微生物検査チップ及び微生物検査装置
【課題】励起光の反射による迷光の発生を回避し、蛍光量の受光量の減少を回避する微生物検査チップ、検査装置、および検査方法。
【解決手段】基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路181を有する微生物検出部18とを有する微生物検査チップ10であって、前記微生物検出部18は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されているチップ10。また、該微生物検査チップ10を使用する微生物検査装置と、検査方法。
【解決手段】基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路181を有する微生物検出部18とを有する微生物検査チップ10であって、前記微生物検出部18は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されているチップ10。また、該微生物検査チップ10を使用する微生物検査装置と、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる微生物の計測を行う微生物検査装置及びそれに用いる微生物検査チップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腸管出血性大腸菌O157などの微生物が原因の食中毒が大きな社会問題になっている。そのため、一般消費者の食品の安全性への要求はますます高まっている。食品サプライヤは、一般飲食店から食品製造プラントをもつ大企業にいたるまで多くの事業者を含む。これら事業者にとって、提供する食品の安全性を保障するための食品の衛生管理は必須義務である。一般に、食品の衛生管理は、食品衛生管理者が行っている。
【0003】
食品が「衛生的」であるか否かを判定する客観的指標として、食品中に含まれる一般生菌や大腸菌群などの生菌数が用いられる。
【0004】
従来、生菌数の計測手段として、培養法が用いられてきた。培養法では、先ず、食品検体の懸濁液を培地上に塗布し、微生物を培養する。次に、増殖した微生物が形成するコロニーを計測することにより、食品中の生菌数を計測する。培養法では、微生物がコロニーを形成するまでに1日から数日必要とする。そのため、培養法では、長時間の検査時間が必要となる。更に、培養法には、懸濁、希釈、塗布、コロニー計測など専門的知識および技量を必要とする工程が含まれる。そのため、人為的ミスの発生や検査費用が高額になる問題がある。従って、食品サプライヤにとって、培養法は、出荷した食品の安全を保障するための検査ではなく、食中毒が発生した後の原因究明の手段でしかないのが実情であった。
【0005】
従来、生菌数計測の迅速化および簡便化を目的とした様々な方法及び装置が試みられている。その1つとして、蛍光フローサイトメトリ法を用いた菌数測定装置が注目されている。蛍光フローサイトメトリ法では、蛍光色素で染色した検体を一個一個、極めて細い経路に沿って流す。この方法では、検体数を一個一個、直接測定するが、短時間で計測を干完了することが可能である。
【0006】
蛍光フローサイトメトリ法を用いた菌数測定装置に対する改善も行われている。例えば、検体中の成分が流路壁面に付着することを防止するため、検体とシース液の流れをそれぞれ層流化し、2つの流れの圧力差を利用し、検体の層流の流径を絞り込むことが行われている。
【0007】
更に、非特許文献1には、低価格化を実現し、洗浄の手間を省略するため、蛍光フローサイトメトリ法による測定を行う流路部分をディスポーザブルのチップによって形成することが記載されている。このディスポーザブルのチップ内で測定を行い、測定後は、廃棄する。
【0008】
【非特許文献1】Journal of Biomolecular Techniques、Vol14、Issue2、pp.119-127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、ディスポーザブルの微生物検査チップは、微細加工により大小の溝を構成した基板の上に、ガラスやPMMA(メタクリル酸メチル樹脂)などの透明な平面基板を貼り付けることにより、作成される。従って、検出用の流路は、基板上に構成される。そのため、チップ内の検出用の流路を流れる蛍光体を検出するためには、励起光の光軸と蛍光を検出する検出用集光レンズの中心軸は、チップに対し同一面側に設置される。従って、検出用集光レンズの中心軸を検出用の流路を含むチップ面に対して垂直に配置したとき、励起光の光軸は、検出用集光レンズの中心軸と同軸になるか、又は、傾斜した方向になる。
【0010】
励起光の光軸が検出用集光レンズの中心軸と同軸である場合、平面基板からの励起光の反射光又は検出用の流路底面からの励起光の反射光が検出用集光レンズに入る。そのため、反射光が迷光として検出され、正しい蛍光測定を困難にする。
【0011】
励起光の光軸が検出用集光レンズの中心軸に対して傾斜した方向に配置された場合、平面基板上で励起光の一部が反射されるため、検出用の流路に入射する励起光の光量が減少する。そのため、得られる蛍光量も減少し、検出精度が低下する。
【0012】
本発明の目的は、微生物検査チップにおいて、励起光の反射による迷光の発生を回避し、蛍光量の受光量の減少を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の微生物検査チップは、基板とそれに装着された微生物検出部を有する。微生物検出部は、微生物検出用流路を有し、光透過性の材料によって形成されている。微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微生物検査チップにおいて、励起光の反射による迷光の発生を回避し、蛍光量の受光量の減少を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照して、本発明の微生物検査装置で用いる微生物検査チップの第1の例の構成を説明する。本例の微生物検査チップ10は、検体1511を保持するための検体容器151と、検体に試薬を混合し反応させる第1及び第2の反応容器153、154と、検体中に含まれる不要成分を取り除くためのフィルタである不要成分除去部16と、外部光源より励起光を照射し、微生物検出用流路181を有する微生物検出部18と、微生物検出部18を通過した検体を含む溶液を廃棄するための廃液容器163と、を有する。図中の矢印Aは、微生物検出部18の微生物検出用流路181に照射する励起光の光軸を示す。
【0016】
本例の微生物検査チップ10は、図示のように、廃液容器163が下になるように、直立させた状態で使用する。
【0017】
ここでは、本発明の微生物検査装置によって、食品中の微生物を検査する場合を説明する。この場合、検体1511は、検査対象の食品である。また、第1の反応容器153は、死菌のみを染色する死菌染色色素1531を保持する。従って、第1の反応容器153を、以下で、死菌染色試薬保持容器153と称する。第2の反応容器154は、全菌を染色する全菌染色色素1541を保持する。従って、第2の反応容器154を、以下に、全菌染色試薬保持容器154と称する。不要成分除去部16は、食品残渣を除去する。検体1511、死菌染色色素1531、及び、全菌染色色素1541の混合液は、微生物検出部18を通過した後に、廃液容器163に保持される。
【0018】
検体容器151の下端は、不要成分除去部16に、流路によって又は直接、接続されている。不要成分除去部16の下端は、死菌染色試薬保持容器153の上端に、流路1571によって接続されている。死菌染色試薬保持容器153の下端は全菌染色試薬保持容器154の上端に、流路1572によって、接続されている。全菌染色試薬保持容器154の下端は微生物検出部18の上端に、流路1573によって、接続されている。微生物検出部18の下端は廃液容器163の上端に、流路1574によって接続されている。流路1571、1572、1573、1574によって、検体容器151、不要成分除去部16、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154、微生物検出部18、及び、廃液容器163は、直列に連結されている。
【0019】
廃液容器163の上端には、空気用流路1584が接続されている。空気用流路1584の上端は、通気口1634となっている。検体容器151の上端には、空気用流路1581が接続されている。空気用流路1581の上端は、通気口1631となっている。死菌染色試薬保持容器153の上端には、空気用流路1582が接続されている。空気用流路1582の上端は、通気口1632となっている。全菌染色試薬保持容器154の上端には、空気用流路1583が接続されている。空気用流路1583の上端は、通気口1633となっている。通気口1631、1632、1633、1634を介して、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154、及び、廃液容器163は、それぞれ所定の圧力源に接続されるか、又は、大気開放される。
【0020】
溶液用流路1571〜1574は、内径が10μm〜1mmの矩形断面又は円形断面の管路である。空気用流路1581〜1584は、内径が10μm〜1mmの矩形断面又は円形断面の管路である。溶液用流路1571〜1574の断面積は空気用流路1581〜1584の断面積より大きい。微生物検出部18の微生物検出用流路の内径は、1μm〜1mmである。
【0021】
検体容器151の体積は検体1511の体積より大きい。死菌染色試薬保持容器153の体積は検体1511と死菌染色色素1531の合計の体積より大きい。全菌染色試薬保持容器154及び廃液容器163の体積は、それぞれ、検体1511、死菌染色色素1531及び全菌染色色素1541の合計の体積より大きい。
【0022】
検体容器151と死菌染色試薬保持容器153を接続する溶液用流路1571の最高点は、検体容器151内の検体1511の液面より高い。死菌染色試薬保持容器153と全菌染色試薬保持容器154を接続する溶液用流路1572の最高点は、死菌染色試薬保持容器153内の検体1511と死菌染色色素1531の混合液の液面より高い。全菌染色試薬保持容器154と微生物検出部18を接続する溶液用流路1573の最高点は、全菌染色試薬保持容器154内の検体1511、死菌染色色素1531、及び、全菌染色色素1541の混合液の液面より高い。こうして、流路の最高点の高さを、上流側の容器の液面の高さより高くすることによって、液面差に起因して、溶液が流路を経由して、上流側の容器から下流側の容器に移動することが防止される。
【0023】
死菌染色色素1531及び全菌染色色素1541は、微生物検査チップ10の死菌染色試薬保持容器153及び全菌染色試薬保持容器154内に予め封入されている。
【0024】
死菌染色色素1531として、例えば、PI(プロピディウムイオダイド)(1μg/ml〜1mg/ml)を使用してよい。全菌染色色素1541として、例えば、DAPI(4'、6-ヂアミジン-2'-フェニルインドール)(1μg/ml〜1mg/ml)、AO(アクリジンオレンジ)(1μg/ml〜1mg/ml)、EB(エチジウムブロマイド)(1μg/ml〜1mg/ml)、SYTO(R)(1μg/ml〜1mg/ml)などを使用してよい。
【0025】
検体1511は、検査対象の食品に対して質量比10倍の生理食塩水を加え、ストマッキング処理を行ったものである。検体1511は、検査前に通気口1633より、検体容器151に注入する。
【0026】
次に、微生物検査チップ10を用いて、微生物計測を行う方法と、それによる各液体の移動について説明する。
【0027】
微生物検査チップ10は、図示のように、通気口1631〜1634が上側に、廃液容器163が下側に、配置されるように、直立させた状態で使用する。先ず、検体を検体容器151内に導入する。通気口1631を大気開放し、通気口1631から検体を検体容器151内に導入する。検体容器151内に、検体が導入されると、同体積の気体が、通気口1631を経由して、検体容器151内から外に排出される。
【0028】
次に、検体1511を死菌染色試薬保持容器153へ移動させる。通気口1631に圧力源を接続し、通気口1632〜1634を大気開放する。通気口1631を介して加圧空気が、検体容器151内に導入される。検体容器151内の検体の上側の空気の圧力が上昇する。それによって、検体容器151内の圧力は、死菌染色試薬保持容器153内の圧力より大きくなる。検体容器151内の検体は、不要成分除去部16及び溶液用流路1571を経由して、死菌染色試薬保持容器153へ移動する。死菌染色試薬保持容器153内に、検体が導入されると、同体積の気体が、通気口1632を経由して、死菌染色試薬保持容器153内から外に排出される。
【0029】
また、検体1511が不要成分除去部16を通過することにより、検体1511内の不要成分は除去される。
【0030】
死菌染色試薬保持容器153にて、検体は死菌染色色素1531と混合される。検体1511中の死菌は、死菌染色色素1531により染色されるが、検体1511中の生菌は、死菌染色色素1531によって染色されない。
【0031】
検体と死菌染色色素1531の混合液の液面は、死菌染色液保持容器153と全菌染色液保持容器154を接続する溶液用流路1572の最高点を超えない。死菌染色液保持容器153及び全菌染色液保持容器154内の気圧は大気圧と等しいため、混合液は死菌染色液保持容器153内に保持され、全菌染色液保持容器154に移動することはない。混合液は、染色反応に必要な時間、死菌染色液保持容器153内に保持されることができる。染色中は、微生物検査チップ10の温度を一定に保持する。それによって、温度変化による染色の影響を小さくすることができる。
