説明

微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子の製造方法

【課題】工業的に単純な工程により微細に分割されたコンドロイチン硫酸ナトリウム粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の課題は、酸性ムコ多糖類の塩と水とアルコールを含む滴下用溶液をアルコール又はアルコール水溶液に滴下する工程、及び前記工程で得られた沈殿物を乾燥する工程を含むことを特徴とする微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子の製造方法によって解決できる。この方法により食品、医薬品又は化粧品の原料として操作性に優れた微細に分割された酸性ムコ多糖類塩の粒子を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子の製造方法に関する。本発明によれば、食品原料、化粧品原料又は医薬品原料として有用な微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
コンドロイチン硫酸ナトリウムは生体に存在する代表的な酸性ムコ多糖類の塩である。従来、このコンドロイチン硫酸ナトリウムの粒子又は粉末を製造する場合、原料の動物組織から、抽出、精製した後、抽出したコンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液にエタノールを加えることにより生じる沈殿物をスプレードライで粉末乾燥することにより製品を得る方法(特許文献1)が知られている。しかしながら、スプレードライによる方法は、高温で処理することにより、着色や不溶物が生じたり、高額な設備が必要となるなどの問題点がある。
【0003】
また、抽出したコンドロイチン硫酸ナトリウム溶液から当該沈殿物を調製する方法としては、上述のようにコンドロイチン硫酸ナトリウム溶液にエタノールを加えて沈殿物を得る方法(特許文献1、特許文献2)、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液に塩を添加することによって、塩析効果によりコンドロイチン硫酸ナトリウムの沈殿物を得る方法(特許文献3)が知られている。
【0004】
塩を加えて沈殿物を析出させる方法は、添加した塩を除くために、その後の工程で再結晶化、デカント、更に非常に効率の悪い、高濃度エタノール条件下での粉化再結晶を要するという問題点がある。
【0005】
コンドロイチン硫酸ナトリウムの水溶液にエタノールを加えて沈殿物を析出させる方法は、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液のpHが中性の場合、コンドロイチン硫酸ナトリウムが含水溶媒に対し溶解性を示すため、析出した沈殿物の粘性により沈殿物が凝集し、破砕困難な大きな塊状のものが形成されやすいという第1の欠点があった。また逆に、ろ紙などのろ過材の目詰りを生じさせる微粉末も生成しやすいという第2の欠点もあり、析出した沈殿物がろ過回収できないなどの工業生産上の問題が生じる。また、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液のpHを5以下にし、コンドロイチン硫酸ナトリウムが有するカルボキシル基や硫酸基の一部をフリー型にすることによって、溶媒を添加した際に沈殿を生じやすくさせた場合には、得られたコンドロイチン硫酸ナトリウムはpHが5以下であり、そのままでは医薬品又は化粧品の原料基準に合致しないため、再度精製操作を要するという問題点がある。
【0006】
高濃度エタノールを加えて沈殿物を析出させた場合に、系中のエタノール濃度が90〜95質量%であると、析出したコンドロイチン硫酸ナトリウムの固形分中の水分が除去され、粉末化される。例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液中のコンドロイチン硫酸ナトリウム濃度が20質量%の水溶液に、エタノールの最終濃度が95質量%となるようにエタノールを加えると、コンドロイチン硫酸ナトリウムの最終濃度は1質量%にすぎない。このように、これまでのエタノールなどのアルコール溶媒による沈殿処理方法では、溶媒沈殿、沈殿物取得を数回行うために操作が煩雑で、かつ高濃度のエタノール濃度を要求され、使用するエタノール量も多いため、製造効率が悪く、製造コストが高くなるという問題点を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−268004号公報
【特許文献2】特開2001−247602号公報
【特許文献3】特開2004−189825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、化粧品原料又は医薬品原料として有用な微細に分割された酸性ムコ多糖類塩の粒子を工業的に効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するべく検討を重ねた結果、酸性ムコ多糖類の塩と水とアルコールとを含む滴下用溶液をアルコール又はアルコール水溶液に滴下することで微細に分割されたコンドロイチン硫酸ナトリウム沈殿物を得た後に乾燥することにより、微細に分割された酸性ムコ多糖類塩の粒子を取得する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、酸性ムコ多糖類の塩と水とアルコールとを含む滴下用溶液をアルコール又はアルコール水溶液に滴下する工程、及び前記工程で得られた酸性ムコ多糖類塩の沈殿物を乾燥する工程を含むことを特徴とする、微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子の製造方法に関する。
