説明

微粉センサ装置

【課題】 流路内に微粉が残留しにくい微粉センサ装置を提供する。
【解決手段】 気体が移動する流路2が基体1に形成され、基体1に取着された発光素子3から流路2に光を照射し、流路2からの反射光または透過光を基体1に取着された受光素子4で測定することにより気体に含まれる微粉を検知する微粉センサ装置9であって、流路2が基体1を上下方向に貫通するように形成されているとともに、基体1に流路2を取り囲むように発熱体61または冷却体62が配置され、発光素子3および受光素子4が、発光部および受光部の表面が流路2の内面と滑らかに連続するように配置されている。気体を加熱または冷却することにより上または下方向(流路2の長さ方向)に気体が流れ、また流路2内の凹凸が抑制されているため、微粉が流路2内に残留しにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれるほこりや煙等の微粉を検知するための微粉センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中に浮遊するほこりや煙等の微粉を検知するための微粉センサ装置として、微粉による反射光を受光し、光電効果により電気信号を発生する、いわゆる光電型のものが多用されている。
【0003】
光電型の微粉センサ装置は、例えば、空気等の気体に含まれる微粉を検知する検知用の空間としての流路を内部に有する本体(筐体)に、流路内と外部との間で気体の導入または排出を行なわせるための導入口および排出口を設けるとともに、本体の内部に、流路に対する発光や受光ができるようにして発光素子および受光素子を取り付けた構造である(例えば、特許文献1〜3を参照。)。
【0004】
このような微粉センサ装置は、その装置がセットされた室内の空気等の外部の気体が導入口から流路内に導入され、流路を経て排出口から外部に排出される。この流路に対して発光素子から光が照射され、流路に導入された気体中に含まれる微粉で光が反射し、この反射した光が受光素子で受光され、光電効果で検知信号としての電気信号が生じることにより、気体中のほこり等の微粉の有無やその含有の程度が検知される。
【特許文献1】特開平5−26808号公報
【特許文献2】特開2004−294082号公報
【特許文献3】特開2005−352932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の微粉センサ装置においては、本体の流路内に微粉が残留しやすいという問題点があった。これは、本体内の空間に形成された流路に比べて導入口や排出口が比較的狭いことや、流路に沿って効果的に気体を移動させる手段を有していないこと等による。流路内に微粉が残留すると、残留した微粉による余計な反射光の発生や、微粉が発光素子の発光部や受光素子の受光部に付着して発光や受光が妨げられること等に起因して、気体中の微粉の検知精度が劣化する可能性がある。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、流路内に微粉が残留しにくい微粉センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微粉センサ装置は、気体が移動する流路が基体に形成され、該基体に取着された発光素子から前記流路に光を照射し、前記流路からの反射光または透過光を前記基体に取着された受光素子で測定することにより前記気体に含まれる微粉を検知する微粉センサ装置であって、前記流路が前記基体を上下方向に貫通するように形成されているとともに、前記基体に前記流路を取り囲むように発熱体または冷却体が配置され、前記発光素子および前記受光素子が、発光部および受光部の表面が前記流路の内面と滑らかに連続するように配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の微粉センサ装置は、上記構成において、前記基体に前記発熱体が配置されており、前記流路は、下端部分における横断面の面積が他の部分における横断面の面積よりも大きいことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の微粉センサ装置は、上記構成において、前記基体に前記冷却体が配置されており、前記流路は、上端部分における横断面の面積が他の部分における横断面の面積よりも大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微粉センサ装置によれば、基体に上下方向に流路が形成されるとともに、流路を取り囲むように発熱体または冷却体が配置されていることから、発熱体で加熱された場合には流路内の気体に上向きの流れが生じ、また、冷却体で冷却された場合には流路内の気体に下向きの流れが生じる。