却された押出し成形物は好ましくは少なくともポリオレフィン溶液のものと同じくらいのポリオレフィン含量であることが好ましい。
(4)冷却押出し成形物の遠心
【0066】
冷却された押出し成形物は通常硬ポリオレフィン含量のゲル様成形シートの形態であり、その後少なくとも1方向に延伸される。理論又はモデルに拘束されることは意図しないけれども、このシートは希釈剤又は溶媒を含むので、このゲル様シートを均一に延伸することができる。このゲル様シートを、加熱後に、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組み合わせにより、予め決められた倍率に延伸することが好ましい。この延伸は、1軸延伸又は2軸延伸で行うことができるが、2軸延伸が好ましい。2軸延伸の場合、2軸同時延伸、連続延伸、又は多段階延伸(例えば、2軸同延伸と連続延伸)を用いることができるが、2軸同時延伸が好ましい。各方向への延伸の倍率は同じである必要はない。
【0067】
第一延伸工程の延伸倍率は、1軸延伸の場合、例えば、2倍以上、好ましくは3乃至30倍である。2軸延伸の場合、延伸倍率は、いずれかの方向に、例えば、3倍以上に延伸して、9倍以上、好ましくは16倍以上、より好ましくは25倍以上、例えば、49倍以上の面積延伸とする。この第一延伸工程の例は約9乃至約40倍の延伸を含む。追加的な延伸の例としては、約16倍乃至約49倍の延伸倍率を含む。いずれかの方向における延伸の量は同じである必要はない。9倍以上の延伸倍率により、この微細孔性膜のピン破裂強度が改善される。このエリア倍率が400倍以上の場合、延伸装置、延伸操作等のためにラージサイズの延伸装置が必要となり、製造が難しくなる。
【0068】
本発明の膜のための好適な微細孔構造を得るために、第一延伸工程の延伸温度は相対的に高く、好ましくは約冷却された押出し成形物に含まれているポリエチレン内容物の結晶分散温度(Tcd)乃至約Tcd+30℃であり、例えば、含まれているポリエチレン顔料のTcd乃至Tcd+25℃の範囲、より具体的にはTcd+10℃乃至Tcd+25℃、最も具体的にはTcd+15℃乃至Tcd+25℃の範囲である。延伸温度がTcdよりも低い場合、組み合わされたポリエチレン内容物が十分に柔軟にならないので、ゲル様シートが延伸により用意に壊れ、高倍率の延伸をすることができない。結晶分散温度ASTMD4065に記載の動的粘弾性の温度特徴付けの測定により決定した。本明細書の組合わされたポリエチレン含量は約90乃至100℃の結晶分散温度を有することから、延伸温度は約90乃至125℃、好ましくは約100乃至125℃、より好ましくは105乃至125℃である。
【0069】
前述の延伸はポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ラメラ等の間の引き裂けを引き起こし、より細かいポリオレフィン相を形成し、多数の繊維を形成する。この繊維は3次元網目構造を形成する。この延伸は微細孔性膜の機会的延伸を改善すると信じられており、その細孔を拡大し、バッテリーセパレーターとして用いるのに好適な微細孔性膜を形成する。
【0070】
所望の性質に依存して、延伸は厚さ方向に温度を分散させて行われ、更なる改善された機械的強度を有する微細孔性膜を提供する。この方法の詳細は特許3347854に記載されている。
(5)溶媒又は希釈の除去
【0071】
溶媒除去したゲル様シートを形成するために、多層ゲル様シートの少なくとも一部分から第一及び第二希釈剤を除去する(又は置き換える)。置き換え(又は「洗浄」)溶媒は第一及び第二希釈剤又は溶媒可接性の少なくとも一部分を除去(洗浄又は置き換え)するために用いる。如何なる理論又はモデルに限定することを意図しないけれども、第一ポリオレフィン溶液及び/又は第二ポリオレフィン溶液から製造された多層ゲル様シートにおけるポリオレフィン層は希釈剤又は溶媒から分離されているので、この希釈剤又は溶媒の除去は微細な3次元ネットワーク構造を形成している繊維により形成され、3次元的に不規則に繋がる孔を有する微小孔性膜を提供する。洗浄溶媒の選択は重要ではないが、第一及び第二希釈剤の少なくとも部分的な溶解又は分散ができるものであればよい。好適な洗浄溶媒は揮発性溶媒、例えば、ペンタン、ヘキセン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチル、四塩化炭素等の塩化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン、等のジエチルエーテル、メチルエチルケトン等のケトン、トリフルオロエタン、C14等の直鎖フルオロカーボン、C等の環状ヒドロフルオロカーボン、COCH、COC等のヒドロフルオロエーテル、CCOF、COC等のペルフルオロエーテル、及びこれらの混合物を含む。
【0072】
希釈剤の除去方法は重要ではない。従来の方法を含む希釈剤の有意な量を除去することができる任意の方法を用いることができる。例えば、多層ゲル様シートを洗浄溶媒中に浸すことにより洗浄できる。又は戦場溶媒をシートにシャワーのようにかけてもよい。用いる洗浄溶媒の量は重要ではないが、通常、選択される希釈剤の除去方法に依存している。例えば、用いる洗浄溶媒の量は、多層ゲル様シートの容量に基づいて、容量により約300部乃至約30,000部である。除去される希釈剤又は溶媒可接性の量は特に重要ではないが、第一及び第二希釈剤の少なくとも大部分がこのゲル様シートから除去されるときには、通常、高い容量の膜(細孔が多い)となっている。1つの態様において、残りの希釈剤がこのゲル様シートの重量に基づいて、このシート中に1wt%未満になるまで、除去される。
【0073】
希釈剤又は溶媒を除去した多層微細孔性膜は加熱乾燥法、風乾法(例えば、動く空気中での空気乾燥)等で乾燥して、膜から残りの揮発性成分、例えば、洗浄溶媒を除去することができる。相当量の洗浄溶媒を除去することができる任意の乾燥法を用いることができる。好ましくは、実質的に全ての洗浄溶媒が乾燥工程の間に除去される。乾燥温度は好ましくはTcd以下であり、より好ましくはTcdよりも5℃以上低いことが好ましい。乾燥は微細孔性膜の(乾燥)容量を100%として、残りの洗浄溶媒が好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、になるまで行う。乾燥が不十分であると、後の加熱による膜の細孔形成が不十分となり、透過性が不十分となる。
6.溶媒除去及び/又は乾燥膜の延伸
【0074】
