説明

微生物を死滅させるとともに呼吸器感染症を治療する抗コリン作用薬を含む医薬組成物の使用

【課題】微生物を死滅させる薬剤及び/又は微生物による呼吸器感染症を治療する薬剤の提供。
【解決手段】式(1)の化合物(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、Rは、H、メチル又はOHを示し、R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す)を用いる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を死滅させる薬剤を調製し且つ/又は微生物による呼吸器感染症を治療する薬剤を調製するための下記式1の化合物の使用に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、
Rは、H、メチル又はOHを示し、
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す)。
本発明は、更に、上記式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい化合物の医薬組成物であって、医薬組成物がいかなる保存剤も含有しない、前記医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
式Iの化合物は、WO 02/32899やWO 91/04252から既知である。これら化合物は、有益な薬理学的性質を有し、呼吸器疾患の治療において、好ましくは炎症性及び/又は閉塞性呼吸器疾患の治療において、特に喘息又はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療において、極めて効果的な抗コリン作用薬として治療効果を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 02/32899
【特許文献2】WO 91/04252
【特許文献3】US 2004/0209954 A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】European Pharmacopoeia 4 (2002), General Text 5.1.3, Efficacy of Antimicrobial Preservation
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、式1の化合物の新規な使用を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、下記式1の化合物が殺菌効果を有し、特に、細菌や真菌のような微生物を死滅させるために使用し得ることがわかった。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、
Rは、H、メチル又はOHを示し、
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す)。
また、式1の化合物が、呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するのに適することもわかった。本発明の具体的な利点は、単一の活性物質、即ち、式1の化合物だけを用いて喘息又はCOPDもこれらの病気としばしば関連している呼吸器感染症も共に治療できる可能性である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1の化合物は、好ましくは吸入により投与される。適切な吸入用粉末を、このために用いることができ、適切なカプセル(インハレット)に充填することができ、対応する粉末吸入器を用いて投与できる。或はまた、適切な吸入用エアゾールを用いた吸入によって、投与することもできる。これらには、噴射剤ガスとして、例えば、HFA134a、HFA227又はこれらの混合物を含有する粉末吸入エアゾールも含まれるが、吸入用溶液、特に吸入用水溶液、エタノール溶液又はエタノール/水溶液も含まれる。
米国2004/0209954 A1には、グリコピロレート、メペンゾレート、イプラトロピウムのような抗コリン作用活性を有するある種の四級アミンがどのように抗菌活性を有するかが記載されているが、その中に挙げられた抗コリン作用薬のいずれもがスコピン構造を有しない。しかも、抗コリン作用薬グリコピロレート、メペンゾレート、イプラトロピウムと構造的に非常に異なる式1のスコピン誘導体は、米国2004/0209954 A1に言及されていない。
しかしながら、本発明の範囲内で、アニオンX - が、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、硝酸アニオン、マレイン酸アニオン、酢酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、酒石酸アニオン、シュウ酸アニオン、コハク酸アニオン、安息香酸アニオン及びp-トルエンスルホン酸アニオンより選ばれる、式1の化合物を用いることが好ましい。
アニオンX - が、塩素アニオン、臭素アニオン、4-トルエンスルホン酸アニオン及びメタンスルホン酸アニオンより選ばれる、式1の塩を用いることが好ましい。
X - が臭素アニオンである式1の化合物を含有する製剤が本発明によれば特に好ましい。
本発明の範囲内の式1の化合物について述べることは、この化合物の可能な無定形変態及び結変態にもすべてあてはまる。本発明の範囲内の式1の化合物について述べることは、この化合物から形成できるその可能な溶媒和物及び水和物にもすべてあてはまる。