【0032】
なお、廃液容器163内の気圧も大気圧と等しい。従って、全菌染色試薬保持容器154内の全菌染色色素154は、微生物検出部18に移動しないし、死菌染色液保持容器153に逆流することもない。即ち、全菌染色試薬保持容器154内に保持される。
【0033】
混合液が死菌染色液保持容器153から全菌染色液保持容器154へ移動することをより確実に防止するために、通気口1633、1634に圧力源を接続してもよい。即ち、全菌染色液保持容器154と検出液廃液容器163内の気圧を、大気圧より大きく、且つ、検体容器151内の気圧より小さくする。それによって、混合液は、確実に、死菌染色液保持容器153内に保持される。
【0034】
次に、混合液を全菌染色試薬保持容器154へ移動させる。通気口1631、1632に圧力源を接続し、通気口1633、1634を大気開放する。通気口1632を介して加圧空気が、死菌染色液保持容器153内に導入される。死菌染色液保持容器153内の混合液の上側の空気の圧力が上昇する。それによって、死菌染色液保持容器153内の圧力は、全菌染色試薬保持容器154内の圧力より大きくなる。死菌染色液保持容器153内の混合液は、溶液用流路1572を経由して全菌染色試薬保持容器154へ移動する。全菌染色試薬保持容器154内に、混合液が導入されると、同体積の気体が、通気口1633を経由して、全菌染色試薬保持容器154内から外に排出される。
【0035】
全菌染色試薬保持容器154にて、検体は全菌染色色素1541と混合される。検体1511中の死菌と生菌、即ち、全ての菌は、全菌染色色素1541により染色される。
【0036】
次に、検体1511と死菌染色色素1531と全菌染色色素1541の混合液を微生物検出部18に通過させる。通気口1631、1632、1633に圧力源を接続し、通気口1634を大気開放する。通気口1633を介して加圧空気が、全菌染色試薬保持容器154内に導入される。全菌染色試薬保持容器154内の混合液の上側の空気の圧力が上昇する。それによって、全菌染色試薬保持容器154内の圧力は、廃液容器163内の圧力より大きくなる。全菌染色試薬保持容器154内の混合液は、溶液用流路1573、及び、微生物検出部18を経由して廃液容器163へ移動する。
【0037】
廃液容器163内に、混合液が排出されると、同体積の気体が、通気口1634を経由して、廃液容器163内から外に排出される。
【0038】
混合液が、微生物検出部18の微生物検出用流路181を通過するとき、図1の矢印Aの方向より、励起光が照射される。微生物に励起光を照射すると、蛍光を発する。死菌染色色素1531の蛍光の通過数を計数することによって、死菌の数が得られる。全菌染色色素1541の蛍光の通過数を計数することによって、全菌の数が得られる。全菌の数から死菌の数を減算することにより生菌の数が得られる。
【0039】
図1に示した本発明の微生物検査チップ10では、2つの反応容器、即ち、死菌染色試薬保持容器153と全菌染色試薬保持容器154を有するが、1つの反応容器を有するように構成してもよく、3つ以上の反応容器を有するように構成してもよい。また、反応容器における反応は、染色試薬による微生物の染色であるが、他の操作であってもよい。
【0040】
図2を参照して、本発明の微生物検査チップ10の微生物検出部18について説明する。図2は、微生物検出部18を、微生物検査チップ10の側面から見た斜視図である。微生物検査チップ10の凹部に、微生物検出部18が装着されている。微生物検出部18は、微生物検査チップ10と一体的な構造ではなく、別個に製造された部材であってよい。従って、微生物検出部18は、微生物検査チップ10を構成する材料とは異なる材料で構成されていよい。
【0041】
微生物検出部18は、光学特性に優れ、形状の変化の小さい光透過性の材料によって形成される。このような材料を用いることによって、励起光の入射量などの物理量や、焦点距離などの最適な測定条件を安定に保つことができる。微生物検出部18は、好ましくは石英や光学ガラスによって形成される。石英や光学ガラスは、光学性能に優れ、樹脂よりも自家蛍光量が少ないため、好ましい。
【0042】
微生物検出部18は、貫通孔を有する。この孔が微生物検出用流路181である。微生物検出用流路181の断面は、矩形又は円であるが、好ましくは、正方形である。微生物検出用流路181の内径は大きいほど圧力損失は小さくなるが、微生物を一個ずつ流すためには、小さいほうがよい。
【0043】
微生物検出用流路181の内径は、1μm〜1mmである。即ち、微生物検出用流路181の断面は、1辺が1μm〜1mmの正方形、又は、直径が1μm〜1mmの円である。
【0044】
微生物検出部18の断面は、矩形又は円であるが、好ましくは、正方形である。微生物検出部18の外径は0.1mm〜5mmである。即ち、微生物検出部18の断面は、1辺が0.1mm〜5mmの正方形、又は、直径が0.1mm〜5mmの円である。
【0045】
微生物検出部18の上端及び下端は微生物検査チップ10に埋め込まれている。微生物検出部18のうち、微生物検査チップ10から露出している部分の長さは、0.01mm〜10mmが好ましい。
【0046】
微生物検出用流路181は、上側の溶液用流路1573及び下側の溶液用流路1574に接続されている。溶液用流路1573、1574の内径は10μm〜1mmである。従って、微生物検出用流路181の断面積は、溶液用流路1573、1574の断面積より十分小さい。
【0047】
検出光学系について説明する。検出光学系は励起光を発する光源を有する照射光学系と、微生物からの蛍光を検出する受光素子を有する受光光学系を有する。図中矢印Aは励起光の光軸を示す。図中矢印Bは、受光光学系に設けられた対物レンズ120の中心軸を示す。本例では、励起光の光軸と対物レンズ120の中心軸は直交するように構成されている。励起光の光軸は、微生物検査チップ10の主面に平行であるが、対物レンズ120の中心軸は、微生物検査チップ10の主面に直交する。
【0048】
微生物検出用流路181に励起光を照射する。励起光は、微生物検出用流路181の照射範囲183の範囲に照射される。微生物175は、微生物検出用流路181内を図の上から下へ流れる。微生物175は、照射範囲183を通過するとき、励起光を照射される。微生物175は、死菌染色色素1531または全菌染色色素1541の蛍光を発する。この蛍光は、対物レンズ120を含む受光光学系によって検出される。
【0049】
本例では、励起光の反射による迷光の発生や蛍光の受光量の減少の問題を解決することができる。励起光の光軸と対物レンズの中心軸は互いに直交するから、励起光の反射光を、迷光として、受光光学系が検出するはない。また、励起光の光軸は、微生物検査チップ10の主面に対して直交する。そのため、励起光が、微生物検査チップ10の主面に反射する量は少ない。従って、本例では、励起光を効率的に、微生物検出用流路181に照射することができる。
【0050】
微生物検査チップ10の一部が、励起光の光軸上に、又は、対物レンズ120の中心軸上に存在すると、微生物検出用流路181に照射される励起光の光量が低減する。また、微生物検査チップ10の一部が、対物レンズ120の中心軸上に存在すると、受光素子によって受光される蛍光の光量が低減する。
【0051】
本発明によると、微生物検出部18は、微生物検査チップ10の一部によって囲まれていないし、包囲されていない。本例では、励起光の光軸と対物レンズ120の中心軸は直交するように構成されている。従って、微生物検出部18の周囲は、少なくとも90度の範囲で、露出していればよい。微生物検出部18の周囲の、少なくとも90度の範囲で、励起光の照射と蛍光の検出を妨害する物が無ければよい。好ましくは、微生物検出部18の周囲は、少なくとも180度の範囲で、露出していればよい。微生物検出部18の周囲の、少なくとも180度の範囲で、励起光の照射と蛍光の検出を妨害する物が無ければよい。
【0052】
従って、光源からの励起光は、微生物検査チップ10の一部によって妨げられることなく、直接、微生物検出用流路181に照射される。また、微生物検出用流路181からの蛍光は、微生物検査チップ10の一部によって妨げられることなく、直接、受光光学系によって受光される。従って、励起光の照射光量の低減及び蛍光の受光量の低減はない。
【0053】
図3を参照して本発明による微生物検査装置1の構成の例を説明する。本例の微生物検査装置1は、分析装置11、システム装置111、出力装置112及び通信機器114を有する。微生物検査装置1によって微生物を計測するとき、微生物検査チップ10を分析装置11の内部に装填する。微生物検査チップ10の種類を変えることによって、様々な検体に最適な微生物数計測工程を実施することが可能である。システム装置111は、微生物検査装置1の制御や、微生物検査装置1より出力された電気信号の処理を行う。出力装置112は、分析装置11によって得られた分析結果を出力する。
【0054】
また、システム装置111は、通信機器114により、サーバ113とデータのやり取りを行う。サーバ113は、通信機器114を介して、複数の微生物検査装置1から出力結果を収集し、解析を行う。また、検体の種類に応じた微生物数計測工程を実施するために、サーバ113は、通信機器114を介して、微生物検査装置1の最適な制御方法を、複数の微生物検査装置1に送信する。
【0055】
図4を参照して本発明による微生物検査装置1の構成の詳細な例を説明する。微生物検査装置1は、分析装置11、システム装置111、及び、出力装置112を有する。分析装置11は、微生物検査チップ10を保持する保持部と、微生物検査チップ10の微生物検出部を流れる微生物を光学的に検出する検出装置12と、微生物検査チップ10に差圧を提供する圧力源装置14を有する。保持部に保持された微生物検査チップ10と圧力源装置14の間は、チップ連結管144によって接続されている。検出装置12と圧力源装置14は、システム装置111に接続されている。システム装置111は出力装置112に接続されている。
【0056】
微生物検査チップ10は、図1に示したように、検体や染色試薬を内部に保持し、微生物計測に必要な工程を行うための機構を内部に備える。圧力源装置14は、チップ連結管144を介して、微生物検査チップ10の通気口1631、1632、1633、1634(図1)を大気開放するか、又は、それに所定の圧力の空気を供給する。それによって、微生物計測に必要な工程が実行される。検出装置12は、検出光学系を有する。即ち、検出装置12は、励起光を発する光源を有する照射光学系と、微生物からの蛍光を検出する受光素子を有する受光光学系を有する。検出光学系は後に図5を参照して説明する。検出装置12は、微生物の検出結果を示す電気信号を生成する。
【0057】
システム装置111は、圧力源装置14に制御信号を出力し、検出装置12から検出結果を示す電気信号を入力し、それを処理する。電気信号の処理により得られた計測結果は、出力装置112に表示される。
【0058】
図5を参照して検出装置12に含まれる検出光学系の例を説明する。検出光学系の構成は、微生物の染色に用いる色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルによって変化することもある。ここでは、死菌染色色素1531として、PI(プロピディウムイオダイド)、全菌染色色素1541として、DAPI(4'、6-ヂアミジン-2'-フェニルインドール)を使用する場合を説明する。PIの励起波長ピークは532nm、蛍光波長ピークは615nmである。DAPIの励起波長ピークは、365nm、蛍光波長ピークは460nmである。
【0059】
本例の検出装置12は照射光学系と受光光学系を有する。照射光学系は、短波長(波長365nm)レーザ光源135、長波長(波長532nm)レーザ光源136、波長450nm以上の光を反射する光源用ダイクロイックミラー137、及び、レーザ光の光束が楕円状になるように集光するためのシリンドリカルレンズ133、134を有する。受光光学系は、蛍光を集光し、平行光線化する対物レンズ120、波長450nm以下の光を反射する検出用ダイクロイックミラー123、ミラー124、波長460nm近傍の波長の光のみ通過させる短波長用光学フィルタ125、波長615nm近傍の波長の光を通過させる長波長用光学フィルタ126、平行光を集光させるための集光レンズ127、128、迷光をカットするための空間フィルタとして用いるピンホール129、130、短波長用光学フィルタ125を通過した光を検出する短波長用ホトマル131、及び、長波長用光学フィルタ126を通過した光を検出する長波長用ホトマル132を有する。
【0060】
微生物検出用流路181は、シリンドリカルレンズ144と対物レンズ120の焦点に配置され、ピンホール129、130は集光レンズ127、128の焦点の位置に配置されている。
【0061】
短波長レーザ光源135は、DAPI用の短波長の励起光源であり、波長365nmの励起光を生成する。長波長レーザ光源136は、PI用の長波長の励起光源であり、波長532nmの励起光を生成する。短波長レーザ光源135からのレーザ光は、光源用ダイクロイックミラー137を透過し、シリンドリカルレンズ133、134によって、楕円状の断面の光束に変形され、微生物検出用流路181に照射される。長波長レーザ光源136からのレーザ光は、光源用ダイクロイックミラー137を反射し、進路を90度変更して進み、シリンドリカルレンズ133、134によって、楕円状の光束に変形され、微生物検出用流路181に照射される。微生物検出用流路181を通過する微生物175にレーザ光が照射されると、微生物は蛍光を発する。
【0062】