本発明による製造方法の好ましい態様においては、前記滴下工程が、酸性ムコ多糖類塩と水とエタノールとを含む滴下用溶液をエタノール又はエタノール水溶液に滴下する工程である。
本発明による製造方法の別の好ましい態様においては、前記酸性ムコ多糖類塩が、コンドロイチン硫酸ナトリウムであり、特には、前記滴下用溶液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度が、15〜35質量%であり、前記滴下用溶液中のエタノールの濃度が20〜35質量%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプレードライ法に用いるような特殊な装置を必要とせずに、簡便な装置を用い工業的に単純な工程により、微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子を製造することができる。また、通常のエタノール沈殿による方法と比較しても、使用するエタノール量を減少させることができ、製造コストを削減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明方法によって製造される微細分割酸性ムコ多糖類の塩は、生体内に存在する複雑な多糖類である。代表的な酸性ムコ多糖類の塩としては、硝子体、皮膚、ニワトリのトサカなどに多く含まれるヒアルロン酸ナトリウム、ウシの角膜に含まれるケラト硫酸の塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム、又はヘパリンなどが挙げられる。以下の説明においては、酸性ムコ多糖類の塩としてコンドロイチン硫酸ナトリウムを例示して説明するが、前記の酸性ムコ多糖類の塩は、アルコール、例えば、エタノールにより沈殿することから、本願発明の方法により製造することが可能である。
【0012】
本発明方法において、出発材料として使用することのできるコンドロイチン硫酸ナトリウムには動物、魚類等の由来のものが含まれる。またコンドロイチン硫酸ナトリウムの硫酸基の位置に基づくA、B、Cなどのタイプや分子量に関係なく、コンドロイチン硫酸ナトリウムであればいかなるものも用いることができ、市販されているものでもよい。コンドロイチン硫酸ナトリウムの供給源としては、例えば、鮭、鱒、鮫又は豚の軟骨、魚類のうろこなどから単離、抽出したものを挙げることができる。これらの生物由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムの単離、抽出及び出発材料として用いるコンドロイチン硫酸ナトリウムを生物材料から調製する方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。本発明の製造方法に使用できるアルコール及び水を含む溶液に溶解される状態のコンドロイチン硫酸ナトリウムであれば、限定されない。
【0013】
本発明の製造方法のコンドロイチン硫酸ナトリウムと水とアルコールとを含む滴下用溶液(以下、「コンドロイチン硫酸ナトリウム・アルコール系滴下用水溶液」と称することがある)に使用するアルコールは、水と混合することにより均一なアルコール水溶液となるものであれば限定されないが、炭素数1〜4の低級アルコールが好ましく、特にエタノール、又はプロパノールが好ましい。また低級アルコール以外のアルコールとしては、ポリエチレングリコールを使用することができる。また同様に、コンドロイチン硫酸ナトリウム・アルコール系滴下用水溶液を滴下されるアルコール又はアルコール水溶液(以下、「析出用アルコール又は析出用アルコール水溶液」と称することがある)に使用されるアルコールも特に限定されないが、炭素数1〜4の低級アルコールが好ましく、特にエタノール、又はプロパノールが好ましい。また低級アルコール以外のアルコールとしては、ポリエチレングリコールを使用することができる。コンドロイチン硫酸ナトリウム・アルコール系滴下用水溶液に用いるアルコール及び析出用アルコール又は析出用アルコール水溶液に使用されるアルコールは、同じアルコールでも異なるアルコールでもよいが、好ましくは同じアルコールである。以下の説明においては、エタノールを例示して説明するが、本発明に使用する前記のアルコールは、エタノールと同様に酸性ムコ多糖類の塩、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウムを沈殿させることができることは明らかである。
【0014】
コンドロイチン硫酸ナトリウムと水とエタノールを含む滴下用溶液(以下、「コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液」と称することがある)は、溶液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムが析出しないか、又は流動可能なスラリーとして取り扱うことができる溶液であることが好ましい。
【0015】
コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液におけるコンドロイチン硫酸ナトリウム濃度とエタノール濃度は、エタノール水溶液に対するコンドロイチン硫酸ナトリウムの溶解度が目安となる。コンドロイチン硫酸ナトリウムはエタノール水溶液に対してある程度の溶解性を示すが、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムは、飽和前後の濃度で、析出しやすい状態、又はわずかに析出している状態がよく、このような状態のコンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液を析出用エタノールに滴下すると、瞬時に固形分が析出し、ろ過性に支障をきたす微紛の生成や粘性のある固形分が塊状になることを防ぐことができる。