R1及びR2が両方共フェニルを示し、Rがメチルを示し、X - が臭素アニオンを示す(スコピン2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロマイド)、式1の化合物を微生物を死滅させるとともに呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するために用いることが特に好ましい。R1及びR2が両方共フェニルを示し、Rがメチルを示し、X - が臭素アニオンを示す、式1の本化合物は、特に好ましくは吸入用水溶液で且つ0.1〜2.5質量パーセント、特に0.2〜1.5質量パーセントの濃度で、微生物を死滅させるとともに呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するために用いられる。
【0012】
R1及びR2が両方共2-チエニルを示し、RがOHを示し、X - が臭素イオンを示す(臭化チオトロピウム)、式1の化合物を微生物を死滅させるとともに呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するために用いることが特に好ましい。R1及びR2が両方共2-チエニルを示し、Rがヒドロキシルを示し、X - が臭素イオンを示す、式1の本化合物は、特に好ましくは吸入用水溶液で且つ0.005〜2.5質量パーセント、特に0.01〜0.5質量パーセントの濃度で、微生物を死滅させるとともに呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するために用いられる。
好ましくは、式1の化合物は、真菌及び細菌より選ばれる微生物を死滅させるために用いられる。式1の化合物は、好ましくは、 エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(例えば、ATCC 8739)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(例えば、ATCC 9027)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(例えば、ATCC 6538)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)(例えば、ATCC 6633)、ストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridans)(例えば、M1040)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(例えば、ATCC12344又はATCC 19615)、ナイセリア種(Neisseria spp.)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(例えば、ATCC 49 619)、コリネバクテリウム種(Corynebacterium spp.)、シュードモナス種(例えば、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa))、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)(例えば、ATCC 29342)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(例えば、ATCC 15442)、ヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)(例えば、ATCC 51907又はATCC 33391)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)(例えば、ATCC VR 1310)、モラクセラ・カタラーリス(例えば、ATCC 25238又はATCC 8176)、腸内細菌科、 クレブシエラ・ニューモニエ(例えば、ATCC 10031又はATCC 13883)及びバシラス種(Bacillus spp.)より選ばれる細菌を死滅させるか又はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(例えば、ATCC 10231)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(例えば、ATCC 16404)より選ばれる真菌を死滅させるために用いられる。式1の化合物は、特に好ましくは、エシェリキア・コリ(例えば、ATCC 8739)、スタフィロコッカス・アウレウス(例えば、ATCC 6538)、バシラス・サチリス(例えば、ATCC 6633)より選ばれる細菌を死滅させるとともにカンジダ・アルビカンス(例えば、ATCC 10231)及びアスペルギルス・ニガー(例えば、ATCC 16404)より選ばれる真菌を死滅させるために用いられる。
【0013】
本発明の他の好ましい実施態様は、呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するための式1の化合物の使用に関する。これらの呼吸器感染症は、好ましくは、エシェリキア・コリ(例えば、ATCC 8739)、シュードモナス・エルギノーザ(例えば、ATCC 9027)、スタフィロコッカス・アウレウス(例えば、ATCC 6538)、バシラス・サチリス(例えば、ATCC 6633)、ストレプトコッカス・ビリダンス(例えば、M1040)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(例えば、ATCC12344又はATCC 19615)、ナイセリア種、ストレプトコッカス・ニューモニエ(例えばATCC 49 619)、コリネバクテリウム種、シュードモナス種、(例えば、シュードモナス・エルギノーザ)、マイコプラズマ・ニューモニエ(例えば、ATCC 29342)、シュードモナス・エルギノーザ(例えば、ATCC 15442)、ヘモフィラス・インフルエンザ(例えば、ATCC 51907又はATCC 33391)、クラミジア・ニューモニエ(例えば、ATCC VR 1310)、モラクセラ・カタラーリス(例えば、ATCC 25238又はATCC 8176)、腸内細菌科、クレブシエラ・ニューモニエ(例えば、ATCC 10031又はATCC 13883)及びバシラス種(Bacillus spp.)