微生物検出方法及び微生物検出装置
【課題】 河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウム等の水系感染性微生物を蛍光物質が結合した標識抗体で標識し、粒子の蛍光強度を測定し検出対象微生物を検出するとき、より高精度で検出し、計数できる微生物検出方法及び微生物検出装置を提供する。
【解決手段】 検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、試料に含まれる粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出する微生物検出方法であって、上記粒子の前方散乱光強度並びに上記標識抗体による蛍光強度及び夾雑物に特有の蛍光強度とを測定し、測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数することとした。
【解決手段】 検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、試料に含まれる粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出する微生物検出方法であって、上記粒子の前方散乱光強度並びに上記標識抗体による蛍光強度及び夾雑物に特有の蛍光強度とを測定し、測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖沼等の環境水や上下水道の各処理プロセスの処理水等の水中に存在する原虫、細菌、ウイルスといった水系感染性微生物を検出する微生物検出方法及び微生物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中には多種多様な化学物質が存在するため、水道原水となる河川や湖沼等の環境水も様々な化学物質で汚染されていることがある。このような水環境の化学物質での汚染による水質問題のほかにクリプトスポリジウム等の原虫類、腸管出血性大腸菌0157やレジオネラ菌等の細菌、ウイルス等による水系感染症の発生が大きな問題となっている。
上記水系感染症のうち、特に新興の水系感染症の原因となっているクリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫の検査方法(例えば、厚生労働省から示された「クリプトスポリジウム暫定対策指針」1998年に指針の改正)によれば、クリプトスポリジウムの検査手順は大きく分けて、試料採取、ろ過濃縮、剥離懸濁、分離精製、免疫蛍光染色、顕微鏡観察からなる。
【0003】
しかしながら、従来のクリプトスポリジウム検査方法では、試料採取、ろ過濃縮、剥離懸濁、分離精製、免疫蛍光染色、顕微鏡観察の工程が必要であり、作業が煩雑で検査終了まで半日以上という長時間を要するため、作業者の負担が大きく、複数の試料を迅速に処理することは困難であるという問題を抱えている。
また、このクリプトスポリジウム検査方法では、クリプトスポリジウムの検出、観察を顕微鏡で行うため、作業者の熟練度が測定結果の精度、正確さに大きな影響を与えることとなっており、均一な測定精度が得られ難いという問題もある。
【0004】
また、上記クリプトスポリジウム検査方法では、河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウムを検出するとき、環境水中に多く含まれる藻類が標識抗体に非特的に結合することから、粒子を擬陽性として検出したり、藻類由来の蛍光が検出を妨害したりする可能性が大きく、高精度での検査結果が得られ難い。
【0005】
一方、原虫、細菌類等を含む微生物の検出方法あるいは検出装置として、特許文献1(特開2004−290119号公報)、特許文献2(特開平7−140148号公報)、特許文献3(特開2004−121143号公報)、特許文献4(特開2004−305173号公報)、特許文献5(特開2001−258590号公報)等が提供されている。
【0006】
しかし、これらの特許文献1ないし5も、上記河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウムを検出するとき、環境水中に多く含まれる藻類が標識抗体に非特的に結合することに起因して粒子を擬陽性として検出し、又は藻類由来の蛍光が検出を妨害するといった不都合について、問題を解決する手段を何ら提供するものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−290119号公報
【特許文献2】特開平7−140148号公報
【特許文献3】特開2004−121143号公報
【特許文献4】特開2004−305173号公報
【特許文献5】特開2001−258590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウム等の水系感染性微生物を蛍光物質が結合した標識抗体で標識し、粒子の蛍光強度を測定し検出対象微生物を検出するとき、より高精度で検出し、計数できる微生物検出方法及び微生物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、試料に含まれる粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出する微生物検出方法であって、上記粒子の前方散乱光強度並びに上記標識抗体による蛍光強度及び夾雑物に特有の蛍光強度とを測定し、測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る微生物検出方法は、別の形態で、検出対象微生物を、藻類のクロロフィルの蛍光波長と異なる蛍光波長を持つ蛍光物質が結合しかつ上記検出対象微生物を特異的に認識する標識抗体で標識し、標識された上記検出対象微生物を含む試料中の粒子について、上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と、藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度と、粒子の散乱光強度とを同時に測定するステップと、上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度とによるドットプロット、及び上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロットを作成するステップと、上記2つのドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域の範囲に分布する粒子を比較し、検出対象微生物の検出と該微生物の個数を計数するステップとを少なくとも実行することを特徴とする。
【0011】
この形態では、上記粒子の上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度によるドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域に分布する粒子が、上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロット内に設定した検出対象微生物存在領域にも分布するとき、その粒子を検出対象微生物として検出し、該微生物の個数を計数することが好適である。
【0012】