この加熱や冷却による気体の流れの方向と流路の伸びる方向とが一致している。また、基体を上下に貫通する流路の下端および上端の開口部分が、それぞれ気体の導入口または排出口になるため、流路の横断面の面積に対して導入口や排出口の横断面の面積を同程度に確保することが容易である。また、発光素子および受光素子が、発光部および受光部の表面が流路の内面と滑らかに連続するように配置されているため、流路内に気体の流れを妨げるような凸状の部分や微粉が溜まりやすい凹状の部分等が生じることを効果的に抑制することができる。
【0011】
そのため、流路内での気体の流れが効果的に促進され、この気体の流れとともに微粉が流路内から外部に効果的に排出される。したがって、流路内に微粉が残留しにくい微粉センサ装置を提供することができる。
【0012】
また、本発明の微粉センサ装置によれば、例えば基体をセラミック焼結体等の電気絶縁材料で形成することにより、発光素子や受光素子に対する電力の供給や、受光素子で得られた電気信号の送信等のための各種の配線導体をメタライズ層やめっき層等の形態で基体に容易に形成することができる。そのため、基体に、受光素子から送信される信号に対する各種の演算や増幅等の処理を行なう半導体集積回路素子(IC)やコンデンサ等の電子部品を搭載することが可能であり、小型化,高機能化が容易な微粉センサ装置とすることもできる。
【0013】
また、本発明の微粉センサ装置は、基体に発熱体が配置され、流路は、下端部分における横断面の面積が他の部分における横断面の面積よりも大きい場合には、流路内を下端から上端に向かって流れる気体の流れに対して、下端側から外部の空気等の気体をより効率よく吸い込ませることができる。
【0014】
そのため、外部の気体中に存在する微粉をより確実にセンサ装置内に取り込んで、発光素子および受光素子により検知することが可能で、微粉の有無の検知がより確実な微粉センサ装置とすることができる。
【0015】
また、本発明の微粉センサ装置は、基体に冷却体が配置され、流路は、上端部分における横断面の面積が他の部分における横断面の面積よりも大きい場合には、流路内を上端から下端に向かって流れる気体の流れに対して、上端側から外部の空気等の気体をより効率よく吸い込ませることができる。
【0016】
そのため、外部の気体中に存在する微粉をより確実にセンサ装置内に取り込んで、発光素子および受光素子により検知することが可能で、微粉の有無の検知がより確実な微粉センサ装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の微粉センサ装置について、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1(a)は、本発明の微粉センサ装置の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)はそのA−A線における断面図である。なお、図1(a)においては内部の一部を透視した状態で破線で示している。
【0019】
図1において、1は基体、2は流路、3は発光素子、4は受光素子である。これらの、基体1,流路2,発光素子3および受光素子4により微粉センサ装置9が基本的に構成される。
【0020】
微粉センサ装置9は、例えば、家屋や各種事業所,船舶の室内や車内等の空気に浮遊するほこりや、喫煙や火災の際に発生する煙等の微粉を検知するために使用される。
【0021】
基体1は、検知対象となる空気等の気体が流れる流路2を設けるとともに、流路2に対する発光を行なう発光素子3、および流路2からの反射光や透過光の受光を行なう受光素子4を取着するためのものである。
【0022】
基体1は、このような流路2の形成や発光素子3および受光素子4の配置が可能な形状および寸法で形成される。基体1は、この実施の形態の例では、上面視でほぼ正方形の四角柱状に形成されているが、前述のような条件を満たすものであれば、上面視で長方形状の四角柱状や円柱状,楕円柱状,角錐台状,円錐台状でもよく、柱状で外面に凹凸を有するもの等でもかまわない。
【0023】
