説明

微小試料台、その作成方法、微小試料台集合体、および試料ホルダ

【課題】試料ホルダを運搬中に微小試料片Sの破損を回避すること。
【解決手段】微小試料台10は、全てシリコン製であり、基部11、固定部12及びガード部13を有する。微小試料片Sは、固定部12の頂部に立てて固定される。微小試料台10は、基部11の上面11Aに2本の固定部12と3本のガード部13が交互に突設された一体化構造である。ガード部13の厚さは固定部12よりも厚く、ガード部13の高さ(Z方向の長さ)は固定部12よりも高く作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察などに供するための微小試料を固定する微小試料台および微小試料台を有する試料ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや半導体デバイスから採取した薄片状の微小試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察するには、微小試料の電子線照射領域(観察領域)を極力薄くする必要がある。このような薄片化技術としては、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1の技術では、試料台の上面に微小試料を立てて固定し、その試料台の側面を薄い半切りメッシュの表面に貼着し、この状態で微小試料の表面にほぼ平行に集束イオンビームを照射して微小試料を薄片化する。薄片化された微小試料をTEM観察するときは、ピンセット等で半切りメッシュ部分を把持してTEMの観察ステージまで運んで取付けを行う。
【0003】
【特許文献1】特開2006−226970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、試料台の側面を半切りメッシュの表面に貼着するので、試料台の厚さは、半切りメッシュの厚さ分だけ増えたのと同じとなる。従って、荷電粒子ビームを照射して薄片化の除去加工を行う際に、微小試料だけではなく半切りメッシュの切り欠き端面に対しても照射が行われ、半切りメッシュの逆スパッタにより、微小試料が汚染されるという問題が生じる。
【0005】
また、ピンセット等で半切りメッシュ部分を把持して微小試料を移動する際に、他の部材に接触させたり、落下させて微小試料を破損する問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明による試料台は、加工処理が施される微小試料を固定するための微小試料台であって、基部と、基部に立設され、微小試料が固定される固定部と、固定部を挟んで基部に設けられるガード部とを設けることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の微小試料台において、ガード部は固定部よりも高い強度を有するように形成されることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2に記載の微小試料台において、ガード部は固定部よりも高く形成されることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微小試料台において、固定部が複数個並設されることを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の微小試料台において、基部と固定部の積層方向をシリコンウエハの厚さ方向とし、そのシリコンウエハからマイクロマシニング技術により一体で作製されることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の微小試料台において、加工処理は荷電粒子ビームによる薄片化処理であることを特徴とする。
(7)請求項7の発明による微小試料台の作成方法は、請求項5に記載の微小試料台の製造方法において、シリコンウエハの表面から、エッチングおよびダイシングのいずれかにより溝を形成して基部、固定部、およびガード部を形成することを特徴とする。
(8)請求項8の発明による微小試料台集合体は、ウエハ上で請求項6に記載の微小試料台を複数同時に作製し、それら複数の微小試料台は、それらの底面でウエハと一体化されていることを特徴とする。
(9)請求項9の発明による試料ホルダは、荷電粒子ビームで薄片化処理される微小試料を固定する微小試料台と、荷電粒子ビームが照射されないように微小試料台を固定した台座とを備えることを特徴とする。