希釈剤を除去し及び/又は乾燥された多層膜は第二延伸工程で、高い倍率で少なくとも1軸方向に任意で延伸される(再延伸)。この膜の再延伸は、第一延伸工程と同様に、例えば、加熱の間に、テンター法等により行うことができる。この再延伸は1軸又は2軸で行うことができる。2軸延伸の場合、同時2軸延伸又は連続延伸のいずれか1つを用いることができるが、同時に2軸に延伸することが好ましい。再延伸はゲル様シートを延伸して得られた長いシート状の膜において行われることから、再延伸において、MD及びTD(MDは「機械方向」を意味する、即ち、工程の間に機械が動く方向、TDは「横断方向」即ち、MDと膜方面の両方に垂直な方向)は冷却された押出し成形物の延伸におけるものと通常同じである。しかしながら、本発明において、再延伸は冷却された押出し成形物の延伸において用いられるものよりも幾分大きい。この工程での延伸倍率は少なくとも1つの方向において約1.1乃至約1.8、例えば、約1.2乃至約1.6倍である。各方向を同じ倍率で延伸する必要はない。本方法の(4)において延伸が約9乃至約400より低い範囲で行われたならば、本発明の方法の工程(6)における延伸は、約1.1乃至約1.8倍の範囲も高い倍率で行われる。同様に、本発明の方法の工程(4)での延伸が約9乃至約400の範囲より高い範囲で行われたならば、本発明の方法の工程(6)における延伸は約1.1乃至1.8よりも低い倍率で行われる。
【0075】
任意の第二延伸又は再延伸工程は、Tm以下、より好ましくは(ポリエチレンの)Tcd乃至Tmの範囲の温度で行われる。第二延伸温度はTmより高い場合、溶融粘度が好適な延伸を行うには低すぎてしまい、低い透過性となる。第二延伸温度がTcdよりも低い場合、ポリオレフィンの柔軟性が不十分となり、膜が延伸により破壊され、均一な延伸ができなくなる。1つの態様において、第二延伸温度は通常約90乃至約135℃、好ましくは約95乃至約130℃である。
【0076】
この工程における、膜の1軸延伸の倍率は好ましくは約1.1乃至約1.8倍である。1.1乃至1.8の倍率により、通常、大きな平均細孔サイズを有する構造を本発明の膜に提供することができる。1軸延伸の場合、この倍率は縦軸又は横軸方向に、1.1乃至1.8倍延伸される。2軸延伸の場合、1.1乃至1.8倍の範囲内である限り、膜は各遠心方向に同じ又は異なる倍率で延伸することできるが、同じ倍率であることが好ましい。
【0077】
この膜の第二延伸倍率が1.1未満である場合、本発明の膜構造は、透過性、電解溶液吸収性、及び圧縮耐性が劣る。第二延伸倍率が1.8倍以上になると、形成された繊維が、細かくなりすぎて、熱収縮耐性及び電解溶液吸収性が低くなる。この第二延伸倍率は1.2乃至1.6倍が好ましい。
【0078】
延伸速度は、延伸方向において3%/秒以上であることが好ましい。1軸延伸の場合、
延伸速度は縦軸又は横軸方向のいずれかに3%/秒以上である。2軸延伸の場合、延伸速度は縦及び横方向の両方において3%/秒以上である。3%/秒未満の延伸速度は膜の透過性を減らし、縦軸に延伸したときに、横方向において、非常に不均一な性質(特に、空気透過性)の膜を提供する。この延伸速度は好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上である。とくに重要ではないが、延伸速度の上限値は、膜の破裂を避けるためには、50%/秒が好ましい。
(7)熱処理
【0079】
工程(6)の膜生成物は熱処理されて、膜中に安定した結晶及び均一なラメラを形成する。この熱硬化は好ましくはテンター法又はロール法で行われる。この熱硬化温度Tcd乃至Tmの範囲内であることが好ましい。低すぎる熱硬化温度は膜のピン破強度、延伸破裂強度、延伸破裂延伸率、及び熱収縮耐性を弱める。一方高すぎる熱硬化温度は巻く透過性を低める。
【0080】
アニーリング処理は熱硬化工程の後に行われる。このアニーリングは微細孔性膜に負荷をかけずに行う熱処理であり、例えば、ベルトコンベア、又はエアフローイングタイプの熱チャンバーを用いて行われる。このアニーリングはテンター法で幅だししながら熱硬化をした後に連続的に行ってもよい。アニーリング温度は好ましくはTm以下、より好ましくは約60℃乃至約Tm−5℃の範囲である。アニーリングは高い透過性及び強度を提供すると信じられている。任意で、膜を熱硬化せずにアニーリングしてもよい。1つの態様において、この工程(7)の熱硬化は任意工程である。
(8)延伸されたシートの熱硬化処理
【0081】
工程(4)及び(5)の間で延伸されたシートは熱硬化される、このシートの熱硬化は多層微細孔性膜の性質を阻害することはない。この熱硬化方法は前述の工程(7)と同じ方法で行うことができる。
(9)熱ロール処理
【0082】
工程(4)で延伸されたシートの表面の少なくとも1面を1つ以上の別個のロールに接触させて、工程(4)乃至(7)の任意の工程を行う。こローラー温度は好ましくはTcd+10℃乃至Tmの範囲であることが好ましい。延伸されたシートに熱ロールが接触している時間は、約0.5秒乃至約1分が好ましい。この熱ロールはフラット又はラフな表面を有している。この熱ロースは溶媒を除去するための吸引機能を有している。とくに重要ではないが、ローラー加熱システムの1つの例としては、ローラー表面に接触しているホールディング加熱オイルを含む。
(10)熱溶媒処理
【0083】
延伸されたシートは工程(4)及び(5)の間に熱溶媒に接触させてもよい。熱溶媒処理は延伸により形成された繊維を相対的に厚い繊維トランクを有する葉脈形状のものに成形し、大きな細孔サイズ及び好適な延伸及び浸透性を有する微細孔性膜を提供する。「葉脈形状」の語は厚い繊維トランクを有する繊維を意味し、このトランクから細い繊維が伸びていてを複雑な網状構造を形成する。熱溶媒処理の詳細はWO2002/20493に記載されている。
(11)洗浄溶媒を含む膜の熱硬化
【0084】
工程(5)及び(6)の間の洗浄溶媒を含む微細孔性膜は微細孔性膜の性質を阻害しない程度に熱硬化される。この熱硬化方法は前述の工程(7)におけるものと同様である。
(12)架橋
【0085】
熱硬化微細孔性膜はα線、β線、γ線等の電子構成のイオン化照射線により架橋される。電子光線の照射において、電子光線の量は、約0.1乃至約100Mardが好ましく、加速電圧は約100乃至約300kVtであることが好ましい。この架橋処理は簿のメルトダウン温度を高める。
(13)親水化処理
【0086】
熱硬化した微細孔性膜は親水化処理(膜をより親水性にする処理)される。この親水化処理はモノマーグラフト処理、表面処理、コロナ放電処理等でよい。モノマーグラフト処理は好ましくは架橋工程の後に行われる。
【0087】
熱硬化微細孔性の膜表面親水化処理の場合、任意の非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができるが、非イオン界面活性剤が好ましい。この微細孔性膜は水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール中に界面活性剤を溶解した溶液に浸漬するか、又はドクターブレード法により溶液を用いてコーティングすることができる。
(14)表面コート処理