長波長レーザ光源136からの励起光(波長532nm)は、微生物175を染色したPIを励起する。PIから波長ピーク615nmの蛍光が発生する。短波長レーザ光源135からの励起光(波長360nm)は、微生物175を染色したDAPIを励起する。DAPIから、波長ピーク460nmの蛍光が発生する。
【0063】
この蛍光は、対物レンズ120によって集光され、平行光線化される。平行光線化された蛍光は、検出用ダイクロイックミラー123に導かれる。
【0064】
PIからの蛍光(蛍光波長ピーク615nm)は検出用ダイクロイックミラー123を通過する。PIからの蛍光は、更に、長波長用光学フィルタ126を通過し、集光レンズ128によって集光される。集光された蛍光は、ピンホール130を通過することによって、迷光がカットされ、長波長用ホトマル132に到達する。
【0065】
DAPIからの蛍光(蛍光波長ピーク460nm)は、検出用ダイクロイックミラー123を反射し、進路を90度変更して進み、ミラー124を反射し、再度、進路を90度変更して進む。DAPIからの蛍光は、更に、短波長用光学フィルタ125を通過し、集光レンズ127によって集光される。集光された蛍光は、ピンホール129を通過することによって、迷光がカットされ、短波長用ホトマル131に到達する。
【0066】
こうして本例では、受光光学系において、波長450nm以下の光を反射する検出用ダイクロイックミラー123を用いるから、二つの色素由来の蛍光を波長の違いにより分離できる。
【0067】
短波長用ホトマル131および長波長用ホトマル132に入射した蛍光は、電気信号に変換され、電気信号はシステム装置111に送られる。システム装置111は、短波長用ホトマル131と長波長用ホトマル132から送られた電気信号を処理し、微生物数の情報を得る。即ち、長波長用ホトマル132から出力されたPIからの蛍光信号に基づいて、死菌の数を検出する。短波長用ホトマル131から出力されたDAPIからの蛍光信号に基づいて、全菌の数を検出する。検査結果は、出力装置112に出力される。
【0068】
図6を参照して本発明による微生物検査チップ10の第1の例の組立方法を説明する。本例の微生物検査チップ10は、上部部材101と下部部材102を張り合わせることにより作成される。上部部材101と下部部材102は、樹脂を射出成形することによって製造されてよい。上部部材101は両面が平坦な板材によって形成される。上部部材101には、通気口1631、1632、1633、1634が形成されている。これらの通気口は貫通孔である。上部部材101に示された破線151、153、154、161は、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154及び不要成分除去部16の位置を示す。上部部材101に示された破線180は、下部部材102に形成された微生物検出部支持部180の位置を示す。
【0069】
下部部材102に示された実線1631、1632、1633、1634は、通気口を構成する穴を示す。下部部材102に示された実線151、153、154、161は、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154及び不要成分除去部16を構成する溝を表す。また、下部部材102に示された実線1581〜1584は空気用流路1581〜1584を構成する溝を示す。下部部材102に示された実線1571〜1574は、溶液用流路1571〜1574を構成する溝を示す。上部部材101と下部部材102を張り合わせることにより、下部部材102に形成された溝は、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154、溶液用流路1571〜1574、及び、空気用流路1581〜1584を形成する。液漏れ防止のために、上部部材101と下部部材102の接触面に、接着材などの粘性のある材料を塗布して、シーリングしてもよい。
【0070】
不要成分除去部16は、フィルタ160を有する。即ち、フィルタ160を、下部部材102に形成された溝に挿入し、上部部材101と下部部材102を張り合わせることによって、フィルタ160は固定される。フィルタ160は、好ましくは直径10ミクロン以上の粒子を取り除くように構成されている。この場合、上部部材101にも、フィルタ160が係合するための溝が設けられてもよい。
【0071】
本例では、微生物検出部18は、柱状部材からなる。下部部材102には微生物検出部支持部180が形成されている。微生物検出部支持部180は凹部であってよい。微生物検出部18を微生物検出部支持部180に係合させ、上部部材101と下部部材102を張り合わせることによって、微生物検出部18は固定される。この場合、上部部材101にも、微生物検出部18が係合するための溝が設けられてもよい。
【0072】
図7を参照して本発明による微生物検査チップの第2の例の構造を説明する。ここでは、本発明の微生物検査装置によって、食品中の微生物を検査する場合を説明する。この場合、検体1511は、検査対象の食品である。本例の微生物検査チップ20は、検体1511を保持するための検体容器151と、死菌のみを染色する死菌染色色素1531を保持する死菌染色試薬保持容器153と、全菌を染色する全菌染色色素1541を保持する全菌染色試薬保持容器154と、検体中に含まれる食品残渣を除去するためのフィルタである不要成分除去部16と、外部光源より励起光を照射し、検体中に含まれる微生物からの蛍光を観測するための微生物検出部28と、微生物検出部28を通過した検体を含む溶液を廃棄するための廃液容器163と、を有する。本例の微生物検査チップ20は、図1の第1の例と同様に、溶液用流路1571〜1574、空気用流路及び通気口1631〜1634を有する。本例の微生物検査チップ20は、図示のように、廃液容器163が下になるように、直立させた状態で使用する。
【0073】
図1に示した第1の例では、微生物検出部18に含まれる微生物検出用流路は、微生物検査チップの主面に平行に配置されている。しかしながら、本例の微生物検査チップ20では、微生物検出部28に含まれる微生物検出用流路は、微生物検査チップ20の主面に垂直である。即ち、微生物検出部28に含まれる微生物検出用流路は、微生物検査チップ20の厚さ方向に沿って配置されている。
【0074】
図中矢印Bは励起光の光軸を示す。図中矢印Dは、受光光学系に設けられた対物レンズの中心軸を示す。本例では、励起光の光軸と対物レンズの中心軸は直交するように構成されている。励起光の光軸と対物レンズの中心軸は、共に、微生物検査チップ20の主面に平行である。
【0075】
図8を参照して、微生物検出部28の詳細を説明する。図8は、図7の線a−a‘に沿って切断した断面構成を示す。本例の微生物検査チップ20は、上部部材201、下部部材202、上部平板203及び下部平板204を有する。上部部材201と下部部材202は互いに接着され、その両側に、上部平板203及び下部平板204が接着されている。上部部材201と下部部材202の間に、微生物検出部28が装着されている。微生物検出部28の両端には、パッキン191、192が装着されている。微生物検出部28は、2つのパッキン191、192によって弾性的に支持されている。本例の微生物検出部28は、第1の例の微生物検出部18と同様な構造を有してよい。図示のように、微生物検出部28は、微生物検出用流路281を有する。微生物検出用流路281は、微生物検出部28に形成された貫通孔である。尚、図8では、微生物検出用流路281内を通過する微生物175を説明するために、微生物検出用流路281の内径を誇張して描いている。実際には、図9に示すように、微生物検出用流路281の内径は、溶液用流路1573、1574の内径と比較して十分小さい。
【0076】
図中矢印Dは、受光光学系に設けられた対物レンズの中心軸を示す。励起光の光軸は紙面に垂直である。励起光は、微生物検出用流路181の照射範囲183の範囲に照射される。微生物175は、微生物検出用流路181内を図の左から右へ流れる。微生物175は、照射範囲183を通過するとき、励起光を照射される。微生物175は、死菌染色色素1531または全菌染色色素1541の蛍光を発する。この蛍光は、対物レンズ120を含む受光光学系によって検出される。
【0077】
微生物検査チップ20を構成する部材は樹脂の射出成形によって製造される。微生物検出部28は、微生物検査チップ20とは別個の部材として製造される。従って、微生物検査チップ20における微生物検出部28の設置位置は、必ずしもいつも正確ではない。微生物検出部28の設置位置は、微生物検査チップ毎に変動する。分析装置11に装填された微生物検査チップの位置も、微生物検査チップ毎に変動する。従って、分析装置11に装填された微生物検査チップの微生物検出部28と、検出光学系の対物レンズ120の位置あわせが必要となる。
【0078】
本発明によると、以下に説明するように、微生物検出部28と検出光学系の対物レンズ120の位置決めが容易である。
【0079】
図9を参照して、本発明による検出光学系の構造を説明する。図示のように、微生物検出部28に近接して、対物レンズ120が設けられている。対物レンズ120は、レンズホルダ121によって保持されている。レンズホルダ121は、2枚の刃122によって、微生物検出部28上に支持されている。微生物検出部28は、パッキン191、192を介して、上部部材101と下部部材102にそれぞれ装着されている。パッキン191、192は弾性変形可能な材料によって構成される。
【0080】
図10を参照して、本発明による検出光学系における位置決めについて説明する。対物レンズ120は、1対のレンズホルダ121によって、両側から、挟まれるように、保持される。レンズホルダ121の各々には、刃122が装着されている。2枚の刃122はそれぞれテーパ部122aを有する。2つのテーパ部122aは互いに向き合っており、両者の間に所定の挟み角を有するV字が形成される。好ましくは、2つのテーパ部122aに傾斜角は、対物レンズ120の中心軸と微生物計測用流路281の中心を結ぶ線に対して対称である。本例では、微生物検出部28は柱状部材からなる。2つのテーパ部122aによって形成されるV字は、微生物検出部28の柱状部材の円柱面に接触している。
【0081】
図示のように、微生物計測用流路281の中心と対物レンズ120の中心を結ぶ線に沿ってZ軸をとり、微生物計測用流路281の方向(紙面に垂直)にY軸をとり、両者に直交する方向にX軸をとる。
【0082】
2枚の刃22のテーパ部122aは、微生物計測用流路281と対物レンズ120の間の距離を規定すると同時に、微生物計測用流路281の中心と対物レンズ120の中心を一直線上に配置させる。
【0083】
対物レンズ120の焦点が微生物計測用流路281の中心に配置されるように、微生物計測用流路281と対物レンズ120の間の距離を設定する。次に、対物レンズ120の中心軸と微生物計測用流路281の中心が一直線上に配置するように、微生物計測用流路281に対する対物レンズ120のX方向の位置を設定する。こうして、微生物計測用流路281に対する対物レンズ120の位置が設定されたら、刃122の長さとテーパ部122aの傾斜角を決めることができる。
【0084】
こうして、2枚の刃22の寸法及び形状が決まったら、対物レンズ120の位置決めを行う。2つのテーパ部122aが、微生物検出部28の柱状部材の円柱面に接触するように、対物レンズ120及びレンズホルダ121を配置する。僅かな力によって、2枚の刃22のテーパ部122aが微生物検出部28の柱状部材の円柱面上に押し付けられる。このとき、パッキン191、192が弾性変形することによって、微生物検出部28の位置、又は、姿勢は、僅かであるが、変化することができる。
【0085】
2枚の刃122のテーパ部122aと微生物検出部28の接触によって、微生物検出部28と対物レンズ120の間の相対的な位置が決まる。即ち、対物レンズ120の焦点位置を、微生物検出部28の微生物検出用流路181の照射範囲183の中心軸上に配置することができる。微生物検出部28の柱状部材の外径が変化した場合には、対物レンズ120の中心と微生物計測用流路281の中心の間の距離は僅かであるが、変化する。しかしながら、微生物検出用流路281の照射範囲283を対物レンズ120の中心軸上に配置することができる。
【0086】
本例によると、微生物検査チップにおける微生物計測用流路281の設置位置の精度が高くない場合でも、また、微生物検査装置1における微生物検査チップの設置位置の精度が高くない場合でも、微生物計測用流路281に対する対物レンズ120の位置決めを容易に行うことができる。
【0087】
尚、図10を参照して説明した、対物レンズの支持機構は、図1に示した本発明の微生物検査チップの第1の例にも適用可能である。
【0088】
図11を参照して本発明による微生物検査チップの第2の例の組立方法を説明する。本例の微生物検査チップ20は、上部部材201と下部部材202を張り合わせることにより作成される。上部部材201の外面には上部平板203が接着され、下部部材202の外面には下部平板204が接着されている。上部部材201及び下部部材202は樹脂を射出成形することによって製造されてよい。上部部材201、上部平板203及び下部平板204は両面が平坦な板材によって形成される。
【0089】
本例の微生物検査チップ20を、図6に示した第1の例と比較すると、微生物検出部28の構造が異なる。また、微生物検出部28に接続され溶液用流路の構造が異なる。本例の微生物検査チップ20では、上部平板203及び下部平板204が用いられている。
【0090】
ここでは、本例の微生物検査チップ20の微生物検出部28及びそれに接続された溶液用流路の構造を説明する。図7を参照して説明したように、微生物検出部28に溶液用流路1573、1574が接続されている。溶液用流路1573は全菌染色試薬保持容器154と微生物検出部28を接続する流路である。溶液用流路1574は、微生物検出部28と廃液容器163を接続する流路である。
