微細パターンの形成方法
【課題】パターン形状の細りやばらつきを少なくした微細パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】モールドを押し付けて形成した転写層パターン3を形成し、転写層パターン3に被パターン形成膜4を形成し、その後、転写層パターン3を除去して、被パターン形成膜4形成時の会合界面(点線部)からエッチングを進行させて、被パターン形成膜4をエッチングして最終パターン7を形成する。
【解決手段】モールドを押し付けて形成した転写層パターン3を形成し、転写層パターン3に被パターン形成膜4を形成し、その後、転写層パターン3を除去して、被パターン形成膜4形成時の会合界面(点線部)からエッチングを進行させて、被パターン形成膜4をエッチングして最終パターン7を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの形成方法に関し、詳細には、ナノインプリント技術を利用した微細パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンの細線を形成する微細パターンの形成方法の一つにナノインプリントがある。ナノインプリントは、基板上に形成されている被エッチング膜上に熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂を塗布し、この樹脂膜に、石英やシリコンウエハーなどに形成したナノパターンを持つモールド(スタンパといわれることもある)を押し付けて、高圧で加圧することによりモールド上のパターンを樹脂膜上に転写する。その後モールドを外して、できあがった樹脂パターンをアッシングなどして不要な残膜を取り去り、被エッチング膜上のマスクとする。その後、このマスクによりドライエッチング等で被エッチング膜をエッチングしてパターンを形成する(熱可塑性樹脂を用いたものはたとえば特許文献1、光硬化性樹脂を用いたものはたとえば特許文献2)。
【0003】
また、数十ナノメートルの線幅となるような微細パターの形成方法として、ナノインプリントと金属膜形成技術を利用したものがある。この技術によれば、被エッチング膜上に凹凸の樹脂パターンを形成した後、このパターンの凸部上に金属膜を形成させる際に、隣接する凸部上で金属同士がくっついてパターンの凹部内部にまで金属が入り込まない構造ができあがるので、その状態から金属膜全面をエッチングすることで、隣接する凸部上の金属同士が会合する部分が先にエッチングされて、凸部上にのみ金属膜が残り、凹凸パターンの凹部は貫通したパターンができる。その後はこれをマスクとして被エッチング膜をパターニングしている。
【特許文献1】特開2008−233552号公報の段落0036〜0040
【特許文献2】特開2000−194142号公報の段落0015〜0020
【特許文献3】特開2008−134383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したインプリントの技術(特許文献1および2)では、マスクとする樹脂パターンを形成した時に残膜ができ、これを除去して初めてマスクパターンとなる。このため、この残膜を確実に除去するために、過度のアッシング処理を施さなければならず、パターンが部分的に細ったり、形状がばらつくなどといった問題が起こる。これは、残膜が厚い部分を確実に除去するためにその部分を除去するために適切なエッチング量とする必要があり、そうすると、残膜の厚い部分はジャストのエッチング量となるが、残膜の薄い部分では先にその残膜が失われるので、パターンとなる部分まで過剰にエッチングされてしまい、パターン幅が細ったり、ばらついたりしてしまうのである。
【0005】
また、パターン凸部に金属膜を残す技術(特許文献3)でも、形成された金属膜の厚みや、金属膜をエッチングする際にエッチングのばらつきがあり、どうしてもできあがったマスクパターンそのものにばらつきが生じ、最終的にできあがるパターンもばらついてしまうおそれがある。
【0006】
このようなパターンの細りやばらつきは、特に微細パターンの形成面積が広い場合に発生しやすい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、パターン形状の細りやばらつきを少なくした微細パターンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための本発明は、転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成する段階と、前記転写層パターンを構成する前記凹凸面に被パターン形成膜を形成する段階と、前記被パターン形成膜の前記転写層パターンが存在しない側に基板を貼付ける段階と、前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、前記被パターン形成膜を所望するパターンとなるようにエッチングして微細パターンを形成する段階と、を有することを特徴とする微細パターンの形成方法である。
【0009】
このようにモールドを押し付けて形成した転写層パターンをマスクとして被パターン形成膜をエッチングするのではなく、この転写層パターン上から被パターン形成膜を形成することで、転写層パターンのパターンを被パターン形成膜に写し、転写層パターンを除去した後、写し取ったパターンとなるように被パターン形成膜をパターニングすることとしたので、転写層パターンの形成時には、残膜の除去工程などは不要となり、最終パターン的に得られるパターンの予期しない細りやばらつきを少なくすることができる。
【0010】
また上記目的を解決するための本発明は、転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成し、当該転写層パターンの凸部面上にのみ金属膜を形成して、転写層パターン基板を用意する段階と、基板上に被パターン形成膜を形成し、当該被パターン形成膜上に樹脂膜を形成したパターン形成基板を用意する段階と、前記転写層パターン基板の金属膜と前記パターン形成基板の樹脂膜が密着するように貼り合わせる段階と、前記転写層パターン基板の前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去したことにより、前記パターン形成基板の樹脂膜上に残った金属膜をマスクとして前記被パターン形成膜をエッチングする段階と、を有することを特徴とする微細パターンの形成方法である。
【0011】
このようにモールドを押し付けて形成した転写層パターンの凸部面上に金属膜を有する転写層パターン基板と、被パターン形成膜上に樹脂膜を形成したパターン形成基板を用意して、これらを張り合わせたることで被パターン形成膜上の樹脂膜に金属膜を写し取って、その金属膜をマスクとして被パターン形成膜をエッチングすることとしたので、転写層パターンの形成時には残膜の除去工程などは不要となり、かつ、金属膜をマスクとしてエッチングしているので、より最終パターンのばらつきが少なく、得られるパターンの予期しない細りやばらつきを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターン形状の細りやばらつきを少なくすることができる。したがって、パターン形成面積が広くなっても高精細な微細パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照して説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1〜図6は、実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【0015】
まず、図1に示すように、通常のナノインプリントと同様にして転写層ベース基材1に転写層樹脂2を塗布する。ここで転写層樹脂2は、光ナノインプリント法を使用する場合には、光硬化性樹脂、具体的にはUV硬化性樹脂によるネガレジストを使用する。一方、熱ナノインプリント法を使用する場合は、熱可塑性樹脂、具体的にはたとえばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を使用する。本実施形態ではどちらの方法を用いてもよい。
【0016】
塗布した転写層樹脂2に、パターンが形成されているモールド11を押し付け、硬化させる。光ナノインプリント法の場合はUV硬化性樹脂に紫外線を当てて硬化させて凹凸の転写層パターンを定着される。熱ナノインプリント法では、転写層ベース基材1ごと転写層樹脂2を加熱してモールド11を押し付けて転写層パターンを形成し、その後冷却(常温にする)して硬化させる。
【0017】
モールド11の押し付け圧力は、本実施形態1では従来のナノインプリント技術のように高圧(例えば15MPaなど)にする必要はない。本実施形態1では、後述する工程のように、このナノインプリントで形成したパターンをマスクとして使用しない。そのため、パターン凹部の残膜除去が不要であるので、残膜を薄くするために高圧で押し付ける必要がないのである。
【0018】
なお、転写層樹脂2の厚さは特に限定されないが、あまり厚いと、後述する除去工程において時間が長くなるので、工程のスループットや形成のしやすさを考慮して適宜、決定する。なお、転写層パターンの好ましい形状は後述する。
【0019】
ここで転写層ベース基材1は、たとえば、ガラス、シリコンウエハー、ポリエチレンテレフタラート(PET)の表面にSiO2を成膜したものなどが使用されうるが、その上に形成した転写層樹脂2が硬化した後、強固に密着しないものが好ましい。これは後述する工程で、転写層ベース基材1を硬化後の光硬化性樹脂から剥がしやすくするためである。