(10)請求項10の発明は、請求項9に記載の試料ホルダにおいて、台座は薄板の形状を呈し、薄板の端面に微小試料台を固定する固定面を設け、微小試料台の底面を固定面に固定し、微小試料の立設方向が薄板の面方向と一致していることを特徴とする。
(11)請求項11の発明は、請求項10に記載の試料ホルダにおいて、微小試料台は、基部と、基部に立設され、微小試料を立設して固定する固定部とを有し、基部は固定部よりも厚く形成され、薄板の厚みは基部の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の試料ホルダによれば、台座の逆スパッタによる微小試料の汚染を防止することができる。
本発明の微小試料台によれば、ガード部を設けたので、微小試料の破損を防止することができる。
本発明の微小試料台の作成方法によれば、大量の微小試料台を一括して作成することができる。
本発明の微小試料台集合体によれば、一括して作成した大量の微小試料台を個片化した後の取扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態による微小試料台および試料ホルダについて図1〜6を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態による試料ホルダを模式的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)はI−I線断面図、図1(c)は図1(b)の部分拡大図である。図2(a)は、実施の形態による微小試料台の構造を模式的に示す斜視図である。図2(b)、(c)は従来例と実施の形態による作用効果を説明する図である。図1、図2(a)では、XYZ直交座標で方向を表す。
【0009】
図1を参照すると、試料ホルダ1は、微小試料台10を台座メッシュ100に固定した構造である。例えば、微小試料台10は、ほぼ半円板形状の台座メッシュ100の切り欠き端面100Aに載置されて貼着固定される。すなわち、図1(b)に示されるように、微小試料台10と台座メッシュ100が上下に固定される。微小試料片Sは、固定部12の頂部である上面に立てて固定される。微小試料片Sを固定部12の側面に固定しても良い。微小試料台10と台座メッシュ100が上下に固定されているため、後述するように、微小試料片Sの薄片化調製の際に微小試料片Sの汚染を防止することができ、バックグラウンドノイズの少ない観察や測定が可能となる。
【0010】
微小試料台10は、半導体ウエハや半導体デバイスから採取した直方体ブロック状の微小試料片Sを接着などにより保持して、透過型電子顕微鏡(TEM)観察あるいはオージェ電子分光(AES)に供するために、微小試料片Sの薄片化調製を行う作業台として用いられる。そして、試料ホルダ1は、顕微鏡観察あるいは分光分析の際には、微小試料片Sを微小試料台10に保持したまま、台座メッシュ100の部分をピンセットなどで把持されて顕微鏡装置あるいは分光装置へ運搬され、ステージにセットされる。
【0011】
図1、図2(a)を参照しながら微小試料台10について詳しく説明する。微小試料台10はシリコン製であり、直方体形状の基部11、基部11の上面に立設されて基部11よりも薄い固定部12及び固定部12を挟んで設けられるガード部13を有する。微小試料台10は、基部11の上面11Aに2本の固定部12と3本のガード部13が交互に突設された一体化構造である。強度保持の観点から、基部11の厚さ(Y方向の長さ)は、固定部12、ガード部13よりも厚く作製される。また、ガード部13の厚さは固定部12よりも厚く、ガード部13の高さ(Z方向の長さ)は固定部12よりも高く作製される。固定部12に立設する微小試料片Sの頂部よりもガード部13の頂部を高くするのが好ましい。
【0012】
図1(c)の部分断面図に示されるように、固定部12のエッジ12eと基部11のエッジ11eを結んだ線分が垂直軸となす傾斜角度θが5〜30°に入るように、基部11の厚さと固定部12の厚さ及び高さが調整されている。
【0013】
固定部12の幅(X方向の長さ)と厚さ(Y方向の長さ)は、微小試料片Sの寸法などに応じて任意に形成することができる。例えば、厚さを5μm一定とし、幅を5〜500μmの範囲で任意に変えることができる。微小試料片Sは、その表面、すなわち薄片化調製が行われる平面がXZ面に平行となるように、固定部12に立てて固定される。
【0014】
上述した試料ホルダ1において、台座メッシュ100は薄板の形状を呈し、薄板の上端面に微小試料台10を固定する切り欠き端面(固定面)100Aが設けられている。そして、微小試料台10の底面を切り欠き端面100Aに固定し、微小試料片Sの立設方向が薄板の面方向と一致するようにしている。