【0088】
必須ではないが、工程(7)で得られた熱硬化微細孔性膜をポリビニリデンフルオライド、及びポリテトラフルオロエチレン、細孔性ポリイミド、細孔性ポリフェニレンスルフィド等の細孔性ポリプロピレン、細孔性フルオロレジンでコートして、膜がバッテリーセパレーターとして用いられた時のメルトダウンを改善することができる。コーティングに用いるポリプロピレンは好ましくは約5,000乃至約500,000のMwを有し、及び25℃のトルエン100グラムに約0.5グラム以上溶解することが好ましい。そのようなポリプロピレンは、より好ましくは約0.12乃至約0.88のラセミダイアドを有することが好ましくい。このラセミダイアドは隣接する2つのモノマー単位がお互いに鏡像アイソーマーである構造単位である。表面コート層は、例えば、好適な溶媒中の前述のコーティングレジンの溶液を微細孔性膜に塗布し、溶媒を除去してレジンの濃度を高め、それゆえ、レジン層及び溶媒層が分離している構造形成し、残りの溶媒を除去して、形成される。本発明に用いる好適な溶媒の例としては、トルエン又はキシレン等の芳香族化合物を含む。
[4]積層(ラミネーション
【0089】
積層技術又は方法は重要ではない。熱誘発積層等の従来の方法が多層ゲル様シートを積層するために用いることができる。他の好適な積層方法は、例えば、熱シール方法、インパルスシール法、超音波結合法等を含み、単独又は組み合わせても散ることができる。ここにおいてゲル様シートは少なくとも一組の加熱されたローラーを通じて導入される。この熱シール温度及び圧力は重要ではないが、十分な過熱及び圧力を十分な時間適用して、確実にゲル様シートを好適に結合して、細孔性を有し、層が解離しないような多層微細孔性膜を提供する。1つの態様において、加熱シート温度は、例えば、約90乃至135℃である。1つの態様において、熱シール圧力は、例えば、約0.01MPa乃至約50MPaである。
[5]多層微細孔性膜の細孔性
【0090】
最終的な微細孔性膜は、通常押出し成形物を製造するのに用いるポリマーを含む。加工の間に導入された希釈剤又は他の試薬は少量含まれていてもよい。通常その量は微細孔性ポリオレフィン膜の重量に基づき1wt%未満である。僅かな量のポリマー分子量分解がプロセスの間に起こるかもしれないが、許容できる。1つの態様において、このプロセスの間の分子量分解は、あったとしても、この膜のポリオレフィンのMWDの値は、ポリオレフィン組成物を製造するのに用いたポリマーのMWDと、約10%、又は約1%、又は約0.1%の違いでしかない。
【0091】
最終的な膜の厚さは通常3μm乃至200μmの範囲である。例えば、この膜は約5μm乃至約50μm、例えば、約15μm乃至約30μmの範囲の厚みを有する。この微細孔性膜の厚さは、縦に1cm間隔で幅10cmのコンタクトシックネスメーターにより測定することができ、膜の厚みはその後平均化される。ミツトヨ社のLitematicのようなシックネスメーターが好ましい。非接触式の厚み測定方法も好適である。例えば、光学厚み測定方法がある。
【0092】
1つの態様において、この多層微細孔性膜は1つ以上の以下の性質を有している。
(a)700秒/100cm以下の空気透過性(20μmの厚みに転換した値)
【0093】
この膜の空気透過性はJISP8117で測定することができる。1つの態様において、この膜の空気透過性は20乃至600秒/100cmの範囲である。好ましくは、空気透過性、Pは、JISP8117に従って、厚みTの微細孔性膜で測定して、式P=(P1X20)/Tにより、20μmの厚みの空気透過性、Pへと変換することができる。この態様において、この膜の空気透過性は400秒/cm以下、例えば、100秒/100cm乃至400秒/100cm、又は150秒/100cm乃至300秒/100cmである。
(b)約25乃至約80%の細孔性
【0094】
膜の細孔性は100%ポリエチレンの非細孔性膜に等しい重量(同じ長さ、幅、及び厚みの)と膜の実際の重量を比較して、簡易的に測定することができる。細孔性はその後、以下の式を用いて決定される。細孔性(%)=100x(w2−w1)/w2、式中、「w1」は微細孔性膜の実際の温度、「w2」は、同じサイズ及び厚みの100%ポリエチレンの非細孔性膜の重量である。
(c)3500mM以上(20μmの厚みを有する膜に等しい値に制御された)のピン破裂強度
【0095】
(20μmの厚みを有する膜に等しい値に制御された)この膜のピン破裂強度はこの膜を、丸い先端表面を有する(半径Rのカーブ:0.5mm)1mm直径の針を、2mm/秒で刺したときに測定される最大負荷により表される。1つの態様において、この膜のピン破裂強度(20μmに転換される)は3,800mN乃至5,000mNの範囲である。
【0096】
最大負荷は、Tの厚みを有する各微細孔性膜を丸い先端表面を有する(半径Rのカーブ:0.5mm)1mm直径の針を、2mm/秒で刺したときに測定される。この測定された最大負荷Lは、L(Lx20)/Tの式により、20μmの厚みにおける最大付加に転換することができ、ピン破裂強度と定義される。
(d)40,000kPa以上のMD及びTD引っ張り強度
【0097】
縦方向と横方向の両方において40,000kPa以上の引っ張り強度(ASTMD−882の10mm幅の試験片を用いて測定)が特にバッテリーセパレーターとして用いたときに、好適な耐久性のある微細孔性膜の特徴である。MD引っ張り強度は、例えば、80,000乃至150,000kPa、及びTD引っ張り強度は、例えば、90,000乃至150,000kPaの範囲である。
(e)100%以上の引っ張り伸び
【0098】
縦方向及び横方向の両方において、100以上の引っ張り伸び(ASTM D−882で測定される)がバッテリーセパレーターとして用いたときに特に好適な耐久性を有する微細孔性膜特徴である。
(f)12%以下の105℃におけるTD熱収縮及び12%以下の105℃におけるMD熱収縮
【0099】
150℃における垂直平面方向の膜の収縮比は以下のように測定される。(i)機械方向及び横断方向の両方において室温で微細孔性膜の試験片をサイズを測定する(ii)いかなる付加もかけずに、105℃で8時間、微細孔性膜の試験片を平衡化する、及び(iii)機械及び横断方向の両方において膜のサイズを測定する。機械方向又は横断方向のいずれかの加熱(又は「熱」)収縮比は(i)の測定の結果を(ii)の測定の結果で割って、得られた商をパーセンテージであらわす。
【0100】
1つの態様において、この微細孔性膜は105℃において10%以下、例えば、1%乃至9.5%の範囲のTD熱収縮率、105℃において8%以下、例えば、1%乃至7.5%の範囲のMD熱収縮を有する。
(g)熱圧縮後の20%以下の厚み変動比(絶対値で表現される)
【0101】