【0020】
このため、これら材料表面が表面処理など施されているものが好適である。この転写層ベース基材1の厚さは特に限定されない。
【0021】
モールド材は、たとえば、石英、シリコンウエハー、ニッケル電鋳モールドなどである。なお、モールド材には、パターン形成後の光硬化性樹脂とモールド11との剥離性を良くするために、モールド11の型面には離型処理を施したり、剥離材を塗布したりしている。
【0022】
次に、図2に示すように、モールド11を取る。これにより、転写層ベース基材1上に凹凸からなる転写層パターン3ができあがる(なお図示では凹部31、凸部35である)。このとき、凹部31の底には、残膜32があるが除去する必要はない。
【0023】
次に、図3に示すように、転写層パターン3上に被パターン形成膜4を形成する。これにより、転写層パターン3のパターンが直接写し取られた被パターン形成膜4ができることになる。
【0024】
この被パターン形成膜4はたとえば金属膜である。この被パターン形成膜4の形成にはスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などを利用することができる。この被パターン形成膜4は、後述するように最終的なパターンに形成される膜(層)であるとなるものである。
【0025】
このとき、転写層パターン3上に形成される被パターン形成膜4は、転写層パターン3上の凸部35の頂上に最初に付着して成膜が進行してゆく。このため、隣接する凸部35頂上から始まった被パターン形成膜4の成長が凸部35同士の間で会合して、図示するように、凹部31の内部にまで入り込まない。
【0026】
このような被パターン形成膜4の形態を得るためには、凹部31の開口の大きさを、中まで金属が入らない程度に制御する必要がある。そのためには、転写層パターン3を下記のような条件で形成することが好ましい。まず、図2に示したように、凹部31の開口幅wと深さtのアスペクト比がt/wが1以上、かつ凹部31の開口幅wが40nmから160nmであることが好ましい。なお、開口が40nm未満の場合、実質的に凸部35同士の分離が実質的にうまく行かず、隣接する凸部からの成長とならないので好ましくない。一方、60nmを超えて広くしてしまうと、凹部内にまで金属粒子が入り込み、図2に示したようなパターンとならないので好ましくない。
【0027】
そして、このようなナノオーダーの開口の大きさとすることで、金属粒子径よりも開口が大きくても金属粒子が凹部31の底部にほとんど侵入しないということが起こる。また、アスペクト比を1以上、好ましくは1.5以上とすることで、確実に凹部31の中に金属が入らずに隣接した凸部35上で成長した金属が会合した形態となる。なお、凸部35の頂上の幅wtは特に限定されず、所望する最終パターンの大きさによって決めれば良い。たとえば最終パターン形成時の細りを考慮して、最終パターンよりも数%程度太くするのが一般的であるが、これはパターン形状により適宜選択すればよいものである。
【0028】
被パターン形成膜4とする金属膜は、たとえばAl、Tiなどである。その他にも、半導体装置で使用されている金属配線として使われている金属であれば使用可能であり特に限定されない。また、金属以外では、たとえばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを形成してもよい。形成方法としては、CVD法やPVD法などが挙げられるが、ステップカバレージのよくなう方法が好ましい。なぜなら、上述したように被パターン形成膜4は隣接する凸部35から成長して、両者の間で会合した界面を形成する必要があるため、ステプカバレージのよい方法を取ってしまうと、この会合界面ができないからである。具体的には、たとえば、SiH4を比較的低温(たとえば200〜400℃程度)で進行する常温常圧CVD法などが使用されうる。
【0029】
次に、図4に示すように、被パターン形成膜4の上、すなわち、転写層パターン3が存在しない側に基板6を接着剤層5により貼付ける。
【0030】
ここで、基板6は、たとえばガラス、シリコンウエハー、PET表面にSiO2を成膜したもの、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、石英、サファイヤなどが使用されうる。ここで基板6は最終製品となるものであるからその製品に合わせた素材のものであって、金属との接着性(厳密には接着剤で接着可能な素材)が良好なものを使用することになる。
【0031】
接着剤層5は、UV硬化型接着剤、UV硬化樹脂、熱硬化型接着剤などを挙げることができるが、このほかにも、被パターン形成膜4と基板6とを貼り合わせたときに十分な接着強度が得られるものであれば得られるものであればどのようなものでも差し支えない。ただし、後述する被パターン形成膜4をエッチングする工程でウェットエッチングを用いる場合にはエッチング液に対する耐性が必要である。
【0032】
次に、図5に示すように、転写層ベース基材1と転写層パターン3を除去する。これにはまず、転写層ベース基材1を転写層パターン3から剥がし、その後、転写層パターン3を酸素プラズマアッシングなどのプラズマ処理により除去し、被パターン形成膜4の表面を露出させる。
【0033】
なお、接着剤層5と転写層パターン3が異なる素材を使用した場合は、転写層パターン3を、接着剤層5が溶解しない溶媒によって溶解(ウェットエッチング)して除去するようにしてもよい。
【0034】
次に、図6に示すように、被パターン形成膜4をエッチングして、最終パターン7を形成する。なお、図6は、図1〜5に対して上下を逆にして示した。
【0035】
このときのエッチングは、等方性のドライエッチングやウェットエッチングを使用することができる。エッチング量の制御は時間により行う。ここで被パターン形成膜4は、上述したように、転写層パターン3の凸部35において会合した部分の界面(図4および55の点線部分)は、その他の部分に比べて密度が低いため、エッチングされやすい。このため、等方性のドライエッチングやウェットエッチングを行うことで、界面部分からエッチ具が進行して、図6に示した最終パターン7が得られる。エッチング量の制御は、おおむね界面部分で基板6が露出して、残った最終パターン7が所望する線幅となるようにすればよい。
【0036】
ドライエッチング、ウェットエッチングともに、通常の半導体製造技術を使用することができる。たとえば、Alのエッチングの場合はドライエッチングガスとしてCl2/BCl3、CF4などを用いたCDEを使用することができる。また、ウェットエッチングの場合は、エッチング液はpH12程度のアルカリ水溶液を使用することになる。
【0037】
以上説明した本実施形態1によれば、ナノインプリントにおける光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の残膜除去工程を行うことなく、ナノメートルオーダーのパターンを形成することができる。特に残膜除去が不要であるため、残膜が厚くなってもまたばらついていてもよいので、パターン形成面積が広い場合にいっそうの効果があり広い面積の全体にわたり高精細な微細パターンを形成することができる。
【0038】
また、残膜除去工程が不要となるだけでなく、光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂によるパターンをエッチングマスクとして使用しなくてもよくなるので、そもそもマスク形状の劣化ということ自体がなくなり、これまでより均一な最終パターン7を得ることができる。また、本実施形態1では、残膜除去工程が不要となることで、そもそもこの残膜自体がどのような厚さであっても良いことになるので、モールド11を押し付ける際に高圧を必要とせず、工程タクトタイムの短縮や装置の簡略化が可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態1では、この残膜除去工程が不要となることで、仮に光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を塗布した際またはその後モールドを押し付けるまでに、異物の混入があった場合でも、そのような異物によるパターン変化などの影響を受けることがない。ナノインプリント法によるパターン形成は当然のことながらクリーンルーム内で実施されるが、クリーンルームといえどもごく微細な異物、たとえば1μm前後の異物が混入する可能性は皆無ではない。一方で、作成するパターンはナノオーダー(すなわち1μmより小さい)のパターンであるため、1μm前後の異物であっても、これが混入してしまうと、光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂がその部分だけ厚くなる。ナノインプリント法による残膜の厚さは30nm程度以下とすることが好ましいとされているが、1μm前後の異物であっても、それが混入した場合、従来のナノインプリントではいかに高圧をかけてもこのような異物を圧縮して残膜厚30nm程度以下にすることができない。したがって、異物が混入した場合には残膜を除去することができないというそれがある。この点本実施形態では、そもそも残膜除去を必要としないため、仮に異物が混入して残膜厚30nmを超えていたとしても、転写層パターン3の凸部35が分離していて、その上に形成する被パターン形成膜4に会合界面ができさえすれば、このような異物の混入は無視できることとなる。したがって本実施形態1は、このような異物の混入に対する耐性が、従来のナノイプリント工程よりも高い工程ということができる。このため、本実施形態は従来のナノイプリント工程よりも工程コストを下げることが可能となる。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2は、転写層パターン形成後、その凸部35の頂上面にのみ、Niを形成したものである。