さらに、本発明は、別の側面で微生物検出装置であり、検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出するように構成された微生物検出装置において、上記検出対象微生物が含まれる試料に上記標識抗体に蛍光物質を励起する光を照射する光照射装置と、上記被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を測定する第1の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から上記試料中の夾雑物のクロロフィルを励起する波長の蛍光を測定する第2の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から被測定試料中の粒子の散乱光を測定する散乱光検出器と、上記各検出器で測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記環境水中の夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数する演算手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を蛍光物質が結合した標識抗体で標識し、検出対象微生物をその蛍光強度で検出するとき、環境水中に多く含まれる藻類等の夾雑物を擬陽性として検出するのを防止できて、検出対象微生物をより高精度で検出し、計数することができるようにした微生物検出方法及び微生物検出装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る微生物検出方法及び微生物検出装置について、その好適な実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係る微生物検出方法を実施するための装置について、一実施の形態を示す。本装置は、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を検出対象としている。
【0015】
図1において、1は検出対象微生物が含まれる被測定試料を流すフローセル、2は該フローセル1にフォーカスレンズ7を介して後述する光を照射する光照射装置である。
【0016】
上記被測定試料は次のようにして生成する。
まず、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を分離濃縮する。これには、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(1)中空糸膜、メンブレンフィルター等によるろ過による濃縮方法。
(2)抗体を結合させた免疫磁気ビーズによる濃縮方法。
(3)炭酸カルシウム等の無機物質の微粒子に吸着、凝集させ沈殿させる方法。
【0017】
次いで、得られた濃縮試料に、上記検出対象微生物を特異的に認識し、かつ蛍光物質が結合した標識抗体を添加する。
上記光照射装置2は、上記被測定試料中の上記標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射するもので、上記蛍光物質の励起波長に応じて照射光を変えるようになっている。
【0018】
3は上記フローセル1に流される被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を検出する第1の蛍光検出器で、上記被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を、フォーカスレンズ11を通し、ダイクロミックミラー8を透過させ、バンドパスフィルター9を通して検出するものである。
【0019】
4は第2の蛍光検出器で、環境水中の主な夾雑物である藻類の葉緑素(クロロフィル)を励起する波長の蛍光を検出するためのものである。第2の蛍光検出器4は、上記蛍光を、フォーカスレンズ11を通し、ダイクロミックミラー8で反射させ、ローパスフィルター10を通して検出する。
【0020】
5は前方散乱光検出器で、上記光照射装置2から照射され上記フローセル1に流される被測定試料中の粒子の前方散乱光を検出するものである。
上記第1の蛍光検出器3からの蛍光の検出信号、第2の蛍光検出器4からの蛍光の検出信号、及び上記前方散乱光検出器からの前方散乱光の検出信号は演算装置6に入力される。
【0021】
以上のように構成された微生物検出装置によって、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物に蛍光物質が結合した標識抗体を添加した被測定試料中の微生物を測定するにあたっては、上記のようにして検出対象微生物に上記標識抗体が十分結合した被測定試料を上記フローセル1に連続的に流し、このフローセル1に上記光照射装置2から光を照射して、上記第1の蛍光検出器3で蛍光物質が発する蛍光を検出し、第2の蛍光検出器4で夾雑物である藻類のクロロフィル(葉緑素)を励起する波長の蛍光を検出し、上記前方散乱光検出器5で前方散乱光を検出して、これらの上記信号を演算装置6に入力する。
【0022】
上記被測定試料中の微生物の粒子を精度よく測定するには、被測定試料をフローセル(光学セル)1中に連続的に流し、そこに上記光照射装置2から光を照射して、上記粒子個々の信号を検出し統計、計数処理する方法が好ましく、このような計測が可能な装置としてフローサイトメータが利用できる。
【0023】
このフローサイトメータは、上記被測定試料中の微生物の粒子をシース液とともに1個ずつ流し、この粒子に上記光照射装置2からレーザー光や紫外光を集光してその結果生じる、散乱光や蛍光等の光学的情報を検出することによりその粒子の大きさや形態、性質等を調べるように構成されている。したがって、上記フローセル1をフローサイトメータに組み込み、上記第1の蛍光検出器3で蛍光物質が発する蛍光、第2の蛍光検出器4で夾雑物である藻類のクロロフィル(葉緑素)を励起する波長の蛍光、及び上記前方散乱光検出器5で前方散乱光等を一括して計測することが好適である。
【0024】
次に、図2は、標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL1)と藻類のクロロフィルを励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL3)との2次元ドットプロットの模式図で、Aは検出対象微生物の存在領域、Bは藻類の存在領域を示す。
環境水中に含まれる主な夾雑物は藻類であり、この粒子のFL3強度は大きく、FL1強度は小さいため、藻類は主に図中のB内に分布することになる。一方、蛍光標識された検出対象微生物ではFL1強度が大きくなり、FL3強度は小さいため、図中のA(斜線枠)内に分布すると考えられ、かかる領域Aをこの2次元ドットプロットにおける検出対象微生物存在領域として設定できる。
【0025】
しかしながら、環境水中の夾雑物の中には標識抗体を非特異的に結合し、かかる粒子が検出対象微生物存在領域Aに混入し、この粒子を擬陽性として検出してしまうおそれがある。
【0026】
図4は、粒子の前方散乱光強度(FSC)と標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度[FL1(図2のFL1と同様)]との2次元ドットプロットの模式図である。前方散乱光強度(FSC)は粒子の粒径に相当するため、予め検出対象微生物のFSCを測定し、該検出対象微生物の粒径に相当する範囲Cを設定しておくことで、この2次元ドットプロットにおける検出対象微生物存在領域A(図中の斜線枠)を設定することができる。
【0027】
上記標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL1)は上記第1の蛍光検出器3で検出し、藻類のクロロフィルを励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL3)は上記第2の蛍光検出器4で検出し、上記前方散乱光検出器5でからの前方散乱光を検出して、これらの検出を同時に行ない、検出信号を上記演算装置6に入力する。
【0028】
該演算装置6においては、上記第1の蛍光検出器3からのFL1検出信号、上記第2の蛍光検出器4からのFL3検出信号、及び前方散乱光検出器5からのFSC検出信号からなる光学的情報を処理して、図2に示されるFL3強度とFL1強度との2次元ドットプロット、及び図3に示されるFSC強度とFL1強度との2次元ドットプロットの2種類の2次元ドットプロットを作成し、双方の2次元ドットプロット内に設定した検出対象微生物存在領域Aに分布する粒子のみを抽出し、それ以外の粒子は夾雑物あるいは標識抗体が非特異結合した擬陽性を示す粒子として排除する。
【0029】