【0016】
コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液におけるコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度は15〜35質量%が好ましい。なお、本発明において質量%とはW/W%を意味する。コンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度が15質量%未満では、微粉末が生じやすいため沈殿物のろ過回収に長時間を要し、また、容積効率が低いため生産効率が悪い。コンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度が35質量%を超えると、粘性が高く、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液の滴下の工程における操作性が悪い。
【0017】
また、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液におけるエタノールの濃度は、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液におけるコンドロイチン硫酸ナトリウムの飽和前後になるような濃度が好ましい。例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムが15質量%のとき、エタノール濃度は35%前後が好ましく、コンドロイチン硫酸ナトリウムが35質量%のとき、エタノール濃度は20%前後が好ましい。
【0018】
本発明の製造方法に使用するコンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液のコンドロイチン硫酸ナトリウムと水とエタノールとの比率は、コンドロイチン硫酸ナトリウムの飽和前後の溶解度を示す比率となるものが好ましいが、コンドロイチン硫酸ナトリウムが飽和状態に達していない比率のコンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液を用いることも可能である。コンドロイチン硫酸ナトリウムを100重量部とした場合に、好ましくは、水は130〜330重量部であり、エタノールは60〜230重量部であり、より好ましくは、水は280〜320重量部であり、エタノールは120〜220重量部である。
【0019】
コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液を滴下される析出用エタノールは、実質的に水を含まないエタノールが好ましいが、少量の水を含んだエタノール水溶液を析出用エタノール水溶液として用いることも可能である。析出用エタノール水溶液のエタノール濃度は、70%以上の濃度であれば、本発明の製造方法に使用することが可能であるが、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のエタノール水溶液を用いる。70%未満のエタノール水溶液を用いると大量の析出用エタノール水溶液が必要であり、製造コストが高くなるからである。
【0020】
また、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液を滴下する際の析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液の温度は特に限定されないが、高温で滴下すると、滴下物が容器内に付着固化したり、滴下物どうしが吸着するなど、操作性が悪化するため、室温以下が好ましい。析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液の温度範囲は−20℃〜25℃が好ましく、より好ましくは0℃〜15℃、最も好ましくは0℃〜10℃である。
【0021】
コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液の析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液への滴下方法は、特に限定されるものではない。そのまま流下する方法でもよく、噴霧装置を用いてもよい。手動による滴下方法(例えば、駒込ピペットによる滴下)では、生じた沈殿物の粒子の形状、大きさを均一に制御できない場合がありえるが、自動滴下装置、噴霧装置など機械による滴下方法では、沈殿物の粒子の形状、大きさを均一化することができる。更に、滴下する際に、滴下口の口径と滴下速度を調節し、液滴状態で、緩やかに攪拌しているエタノールに添加することにより、球形に形成されたコンドロイチン硫酸ナトリウムの粒状沈殿物を得ることができる。
【0022】
また、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液は、析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液を撹拌しながら滴下してもよいし、撹拌を行わずに滴下してもよいが、撹拌を行う方が好ましい。撹拌によりコンドロイチン硫酸ナトリウムの沈殿物に含まれる水分を析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液に分散させ、水分の除去効率が向上する。撹拌の方法は特に限定されないが、例えば、スターラーなどで回転させることによって撹拌可能である。