【0041】
図7〜13は実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【0042】
まず、前述した実施形態1において図1および2のようにナノインプリントによって転写層パターン3を形成する。
【0043】
次に、図7に示すように、転写層パターン3の凸部32の頂上面にのみ、Ni膜21を成膜する。このNi膜21の形成は、斜め蒸着を行うことで容易に、転写層パターン3の凸部32の頂上面にのみNi膜21を形成することができる。
【0044】
斜め蒸着は、図7に示したように、蒸着されるNi粒子の流れ(図示点線矢印)に対して転写層パターン3の凸部32の頂上面の面方向(図示点線)が30度以下(平行な流れとなる場合を含む)となるようにすれば、転写層パターン3の凹部31内にNi粒子が入り込むことなく、頂上面にのみ形成することができる。
【0045】
図11は、斜め蒸着法の例を説明するための装置構成例を示す概略図である。
【0046】
使用する蒸着装置自体は通常の真空蒸着装置を用いることができる。そして、この装置の真空チャンバ50内に、転写層パターン形成後の転写層ベース基材1を載置する。このとき転写層ベース基材1を、蒸着源51となる金属を入れたカップ(蒸着源51)に対して垂直に置く。これで、蒸着源51から蒸発した金属粒子は、転写層パターン3の凸部35の頂上面の面方向に対して、ほぼ平行に流れ、その一部が凸部35の頂上面に付着する。
【0047】
形成するNi膜21の厚さは、ごく薄くてよく、たとえば10〜30nmもあれば十分である。これは、後述する被パターン形成膜4のエッチングにおいて、ニッケルは非常にエッチングされにくいため、ごく薄くても十分にマスクとして機能するからである。また、あまり厚く形成しようとした場合、いかに斜め蒸着であっても、凹部31内にNi粒子が入り込んで、Ni膜21パターンが太くなってしまうおそれがあるので好ましくない。したがって、Ni膜21の厚さは、転写層パターン3の側壁に付着しない程度とするのがよい。
【0048】
Ni膜21の形成後は、図8に示すように、最終パターン7を形成する被パターン形成膜4を、転写層パターン3のNi膜21が形成された上から成膜する。これにより、実施形態1同様に被パターン形成膜4には、転写層パターン3のパターンが写し取られることになる。ただし、本実施形態2では、転写層パターン3のパターンが被パターン形成膜4写し取られると共に、Ni膜21も被パターン形成膜4上に写し取られることになる。被パターン形成膜4としては、Al、Tiなどの金属膜のほかシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などである。その後、実施形態1と同様に、形成した被パターン形成膜4に、基板6を接着剤層5によって接着する。
【0049】
そして、図9に示すように、転写層ベース基材1を除去して、転写層パターン3をアッシングなどにより除去する。これにより、被パターン形成膜4にはNi膜21が残ることになる。
【0050】
次に、図10に示すように、残ったNi膜21をマスクとして被パターン形成膜4をエッチングする。これにより、被パターン形成膜4がエッチングされて最終パターン8が基板6上に形成されることになる。このエッチングは、RIEなどの異方性エッチングを用いることが好ましい。異方性エッチングを用いることで、マスクとしてNi膜21の大きさ(線幅や形状)に沿った最終パターン8を正確に得ることができる。なお、このエッチング処理後のNi膜21は、最終パターン8と同じ線幅、形状で残ることのになるので、微細パターンとしては、そのまま残しておいても差し支えない。なお、図10は、図6〜9に対して上下を逆にして示した。
【0051】
本実施形態2においても、転写層ベース基材1や基板6は実施形態1と同様の材料を用いることができる。一方、転写層パターン3の形状条件については、必ずしも実施形態1のようにする必要はない。すなわち、アスペクト比が1未満でもよいし、凹部31の開口幅wが160nm以上であってもよい。これは、本実施形態2では、転写層パターン3に形成したNi膜21を被パターン形成膜4上に転写して、これをマスクとしてエッチングするため、隣接する凸部35の上に形成する膜同士を会合させた界面を形成する必要がないためである。
【0052】
以上説明した本実施形態2では、転写層パターン3の上にNi膜21を形成し、このNi膜21をマスクとして被パターン形成膜4をパターニングすることとしたので、実施形態1よりも、さらに最終パターン7のばらつきが少なくなる。マスクを用いているため、形成する最終パターンの大きさや形状の自由度を大きくすることができる。もちろん本実施形態2でも、実施形態1と同様にナノインプリントを用いた転写層パターン3の形成時には、残膜の除去工程などは不要である。
【0053】
なお、ここでは、転写層パターン3の上にNi膜21を形成することとしたが、これに代えて、たとえばTi、Mo、W、Cuなど転写層パターン3の凸部35の上にのみ成膜可能で、その後の被パターン形成膜4をエッチングする際にエッチングされない金属を使用することもできる。
【0054】
(実施形態3)
本実施形態3は、ナノインプリントによる転写層パターンの形成と、被パターン形成膜を基板上に形成する工程と別に行い、これらを合わせることで、被パターン形成膜のパターニングを行うものである。
【0055】
図12〜16は、実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【0056】
まず、図12に示すように、転写層パターン基板41を用意する。転写層パターン基板41は、前述した実施形態2と同様にして図7に示したように、ナノインプリントによって転写層パターン3を形成し、その凸部35の頂上面にのみ、斜め蒸着によってNi膜21を形成する。
【0057】
一方で本実施形態3は、図13に示すように、基板6上に被パターン形成膜4を直接成膜し、さらにその上から、UV硬化性樹脂膜9を塗布したパターン形成基板42を用意する。基板6上への被パターン形成膜4の形成は、半導体装置製造の用いられる方法を用いることができる。たとえばスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、PVD法などであり、とくに限定されない。また、その厚みも、所望する最終パターンの厚さとすればよい。
【0058】
UV硬化性樹脂膜9は、ごく薄くてよく、たとえば30nm程度である。なお、この厚さは、形成する最終パターン幅がナノメートルオーダーであるので、必要採取お減の厚さでよいためであるが、さらに厚くても差し支えない。UV硬化性樹脂膜9の塗布は、たとえばUV硬化性樹脂を溶媒に溶かしてスピンコート法を用いて成膜することができる。
【0059】
次に、図14に示すように、用意した転写層パターン基板41とパターン形成基板42を貼り合わせる。このときの圧力は転写層パターン基板41のNi膜21と転写層パターン基板41のUV硬化性樹脂膜9が密着する程度の圧力であればよい。その後、紫外線を照射して、UV硬化性樹脂膜9を硬化させる。
【0060】
次に、図15に示すように、転写層ベース基材1を除去して、転写層パターン3をアッシングなどにより除去する。これにより、基板6の上に直接成膜された被パターン形成膜4の上のUV硬化性樹脂膜9上に、Ni膜21が残ることになる。
【0061】
次に、図16に示すように、UV硬化性樹脂膜9上のNi膜21をマスクとして被パターン形成膜4をエッチングすることで、最終パターン10できあがる。このときのエッチングは、RIEなどの異方性エッチングを用いることが好ましい。異方性エッチングを用いることで、マスクとしてNi膜21の大きさ(線幅や形状)に沿った最終パターン10を正確に得ることができる。このエッチング処理後のNi膜21およびその下に残ったUV硬化性樹脂膜9は、そのまま残しておいてもよいし、除去してもよい。残っているNi膜21およびUV硬化性樹脂膜9を除去する場合は、まず、硝酸などでNi膜21を除去し、その後硬化しているUV硬化性樹脂膜9をアッシングすると除去することができる。ただし、この場合は基板6や最終パターンがNi膜21を除去する際に劣化しない素材を用いる必要がある。もちろんそのほかの方法で、Ni膜21を除去することができれば除去してもよいことはゆうまでもない。
【0062】
なお、ここでは被パターン形成膜4をエッチングする際に、マスクとしたNi膜21からUV硬化性樹脂膜9ごと被パターン形成膜4をエッチングすることとしたが、被パターン形成膜4のエッチングの前に、UV硬化性樹脂膜9のNi膜21から露出している部分をアッシングにより除去するようにしてもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態3では、ナノインプリントを利用して形成した転写層パターン3上のNi膜21を、基板6に直接形成した被パターン形成膜4上に転写して、これをマスクとして被パターン形成膜4をパターニングすることとしたので、実施形態2同様に、パターンばらつきの少ない最終パターン10を得ることができる。しかも、本実施形態3では、被パターン形成膜4を直接基板6に形成することが可能であるため、たとえば、基板に半導体を用いて、その上に直接金属配線を行うような製品でも適用可能である。もちろん本実施形態2でも、実施形態1と同様にナノインプリントを用いた転写層パターン3の形成時には、残膜の除去工程などは不要である。