より選択される細菌、特に、エシェリキア・コリ(例えば、ATCC 8739)、シュードモナス・エルギノーザ(例えば、ATCC 9027)、スタフィロコッカス・アウレウス(例えば、ATCC 6538)、バシラス・サチリス(例えば、ATCC 6633)によって引き起こされる。これらの呼吸器感染症は、また、特に、カンジダ・アルビカンス(例えば、ATCC 10231)及びアスペルギルス・ニガー(例えば、ATCC 16404)より選ばれる真菌によって引き起こされる。真菌のアスペルギルス・ニガー及びカンジダ・アルビカンス又はシュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス、バシラス・サチリス及びエシェリキア・コリより選ばれる細菌によって引き起こされる呼吸器感染症の治療用薬剤を調製するために式1の化合物を用いることが特に好ましい。
他の好ましい実施態様において、本発明は、式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい化合物を含有する医薬組成物であって、医薬組成物がいかなる追加の保存剤も含有しない、前記医薬組成物に関する
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、
Rは、H、メチル又はOHを示し、
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す)。
本発明の範囲内で、アニオンX - が、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、硝酸アニオン、マレイン酸アニオン、酢酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、酒石酸アニオン、シュウ酸アニオン、コハク酸アニオン、安息香酸アニオン及びp-トルエンスルホン酸アニオンより選ばれる、式1の化合物を用いることが好ましい。
アニオンX - が、塩素アニオン、臭素アニオン、4-トルエンスルホン酸アニオン及びメタンスルホン酸アニオンより選ばれる、式1の塩を用いることが好ましい。
X - が臭素アニオンである式1の化合物を含有する製剤が本発明の範囲内で特に好ましい。
本発明の式1の化合物は、好ましくは、吸入により投与される。適切なカプセル(インハレット)に充填される適切な吸入用粉末は、適切な粉末吸入器を用いて投与できる。或はまた、適切な吸入エアゾールの適用によって、薬剤を吸入することもできる。これらには、噴射剤ガスとして、例えば、HFA134a、HFA227又はこれらの混合物を含有する粉末吸入エアゾールと、当然、水、エタノール及び水/エタノール混合物より選ばれる溶媒中の式1の化合物の噴射剤を含む或いは噴射剤を含まない吸入用溶液とが含まれ、吸入用水溶液が好ましく、噴射剤を含まない水溶液が特に好ましい。
特に好ましい実施態様において、本発明は、R1及びR2が両方共フェニルを示し、Rがメチルを示し、X - が臭素イオンを示す(スコピン2,2-ジフェニルプロピオネートメトブロミド)式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい化合物を含有する医薬組成物であって、医薬組成物がいかなる保存剤も含有しないことを特徴とする、前記医薬組成物に関する。この医薬組成物は、スコピン2,2-ジフェニルプロピオネートメトブロマイドを含有する、好ましくは水性エアゾール製剤、より詳しくは噴射剤を含まない水性エアゾール製剤である。
【0016】
スコピン2,2-ジフェニルプロピオネートメトブロマイドは、好ましくは0.1〜2.5質量パーセントの濃度で、より詳しくは0.2〜1.5質量パーセントの濃度で、水性製剤中に存在する。この好適な製剤のpHは、好ましくは、本発明によれば、2.5〜6.5の範囲に、好ましくは3.0〜5.0の範囲に、好ましくは3.5〜4.5の範囲に、特に3.6〜4.4の範囲にある。
他の特に好適な実施態様において、本発明は、R1及びR2が2-チエニルを示し、Rがヒドロキシを示し、X - が臭素アニオン(臭化チオトロピウム)を示す、式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい化合物を含有する医薬組成物であって、医薬組成物がいかなる保存剤も含有しないことを特徴とする、前記医薬組成物に関する。この医薬組成物は、臭化チオトロピウムを含有する、好ましくは水性エアゾール製剤、より詳しくは噴射剤を含まないエアゾール製剤である。
臭化チオトロピウムは、好ましくは0.005〜2.5質量パーセントの濃度で、特に0.01〜0.5質量パーセントの濃度で水性エアゾール製剤に存在する。本発明の製剤のpHは、2.0〜4.5、好ましくは2.5〜3.5、好ましくは2.7〜3.3、更により好ましくは2.7〜3.2である。最も好ましくは、pHの上限が3.1である。
好適な噴射剤を含まない水性エアゾール製剤は、好ましくは、pHを調整するために必要な一つ又は複数の酸を更に含有する。
pHは、薬理的に許容され得る酸の添加により調整される。このために好適な無機酸の例は、以下の通りである: 塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸。特に適切な有機酸の例は、以下の通りである: アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等。好適な無機酸は、塩酸や硫酸である。活性物質と酸付加塩を形成する酸を用いることも可能である。有機酸のうち、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸、特にクエン酸が好ましい。所望される場合には、特に、酸性化特性に加えて他の特性を有する酸、例えば、香味剤或いは抗酸化剤として作用するもの、例えば、クエン酸又はアスコルビン酸の場合には、上述の酸の混合物を用いてもよい。無機酸として塩酸が特に挙げられる。
