説明

微粒子分散径の測定方法

【課題】液体状の媒体に分散した微粒子の形態を観察する方法を提供する。
【解決手段】SiO2 超微粒子が分散したグリースを−100℃に冷却して凝固させ、固形物とした。この固形物に剪断力を加えて破断し、その破断面をSEMにより観察した。この時、SEMのサンプルホルダーは、固形物が融解して液体状とならないように−80℃に制御した。このような方法により、グリースからの揮発成分の発生等の不都合が生じることがなく、グリースに分散したSiO2 超微粒子そのものの形態を観察することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粒子分散径の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子の形態の観察には、光学顕微鏡や、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)に代表される電子顕微鏡や、原子間力顕微鏡(AFM)が用いられている。特に、粒径が10μm以下であるような微粒子に関しては、分解能と操作性に優れたSEMによる観察が広く行われている。
【特許文献1】特開平10−292055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しがしながら、グリースのような液体状の材料中に分散した微粒子の形態を、真空系チャンバーを用いるSEMのような顕微鏡で観察することは、真空下で材料から揮発成分が発生するために困難であった。また、原子間力顕微鏡により大気圧下で微粒子を観察する場合においても、微粒子が液体状の材料で濡れているために、微粒子そのものの形態を観察することは困難であった。
そこで、本発明は前述のような従来技術が有する問題点を解決し、液体状の媒体に分散した微粒子の形態を観察する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の微粒子分散径の測定方法は、液体状の媒体に分散した微粒子の分散径を測定する方法であって、前記媒体を凝固させて破断し、その破断面を顕微鏡で観察することを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2の微粒子分散径の測定方法は、請求項1に記載の微粒子分散径の測定方法において、前記液体状の媒体がグリースであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の微粒子分散径の測定方法は、微粒子が分散した液体状の媒体を凝固させた上で観察するため、媒体からの揮発成分の発生等の不都合が生じることがなく、媒体に分散した微粒子そのものの形態を観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係る微粒子分散径の測定方法の実施の形態を詳細に説明する。微粒子が分散した液体状の媒体を所定の温度に冷却して凝固させ、固形物とした。この固形物に剪断力を加えて破断し、その破断面をSEMにより観察した。この時、SEMのサンプルホルダーは、固形物が融解して液体状とならないような温度に制御されている。なお、SEMのサンプルホルダーは、液体状の媒体の凝固点又は流動点よりも10℃以上低い温度に制御されていることがより好ましい。
【0007】
このような方法によれば、液体状の媒体が凝固しているため、真空下においても揮発成分の発生がほとんど無い。また、微粒子の媒体による濡れを抑えることができるため、媒体中に分散した微粒子そのものの形態を観察することができる。そして、一定の個数の微粒子について、その径を測定し統計処理を行うことにより、媒体に分散した微粒子の分散径やアスペクト比(長径/短径)を求めることができる。なお、破断面の表面状態を損なわない限り、AFM等のSEM以外の分析機器でも観察することができる。
【0008】
微粒子の種類は特に限定されるものではないが、例えば、SiO2 ,TiO2 ,Al2 3 ,ZnO等の金属酸化物や、SiC,TiC,WC等の金属炭化物や、Si3 4 ,TiN,AlN等の金属窒化物があげられる。このような微粒子の粒径としては、一次粒径で4nm以上10μm以下が好適である。
また、液体状の媒体の種類は特に限定されるものではないが、例えばグリース,潤滑油があげられる。グリースの種類は特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、増ちょう剤としてリチウム石けん,ナトリウム石けん,カルシウム石けん,バリウム石けん,ウレア化合物等を用いたグリースや、基油として鉱油,合成炭化水素油,エステル油,エーテル油等を用いたグリースがあげられる。
【0009】
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。一次粒径が13nmであるSiO2 超微粒子を、グリース(基油:合成炭化水素油、流動点−65℃)中に0.5質量%分散させた。Gatan UK社製のクライオトランスファALTO2500を用いて、このグリースを−100℃で凝固させ固形物とし、さらに剪断力を加えて破断した。
【0010】
SEM観察は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、サンプル温度−80℃にて行った。ALTO2500はFE−SEMに直結しているため、サンプルを大気中に晒すことなくSEM観察することができる。縦2μm×横2μmの正方形の領域に存在する全てのSiO2 超微粒子の直径を計測し、その平均値をシリカ分散径とした。その結果、グリース中のシリカ分散径(二次粒径)は25nmであった。なお、前記観察領域に存在する微粒子の個数が200個以下の場合は、観察領域を広げて、最低200個観察することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の媒体に分散した微粒子の分散径を測定する方法であって、前記媒体を凝固させて破断し、その破断面を顕微鏡で観察することを特徴とする微粒子分散径の測定方法。
【請求項2】
前記液体状の媒体がグリースであることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散径の測定方法。