【0064】
なお、本実施形態3では、被パターン形成膜4上に、UV硬化性樹脂膜9を成膜することとしているが、これに代えて熱可塑性樹脂膜を用いてもよい。この場合、転写層パターン基板41のNi膜21とパターン形成基板42の熱可塑性樹脂膜を密着させる際に熱を加えて密着させる。その後冷やすこと(常温に戻す)熱可塑性樹脂膜を硬化させれば、熱可塑性樹脂膜上にNi膜21が転写される。また、本実施形態3においてもNi膜21に代えて、Ti、Mo、W、Cuなどを用いることも可能である。
【0065】
(応用例)
以上本発明を適用した好ましい実施形態を説明したが、以下では、このような微細パターンを用いた製品例を説明する。
【0066】
図17は、上述した実施形態1を利用して形成した反射防止膜の例を説明するための図面であり、図17(a)は断面図、図17(b)はパターン形成面から見た平面図である。
【0067】
この反射防止膜は、基板6としてPET、ポリカーボネート、PEN、ガラス、石英、サファイヤなどの透明基板を使用する。接着剤層5にも、透明なUV硬化性樹脂などを用いる。そして、微細パターンとなる被パターン形成膜4にはSiO2を用いた。形成したパターンは、図示するように、円形のパターンが密に整列した構造である。円形の直径は反射させる波長に合わせて形成する。たとえば可視光の場合は直径100nmである。
【0068】
本実施形態1を用いれば、このような円形の微細パターンを密にしかも、その大きさのばらつきを少なくることができる。また、実施形態1の特徴である、マスクを用いずに被パターン形成膜4を会合界面からエッチングを進行させるという特性から、エッチングされた最終パターン7は、図示するように、頂点部がラウンド構造(丸みを帯びた構造)となる。このようなラウンド構造は、この反射防止膜に光が入射した際に、膜面の屈折率が連続的に変化する構造となって、反射が防止されるとともに透過率が高くなる。
【0069】
図18は、上述した実施形態1を利用して形成したフォトニッククリスタルの例を説明するための図面であり、図18(a)は断面図、図18(b)はパターン形成面から見た平面図である。
【0070】
このフォトニッククリスタルは、基板6としてガラス、石英、サファイヤなどの透明度の高い基板を使用する。接着剤層5にも、透明度の高いUV硬化性樹脂などを用いる。そして、微細パターンとなる被パターン形成膜4にはSiを用いた。形成したパターンは、図示するように、矩形(四角形)のパターンを整列させた構造である。矩形の大きさは縦横共に100nm、間隔も100nmである。
【0071】
本実施形態1を用いれば、このような矩形の微細パターンをばらつきが少なけ為政することができる。したがって、特定の波長を厳密に透過または遮蔽するフォトニッククリスタルを得ることができる。
【0072】
図19は、上述した実施形態2を利用して形成したワイアヤーグリッドポラライザーの例を説明するための図面であり、図19(a)は断面図、図19(b)パターン形成面から見た平面図である。
【0073】
ワイアヤーグリッドポラライザーは、基板6としてPET、ポリカーボネート、PEN、ガラス、石英、サファイヤなどの透明基板を使用する。接着剤層5は、透明なUV硬化性樹脂などを用いる。そして、微細パターンとなる被パターン形成膜4には、AlやTiなどの金属膜が好ましい。
【0074】
このようなワイアヤーグリッドポラライザーは、最終パターン8によってできた偏光格子部分のラインアンドスペース(線幅と間隔)を波長に合わせて形成する必要がある。たとえば可視光の場合には50nmである。本実施形態2を適用して形成することで、この偏光格子間隔のばらつきが非常に少なくなり、偏光板として優れた機能を発揮させることが可能である。
【0075】
また、このワイアヤーグリッドポラライザーは、実施形態3の方法を利用してもよい。その場合には、基板6であるとしてPET、ポリカーボネート、PEN、ガラス、石英、サファイヤなどの透明基板の上に、直接偏光格子となる最終パターン8を形成することができる。
【0076】
以上本発明を敵湯押した実施形態を説明したが、本発明は、本願の特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲でさまざまな変形形態が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図2】図1に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図3】図2に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図4】図3に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図5】図4に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図6】図5に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図8】図7に続く実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図9】図8に続く実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図10】図9に続く実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図11】斜め蒸着法の例を説明するための装置構成例を示す概略図である。
【図12】実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図13】図12に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図14】図13に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図15】図14に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図16】図15に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図17】実施形態1を利用して形成した反射防止膜の例を説明するための図面である。
【図18】実施形態1を利用して形成したフォトニッククリスタルの例を説明するための図面である。
【図19】実施形態2を利用して形成したワイアヤーグリッドポラライザーの例を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0078】
1 転写層ベース基材、
2 転写層樹脂、
3 転写層パターン、
4 被パターン形成膜、
5 接着剤層、
6 基板、
7、8、10 最終パターン、
11 モールド、
21 Ni膜、
31 凹部、
35 凸部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの形成方法に関し、詳細には、ナノインプリント技術を利用した微細パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンの細線を形成する微細パターンの形成方法の一つにナノインプリントがある。ナノインプリントは、基板上に形成されている被エッチング膜上に熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂を塗布し、この樹脂膜に、石英やシリコンウエハーなどに形成したナノパターンを持つモールド(スタンパといわれることもある)を押し付けて、高圧で加圧することによりモールド上のパターンを樹脂膜上に転写する。その後モールドを外して、できあがった樹脂パターンをアッシングなどして不要な残膜を取り去り、被エッチング膜上のマスクとする。その後、このマスクによりドライエッチング等で被エッチング膜をエッチングしてパターンを形成する(熱可塑性樹脂を用いたものはたとえば特許文献1、光硬化性樹脂を用いたものはたとえば特許文献2)。
【0003】
また、数十ナノメートルの線幅となるような微細パターの形成方法として、ナノインプリントと金属膜形成技術を利用したものがある。この技術によれば、被エッチング膜上に凹凸の樹脂パターンを形成した後、このパターンの凸部上に金属膜を形成させる際に、隣接する凸部上で金属同士がくっついてパターンの凹部内部にまで金属が入り込まない構造ができあがるので、その状態から金属膜全面をエッチングすることで、隣接する凸部上の金属同士が会合する部分が先にエッチングされて、凸部上にのみ金属膜が残り、凹凸パターンの凹部は貫通したパターンができる。その後はこれをマスクとして被エッチング膜をパターニングしている。
【特許文献1】特開2008−233552号公報の段落0036〜0040
【特許文献2】特開2000−194142号公報の段落0015〜0020