【0017】
所望される場合には、pHを正確に滴定するために薬理的に許容され得る塩基を用いてもよい。適切な塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。好適なアルカリイオンは、ナトリウムである。この種類の塩基を用いる場合には、最終医薬製剤に含有される得られた塩が、上述の酸と薬理的に適合することを確実にすることに注意しなければならない。
好適な噴射剤を含まない水性エアゾール製剤は、溶媒としての水及び式1の化合物の他に、防腐剤を除いて、錯化剤、特にエデト酸ナトリウム、他の共溶媒並びに他の補助剤及び添加剤、例えば、抗酸化剤、界面活性剤等を更に含有することができる。噴射剤を含まない水性エアゾール製剤の他の実施態様において、式1の化合物及び溶媒としての水は別として添加剤が全く存在しない。
錯化剤は、好ましくは、本発明の範囲内で錯結合させることができる分子を意味する。これらの化合物は、好ましくは錯化カチオン、最も好ましくは金属カチオンの効果を有しなければならない。
本発明の製剤は、好ましくは、錯化剤としてエデト酸(EDTA)又はその既知の塩(例えば、EDTAナトリウム又はEDTA二ナトリウム)の一つを含有する。エデト酸ナトリウム及びエデト酸二ナトリウムは、必要により、好ましくはこれらの水和物の形で、好ましくは二水和物の形で用いられてもよい。錯化剤が本発明の製剤の中に用いられる場合には、その含量は、好ましくは本発明の製剤の100ml当たり5〜20mgの範囲に、より好ましくは100ml当たり7〜15mgの範囲にある。特に好ましくは、本発明の製剤は、錯化剤、エデト酸ナトリウム又はエデト酸二ナトリウム又はその水和物の一つを、好ましくは本発明の製剤の100ml当たり約9〜12mg、より好ましくは100ml当たり約10mgの量で含有する。
【0018】
エデト酸ナトリウム及びエデト酸二ナトリウムに関してなされる所見は、同様に、錯化特性を有し且つそれらの代わりに、例えば、ニトリロトリ酢酸及びその塩を用いることができる、EDTA又はその塩に匹敵する他の可能な添加剤にもあてはまる。
本発明の製剤に他の薬理的に許容され得る補助剤を添加することもできる。これに関連して、補助剤及び添加剤は、活性物質製剤の品質を改善するために、活性物質でなく薬理的に適切な溶媒において活性物質と共に処方できる薬理的に許容され得る治療的に有効ないかなる物質をも意味する。好ましくは、これらの物質は、薬理効果が全くなく、所望の治療法に関連して望ましくない薬理効果もほとんど或いは少しもない。補助剤及び添加剤としては、例えば、最終医薬製剤の貯蔵寿命を延長する安定剤、抗酸化剤及び/又は保存剤が挙げられ、並びに香味剤、ビタミン及び/又は当該技術において既知の他の添加剤が挙げられる。添加剤には、薬理的に許容され得る塩、例えば、塩化ナトリウムも含まれる。
好適な賦形剤としては、pHを調整するために用いられていなければ抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンE、トコフェロール及び同様のビタミン又はヒト体内に存在するプロビタミンが挙げられる。
好適な共溶媒は、ヒドロキシル基又は他の極性基を含有するもの、例えば、アルコール-特にイソプロピルアルコール、グリコール-特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルである。但し、これらは、溶媒でも懸濁剤でもない。
【0019】
これに関連して用語補助剤及び添加剤は、活性物質製剤の定性特性を改善するために、一方では活性物質でなく、もう一方では保存剤でもない、薬理的に適切な溶媒において活性物質と処方し得る、薬理的に許容され得る治療的に有効ないかなる物質をも意味する。好ましくは、これらの物質は、薬理効果が全くなく、所望の治療法に関連して、望ましくない薬理効果もほとんど或いは少しもない。補助剤及び添加剤としては、例えば、界面活性剤、例えば、大豆レシチン、オレイン酸、ソルビタンエステル、例えば、ソルビタントリオレエート、ポリビニルピロリドン、他の安定剤、錯化剤、抗酸化剤、香味剤、ビタミン剤及び/又は当該技術において、既知の他の添加剤が挙げられる。添加剤としては、薬理的に許容され得る塩、例えば、塩化ナトリウムが挙げられる。
1の化合物の殺菌効果は、European Pharmacopoeia 4 (2002), General Text 5.1.3, Efficacy of Antimicrobial Preservationに記載される試験法を用いて、試験溶液( = 式1の化合物を含有する水溶液)とプラセボ溶液( = 式1の化合物を含まない同一水溶液)とを比較することによって実証することができる。試験溶液及びプラセボ溶液の所定容量を、各々同一量の具体的な微生物の播種溶液と合わせ、ホモジナイズし、微生物の増殖に適する温度と湿気でインキューベートする。所定の間隔で(例えば、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後、28日後)、播種製剤中の終結生物体(“コロニー形成単位”)を測定し、試験溶液とプラセボ溶液に得られた結果を比較する。
播種製剤中の発芽生物体(“コロニー形成単位”)の数を求めるために、これらの製剤から指定された間隔で試料を取り、不活性化剤No.5(3%のトゥイーン80、0.3%のレシチン、0.1%のヒスチジン)を含有するTSB培地(培地A)で希釈する。次に、これらの希釈液をメンブランろ過にかける。細菌又は真菌の数を求めるために、メンブランフィルタをTSA培地(培地B)とサブロー寒天(培地C)に連続して移した。TSA平板を30-35°Cで3-5日間、サブロー寒天平板を20-25°Cでいずれの場合にも5日間インキューベートした。次に、二つの平板についてコロニーを計数する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を死滅させる薬剤を調製するための下記式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい化合物の使用。