これにより、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を、該検出対象微生物を特異的に認識し蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、粒子の蛍光強度から検出対象微生物を検出するときに、上記標識抗体が環境水中の夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子による誤差をなくし、より正確に検出対象微生物を検出し、計数することができる。
【0030】
ここで、上記藻類のクロロフィルにはさまざまな種類があり、例えばG励起光(510〜560nmの波長の光)で最大波長が590nmの蛍光を発するものがある。一方、標識抗体に結合する蛍光物質としてはFITC(フルオレッセインイソチオシアネート)がよく用いられる。FITCの励起波長は465〜495nmであり、波長が510〜555nmの蛍光を発する。
【0031】
しかしながら、本発明の実施形態に適用可能な蛍光物質としては、これに限られるものではなく、蛍光波長がクロロフィルのものと20nm程度離れていればよいため、例えば、AlexaFluor488(最大励起波長495nm、最大蛍光波長519nm)やPE(フィコエリスリン、最大励起波長495nm、最大蛍光波長578nm)等が使用できる。
【0032】
さらに、本発明の実施形態においては、蛍光波長の異なる蛍光物質をそれぞれ結合した標識抗体を用いて、検出対象微生物を多重標識し、それぞれの蛍光物質の蛍光強度との複数の2次元ドットプロットと検出対象微生物存在領域Aを設定することにより、検出精度のさらなる向上を図ることができる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明に係る微生物検出方法の実施例を挙げる。
実施例1
本実施例においては、実際の河川水にクリプトスポリジウム(Waterborne社製、クリプトスポリジウムパルバムオーシスト)を添加し、FITC標識された抗クリプトスポリジウム抗体(EasyStainC+G、和光純薬)を加え、フローサイトメータ(FACS Calibur、ベクトンディッキンソン社製)で被測定試料中の粒子を測定することを目的として、以下のような一連の操作を実施した。
【0034】
被測定試料は上記フローセル1を60μL/分で流した。
フローサイトメータとして上記FACS Caliburを用いる場合、上記光照射装置2の光源はアルゴンレーザー(488nm)を用いることにより、FSC(前方散乱光)、SSC(側方散乱光)、FL1(530±15nm)、FL2(585±21nm)、FL3(650nm以上)に分光されて、対応する光検出器で光信号が検出される。
本実施例では、図1について説明した装置と同様の装置を用いた。第1の蛍光検出器3でFL1を測定し、第2の蛍光検出器4でFL3を測定し、前方散乱光検出器5でFSCを測定した測定結果を用い、これらの測定値(検出値)を上記演算装置6に入力した。
【0035】
上記FL1は上記FITCに由来する蛍光を表すため、FITC標識抗体が結合したクリプトスポリジウムのFL1強度は大きくなる。一方、FL3は渦鞭毛藻由来の光合成器官構成物質で蛍光物質であるPerCP(ペリジニンクロロフィルプロテイン)の蛍光を表すため、藻類のクロロフィルの検出として用いることができる。
【0036】
したがって、環境水中の藻類ではFL3強度が大きく、FL1強度が小さいこととなり、FITC標識抗体が結合したクリプトスポリジウムではFL3強度は小さく、FL1強度は大きくなる。
また、上記FSC(前方散乱光)は粒子の粒径に相当するため、あらかじめクリプトスポリジウムを測定することで、クリプトスポリジウムの粒径に相当するFSC強度を把握することができる。
【0037】
本実施例では、まず、生理食塩水にクリプトスポリジウムを懸濁し、FITC標識された抗クリプトスポリジウム抗体を加えた被測定試料を測定した。図4はこの陽性コントロールのFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図5はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。
上記各2次元ドットプロットでクリプトスポリジウム存在領域D(図中の枠内)を設定した。図6及び図7は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図4及び図5の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。
【0038】
これにより、例えば図5の2次元ドットプロットの内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のうち、図4の2次元ドットプロットの内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに入らない粒子を排除すると、図7の2次元ドットプロットに示すように、擬陽性を示す夾雑物を排除することができる。
【0039】
図8は実河川水のみのFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図9はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。図8〜9において、夾雑物のFITC蛍光強度はいずれも小さく、各2次元ドットプロットでクリプトスポリジウム存在領域Dに混入する夾雑物は存在しなかった。図8においてFL3強度の大きい粒子は藻類であると考えられる。
【0040】
図10及び図11は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図8及び図9の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。これらの2次元ドットプロットより、擬陽性を示す夾雑物は存在しないことがわかる。
【0041】
図12は実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した被測定試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図13はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。図12〜13の2次元ドットプロットでは、図8及び図9の2次元ドットプロットに比べ各夾雑物のFITC蛍光強度が上昇し、FITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が夾雑物に非特異的に結合した粒子が多くなったことがわかった。特に藻類と考えられる夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が結合することが確認でき、この粒子を擬陽性として判定する恐れがあることがわかった。
【0042】
図14及び図15は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図12及び図13の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。これらの2次元ドットプロットより、図12あるいは図13の2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子はなくなることがわかった。
【0043】
これにより、環境水中の藻類等の夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が非特異的に結合した擬陽性を示す夾雑物を排除することができた。
【0044】