5分の間、2.2MPaの圧力下で90℃において熱圧縮させた後の厚み変動比は圧縮前の厚みを100%として、通常20%以下である。厚み変動比が20%以下である微細孔性膜セパレーターを含むバッテリーは好適な大きなキャパシティー及び好適なサイクル性を有する。1つの態様において、膜の厚み変動比は10%乃至20%の範囲である。
【0102】
熱圧縮の後厚み変動比を測定するためには、微細孔性膜を一組の高度に水平な板の間に置き、5分間、90℃で2.2MPa(22kgf/cm)の圧力下で圧縮機械により熱圧縮して、平均の厚みを決定する。厚み変動比は、(圧縮後の平均厚さ−圧縮前の平均厚さ)/(圧縮前の平均厚さ)x100の式により計算する。
【0103】
1つの態様において、熱圧縮の後厚み変動は10%以下、例えば、1%乃至10%の範囲である。
(h)700秒/100cm以下の熱圧縮後の空気透過性
【0104】
前述の条件の下で熱圧縮したときの微細孔ポリオレフィン膜は700秒/100cm以下の空気透過性(ガーリー値)を有する。そのような膜を用いるバッテリーは好適な大きなキャパシティー及びサイクル性を有している。この空気透過性は好ましくは600秒/100cm以下、例えば、200秒/100cm乃至550秒/100cmの範囲である。
【0105】
熱圧縮後の空気透過性はJISP8117に従って測定することができる。
(i)3x10nm以上の表面粗さ
【0106】
この微細孔性膜の表面粗さは動力モードの原子間力電子顕微鏡(AMF)により測定され、通常3x10nm以上(膜全体の平均最大高低差)である。この膜の表面粗さは好ましくは3.5x10nm以上、例えば、400nm乃至700nmである。
(i)1.5以上の電解液吸収速度
【0107】
動的表面引っ張り測定装置(Eko Instruments Co.,Ltd.より入手可能な高性能電子天秤を備えたDCAT21)を用いて、微細孔性膜のサンプルを600秒間電解液に浸し、(電解質:1mol/LのLiPF、溶媒:エチレンカルボネート/ジメチルカルボネートを3/7の容量比)を18℃で維持し、式[含浸後の微細孔性膜の重量(グラム)/含浸前の微細孔性膜の重量(グラム)]により電解溶液吸収性を決定する。この電解液吸収スピードは相対的な量により表され、比較例8の微細孔性膜における電解溶液吸収性は1である。他の態様において、膜の電解溶液吸収速度は2.5乃至6の範囲の間である。
(k)140℃以下のシャットダウン温度
【0108】
膜のシャットダウン温度は140℃以下、例えば、130℃乃至139℃である。この微細孔性膜のシャットダウンは以下のように熱機械解析(セイコーインスツルメンツにより入手可能なTMA/SS600)により測定される。3nmx50nmの長方形のサンプルをサンプルの長軸が横断方向になり、短軸が機械方向に沿うように微細孔性膜から切り出す。このサンプルを10nmのチャンク距離で、即ち、上方のチャンクと下方のチャンクの距離が10nmになるように、熱機械解析内にセットする。下方のチャンクは固定されており、上方のチャンクでサンプルに19.6mNの負荷をかける。このチャンク及びサンプルを加熱可能なチューブの中に封入する。30℃でスタートし、チューブの内部温度を5℃/分で上げていき、19.6mNの負荷の下でサンプルの長さの変化を0.5秒の間隔で測定し、温度を高くする毎に記録をしていく。この温度は200℃まで上げられる。「シャットダウン温度」はこの膜を製造するのに用いたポリオレフィンの中で最も低い融点を有するポリマーの融点付近で観察される変曲点の温度である。
(l)150℃以上のメルトダウン温度
【0109】
メルトダウン温度は以下の手順で測定される。3nmx50nmの長方形のサンプルをサンプルの長軸が横断方向になり、短軸が機械方向に沿うように微細孔性膜から切り出す。このサンプルを10nmのチャンク距離で、即ち、上方のチャンクと下方のチャンクの距離が10nmになるように、熱機械解析内にセットする。下方のチャンクは固定されており、上方のチャンクにおいてサンプルに19.6mNの負荷をかける。このチャンク及びサンプルを加熱可能なチューブの中に封入する。30℃でスタートし、チューブの内部温度を5℃/分で上げていき、19.6mNの負荷の下でサンプルの長さの変化を0.5秒の間隔で測定し、温度を高くする毎に記録をしていく。この温度は200℃まで上げられる。このサンプルのメルトダウン温度はサンプルが壊れる、通常約145℃乃至約200℃の範囲で温度である。
【0110】
1つの態様において、このメルトダウン温度は168℃乃至185℃、例えば、170℃乃至190℃、又は174℃乃至185℃の範囲である。
(m)20%以下の溶融状態における最大TD収縮
【0111】
溶融状態における最大収縮は以下の手順で測定する。メルトダウン温度の測定で説明したTMA法を用いて、135℃乃至145℃の範囲の温度において測定されたサンプル長さを記録した。この膜収縮、及びチャンクの間の距離の減少が膜収縮である。溶融状態の最大膜収縮は、23℃で測定されたチャンクの間のサンプル長さ(L1は10nm)から約135℃乃至145℃の範囲で通常測定された最小の長さを引いた値をL1で割ったと定義される、即ち、[L1−L2]/L1*100%である。用いた3nmx50nmの長方形サンプルはサンプルの長軸が微細孔性膜の横断方向に沿うように、及び短軸が機械方向に沿うように切り出される。
【0112】
1つの態様において、溶融状態における膜の最大TD収縮は約140℃で生じたことが確認される(前述のASTM方法)。1つの態様において、この溶融状態における最大TD収縮は2%乃至15%の範囲である。
(n)75%以上のシャパシティー回復比
【0113】
キャパシティー回復比はリチウムイオンバッテリーにおいてバッテリー分離として膜を用いた場合の膜の電気化学的安定性に関する膜の性質である。キャパシティー回復比はパーセントとして表され、高い温度で30日間バッテリーを貯蔵した後に失われたバッテリー貯蔵のキャパシティーの量に関する。電気自動車又はハイブリッド電気自動車の移動のための開始又は動力用いる自動車バッテリー及びパワーツールバッテリー及び相対的に高いパワー、高いキャパシティー製品については、特に、バッテリーの電気チャージの貯蔵能力の損失に敏感であることから、75%以上のバッテリー回復比が好ましい。「高いキャパシティー」バッテリーは通常1アンペア(1Ah)以上、例えば、2.0Ah乃至3.6Ahを補うバッテリーの能力を意味する。
【0114】
膜のキャパシティー回復比を測定するために、膜と同じ平面寸法を有する70mmの長さ、及び60mmの幅を有する膜を負極と正極の間に膜を置く。負極は天然グラファイトであり、正極はLiCoOでできている。電解液はエチレンカルボネート(EC)とメチルエチルカルボネート(EMC)(4/6、V/V)の混合物内にLiPF6を溶解することにより1M溶液として調製される。この電解液に負極及び正極の間の領域の膜を浸して、バッテリーとする。