【0091】
図11に示すように、下部部材202に示された実線1573aと上部平板203に示された実線1573bは、溶液用流路1573を構成する溝を示す。上部平板203に示された破線1573cは、両者を接続する流路を示す。この流路1573cは、微生物検査チップ20の主面に対して直交する方向に延びている。下部部材202に示された実線1574bと破線1574aは、溶液用流路1574を構成する溝を示す。尚、破線1574aによって表される溝は、実線1574bによって表される溝が形成されている面の反対側の面に形成されている。下部部材202に示された破線1574cは、両者を接続する流路を示す。
【0092】
上部部材201と下部部材202を張り合わせることにより、下部部材202に形成された溝1573aは、溶液用流路1573の一部を形成する。上部部材201と上部平板203を張り合わせることにより、上部部材201に形成された溝1573bは、溶液用流路1573の一部を形成する。この2つの流路は、上部部材201を貫通する孔1573cによって接続されている。
【0093】
上部部材201と下部部材202を張り合わせることにより、下部部材202に形成された溝1574bは、溶液用流路1574の一部を形成する。下部部材202と下部平板204を張り合わせることにより、下部部材202に形成された溝1574aは、溶液用流路1574の一部を形成する。この2つの流路は、下部部材202を貫通する孔1574cによって接続されている。
【0094】
本例では、微生物検出部28は、柱状部材からなる。微生物検出部28は、その微生物計測用流路28が、微生物検査チップ20の主面に直交する方向に沿って配置されるように、装着される。微生物検出部28は2つのパッキン191、192に挟まれた状態で、上部部材201と下部部材202の間に装着される。
【0095】
微生物検出部28の入口は、溶液用流路1573のうちの流路1574bに接続され、微生物検出部28の出口は溶液用流路1574のうちの流路1574aに接続されている。
【0096】
図6に示したように、微生物検査チップの第1の例では、微生物検出部18の両端を、微生物検査チップの部材によって支持している。そのため、微生物計測用流路18の寸法が長くなる。一方、本例の微生物検査チップ20では、微生物検出部28の両端は、パッキン191、192によって支持されている。そのため、微生物計測用流路281の長さを短くすることができる。微生物計測用流路の長さが短くなるため、内部を流れる流体の圧力損失をより低減することができる。また、接着剤のはみ出しによる不良も起きない。
【0097】
以上本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されたい発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者によって容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の微生物検査チップの第1の例を示す図である。
【図2】本発明の微生物検査チップの第1の例の主要部の斜視図である。
【図3】本発明の微生物検査装置を構成の例を示す図である。
【図4】本発明の微生物検査装置も微生物検査チップを装填した状態を示す図である。
【図5】本発明の微生物検査装置の検出光学系の構成の例を示す図である。
【図6】本発明の微生物検査チップの第1の例の組立方法を説明する図である。
【図7】本発明の微生物検査チップの第2の例を示す図である。
【図8】本発明の微生物検査チップの第2の例の主要部の断面構成を示す図である。
【図9】本発明の微生物検査装置の検出光学系の対物レンズの支持機構の例を示す図である。
【図10】本発明の微生物検査装置の検出光学系の対物レンズの支持機構の例を示す図である。
【図11】本発明の微生物検査チップの第2の例の組立方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0099】
1…微生物検査装置、10…微生物検査チップ、11…分析装置、12…検出装置、14…圧力源装置、16…不要成分除去部、18…微生物検出部、20…微生物検査チップ、28…微生物検出部、101…上部部材、102…下部部材、111…システム装置、112…出力装置、113…サーバ、114…通信機器、120…対物レンズ、121…レンズホルダ、122…刃、123検出用ダイクロイックミラー、124…ミラー、125…短波長用光学フィルタ、126…長波長用光学フィルタ、127、128…集光レンズ、129…ピンホール、131…短波長用ホトマル、132…長波長用ホトマル、133、134…シリンドリカルレンズ、135…短波長レーザ、136長波長レーザ、137…光源用ダイクロイックミラー、144…チップ連結管、151…検体容器、153…死菌染色液容器、154…全菌染色液容器、155…溶離液容器、156…検出液容器、157…溶液用流路、158…空気用流路、160…不要成分除去部材、161…不要成分除去部保持部、163…廃液容器、175…微生物、180…微生物検出用流路保持部、181…微生物検出用流路、182…励起光、183…励起光照射範囲、184…蛍光、191、192…パッキン、201…上部部材、202…下部部材、203…上部平板、204…下部平板、281…微生物検出用流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる微生物の計測を行う微生物検査装置及びそれに用いる微生物検査チップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腸管出血性大腸菌O157などの微生物が原因の食中毒が大きな社会問題になっている。そのため、一般消費者の食品の安全性への要求はますます高まっている。食品サプライヤは、一般飲食店から食品製造プラントをもつ大企業にいたるまで多くの事業者を含む。これら事業者にとって、提供する食品の安全性を保障するための食品の衛生管理は必須義務である。一般に、食品の衛生管理は、食品衛生管理者が行っている。
【0003】
食品が「衛生的」であるか否かを判定する客観的指標として、食品中に含まれる一般生菌や大腸菌群などの生菌数が用いられる。
【0004】
従来、生菌数の計測手段として、培養法が用いられてきた。培養法では、先ず、食品検体の懸濁液を培地上に塗布し、微生物を培養する。次に、増殖した微生物が形成するコロニーを計測することにより、食品中の生菌数を計測する。培養法では、微生物がコロニーを形成するまでに1日から数日必要とする。そのため、培養法では、長時間の検査時間が必要となる。更に、培養法には、懸濁、希釈、塗布、コロニー計測など専門的知識および技量を必要とする工程が含まれる。そのため、人為的ミスの発生や検査費用が高額になる問題がある。従って、食品サプライヤにとって、培養法は、出荷した食品の安全を保障するための検査ではなく、食中毒が発生した後の原因究明の手段でしかないのが実情であった。
【0005】
従来、生菌数計測の迅速化および簡便化を目的とした様々な方法及び装置が試みられている。その1つとして、蛍光フローサイトメトリ法を用いた菌数測定装置が注目されている。蛍光フローサイトメトリ法では、蛍光色素で染色した検体を一個一個、極めて細い経路に沿って流す。この方法では、検体数を一個一個、直接測定するが、短時間で計測を干完了することが可能である。
【0006】
蛍光フローサイトメトリ法を用いた菌数測定装置に対する改善も行われている。例えば、検体中の成分が流路壁面に付着することを防止するため、検体とシース液の流れをそれぞれ層流化し、2つの流れの圧力差を利用し、検体の層流の流径を絞り込むことが行われている。
【0007】
更に、非特許文献1には、低価格化を実現し、洗浄の手間を省略するため、蛍光フローサイトメトリ法による測定を行う流路部分をディスポーザブルのチップによって形成することが記載されている。このディスポーザブルのチップ内で測定を行い、測定後は、廃棄する。
【0008】
【非特許文献1】Journal of Biomolecular Techniques、Vol14、Issue2、pp.119-127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、ディスポーザブルの微生物検査チップは、微細加工により大小の溝を構成した基板の上に、ガラスやPMMA(メタクリル酸メチル樹脂)などの透明な平面基板を貼り付けることにより、作成される。従って、検出用の流路は、基板上に構成される。そのため、チップ内の検出用の流路を流れる蛍光体を検出するためには、励起光の光軸と蛍光を検出する検出用集光レンズの中心軸は、チップに対し同一面側に設置される。従って、検出用集光レンズの中心軸を検出用の流路を含むチップ面に対して垂直に配置したとき、励起光の光軸は、検出用集光レンズの中心軸と同軸になるか、又は、傾斜した方向になる。
【0010】
励起光の光軸が検出用集光レンズの中心軸と同軸である場合、平面基板からの励起光の反射光又は検出用の流路底面からの励起光の反射光が検出用集光レンズに入る。そのため、反射光が迷光として検出され、正しい蛍光測定を困難にする。
【0011】
励起光の光軸が検出用集光レンズの中心軸に対して傾斜した方向に配置された場合、平面基板上で励起光の一部が反射されるため、検出用の流路に入射する励起光の光量が減少する。そのため、得られる蛍光量も減少し、検出精度が低下する。
【0012】
本発明の目的は、微生物検査チップにおいて、励起光の反射による迷光の発生を回避し、蛍光量の受光量の減少を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の微生物検査チップは、基板とそれに装着された微生物検出部を有する。微生物検出部は、微生物検出用流路を有し、光透過性の材料によって形成されている。微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微生物検査チップにおいて、励起光の反射による迷光の発生を回避し、蛍光量の受光量の減少を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照して、本発明の微生物検査装置で用いる微生物検査チップの第1の例の構成を説明する。本例の微生物検査チップ10は、検体1511を保持するための検体容器151と、検体に試薬を混合し反応させる第1及び第2の反応容器153、154と、検体中に含まれる不要成分を取り除くためのフィルタである不要成分除去部16と、外部光源より励起光を照射し、微生物検出用流路181を有する微生物検出部18と、微生物検出部18を通過した検体を含む溶液を廃棄するための廃液容器163と、を有する。図中の矢印Aは、微生物検出部18の微生物検出用流路181に照射する励起光の光軸を示す。
【0016】
本例の微生物検査チップ10は、図示のように、廃液容器163が下になるように、直立させた状態で使用する。
【0017】
ここでは、本発明の微生物検査装置によって、食品中の微生物を検査する場合を説明する。この場合、検体1511は、検査対象の食品である。また、第1の反応容器153は、死菌のみを染色する死菌染色色素1531を保持する。従って、第1の反応容器153を、以下で、死菌染色試薬保持容器153と称する。第2の反応容器154は、全菌を染色する全菌染色色素1541を保持する。従って、第2の反応容器154を、以下に、全菌染色試薬保持容器154と称する。不要成分除去部16は、食品残渣を除去する。検体1511、死菌染色色素1531、及び、全菌染色色素1541の混合液は、微生物検出部18を通過した後に、廃液容器163に保持される。
【0018】
検体容器151の下端は、不要成分除去部16に、流路によって又は直接、接続されている。不要成分除去部16の下端は、死菌染色試薬保持容器153の上端に、流路1571によって接続されている。死菌染色試薬保持容器153の下端は全菌染色試薬保持容器154の上端に、流路1572によって、接続されている。全菌染色試薬保持容器154の下端は微生物検出部18の上端に、流路1573によって、接続されている。微生物検出部18の下端は廃液容器163の上端に、流路1574によって接続されている。流路1571、1572、1573、1574によって、検体容器151、不要成分除去部16、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154、微生物検出部18、及び、廃液容器163は、直列に連結されている。
【0019】
廃液容器163の上端には、空気用流路1584が接続されている。空気用流路1584の上端は、通気口1634となっている。検体容器151の上端には、空気用流路1581が接続されている。空気用流路1581の上端は、通気口1631となっている。死菌染色試薬保持容器153の上端には、空気用流路1582が接続されている。空気用流路1582の上端は、通気口1632となっている。全菌染色試薬保持容器154の上端には、空気用流路1583が接続されている。空気用流路1583の上端は、通気口1633となっている。通気口1631、1632、1633、1634を介して、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154、及び、廃液容器163は、それぞれ所定の圧力源に接続されるか、又は、大気開放される。
【0020】
溶液用流路1571〜1574は、内径が10μm〜1mmの矩形断面又は円形断面の管路である。空気用流路1581〜1584は、内径が10μm〜1mmの矩形断面又は円形断面の管路である。溶液用流路1571〜1574の断面積は空気用流路1581〜1584の断面積より大きい。微生物検出部18の微生物検出用流路の内径は、1μm〜1mmである。