図16は上記クリプトスポリジウムを添加した実河川水に、FITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した被測定試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図17はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。図18及び図19は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図16及び図17の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。
【0045】
これらの2次元ドットプロットより、河川中の夾雑物や、該夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が非特異的に結合した擬陽性を示す粒子を排除することができ、これによりFITC標識されたクリプトスポリジウムのみを検出することができた。
【0046】
以上の実施例で示されるように、本発明に係る微生物検出方法では、上記FL3とFL1及びFSCとFL1の2次元ドットプロットにおける両方のクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子を抽出するにより、河川中の夾雑物や、該夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が非特異的に結合した擬陽性を示す粒子を排除することができ、より正確にクリプトスポリジウムを検出し、計数することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る環境水中に含まれる微生物を検出する微生物検出装置について、一実施の形態を説明する系統図である。
【図2】図1の実施形態における蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度による2次元ドットプロットを示す模式的グラフである。
【図3】図1の実施形態における蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と粒子の前方散乱光強度による2次元ドットプロットを示す模式的グラフである。
【図4】本発明の実施例1における陽性コントロールのFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1における陽性コントロールのFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図6】図4及び図5のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図7】図4及び図5のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図8】実施例1で、実河川水のみの試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図9】実施例1で、実河川水のみの試料のFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図10】実施例1で、図8及び図9のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図11】実施例1で、図8及び図9のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図12】実施例1で、実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図13】実施例1で、実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図14】実施例1で、図12及び図13のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図15】実施例1で、図12及び図13のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図16】実施例1で、クリプトスポリジウムを添加した実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図17】実施例1で、クリプトスポリジウムを添加した実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図18】実施例1で、図16及び図17のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図19】実施例1で、図16及び図17のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 フローセル
2 光照射装置
3 第1の蛍光検出器
4 第2の蛍光検出器
5 前方散乱光検出器
6 演算装置
7 フォーカスレンズ
8 ダイクロミックミラー
9 バンドパスフィルター
10 ローパスフィルター
11 フォーカスレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖沼等の環境水や上下水道の各処理プロセスの処理水等の水中に存在する原虫、細菌、ウイルスといった水系感染性微生物を検出する微生物検出方法及び微生物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中には多種多様な化学物質が存在するため、水道原水となる河川や湖沼等の環境水も様々な化学物質で汚染されていることがある。このような水環境の化学物質での汚染による水質問題のほかにクリプトスポリジウム等の原虫類、腸管出血性大腸菌0157やレジオネラ菌等の細菌、ウイルス等による水系感染症の発生が大きな問題となっている。
上記水系感染症のうち、特に新興の水系感染症の原因となっているクリプトスポリジウムやジアルジア等の原虫の検査方法(例えば、厚生労働省から示された「クリプトスポリジウム暫定対策指針」1998年に指針の改正)によれば、クリプトスポリジウムの検査手順は大きく分けて、試料採取、ろ過濃縮、剥離懸濁、分離精製、免疫蛍光染色、顕微鏡観察からなる。
【0003】
しかしながら、従来のクリプトスポリジウム検査方法では、試料採取、ろ過濃縮、剥離懸濁、分離精製、免疫蛍光染色、顕微鏡観察の工程が必要であり、作業が煩雑で検査終了まで半日以上という長時間を要するため、作業者の負担が大きく、複数の試料を迅速に処理することは困難であるという問題を抱えている。
また、このクリプトスポリジウム検査方法では、クリプトスポリジウムの検出、観察を顕微鏡で行うため、作業者の熟練度が測定結果の精度、正確さに大きな影響を与えることとなっており、均一な測定精度が得られ難いという問題もある。
【0004】
また、上記クリプトスポリジウム検査方法では、河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウムを検出するとき、環境水中に多く含まれる藻類が標識抗体に非特的に結合することから、粒子を擬陽性として検出したり、藻類由来の蛍光が検出を妨害したりする可能性が大きく、高精度での検査結果が得られ難い。
【0005】
一方、原虫、細菌類等を含む微生物の検出方法あるいは検出装置として、特許文献1(特開2004−290119号公報)、特許文献2(特開平7−140148号公報)、特許文献3(特開2004−121143号公報)、特許文献4(特開2004−305173号公報)、特許文献5(特開2001−258590号公報)等が提供されている。
【0006】
しかし、これらの特許文献1ないし5も、上記河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウムを検出するとき、環境水中に多く含まれる藻類が標識抗体に非特的に結合することに起因して粒子を擬陽性として検出し、又は藻類由来の蛍光が検出を妨害するといった不都合について、問題を解決する手段を何ら提供するものではない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−290119号公報
【特許文献2】特開平7−140148号公報
【特許文献3】特開2004−121143号公報