【0115】
チャージキャパシティー回復率はバッテリーを23℃の温度で、チャージ及びその後にディスチャージし、ディスチャージの間のバッテリーにより供給されたチャージの量を記録することにより測定される(「初期チャージキャパシティー」)。このバッテリーをその後80℃の温度に30日間曝して、その後23℃に冷却する。冷却の後、このチャージキャパシティーは再測定される(最終チャージキャパシティー)。このシャパシティー回復率は最終チャージシャパシティーを初期チャージシャパシティーで割って、100%掛けて%で、決定する。
【0116】
1つの態様において、膜のキャパシティー回復率は77%以上、例えば、78%乃至100%、又は79乃至85%の範囲である。
[6]バッテリーセパレーター
【0117】
1つの態様において、本発明の微小孔性膜から形成されたバッテリーセパレーターは約3乃至約200μm、又は約5乃至約50μm、又は約7乃至約35μmの厚みを有するが、最も好ましい厚みは製造されるバッテリーのタイプに依存して適宜選択される。
[7]バッテリー
【0118】
1つの態様において、本発明の多層微細孔性膜は一次及び二次バッテリー、特にリチウムイオン二次バッテリー、リチウム−ポリマー二次バッテリー、ニッケル−水素二次ナッテリー、ニッケルカドミウム二次バッテリー、ニッケル−亜鉛二次バッテリー、銀−亜鉛二次バッテリー、特にリチウムイオン二次バッテリーのセパレーターとして用いられる。
【0119】
このリチウムイオン二次バッテリーはセパレーターを介して積層された陽極及び陰極を含み、セパレーターは、通常電解溶液(電解液)の形で電解液を含む。電極の構造は重要ではない。従来の構造が好適である。電極の構造は例えば、陽極と陰極が正反対に設置されているディスク形状のコインタイプのもの、陽極と陰極が平面状に積層されている積層タイプのもの、リボン形状の陽極と陰極がドーナツ状に巻きつけられているものである。
【0120】
陽極は通常電流コレクタを含み、電流コレクタ上に形成されたリチウムイオンを吸収及びディスチャージすることができる正極活性物質層を含む。正極活性物質は遷移金属酸化物、リチウム及び遷移金属の複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機物質である。この遷移金属はV、Mn、Fe、Co、Ni等である。1つの態様において、リチウム複合酸化物の好適な例としては、リチウムニッケレート、リチウムコバルトエート、リチウムマグネート、α−NaFeOに基づく、薄層上のリチウム三価複合物を含む。陰極は電流コレクタ及びこの電流コレクタの上に形成された負の電極活性物質層を含む。この負の電極活性物質層は、天然グラファイト、人口グラファイト、コーク、カーボンブラック等の炭素系物質である。
【0121】
この電解溶液は無機溶媒にリチウム塩を溶解することにより得られる溶液である。このリチウム塩はLiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LICFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、LiN(CSO、LiPF(CF、LiPF(C、リチウムの低級脂肪族カルボン酸塩、LiAlCl等である。これらのリチウム塩は単独又は組み合わせて用いることができる。有機溶媒は、エチレンカルボネート、プロピレンカルボネート、エチルメチルカルボネート、γ−ブチルカルボネート等の高い沸点及び高い誘電率を有する有機溶媒;及び/又はテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカルボネート、ジメチルカルボネート等の低い沸点及び低い粘度を有する有機溶媒でよい。これらの有機溶媒は単独又は組み合わせて用いることができる。高い誘電率を有する有機溶媒は高い粘度を有し、低い粘度を有するものは、通常低い誘電率を有することから、これらの混合物を用いることが好ましい。
【0122】
バッテリーを組み立てるときには、セパレーター(多層微細孔性膜)を電解液に浸して、イオン透過性を引き起こさせる。含浸処理法の選択は重要ではない。従来の含浸方法を用いることができる。例えば、この含浸処理は室温で電解溶液に多層微小孔性膜を浸すことにより行われる。
【0123】
バッテリーを組み立てるための方法は重要ではない。従来のバッテリーを組み立てる方法を用いることができる。例えば、円筒形のバッテリーを組み立てる場合、電極シート、多層微小孔性膜により形成されたセパレーター、及び負極シートを順番に積層し、得られた積層体をドーナツ型の電極集合体に巻きつける。ドーナツ型に巻きつける場合、ショートしないように、第二セパレーターが必要な場合がある。得られた電極集合体をバッテリー管に詰め込み/成形して、前述の電解溶液に浸して、正極の末端に安全バルブを取り付けて蓋をしたバッテリーをガスケットによりバッテリー缶に詰めて、バッテリーにする。このバッテリーは充電の源又は受信装置として用いることができる。
【実施例】
【0124】
本発明は以下の実施例を参照することにより、より広く一般化することができる。これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
【0125】
(1)第一溶液の調製
(a)5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンを40%、
(b)1.9x10のMw及び5.09のMWDを有する第一ポリエチレンを10%、
(c)1.1x10のMw、114J/gの△Hm、及び5のMWDを有する第一ポリプロピレンを37.5%、及び
(d)6.6x10のMw、103.3J/gの△Hm、及び11.4のMWDを有する第二ポリプロピレンを12.5%含む第一ポリオレフィン組成物を乾燥ブレンドにより調製した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。この組成物中のポリエチレンレジンは135℃の融点、100℃の結晶分散温度を有する。
【0126】
得られた第一ポリオレフィン組成物の容量により25部を内部直径が58mmで、L/D比が42のストロングブレンド二軸押出し成形器に装填し、容量により75部の液体パラフィン(40℃で50cst)をサイドフィーダーを通じて、この2軸押出し成形に供給した。溶融ブレンドは210℃で200rpmで行って、第一ポリオレフィン溶液を得た。
(2)第二ポリオレフィン溶液
【0127】
第二ポリオレフィン溶液を以下の点を除いては、第一ポリオレフィン溶液と同様に調製した。(a)5.6x10のMwと4.05のMWDを有する第一ポリエチレンを80%と(b)1,9x10のMwと5.09のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを20%含む第二ポリオレフィン組成物を乾燥ブレンドで調製した。パーセンテージは第二ポリオレフィン組成物の重量に基づく。この組成物中のポリエチレンレジンは融点が135℃で結晶分散温度が100℃である。