【0023】
尚、本明細書において粒子又は沈殿物に関して「微細に分割された」又は「微細分割」粒子又は沈殿物とは、粉末から粒子をふくむ意味である。本発明方法により製造することのできる「微細に分割された」又は「微細分割」粒子には、mmオーダー以下の粒子が含まれる。好ましくは、mmオーダーからnmオーダーの粒子が含まれ、より好ましくはmmオーダーからμmオーダーの粒子が含まれる。
【0024】
コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液を、攪拌している析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液に滴下していくことで、コンドロイチン硫酸ナトリウムの固形分が析出し、固形分に含まれる水分が析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液中に除去されるとともに、攪拌による物理的な衝撃で、析出した固形分が破砕され、コンドロイチン硫酸ナトリウムの微細分割沈殿物を得ることができる。前記微細分割沈殿物とは、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系水溶液のコンドロイチン硫酸ナトリウムが析出用エタノール又は析出用エタノール水溶液に滴下されることで、脱水され、固体の状態で沈殿物として粉末化又は粒子状になったものをいう。その形状は、コンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液のコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度、滴下方法及び/又は撹拌状態などにより異なる。特にコンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系滴下用水溶液を滴下する滴下口の口径及び滴下速度を調整し、滴下するエタノール又はエタノール水溶液の撹拌速度を調整することによって、様々な粒径を有する均一な微細に分割されたコンドロイチン硫酸ナトリウム沈殿物を得ることが可能である。
【0025】
本発明の製造方法は、(1)酸性ムコ多糖類の塩と水とアルコールとを含む滴下用溶液をアルコール又はアルコール水溶液に滴下する工程(以下、「滴下工程」と称することがある)及び(2)前記工程で得られた酸性ムコ多糖類の塩の沈殿物を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」と称することがある)を含むことを特徴とする。前記滴下工程で得られた沈殿物をそのまま乾燥してもよいが、効率よく乾燥させるために、沈殿物を水溶液から分離し回収する工程(以下、「回収工程」と称することがある)を含んでもよい。
【0026】
回収工程におけるコンドロイチン硫酸ナトリウムの微細分割沈殿物の回収方法は特に限定されるものではないが、通常のろ過操作により容易に回収することができる。また、ろ過操作以外にも、遠心分離、又は沈殿を含んだ溶液を静置し上清を除くことによっても沈殿を回収することも可能である。
【0027】
乾燥工程における回収したコンドロイチン硫酸ナトリウムの微細分割沈殿物の乾燥方法は特に限定されるものではない。例えば、エバポレーターを用いて、減圧乾燥することにより、乾燥した、微細分割コンドロイチン硫酸ナトリウム粒子を容易に得ることができる。また、滅圧乾燥以外にも、凍結乾燥などの乾燥方法が利用できる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例及び比較例を示し本発明の具体的な説明を行うが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
《実施例1》
本実施例1では、粉末状コンドロイチン硫酸ナトリウムを製造した。
具体的には、鮭由来コンドロイチン硫酸ナトリウム10g(日本バリアフリー製)を精製水190gに溶解し、コンドロイチン硫酸ナトリウム5質量%の水溶液を作成した。ろ過助剤〔昭和化学工業製、ラジオライトファインフロー(登録商標)〕3gを加えて、液温を80℃にした。ろ過器(アドバンテック東洋製、KST47)にろ紙(アドバンテック東洋製、No.5C)3枚とメンブランフィルター(アドバンテック東洋製、セルロース混合エステル0.45μm)1枚とをセットし、2kg/cm圧でろ過した。これにより、不純物を除去し、脱色した無色透明のろ液を得た。そしてコンドロイチン硫酸ナトリウム濃度が25質量%になるまで、ろ液を減圧濃縮し、濃縮液を得た。
【0030】
こうして得られた濃縮液37gにエタノール16gを加えて、コンドロイチン硫酸ナトリウム(17.5質量%)と水とエタノール(30質量%)とからなるコンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系水溶液53gを、駒込ピペットを用い、攪拌している5℃に冷却したエタノール132g中に約15分間で滴下し、粉末状沈殿物を得た。ろ過により回収した粉末状沈殿物粉をナスフラスコに入れ、エバポレーターを用いて60℃の温水浴で減圧乾燥し、白色粉末状のコンドロイチン硫酸ナトリウム8.5gを得た。得られた形状は、直径3〜4mmの球形粒子から250μm以下の微粉末までを含んでいたが、破砕困難な大きな塊状の粒子は形成されず、かつ、ろ過性も良好であった。
【0031】
《実施例2》
本実施例2では、粒状コンドロイチン硫酸ナトリウムを製造した。