【0015】
上述したように、微小試料台10は、固定部12の近傍の両側にガード部13を配設しているので、試料ホルダ1を運搬中に他の部材に接触させたり、落下させた場合でも、ガード部13のガード効果により微小試料片Sの破損を回避することができる。特に、先端の尖った他の部材に対しても、ガード部13が固定部12に接近して設けられているため、ガード部13のガード効果は有効に働く。
【0016】
図1に示す状態で、上述した構造と寸法を有する微小試料台10に微小試料片Sを固定して微小試料片Sの薄片化調製を行い、その後に微小試料片SのTEM観察あるいはAES微小分析を行うべく、それらの装置にセットして用いられる。薄片化調製には、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で加工する方法が用いられる。FIB加工法では、例えば細く絞ったGaビームを−Z方向に対して浅い角度で微小試料片Sへ照射することにより、0.1μmレベルに薄片化する。このとき、固定部12も同時に薄く加工される。従って、固定部12の厚さは、このGaビームの入射角からも制限される。同様に、基部11の厚さも制限される。
【0017】
FIB加工段階では、微小試料片Sの表面には、Gaビームの照射による逆スパッタにより異物などが付着する可能性がある。その発生源は、微小試料台10と台座メッシュ100である。特に、台座メッシュ100はモリブデンなどの金属で作製されるため、台座メッシュ100へのGaビーム照射は極力避ける必要がある。そのためには、台座メッシュ100の切り欠き端面100A上に微小試料台10を載置する構造は非常に有効である。
【0018】
図2(c)に示すように、台座メッシュ100の側面に微小試料台10を固定した場合、イオンビームなどの荷電粒子ビームが台座メッシュ100の切り欠き端面100Aに照射され、台座メッシュ100を逆スパッタする。この点、図2(b)の実施の形態のように、微小試料台10を台座メッシュ100の切り欠き端面100Aの上面に設置することにより、荷電粒子ビームが台座メッシュ100を逆スパッタすることがない。なお、このような作用効果を得る微小試料台にあっては、ガード部13は必須の構成ではない。
【0019】
なお、微小試料片Sの表面に付着した異物を除去する方法としては、例えばArビームをYZ面に対して低角度で、微小試料台10の下方から微小試料片Sへ照射するイオンミリングの手法が用いられる。
【0020】
次に、本実施の形態の微小試料台10の製造工程について、図3〜図5に示す工程Aから工程Rまでを詳しく説明する。図3〜図5でも、図1,2に対応させたXYZ直交座標で方向を表す。
本実施の形態の微小試料台10は、単結晶シリコンウエハを材料としてマイクロマシニングにより多数が作製され、微小試料台10の上下方向(Z方向)が単結晶シリコンウエハの厚さ方向となるように形成される。
【0021】
図3は、微小試料台10の製造工程A〜Fを説明する図であり、図3(a1)〜(a6)は微小試料台10が形成される単結晶シリコンウエハを上から見た部分平面図、図3(b1)〜(b6)は、それぞれ図3(a1)〜(a6)のII−II線に沿った部分断面図である。
【0022】
工程Aでは、単結晶シリコンウエハ101をベース基板102に熱硬化性樹脂により接着する。接着作業は、熱硬化性樹脂ペーストをスピンコータによりベース基板102上に塗布し、単結晶シリコンウエハ101を貼付けた後にホットプレートで加熱する。ベース基板102は、製造工程終盤で多数の微小試料台10が分離しないようにするためのものであり、製造プロセスに支障がなければどのような材料を用いてもよいが、単結晶シリコンウエハ101と同一のもの、あるいは熱膨張率の差が小さい材料を用いるのが好ましい。
【0023】
工程Bでは、単結晶シリコンウエハ101上にスパッタリングによりSiO膜103を成膜する。
工程Cでは、SiO膜103の表面にスピンコータによりレジスト104を塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行う。
【0024】
工程Dでは、フォトマスクを用い、マスクアライナーによりレジスト104のパターン露光と現像を行う。現像によりパターン外の不要なレジスト層を除去する。図3(a4)に示すように、X方向に形成された3個のパターンを含む領域が1つの微小試料台10を構成する単位となるので、図3(a4)には2つの単位が示されている。
【0025】
工程Eでは、レジスト104をマスクとしてSiO膜103をバッファード弗酸でウエットエッチングし、レジスト104で覆われていない部分のSiO膜103を除去する。