【0021】
検体容器151の体積は検体1511の体積より大きい。死菌染色試薬保持容器153の体積は検体1511と死菌染色色素1531の合計の体積より大きい。全菌染色試薬保持容器154及び廃液容器163の体積は、それぞれ、検体1511、死菌染色色素1531及び全菌染色色素1541の合計の体積より大きい。
【0022】
検体容器151と死菌染色試薬保持容器153を接続する溶液用流路1571の最高点は、検体容器151内の検体1511の液面より高い。死菌染色試薬保持容器153と全菌染色試薬保持容器154を接続する溶液用流路1572の最高点は、死菌染色試薬保持容器153内の検体1511と死菌染色色素1531の混合液の液面より高い。全菌染色試薬保持容器154と微生物検出部18を接続する溶液用流路1573の最高点は、全菌染色試薬保持容器154内の検体1511、死菌染色色素1531、及び、全菌染色色素1541の混合液の液面より高い。こうして、流路の最高点の高さを、上流側の容器の液面の高さより高くすることによって、液面差に起因して、溶液が流路を経由して、上流側の容器から下流側の容器に移動することが防止される。
【0023】
死菌染色色素1531及び全菌染色色素1541は、微生物検査チップ10の死菌染色試薬保持容器153及び全菌染色試薬保持容器154内に予め封入されている。
【0024】
死菌染色色素1531として、例えば、PI(プロピディウムイオダイド)(1μg/ml〜1mg/ml)を使用してよい。全菌染色色素1541として、例えば、DAPI(4'、6-ヂアミジン-2'-フェニルインドール)(1μg/ml〜1mg/ml)、AO(アクリジンオレンジ)(1μg/ml〜1mg/ml)、EB(エチジウムブロマイド)(1μg/ml〜1mg/ml)、SYTO(R)(1μg/ml〜1mg/ml)などを使用してよい。
【0025】
検体1511は、検査対象の食品に対して質量比10倍の生理食塩水を加え、ストマッキング処理を行ったものである。検体1511は、検査前に通気口1633より、検体容器151に注入する。
【0026】
次に、微生物検査チップ10を用いて、微生物計測を行う方法と、それによる各液体の移動について説明する。
【0027】
微生物検査チップ10は、図示のように、通気口1631〜1634が上側に、廃液容器163が下側に、配置されるように、直立させた状態で使用する。先ず、検体を検体容器151内に導入する。通気口1631を大気開放し、通気口1631から検体を検体容器151内に導入する。検体容器151内に、検体が導入されると、同体積の気体が、通気口1631を経由して、検体容器151内から外に排出される。
【0028】
次に、検体1511を死菌染色試薬保持容器153へ移動させる。通気口1631に圧力源を接続し、通気口1632〜1634を大気開放する。通気口1631を介して加圧空気が、検体容器151内に導入される。検体容器151内の検体の上側の空気の圧力が上昇する。それによって、検体容器151内の圧力は、死菌染色試薬保持容器153内の圧力より大きくなる。検体容器151内の検体は、不要成分除去部16及び溶液用流路1571を経由して、死菌染色試薬保持容器153へ移動する。死菌染色試薬保持容器153内に、検体が導入されると、同体積の気体が、通気口1632を経由して、死菌染色試薬保持容器153内から外に排出される。
【0029】
また、検体1511が不要成分除去部16を通過することにより、検体1511内の不要成分は除去される。
【0030】
死菌染色試薬保持容器153にて、検体は死菌染色色素1531と混合される。検体1511中の死菌は、死菌染色色素1531により染色されるが、検体1511中の生菌は、死菌染色色素1531によって染色されない。
【0031】
検体と死菌染色色素1531の混合液の液面は、死菌染色液保持容器153と全菌染色液保持容器154を接続する溶液用流路1572の最高点を超えない。死菌染色液保持容器153及び全菌染色液保持容器154内の気圧は大気圧と等しいため、混合液は死菌染色液保持容器153内に保持され、全菌染色液保持容器154に移動することはない。混合液は、染色反応に必要な時間、死菌染色液保持容器153内に保持されることができる。染色中は、微生物検査チップ10の温度を一定に保持する。それによって、温度変化による染色の影響を小さくすることができる。
【0032】
なお、廃液容器163内の気圧も大気圧と等しい。従って、全菌染色試薬保持容器154内の全菌染色色素154は、微生物検出部18に移動しないし、死菌染色液保持容器153に逆流することもない。即ち、全菌染色試薬保持容器154内に保持される。
【0033】
混合液が死菌染色液保持容器153から全菌染色液保持容器154へ移動することをより確実に防止するために、通気口1633、1634に圧力源を接続してもよい。即ち、全菌染色液保持容器154と検出液廃液容器163内の気圧を、大気圧より大きく、且つ、検体容器151内の気圧より小さくする。それによって、混合液は、確実に、死菌染色液保持容器153内に保持される。
【0034】
次に、混合液を全菌染色試薬保持容器154へ移動させる。通気口1631、1632に圧力源を接続し、通気口1633、1634を大気開放する。通気口1632を介して加圧空気が、死菌染色液保持容器153内に導入される。死菌染色液保持容器153内の混合液の上側の空気の圧力が上昇する。それによって、死菌染色液保持容器153内の圧力は、全菌染色試薬保持容器154内の圧力より大きくなる。死菌染色液保持容器153内の混合液は、溶液用流路1572を経由して全菌染色試薬保持容器154へ移動する。全菌染色試薬保持容器154内に、混合液が導入されると、同体積の気体が、通気口1633を経由して、全菌染色試薬保持容器154内から外に排出される。
【0035】
全菌染色試薬保持容器154にて、検体は全菌染色色素1541と混合される。検体1511中の死菌と生菌、即ち、全ての菌は、全菌染色色素1541により染色される。
【0036】
次に、検体1511と死菌染色色素1531と全菌染色色素1541の混合液を微生物検出部18に通過させる。通気口1631、1632、1633に圧力源を接続し、通気口1634を大気開放する。通気口1633を介して加圧空気が、全菌染色試薬保持容器154内に導入される。全菌染色試薬保持容器154内の混合液の上側の空気の圧力が上昇する。それによって、全菌染色試薬保持容器154内の圧力は、廃液容器163内の圧力より大きくなる。全菌染色試薬保持容器154内の混合液は、溶液用流路1573、及び、微生物検出部18を経由して廃液容器163へ移動する。
【0037】
廃液容器163内に、混合液が排出されると、同体積の気体が、通気口1634を経由して、廃液容器163内から外に排出される。
【0038】
混合液が、微生物検出部18の微生物検出用流路181を通過するとき、図1の矢印Aの方向より、励起光が照射される。微生物に励起光を照射すると、蛍光を発する。死菌染色色素1531の蛍光の通過数を計数することによって、死菌の数が得られる。全菌染色色素1541の蛍光の通過数を計数することによって、全菌の数が得られる。全菌の数から死菌の数を減算することにより生菌の数が得られる。
【0039】
図1に示した本発明の微生物検査チップ10では、2つの反応容器、即ち、死菌染色試薬保持容器153と全菌染色試薬保持容器154を有するが、1つの反応容器を有するように構成してもよく、3つ以上の反応容器を有するように構成してもよい。また、反応容器における反応は、染色試薬による微生物の染色であるが、他の操作であってもよい。
【0040】
図2を参照して、本発明の微生物検査チップ10の微生物検出部18について説明する。図2は、微生物検出部18を、微生物検査チップ10の側面から見た斜視図である。微生物検査チップ10の凹部に、微生物検出部18が装着されている。微生物検出部18は、微生物検査チップ10と一体的な構造ではなく、別個に製造された部材であってよい。従って、微生物検出部18は、微生物検査チップ10を構成する材料とは異なる材料で構成されていよい。
【0041】
微生物検出部18は、光学特性に優れ、形状の変化の小さい光透過性の材料によって形成される。このような材料を用いることによって、励起光の入射量などの物理量や、焦点距離などの最適な測定条件を安定に保つことができる。微生物検出部18は、好ましくは石英や光学ガラスによって形成される。石英や光学ガラスは、光学性能に優れ、樹脂よりも自家蛍光量が少ないため、好ましい。
【0042】
微生物検出部18は、貫通孔を有する。この孔が微生物検出用流路181である。微生物検出用流路181の断面は、矩形又は円であるが、好ましくは、正方形である。微生物検出用流路181の内径は大きいほど圧力損失は小さくなるが、微生物を一個ずつ流すためには、小さいほうがよい。
【0043】
微生物検出用流路181の内径は、1μm〜1mmである。即ち、微生物検出用流路181の断面は、1辺が1μm〜1mmの正方形、又は、直径が1μm〜1mmの円である。
【0044】
微生物検出部18の断面は、矩形又は円であるが、好ましくは、正方形である。微生物検出部18の外径は0.1mm〜5mmである。即ち、微生物検出部18の断面は、1辺が0.1mm〜5mmの正方形、又は、直径が0.1mm〜5mmの円である。
【0045】
微生物検出部18の上端及び下端は微生物検査チップ10に埋め込まれている。微生物検出部18のうち、微生物検査チップ10から露出している部分の長さは、0.01mm〜10mmが好ましい。
【0046】
微生物検出用流路181は、上側の溶液用流路1573及び下側の溶液用流路1574に接続されている。溶液用流路1573、1574の内径は10μm〜1mmである。従って、微生物検出用流路181の断面積は、溶液用流路1573、1574の断面積より十分小さい。
【0047】
検出光学系について説明する。検出光学系は励起光を発する光源を有する照射光学系と、微生物からの蛍光を検出する受光素子を有する受光光学系を有する。図中矢印Aは励起光の光軸を示す。図中矢印Bは、受光光学系に設けられた対物レンズ120の中心軸を示す。本例では、励起光の光軸と対物レンズ120の中心軸は直交するように構成されている。励起光の光軸は、微生物検査チップ10の主面に平行であるが、対物レンズ120の中心軸は、微生物検査チップ10の主面に直交する。
【0048】
微生物検出用流路181に励起光を照射する。励起光は、微生物検出用流路181の照射範囲183の範囲に照射される。微生物175は、微生物検出用流路181内を図の上から下へ流れる。微生物175は、照射範囲183を通過するとき、励起光を照射される。微生物175は、死菌染色色素1531または全菌染色色素1541の蛍光を発する。この蛍光は、対物レンズ120を含む受光光学系によって検出される。
【0049】
本例では、励起光の反射による迷光の発生や蛍光の受光量の減少の問題を解決することができる。励起光の光軸と対物レンズの中心軸は互いに直交するから、励起光の反射光を、迷光として、受光光学系が検出するはない。また、励起光の光軸は、微生物検査チップ10の主面に対して直交する。そのため、励起光が、微生物検査チップ10の主面に反射する量は少ない。従って、本例では、励起光を効率的に、微生物検出用流路181に照射することができる。
【0050】
微生物検査チップ10の一部が、励起光の光軸上に、又は、対物レンズ120の中心軸上に存在すると、微生物検出用流路181に照射される励起光の光量が低減する。また、微生物検査チップ10の一部が、対物レンズ120の中心軸上に存在すると、受光素子によって受光される蛍光の光量が低減する。
【0051】
本発明によると、微生物検出部18は、微生物検査チップ10の一部によって囲まれていないし、包囲されていない。本例では、励起光の光軸と対物レンズ120の中心軸は直交するように構成されている。従って、微生物検出部18の周囲は、少なくとも90度の範囲で、露出していればよい。微生物検出部18の周囲の、少なくとも90度の範囲で、励起光の照射と蛍光の検出を妨害する物が無ければよい。好ましくは、微生物検出部18の周囲は、少なくとも180度の範囲で、露出していればよい。微生物検出部18の周囲の、少なくとも180度の範囲で、励起光の照射と蛍光の検出を妨害する物が無ければよい。
【0052】
従って、光源からの励起光は、微生物検査チップ10の一部によって妨げられることなく、直接、微生物検出用流路181に照射される。また、微生物検出用流路181からの蛍光は、微生物検査チップ10の一部によって妨げられることなく、直接、受光光学系によって受光される。従って、励起光の照射光量の低減及び蛍光の受光量の低減はない。
【0053】
図3を参照して本発明による微生物検査装置1の構成の例を説明する。本例の微生物検査装置1は、分析装置11、システム装置111、出力装置112及び通信機器114を有する。微生物検査装置1によって微生物を計測するとき、微生物検査チップ10を分析装置11の内部に装填する。微生物検査チップ10の種類を変えることによって、様々な検体に最適な微生物数計測工程を実施することが可能である。システム装置111は、微生物検査装置1の制御や、微生物検査装置1より出力された電気信号の処理を行う。出力装置112は、分析装置11によって得られた分析結果を出力する。
【0054】
また、システム装置111は、通信機器114により、サーバ113とデータのやり取りを行う。サーバ113は、通信機器114を介して、複数の微生物検査装置1から出力結果を収集し、解析を行う。また、検体の種類に応じた微生物数計測工程を実施するために、サーバ113は、通信機器114を介して、微生物検査装置1の最適な制御方法を、複数の微生物検査装置1に送信する。
【0055】