【0128】
得られた第二ポオレフィン組成物の30部を内部直径が58mmで、L/D比が42のストロングブレンド二軸押出し成形器に装填し、容量により75部の液体パラフィン(40℃で50cst)をサイドフィーダーを通じて、この2軸押出し成形に供給した。溶融ブレンドは210℃で200rpmで行って、第二ポリオレフィン溶液を得た。
(3)膜の製造
【0129】
第一及び第二ポリオレフィン溶液を2軸押出し成形器からさ3層押出し成形用Tダイへ供給し、第一ポリオレフィン溶液/第二ポリオレフィン溶液/第三ポリオレフィン溶液の厚み比が10/80/10である押出し成形物(積層体とも言う)に押出し成形した。この押出し成形物を20℃に維持されている冷却ロールを通して冷却して、3層のゲル様シートを形成した。この押出し成形物は、115℃で機械移動方向(縦方向)と横方向に、テンター延伸器を用いて、5倍に2軸延伸された。この延伸された3層ゲル様シートを20cmx20cmのアルミフレームに固定して、25℃に維持されている塩化メチレンの浴槽に浸して、100rpmの振動をかけながら3分間で、液体パラフィンを除去し、室温の空気流れにより乾燥させた。乾燥させた膜を、バッチ延伸器を用いて125℃で縦方向に1.4倍の倍率で再延伸した。バッチ延伸器にとりつけたままの再延伸した膜を10分間、125℃で加熱して、3層微細孔性膜を製造した。
実施例2
【0130】
第一及び/又は第二微細孔性ポリオレフィン膜を第一微細孔性膜/第二微細孔性膜/第三微細孔性膜の順に、25/50/25の厚み比で積層した以外は、実施例1と同様に製造を行った。
実施例3
【0131】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が50%の第一ポリエチレンレジンのほかに、5%の第二ポリエチレンレジン、30%の第一ポリプロピレンレジンと15%の第二ポリプロピレンレジンを含む以外は実施例1と同様に製造を行った。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。
実施例4
【0132】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が40%の第一ポリエチレンレジン、15%の第二ポリエチレンレジン、25%の第一ポリプロピレンレジン、及び20%の第二ポリプロピレンレジンを含む以外は実施例1と同様に製造を行った。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。
実施例5
【0133】
第二ポリプロピレンレジンが5.7x10の重量平均分子量、94.6J/gの融解熱、及び/又は5.9のMWDである以外は、実施例1と同様に製造した。
実施例6
【0134】
第一ポリオレフィン組成物中の第一ポリオレフィンが0.9x10の分子量、106J/gの融解熱、及び4.5の分子量分布を有する以外は、実施例1と同様に製造した。
比較例1
【0135】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が50%の第一ポリエチレンレジンを含み、第二ポリオレフィン溶液は含まず、37.5%の第一ポリプロピレンと12.5%の第二ポリプロピレンレジンを含む以外は、実施例1と同様に製造した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物に基づいている。第一及び第二微細孔性ポリオレフィン膜を第一微細孔性膜/第二微細孔性膜/第一微細孔性膜/の順に、厚みの比が40/20/40になるように積層した。
比較例2
【0136】
第一及び第二微細孔性膜を別々に押出し成形して、第二微細孔性膜/第一微細孔性膜/第二微細孔性膜の順番で、厚み比が10/80/10になるように積層した以外は、実施例1と同様に製造した。
比較例3
【0137】
第一微細孔性膜/第二微細孔性膜/第一微細孔性膜の順位に、厚み比が10/80/10になるように積層し、乾燥後の再延伸を行わない以外は比較例1と同様に製造した。
比較例4
【0138】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が50%の第一ポリエチレンレジン及び50%の第一ポリプロピレンレジンを含む以外は実施例1と同様に製造した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。第一ポリオレフィン組成物中に第二ポリプロピレンレジンは含まれていない。
比較例5
【0139】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が50%の第一ポリエチレンレジン及び50%の第二ポリプロピレンレジンを含む以外は実施例1と同様に製造した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。第一ポリオレフィン組成物中に第一ポリプロピレンレジンは含まれていない。
比較例6
【0140】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が50%の第一ポリエチレンレジンと共に、12.5%の第一ポリプロピレンレジン及び37.5%第二ポリプロピレンレジンを含む以外は実施例1と同様に製造した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。
比較例7
【0141】
第一ポリオレフィン溶液の第一ポリオレフィン組成物が50%の第一ポリエチレンレジンと共に、25%の第一ポリエチレンレジン及び2x10及び8のMWDを有する第二ポリエチレンレジンを25%含む以外は実施例1と同様に製造した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。
比較例8
【0142】
第一ポリオレフィン溶液中の第一ポリオレフィン組成物が80%の第一ポリエチレンレジンと20%の、2x10及び8のMWDを有する第二ポリエチレンレジンとを25%含む以外は実施例1と同様に製造した。パーセンテージは第一ポリオレフィン組成物の重量に基づく。第一ポリオレフィン組成物中に第一及び第二ポリプロピレンレジンは含まず、乾燥した3層膜の最延伸は行わなかった。
性質
【0143】
実施例1乃至6と比較例1乃至8の多層微細孔性膜の性質を以下の表1及び2にまとめた。


【0144】
表1より、本発明の多層微細孔性膜は、熱圧縮後にほとんど厚み及び空気透過性に変化をみせず、優れた電解質吸収性のほかに、空気透過性、ピン破裂強度、引っ張り強度、引っ張り伸び、シャットダウン温度、及びメルトダウン温度を含む各種性質を好適なバランスで有していることがわかる。本発明の多層微細孔性膜を含むリチウムイオン二次バッテリーはキャパシティー回復率が75%以上であり、このことは好適な温度保持能力を示している。