【特許文献3】特開2008−134383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したインプリントの技術(特許文献1および2)では、マスクとする樹脂パターンを形成した時に残膜ができ、これを除去して初めてマスクパターンとなる。このため、この残膜を確実に除去するために、過度のアッシング処理を施さなければならず、パターンが部分的に細ったり、形状がばらつくなどといった問題が起こる。これは、残膜が厚い部分を確実に除去するためにその部分を除去するために適切なエッチング量とする必要があり、そうすると、残膜の厚い部分はジャストのエッチング量となるが、残膜の薄い部分では先にその残膜が失われるので、パターンとなる部分まで過剰にエッチングされてしまい、パターン幅が細ったり、ばらついたりしてしまうのである。
【0005】
また、パターン凸部に金属膜を残す技術(特許文献3)でも、形成された金属膜の厚みや、金属膜をエッチングする際にエッチングのばらつきがあり、どうしてもできあがったマスクパターンそのものにばらつきが生じ、最終的にできあがるパターンもばらついてしまうおそれがある。
【0006】
このようなパターンの細りやばらつきは、特に微細パターンの形成面積が広い場合に発生しやすい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、パターン形状の細りやばらつきを少なくした微細パターンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための本発明は、転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成する段階と、前記転写層パターンを構成する前記凹凸面に被パターン形成膜を形成する段階と、前記被パターン形成膜の前記転写層パターンが存在しない側に基板を貼付ける段階と、前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、前記被パターン形成膜を所望するパターンとなるようにエッチングして微細パターンを形成する段階と、を有することを特徴とする微細パターンの形成方法である。
【0009】
このようにモールドを押し付けて形成した転写層パターンをマスクとして被パターン形成膜をエッチングするのではなく、この転写層パターン上から被パターン形成膜を形成することで、転写層パターンのパターンを被パターン形成膜に写し、転写層パターンを除去した後、写し取ったパターンとなるように被パターン形成膜をパターニングすることとしたので、転写層パターンの形成時には、残膜の除去工程などは不要となり、最終パターン的に得られるパターンの予期しない細りやばらつきを少なくすることができる。
【0010】
また上記目的を解決するための本発明は、転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成し、当該転写層パターンの凸部面上にのみ金属膜を形成して、転写層パターン基板を用意する段階と、基板上に被パターン形成膜を形成し、当該被パターン形成膜上に樹脂膜を形成したパターン形成基板を用意する段階と、前記転写層パターン基板の金属膜と前記パターン形成基板の樹脂膜が密着するように貼り合わせる段階と、前記転写層パターン基板の前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去したことにより、前記パターン形成基板の樹脂膜上に残った金属膜をマスクとして前記被パターン形成膜をエッチングする段階と、を有することを特徴とする微細パターンの形成方法である。
【0011】
このようにモールドを押し付けて形成した転写層パターンの凸部面上に金属膜を有する転写層パターン基板と、被パターン形成膜上に樹脂膜を形成したパターン形成基板を用意して、これらを張り合わせたることで被パターン形成膜上の樹脂膜に金属膜を写し取って、その金属膜をマスクとして被パターン形成膜をエッチングすることとしたので、転写層パターンの形成時には残膜の除去工程などは不要となり、かつ、金属膜をマスクとしてエッチングしているので、より最終パターンのばらつきが少なく、得られるパターンの予期しない細りやばらつきを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターン形状の細りやばらつきを少なくすることができる。したがって、パターン形成面積が広くなっても高精細な微細パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照して説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1〜図6は、実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【0015】
まず、図1に示すように、通常のナノインプリントと同様にして転写層ベース基材1に転写層樹脂2を塗布する。ここで転写層樹脂2は、光ナノインプリント法を使用する場合には、光硬化性樹脂、具体的にはUV硬化性樹脂によるネガレジストを使用する。一方、熱ナノインプリント法を使用する場合は、熱可塑性樹脂、具体的にはたとえばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を使用する。本実施形態ではどちらの方法を用いてもよい。
【0016】
塗布した転写層樹脂2に、パターンが形成されているモールド11を押し付け、硬化させる。光ナノインプリント法の場合はUV硬化性樹脂に紫外線を当てて硬化させて凹凸の転写層パターンを定着される。熱ナノインプリント法では、転写層ベース基材1ごと転写層樹脂2を加熱してモールド11を押し付けて転写層パターンを形成し、その後冷却(常温にする)して硬化させる。
【0017】
モールド11の押し付け圧力は、本実施形態1では従来のナノインプリント技術のように高圧(例えば15MPaなど)にする必要はない。本実施形態1では、後述する工程のように、このナノインプリントで形成したパターンをマスクとして使用しない。そのため、パターン凹部の残膜除去が不要であるので、残膜を薄くするために高圧で押し付ける必要がないのである。
【0018】
なお、転写層樹脂2の厚さは特に限定されないが、あまり厚いと、後述する除去工程において時間が長くなるので、工程のスループットや形成のしやすさを考慮して適宜、決定する。なお、転写層パターンの好ましい形状は後述する。
【0019】
ここで転写層ベース基材1は、たとえば、ガラス、シリコンウエハー、ポリエチレンテレフタラート(PET)の表面にSiO2を成膜したものなどが使用されうるが、その上に形成した転写層樹脂2が硬化した後、強固に密着しないものが好ましい。これは後述する工程で、転写層ベース基材1を硬化後の光硬化性樹脂から剥がしやすくするためである。
【0020】
このため、これら材料表面が表面処理など施されているものが好適である。この転写層ベース基材1の厚さは特に限定されない。
【0021】
モールド材は、たとえば、石英、シリコンウエハー、ニッケル電鋳モールドなどである。なお、モールド材には、パターン形成後の光硬化性樹脂とモールド11との剥離性を良くするために、モールド11の型面には離型処理を施したり、剥離材を塗布したりしている。
【0022】
次に、図2に示すように、モールド11を取る。これにより、転写層ベース基材1上に凹凸からなる転写層パターン3ができあがる(なお図示では凹部31、凸部35である)。このとき、凹部31の底には、残膜32があるが除去する必要はない。
【0023】
次に、図3に示すように、転写層パターン3上に被パターン形成膜4を形成する。これにより、転写層パターン3のパターンが直接写し取られた被パターン形成膜4ができることになる。
【0024】
この被パターン形成膜4はたとえば金属膜である。この被パターン形成膜4の形成にはスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などを利用することができる。この被パターン形成膜4は、後述するように最終的なパターンに形成される膜(層)であるとなるものである。
【0025】
このとき、転写層パターン3上に形成される被パターン形成膜4は、転写層パターン3上の凸部35の頂上に最初に付着して成膜が進行してゆく。このため、隣接する凸部35頂上から始まった被パターン形成膜4の成長が凸部35同士の間で会合して、図示するように、凹部31の内部にまで入り込まない。
【0026】
このような被パターン形成膜4の形態を得るためには、凹部31の開口の大きさを、中まで金属が入らない程度に制御する必要がある。そのためには、転写層パターン3を下記のような条件で形成することが好ましい。まず、図2に示したように、凹部31の開口幅wと深さtのアスペクト比がt/wが1以上、かつ凹部31の開口幅wが40nmから160nmであることが好ましい。なお、開口が40nm未満の場合、実質的に凸部35同士の分離が実質的にうまく行かず、隣接する凸部からの成長とならないので好ましくない。一方、60nmを超えて広くしてしまうと、凹部内にまで金属粒子が入り込み、図2に示したようなパターンとならないので好ましくない。
【0027】
そして、このようなナノオーダーの開口の大きさとすることで、金属粒子径よりも開口が大きくても金属粒子が凹部31の底部にほとんど侵入しないということが起こる。また、アスペクト比を1以上、好ましくは1.5以上とすることで、確実に凹部31の中に金属が入らずに隣接した凸部35上で成長した金属が会合した形態となる。なお、凸部35の頂上の幅wtは特に限定されず、所望する最終パターンの大きさによって決めれば良い。たとえば最終パターン形成時の細りを考慮して、最終パターンよりも数%程度太くするのが一般的であるが、これはパターン形状により適宜選択すればよいものである。