【化1】

(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、
Rは、H、メチル又はOHを示し、
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す。)
【請求項2】
微生物による呼吸器感染症を治療する薬剤を調製するための下記式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい前記化合物の使用。
【化2】

(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、
Rは、H、メチル又はOHを示し、
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す。)
【請求項3】
1の化合物が吸入により投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
1の化合物において、R1及びR2が両方共フェニルを示し、Rがメチルを示し、X - が臭素アニオンを示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
1の化合物が、水溶液中に0.1〜2.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
1の化合物が、水溶液中に0.2〜1.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
1の化合物において、R1及びR2が2-チエニルを示し、RがOHを示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
1の化合物が、0.005〜2.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
1の化合物が、0.01〜0.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
微生物が真菌又は細菌であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
微生物が、エシェリキア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス、バシラス・サチリス、ストレプトコッカス・ビリダンス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ナイセリア種、ストレプトコッカス・ニューモニエ、コリネバクテリウム種、シュードモナス種、マイコプラズマ・ニューモニエ、シュードモナス・エルギノーザ、ヘモフィラス・インフルエンザ、クラミジア・ニューモニエ、モラクセラ・カタラーリス、腸内細菌科、クレブシエラ・ニューモニエ及びバシラス種より選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
微生物が真菌であり、カンジダ・アルビカンス及びアスペルギルス・ニガーより選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
下記式1の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマー又はラセミ体の混合物の形であってもよい前記化合物を含有する医薬組成物であって、医薬組成物がいかなる追加の保存剤も含有しない、前記医薬組成物。
【化3】

(式中、X - は、1個の負電荷を有するアニオンを示し、
Rは、H、メチル又はOHを示し、
R1及びR2は、同じでも異なってもよく、フェニル又はチエニルを示す。)
【請求項14】
水性エアゾール製剤であることを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
R1及びR2が両方共フェニルを示し、Rがメチルを示し、X - が臭素アニオンを示すことを特徴とする、請求項13又は14に記載の吸入用水性エアゾール製剤。
【請求項16】
1の化合物が、0.1〜2.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項15に記載の吸入用水性エアゾール製剤。
【請求項17】
1の化合物が、0.2〜1.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項15に記載の吸入用水性エアゾール製剤。
【請求項18】
R1及びR2が両方共2-チエニルを示し、RがOHを示し、X - が臭素アニオンを示すことを特徴とする、請求項13又は14に記載の吸入用水性エアゾール製剤。
【請求項19】
1の化合物が、0.005〜2.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項18に記載の吸入用水性エアゾール製剤。
【請求項20】
1の化合物が、0.1〜0.5質量パーセントの濃度で存在することを特徴とする、請求項18に記載の吸入用水性エアゾール製剤。

【公表番号】特表2010−536712(P2010−536712A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527098(P2009−527098)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058722
【国際公開番号】WO2008/028805
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】