【0145】
一方、比較例の微細孔性膜はこれらの性質のバランスが好ましくない。この事は特に、105℃(従来の測定)において、測定されていたTD熱収縮率と溶融状態における最大TD収縮率とのバランスに関して当てはまる。パラメーターはメルトダウン温度において、またはこの温度付近において、膜の寸法安定性をよく表している。
【0146】
1つのバッテリーの欠陥として、バッテリーセパレーターフィルムとして用いた膜が高温で柔軟になり、膜の二次元安定性が、特に膜のエッジ付近(特にTDエッジ付近)で、損失することがある。膜の幅が減少するので、陽極と陰極の間のスペースが近いと、セパレーターがバッテリーの中でショートすることになる。このことは、特に角柱のバッテリーにおいて顕著であり、膜の幅が少しでも変化すると、バッテリーの反対側において、又はその付近で、陽極と陰極とが接触をしてしまう。この膜は、通常105℃では、あまり柔軟にはならないので、105℃における膜の収縮率はこのような欠陥の信頼できる指標とはならない。反対に、溶融状態での膜の最大TD熱収縮率は、膜のシャットダウン温度以上の温度で測定されているので、内部ショートのタイプについての好適な指標となる。表1及び表2から見てわかるように、溶融状態における最大TD収縮率から、105℃における膜の熱収縮率を予測することはできない。105℃において、12%以下のTD熱収縮率を有する膜は30%より大きな溶融状態における最大TD熱収縮率を有する。例えば、比較例7及び8を参照。本発明は部分的に膜のクラスの発見に基づいている。本明細書でのべるように、この膜は熱収縮性質のバランスが改善されている。
【0147】
優先権の基礎となる出願を含む、全ての試験、試験手順、及び他の引用文献は、それらの開示が本発明と矛盾せず、参照により援用が法律において認められているすべての法域において、参照により本明細書に援用する。
【0148】
例示的な形態で説明をしてきたが、特に本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、他の変更を当業者が容易に行えることができることは理解されるであろう。即ち、添付の特許請求の範囲は本明細書の実施例及び各種説明に限定されるべきではなく、本発明の属する分野の当業者により均等であるとされている全ての技術的特長を含む、本明細書における特許性のある全ての技術的特長から構成されている。
【0149】
数値限定の下限値及び上限値が列挙されているが、任意の下限値と上限値を組み合わせた範囲も意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンとポリプロピレンを含み、3,500mN以上のピン破裂強度、700秒/cm以下の熱圧縮後の空気透過性、及び20%以下の溶融状態における最大収縮率を有する、多層微小孔性膜。
【請求項2】
前記膜が1つの層がそれぞれ面接合している少なくとも1つの第一微細孔性膜及び少なくとも1つの第二微細孔性膜を含み、第一微細孔性膜層が第一ポリエチレン、第一ポリエチレンとは異なる第二ポリエチレン、第一ポリプロピレン、及び第一ポリプロピレンとは異なる第二ポリプロピレンを含み、第二微細孔性膜層が第一ポリエチレン及び第二ポリエチレンを含む、請求項1の膜。
【請求項3】
第一層が(a)1.0x10未満の重量平均分子量(Mw)を有する第一ポリエチレンを30乃至60%、(b)1.0x10以上のMwを有する第二ポリエチレンを5乃至15%、(c)0.8x10以上のMw及び80J/g以上の融解熱(△Hm)を有する第一ポリプロピレンを20乃至40%、及び(d)0.8x10未満のMw及び80J/g以上の△Hmを有する第二ポリプロピレンを10乃至30%(パーセンテージは第一微細孔性層の重量に基づく)を含み、
第二層が、第二微細孔性層の重量に基づき、(a)1.0x10未満のMwを有する第二層の第一ポリエチレンを60乃至90%及び(a’)1.0x10以上のMwを有する第二ポリエチレンを10乃至40%含む、請求項2に記載の膜。
【請求項4】
第一微細孔性膜層が第一微細孔性膜層の重量に基づいて、(a)4.5x10乃至6.5x10の範囲のMw及び2乃至10の範囲のMWDを有する第一ポリエチレンを40乃至60%、(b)1.1x106乃至5x106の範囲のMw及び2乃至10の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンを5乃至12%、(c)0.9x10乃至2x10の範囲のMw、1.5乃至10の範囲のMWD、及び105J/g以上125J/g以下の△Hmを有する第一ポリプロピレンを25乃至40%、及び(d)4x10乃至7.5x10の範囲のMw、2乃至20の範囲のMWD、及び90J/g以上105J/g未満の△Hmを有する第二ポリプロピレンを含み、並びに、第二微細孔性膜層が、第二微細孔性膜層の重量に基づいて(a)4.5x10乃至5x10の範囲のMw及び2乃至10の範囲のMWDを有する第二層の第一ポリエチレンを70乃至85%と、(a’)1.1x10乃至5x10の範囲のMw及び2乃至10の範囲のMWDを有する第二ポリエチレンを15乃至30%含む、請求項3の多層微細孔性膜。
【請求項5】
前記膜が、第一微細孔性膜層の重量に基づいて、
(a)1.0x10未満のMwを有する第一ポリエチレンを30乃至65%、(b)1.0x106以上のMw有する第二ポリエチレンを5乃至15%、(c)0.8x10以上のMw及び80J/g以上の△Hmを有する第一ポリプロピレンを20乃至40%、及び(d)0.8x10未満のMw及び80J/g以上の△Hmを有する第二ポリプロピレンを含む第三の微細孔性層を含み、第二微細孔性膜層が第一微細孔性膜層と第三微細孔性膜層の間にある、請求項3又は4に記載の多層微細孔性膜。
【請求項6】
前記膜が3μm以上の厚みを有し、150℃以上のメルトダウン温度の1つ以上を有し、20%以下の溶融状態における最大収縮率を有し、400秒/100cm以下の空気透過性を有し、25乃至80%の孔隙率を有し、少なくとも1つの水平方向における引張り強度が40,000kPaであり、引っ張り伸びが100%以上であり、少なくとも1つの水平方向における熱収縮率が12%以下であり、熱圧縮後の厚み変化が10%以下であり、電解液吸収速度が1.5以上であり、又は表面粗さが3x10nm以上である、請求項3乃至5のいずれかに記載の多層微細孔性膜。
【請求項7】
2層又は3層膜である、請求項3乃至6のいずれかに記載の多層微細孔性膜。
【請求項8】
第一微細孔性膜層と第二微細孔性膜層とが、第一/第二;第一/第二/第一;第一/第二/第一/第二、又は第一/第二/第一/第二/第一の順で積層され、お互いに面接合している、請求項7の多層微細孔性膜。