【0028】
被パターン形成膜4とする金属膜は、たとえばAl、Tiなどである。その他にも、半導体装置で使用されている金属配線として使われている金属であれば使用可能であり特に限定されない。また、金属以外では、たとえばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを形成してもよい。形成方法としては、CVD法やPVD法などが挙げられるが、ステップカバレージのよくなう方法が好ましい。なぜなら、上述したように被パターン形成膜4は隣接する凸部35から成長して、両者の間で会合した界面を形成する必要があるため、ステプカバレージのよい方法を取ってしまうと、この会合界面ができないからである。具体的には、たとえば、SiH4を比較的低温(たとえば200〜400℃程度)で進行する常温常圧CVD法などが使用されうる。
【0029】
次に、図4に示すように、被パターン形成膜4の上、すなわち、転写層パターン3が存在しない側に基板6を接着剤層5により貼付ける。
【0030】
ここで、基板6は、たとえばガラス、シリコンウエハー、PET表面にSiO2を成膜したもの、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、石英、サファイヤなどが使用されうる。ここで基板6は最終製品となるものであるからその製品に合わせた素材のものであって、金属との接着性(厳密には接着剤で接着可能な素材)が良好なものを使用することになる。
【0031】
接着剤層5は、UV硬化型接着剤、UV硬化樹脂、熱硬化型接着剤などを挙げることができるが、このほかにも、被パターン形成膜4と基板6とを貼り合わせたときに十分な接着強度が得られるものであれば得られるものであればどのようなものでも差し支えない。ただし、後述する被パターン形成膜4をエッチングする工程でウェットエッチングを用いる場合にはエッチング液に対する耐性が必要である。
【0032】
次に、図5に示すように、転写層ベース基材1と転写層パターン3を除去する。これにはまず、転写層ベース基材1を転写層パターン3から剥がし、その後、転写層パターン3を酸素プラズマアッシングなどのプラズマ処理により除去し、被パターン形成膜4の表面を露出させる。
【0033】
なお、接着剤層5と転写層パターン3が異なる素材を使用した場合は、転写層パターン3を、接着剤層5が溶解しない溶媒によって溶解(ウェットエッチング)して除去するようにしてもよい。
【0034】
次に、図6に示すように、被パターン形成膜4をエッチングして、最終パターン7を形成する。なお、図6は、図1〜5に対して上下を逆にして示した。
【0035】
このときのエッチングは、等方性のドライエッチングやウェットエッチングを使用することができる。エッチング量の制御は時間により行う。ここで被パターン形成膜4は、上述したように、転写層パターン3の凸部35において会合した部分の界面(図4および55の点線部分)は、その他の部分に比べて密度が低いため、エッチングされやすい。このため、等方性のドライエッチングやウェットエッチングを行うことで、界面部分からエッチ具が進行して、図6に示した最終パターン7が得られる。エッチング量の制御は、おおむね界面部分で基板6が露出して、残った最終パターン7が所望する線幅となるようにすればよい。
【0036】
ドライエッチング、ウェットエッチングともに、通常の半導体製造技術を使用することができる。たとえば、Alのエッチングの場合はドライエッチングガスとしてCl2/BCl3、CF4などを用いたCDEを使用することができる。また、ウェットエッチングの場合は、エッチング液はpH12程度のアルカリ水溶液を使用することになる。
【0037】
以上説明した本実施形態1によれば、ナノインプリントにおける光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の残膜除去工程を行うことなく、ナノメートルオーダーのパターンを形成することができる。特に残膜除去が不要であるため、残膜が厚くなってもまたばらついていてもよいので、パターン形成面積が広い場合にいっそうの効果があり広い面積の全体にわたり高精細な微細パターンを形成することができる。
【0038】
また、残膜除去工程が不要となるだけでなく、光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂によるパターンをエッチングマスクとして使用しなくてもよくなるので、そもそもマスク形状の劣化ということ自体がなくなり、これまでより均一な最終パターン7を得ることができる。また、本実施形態1では、残膜除去工程が不要となることで、そもそもこの残膜自体がどのような厚さであっても良いことになるので、モールド11を押し付ける際に高圧を必要とせず、工程タクトタイムの短縮や装置の簡略化が可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態1では、この残膜除去工程が不要となることで、仮に光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を塗布した際またはその後モールドを押し付けるまでに、異物の混入があった場合でも、そのような異物によるパターン変化などの影響を受けることがない。ナノインプリント法によるパターン形成は当然のことながらクリーンルーム内で実施されるが、クリーンルームといえどもごく微細な異物、たとえば1μm前後の異物が混入する可能性は皆無ではない。一方で、作成するパターンはナノオーダー(すなわち1μmより小さい)のパターンであるため、1μm前後の異物であっても、これが混入してしまうと、光硬化性樹脂または熱可塑性樹脂がその部分だけ厚くなる。ナノインプリント法による残膜の厚さは30nm程度以下とすることが好ましいとされているが、1μm前後の異物であっても、それが混入した場合、従来のナノインプリントではいかに高圧をかけてもこのような異物を圧縮して残膜厚30nm程度以下にすることができない。したがって、異物が混入した場合には残膜を除去することができないというそれがある。この点本実施形態では、そもそも残膜除去を必要としないため、仮に異物が混入して残膜厚30nmを超えていたとしても、転写層パターン3の凸部35が分離していて、その上に形成する被パターン形成膜4に会合界面ができさえすれば、このような異物の混入は無視できることとなる。したがって本実施形態1は、このような異物の混入に対する耐性が、従来のナノイプリント工程よりも高い工程ということができる。このため、本実施形態は従来のナノイプリント工程よりも工程コストを下げることが可能となる。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2は、転写層パターン形成後、その凸部35の頂上面にのみ、Niを形成したものである。
【0041】
図7〜13は実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【0042】
まず、前述した実施形態1において図1および2のようにナノインプリントによって転写層パターン3を形成する。
【0043】
次に、図7に示すように、転写層パターン3の凸部32の頂上面にのみ、Ni膜21を成膜する。このNi膜21の形成は、斜め蒸着を行うことで容易に、転写層パターン3の凸部32の頂上面にのみNi膜21を形成することができる。
【0044】
斜め蒸着は、図7に示したように、蒸着されるNi粒子の流れ(図示点線矢印)に対して転写層パターン3の凸部32の頂上面の面方向(図示点線)が30度以下(平行な流れとなる場合を含む)となるようにすれば、転写層パターン3の凹部31内にNi粒子が入り込むことなく、頂上面にのみ形成することができる。
【0045】
図11は、斜め蒸着法の例を説明するための装置構成例を示す概略図である。
【0046】
使用する蒸着装置自体は通常の真空蒸着装置を用いることができる。そして、この装置の真空チャンバ50内に、転写層パターン形成後の転写層ベース基材1を載置する。このとき転写層ベース基材1を、蒸着源51となる金属を入れたカップ(蒸着源51)に対して垂直に置く。これで、蒸着源51から蒸発した金属粒子は、転写層パターン3の凸部35の頂上面の面方向に対して、ほぼ平行に流れ、その一部が凸部35の頂上面に付着する。
【0047】
形成するNi膜21の厚さは、ごく薄くてよく、たとえば10〜30nmもあれば十分である。これは、後述する被パターン形成膜4のエッチングにおいて、ニッケルは非常にエッチングされにくいため、ごく薄くても十分にマスクとして機能するからである。また、あまり厚く形成しようとした場合、いかに斜め蒸着であっても、凹部31内にNi粒子が入り込んで、Ni膜21パターンが太くなってしまうおそれがあるので好ましくない。したがって、Ni膜21の厚さは、転写層パターン3の側壁に付着しない程度とするのがよい。
【0048】
Ni膜21の形成後は、図8に示すように、最終パターン7を形成する被パターン形成膜4を、転写層パターン3のNi膜21が形成された上から成膜する。これにより、実施形態1同様に被パターン形成膜4には、転写層パターン3のパターンが写し取られることになる。ただし、本実施形態2では、転写層パターン3のパターンが被パターン形成膜4写し取られると共に、Ni膜21も被パターン形成膜4上に写し取られることになる。被パターン形成膜4としては、Al、Tiなどの金属膜のほかシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などである。その後、実施形態1と同様に、形成した被パターン形成膜4に、基板6を接着剤層5によって接着する。