工程Fでは、リムーバによりマスクとして使用されたレジスト104を除去する。
【0026】
図4は、微小試料台10の製造工程G〜Lを説明する図であり、図4(a1)〜(a6)は単結晶シリコンウエハを上から見た部分平面図、図4(b1)〜(b6)は、それぞれ図4(a1)〜(a6)のII−II線に沿った部分断面図である。
【0027】
工程Gでは、シリコンウエハ101のSiO膜103が形成された面にスパッタリングによりAl膜105を成膜する。
工程Hでは、Al膜105の表面にスピンコータによりレジスト106を塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行う。
【0028】
工程Iでは、フォトマスクを用い、マスクアライナーによりレジスト106のパターン露光を行う。現像によりパターン外の不要なレジスト層を除去する。図4(a3)に示すように、X方向に形成された1単位のパターンは、3個の大きなレジストパターン106bと2個の小さなレジストパターン106aを含んでいる。
【0029】
工程Jでは、レジストパターン106a,106bをマスクとしてAl膜105を混酸P液でウエットエッチングし、レジストパターン106a,106bで覆われていないAl膜105を除去する。その結果、図4(b4)に示すように、単結晶シリコンウエハ101上に、SiO膜103b、Al膜105bおよびレジスト106bからなる3層の大きなパターンと、Al膜105aおよびレジスト106aからなる2層の小さなパターンが残る。
【0030】
工程Kでは、残存するレジストパターン106a,106bをリムーバで除去する。
工程Lでは、パターンが形成された表面にスピンコータによりレジスト107を塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行う。
【0031】
図5は、微小試料台10の製造工程M〜Rを説明する図であり、図5(a1)〜(a6)は単結晶シリコンウエハを上から見た部分平面図、図5(b1)〜(b6)は、それぞれ図5(a1)〜(a6)のII−II線に沿った部分断面図である。
【0032】
工程Mでは、フォトマスクを用い、マスクアライナーによりレジスト107のパターン露光を行う。現像によりパターン外の不要なレジスト層を除去する。107Aは、マスクの遮蔽領域を示し、レジスト107が残存する領域である。この残存領域は、工程Iで説明した3個の大きなパターン106bと2個の小さなパターン106aを含む領域である。
【0033】
工程Nでは、レジスト107のパターンをマスクとしてICP−RIE(inductively coupled plasma - reactive ion etching)により、シリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。その結果、図5(b2)に示されるように、シリコンウエハ101に段差が形成される。
【0034】
工程Oでは、マスクとして用いたレジスト107をリムーバで除去する。これにより、Al膜105a,105bのパターンが露出する。
【0035】
工程Pでは、Al膜105a,105bのパターンをマスクとしてICP−RIEによりシリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。その結果、図5(b4)に示されるように、シリコンウエハ101に段差構造が形成される。すなわち、微小試料台10の固定部12となる101a、ガード部13となる101b、基部11となる101cが形成される。101a、101bおよび101cは、単結晶シリコンウエハ101から一体で形成されたものである。
【0036】
工程Qでは、Al膜105a,105bのパターンを混酸P液でウエットエッチングして除去する。これにより、パターンとなっているSiO膜103bが露出する。
【0037】
工程Rでは、露出したSiO膜103bのパターンをマスクとしてICP−RIEによりシリコンウエハ101を厚さ方向(−Z方向)にドライエッチングする。このドライエッチングにより、シリコンウエハ101のSiO膜103bのパターンが存在しない領域は一様に厚さを減じる。その結果、固定部12となる101aは、ガード部13となる101bよりも一様に厚さを減じた分だけ高さが低くなる。この工程Rが終わった後に、残存するSiO膜103bをバッファード弗酸でウエットエッチングして除去する。
【0038】