図4を参照して本発明による微生物検査装置1の構成の詳細な例を説明する。微生物検査装置1は、分析装置11、システム装置111、及び、出力装置112を有する。分析装置11は、微生物検査チップ10を保持する保持部と、微生物検査チップ10の微生物検出部を流れる微生物を光学的に検出する検出装置12と、微生物検査チップ10に差圧を提供する圧力源装置14を有する。保持部に保持された微生物検査チップ10と圧力源装置14の間は、チップ連結管144によって接続されている。検出装置12と圧力源装置14は、システム装置111に接続されている。システム装置111は出力装置112に接続されている。
【0056】
微生物検査チップ10は、図1に示したように、検体や染色試薬を内部に保持し、微生物計測に必要な工程を行うための機構を内部に備える。圧力源装置14は、チップ連結管144を介して、微生物検査チップ10の通気口1631、1632、1633、1634(図1)を大気開放するか、又は、それに所定の圧力の空気を供給する。それによって、微生物計測に必要な工程が実行される。検出装置12は、検出光学系を有する。即ち、検出装置12は、励起光を発する光源を有する照射光学系と、微生物からの蛍光を検出する受光素子を有する受光光学系を有する。検出光学系は後に図5を参照して説明する。検出装置12は、微生物の検出結果を示す電気信号を生成する。
【0057】
システム装置111は、圧力源装置14に制御信号を出力し、検出装置12から検出結果を示す電気信号を入力し、それを処理する。電気信号の処理により得られた計測結果は、出力装置112に表示される。
【0058】
図5を参照して検出装置12に含まれる検出光学系の例を説明する。検出光学系の構成は、微生物の染色に用いる色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルによって変化することもある。ここでは、死菌染色色素1531として、PI(プロピディウムイオダイド)、全菌染色色素1541として、DAPI(4'、6-ヂアミジン-2'-フェニルインドール)を使用する場合を説明する。PIの励起波長ピークは532nm、蛍光波長ピークは615nmである。DAPIの励起波長ピークは、365nm、蛍光波長ピークは460nmである。
【0059】
本例の検出装置12は照射光学系と受光光学系を有する。照射光学系は、短波長(波長365nm)レーザ光源135、長波長(波長532nm)レーザ光源136、波長450nm以上の光を反射する光源用ダイクロイックミラー137、及び、レーザ光の光束が楕円状になるように集光するためのシリンドリカルレンズ133、134を有する。受光光学系は、蛍光を集光し、平行光線化する対物レンズ120、波長450nm以下の光を反射する検出用ダイクロイックミラー123、ミラー124、波長460nm近傍の波長の光のみ通過させる短波長用光学フィルタ125、波長615nm近傍の波長の光を通過させる長波長用光学フィルタ126、平行光を集光させるための集光レンズ127、128、迷光をカットするための空間フィルタとして用いるピンホール129、130、短波長用光学フィルタ125を通過した光を検出する短波長用ホトマル131、及び、長波長用光学フィルタ126を通過した光を検出する長波長用ホトマル132を有する。
【0060】
微生物検出用流路181は、シリンドリカルレンズ144と対物レンズ120の焦点に配置され、ピンホール129、130は集光レンズ127、128の焦点の位置に配置されている。
【0061】
短波長レーザ光源135は、DAPI用の短波長の励起光源であり、波長365nmの励起光を生成する。長波長レーザ光源136は、PI用の長波長の励起光源であり、波長532nmの励起光を生成する。短波長レーザ光源135からのレーザ光は、光源用ダイクロイックミラー137を透過し、シリンドリカルレンズ133、134によって、楕円状の断面の光束に変形され、微生物検出用流路181に照射される。長波長レーザ光源136からのレーザ光は、光源用ダイクロイックミラー137を反射し、進路を90度変更して進み、シリンドリカルレンズ133、134によって、楕円状の光束に変形され、微生物検出用流路181に照射される。微生物検出用流路181を通過する微生物175にレーザ光が照射されると、微生物は蛍光を発する。
【0062】
長波長レーザ光源136からの励起光(波長532nm)は、微生物175を染色したPIを励起する。PIから波長ピーク615nmの蛍光が発生する。短波長レーザ光源135からの励起光(波長360nm)は、微生物175を染色したDAPIを励起する。DAPIから、波長ピーク460nmの蛍光が発生する。
【0063】
この蛍光は、対物レンズ120によって集光され、平行光線化される。平行光線化された蛍光は、検出用ダイクロイックミラー123に導かれる。
【0064】
PIからの蛍光(蛍光波長ピーク615nm)は検出用ダイクロイックミラー123を通過する。PIからの蛍光は、更に、長波長用光学フィルタ126を通過し、集光レンズ128によって集光される。集光された蛍光は、ピンホール130を通過することによって、迷光がカットされ、長波長用ホトマル132に到達する。
【0065】
DAPIからの蛍光(蛍光波長ピーク460nm)は、検出用ダイクロイックミラー123を反射し、進路を90度変更して進み、ミラー124を反射し、再度、進路を90度変更して進む。DAPIからの蛍光は、更に、短波長用光学フィルタ125を通過し、集光レンズ127によって集光される。集光された蛍光は、ピンホール129を通過することによって、迷光がカットされ、短波長用ホトマル131に到達する。
【0066】
こうして本例では、受光光学系において、波長450nm以下の光を反射する検出用ダイクロイックミラー123を用いるから、二つの色素由来の蛍光を波長の違いにより分離できる。
【0067】
短波長用ホトマル131および長波長用ホトマル132に入射した蛍光は、電気信号に変換され、電気信号はシステム装置111に送られる。システム装置111は、短波長用ホトマル131と長波長用ホトマル132から送られた電気信号を処理し、微生物数の情報を得る。即ち、長波長用ホトマル132から出力されたPIからの蛍光信号に基づいて、死菌の数を検出する。短波長用ホトマル131から出力されたDAPIからの蛍光信号に基づいて、全菌の数を検出する。検査結果は、出力装置112に出力される。
【0068】
図6を参照して本発明による微生物検査チップ10の第1の例の組立方法を説明する。本例の微生物検査チップ10は、上部部材101と下部部材102を張り合わせることにより作成される。上部部材101と下部部材102は、樹脂を射出成形することによって製造されてよい。上部部材101は両面が平坦な板材によって形成される。上部部材101には、通気口1631、1632、1633、1634が形成されている。これらの通気口は貫通孔である。上部部材101に示された破線151、153、154、161は、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154及び不要成分除去部16の位置を示す。上部部材101に示された破線180は、下部部材102に形成された微生物検出部支持部180の位置を示す。
【0069】
下部部材102に示された実線1631、1632、1633、1634は、通気口を構成する穴を示す。下部部材102に示された実線151、153、154、161は、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154及び不要成分除去部16を構成する溝を表す。また、下部部材102に示された実線1581〜1584は空気用流路1581〜1584を構成する溝を示す。下部部材102に示された実線1571〜1574は、溶液用流路1571〜1574を構成する溝を示す。上部部材101と下部部材102を張り合わせることにより、下部部材102に形成された溝は、検体容器151、死菌染色試薬保持容器153、全菌染色試薬保持容器154、溶液用流路1571〜1574、及び、空気用流路1581〜1584を形成する。液漏れ防止のために、上部部材101と下部部材102の接触面に、接着材などの粘性のある材料を塗布して、シーリングしてもよい。
【0070】
不要成分除去部16は、フィルタ160を有する。即ち、フィルタ160を、下部部材102に形成された溝に挿入し、上部部材101と下部部材102を張り合わせることによって、フィルタ160は固定される。フィルタ160は、好ましくは直径10ミクロン以上の粒子を取り除くように構成されている。この場合、上部部材101にも、フィルタ160が係合するための溝が設けられてもよい。
【0071】
本例では、微生物検出部18は、柱状部材からなる。下部部材102には微生物検出部支持部180が形成されている。微生物検出部支持部180は凹部であってよい。微生物検出部18を微生物検出部支持部180に係合させ、上部部材101と下部部材102を張り合わせることによって、微生物検出部18は固定される。この場合、上部部材101にも、微生物検出部18が係合するための溝が設けられてもよい。
【0072】
図7を参照して本発明による微生物検査チップの第2の例の構造を説明する。ここでは、本発明の微生物検査装置によって、食品中の微生物を検査する場合を説明する。この場合、検体1511は、検査対象の食品である。本例の微生物検査チップ20は、検体1511を保持するための検体容器151と、死菌のみを染色する死菌染色色素1531を保持する死菌染色試薬保持容器153と、全菌を染色する全菌染色色素1541を保持する全菌染色試薬保持容器154と、検体中に含まれる食品残渣を除去するためのフィルタである不要成分除去部16と、外部光源より励起光を照射し、検体中に含まれる微生物からの蛍光を観測するための微生物検出部28と、微生物検出部28を通過した検体を含む溶液を廃棄するための廃液容器163と、を有する。本例の微生物検査チップ20は、図1の第1の例と同様に、溶液用流路1571〜1574、空気用流路及び通気口1631〜1634を有する。本例の微生物検査チップ20は、図示のように、廃液容器163が下になるように、直立させた状態で使用する。
【0073】
図1に示した第1の例では、微生物検出部18に含まれる微生物検出用流路は、微生物検査チップの主面に平行に配置されている。しかしながら、本例の微生物検査チップ20では、微生物検出部28に含まれる微生物検出用流路は、微生物検査チップ20の主面に垂直である。即ち、微生物検出部28に含まれる微生物検出用流路は、微生物検査チップ20の厚さ方向に沿って配置されている。
【0074】
図中矢印Bは励起光の光軸を示す。図中矢印Dは、受光光学系に設けられた対物レンズの中心軸を示す。本例では、励起光の光軸と対物レンズの中心軸は直交するように構成されている。励起光の光軸と対物レンズの中心軸は、共に、微生物検査チップ20の主面に平行である。
【0075】
図8を参照して、微生物検出部28の詳細を説明する。図8は、図7の線a−a‘に沿って切断した断面構成を示す。本例の微生物検査チップ20は、上部部材201、下部部材202、上部平板203及び下部平板204を有する。上部部材201と下部部材202は互いに接着され、その両側に、上部平板203及び下部平板204が接着されている。上部部材201と下部部材202の間に、微生物検出部28が装着されている。微生物検出部28の両端には、パッキン191、192が装着されている。微生物検出部28は、2つのパッキン191、192によって弾性的に支持されている。本例の微生物検出部28は、第1の例の微生物検出部18と同様な構造を有してよい。図示のように、微生物検出部28は、微生物検出用流路281を有する。微生物検出用流路281は、微生物検出部28に形成された貫通孔である。尚、図8では、微生物検出用流路281内を通過する微生物175を説明するために、微生物検出用流路281の内径を誇張して描いている。実際には、図9に示すように、微生物検出用流路281の内径は、溶液用流路1573、1574の内径と比較して十分小さい。
【0076】
図中矢印Dは、受光光学系に設けられた対物レンズの中心軸を示す。励起光の光軸は紙面に垂直である。励起光は、微生物検出用流路181の照射範囲183の範囲に照射される。微生物175は、微生物検出用流路181内を図の左から右へ流れる。微生物175は、照射範囲183を通過するとき、励起光を照射される。微生物175は、死菌染色色素1531または全菌染色色素1541の蛍光を発する。この蛍光は、対物レンズ120を含む受光光学系によって検出される。
【0077】
微生物検査チップ20を構成する部材は樹脂の射出成形によって製造される。微生物検出部28は、微生物検査チップ20とは別個の部材として製造される。従って、微生物検査チップ20における微生物検出部28の設置位置は、必ずしもいつも正確ではない。微生物検出部28の設置位置は、微生物検査チップ毎に変動する。分析装置11に装填された微生物検査チップの位置も、微生物検査チップ毎に変動する。従って、分析装置11に装填された微生物検査チップの微生物検出部28と、検出光学系の対物レンズ120の位置あわせが必要となる。
【0078】
本発明によると、以下に説明するように、微生物検出部28と検出光学系の対物レンズ120の位置決めが容易である。
【0079】
図9を参照して、本発明による検出光学系の構造を説明する。図示のように、微生物検出部28に近接して、対物レンズ120が設けられている。対物レンズ120は、レンズホルダ121によって保持されている。レンズホルダ121は、2枚の刃122によって、微生物検出部28上に支持されている。微生物検出部28は、パッキン191、192を介して、上部部材101と下部部材102にそれぞれ装着されている。パッキン191、192は弾性変形可能な材料によって構成される。
【0080】