【特許文献4】特開2004−305173号公報
【特許文献5】特開2001−258590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、河川や湖沼等の環境水中に含まれるクリプトスポリジウム等の水系感染性微生物を蛍光物質が結合した標識抗体で標識し、粒子の蛍光強度を測定し検出対象微生物を検出するとき、より高精度で検出し、計数できる微生物検出方法及び微生物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、試料に含まれる粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出する微生物検出方法であって、上記粒子の前方散乱光強度並びに上記標識抗体による蛍光強度及び夾雑物に特有の蛍光強度とを測定し、測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る微生物検出方法は、別の形態で、検出対象微生物を、藻類のクロロフィルの蛍光波長と異なる蛍光波長を持つ蛍光物質が結合しかつ上記検出対象微生物を特異的に認識する標識抗体で標識し、標識された上記検出対象微生物を含む試料中の粒子について、上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と、藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度と、粒子の散乱光強度とを同時に測定するステップと、上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度とによるドットプロット、及び上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロットを作成するステップと、上記2つのドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域の範囲に分布する粒子を比較し、検出対象微生物の検出と該微生物の個数を計数するステップとを少なくとも実行することを特徴とする。
【0011】
この形態では、上記粒子の上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度によるドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域に分布する粒子が、上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロット内に設定した検出対象微生物存在領域にも分布するとき、その粒子を検出対象微生物として検出し、該微生物の個数を計数することが好適である。
【0012】
さらに、本発明は、別の側面で微生物検出装置であり、検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出するように構成された微生物検出装置において、上記検出対象微生物が含まれる試料に上記標識抗体に蛍光物質を励起する光を照射する光照射装置と、上記被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を測定する第1の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から上記試料中の夾雑物のクロロフィルを励起する波長の蛍光を測定する第2の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から被測定試料中の粒子の散乱光を測定する散乱光検出器と、上記各検出器で測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記環境水中の夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数する演算手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を蛍光物質が結合した標識抗体で標識し、検出対象微生物をその蛍光強度で検出するとき、環境水中に多く含まれる藻類等の夾雑物を擬陽性として検出するのを防止できて、検出対象微生物をより高精度で検出し、計数することができるようにした微生物検出方法及び微生物検出装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る微生物検出方法及び微生物検出装置について、その好適な実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係る微生物検出方法を実施するための装置について、一実施の形態を示す。本装置は、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を検出対象としている。
【0015】
図1において、1は検出対象微生物が含まれる被測定試料を流すフローセル、2は該フローセル1にフォーカスレンズ7を介して後述する光を照射する光照射装置である。
【0016】
上記被測定試料は次のようにして生成する。
まず、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を分離濃縮する。これには、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(1)中空糸膜、メンブレンフィルター等によるろ過による濃縮方法。
(2)抗体を結合させた免疫磁気ビーズによる濃縮方法。
(3)炭酸カルシウム等の無機物質の微粒子に吸着、凝集させ沈殿させる方法。
【0017】
次いで、得られた濃縮試料に、上記検出対象微生物を特異的に認識し、かつ蛍光物質が結合した標識抗体を添加する。
上記光照射装置2は、上記被測定試料中の上記標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射するもので、上記蛍光物質の励起波長に応じて照射光を変えるようになっている。
【0018】
3は上記フローセル1に流される被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を検出する第1の蛍光検出器で、上記被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を、フォーカスレンズ11を通し、ダイクロミックミラー8を透過させ、バンドパスフィルター9を通して検出するものである。
【0019】
4は第2の蛍光検出器で、環境水中の主な夾雑物である藻類の葉緑素(クロロフィル)を励起する波長の蛍光を検出するためのものである。第2の蛍光検出器4は、上記蛍光を、フォーカスレンズ11を通し、ダイクロミックミラー8で反射させ、ローパスフィルター10を通して検出する。
【0020】
5は前方散乱光検出器で、上記光照射装置2から照射され上記フローセル1に流される被測定試料中の粒子の前方散乱光を検出するものである。
上記第1の蛍光検出器3からの蛍光の検出信号、第2の蛍光検出器4からの蛍光の検出信号、及び上記前方散乱光検出器からの前方散乱光の検出信号は演算装置6に入力される。
【0021】
以上のように構成された微生物検出装置によって、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物に蛍光物質が結合した標識抗体を添加した被測定試料中の微生物を測定するにあたっては、上記のようにして検出対象微生物に上記標識抗体が十分結合した被測定試料を上記フローセル1に連続的に流し、このフローセル1に上記光照射装置2から光を照射して、上記第1の蛍光検出器3で蛍光物質が発する蛍光を検出し、第2の蛍光検出器4で夾雑物である藻類のクロロフィル(葉緑素)を励起する波長の蛍光を検出し、上記前方散乱光検出器5で前方散乱光を検出して、これらの上記信号を演算装置6に入力する。
【0022】
上記被測定試料中の微生物の粒子を精度よく測定するには、被測定試料をフローセル(光学セル)1中に連続的に流し、そこに上記光照射装置2から光を照射して、上記粒子個々の信号を検出し統計、計数処理する方法が好ましく、このような計測が可能な装置としてフローサイトメータが利用できる。