基体1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体等のセラミック材料や、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂,アクリル樹脂等の樹脂材料、セラミック材料等の無機材料と樹脂材料との複合材料等の材料により形成されている。
【0024】
基体1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウムの粉末を主成分とし、酸化ケイ素や酸化カルシウム等を添加してなる原料粉末を、有機溶剤,バインダとともにシート状に加工してセラミックグリーンシートを作製し、次にセラミックグリーンシートを複数枚積層した後、約1300〜1600℃の焼成温度で焼成することにより製作することができる。
【0025】
基体1には、その内部を上下方向に貫通するように流路2が形成されている。流路2は、微粉を含んでいる可能性のある外部の空気等の気体を下端側または上端側の開口部分から取り込むとともに、内部を上方向または下方向に移動させて、取り込んだのと反対側の開口部分から外部に排出するものであり、微粉を検知するための検知用空間として機能する。
【0026】
この流路2を気体が移動する間に、その気体に含まれる微粉の検知が行なわれる。微粉の検知は、流路2に対して発光を行なう発光素子3と、流路2からの反射光や透過光を受光する受光素子4とにより行なわれる。
【0027】
発光素子3は、例えば発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等の光半導体素子である。また、受光素子4は、例えばフォトダイオード(PD)やフォトトランジスタ等の光半導体素子である。この場合、例えば発光素子3として用いられる発光ダイオードは、入出力用のリード端子を備えた樹脂製等のパッケージに封止されて使用される。また、受光素子4として用いられるフォトダイオードは、例えば、シリコン基板の表面に電荷結合素子(CCD)とともに形成された、いわゆるCCDイメージセンサとして使用される。
【0028】
そして、微粉の検知に透過光を利用する場合には、発光素子3の発光部(符号なし)と受光素子4の受光部(符号なし)とが、流路2を間にして対向し合うように配置される。そして、発光素子3で発光された光について、流路2を移動する微粉で反射されることによる減衰の有無や減衰の割合を受光素子4で検知することにより、気体中の微粉の有無や、その含有の程度を検知することができる。
【0029】
また、反射光を利用する場合であれば、例えば図2に図1(a)と同様の平面図で示すように、発光素子3および受光素子4は、その発光部および受光部にそれぞれ直交する直線(図示せず)が流路2内において互いに斜めに交差するように基体1に配置される。そして、発光素子3から流路2に受光部に対して斜めになるように入射した光が、流路2を移動する微粉の表面で受光素子4側に反射され、受光素子4の受光部で受光される。そして、受光された光に応じて、受光素子4で気体中の微粉の有無やその含有の程度を検知することができる。透過光および反射光のいずれを利用する場合でも、受光素子4において光電効果により電気信号が生じ、この電気信号により透過光や反射光(これらの原因である微粉)が検知される。
【0030】
なお、流路2は、例えば、絶縁基体1となる各セラミックグリーンシートの中央部分等の所定位置に、機械的な加工法やレーザ加工法等の穴あけ加工を施して貫通孔を設けておき、この貫通孔が上下に連なるようにセラミックグリーンシートを積層することにより形成することができる。
【0031】
この微粉センサ装置9において、発光素子3および受光素子4は、それぞれの発光部および受光部の表面が流路2の内面と滑らかに連続するように配置されている。このように発光素子3および受光素子4を配置したことから、流路2内に気体の流れを妨げるような凸状の部分や微粉が溜まりやすい凹状の部分等が生じることを効果的に抑制することができる。
【0032】
このような、発光部および受光部が流路2の内面と滑らかに連続したものとするためには、例えば、流路2の内面に凹状の部分5を2個形成し、それぞれの凹状の部分5の内部に発光素子3または受光素子4を、発光部や受光部が流路2の内面と連続するように収容すればよい。
【0033】