【0049】
そして、図9に示すように、転写層ベース基材1を除去して、転写層パターン3をアッシングなどにより除去する。これにより、被パターン形成膜4にはNi膜21が残ることになる。
【0050】
次に、図10に示すように、残ったNi膜21をマスクとして被パターン形成膜4をエッチングする。これにより、被パターン形成膜4がエッチングされて最終パターン8が基板6上に形成されることになる。このエッチングは、RIEなどの異方性エッチングを用いることが好ましい。異方性エッチングを用いることで、マスクとしてNi膜21の大きさ(線幅や形状)に沿った最終パターン8を正確に得ることができる。なお、このエッチング処理後のNi膜21は、最終パターン8と同じ線幅、形状で残ることのになるので、微細パターンとしては、そのまま残しておいても差し支えない。なお、図10は、図6〜9に対して上下を逆にして示した。
【0051】
本実施形態2においても、転写層ベース基材1や基板6は実施形態1と同様の材料を用いることができる。一方、転写層パターン3の形状条件については、必ずしも実施形態1のようにする必要はない。すなわち、アスペクト比が1未満でもよいし、凹部31の開口幅wが160nm以上であってもよい。これは、本実施形態2では、転写層パターン3に形成したNi膜21を被パターン形成膜4上に転写して、これをマスクとしてエッチングするため、隣接する凸部35の上に形成する膜同士を会合させた界面を形成する必要がないためである。
【0052】
以上説明した本実施形態2では、転写層パターン3の上にNi膜21を形成し、このNi膜21をマスクとして被パターン形成膜4をパターニングすることとしたので、実施形態1よりも、さらに最終パターン7のばらつきが少なくなる。マスクを用いているため、形成する最終パターンの大きさや形状の自由度を大きくすることができる。もちろん本実施形態2でも、実施形態1と同様にナノインプリントを用いた転写層パターン3の形成時には、残膜の除去工程などは不要である。
【0053】
なお、ここでは、転写層パターン3の上にNi膜21を形成することとしたが、これに代えて、たとえばTi、Mo、W、Cuなど転写層パターン3の凸部35の上にのみ成膜可能で、その後の被パターン形成膜4をエッチングする際にエッチングされない金属を使用することもできる。
【0054】
(実施形態3)
本実施形態3は、ナノインプリントによる転写層パターンの形成と、被パターン形成膜を基板上に形成する工程と別に行い、これらを合わせることで、被パターン形成膜のパターニングを行うものである。
【0055】
図12〜16は、実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【0056】
まず、図12に示すように、転写層パターン基板41を用意する。転写層パターン基板41は、前述した実施形態2と同様にして図7に示したように、ナノインプリントによって転写層パターン3を形成し、その凸部35の頂上面にのみ、斜め蒸着によってNi膜21を形成する。
【0057】
一方で本実施形態3は、図13に示すように、基板6上に被パターン形成膜4を直接成膜し、さらにその上から、UV硬化性樹脂膜9を塗布したパターン形成基板42を用意する。基板6上への被パターン形成膜4の形成は、半導体装置製造の用いられる方法を用いることができる。たとえばスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、PVD法などであり、とくに限定されない。また、その厚みも、所望する最終パターンの厚さとすればよい。
【0058】
UV硬化性樹脂膜9は、ごく薄くてよく、たとえば30nm程度である。なお、この厚さは、形成する最終パターン幅がナノメートルオーダーであるので、必要採取お減の厚さでよいためであるが、さらに厚くても差し支えない。UV硬化性樹脂膜9の塗布は、たとえばUV硬化性樹脂を溶媒に溶かしてスピンコート法を用いて成膜することができる。
【0059】
次に、図14に示すように、用意した転写層パターン基板41とパターン形成基板42を貼り合わせる。このときの圧力は転写層パターン基板41のNi膜21と転写層パターン基板41のUV硬化性樹脂膜9が密着する程度の圧力であればよい。その後、紫外線を照射して、UV硬化性樹脂膜9を硬化させる。
【0060】
次に、図15に示すように、転写層ベース基材1を除去して、転写層パターン3をアッシングなどにより除去する。これにより、基板6の上に直接成膜された被パターン形成膜4の上のUV硬化性樹脂膜9上に、Ni膜21が残ることになる。
【0061】
次に、図16に示すように、UV硬化性樹脂膜9上のNi膜21をマスクとして被パターン形成膜4をエッチングすることで、最終パターン10できあがる。このときのエッチングは、RIEなどの異方性エッチングを用いることが好ましい。異方性エッチングを用いることで、マスクとしてNi膜21の大きさ(線幅や形状)に沿った最終パターン10を正確に得ることができる。このエッチング処理後のNi膜21およびその下に残ったUV硬化性樹脂膜9は、そのまま残しておいてもよいし、除去してもよい。残っているNi膜21およびUV硬化性樹脂膜9を除去する場合は、まず、硝酸などでNi膜21を除去し、その後硬化しているUV硬化性樹脂膜9をアッシングすると除去することができる。ただし、この場合は基板6や最終パターンがNi膜21を除去する際に劣化しない素材を用いる必要がある。もちろんそのほかの方法で、Ni膜21を除去することができれば除去してもよいことはゆうまでもない。
【0062】
なお、ここでは被パターン形成膜4をエッチングする際に、マスクとしたNi膜21からUV硬化性樹脂膜9ごと被パターン形成膜4をエッチングすることとしたが、被パターン形成膜4のエッチングの前に、UV硬化性樹脂膜9のNi膜21から露出している部分をアッシングにより除去するようにしてもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態3では、ナノインプリントを利用して形成した転写層パターン3上のNi膜21を、基板6に直接形成した被パターン形成膜4上に転写して、これをマスクとして被パターン形成膜4をパターニングすることとしたので、実施形態2同様に、パターンばらつきの少ない最終パターン10を得ることができる。しかも、本実施形態3では、被パターン形成膜4を直接基板6に形成することが可能であるため、たとえば、基板に半導体を用いて、その上に直接金属配線を行うような製品でも適用可能である。もちろん本実施形態2でも、実施形態1と同様にナノインプリントを用いた転写層パターン3の形成時には、残膜の除去工程などは不要である。
【0064】
なお、本実施形態3では、被パターン形成膜4上に、UV硬化性樹脂膜9を成膜することとしているが、これに代えて熱可塑性樹脂膜を用いてもよい。この場合、転写層パターン基板41のNi膜21とパターン形成基板42の熱可塑性樹脂膜を密着させる際に熱を加えて密着させる。その後冷やすこと(常温に戻す)熱可塑性樹脂膜を硬化させれば、熱可塑性樹脂膜上にNi膜21が転写される。また、本実施形態3においてもNi膜21に代えて、Ti、Mo、W、Cuなどを用いることも可能である。
【0065】
(応用例)
以上本発明を適用した好ましい実施形態を説明したが、以下では、このような微細パターンを用いた製品例を説明する。
【0066】
図17は、上述した実施形態1を利用して形成した反射防止膜の例を説明するための図面であり、図17(a)は断面図、図17(b)はパターン形成面から見た平面図である。
【0067】
この反射防止膜は、基板6としてPET、ポリカーボネート、PEN、ガラス、石英、サファイヤなどの透明基板を使用する。接着剤層5にも、透明なUV硬化性樹脂などを用いる。そして、微細パターンとなる被パターン形成膜4にはSiO2を用いた。形成したパターンは、図示するように、円形のパターンが密に整列した構造である。円形の直径は反射させる波長に合わせて形成する。たとえば可視光の場合は直径100nmである。
【0068】
本実施形態1を用いれば、このような円形の微細パターンを密にしかも、その大きさのばらつきを少なくることができる。また、実施形態1の特徴である、マスクを用いずに被パターン形成膜4を会合界面からエッチングを進行させるという特性から、エッチングされた最終パターン7は、図示するように、頂点部がラウンド構造(丸みを帯びた構造)となる。このようなラウンド構造は、この反射防止膜に光が入射した際に、膜面の屈折率が連続的に変化する構造となって、反射が防止されるとともに透過率が高くなる。
【0069】
図18は、上述した実施形態1を利用して形成したフォトニッククリスタルの例を説明するための図面であり、図18(a)は断面図、図18(b)はパターン形成面から見た平面図である。
【0070】
このフォトニッククリスタルは、基板6としてガラス、石英、サファイヤなどの透明度の高い基板を使用する。接着剤層5にも、透明度の高いUV硬化性樹脂などを用いる。そして、微細パターンとなる被パターン形成膜4にはSiを用いた。形成したパターンは、図示するように、矩形(四角形)のパターンを整列させた構造である。矩形の大きさは縦横共に100nm、間隔も100nmである。
【0071】
本実施形態1を用いれば、このような矩形の微細パターンをばらつきが少なけ為政することができる。したがって、特定の波長を厳密に透過または遮蔽するフォトニッククリスタルを得ることができる。