図6は、上述した実施の形態のプロセスによって作成された微小試料台10を模式的に示す図であり、図6(a)は上から見た部分平面図、図6(b)は図6(a)のII−II線に沿った部分断面図である。図6に示されるように、上述した製造工程AからRまでを順次行うことにより、2つの微小試料台10が形成される。最後に、土台として用いられたベース基板102から個々の微小試料台10を分離し、微小試料台10が完成する。
【0039】
上記の製造工程では、2個の微小試料台10についての一連の作製手順を説明したが、実際の製造工程は、シリコンウエハ単位で行われる、いわゆるバッチ処理である。このバッチ処理では、フォトリソグラフィーを主体とするマイクロマシニングにより、1枚のシリコンウエハから多数の微小試料台10を一括で作製することができ、大幅な製造コストの削減が期待できるものである。さらに、微小試料台10の高さ方向がシリコンウエハの厚さ方向になるように加工するので、材料を無駄なく使用できる。
【0040】
上述したように、シリコンウエハ上で同時に作製された複数の微小試料台は、それらの底面でウエハと一体化されている。これを微小試料台集合体と呼ぶ。すなわち、一括して作成した多数の微小試料台10はその底面においてベース基板102により接続されている。したがって、個片化する際の微小試料台の取扱いや作業性が向上する。
【0041】
個々に分離された微小試料台10は、図1に示されるように、台座メッシュ100の切り欠き端面100Aに貼着固定され、試料ホルダ1が完成する。すなわち、本実施の形態の試料ホルダ1は、微小試料台10の側面11Bが台座メッシュ100の側面100Bに固定されるのではなく、図1(b)に示されるように、微小試料台10と台座メッシュ100が上下に固定される。切り欠き端面100Aは、微小試料台10の側面からはみ出していないので、図2(b)に示すように、FIB加工による微小試料片Sの薄片化調製の際にFIBが照射されることはない。したがって、微小試料片Sの汚染を防止することができ、バックグラウンドノイズの少ない観察や測定が可能となる。
【0042】
本実施の形態の微小試料台10は、固定部12の近傍に、たとえば固定部12を挟んでガード部13を配設しているので、試料ホルダ1を運搬中に他の部材に接触させたり、落下させたりした場合でも、ガード部13のガード効果により微小試料片Sの破損を回避することができる。特に、先端の尖った他の部材に対しても、ガード部13が固定部12に接近して設けられているため、ガード部13のガード効果は有効に働く。
【0043】
また、微小試料台10は、マイクロマシニング技術によりシリコンウエハから一括で多数同時に作製できるので、1個当りの製造コストを大幅に削減できる。また、微小試料台10の高さ方向がシリコンウエハの厚さ方向になるので、材料取りに有利である。微小試料台10同士においても、基部11、固定部12及びガード部13の各部品は一体で作製されているので、強度や寸法精度のばらつきが小さい。
【0044】
本実施の形態の微小試料台10にも様々な変形が考えられる。固定部12とガード部13の配置や個数、固定部12とガード部13の相対的な高さなどは、任意に変えることができる。たとえば、図7(a)に示すような左右対称形状の多段構造の試料台10Aでもよいし、図7(b)に示すような非対称形状の試料台10Bとしてもよい。また、図7(c)に示すように、固定部12Aとガード部13Aが一体構造の試料台10Cでもよい。さらに、図7(d)に示すように、複数の固定部12B1〜12B3の両側にガード部13Bを設けた試料台10Dでもよい。
【0045】
以上では、フォトリソグラフィーにより試料台を作成したが、とくに工程P〜Rをダイシングに代えて試料台を作成してもよい。なお、フォトリソグラフィー処理による加工、およびフォトリソグラフィー処理とダイシング処理による加工はマイクロマシニング技術による加工と呼ぶことができる。
【0046】
本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。例えば、ガード部13は、シリコンで一体製作せずに、基部11と固定部12を形成した後に、別種の材料で作ったガード部13を微小試料台10に付加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る試料ホルダを模式的に示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)はI−I線断面図、図1(c)は図1(b)の部分拡大図である。