この場合、凹状の部分5は、流路2に面した開口寸法を発光素子3および受光素子4それぞれの流路2に面する形状および寸法と同程度(少し大き目)としておけば、凹状の部分5と発光素子3および受光素子4との間に、微粉が溜まったり気体の流れに影響を与えたりするような隙間が生じることを抑制することができる。なお、凹状の部分5の奥行き(流路2の内面から絶縁基体1の外側面に向かう方向の寸法)は、前述のように発光素子3および受光素子4を収容することができるものであれば、特に制限はない。また、凹状の部分5は、流路2側と反対側が絶縁基体1の外側面まで達するようなものでもよい。
【0034】
また、発光素子3および受光素子4の発光部および受光部は、流路2の内面に対して、前述したパッケージやCCDイメージセンサの表面の形状等に応じて、完全に連続した面(いわゆる面一)から多少基体1側に入り込んでいたり、流路2側に出ていたりしてもよい。
【0035】
また、基体1には、流路2を取り囲むように発熱体61または冷却体62が配置されている。
【0036】
発熱体61または冷却体62は、流路2内の気体を加熱または冷却して上方向または下方向に移動させるためのものである。例えば、発熱体61が配置された部分で気体が加熱されて上方向に移動することにより、流路2に上向きの気流が生じ、流路2の下端から外部の気体が流路2内に導入されるとともに、流路2の上端から気体が外部に排出される。冷却体62が配置されている場合であれば、逆に、冷却された気体に下向きの流れが生じ、流路2の上端から外部の気体が流路2内に導入されるとともに、流路2の下端から気体が外部に排出される。
【0037】
このように流路2内で加熱あるいは冷却することにより気体を移動させるようにしたことによって、ファン(送風機)で気体を移動させるような場合に比べて、ファンの部分で生じる乱流に起因する微粉からの余計な反射光の発生を抑えることができるため、微粉の検知の精度を高くすることができる。例えば、煙感知器に用いた場合に、火災や喫煙による煙が発生していないにもかかわらず、誤って煙が発生しているという信号を生じるようなことが抑制された煙感知器を製作することができる。
【0038】
発熱体61としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁性の材料からなる基体1の内部や表面に形成された、タングステンやモリブデン,レニウム等の金属材料からなる発熱導体層が挙げられる。発熱導体層は、いわゆる抵抗発熱体であり、通電された際の電気抵抗に応じて発熱する。また、冷却体62としては、例えばペルチェ素子が挙げられる。ペルチェ素子は、例えばビスマス,テルル化合物のN型,P型半導体を接合してなるものであり、通電された電流に応じてペルチェ効果により熱を吸収し、冷却を行なう。
【0039】
なお、発熱体61としての発熱導体層を流路2の内面に露出するように形成する場合や、冷却体62としてペルチェ素子を用いる場合には、それらが流路2の内面に大きく突出しないように、適当な凹み(図示せず)を流路2の内面に設けて、その内側に発熱体61や冷却体62を収めるようにすることが好ましい。
【0040】
なお、発熱体61や冷却体62に対する作動用の電力の供給は、例えば、基体1の内部や表面に、発熱体61や冷却体62が配置されている部分から側面や下面等の外表面にかけて配線導体(図示せず)を形成し、この配線導体を介して発熱体61や冷却体62を外部の電気回路が備える電源(図示せず)と電気的に接続することにより行なうことができる。
【0041】
このような微粉センサ装置9は、例えば、家屋や各種事業所,船舶等の室内や車内に設置され、室内や車内の空気を被検知用の気体として流路2内に導入して流路2内を移動させながら、発光素子3および受光素子4間の受発光により微粉の検知を行なう。
【0042】
そして、例えば、室内に配置された微粉センサ装置9の場合には、その微粉センサ装置9がある一定の量や大きさの微粉(例えばタバコの煙等)を検知すると、微粉センサ装置9から排気ファンに信号が送られ、排気ファンが回りだし、室内の空気の浄化を行なう。
【0043】
この微粉センサ装置9によれば、基体1に上下方向に流路2が形成されるとともに、流路2を取り囲むように発熱体61または冷却体62が配置されていることから、発熱体61または冷却体62で加熱または冷却された流路2内の気体に上向きまたは下向きの流れが生じる。本発明の微粉センサ装置9においては、この加熱または冷却による気体の流れの方向と流路2の伸びる方向とが一致している。また、基体1を上下に貫通する流路2の下端および上端の開口部分が、それぞれ気体の導入口や排出口になるため、流路2の横断面の面積に対して導入口や排出口の横断面の面積を同程度に確保することが容易である。また、発光素子3および受光素子4が、発光部および受光部の表面が流路2の内面と滑らかに連続するように配置されているため、流路2内に、気体の流れを妨げるような凸状の部分や微粉が溜まりやすい凹状の部分等が生じることを効果的に抑制することができる。