【0072】
図19は、上述した実施形態2を利用して形成したワイアヤーグリッドポラライザーの例を説明するための図面であり、図19(a)は断面図、図19(b)パターン形成面から見た平面図である。
【0073】
ワイアヤーグリッドポラライザーは、基板6としてPET、ポリカーボネート、PEN、ガラス、石英、サファイヤなどの透明基板を使用する。接着剤層5は、透明なUV硬化性樹脂などを用いる。そして、微細パターンとなる被パターン形成膜4には、AlやTiなどの金属膜が好ましい。
【0074】
このようなワイアヤーグリッドポラライザーは、最終パターン8によってできた偏光格子部分のラインアンドスペース(線幅と間隔)を波長に合わせて形成する必要がある。たとえば可視光の場合には50nmである。本実施形態2を適用して形成することで、この偏光格子間隔のばらつきが非常に少なくなり、偏光板として優れた機能を発揮させることが可能である。
【0075】
また、このワイアヤーグリッドポラライザーは、実施形態3の方法を利用してもよい。その場合には、基板6であるとしてPET、ポリカーボネート、PEN、ガラス、石英、サファイヤなどの透明基板の上に、直接偏光格子となる最終パターン8を形成することができる。
【0076】
以上本発明を敵湯押した実施形態を説明したが、本発明は、本願の特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲でさまざまな変形形態が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図2】図1に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図3】図2に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図4】図3に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図5】図4に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図6】図5に続く実施形態1によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図8】図7に続く実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図9】図8に続く実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図10】図9に続く実施形態2によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図11】斜め蒸着法の例を説明するための装置構成例を示す概略図である。
【図12】実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図13】図12に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図14】図13に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図15】図14に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図16】図15に続く実施形態3によるパターン形成方法を工程順に説明するための説明図である。
【図17】実施形態1を利用して形成した反射防止膜の例を説明するための図面である。
【図18】実施形態1を利用して形成したフォトニッククリスタルの例を説明するための図面である。
【図19】実施形態2を利用して形成したワイアヤーグリッドポラライザーの例を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0078】
1 転写層ベース基材、
2 転写層樹脂、
3 転写層パターン、
4 被パターン形成膜、
5 接着剤層、
6 基板、
7、8、10 最終パターン、
11 モールド、
21 Ni膜、
31 凹部、
35 凸部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成する段階と、
前記転写層パターンを構成する前記凹凸面に被パターン形成膜を形成する段階と、
前記被パターン形成膜の前記転写層パターンが存在しない側に基板を貼付ける段階と、
前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、
前記被パターン形成膜を所望するパターンとなるようにエッチングして微細パターンを形成する段階と、
を有することを特徴とする微細パターンの形成方法。
【請求項2】
前記被パターン形成膜を形成する段階は、前記被パターン形成膜を前記転写層パターンの凸部上から成長させて隣接する凸部同士の間で会合した界面を有するように形成し、
前記微細パターンを形成する段階は、前記界面からエッチングを進行させて、所望のパターン幅となるようにすることを特徴とする請求項1記載の微細パターンの形成方法。
【請求項3】
前記凹凸面からなる転写層パターンを形成する段階の後、さらに前記転写層パターンの凸部面上にのみ金属膜を形成する段階を有し、
前記微細パターンを形成する段階は、前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階によって前記被パターン形成膜上に残った前記金属膜をマスクとして前記被パターン形成膜をエッチングすることを特徴とする請求項1記載の微細パターンの形成方法。
【請求項4】
転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成し、当該転写層パターンの凸部面上にのみ金属膜を形成して、転写層パターン基板を用意する段階と、
基板上に被パターン形成膜を形成し、当該被パターン形成膜上に樹脂膜を形成したパターン形成基板を用意する段階と、
前記転写層パターン基板の金属膜と前記パターン形成基板の樹脂膜が密着するように貼り合わせる段階と、
前記転写層パターン基板の前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、
前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去したことにより、前記パターン形成基板の樹脂膜上に残った金属膜をマスクとして前記被パターン形成膜をエッチングする段階と、
を有することを特徴とする微細パターンの形成方法。
【請求項1】
転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成する段階と、
前記転写層パターンを構成する前記凹凸面に被パターン形成膜を形成する段階と、
前記被パターン形成膜の前記転写層パターンが存在しない側に基板を貼付ける段階と、
前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、
前記被パターン形成膜を所望するパターンとなるようにエッチングして微細パターンを形成する段階と、
を有することを特徴とする微細パターンの形成方法。
【請求項2】
前記被パターン形成膜を形成する段階は、前記被パターン形成膜を前記転写層パターンの凸部上から成長させて隣接する凸部同士の間で会合した界面を有するように形成し、
前記微細パターンを形成する段階は、前記界面からエッチングを進行させて、所望のパターン幅となるようにすることを特徴とする請求項1記載の微細パターンの形成方法。
【請求項3】
前記凹凸面からなる転写層パターンを形成する段階の後、さらに前記転写層パターンの凸部面上にのみ金属膜を形成する段階を有し、
前記微細パターンを形成する段階は、前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階によって前記被パターン形成膜上に残った前記金属膜をマスクとして前記被パターン形成膜をエッチングすることを特徴とする請求項1記載の微細パターンの形成方法。
【請求項4】
転写層ベース基材上に塗布した樹脂膜にモールドを押し付けて、凹凸面からなる転写層パターンを形成し、当該転写層パターンの凸部面上にのみ金属膜を形成して、転写層パターン基板を用意する段階と、
基板上に被パターン形成膜を形成し、当該被パターン形成膜上に樹脂膜を形成したパターン形成基板を用意する段階と、
前記転写層パターン基板の金属膜と前記パターン形成基板の樹脂膜が密着するように貼り合わせる段階と、
前記転写層パターン基板の前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去する段階と、
前記転写層ベース基材および前記転写層パターンを除去したことにより、前記パターン形成基板の樹脂膜上に残った金属膜をマスクとして前記被パターン形成膜をエッチングする段階と、
を有することを特徴とする微細パターンの形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−153589(P2010−153589A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330159(P2008−330159)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】
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