図10を参照して、本発明による検出光学系における位置決めについて説明する。対物レンズ120は、1対のレンズホルダ121によって、両側から、挟まれるように、保持される。レンズホルダ121の各々には、刃122が装着されている。2枚の刃122はそれぞれテーパ部122aを有する。2つのテーパ部122aは互いに向き合っており、両者の間に所定の挟み角を有するV字が形成される。好ましくは、2つのテーパ部122aに傾斜角は、対物レンズ120の中心軸と微生物計測用流路281の中心を結ぶ線に対して対称である。本例では、微生物検出部28は柱状部材からなる。2つのテーパ部122aによって形成されるV字は、微生物検出部28の柱状部材の円柱面に接触している。
【0081】
図示のように、微生物計測用流路281の中心と対物レンズ120の中心を結ぶ線に沿ってZ軸をとり、微生物計測用流路281の方向(紙面に垂直)にY軸をとり、両者に直交する方向にX軸をとる。
【0082】
2枚の刃22のテーパ部122aは、微生物計測用流路281と対物レンズ120の間の距離を規定すると同時に、微生物計測用流路281の中心と対物レンズ120の中心を一直線上に配置させる。
【0083】
対物レンズ120の焦点が微生物計測用流路281の中心に配置されるように、微生物計測用流路281と対物レンズ120の間の距離を設定する。次に、対物レンズ120の中心軸と微生物計測用流路281の中心が一直線上に配置するように、微生物計測用流路281に対する対物レンズ120のX方向の位置を設定する。こうして、微生物計測用流路281に対する対物レンズ120の位置が設定されたら、刃122の長さとテーパ部122aの傾斜角を決めることができる。
【0084】
こうして、2枚の刃22の寸法及び形状が決まったら、対物レンズ120の位置決めを行う。2つのテーパ部122aが、微生物検出部28の柱状部材の円柱面に接触するように、対物レンズ120及びレンズホルダ121を配置する。僅かな力によって、2枚の刃22のテーパ部122aが微生物検出部28の柱状部材の円柱面上に押し付けられる。このとき、パッキン191、192が弾性変形することによって、微生物検出部28の位置、又は、姿勢は、僅かであるが、変化することができる。
【0085】
2枚の刃122のテーパ部122aと微生物検出部28の接触によって、微生物検出部28と対物レンズ120の間の相対的な位置が決まる。即ち、対物レンズ120の焦点位置を、微生物検出部28の微生物検出用流路181の照射範囲183の中心軸上に配置することができる。微生物検出部28の柱状部材の外径が変化した場合には、対物レンズ120の中心と微生物計測用流路281の中心の間の距離は僅かであるが、変化する。しかしながら、微生物検出用流路281の照射範囲283を対物レンズ120の中心軸上に配置することができる。
【0086】
本例によると、微生物検査チップにおける微生物計測用流路281の設置位置の精度が高くない場合でも、また、微生物検査装置1における微生物検査チップの設置位置の精度が高くない場合でも、微生物計測用流路281に対する対物レンズ120の位置決めを容易に行うことができる。
【0087】
尚、図10を参照して説明した、対物レンズの支持機構は、図1に示した本発明の微生物検査チップの第1の例にも適用可能である。
【0088】
図11を参照して本発明による微生物検査チップの第2の例の組立方法を説明する。本例の微生物検査チップ20は、上部部材201と下部部材202を張り合わせることにより作成される。上部部材201の外面には上部平板203が接着され、下部部材202の外面には下部平板204が接着されている。上部部材201及び下部部材202は樹脂を射出成形することによって製造されてよい。上部部材201、上部平板203及び下部平板204は両面が平坦な板材によって形成される。
【0089】
本例の微生物検査チップ20を、図6に示した第1の例と比較すると、微生物検出部28の構造が異なる。また、微生物検出部28に接続され溶液用流路の構造が異なる。本例の微生物検査チップ20では、上部平板203及び下部平板204が用いられている。
【0090】
ここでは、本例の微生物検査チップ20の微生物検出部28及びそれに接続された溶液用流路の構造を説明する。図7を参照して説明したように、微生物検出部28に溶液用流路1573、1574が接続されている。溶液用流路1573は全菌染色試薬保持容器154と微生物検出部28を接続する流路である。溶液用流路1574は、微生物検出部28と廃液容器163を接続する流路である。
【0091】
図11に示すように、下部部材202に示された実線1573aと上部平板203に示された実線1573bは、溶液用流路1573を構成する溝を示す。上部平板203に示された破線1573cは、両者を接続する流路を示す。この流路1573cは、微生物検査チップ20の主面に対して直交する方向に延びている。下部部材202に示された実線1574bと破線1574aは、溶液用流路1574を構成する溝を示す。尚、破線1574aによって表される溝は、実線1574bによって表される溝が形成されている面の反対側の面に形成されている。下部部材202に示された破線1574cは、両者を接続する流路を示す。
【0092】
上部部材201と下部部材202を張り合わせることにより、下部部材202に形成された溝1573aは、溶液用流路1573の一部を形成する。上部部材201と上部平板203を張り合わせることにより、上部部材201に形成された溝1573bは、溶液用流路1573の一部を形成する。この2つの流路は、上部部材201を貫通する孔1573cによって接続されている。
【0093】
上部部材201と下部部材202を張り合わせることにより、下部部材202に形成された溝1574bは、溶液用流路1574の一部を形成する。下部部材202と下部平板204を張り合わせることにより、下部部材202に形成された溝1574aは、溶液用流路1574の一部を形成する。この2つの流路は、下部部材202を貫通する孔1574cによって接続されている。
【0094】
本例では、微生物検出部28は、柱状部材からなる。微生物検出部28は、その微生物計測用流路28が、微生物検査チップ20の主面に直交する方向に沿って配置されるように、装着される。微生物検出部28は2つのパッキン191、192に挟まれた状態で、上部部材201と下部部材202の間に装着される。
【0095】
微生物検出部28の入口は、溶液用流路1573のうちの流路1574bに接続され、微生物検出部28の出口は溶液用流路1574のうちの流路1574aに接続されている。
【0096】
図6に示したように、微生物検査チップの第1の例では、微生物検出部18の両端を、微生物検査チップの部材によって支持している。そのため、微生物計測用流路18の寸法が長くなる。一方、本例の微生物検査チップ20では、微生物検出部28の両端は、パッキン191、192によって支持されている。そのため、微生物計測用流路281の長さを短くすることができる。微生物計測用流路の長さが短くなるため、内部を流れる流体の圧力損失をより低減することができる。また、接着剤のはみ出しによる不良も起きない。
【0097】
以上本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されたい発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者によって容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の微生物検査チップの第1の例を示す図である。
【図2】本発明の微生物検査チップの第1の例の主要部の斜視図である。
【図3】本発明の微生物検査装置を構成の例を示す図である。
【図4】本発明の微生物検査装置も微生物検査チップを装填した状態を示す図である。
【図5】本発明の微生物検査装置の検出光学系の構成の例を示す図である。
【図6】本発明の微生物検査チップの第1の例の組立方法を説明する図である。
【図7】本発明の微生物検査チップの第2の例を示す図である。
【図8】本発明の微生物検査チップの第2の例の主要部の断面構成を示す図である。
【図9】本発明の微生物検査装置の検出光学系の対物レンズの支持機構の例を示す図である。
【図10】本発明の微生物検査装置の検出光学系の対物レンズの支持機構の例を示す図である。
【図11】本発明の微生物検査チップの第2の例の組立方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0099】
1…微生物検査装置、10…微生物検査チップ、11…分析装置、12…検出装置、14…圧力源装置、16…不要成分除去部、18…微生物検出部、20…微生物検査チップ、28…微生物検出部、101…上部部材、102…下部部材、111…システム装置、112…出力装置、113…サーバ、114…通信機器、120…対物レンズ、121…レンズホルダ、122…刃、123検出用ダイクロイックミラー、124…ミラー、125…短波長用光学フィルタ、126…長波長用光学フィルタ、127、128…集光レンズ、129…ピンホール、131…短波長用ホトマル、132…長波長用ホトマル、133、134…シリンドリカルレンズ、135…短波長レーザ、136長波長レーザ、137…光源用ダイクロイックミラー、144…チップ連結管、151…検体容器、153…死菌染色液容器、154…全菌染色液容器、155…溶離液容器、156…検出液容器、157…溶液用流路、158…空気用流路、160…不要成分除去部材、161…不要成分除去部保持部、163…廃液容器、175…微生物、180…微生物検出用流路保持部、181…微生物検出用流路、182…励起光、183…励起光照射範囲、184…蛍光、191、192…パッキン、201…上部部材、202…下部部材、203…上部平板、204…下部平板、281…微生物検出用流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路を有する微生物検出部と、を有する微生物検査チップにおいて、
前記基板は、
微生物を含む検体を保持するための検体容器と、前記検体と反応する試薬を保持するための反応容器と、前記検体と前記試薬の混合液を保管する廃液容器と、一端が前記検体容器に接続され他端が通気口に接続された第1の空気用流路と、一端が前記反応容器に接続され他端が通気口に接続された第2の空気用流路と、一端が前記廃液容器に接続され他端が通気口に接続された第3の空気用流路と、を有し、
前記基板は、更に、前記検体容器、前記反応容器、前記微生物検出部の微生物検出用流路、及び、前記廃液容器と直列に接続する溶液用流路と、を有し、
前記微生物検出部は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出部の周囲の少なくとも180度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出用流路は、前記基板の主面に平行は方向に配置されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項4】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出用流路は、前記基板の主面に垂直な方向に配置されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項5】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出部の両端は弾性部材によって支持されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項6】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出用流路は、1辺が1μm〜1mmの正方形断面、又は、直径が1μm〜1mmの円形断面を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項7】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出部は、1辺が0.1mm〜5mmの正方形断面、又は、直径が0.1mm〜5mmの円形断面を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項8】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記溶液用流路は、1辺が10μm〜1mmの正方形断面、又は、直径が10μm〜1mmの円形断面を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項9】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて前記基板は、2つ以上の部材を接着することにより構成されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項10】
請求項1に記載のものにおいて、前記微生物検出部は、石英またはガラスより構成されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項11】
請求項1に記載のものにおいて、前記検体容器の出口側には、フィルタが設けられていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項12】
請求項1に記載のものにおいて、前記反応容器は、死菌のみを染色する死菌染色色素を保持する死菌染色試薬保持容器と、全菌を染色する全菌染色色素を保持する全菌染色試薬保持容器を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項13】
微生物検査チップを保持する保持部と、該保持部に保持された微生物検査チップに差圧を提供する圧力源装置と、励起光を発生し蛍光を受光する検出装置と、を有する微生物検査装置において、
前記微生物検査チップは、基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路を有する微生物検出部と、を有し、
前記基板は、前記圧力源装置に接続可能な通気口、微生物を含む検体を保持するための検体容器と、前記検体と反応する試薬を保持するための反応容器と、前記検体と前記試薬の混合液を保管する廃液容器と、一端が前記検体容器に接続され他端が前記通気口に接続された第1の空気用流路と、一端が前記反応容器に接続され他端が前記通気口に接続された第2の空気用流路と、一端が前記廃液容器に接続され他端が前記通気口に接続された第3の空気用流路と、を有し、
前記基板は、更に、前記検体容器、前記反応容器、前記微生物検出部の微生物検出用流路、及び、前記廃液容器と直列に接続する溶液用流路と、を有し、
前記検出装置は、前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源と、前記微生物検出用流路からの蛍光を集光する対物レンズと、該対物レンズによって集光された蛍光を受光し、それを電気信号に変換する受光素子とを有し、
前記励起光の光軸は前記対物レンズの中心軸に直交していることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項14】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記微生物検出部は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項15】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記微生物検出部は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも180度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項16】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記微生物検出用流路は、前記基板の主面に垂直な方向に、又は、前記基板の主面に平行な方向に配置されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項17】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記検出装置は、前記対物レンズを保持する1対のレンズホルダと、該レンズホルダの各々に装着された刃を有し、該刃はテーパ部を有し、該刃のテーパ部が前記微生物検出部の外面に接触することによって、前記微生物検出部に対する前記対物レンズの相対的な位置が決まるように構成されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項18】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記対物レンズの焦点は、前記微生物検出用流路内に配置されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項19】
基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路を有する光透過性の材料によって形成された微生物検出部と、を有する微生物検査チップを用いた微生物検査方法において、
前記微生物検査チップを、直立させて保持することと、
前記微生物検出用流路に直交する方向から励起光を前記微生物検出部に照射することと、
前記微生物検出用流路からの蛍光を受光光学系によって受光することと、
を含み、前記受光光学系に含まれる対物レンズの光軸は、前記励起光の光軸に対して直交していることを特徴とする微生物検査方法。
【請求項20】
請求項19記載の微生物検査方法において、
前記基板は、
微生物を含む検体を保持するための検体容器と、前記検体と反応する試薬を保持するための反応容器と、前記検体と前記試薬の混合液を保管する廃液容器と、一端が前記検体容器に接続され他端が通気口に接続された第1の空気用流路と、一端が前記反応容器に接続され他端が通気口に接続された第2の空気用流路と、一端が前記廃液容器に接続され他端が通気口に接続された第3の空気用流路と、を有し、
前記基板は、更に、前記検体容器、前記反応容器、前記微生物検出部の微生物検出用流路、及び、前記廃液容器と直列に接続する溶液用流路と、を有することを特徴とする微生物検査方法。
【請求項1】
基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路を有する微生物検出部と、を有する微生物検査チップにおいて、
前記基板は、
微生物を含む検体を保持するための検体容器と、前記検体と反応する試薬を保持するための反応容器と、前記検体と前記試薬の混合液を保管する廃液容器と、一端が前記検体容器に接続され他端が通気口に接続された第1の空気用流路と、一端が前記反応容器に接続され他端が通気口に接続された第2の空気用流路と、一端が前記廃液容器に接続され他端が通気口に接続された第3の空気用流路と、を有し、
前記基板は、更に、前記検体容器、前記反応容器、前記微生物検出部の微生物検出用流路、及び、前記廃液容器と直列に接続する溶液用流路と、を有し、
前記微生物検出部は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出部の周囲の少なくとも180度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出用流路は、前記基板の主面に平行は方向に配置されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項4】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出用流路は、前記基板の主面に垂直な方向に配置されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項5】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出部の両端は弾性部材によって支持されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項6】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出用流路は、1辺が1μm〜1mmの正方形断面、又は、直径が1μm〜1mmの円形断面を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項7】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記微生物検出部は、1辺が0.1mm〜5mmの正方形断面、又は、直径が0.1mm〜5mmの円形断面を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項8】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて、前記溶液用流路は、1辺が10μm〜1mmの正方形断面、又は、直径が10μm〜1mmの円形断面を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項9】
請求項1に記載の微生物検査チップにおいて前記基板は、2つ以上の部材を接着することにより構成されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項10】
請求項1に記載のものにおいて、前記微生物検出部は、石英またはガラスより構成されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項11】
請求項1に記載のものにおいて、前記検体容器の出口側には、フィルタが設けられていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項12】
請求項1に記載のものにおいて、前記反応容器は、死菌のみを染色する死菌染色色素を保持する死菌染色試薬保持容器と、全菌を染色する全菌染色色素を保持する全菌染色試薬保持容器を有することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項13】
微生物検査チップを保持する保持部と、該保持部に保持された微生物検査チップに差圧を提供する圧力源装置と、励起光を発生し蛍光を受光する検出装置と、を有する微生物検査装置において、
前記微生物検査チップは、基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路を有する微生物検出部と、を有し、
前記基板は、前記圧力源装置に接続可能な通気口、微生物を含む検体を保持するための検体容器と、前記検体と反応する試薬を保持するための反応容器と、前記検体と前記試薬の混合液を保管する廃液容器と、一端が前記検体容器に接続され他端が前記通気口に接続された第1の空気用流路と、一端が前記反応容器に接続され他端が前記通気口に接続された第2の空気用流路と、一端が前記廃液容器に接続され他端が前記通気口に接続された第3の空気用流路と、を有し、
前記基板は、更に、前記検体容器、前記反応容器、前記微生物検出部の微生物検出用流路、及び、前記廃液容器と直列に接続する溶液用流路と、を有し、
前記検出装置は、前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源と、前記微生物検出用流路からの蛍光を集光する対物レンズと、該対物レンズによって集光された蛍光を受光し、それを電気信号に変換する受光素子とを有し、
前記励起光の光軸は前記対物レンズの中心軸に直交していることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項14】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記微生物検出部は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも90度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項15】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記微生物検出部は、光透過性の材料によって形成され、前記微生物検出部の周囲の少なくとも180度の範囲は露出されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項16】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記微生物検出用流路は、前記基板の主面に垂直な方向に、又は、前記基板の主面に平行な方向に配置されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項17】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記検出装置は、前記対物レンズを保持する1対のレンズホルダと、該レンズホルダの各々に装着された刃を有し、該刃はテーパ部を有し、該刃のテーパ部が前記微生物検出部の外面に接触することによって、前記微生物検出部に対する前記対物レンズの相対的な位置が決まるように構成されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項18】
請求項13に記載の微生物検査装置において、前記対物レンズの焦点は、前記微生物検出用流路内に配置されていることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項19】
基板と、該基板に装着され内部に微生物検出用流路を有する光透過性の材料によって形成された微生物検出部と、を有する微生物検査チップを用いた微生物検査方法において、
前記微生物検査チップを、直立させて保持することと、
前記微生物検出用流路に直交する方向から励起光を前記微生物検出部に照射することと、
前記微生物検出用流路からの蛍光を受光光学系によって受光することと、
を含み、前記受光光学系に含まれる対物レンズの光軸は、前記励起光の光軸に対して直交していることを特徴とする微生物検査方法。
【請求項20】
請求項19記載の微生物検査方法において、
前記基板は、
微生物を含む検体を保持するための検体容器と、前記検体と反応する試薬を保持するための反応容器と、前記検体と前記試薬の混合液を保管する廃液容器と、一端が前記検体容器に接続され他端が通気口に接続された第1の空気用流路と、一端が前記反応容器に接続され他端が通気口に接続された第2の空気用流路と、一端が前記廃液容器に接続され他端が通気口に接続された第3の空気用流路と、を有し、
前記基板は、更に、前記検体容器、前記反応容器、前記微生物検出部の微生物検出用流路、及び、前記廃液容器と直列に接続する溶液用流路と、を有することを特徴とする微生物検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−178078(P2009−178078A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19112(P2008−19112)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
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