【0023】
このフローサイトメータは、上記被測定試料中の微生物の粒子をシース液とともに1個ずつ流し、この粒子に上記光照射装置2からレーザー光や紫外光を集光してその結果生じる、散乱光や蛍光等の光学的情報を検出することによりその粒子の大きさや形態、性質等を調べるように構成されている。したがって、上記フローセル1をフローサイトメータに組み込み、上記第1の蛍光検出器3で蛍光物質が発する蛍光、第2の蛍光検出器4で夾雑物である藻類のクロロフィル(葉緑素)を励起する波長の蛍光、及び上記前方散乱光検出器5で前方散乱光等を一括して計測することが好適である。
【0024】
次に、図2は、標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL1)と藻類のクロロフィルを励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL3)との2次元ドットプロットの模式図で、Aは検出対象微生物の存在領域、Bは藻類の存在領域を示す。
環境水中に含まれる主な夾雑物は藻類であり、この粒子のFL3強度は大きく、FL1強度は小さいため、藻類は主に図中のB内に分布することになる。一方、蛍光標識された検出対象微生物ではFL1強度が大きくなり、FL3強度は小さいため、図中のA(斜線枠)内に分布すると考えられ、かかる領域Aをこの2次元ドットプロットにおける検出対象微生物存在領域として設定できる。
【0025】
しかしながら、環境水中の夾雑物の中には標識抗体を非特異的に結合し、かかる粒子が検出対象微生物存在領域Aに混入し、この粒子を擬陽性として検出してしまうおそれがある。
【0026】
図4は、粒子の前方散乱光強度(FSC)と標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度[FL1(図2のFL1と同様)]との2次元ドットプロットの模式図である。前方散乱光強度(FSC)は粒子の粒径に相当するため、予め検出対象微生物のFSCを測定し、該検出対象微生物の粒径に相当する範囲Cを設定しておくことで、この2次元ドットプロットにおける検出対象微生物存在領域A(図中の斜線枠)を設定することができる。
【0027】
上記標識抗体に結合する蛍光物質を励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL1)は上記第1の蛍光検出器3で検出し、藻類のクロロフィルを励起する波長の光を照射して発する蛍光の強度(FL3)は上記第2の蛍光検出器4で検出し、上記前方散乱光検出器5でからの前方散乱光を検出して、これらの検出を同時に行ない、検出信号を上記演算装置6に入力する。
【0028】
該演算装置6においては、上記第1の蛍光検出器3からのFL1検出信号、上記第2の蛍光検出器4からのFL3検出信号、及び前方散乱光検出器5からのFSC検出信号からなる光学的情報を処理して、図2に示されるFL3強度とFL1強度との2次元ドットプロット、及び図3に示されるFSC強度とFL1強度との2次元ドットプロットの2種類の2次元ドットプロットを作成し、双方の2次元ドットプロット内に設定した検出対象微生物存在領域Aに分布する粒子のみを抽出し、それ以外の粒子は夾雑物あるいは標識抗体が非特異結合した擬陽性を示す粒子として排除する。
【0029】
これにより、河川や湖沼等の環境水中に含まれる検出対象微生物を、該検出対象微生物を特異的に認識し蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、粒子の蛍光強度から検出対象微生物を検出するときに、上記標識抗体が環境水中の夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子による誤差をなくし、より正確に検出対象微生物を検出し、計数することができる。
【0030】
ここで、上記藻類のクロロフィルにはさまざまな種類があり、例えばG励起光(510〜560nmの波長の光)で最大波長が590nmの蛍光を発するものがある。一方、標識抗体に結合する蛍光物質としてはFITC(フルオレッセインイソチオシアネート)がよく用いられる。FITCの励起波長は465〜495nmであり、波長が510〜555nmの蛍光を発する。
【0031】
しかしながら、本発明の実施形態に適用可能な蛍光物質としては、これに限られるものではなく、蛍光波長がクロロフィルのものと20nm程度離れていればよいため、例えば、AlexaFluor488(最大励起波長495nm、最大蛍光波長519nm)やPE(フィコエリスリン、最大励起波長495nm、最大蛍光波長578nm)等が使用できる。
【0032】
さらに、本発明の実施形態においては、蛍光波長の異なる蛍光物質をそれぞれ結合した標識抗体を用いて、検出対象微生物を多重標識し、それぞれの蛍光物質の蛍光強度との複数の2次元ドットプロットと検出対象微生物存在領域Aを設定することにより、検出精度のさらなる向上を図ることができる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明に係る微生物検出方法の実施例を挙げる。
実施例1
本実施例においては、実際の河川水にクリプトスポリジウム(Waterborne社製、クリプトスポリジウムパルバムオーシスト)を添加し、FITC標識された抗クリプトスポリジウム抗体(EasyStainC+G、和光純薬)を加え、フローサイトメータ(FACS Calibur、ベクトンディッキンソン社製)で被測定試料中の粒子を測定することを目的として、以下のような一連の操作を実施した。
【0034】
被測定試料は上記フローセル1を60μL/分で流した。
フローサイトメータとして上記FACS Caliburを用いる場合、上記光照射装置2の光源はアルゴンレーザー(488nm)を用いることにより、FSC(前方散乱光)、SSC(側方散乱光)、FL1(530±15nm)、FL2(585±21nm)、FL3(650nm以上)に分光されて、対応する光検出器で光信号が検出される。
本実施例では、図1について説明した装置と同様の装置を用いた。第1の蛍光検出器3でFL1を測定し、第2の蛍光検出器4でFL3を測定し、前方散乱光検出器5でFSCを測定した測定結果を用い、これらの測定値(検出値)を上記演算装置6に入力した。
【0035】
上記FL1は上記FITCに由来する蛍光を表すため、FITC標識抗体が結合したクリプトスポリジウムのFL1強度は大きくなる。一方、FL3は渦鞭毛藻由来の光合成器官構成物質で蛍光物質であるPerCP(ペリジニンクロロフィルプロテイン)の蛍光を表すため、藻類のクロロフィルの検出として用いることができる。
【0036】
したがって、環境水中の藻類ではFL3強度が大きく、FL1強度が小さいこととなり、FITC標識抗体が結合したクリプトスポリジウムではFL3強度は小さく、FL1強度は大きくなる。
また、上記FSC(前方散乱光)は粒子の粒径に相当するため、あらかじめクリプトスポリジウムを測定することで、クリプトスポリジウムの粒径に相当するFSC強度を把握することができる。
【0037】
本実施例では、まず、生理食塩水にクリプトスポリジウムを懸濁し、FITC標識された抗クリプトスポリジウム抗体を加えた被測定試料を測定した。図4はこの陽性コントロールのFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図5はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。
上記各2次元ドットプロットでクリプトスポリジウム存在領域D(図中の枠内)を設定した。図6及び図7は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図4及び図5の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。
【0038】