【請求項9】
第二微細孔性膜層が第一微細孔性膜層よりも多くの第一ポリエチレンを含み、多層微細孔性膜中の第一ポリエチレンの総量が多層微細孔性膜の重量に基づいて、少なくとも37.5%である、請求項8の多層微細孔性膜。
【請求項10】
少なくとも1つの陽極及び少なくとも1つの陰極、電解液、及び陽極と陰極の間に位置するバッテリーセパレーターを含み、前記バッテリーセパレーターはポリエチレンとポリプロピレンを含む多層微細孔性膜を含み、前記多層微小孔性膜が3,500mN以上のピン破裂強度、700秒/cm以下の熱圧縮後の空気透過性、及び20%以下の溶融状態における最大収縮率を有する、バッテリー。
【請求項11】
(1a)第一ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせて第一混合物を形成する工程であって、前記第一混合物は(a)1.0x10未満の重量平均分子量(Mw)を有する第一ポリエチレンを30乃至65%、(b)1.0x10以上のMw有する第二ポリエチレンを5乃至15%、(c)0.8x10以上のMw及び80J/g以上の融解熱(△Hm)を有する第一ポリプロピレンを20乃至40%、及び(d)0.8x10未満のMw及び80J/g以上の△Hmを有する第二ポリプロピレンを10乃至30%(パーセンテージは第一微細孔性層の重量に基づく)を含む工程、
(1b)第二ポリオレフィン組成物と少なくとも1つの希釈剤を組み合わせて第二混合物を形成する工程であって、前記第二ポリオレフィン組成物は第二微細孔性層の重量に基づき、(a)1.0x10未満のMwを有する第一ポリエチレンを60乃至90%及び(a’)1.0x10以上のMwを有する第二ポリエチレンを10乃至40%含む工程、
(2)第一及び第二混合物をダイ(複数含む)を通じて押出し成形して、第一混合物を含む第一層と第二混合物を含む第二層とがお互いに面接合している押出し成形物を形成する工程、
(3)この押出し成形物を冷却して冷却された押出し成形物を形成する工程、
(4)冷却された押出し成形物を、高い延伸温度で少なくとも1方向に延伸して、延伸シートを形成する工程、
(5)延伸シートから希釈剤の少なくとも一部分を除去して膜を形成する工程、
(6)この膜を少なくとも1方向に延伸して、延伸された膜を形成する工程、及び
(7)工程(6)で形成された延伸された膜を熱硬化して多層微細孔性膜を形成する工程を含む、方法。
【請求項12】
工程(4)及び(5)の間に、延伸されたシートが延伸温度の±5℃の温度で熱硬化される熱硬化工程処理工程(4i)、工程、工程(4i)の後で工程(5)の前に、延伸されたシートがポリオレフィン組成物の結晶分散温度からポリオレフィン組成物の融点+10℃の温度で加熱されたロールと接触する、加熱ロール処理工程(4ii)、及び工程(4ii)の後で工程(5)の前に行う、延伸シートが加熱溶媒に接触させる、加熱溶媒処理工程(4iii)を更に含む、請求項11の方法。
【請求項13】
更に、工程(5)の後に、延伸温度の±5℃の温度で熱硬化させる、熱硬化処理工程(5i)及び工程(5i)の後に、熱硬化させた膜をα線、β線、γ線、及び電子ビームの1つ以上から選択されるイオン化光線照射により架橋する、架橋工程(5ii)を含む、請求項11又は12の方法。
【請求項14】
更に、工程(7)の後に、熱硬化させた微小孔性膜をモノマーグラフト処理、硫化処理、及びコロナディスチャージ処理の1つ以上により、親水性を付与する、親水化処理工程(7i)及び/又は工程(7)の後に、熱硬化した微小孔性膜を細孔性ポリプロピレン、細孔性フルオレレジン、細孔性ポリイミド、及び細孔性ポリフェニレンスルフィドの1つ以上でコーティングする、表面コーティング処理工程(8)を更に含む請求項11乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
(a)第一ポリエチレンが、4.5x10乃至6.5x10の範囲のMw及び2乃至10の範囲のMWDを有する、エチレンホモポリマー及び/又はエチレン/αオレフィンコポリマーの1つ以上であって、(b)第二ポリエチレンが、1.1x10乃至5x10の範囲のMw及び2乃至10の範囲のMWDを有する、エチレンホモポリマー及び/又はエチレン/αオレフィンコポリマーの1つ以上であって、(c)第一ポリプロピレンが0.9x10乃至2x10の範囲のMw、1.5乃至10の範囲のMWD、及び/又は105J/g以上125J/g以下の範囲の△Hmを有する、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレン/αオレフィンコポリマーの1つ以上であり、及び(d)第二ポリプロピレンが4.5x10乃至7.5x10の範囲のMw、2乃至20の範囲のMWD、及び90J/g以上105J/g未満の△Hmを有する、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレン/αオレフィンコポリマーの1つ以上である、請求項11乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記多層微細孔性膜が第一の厚みを有する第一層と第二の厚みを有する第二層を含み、第一の厚みと第二の厚みの比が、10/90乃至75/25の範囲である、請求項11乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記多層微細孔性膜が3層以上の層を含み、第一層が第一の厚み、T1を有し、第二層が第二の厚み、T2を有し、第一混合物から形成された第三の層が第三の厚み、T3を有し、第二層が第一層と第三層の間に位置し、(T1+T3)/T2が10/90乃至75/25の範囲である、請求項11乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
第一及び第三層が膜の表面層であり、第二層が第一層及び第三層と面接合している、請求項17の方法。
【請求項19】
請求項11乃至18のいずれかにより製造された多層微細孔性膜。
【請求項20】
膜が3,500mN以上のピン破裂強度、700秒/cm3以下の熱圧縮後の空気透過性、及び20%以下の溶融状態における最大収縮率を有する、請求項19の多層微細孔性膜。

【公表番号】特表2011−500354(P2011−500354A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528584(P2010−528584)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/JP2008/068915
【国際公開番号】WO2009/048175
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】