鮭由来コンドロイチン硫酸ナトリウム25g(日本バリアフリー製)を精製水475gに溶解し、コンドロイチン硫酸ナトリウム5質量%の水溶液を作成した。ろ過助剤〔昭和化学工業製、ラジオライトファインフロー(登録商標)〕8gを加えて、液温を80℃にした。ろ過器(アドバンテック東洋製、KST47)にろ紙(アドバンテック東洋製、No.5C)3枚とメンブランフィルター(アドバンテック東洋製、セルロース混合エステル0.45μm)1枚とをセットし、2kg/cm圧でろ過した。これにより、不純物を除去し、脱色した無色透明のろ液を得た。コンドロイチン硫酸ナトリウム濃度が25質量%になるまで、ろ液を減圧濃縮し、濃縮液を得た。
【0032】
こうして得られた濃縮液93gにエタノール40gを加えて、コンドロイチン硫酸ナトリウム(17.5質量%)と水とエタノール(30質量%)とからなるコンドロイチン硫酸ナトリウム・エタノール系水溶液133gを、内径が約0.5mmの滴下口を21個セットした液滴用ノズル(200μLディスポーザブルチップ21本が直径60mmのゴム栓に10mm間隔で接続)を用い、圧力0.02MPa、滴下速度21g/分で、緩やかに攪拌している5℃に冷却したエタノール332g中に液滴として滴下し、球状に形成された粒状沈殿物を得た。ろ過により回収した粒状沈殿物をナスフラスコに入れ、エバポレーターを用いて60℃の温水浴で減圧乾燥し、粒径の整ったコンドロイチン硫酸ナトリウムの粒状物(直径が約2mm)22gを得た。
【0033】
《比較例1》
本比較例では、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液にエタノールを添加した場合の結果を示す。
鮭由来コンドロイチン硫酸ナトリウム80g(日本バリアフリー製)を精製水3.2kgに溶解し、コンドロイチン硫酸ナトリウム2.4質量%の水溶液を作成した。ろ過助剤〔昭和化学工業製、ラジオライトファインフロー(登録商標)〕20gを加えて、液温を80℃にした。ろ過器(アドバンテック東洋製、KST142)にろ紙(アドバンテック東洋製、No.5C)3枚とメンブランフィルター(アドバンテック東洋製、セルロース混合エステル0.45μm)1枚とをセットし、2kg/cm圧でろ過した。これにより、不純物を除去し脱色した無色透明のろ液を得た。そしてコンドロイチン硫酸ナトリウム濃度が13質量%になるまで、ろ液を減圧濃縮した。
【0034】
コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液の濃縮液587gにエタノールを滴下した。エタノールを約20分間で約700mL添加したところで、コンドロイチン硫酸ナトリウムが析出し、白濁した状態となった。エタノールを約30分間で約2900L添加した結果、更に固形分が析出し、コンドロイチン硫酸ナトリウムが凝集し、直径約10cmの破砕困難な塊状のものが形成された。また、滴下終了した溶液は白濁した状態であり、ろ過回収不能であった。
【0035】
《比較例2》
本比較例では、エタノールにコンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液を滴下した場合の結果を示す。
鮭由来コンドロイチン硫酸ナトリウム10g(日本バリアフリー製)を精製水190gに溶解後、実施例1と同様の方法にて、ろ過及び濃縮を行い、コンドロイチン硫酸ナトリウム20質量%を含む水溶液を作成した。
【0036】
コンドロイチン硫酸ナトリウム20質量%を含む水溶液46gを、駒込ピペットを用い、攪拌している5℃に冷却したエタノール132g中に滴下した結果、フイルム状の沈殿物が析出した。フイルム状の沈殿物を実施例1と同様に乾燥したが、弾力があり、破砕不能であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の製造方法により製造された微細分割コンドロイチン硫酸ナトリウム粒子は、食品原料、医薬品原料又は化粧品原料として操作性のよい粉末状又は粒子状をしており、それらの原材料として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ムコ多糖類の塩と水とアルコールとを含む滴下用溶液をアルコール又はアルコール水溶液に滴下する工程、及び前記工程で得られた酸性ムコ多糖類塩の沈殿物を乾燥する工程を含むことを特徴とする、微細に分割された酸性ムコ多糖類塩粒子の製造方法。
【請求項2】
前記滴下工程が、酸性ムコ多糖類塩と水とエタノールとを含む滴下用溶液をエタノール又はエタノール水溶液に滴下する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記酸性ムコ多糖類塩が、コンドロイチン硫酸ナトリウムである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記滴下用溶液中のコンドロイチン硫酸ナトリウムの濃度が、15〜35質量%である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記滴下用溶液中のエタノールの濃度が20〜35質量%である、請求項3又は4に記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−88313(P2008−88313A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271439(P2006−271439)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000246398)有機合成薬品工業株式会社 (12)
【出願人】(501195223)株式会社日本バリアフリー (26)
【Fターム(参考)】