これにより、例えば図5の2次元ドットプロットの内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のうち、図4の2次元ドットプロットの内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに入らない粒子を排除すると、図7の2次元ドットプロットに示すように、擬陽性を示す夾雑物を排除することができる。
【0039】
図8は実河川水のみのFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図9はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。図8〜9において、夾雑物のFITC蛍光強度はいずれも小さく、各2次元ドットプロットでクリプトスポリジウム存在領域Dに混入する夾雑物は存在しなかった。図8においてFL3強度の大きい粒子は藻類であると考えられる。
【0040】
図10及び図11は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図8及び図9の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。これらの2次元ドットプロットより、擬陽性を示す夾雑物は存在しないことがわかる。
【0041】
図12は実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した被測定試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図13はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。図12〜13の2次元ドットプロットでは、図8及び図9の2次元ドットプロットに比べ各夾雑物のFITC蛍光強度が上昇し、FITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が夾雑物に非特異的に結合した粒子が多くなったことがわかった。特に藻類と考えられる夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が結合することが確認でき、この粒子を擬陽性として判定する恐れがあることがわかった。
【0042】
図14及び図15は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図12及び図13の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。これらの2次元ドットプロットより、図12あるいは図13の2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子はなくなることがわかった。
【0043】
これにより、環境水中の藻類等の夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が非特異的に結合した擬陽性を示す夾雑物を排除することができた。
【0044】
図16は上記クリプトスポリジウムを添加した実河川水に、FITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した被測定試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットであり、図17はFSCとFL1の2次元ドットプロットである。図18及び図19は各2次元ドットプロット内で設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子の中で、図16及び図17の両方の2次元ドットプロット内に設定したクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子のみを抽出した2次元ドットプロットである。
【0045】
これらの2次元ドットプロットより、河川中の夾雑物や、該夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が非特異的に結合した擬陽性を示す粒子を排除することができ、これによりFITC標識されたクリプトスポリジウムのみを検出することができた。
【0046】
以上の実施例で示されるように、本発明に係る微生物検出方法では、上記FL3とFL1及びFSCとFL1の2次元ドットプロットにおける両方のクリプトスポリジウム存在領域Dに分布する粒子を抽出するにより、河川中の夾雑物や、該夾雑物にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体が非特異的に結合した擬陽性を示す粒子を排除することができ、より正確にクリプトスポリジウムを検出し、計数することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る環境水中に含まれる微生物を検出する微生物検出装置について、一実施の形態を説明する系統図である。
【図2】図1の実施形態における蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度による2次元ドットプロットを示す模式的グラフである。
【図3】図1の実施形態における蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と粒子の前方散乱光強度による2次元ドットプロットを示す模式的グラフである。
【図4】本発明の実施例1における陽性コントロールのFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1における陽性コントロールのFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図6】図4及び図5のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図7】図4及び図5のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図8】実施例1で、実河川水のみの試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図9】実施例1で、実河川水のみの試料のFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図10】実施例1で、図8及び図9のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図11】実施例1で、図8及び図9のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図12】実施例1で、実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図13】実施例1で、実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図14】実施例1で、図12及び図13のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図15】実施例1で、図12及び図13のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図16】実施例1で、クリプトスポリジウムを添加した実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図17】実施例1で、クリプトスポリジウムを添加した実河川水にFITC標識抗クリプトスポリジウム抗体を添加した試料のFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図18】実施例1で、図16及び図17のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFL3とFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【図19】実施例1で、図16及び図17のクリプトスポリジウム存在領域の両方に分布する粒子のみを抽出したFSCとFL1の2次元ドットプロットを示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 フローセル