【0044】
そのため、流路2内での気体の流れが効果的に促進され、この気体の流れとともに微粉が流路2内から外部に効果的に排出される。したがって、流路2内に微粉が残留しにくい微粉センサ装置9を提供することができる。
【0045】
また、このような微粉センサ装置9によれば、基体1を、例えば前述したセラミック材料等の電気絶縁材料で形成することにより、発光素子3や受光素子4に対する電力の供給や、受光素子4で得られた受光信号の送信等のための各種の配線導体(図示せず)をメタライズ層やめっき層等の形態で基体1に容易に、いろいろなパターンで形成することができる。そのため、基体1に、受光信号に対する各種の演算や増幅等の処理を行なう半導体集積回路素子(IC)やコンデンサ等の電子部品(図示せず)を搭載することが可能であり、本体の小型化や高機能化が容易な微粉センサ装置9とすることができる。
【0046】
例えば、基体1を酸化アルミニウム質焼結体で形成するとともに、基体1のうち、受光素子4が形成される位置から側面や下面等の外面にかけて配線導体を形成した場合には、配線導体のうち基体1の外面に露出している部位にICをはんだや導電性接着剤等を介して接続することにより、受光素子4がICと電気的に接続されてなる微粉センサ装置9を構成することができる。この場合、ICを搭載して収容するための凹部(キャビティ)を基体1に設けておけば、例えばこの凹部を塞ぐように基体1に蓋体(図示せず)を接合することにより、ICの気密封止を容易に行なうことが可能で、小型化も容易な微粉センサ装置9を提供することができる。このような微粉センサ装置9は、例えば空気清浄機において、空気中のほこりの有無や程度に応じて清浄機を制御するような用途に有効である。
【0047】
なお、これらの配線導体は、例えばタングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料からなるメタライズ層や、メタライズ層の表面を被覆するニッケルや銅,金等のめっき層等の形態で形成することができる。配線導体2は、例えばタングステンのメタライズ層からなる場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤,バインダとともに混練して作製した金属ペーストを、基体1となるセラミックグリーンシートに、発熱体61や冷却体62が配置される位置から外側面等の外面にかけて、スクリーン印刷法等の手段で所定パターンに印刷することにより形成することができる。
【0048】
このような微粉センサ装置9は、基体1に発熱体61が配置されたときに、図3(a)および(b)に図1(a)および(b)と同様の平面図および断面図で示すように、流路2について、下端側における内径を他の部分における内径よりも大きくした場合には、流路2内を下端から上端に向かって流れる気体の流れに対して、下端側から外部の気体をより効率よく吸い込ませることができる。
【0049】
そのため、外部の気体中に存在する微粉をより確実にセンサ装置9内に取り込んで、発光素子3および受光素子4により検知することが可能で、微粉の有無の検知がより確実な微粉センサ装置9とすることができる。なお、図3(a)は本発明の微粉センサ装置9の実施の形態の他の例を示す平面図(一部を透視した状態で示す図)であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0050】
また、微粉センサ装置9は、基体1に冷却体62が配置されたときに、図4(a)および(b)に同じく図1(a)および(b)と同様の平面図および断面図で示すように、流路2について、上端側における内径を他の部分における内径よりも大きくした場合には、流路2内を上端から下端に向かって流れる気体の流れに対して、上端側から外部の気体をより効率よく吸い込ませることができる。
【0051】
この場合にも、外部の気体中に存在する微粉をより確実に微粉センサ装置9内に取り込んで、発光素子3および受光素子4により検知することが可能で、微粉の有無の検知がより確実な微粉センサ装置9とすることができる。なお、図4(a)は本発明の微粉センサ装置9の実施の形態の他の例を示す平面図(一部を透視した状態で示す図)であり、図4(b)は(a)のA−A線における断面図である。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0052】
なお、図3,4に示すように、下端側または上端側において流路2の横断面の面積(以下、断面積)を他の部位における断面積よりも大きくした場合に、流路2は、断面積が小さい部分から大きい部分にかけて、断面積が徐々に変化するようなもの(流路2の内面が斜面状になるもの)であることが好ましい。断面積が急激に変化して流路2の内面に段差を生じるような場合には、その段差の部分で気体の移動が乱れて妨げられたり、微粉が溜まりやすくなったりする可能性がある。
【0053】
また、図4に示す例のように流路2の上端側における内径を他の部位における内径よりも大きくした場合には、上側に向かって露出する斜面に微粉が残留しやすくなるように見えるものの、斜面に沿って冷却による気体の流れにより微粉の移動が促進されるため、斜面上に微粉が残留することは抑制され得る。
【0054】
また、流路2について、下端側または上端側において断面積を他の部位における断面積よりも大きくする場合には、外部の下端側や上端側における断面積は、その他の部位における断面積に対して、例えば2〜10倍程度の面積にしておけばよい。
【0055】
また、このように、断面積が変化する流路2を有する微粉センサ装置9の場合には、発熱体61や冷却体62は、流路2の断面積が最も小さい部分において基体1に配置することが好ましい。このように発熱体61や冷却体62を配置することにより、流路2内の気体をより効率よく加熱または冷却して、上向きまたは下向きの気体の流れをより効率よく発生させることができる。したがって、この場合には、煙等の微粉の検知が確実であり、安定して使用することが可能な微粉センサ装置9とすることができる。
【0056】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、基体1の表面のうち流路2の下端や上端の近くに、外部の光が流路2内に入り込むことを防ぐための遮光板(図示せず)を取り付けて、受光素子4による受光および微粉の検知の精度を高めるようにしてもよい。
【実施例】
【0057】
酸化アルミニウム質焼結体からなる四角柱状の基体に上下方向に貫通する流路を設け、流路を取り囲む発熱体と、発光部および受光部がそれぞれ流路に面するように配置された発光素子および受光素子とを基体に配置して、本発明の実施例としての微粉センサ装置を作製した。
【0058】
基体は、酸化アルミニウム粉末を主成分(約95質量%)とし、酸化ケイ素,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを添加してなる原料粉末を有機溶剤,バインダとともに混練した後、ドクターブレード法によりセラミックグリーンシートを作製し、このセラミックグリーンシートを積層した後、1600℃で焼成することにより作製した。セラミックグリーンシートが焼結してなる各絶縁層の厚さは約0.5mmであり、この絶縁層を10層積層して基体の厚さ(高さ)を約5mmとした。また、各絶縁層は1辺の長さが約10mmの正方形状であり、基体全体は、底面が正方形状(1辺の長さが約10mm)で高さが約5mmの四角柱状であった。
【0059】
流路は、基体の上面および下面のそれぞれの中心部分に開口端を有したものとして形成し、それぞれの開口端を直径が約3mmの円形状とした。つまり、流路は、直径が約3mmで高さ(長さ)が約5mmの貫通孔からなるものとした。この貫通孔は、金型を用いた打ち抜き加工により各セラミックグリーンシートの中央部分に円形状に打ち抜き加工を施し、打ち抜いた部分が上下に連続するようにセラミックグリーンシートを積層することにより形成した。
【0060】
発熱体は、タングステンのメタライズ層からなる線状のパターンを、貫通孔からなる流路の長さ方向の中央部分に相当する位置において、基体の内部(絶縁層の層間)に流路を取り囲むように配置した。このメタライズ層は、タングステンの粉末に有機溶剤,バインダを添加して作製した金属ペーストを、基体を形成するセラミックグリーンシートのうち積層したときに中央部分に位置するものの表面に、前述した打ち抜き加工を施した部分を取り囲むように、線幅を約0.1mmとして、スクリーン印刷法で印刷することにより形成した。また、発熱体から流路の内面までの距離は約0.1mmであり、流路に対する発熱量は約10Wであった。
【0061】
また、発光素子としては発光ダイオードがセラミック製パッケージに収容されるとともに樹脂封止されてなるものを用い、受光素子としては周知のCCDイメージセンサを用いた。発光素子および受光素子のいずれも、流路のうち発熱体よりも上側の部分の内面に設けた凹状の部分に、流路内に凹凸を生じないように収容し、シリコーン樹脂を用いて固定した。なお、発光素子および受光素子は、発光部および受光部のそれぞれに直交する直線が互いに約120度の角度で交差するように配置した。
【0062】
また、発光部および受光部のそれぞれから基体の側面にかけて配線導体をタングステンのメタライズ層により形成し、この配線導体を、はんだを用いて外部の電気回路に接続し、外部の電気回路に配置した電源(整流器)から必要な電力を発光素子および受光素子に供給した。
【0063】
この微粉センサ装置を、試験用に微粉(粒子サイズが約30〜100μmのタルク粉塵等)を約50mg/mの高い割合で含ませた室内にセットした。また、比較用に、直方体状の筐体内の空間を仕切り板で仕切って気体の流路とし、この流路を挟む筐体の両側面に貫通孔を設けて気体の導入口および排出口としてなる、従来技術の微粉センサ装置を、本発明の微粉センサ装置と並べてセットした。なお、この従来技術の微粉センサ装置においては、筐体内には発光素子(発光ダイオード)および受光素子(フォトダイオード)がパッケージに収容された状態で配置されていた。これらの装置について、24時間経過後に、流路内の微粉の残留の状況を目視により確認した。
【0064】
その結果、従来技術の微粉センサ装置では筐体内の空間(流路)の底部に微粉の残留が目視で容易に確認できる程度に発生していたのに対し、本発明の微粉センサ装置ではこのような微粉の残留は見られず、本発明によれば微粉の流路内への残留が有効に抑制されることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a)は本発明の微粉センサ装置の実施の形態の一例を示す平面図(一部を透視した状態で示す図)であり、(b)はそのA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す微粉センサ装置の変形例を示す平面図(透視図)である。
【図3】(a)は本発明の微粉センサ装置の実施の形態の他の例を示す平面図(一部を透視した状態で示す図)であり、(b)はそのA−A線における断面図である。
【図4】(a)は本発明の微粉センサ装置の実施の形態の他の例を示す平面図(一部を透視した状態で示す図)であり、(b)はそのA−A線における断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・・基体
2・・・・・流路
3・・・・・発光素子
4・・・・・受光素子
5・・・・・凹状の部分
61・・・・・発熱体
62・・・・・冷却体
9・・・・・微粉センサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が移動する流路が基体に形成され、該基体に取着された発光素子から前記流路に光を照射し、前記流路からの反射光または透過光を前記基体に取着された受光素子で測定することにより前記気体に含まれる微粉を検知する微粉センサ装置であって、前記流路が前記基体を上下方向に貫通するように形成されているとともに、前記基体に前記流路を取り囲むように発熱体または冷却体が配置され、前記発光素子および前記受光素子が、発光部および受光部の表面が前記流路の内面と滑らかに連続するように配置されていることを特徴とする微粉センサ装置。
【請求項2】
前記基体に前記発熱体が配置されており、前記流路は、下端部分における横断面の面積が他の部分における横断面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の微粉センサ装置。
【請求項3】
前記基体に前記冷却体が配置されており、前記流路は、上端部分における横断面の面積が他の部分における横断面の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の微粉センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−30982(P2009−30982A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192002(P2007−192002)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】