【図2】図2(a)は実施の形態に係る微小試料台の構造を模式的に示す斜視図、(b)は実施の形態の効果を説明する図、(c)は従来の問題点を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る微小試料台の製造工程A〜Fを説明する図であり、図3(a1)〜(a6)は部分平面図、図3(b1)〜(b6)は、それぞれ図3(a1)〜(a6)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図4】実施の形態に係る微小試料台の製造工程G〜Lを説明する図であり、図4(a1)〜(a6)は部分平面図、図4(b1)〜(b6)は、それぞれ図4(a1)〜(a6)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図5】実施の形態に係る微小試料台の製造工程M〜Rを説明する図であり、図5(a1)〜(a6)は部分平面図、図5(b1)〜(b6)は、それぞれ図5(a1)〜(a6)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図6】実施の形態に係る微小試料台を模式的に示す図であり、図6(a)は部分平面図、図6(b)は図6(a)のII−II線に沿った部分断面図である。
【図7】本発明による微小試料台の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1:試料ホルダ 10:微小試料台
11:基部 12:固定部
13:ガード部 100:台座メッシュ
100A:切り欠き端面(固定面) 101:シリコンウエハ
102:ベース基板 103:SiO
105:Al膜 S:微小試料片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工処理が施される微小試料を固定するための微小試料台であって、
基部と、
前記基部に立設され、前記微小試料が固定される固定部と、
前記固定部を挟んで前記基部に設けられるガード部とを設けることを特徴とする微小試料台。
【請求項2】
請求項1に記載の微小試料台において、
前記ガード部は前記固定部よりも高い強度を有するように形成されることを特徴とする微小試料台。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微小試料台において、
前記ガード部は前記固定部よりも高く形成されることを特徴とする微小試料台。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微小試料台において、
前記固定部が複数個並設されることを特徴とする微小試料台。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の微小試料台において、
前記基部と固定部の積層方向をシリコンウエハの厚さ方向とし、そのシリコンウエハからマイクロマシニング技術により一体で作製されることを特徴とする微小試料台。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の微小試料台において、
前記加工処理は荷電粒子ビームによる薄片化処理であることを特徴とする微小試料台。
【請求項7】
請求項5に記載の微小試料台の製造方法において、
前記シリコンウエハの表面から、エッチングおよびダイシングのいずれかにより溝を形成して前記基部、固定部、およびガード部を形成することを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項8】
ウエハ上で請求項6に記載の微小試料台を複数同時に作製し、それら複数の微小試料台は、それらの底面で前記ウエハと一体化されていることを特徴とする微小試料台集合体。
【請求項9】
荷電粒子ビームで薄片化処理される微小試料を固定する微小試料台と、
前記荷電粒子ビームが照射されないように前記微小試料台を固定した台座とを備えることを特徴とする試料ホルダ。
【請求項10】
請求項9に記載の試料ホルダにおいて、
前記台座は薄板の形状を呈し、前記薄板の端面に前記微小試料台を固定する固定面を設け、
前記微小試料台の底面を前記固定面に固定し、前記微小試料の立設方向が前記薄板の面方向と一致していることを特徴とする試料ホルダ。
【請求項11】
請求項10に記載の試料ホルダにおいて、
前記微小試料台は、基部と、前記基部に立設され、前記微小試料を立設して固定する固定部とを有し、前記基部は前記固定部よりも厚く形成され、
前記薄板の厚みは前記基部の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする試料ホルダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate