説明

微生物濃縮プロセス及び濃縮剤

検出又は分析のために微生物を捕捉又は濃縮するためのプロセスは、(a)二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改変剤を含む表面処理を、少なくとも珪藻土の表面の一部に施した、珪藻土を含む濃縮剤を提供する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を提供する工程と、(c)濃縮剤と試料を接触させることにより、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部分が濃縮剤に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第60/977,200号(2007年10月3日出願)の優先権を主張し、その内容は本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
本発明は、検出又は検査の際に生存状態を保つような微生物の捕捉又は濃縮のためのプロセスに関するものである。他の態様において、本発明は更に濃縮剤(及びその調製の方法)並びにその濃縮プロセスを実施する際に使用する診断キットに関するものである。
【背景技術】
【0003】
微生物汚染により生じる食品媒介疾患及び院内感染は、世界中の無数の場所で懸案となっている。よって、微生物の存在の同定及び/又は定量測定を行うために、様々な医療、食品、環境、又はその他の試料中における、細菌又は他の微生物の存在を検定することが、望ましいことが多く、あるいは必要である。
【0004】
例えば、たとえ他の細菌の存在下であっても、特定の細菌種の存在又は不在を検査するために、細菌DNA又は細菌RNAの検査を行うことができる。しかしながら、特定の細菌の存在を検出する能力は、少なくとも部分的に、分析される試料中の細菌の濃度に依存する。細菌試料は、検出に十分な濃度を確保するため、試料中の細菌の数を増加させるために培養(plated or cultured)されるが、この培養工程はしばしば時間がかかり、よって評価結果を顕著に遅らせることがある。
【0005】
試料中の細菌を濃縮することで、培養時間を短縮することができ、培養の工程の必要を排除することすら可能になる。よって、菌株に特異的な抗体を使用することによって、特定の細菌株を分離する(及びこれにより濃縮する)ための方法が(例えば、抗体をコーティングした磁石又は非磁石粒子の形態で)開発されている。しかしながらこのような方法は高価になり、少なくとも一部の診断用途に望まれる方法よりも依然としてやや遅い傾向がある。
【0006】
菌株特異的でない濃縮方法も使用されている(例えば、試料に存在する微生物のより総合的な評価を得るため)。混合した微生物群を濃縮した後、望ましい場合は、菌株特異的な精査を用いることによって特定の菌株の存在を判定することができる。
【0007】
微生物の非特異的な濃縮又は捕捉は、炭水化物とレクチンタンパク質との相互作用に基づいた方法によって達成されている。非特異的捕捉装置としてキトサンコーティングされた支持体が使用され、微生物の栄養素の役目を果たす物質(例えば、炭水化物、ビタミン、鉄キレート化合物、及びシデロホア)が、微生物の非特異的捕捉を提供するための配位子として有用であることも記述されている。
【0008】
様々な無機物質(例えばヒドロキシアパタイト及び金属水酸化物)が、細菌に非特異的に結合しこれを濃縮するために使用されている。非特異的な捕捉のためには、無機結合剤を使用する及び/又は使用しない、物理的な濃縮方法(例えば濾過、クロマトグラフィー、遠心分離、及び重力沈殿)も利用されている。このような非特異的な濃縮方法は、速度、費用(少なくとも一部のものは高価な装置、材料、及び/又は訓練を受けた技術者が必要になる)、試料要件(例えば、試料の性質及び/又は量の制限)、空間的要件、使用の容易さ(少なくとも一部のものは複雑な複数の工程のプロセスを必要とする)、現場使用の適合性、及び/又は高価の点において様々に異なっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって我々は、病原微生物を迅速に検出するためのプロセスに対する切迫したニーズがあると認識している。このようなプロセスは、好ましくは迅速なだけでなく、コストが低く、簡単であり(複雑な機器又は手順の必要がない)、及び/又は様々な条件下で有効である(例えば、様々なタイプの試料マトリックスで使用でき、細菌の量が変わっても、及び試料の量が変わっても、使用できる)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡単に言えば、1つの態様において、本発明は、試料中に存在する微生物株(例えば細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、及び細菌内生胞子、の菌株)を非特異的に濃縮するプロセスを提供し、これにより1つ以上の株の検出又は検定を行えるよう微生物は生存性のままである。このプロセスには、(a)二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む面改変剤を含む表面処理を、少なくとも珪藻土の表面の一部に施した、珪藻土を含む濃縮剤(好ましくは微粒子濃縮剤)を提供する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料(好ましくは液体の形態で)を提供する工程と、(c)濃縮剤と試料を(好ましくは混合により)接触させることにより、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部分が濃縮剤に結合又は捕捉されるようにする工程と、が含まれる。好ましくは、このプロセスは更に、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出すること(例えば、培養による方法、顕微鏡/画像手法、遺伝子学的方法、生物発光による方法、又は免疫学的検出方法)、及び/又は得られた微生物結合濃縮剤を凝離すること(好ましくは重力沈殿により)を含む。このプロセスは所望により、得られた凝離濃縮剤を試料から分離することを更に含む。
【0011】
本発明のプロセスは、特定の微生物株を目標とするものではない。むしろ、或る比較的安価な無機物質が、様々な微生物の捕捉に驚くべきほど有効であり得ることが見出されている。このような物質は、試料中(例えば食品試料)に存在する微生物株を、株特異性ではない状態で濃縮するのに使用することができるため、1種類以上の微生物株(好ましくは1種類以上の細菌株)をより容易かつ迅速に検定することができる。
【0012】
本発明のプロセスは比較的簡単かつ低コストであり(複雑な装置又は高価な株特異性物質を必要としない)、比較的迅速であり得る(好ましい実施形態は、濃縮剤のない対応する対照試料に比べ、試料中に存在する微生物の少なくとも約70パーセント(より好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を約30分以内に捕捉する)。加えて、このプロセスは様々な微生物(グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方などの病原体を含む)及び様々な試料に(様々な試料マトリックスを含み、しかも少なくとも一部の従来技術とは違って、微生物含有量が少ない試料及び/又は大量の試料であっても)有効であり得る。よって、本発明のプロセスの少なくともいくつかの実施形態は、様々な状況下で病原微生物を迅速に検出するための低コストで簡単なプロセスに対する、上述のような緊迫したニーズに対応することができる。
【0013】
別の態様において、本発明は更に、本発明のプロセスの実施に使用するための診断キットを提供し、このキットには(a)二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改変剤を含む表面処理を、少なくとも珪藻土の表面の一部に施した、珪藻土を含む濃縮剤(好ましくは微粒子濃縮剤)と、(b)本発明のプロセスの実施に使用するための試験容器(好ましくは滅菌済み試験容器)とが含まれる。好ましくは、この診断キットは更に、微生物培地、溶解試薬、緩衝液、生物発光検出検定構成要素、遺伝子学的検出検定構成要素、プロセスを実施のための説明書、及びこれらの組み合わせから選択された1つ以上の構成要素を含む。
【0014】
更に別の態様において、本発明は、珪藻土、金属酸化物で改変された珪藻土、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子支持体の上に、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを備える濃縮剤を提供する。
【0015】
更に別の態様において、本発明は、(a)珪藻土、金属酸化物で改変された珪藻土、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子支持体を提供する工程と、(b)物理蒸着によって支持体上に微細ナノスケール金又は白金を堆積させる工程と、を含む、濃縮剤調製のためのプロセスを提供する。
【0016】
更に別の態様において、本発明は(a)珪藻土、金属酸化物で改変された珪藻土、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子支持体を提供する工程と、(b)加水分解可能な二酸化チタン前駆体化合物を提供する工程と、(c)支持体と化合物を合わせる工程と、(d)二酸化チタンが支持体上に堆積するように、化合物を加水分解する工程と、を含む濃縮剤調製のためのプロセスを提供する。
【0017】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】後述の実施例セクションにおいて記述される本発明のプロセスの実施形態の実施に使用するための濃縮剤を調製するのに使用される装置の、側面断面図である。
【図2】図1の装置の透視図である。なお、これらの図は、理想化されており、一定の縮尺で描かれてはおらず、単に例証であり、かつ非制限的であることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本特許出願で使用される場合:
「試料」とは、(例えば分析のために)採取される材質又は物質を意味する。
【0020】
「試料マトリックス」とは、試料の微生物以外の構成成分を意味する。
【0021】
「検出」とは、微生物の少なくとも構成要素の同定を意味し、これにより微生物が存在すると判定される。
【0022】
「遺伝子学的検出」とは、標的微生物に由来するDNA又はRNAなどの遺伝子学的物質の構成要素の同定を意味する。
【0023】
「免疫学的検出」とは、標的微生物に由来するタンパク質又はプロテオグリカンなどの抗原性物質の同定を意味する。
【0024】
「微生物」とは、分析又は検出に適する一般的物質を有する細胞を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子を含む)。
【0025】
「微生物株」とは、或る検出方法によって区別可能な特定のタイプの微生物を意味する(例えば、異なる属の、属内の異なる種の、又は種内の異なる分離株)。
【0026】
「標的微生物」とは、検出したい微生物を意味する。
【0027】
濃縮剤
本発明のプロセスを実施する際に使用するのに適した濃縮剤には、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改変剤を含む表面処理を、少なくとも表面の一部に施した、珪藻土を含むものが挙げられる。このような濃縮剤を使用した濃縮又は捕捉は一般的に特定の株、種、又は微生物のタイプに対して特異的ではなく、よって、試料内の微生物の全体的な個体群の濃縮を提供する。次に、株特異的精査を伴う任意の既知の検出方法を用いて、捕捉された微生物群の中から、微生物の具体的な株を検出することができる。よって、この濃縮剤は、医療、食品、環境、又はその他の試料における微生物汚染又は病原体(特に細菌などの食品媒介病原体)の検出に使用することができる。
【0028】
本発明のプロセスの実施において、濃縮剤は、試料に接触し微生物を捕捉するような任意の形態で使用することができる(例えば微粒子の形態で、又はディップスティック、フィルム、フィルタ、チューブ、ウェル、プレート、ビーズ、膜、若しくはマイクロ流体装置のチャネル、その他同等物などの支持体に適用して)。好ましくは、濃縮剤は微粒子の形態で使用される。
【0029】
無機材質は、水性系中に分散又は懸濁された状態で、材質及び水性系のpHに特有の表面電荷を呈する。表面−水界面上の電位は「ゼータ電位」と呼ばれ、これは電気泳動の可動性から(すなわち、水性系に置かれた帯電電極の間を材質粒子が移動する速度から)算出される。本発明のプロセスの実施において使用される濃縮剤のうち少なくともいくつかは、未処理の珪藻土に比べて少なくともある程度、正であるゼータ電位を有し、この濃縮剤は、細菌などの微生物の濃縮について、未処理の珪藻土よりも驚くべきほど顕著に有効であり得、この表面は一般に負に帯電している傾向にある。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−5ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−8ミリボルト〜約−19ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−18ミリボルトの範囲である)。
【0030】
このように、特定の種類の表面処理済み又は表面改変済み珪藻土(すなわち、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改変剤を含む表面処理が施されている)を含む濃縮剤は、微生物の濃縮において、未処理の珪藻土に比べて驚くべきほど効果的であり得る。表面処理は好ましくは、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及び同等物、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物(より好ましくは酸化第二鉄)を更に含む。金などの貴金属は、抗菌特性を呈することが知られているにもかかわらず、本発明のプロセスにおいて使用される金含有濃縮剤は、微生物の濃縮に有効なだけでなく、検出又は分析の目的向けに微生物を生存可能な状態にしておくことができる。
【0031】
有用な表面改変剤には、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1つの金属酸化物(好ましくは二酸化チタン、酸化第二鉄、又はこれらの組み合わせ)と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1つの他の金属酸化物(すなわち二酸化チタン以外)と組み合わせた二酸化チタン、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面改変剤には、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
より好ましい表面改変剤には、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる(更に好ましくは、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる)。微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、及びこれらの組み合わせが最も好ましい。
【0033】
金及び/又は白金
微細ナノスケール金又は白金を含む濃縮剤は、物理蒸着(所望により、酸化雰囲気中での物理蒸着)によって珪藻土に金又は白金を堆積することにより調製することができる。本明細書で使用する時、用語「微細ナノスケール金又は白金」は、全ての次元のサイズが5ナノメートル(nm)以下である金物体(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。好ましくは、堆積した金又は白金の少なくとも一部は、全ての次元の平均サイズ(例えば、粒子のサイズ又は原子クラスタのサイズ)が最大約10nm(10nm以下)の範囲である(より好ましくは、最大約5nmであり、更に好ましくは最大約3nmである)。
【0034】
最も好ましい実施形態において、金の少なくとも一部分が超ナノスケールである(すなわち、少なくとも2つの次元においてサイズが0.5nm未満であり、全ての次元においてサイズが1.5nm未満である)。個々の金又は白金のナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0035】
珪藻土上に供給される金又は白金の量は、幅広い範囲で変えることができる。金及び白金は高価であるため、望ましい濃縮活性を達成するのに妥当な必要とされる量を超えては使用しないことが望ましい。更に、ナノスケール金又は白金は、PVDを使用して堆積する際、非常に可動性であることがあるため、金又は白金を使用しすぎると、金又は白金の少なくとも一部が融合してより大きな塊になることにより、活性が低下することがある。
【0036】
これらの理由から、珪藻土上の金又は白金の荷重は、珪藻土と金との合計重量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10重量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5重量パーセント、及び更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約2.5重量パーセントである。
【0037】
金及び白金はPVD技法(例えばスパッタリング)により堆積させて、支持体表面に、濃縮活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金属は、主に元素形態で堆積すると考えられる(ただし、他の酸化状態が存在する場合もある)。
【0038】
金及び/又は白金に加えて、同じ珪藻土支持体上に1つ以上の他の金属も供給することができ、及び/又は、金及び/又は白金を含む支持体と別の支持体とを混合して供給することもできる。このような他の金属の例としては、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの他の金属を使用した場合は、使用する金又は白金の供給源標的と同一又は異なる標的供給源から、支持体上に共沈させることができる。あるいは、このような金属は、金及び/又は白金を堆積させる前又は後のいずれかにおいて、支持体上に供給され得る。有利な活性化のための熱処理を必要とする他の金属は、金及び/又は白金を堆積させる前に支持体に適用し、熱処理することもできる。
【0039】
物理蒸着とは、金属含有供給源又は金属含有標的から支持媒体への金属の物理的な移動を意味する。物理蒸着は、原子単位での堆積を伴うものとして見ることができる。ただし実際の実施では、金属が、物体当たり1つ以上の原子から構成される超微細体として移送される場合もある。堆積した金属は支持媒体の表面と物理的、化学的、イオン的、及び/又は別の方法で相互作用を起こし得る。
【0040】
物理蒸着は好ましくは、金属の移動性が高く、何らかの方法(例えば、支持体表面上又は非常に近くの場所に堆積)で不動化されるまでは、支持媒体の表面上を移動しやすい傾向にある。堆積する部位は、表面欠損などの欠陥、段差及び転位などの構造上の不連続性、並びに相の境界面、又は小さな金属クラスタのような結晶若しくはその他の金属形態を含むことができる。PVDによって堆積した金属は明らかに十分に固定され、金属は高レベルの活性を保持することができる。これに対し、従来の方法ではしばしば、金属が融合して大きな形状になり、活性が低下又は失われることさえあり得る。
【0041】
物理蒸着は、様々な方法で実施することができる。代表的な方法としては、スパッタ蒸着法(好ましい)、蒸発蒸着法、及び陰極アーク蒸着法が挙げられる。本発明のプロセスの実施に使用する濃縮剤の調製に、これら又は他のPVDアプローチのいずれかを用いることができるが、ただし、PVD技法の性質は得られる活性に影響を与え得る。
【0042】
例えば、物理蒸着のエネルギーは、堆積する金属の移動性に影響を与え、融合しやすくなる傾向を生じ得る。エネルギーが高くなると、これに応じて金属の融合傾向が増大する傾向がある。融合が増大すると、これに応じて、活性が低下する傾向がある。通常、物質堆積のエネルギーは、蒸発蒸着法が最も低く、スパッタ蒸着法(衝突金属形態のごく一部がイオン化されており、ある程度のイオン量を含み得る)はより高く、陰極アーク蒸着法(イオン量が数十パーセントの場合がある)が最も高い。したがって、特定のPVD技法が、所望されるよりも大きな移動性を有する堆積金属を生じる場合、代わりにより少ないエネルギーのPVD技法を使用することが有用であり得る。
【0043】
物理蒸着は、支持体表面の適切な処理が行われるよう、好ましくは処理する支持媒体が十分に混合された状態で実施される(例えば、混転、流動化、粉砕、又は同等の処理)。PVDによる堆積の粒子混転方法は、米国特許第4,618,525号(チャンバレン(Chamberlain)ら)に記述されており、この記述は参考として本明細書に組み込まれる。
【0044】
微粒子又は微粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、支持媒体は好ましくは、PVD方法の少なくとも一部の実施中に、混合及び微粉砕の両方が行われている(例えば、ある程度まですり潰され、又は粉砕されている)。これは、堆積の際に粒子又は凝集塊の分離と自由流を維持するのに役立ち得る。微細な粒子又は微細な粒子凝集塊の場合、金属の堆積制御を依然として維持しながら、できるだけ激しく素早く粒子を混合することが有利であり得る。
【0045】
PVDは、この目的のために現在使用されている、又は今後開発される任意の種類の装置を使用して実施することができる。ただし、好ましい装置10が図1及び2に示されている。装置10には、粒子攪拌機16を擁する真空槽14を画定するハウジング12がある。このハウジング12は、所望によりアルミニウム合金で製造することができ、垂直方向に向いた、中空なシリンダである(例えば、高さ45cm、直径50cm)。基部18には、高真空ゲートバルブ22用のポート20が含まれ、このバルブの次には15.2cm(6インチ)の拡散ポンプ24と、粒子攪拌機16用の支持体26が含まれる。真空槽14は、0.13mPa(10−6Torr)の範囲で、背景圧力に排気することができる。
【0046】
ハウジング12の上端部は、外部搭載の直径7.6cm(3インチ)の直流(dc)マグネトロンスパッタ蒸着供給源30(USガンII(US Gun II)、US社(US, INC.)(カリフォルニア州サンノゼ))と嵌合する、取り外し可能なゴム製Lガスケット密閉プレート28を擁する。スパッタ蒸着ソース30内に、金又は白金スパッタ標的32(例えば、直径7.6cm(3.0インチ)×厚さ0.48cm(3/16インチ))が固定される。スパッタ蒸着供給源30は、スパークル(Sparc-le)アーク抑制システム(アドバンスト・エナジー・インダストリーズ社(Advanced Energy Industries, Inc)、コロラド州フォートコリンズ)が装填された、MDX−10マグネトロンドライブ(Magnetron Drive)(アドバンスト・エナジー・インダストリーズ社、コロラド州フォートコリンズ)により作動する。
【0047】
粒子攪拌器16は、長方形の開口部34(例えば6.5cm×7.5cm)を有する中空円筒(例えば長さ12cm×水平直径9.5cm)である。開口部34は金スパッタ標的32の表面36のすぐ下約7cmの位置にあり、これにより、スパッタリングされた金属原子が攪拌機容積38に入ることができる。攪拌機16は、軸を揃えてシャフト40に取り付けられる。シャフト40は、混転する支持体粒子のための攪拌機構又はパドルホイールを形成する、4つの長方形状のブレード42がボルトで固定される長方形状の断面(例えば1cm×1cm)を有する。ブレード42にはそれぞれ2つの孔44(例えば直径2cm)があり、ブレード42と粒子攪拌機16とによって形成される4区分それぞれに含有される粒子容量の間を行き来するのを促進している。ブレード42の寸法は、攪拌機の壁48との側方及び末端の隙間が2.7mm又は1.7mmのいずれかになるよう選択される。
【0048】
物理蒸着は、本質的には、非常に幅広い範囲にわたって、任意の所望される温度で実施することが可能である。しかしながら、金属を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下))で堆積すれば、堆積した金はより高い活性を有することができる(おそらくは、より欠陥が多いため、及び/又は移動性と融合性がより低いため)。周囲条件において実施すると、堆積中に加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0049】
物理蒸着は、不活性スパッタリングガス雰囲気中(例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれら2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン))で実施することができ、所望により、物理蒸着は酸化雰囲気中で実施することができる。好ましくは、この酸化雰囲気には少なくとも1種の酸素含有ガスが含まれる(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択され、更に好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気には更に、不活性スパッタリングガスが含まれ、これには例えばアルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物がある(好ましくはアルゴン)。PVD処理中の真空槽内の総気体圧力(全てのガス)は、約0.13Pa〜約3.3Pa(約1mTorr〜約25mTorr)(好ましくは約0.6kPa〜約2kPa(約5mTorr〜約15mTorr))である。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総重量を基準にして、約0.05重量パーセント〜約60重量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1重量パーセント〜約50重量パーセント、より好ましくは約0.5重量パーセント〜約25重量パーセント)を含み得る。
【0050】
珪藻土支持媒体は所望により、金属堆積の前に焼成することができるが、ただしこれにより結晶シリカの含有量が増加し得る。金及び白金は、PVDで堆積するとすぐに活性になるため、他の一部の方法による堆積とは違って、一般に金属堆積後に加熱処理の必要がない。ただし、このような加熱処理又は焼成は、活性を高めるために所望される場合には実行できる。
【0051】
一般に、熱処理は、支持体を、任意の適した大気中、例えば、空気、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)、及び同等物の中で、約125℃〜約1000℃の範囲の温度で、約1秒間〜約40時間、好ましくは約1分間〜約6時間の加熱を伴い得る。使用する具体的な熱条件は、支持体の性質を含む要素に依存し得る。
【0052】
一般に、熱処理は、支持体の構成要素が分解するか、劣化するか、又は過度の熱により損傷する温度よりも下の温度で、実施され得る。支持体の性質、金属の量、及び同等物などの要素に依存して、触媒活性は、高すぎる温度で熱処理されると、ある程度低下する可能性がある。
【0053】
二酸化チタン及び/又はその他の金属酸化物
金属酸化物を含む濃縮剤は、加水分解可能な金属酸化物前駆体化合物の加水分解によって、珪藻土上に金属酸化物を堆積させることにより調製される。適切な金属酸化物前駆体化合物には、加水分解して金属酸化物を生成できるような金属錯体及び金属塩が挙げられる。有用な金属錯体には、アルコキシド配位子、配位子としての過酸化水素、カルボン酸機能配位子、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用な金属塩には、金属の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
過酸化水素又はカルボン酸機能配位子の金属塩又は金属錯体を使用する場合、加水分解は化学的手段又は熱的手段によって引き起こすことができる。化学的に引き起こされた加水分解において、金属塩は溶液の形態で、珪藻土の分散液に導入することができ、得られる混合物のpHは、珪藻土上に金属の水酸化物錯体として金属塩が沈殿するまで、塩基溶液を加えることによって上げることができる。適切な塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩、アンモニウム及びアルキルアンモニウムの水酸化物又は炭酸塩、及び同様物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属塩溶液及び塩基溶液は通常、濃度が約0.1〜約2Mであり得る。
【0055】
好ましくは、珪藻土への金属塩の追加は、珪藻土分散液を攪拌(好ましくは激しく攪拌)しながら実施される。金属塩溶液及び塩基溶液は、珪藻土分散液に別々に(いずれの順番でも)又は同時に導入することができ、これにより、得られる珪藻土の表面に金属水酸化物錯体を生じる実質的に好ましく均一な反応をもたらす。反応混合物は所望により、反応中に加熱して、反応の速度を加速することができる。一般に、加える塩基の量は、金属のモル数に、金属塩又は金属錯体の非オキソ及び非ヒドロキソ対イオンの数を掛けたものに等しくなり得る。
【0056】
あるいは、チタン又は鉄の塩を使用する場合、金属塩は加熱して加水分解を起こさせ金属水酸化物錯体を形成し、珪藻土の表面と反応させることができる。この場合、金属塩溶液を一般に、珪藻土の分散液(好ましくは攪拌した分散液)に加え、十分に高温(例えば約50℃を上回る温度)に加熱して、金属塩の加水分解を促進することができる。好ましくは、温度は約75℃〜100℃であり、ただし反応がオートクレーブ装置内で実施される場合はより高い温度を使用することができる。
【0057】
金属アルコキシド錯体を使用する場合、この金属錯体に加水分解を起こさせ、アルコール溶液中で金属アルコキシドの部分的加水分解により金属の水酸化物錯体を形成させることができる。珪藻土存在下での金属アルコキシド溶液の加水分解により、珪藻土の表面に、金属水酸化物種を堆積させることができる。
【0058】
あるいは、珪藻土の存在下でガス相の金属アルコキシドを水と反応させることによって、金属アルコキシドを加水分解し、珪藻土の表面に堆積させることができる。この場合、珪藻土は、例えば流動床リアクター又は回転ドラムリアクターなどのいずれかの中で、堆積中に攪拌することができる。
【0059】
上記のような、珪藻土の存在下で金属酸化物前駆体化合物の加水分解を行った後、得られる表面処理済みの珪藻土を、沈殿又は濾過、又はその他の既知の方法によって分離することができる。分離した生成物を水で洗浄することによって精製し、これを乾燥させることができる(例えば50℃〜150℃)。
【0060】
表面処理された珪藻土は通常、乾燥後に機能できるが、所望により、空気中で約250℃〜650℃に加熱して焼成することにより、機能の損失なしに揮発性の副生成物を除去することができる。この焼成工程は、金属酸化物前駆体化合物として金属アルコキシドを利用した場合に望ましいことがある。
【0061】
一般に、鉄の金属酸化物前駆体化合物を用い、得られる表面処理には、ナノ粒子の酸化鉄が含まれる。珪藻土に対する酸化鉄の重量比が約0.08である場合、X線回折(XRD)では、酸化鉄材質の存在がはっきりと示されない。逆に、追加のX線回折が3.80、3.68、及び2.94Åで観察される。この物質のTEM検査では、珪藻土の表面が比較的均一に、球形の酸化鉄材質ナノ粒子でコーティングされていることが示されている。酸化鉄材質のクリスタライトの大きさは約20nm未満であり、多くの結晶は直径が10nm未満である。この、珪藻土表面にある球形結晶の充填は見かけが密であり、珪藻土の表面はこれら結晶の存在により凹凸になっているのが見られる。
【0062】
一般に、チタンの金属酸化物前駆体化合物を用いた場合、得られる表面処理には、ナノ粒子チタニアが含まれる。珪藻土に二酸化チタンを堆積させた場合、約350℃で焼成した後に得られた生成物のXRDでは、アナターゼチタニアの小さな結晶の存在を示すことができる。チタン/珪藻土の比が比較的低い場合、又はチタン及び鉄の酸化物前駆体の混合物が使用された場合、X線分析によっては一般に、アナターゼの証拠は観察されない。
【0063】
チタニアは強力な光酸化触媒として知られており、本発明のチタニア改変珪藻土濃縮剤は、分析用の微生物濃縮に使用することができ、更に所望により、光活性化可能剤として使用することにより、残留する微生物を殺菌し、不要な有機不純物を除去することができる。よって、チタニア改変された珪藻土は、分析のための生体物質を分離することと、次に再使用のため光化学的にクリーニングすることの両方ができる。これらの物質は、微生物の除去と共に抗菌効果が望ましい場合がある濾過用途に使用することもできる。
【0064】
珪藻土
珪藻土(別名kieselguhr)は、海生微生物綱である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ材質である。よって、これは天然資源から取得することができ、市販もされている(例えばアルファ・エイサー(Alfa Aesar)社(ジョンソン・マッセイ社(Johnson Matthey Company)グループ、マサチューセッツ州ウォードヒル)。珪藻土粒子は一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形、及び同様の形態の、小さな開放網状構造を含む。これらの粒子の孔構造は一般に、非常に均一であり得る。
【0065】
珪藻土は、原材料として、粉砕した材料として、又は精製及び所望により粉砕した粒子として、本発明のプロセスの実施に使用することができる。好ましくは珪藻土は、直径約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル(より好ましくは約3マイクロメートル〜約10マイクロメートル)の範囲にある寸法の粉砕粒子形状である。
【0066】
珪藻土は所望により、使用前に加熱処理を行い、有機残留物の痕跡を除去することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率に生じ得るため、加熱処理は500℃以下で行うことが望ましい。
【0067】
試料
本発明のプロセスは、医療、環境、食品、飼料、臨床、及び検査室の試料、及びこれらの組み合わせを含みこれらに限定されない、様々なタイプの試料に適用することができる。医療又は獣医試料には、例えば、臨床診断のために検査される生物源(例えばヒト又は動物)から得た細胞、組織、又は流体が含まれる。環境試料は、例えば、医療機関又は獣医機関、産業用設備、土壌、水源、食品調理領域(食品接触及び非接触領域)、検査室、又はバイオテロリズムの対象になり得る領域から得たものであり得る。食品の加工、取扱い、及び調理領域の試料は、細菌病原菌による食品供給汚染に関する特定の懸念があることが多いので、より好適である。
【0068】
液体の形態で得られる試料、又は液体中の固体の分散液又は懸濁液の形態で得られる試料は、直接使用することができ、あるいは濃縮して(例えば遠心分離により)又は希釈して(例えば緩衝(pH調整済み)溶液の追加により)使用することができる。固体又は半固体の試料は、直接使用するか、あるいは例えば、所望であれば、流動体媒質(例えば緩衝液)で洗浄若しくはすすぎ、又は流動体媒質中に懸濁若しくは分散させることにより抽出することができうる。試料は表面から(例えばスワブ拭き取り又はすすぎにより)採取することができる。好ましくは、試料は流体の形態で使用される(例えば、液体、気体、又は液体中若しくは気体中の固体若しくは液体の分散物若しくは懸濁物)。
【0069】
本発明のプロセスを実施するのに使用できる試料の例としては、食品(例えば、生鮮農産物又はそのまま食べる昼食若しくは「調理済み」食肉)、飲料(例えばジュース又は炭酸飲料)、飲料水、並びに生物学的流動体(例えば全血、又は血漿、血小板の豊富な血液分画、血小板濃縮物、圧縮した赤血球などの血液構成成分;細胞調製物(例えば細胞分散液、骨髄吸引物、又は脊椎骨髄);細胞懸濁液;尿、唾液、及びその他の体液;骨髄;肺水;脳液;外傷滲出物;外傷生検試料;眼内液;脊髄液;その他同様物)が挙げられ、また溶解緩衝液の使用などの手順を使用して形成することができる細胞可溶化物などの溶解調製物、並びに同様物が挙げられる。好ましい試料としては、食品、飲料、飲料水、生物学的流動体、及びこれらの組み合わせが挙げられる(食品、飲料、飲料水、及びこれらの組み合わせが更に好ましい)。
【0070】
試料の量は、個々の用途に応じて異なり得る。例えば、本発明のプロセスが診断又は研究用途に仕様される場合、試料の量は通常、マイクロリットルの範囲であり得る(例えば10μL以上)。プロセスが食品病原体試験検査又は飲料水安全性試験のために使用される場合、試料の量は通常、ミリリットル〜リットルの範囲であり得る(例えば100ミリリットル〜3リットル)。例えばバイオプロセス又は製剤処方などの産業用途においては、この量は何万リットルであることがある。
【0071】
本発明のプロセスは、濃縮状態の試料から微生物を分離し、更に、使用される検出手順を阻害し得る試料マトリックス構成成分から微生物を分離することも可能にする。これらすべての場合において、本発明のプロセスは、他の微生物濃縮方法に追加して、又はその代わりに、使用することができる。よって、所望により、追加の濃縮が望ましい場合には、本発明のプロセスを実施の前又は後に試料からの培養を行うことができる。
【0072】
接触
本発明のプロセスは、2つの物質の間に接触をもたらす、様々な既知の方法又は今後開発される方法によって実施することができる。例えば、濃縮剤を試料に加えることができ、又は試料を濃縮剤に加えることができる。濃縮剤でコーティングしたディップスティックを試料溶液に浸すことができ、濃縮剤を含有するフィルムの上に試料溶液を注ぐことができ、濃縮剤を含む試験管又はウェルに試料溶液を注ぐことができ、又は、濃縮剤でコーティングされたフィルタ(例えば織布又は不織布のフィルタ)に試料溶液を通すことができる。
【0073】
しかしながら好ましくは、濃縮剤及び試料は、様々な任意の容器内に合わせて入れられる(任意の追加順序を用いて)(所望により、しかしながら好ましくは、キャップ付き、閉鎖、又は密閉された容器であり、より好ましくは、キャップ付きの試験管、瓶、又は広口瓶である)。本発明のプロセスを実施する際の使用に好適な容器は、個々の試料によって決定され、量及び性質により大きく異なり得る。例えば、容器は10マイクロリットル容器(例えば試験管)などの小さいものであり得、又は100ミリリットルから3リットル容器(例えば三角フラスコ又はポリプロピレン製広口瓶)などの大きいものであり得る。容器、濃縮剤、及び試料に直接接触するその他の器具又は添加剤は、使用前に滅菌することができ(例えば、制御された熱、エチレンオキシドガス、又は放射線によって)、これにより検出エラーを起こし得る試料の汚染を低減又は防ぐことができる。特定の試料の微生物を捕捉又は濃縮するための、検出を成功させるのに十分な濃縮剤の量は、場合によって異なり(例えば、濃縮剤の性質及び形態並びに試料の量に依存する)、当業者によって容易に決定できる。例えば、一部の用途については、試料ミリリットル当たり、10ミリグラムの濃縮剤が有用であり得る。
【0074】
望ましい場合は、試料の中に少なくとも1回、微粒子濃縮剤を通過させることによって(例えば、約10分間にわたって重力沈殿に依存することによって)、接触を効果的にすることができる。接触は、混合によって(例えば攪拌、振盪、又は揺動プラットフォームによって)強化することができ、これにより濃縮剤の粒子が試料の大部分を通って繰り返し通過又は沈殿することができる。少量のマイクロリットルの容積(典型的には0.5ミリリットル未満)の場合、混合は、例えば米国特許第5,238,812号(コールター(Coulter)ら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているように、渦動又は「転動(nutation)」などの急速なものであり得る。約0.5ミリリットル以上の、より大量(典型的には0.5ミリリットル〜3リットル)の場合、混合は、例えば米国特許第5,576,185号(コールター(Coulter)ら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているように、微粒子濃縮剤及び試料を「上下転倒」させる方法で穏やかに混転することにより達成できる。このような混転は、例えば、試験管又は他のタイプの反応容器を支えるよう構成された装置を用い、試験管又は容器を「上下転倒」させる方法でゆっくりと回転させて達成することができる。接触は、望むだけの時間、実施することができる(例えば、試料量が約100ミリリットル以下の場合、最高約60分間の接触が有用であり得、好ましくは、約15秒〜約10分又はそれ以上、より好ましくは、約15秒〜約5分の接触が有用であり得る)。
【0075】
よって、本発明のプロセスの実施において、混合(例えば攪拌、揺動、又はかき混ぜ)及び/又は培養(例えば周囲温度で)は随意ではあるが、濃縮剤との接触で微生物を増加させるために好ましい。好ましい接触方法には、生物含有試料(好ましくは流動体)を微粒子濃縮剤と混合すること(例えば、約15秒〜約5分)と、培養すること(例えば約3分〜約30分)との両方が含まれる。望ましい場合は、1つ以上の添加剤(例えば溶解試薬、生物発光検定試薬、核酸捕捉試薬(例えば磁石ビーズ)、微生物用培地、緩衝液(例えば固体試料を湿らせる)、微生物染色試薬、洗浄用緩衝液(例えば、結合していない物質を洗い流すため)、溶出試薬(例えば血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、テキサス州ヒューストンのユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス(Union Carbide Chemicals and Plastics)社から販売されているトリトン(Triton)(商標)X−100非イオン系界面活性剤)、機械的磨耗/溶出試薬(例えばガラスビーズ)、及び同様物)が、濃縮剤及び試薬の組み合わせ内に含まれ得る。
【0076】
望ましい場合は、濃縮剤(単独で、又は例えば抗菌剤と組み合わせて、及び/又は液体形態(例えば水又は油)、固体形態(例えば布、ポリマー、紙、又は無機固体)、ゲル形態、クリーム形態、フォーム形態、又はペースト形態の担体物質と組み合わせて)は、非多孔質又は多孔質、固体、微生物に汚染されているか又は微生物に汚染可能な材質又は表面に対して、塗布又はすりつけることができる(例えば「クリーニング」剤として使用する)。結合剤、安定剤、界面活性剤、又はその他の特性変性剤も望ましい場合は利用することができる。
【0077】
このような使用のために、濃縮剤は織布又は不織布に塗布することができ、更に紙、ティッシュペーパー、綿棒などの使い捨て可能な表面、及び様々な吸収性及び非吸収性材質に塗布することができる。例えば、濃縮剤は布又は紙の担体物質に組み込み、「クリーニング」ワイプとして使用することができる。濃縮剤は、例えば住居、保育所、工場、病院などにおいて、玩具、装置、医療機器、作業台表面などを洗浄するために、固体表面に(例えば、担体物質を含むワイプ又はペーストの形状で)適用することができる。洗浄又はその他の目的に使用する場合、試料は同時に採取することができ、望ましい場合は単一の工程で濃縮剤に接触し得る。
【0078】
凝離及び/又は分離
所望により、しかしながら好ましくは、本発明のプロセスは、得られた微生物結合の濃縮剤の凝離を更に含む。好ましくはこのような凝離は、少なくとも部分的に、重力沈殿(重力沈降、例えば、約5分間〜約30分間にわたって)に依存することによって達成することができる。しかしながらいくつかの場合において、凝離を促進すること(例えば遠心分子又は濾過によって)又は任意の凝離方法の組み合わせを使用することが望ましいことがある。
【0079】
本発明のプロセスは、所望により、得られた微生物結合の濃縮剤と試料の分離を更に含む。液体試料の場合は、凝離の結果生じた上澄みの除去又は分離が伴い得る。上澄みの分離は、当該技術分野において周知の数多くの方法によって実施することができる(例えば、上澄みを注ぎ出し又は吸い上げることによって、プロセスを実施するのに使用した容器又は管の底に、微生物結合の濃縮剤を残すことができる)。
【0080】
本発明のプロセスは、手動により(例えばバッチ単位による方法で)実施することができ、又は(例えば、連続的又は準連続的処理を実現して)自動化することができる。
【0081】
検出
様々な微生物を濃縮することができ、所望により、しかしながら好ましくは、本発明のプロセスを用いて検出することができ、これには例えば、細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、細菌内生胞子(例えばバチルス(炭疽菌、セレウス菌、及び枯草菌を含む)及びクロストリジウム(ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、及びウェルシュ菌))、並びに同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる(好ましくは、細菌、酵母、真菌類、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、更に好ましくは、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、最も好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、非エンベロープ型ウイルス(例えばノロウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ライノウイルス、及びこれらの組み合わせ)、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせである。このプロセスは、病原体の検出における有用性を有し、これは食品安全性又は医療、環境、若しくはテロ対策の理由から非常に重要であり得る。このプロセスは、病原菌(例えばグラム陰性菌とグラム陽性菌の両方)、並びに様々な酵母、カビ、及びマイコプラズマ(及びこれらの任意の組み合わせ)の検出に特に有用であり得る。
【0082】
検出される標的微生物の属には、リステリア属、大腸菌属、サルモネラ属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、シゲラ属、ブドウ球菌属、腸球菌属、バチルス属、ナイセリア属、シゲラ属、連鎖球菌属、ビブリオ属、エルシニア属、ボルデテラ属、ボレリア属、シュードモナス属、サッカロミケス属、カンジダ属、及び同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。試料には複数の微生物株が含まれることがあり、任意の株を、他の株とは独立に検出することができる。検出の標的となり得る具体的な微生物には、大腸菌、腸炎エルシニア菌、エルシニア仮性結核菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、ビブリオ・バルニフィカス菌、リステリア・モノサイトゲネス、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、カンジダ・アルビカンス、ブドウ球菌エンテロトキシン亜種、セレウス菌、炭疽菌、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、エンテロバクター・サカザキ、緑膿菌、及び同様物、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、大腸菌、大腸菌バクテリオファージがサロゲートであるヒト感染性非エンベロープ型腸内ウイルス、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0083】
濃縮剤によって捕捉又は結合した(例えば吸着によって)微生物は、現在知られている、又は今後開発される任意の望ましい方法によって本質的に検出することができる。このような方法には、例えば、培養による方法(時間が許す場合は好ましいことがある)、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又は落射蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するのに使用できる))、及びその他の画像手法、免疫学的検出方法、及び遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物捕捉後の検出のプロセスは、所望により、試料マトリックス構成成分を除去するための洗浄が含まれる。
【0084】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は通常、抗体、例えばファージディスプレイなどのプロセスによって選択されたポリペプチド、又はスクリーニングプロセスから得られたアプタマーによって行うことができる。
【0085】
免疫学的検出方法は周知であり、例えば免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検定(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、様々な方法で検出することができる(例えば、一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料で、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成できる酵素で標識し、プレートリーダー又はラテラルフロー装置のいずれかを用いる)。
【0086】
検出はまた、遺伝子学的検定法(例えば核酸のハイブリダイゼーション又はプライマーを用いた増幅)によって実行することができ、これが好ましい方法であることが多い。捕捉又は結合された微生物は溶解され、検定に利用できる遺伝子学的物質を供給する。溶解方法は周知であり、これには例えば、音波処理、浸透性ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、及びリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン類(enolysins)などの酵素、と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0087】
一般的に使用されている遺伝子学的検出検定法の多くは、DNA及び/又はRNAを含む、具体的な微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の条件が非常に厳しい、標的の正確な核酸配列の検出が制限され得る。よって、標的核酸配列に小さな変異を有する微生物株は、非常に厳しい遺伝子学的検定法を使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、核酸ハイブリダイゼーションに基づいて行われ、ここにおいて一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化して、プローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される。当業者は、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識について熟知するであろう。
【0088】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマーを用いた増幅に基づくものである。プライマーを用いた核酸増幅方法には、例えば、熱サイクル方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR)、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出する方法は、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が含まれ、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0089】
生物発光検出法は周知であり、例えば、米国特許第7,422,868号(ファン(Fan)ら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているものを含むアデノシン(adensosine)三リン酸(ATP)検出方法が挙げられる。
【0090】
本発明のプロセスは株特異性ではないため、同じ試料内で、複数の微生物株を検定のための標的にすることができる、一般的な捕捉システムを提供する。例えば、食品試料の汚染について検定を行う場合、同じ試料内でリステリア・モノサイトゲネス、大腸菌、及びサルモネラの全部について試験を行うことが望ましいことがあり得る。捕捉工程を1回行い、次に例えば、これら微生物株それぞれの、異なる核酸配列を増幅するための固有プライマーを使用して、PCR又はRT−PCR検定を行うことができる。よって、各株について別々の試料取扱い及び調製手順を行う必要を回避することができる。
【0091】
診断キット
本発明のプロセスを実施する際に使用するための診断キットは、(a)上述の濃縮剤(好ましくは微粒子状)、及び(b)本発明のプロセスを実施のための試験容器(好ましくは滅菌試験容器)を含む。好ましくは、この診断キットは更に、微生物培養媒体又は培地、溶解試薬、緩衝液、生物発光検出検定構成要素(例えば照度計、溶解試薬、ルシフェラーゼ酵素、酵素基質、反応緩衝液、その他同様物)、遺伝子学的検出検定構成要素、プロセスを実施のための説明書、及びこれらの組み合わせから選択された1つ以上の構成要素を含む。好ましい溶解試薬は、緩衝液中に供給された溶解酵素であり、好ましい遺伝子学的検出検定構成要素には、標的微生物に固有の1つ以上のプライマーが含まれる。
【0092】
例えば、本発明の診断キットの好ましい実施形態には、微粒子濃縮剤(例えば、ガラス製又はポリプロピレン製バイアルなどの滅菌使い捨て可能な容器入り)に、本発明のプロセスの実施における前記薬剤使用のための説明書(例えば、濃縮剤と、分析する流動体試薬とを混合し、この濃縮剤を重力によって沈殿させ、得られた上澄みを除去し、濃縮剤に結合した少なくとも1種類の標的微生物株の存在を検出すること)を組み合わせたものが含まれる。濃縮剤は所望により、防腐剤を含んだ少量の緩衝液で水和させ、これにより保管及び輸送中の安定性を高めることができ、並びに/又は破って開けるタイプの密閉パウチに入れ/分包し、汚染を防ぐことができる。濃縮剤は液体中の分散液又は懸濁液の形態であり得、又は粉末形態であり得る。好ましくは、診断キットには、微粒子濃縮剤をあらかじめ計量した分包(例えば、試料量に応じて)が含まれる(例えば1つ以上の破って開けるタイプの密閉パウチ)。
【実施例】
【0093】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及び量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【0094】
材料
アルファ・エイサー(Alfa Aesar)社(ジョンソン・マッセイ社(Johnson Matthey Company)グループ、マサチューセッツ州ウォードヒル)から、白色粉末の珪藻土(Kieselguhr)(325メッシュ、粒径がすべて44マイクロメートル未満)を購入した。この材料はX線回折(XRD)によって、α−クリストバライト及び石英と共に非晶質シリカを含むことが示された。焼成珪藻土をソルヴァディス社(Solvadis, GmbH)(ドイツ・フランクフルト)から購入した(これは、第一長さが最高約60マイクロメートルの多孔質ディスク状及びディスク破片、第一長さが約3〜約60マイクロメートルの非対称断片と共に、長さ約5〜約80マイクロメートル、幅約3〜約8マイクロメートルの小さな棒状が含まれていることが観察された)。この材質は、主にα−クリストバライトを含んでいることがXRDによって示された。
【0095】
微生物培養物は、ザ・アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(The American Type Culture Collection)(ATCC、バージニア州マナサス)から購入された。
【0096】
様々な表面改変剤(すなわち、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、プラチナ、金、及び酸化第二鉄と組み合わせた金)を含む濃縮剤が、下記の方法で珪藻土を表面処理することによって調製された。
【0097】
金の堆積
約57〜60gの乾燥珪藻土又は金属酸化物で改変した珪藻土支持媒体(粉末体積約300mL)を更に150℃の炉で24時間乾燥させ、残留水を除去した。得られた各乾燥試料が熱いうちに、本明細書でブレード隙間が2.7mmの粒子攪拌機を有するPVD装置について詳細に上述されている、PVD装置に入れた。この装置の真空槽を、約1.3mPa(5×10−5Torr)の背景圧力まで排気し、アルゴンスパッタリングガスを含む気体をこの真空槽内に約0.13Pa(10mTorr)の圧力で導入した。
【0098】
次に金属堆積方法が実施された。0.02kWの制御電力で、金属のDCマグネトロンスパッタコーティング中、粒子攪拌機シャフト及び穴あきブレードを4rpmで回転させながら、所定の時間、装置のカソードに電力を印加した。スパッタコーティングの持続時間は5時間であった。スパッタコーティングの完了後、真空槽を、周囲環境との通気を行い、得られた金属コーティング試料をPVD装置から取り出し、25メッシュ(0.707mm)スクリーンのふるいにかけて、方法中に生じた微細粒子を分離した。試料に堆積した金属の量は、使用した金属スパッタリングのターゲットを秤量(堆積方法の前と後の両方)することにより決定された。一般に、ターゲットの重量損失の約18パーセントは、試料に堆積した金属の量を表す(誘導結合プラズマ分析に基づく)。この情報から、得られた支持媒体上の金の量は、約0.9重量パーセントと計算された。
【0099】
白金の堆積
上記の金堆積プロセスが本質的に繰り返し行われたが、ただし7.62cm(3インチ)の金標的の代わりに、7.62cm(3インチ)の白金標的が使用され、電力は0.03kWに設定され、蒸着時間は1時間であった。得られた支持媒体上の白金の量は、約0.25重量パーセントと計算された。
【0100】
二酸化チタンの堆積
20.0gのTiO(SO2HO(ノア・テクノロジーズ社(Noah Technologies Corporation)、テキサス州サンアントニオ)を80.0gの脱イオン水に攪拌しながら溶かすことによって、20重量パーセントの無水オキシ硫酸チタン(IV)が調製された。この溶液50.0gを脱イオン水175mLと混合し、二酸化チタン前駆体化合物溶液が生成された。大きなビーカーで急速に攪拌しながら、50.0gの珪藻土を500mLの脱イオン水に分散させることにより、珪藻土の分散液が調製された。この珪藻土分散液を約80℃に加熱した後、急速に攪拌しながら約1時間かけて二酸化チタン前駆体化合物溶液を滴状に加えた。加えた後、ビーカーを時計皿で覆い、内容物を加熱して20分間沸騰させた。水酸化アンモニウム溶液をビーカーに加え、内容物のpHを約9にした。得られた生成物を、洗浄水のpHが中性になるまで沈殿/デカンテーションによって洗浄した。生成物を濾過によって分離し、100℃で一晩乾燥させた。
【0101】
乾燥生成物の一部を磁器るつぼに入れ、加熱速度毎分約3℃で室温から350℃まで加熱することによって焼成し、350℃で1時間保持した。
【0102】
酸化鉄の堆積
酸化鉄は、本質的に上記の二酸化チタン堆積プロセスを用いて珪藻土上に堆積されたが、ただし、硫酸チタニル溶液が、20.0gのFe(NO9HO(J.T.ベーカー社(J.T. Baker, Inc.)、ニュージャージー州フィリップスバーグ)を175mLの脱イオン水に溶かした溶液に置き換えられた。更なる試験のため、得られた酸化鉄改変珪藻土の一部を同様に350℃で焼成した。
【0103】
酸化鉄及び二酸化チタンの堆積
酸化鉄及び二酸化チタンの混合物は、本質的に上記の二酸化チタン堆積プロセスを用いて珪藻土上に堆積されたが、ただし、硫酸チタニル溶液が、10.0gのFe(NO9HO(J.T.ベーカー社(J.T. Baker, Inc.)、ニュージャージー州フィリップスバーグ)及び25.0gTiO(SO2HO(ノア・テクノロジーズ社(Noah Technologies Corporation)、テキサス州サンアントニオ)を175mLの脱イオン水に溶かした溶液に置き換えられた。更なる試験のため、得られた酸化鉄及び二酸化チタン改変珪藻土の一部を同様に350℃で焼成した。
【0104】
微生物濃縮試験方法
単離した微生物コロニーを、5mLのBBL(商標)トリプチケース(Trypticase)(商標)ソイブロス(Soy Broth)(ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)、メリーランド州スパークス)に接種し、37℃で18〜20時間インキュベートした。この1mL当たり約10コロニー形成単位の一晩培養物を、pH7.2の吸着緩衝液(5mM KCl、1mM CaCl、0.1mM MgCl、及び1mM KHPOを含む)で希釈し、希釈液1mL当たり10の微生物を得た。体積1.1mLの微生物希釈液を、10mgの濃縮剤が入った、分離、ラベル付け、滅菌済みの5mLのポリプロピレン試験管(BDファルコン(Falcon)(商標)、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレークス)に加え、それぞれにキャップをして、サーモライン・マキシミックス・プラス(Thermolyne Maximix Plus)(商標)渦流ミキサー(バーンステッド・インターナショナル社(Barnstead International)、アイオワ州)上で混合した。キャップをした各試験管を、サーモライン・ヴァリ・ミックス(Thermolyne Vari Mix)(商標)振盪器プラットフォーム(バーンステッド・インターナショナル社(Barnstead International)、アイオワ州)上で、室温(25℃)にて15分間インキュベートした。インキュベーション後、各試験管を10分間実験台の上に静置し、濃縮剤を沈殿させた。濃縮剤を含まない1.1mLの微生物希釈液が入った対照試料試験管を、同じように処理した。得られた沈殿した濃縮剤及び/又は上澄み液(及び対照試料)を次に分析に使用した。
【0105】
沈殿した濃縮剤を、メーカーの指示に従い、1mLの滅菌バターフィールド(Butterfield’s)緩衝液(pH7.2±0.2、リン酸一カリウム緩衝液、VWRカタログ番号83008−093、VWR社、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に再び懸濁させ、3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)エアロビック・カウント・プレート(Aerobic Count Plates)培地(ドライ、脱水可能、3M社、ミネソタ州セントポール)上で培養した。3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)プレートリーダー(Plate Reader)(3M社、ミネソタ州セントポール)を使用して、好気性菌計数が定量された。結果は次の式を用いて計算された:
再懸濁された濃縮剤中のCFU/mLパーセンテージ=
(培養された再懸濁濃縮剤からのコロニー数)/(培養された未処理対照試料からのコロニー数)×100
(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生きている又は生存性微生物の単位である)。
【0106】
次に、下の式を用いて、濃縮剤による微生物捕捉のパーセンテージについて結果が報告された:
捕捉効率又は捕捉パーセンテージ=再懸濁濃縮剤中のCFU/mLパーセンテージ
【0107】
比較のため、少なくともいくつかの場合において、1mLの上澄みを除去し、未希釈、又は1:10の割合でバターフィールド(Butterfield’s)緩衝液で希釈し、3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)エアロビック・カウント・プレート(Aerobic Count Plates)培地上で培養した。3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)プレートリーダー(Plate Reader)(3M社、ミネソタ州セントポール)を使用して、好気性菌計数が定量された。結果は次の式を用いて計算された:
上澄み中のCFU/mLパーセンテージ=
(培養された上澄みからのコロニー数)/(培養された未処理対照試料からのコロニー数)×100
(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生きている又は生存性微生物の単位である)。
【0108】
微生物コロニー及び濃縮剤の色が似ている場合(プレートリーダーでのコントラストが少なくなる)、結果は上澄みに基づいて得られ、下の式を使用して濃縮剤による微生物の捕捉パーセンテージに関して報告を行った:
捕捉効率又は捕捉パーセンテージ=100−上澄み中のCFU/mLパーセンテージ
【0109】
実施例1〜12及び比較例1及び2
上述の微生物濃縮試験方法を使用して、様々に異なる表面処理が行われた珪藻土又は表面処理された焼成珪藻土濃縮剤(上述に従って調製)10mg、及び未処理の珪藻土(以下DEと記載)10mgを、標的微生物であるグラム陰性菌サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium)(ATCC 35987)及びグラム陽性菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 6538)の細菌濃縮について、別々に試験を行った。結果を下記の表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
実施例14〜19及び比較例3
上述の微生物濃縮試験方法を使用して、様々に異なる表面処理が行われた珪藻土又は表面処理された焼成珪藻土濃縮剤(上述に従って調製)10mg、及び未処理の珪藻土(以下DEと記載)10mgを、標的微生物であるサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)(10CFU/mL、ATCC 201390)の酵母濃縮について、別々に試験を行った。得られた物質を3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)酵母・カビ計数プレート(Yeast and Mold Count Plate)培地(ドライ、脱水可能、3M社、ミネソタ州セントポール)上で培養し、メーカーの指示に従い5日間インキュベートした。単離された酵母コロニーを手動で数え、捕捉したパーセンテージを上述のように計算した。結果を下の表2に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0112】
【表2】

【0113】
実施例20〜22及び比較例4〜6
食品試料を地元の食料品店(セントポールのカブ・フーズ(Cub Foods))から購入した。スライスハム、レタス、及びアップルジュースの試料(11g)を滅菌済みガラス皿内で計量し、滅菌済みストマッカー(Stomacher)(商標)ポリエチレンフィルタ袋(スーアード社(Seward Corp)、英国ノーフォーク)に加えた。食品試料は、サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の18〜20時間の一晩培養物(ストック)を用いて、濃度10CFU/mLで菌を添加した。この後に、99mLのバターフィールド(Butterfield’s)緩衝液を、菌を添加した試料に加えた。得られた試料をストマッカー(Stomacher)(商標)400サーキュレーター(Circulator)実験用ブレンダー(スーアード社(Seward Corp)、英国ノーフォーク)で2分間サイクルで混合した。混合した試料を滅菌済み50mL円錐形ポリプロピレン製遠心管(BDファルコン(Falcon)(商標)、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレークス)に加え、毎分2000回転(rpm)で5分間遠心分離にかけ(エッペンドルフ(Eppendorf)(商標)5804、ニューヨーク州ウェストベリー)、大きな破片を除去した。得られた上澄み液を、試料として更なる試験に使用した。
【0114】
上述の細菌濃縮試験方法を用い、上記のように調製された1mL試験試料それぞれを、表面処理された珪藻土10mgを含んだ試験管、及び未処理の珪藻土10mgを含んだ対照用試験管に別々に加え、標的微生物であるサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の細菌濃縮について試験が行われた。レタスの試験については、試料を滅菌済み100×20組織培養ペトリ皿(ザルスタット(Sarstedt)、ノースカロライナ州ニュートン)に入れ、アルファイメージャー(AlphaImager)(商標)マルチイメージ(MultiImage)(商標)ライトキャビネット(アルファ・イノテック社(Alpha Innotech Corporation)、カリフォルニア州サンリアンドロ)内で1時間紫外線(UV)光下でインキュベートし、背景微生物叢を除去した。このようなUV処理試料で、常在微生物叢の不在が確実にされ(本質的に上述のように培養し1mL試料を対象とすることにより)、次に濃縮実験に使用された。結果を下の表3に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例23〜24及び比較例7〜8
七面鳥肉試料(25gのスライスした七面鳥肉及び225mLバターフィールド緩衝液を使用)で上記の実施例20〜22及び比較例4〜6の手順に従い、大量の試料(30mL試料体積当たり濃縮剤300mg)からの標的微生物サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の濃縮について、表面処理された珪藻土及び未処理珪藻土が別々に試験された。また、水飲み場の飲料水(100mL)にも試験を行った。これは滅菌済み250mLガラス瓶(VWR、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に採取し、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)を10CFU/mLで接種した。得られた接種済みの水を、手で5回転倒混和し、室温(25℃)で15分間インキュベートした。
【0117】
上記のように調製した試料30mLを、濃縮剤300mgが入った滅菌済み50mL円錐形ポリプロピレン製遠心管(BDファルコン(Falcon)(商標)、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレークス)に加え、上述の微生物濃縮試験方法を使用して試験を行った。得られた沈殿した濃縮剤を、30mL滅菌済みバターフィールド緩衝液中に再懸濁させ、3M(商標)ペトリフィルム(Petrifilm)(商標)エアロビック・カウント・プレート(Aerobic Count Plates)培地上で培養した。結果を下の表4に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0118】
【表4】

【0119】
実施例25〜32
様々に異なる表面処理が行われた珪藻土濃縮剤の10mg試料(上述に従って調製)の、標的細菌内生胞子であるバチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)(ATCC 9372)、枯草菌(Bacillus subtilis)(ATCC 19659)の濃縮について、別々に試験が行われた。上述の微生物濃縮試験方法を利用し、次の変更を加えた:一晩培養物が、1.4×10CFU/mLのバチルス・アトロファエウス及び6×10CFU/mLの枯草菌をそれぞれ有し、得られた上澄みを未希釈で培養し、結合した微生物を伴い沈殿した濃縮剤を5mLの滅菌バターフィールド緩衝液に再懸濁させ、2つ同じものに分けて培養した(各1mL)。捕捉効率は、培養した上澄み液からの計数に基づいて計算され、その結果を下の表5に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0120】
【表5】

【0121】
実施例33〜36
2種類の異なる表面処理を行った珪藻土濃縮剤(すなわち、Pt−DE及びAu−Fe−DE)の、標的の非エンベロープ型細菌感染性ウイルスである大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1。これはしばしば、様々なヒト感染性の非エンベロープ型腸管系ウイルスの代用として用いられる)の濃縮について、別々に試験が行われた。二層寒天法(下記に記述)を使用し、大腸菌細菌(ATCC 15597)をホストとして使用し、大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1)の捕捉の検定を行った。
【0122】
大腸菌バクテリオファージMS2ストックをpH7.2の滅菌1X吸着緩衝液(5mM KCl、1mM CaCl、0.1mM MgCl、及び1mM KHPOを含む)中で10倍段階希釈し、1ミリリットル当たり10及び10プラーク形成単位(PFU/mL)の2つの希釈を得た。得られた体積1.0mLのバクテリオファージ希釈液を、10mgの濃縮剤が入った、ラベル付け、滅菌済みの5mLのポリプロピレン試験管(BDファルコン(Falcon)(商標)、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレークス)に加え、サーモライン・マキシミックス・プラス(Thermolyne Maximix Plus)(商標)渦流ミキサー(バーンステッド・インターナショナル社(Barnstead International)、アイオワ州)上で混合した。キャップをした試験管を、サーモライン・ヴァリ・ミックス(Thermolyne Vari Mix)(商標)振盪器プラットフォーム(バーンステッド・インターナショナル社(Barnstead International)、アイオワ州)上で、室温(25℃)にて15分間インキュベートした。インキュベーション後、試験管を10分間実験台の上に静置し、濃縮剤を沈殿させた。濃縮剤を含まない1.0mLのバクテリオファージ希釈液が入った対照試料試験管を、同じように処理した。得られた沈殿した濃縮剤及び上澄み液(及び対照試料)を次に分析に使用した。
【0123】
100マイクロリットルの上澄み液を取り出し、下記の二層寒天法を使用してバクテリオファージの検定を行った。更に上澄みを800マイクロリットル取り出して廃棄した。100マイクロリットルの沈殿した濃縮剤も、バクテリオファージの検定を行った。
【0124】
二層寒天法:
大腸菌細菌(ATCC 15597)の単一コロニーを25mLの滅菌済み3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(Bacto(商標)トリプシン・ソイ・ブロス(Tryptic Soy Broth)(ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson and Company)、メリーランド州スパークス、メーカーの指示に従って調製)に接種し、振盪インキュベーター(Innova(商標)44、ニュー・ブランスウィック・サイエンティフィック社(New Brunswick Scientific Co., Inc.)、ニュージャージー州エディソン)を毎分250回振動(rpm)に設定して一晩、37℃でインキュベートした。この一晩培養物750マイクロリットルを使用して、75mL滅菌済み3重量パーセントのトリプシン大豆ブロスに接種した。得られた培養物37℃を250rpmに設定した振盪インキュベーターで37℃でインキュベートし、SpectraMax M5分光光度計(モレキュラー・デバイシズ社(Molecular Devices)、カリフォルニア州サニーヴェール)を使用して550nmの吸光度(吸光度値0.3〜0.6)で測定された対数期における大腸菌細胞を得た。細胞は、検定に使用するまでの間、氷上でインキュベートされた。
【0125】
100マイクロリットルの上述バクテリオファージ試験試料を、氷上でインキュベートした大腸菌(ホスト細菌)細胞75マイクロリットルと混合し、室温(25℃)で5分間インキュベートした。得られた試料を、5mLの滅菌済みの、上部が溶融した寒天(3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5重量パーセントのNaCl、0.6重量パーセントの寒天で、当日に調製し、48℃水浴中に保管したもの)と混合した。混合物を次に、ペトリ皿内の下側寒天(3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5重量パーセントのNaCl、1.2重量パーセントの寒天)の上に注いだ。混合物の溶融寒天を5分間固まらせてから、ペトリ皿又はプレートを逆さにし、37℃でインキュベートした。一晩インキュベーションの後、プレートを目視で点検し、これらの沈殿濃縮剤を含むプレートが(対照プレートと共に)、バクテリオファージプラークの存在を示した。捕捉効率は、培養した上澄み液からの計数に基づいて計算され、Pt−DEについては96パーセント及び97パーセント(それぞれ、10及び10PFU/mL希釈について)であり、Au−Fe−DEについては94パーセント及び95パーセント(それぞれ、10及び10PFU/mL希釈について)であった(標準偏差は10パーセント未満)。
【0126】
実施例37〜38
アップルジュースを地元の食料品店(セントポールのカブ・フーズ(Cub Foods))から購入した。アップルジュース(11g)を滅菌したガラス皿内で計量し、99mLの滅菌バターフィールド(Butterfield’s)緩衝液を加えた。加えた液を1分間渦流で混合し、2つの細菌培養物をこれに添加した。培養物は、ネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium)(ATCC 35987)及び大腸菌(Escherichia coli)(ATCC 51813)をそれぞれ1CFU/mLの濃度で、18〜20時間の一晩培養物(細菌ストック)を用いた。細菌ストックを、上述のように1X吸着緩衝液中で段階希釈した。
【0127】
上述の細菌濃縮試験方法を使用して、菌を添加したアップルジュース試料10mLを、100mgの表面処理済み珪藻土濃縮剤(すなわち、TiO−DE又はAu−Fe−DE)が入った滅菌済み50mL円錐形ポリプロピレン製遠心管(BDファルコン(Falcon)(商標)、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレークス)に加え、15分間インキュベートして、標的微生物であるサルモネラ(Salmonella)の(競合微生物である大腸菌の存在下における)細菌捕捉/濃縮について試験を行った。得られた上澄み液を除去し、沈殿した濃縮剤を、滅菌3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(バクト(Bacto)(商標)トリプシン大豆ブロス(Tryptic Soy Broth)、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson and Company)、メリーランド州スパークスをメーカーの指示に従い調製)2mLが入った別の50mL遠心管に移した。この管にゆるくキャップをし、内容物を混合して、37℃でインキュベートした。一晩インキュベーションした後、得られたブロス混合物を、SDI(デラウェア州ニューアークのストラテジック・ダイアグノスティックス社(Strategic Diagnostics, Inc.))から販売されているラピッドチェック(RapidChek)(商標)サルモネラ・ラテラルフロー・イムノアッセイ試験ストリップを用いて、サルモネラの存在について試験した。試験ストリップを目視検査し、サルモネラ陽性が示された。
【0128】
この微生物を含む混合物について、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸検出も実施された。上述の一晩インキュベートした濃縮剤含有ブロス1mLを、試験試料として、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)(カリフォルニア州フォスターシティ)から販売されているタックマン(TaqMan)(商標)ABIサルモネラ検出キット(Salmonella enterica Detection Kit)を用いて、サルモネラの存在を検定した。対照試料として、ネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium)(ATCC 35987)の18〜20時間一晩培養物(ストック)1mLも検定が行われた。PCR試験が実施された。ストラタジーン(Stratagene)Mx3005P(商標)QPCR(定量PCR)システム(ストラタジーン社(Stratagene Corporation)、カリフォルニア州ラホーヤ)で、1サイクル当たり次のサイクル条件を用いて、45サイクルを実施した:25℃で30秒間、95℃で10分間、95℃で15秒間、及び60℃で1分間。対照試料について、平均(n=2)サイクル閾値(CT値)17.71が得られた。TiO−DE又はAu−Fe−DEを含む試験試料について、それぞれ、平均(n=2)CT値20.44及び16.53が得られ、PCR反応陽性を示し、サルモネラの存在が確認された。
【0129】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改変剤を含む表面処理を、少なくとも珪藻土の表面の一部に施した、珪藻土を含む濃縮剤を提供する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を提供する工程と、(c)前記濃縮剤と前記試料を接触させることにより、前記少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部分が前記濃縮剤に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含むプロセス。
【請求項2】
前記プロセスが、少なくとも1種類の結合した微生物株の存在を検出することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記濃縮剤が微粒子濃縮剤である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1つの他の金属酸化物と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属酸化物が、酸化第二鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記試料が液体の形態である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記微生物株が、細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせの菌株から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記微生物株が、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせの菌株から選択される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記接触が、前記濃縮剤と前記試料との混合により実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記検出が、培養による方法、顕微鏡及びその他の画像手法、遺伝子学的検出方法、免疫学的検出方法、生物発光による検出方法、及びこれらの組み合わせから選択される方法によって実施される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスが、得られた微生物結合濃縮剤を凝離することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記凝離が、重力沈殿、遠心分離、濾過、及びこれらの組み合わせから選択される方法によって達成される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記凝離が、少なくとも部分的に重力沈殿によって達成される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスが、得られた凝離濃縮剤を前記試料から分離することを更に含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
(a)微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される表面改変剤を含む表面処理を、少なくとも珪藻土の表面の一部に施した、珪藻土を含む濃縮剤を提供する工程と、(b)細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの微生物株を含む試料を提供する工程と、(c)前記濃縮剤と前記試料を接触させることにより、前記少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部分が前記濃縮剤に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含むプロセス。
【請求項20】
前記プロセスが、少なくとも1種類の結合した微生物株の存在を検出することを更に含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記濃縮剤が微小粒子を含み、前記試料が液体の形態であり、前記接触が前記濃縮剤と前記試料との混合により実施される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記プロセスが、得られた微生物結合濃縮剤を、少なくとも部分的に重力沈殿により凝離することを更に含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項24】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
(a)二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改変剤を含む表面処理を、少なくとも珪藻土の表面の一部に施した、珪藻土を含む濃縮剤と、(b)請求項1に記載のプロセスを実施する際に使用するための試験容器と、を含むキット。
【請求項26】
前記表面改変剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記キットが、微生物培地、溶解試薬、緩衝液、遺伝子学的検出検定の構成要素、生物発光検出検定の構成要素、前記プロセスを実施のための説明書、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記濃縮剤が微粒子の形態であり、前記試験容器が滅菌済みでかつ使い捨て可能であり、前記試験容器に前記濃縮剤が含まれ、前記キットには前記プロセスの実施において前記濃縮剤を使用することについての説明書が更に含まれる、請求項25に記載のキット。
【請求項29】
前記キットが、1つ以上の破って開けるタイプの密閉パウチに、微粒子形態の前記濃縮剤をあらかじめ計量した、少なくとも1つの分包を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項30】
珪藻土、金属酸化物で改変された珪藻土、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子支持体の上に、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを備える濃縮剤。
【請求項31】
(a)珪藻土、金属酸化物で改変された珪藻土、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子支持体を提供する工程と、(b)物理蒸着によって前記支持体上に微細ナノスケール金又は微細ナノスケール白金を堆積させる工程と、を含む、濃縮剤調製のためのプロセス。
【請求項32】
(a)珪藻土、金属酸化物で改変された珪藻土、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子支持体を提供する工程と、(b)加水分解可能な二酸化チタン前駆体化合物を提供する工程と、(c)前記支持体と前記化合物を合わせる工程と、(d)二酸化チタンが前記支持体上に堆積するように、前記化合物を加水分解する工程と、を含む濃縮剤調製のためのプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−539984(P2010−539984A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528126(P2010−528126)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/078575
【国際公開番号】WO2009/046191
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】