2 光照射装置
3 第1の蛍光検出器
4 第2の蛍光検出器
5 前方散乱光検出器
6 演算装置
7 フォーカスレンズ
8 ダイクロミックミラー
9 バンドパスフィルター
10 ローパスフィルター
11 フォーカスレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、試料に含まれる粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出する微生物検出方法であって、上記粒子の前方散乱光強度並びに上記標識抗体による蛍光強度及び夾雑物に特有の蛍光強度とを測定し、測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項2】
検出対象微生物を、藻類のクロロフィルの蛍光波長と異なる蛍光波長を持つ蛍光物質が結合しかつ上記検出対象微生物を特異的に認識する標識抗体で標識し、標識された上記検出対象微生物を含む試料中の粒子について、上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と、藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度と、粒子の散乱光強度とを同時に測定するステップと、
上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度とによるドットプロット、及び上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロットを作成するステップと、
上記2つのドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域の範囲に分布する粒子を比較し、検出対象微生物の検出と該微生物の個数を計数するステップとを少なくとも実行することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項3】
上記粒子の上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度によるドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域に分布する粒子が、上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロット内に設定した検出対象微生物存在領域にも分布するとき、その粒子を検出対象微生物として検出し、該微生物の個数を計数することを特徴とする請求項2に記載の微生物検出方法。
【請求項4】
検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出するように構成された微生物検出装置において、上記検出対象微生物が含まれる試料に上記標識抗体に蛍光物質を励起する光を照射する光照射装置と、上記被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を測定する第1の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から上記試料中の夾雑物のクロロフィルを励起する波長の蛍光を測定する第2の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から被測定試料中の粒子の散乱光を測定する散乱光検出器と、上記各検出器で測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記環境水中の夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数する演算手段とを備えることを特徴とする微生物検出装置。
【請求項1】
検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて、試料に含まれる粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出する微生物検出方法であって、上記粒子の前方散乱光強度並びに上記標識抗体による蛍光強度及び夾雑物に特有の蛍光強度とを測定し、測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項2】
検出対象微生物を、藻類のクロロフィルの蛍光波長と異なる蛍光波長を持つ蛍光物質が結合しかつ上記検出対象微生物を特異的に認識する標識抗体で標識し、標識された上記検出対象微生物を含む試料中の粒子について、上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と、藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度と、粒子の散乱光強度とを同時に測定するステップと、
上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度とによるドットプロット、及び上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロットを作成するステップと、
上記2つのドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域の範囲に分布する粒子を比較し、検出対象微生物の検出と該微生物の個数を計数するステップとを少なくとも実行することを特徴とする微生物検出方法。
【請求項3】
上記粒子の上記蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と藻類のクロロフィルを励起する光を照射して発する蛍光の強度によるドットプロット内に予め設定した検出対象微生物存在領域に分布する粒子が、上記粒子の蛍光物質に対する励起光を照射して発する蛍光の強度と前方散乱光強度のドットプロット内に設定した検出対象微生物存在領域にも分布するとき、その粒子を検出対象微生物として検出し、該微生物の個数を計数することを特徴とする請求項2に記載の微生物検出方法。
【請求項4】
検出対象微生物を特異的に認識し、蛍光物質が結合した標識抗体による抗原抗体反応を用いて粒子の蛍光強度から該検出対象微生物を検出するように構成された微生物検出装置において、上記検出対象微生物が含まれる試料に上記標識抗体に蛍光物質を励起する光を照射する光照射装置と、上記被測定試料中の蛍光物質が発する蛍光を測定する第1の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から上記試料中の夾雑物のクロロフィルを励起する波長の蛍光を測定する第2の蛍光検出器と、上記光照射装置から照射された光から被測定試料中の粒子の散乱光を測定する散乱光検出器と、上記各検出器で測定した光学的情報に基づき、上記標識抗体が上記環境水中の夾雑物に非特異結合した擬陽性を示す粒子を排除して検出対象微生物のみを検出し、該検出対象微生物を計数する演算手段とを備えることを特徴とする微生物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図6】
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【図9】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−232382(P2007−232382A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50670(P2006−50670)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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