微細パターン形成用凸版
【課題】マージナルを抑制可能な微細パターン印刷用凸版を提供する。
【解決手段】凸版のレリーフ表面2に突起3を設け、先端にパターン形成用インクを供給し基板へ転写する。先端部突起間の溝4に滞留したインクは、突起3により流動を制限され、マージナル発生が抑制され転写される。この為、均一な厚みの転写インキフィルムを得ることが出来る。
【解決手段】凸版のレリーフ表面2に突起3を設け、先端にパターン形成用インクを供給し基板へ転写する。先端部突起間の溝4に滞留したインクは、突起3により流動を制限され、マージナル発生が抑制され転写される。この為、均一な厚みの転写インキフィルムを得ることが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷などの凸版印刷に使用する凸版印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネル、回路のパターン形成などで微細なサイズのものは一般的にフォトリソ法が用いられてきた。印刷法はフォトリソ法と比較し、処理速度が速い、プロセスに関わる廃棄物が少ない、材料の利用効率が高いなどコスト低減が期待されているが要求に答えきれていなかった。
図2は、凸版印刷に使用する凸版印刷版と課題を示す図である。従来より、レリーフ10の先端にインク6を付着し印刷基板に加圧転写する凸版印刷法が広く普及している。このような凸版の代表例として、版に樹脂材料を使用したフレキソ印刷法を挙げることができる。版が樹脂であるため、加工が比較的容易であること、版材に柔軟性があるため基板へのダメージ、重ね刷り時に於いて先に形成されたパターンへ与えるダメージが低減されること、凸版であるため非画像部にインクが付着しないことなどの特長がある。電子デバイスへの応用を想定した場合は、これらの特長は有利に働く。
【0003】
しかしながら、微細パターンを印刷形成するための手段としては凸版及び凸版印刷法は殆ど使用されていなかった。その主な理由は、マージナル7の発生というこの方法特有の問題があり、微細パターンを正確に形成することが難しかったからである。凸版印刷方式においてはインクの転写(図2(b))を行う工程で印圧を加えなければならないが、印刷版のレリーフ2と基板5に挟まれたインクが、レリーフ先端からその周囲にはみ出し、所定の寸法を維持することが困難になる。このように印刷されたパターンの方が印刷版のパターンより大きくなった部分をマージナル7という。更にパターンが微細になりパターン間の距離が小さくなると、マージナル7により隣のパターンと繋ってしまうという問題が発生する。(図3(a)) 特に配線や電極など導電性パターンを形成する場合、パターンが繋がることはショートを発生させることになり、正常に機能させることができなくなるという問題があった。
【特許文献1】特許第3475498号公報
【特許文献2】特開2002−117755号公報
【特許文献3】特開2002−178654号公報
【特許文献4】特開2004−237545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今までにマージナルを減らすために以下のような方法が提案されてきた。しかしながら、マージナル防止のため版の凸部でインクを固めた後、固化したインク成分を粘着物質を介して基板に転写する方法(特許文献1参照)では、電子デバイスなどにおいて先に形成されたパターンと後から形成されたパターン相互間で、電気的接続を必要とする場合、相互の導通性低下が、また、絶縁層との積層では界面でのトラップ発生によるデバイス特性への影響が、更には強度的に脆弱な薄膜の転写に於いては転写時のストレスにより膜中へクラックが入る問題が考えられる。版の凸部の周囲に障壁を設ける方法も提案されている(特許文献2参照)が、インクの粘度が低い場合はワークへの押し付けが不均等になり、既にパターンがある場合、段差により障壁で押さえきれずに流れ出す問題が懸念される。
【0005】
上記問題に対して、版の凸部に窪みを設け(特許文献3参照)ここに余剰インクを収容する方法も提案されている。しかしながら、繰り返し印刷を行う場合は、余剰インクを収容するためには窪みにインクが無いという条件を満たす必要があるが、インクの残留に不安があり、繰り返し印刷の際、効果の持続性低下が懸念される。版の凸部上に微小突起や凸状を設ける方法も提案されている(特許文献4参照)が、微小突起の場合、その形状がエッジ部分に沿った形状でなく、基板上に形成されるパターンエッジの再現性に不安がある。
そこで、本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、表示パネルにおける配線、電極、絶縁材料、機能材料や電子回路の配線形成に最適な印刷版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の版は、版のレリーフ上に供給されたインクを被印刷体へ転写する印刷用凸版に於いて、前記レリーフ上に突起が複数個形成され、前記複数の突起のうち前記レリーフ端部の突起の頂部周辺の形状がそのレリーフ端部の形状に沿った線部を有することを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に係る請求項2の版は、請求項1に記載の印刷用凸版於いて、前記線部は直線、または曲線を有することを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に係る請求項3の版は、請求項1または2のいずれに記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ端部以外の突起の頂部周辺の形状が、該端部の突起と同じ形状もしくは異なる形状であることを特徴とする印刷用凸版である。
【0007】
本発明に係る請求項4の版は、請求項1から3のいずれかひとつに記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ頂部表面と前記レリーフ溝部の表面自由エネルギー差が5×10−2mJ/m2以上であることを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に関わる請求項5の版は、請求項4に記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ頂部表面がインクをはじき前記レリーフ溝部がインクにより濡れる組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に関わる請求項6の版は、請求項4に記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ頂部表面がインクに濡れ前記レリーフ溝部がインクをはじく組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版である。
【0008】
本発明に関わる請求項7の版は、請求項4に記載の印刷用凸版に、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも小さいことを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に関わる請求項8の版は、請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも大きいことを特徴とする印刷用凸版である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷版を用いてパターン形成を行えば、凸版のレリーフ先端に設けた突起が印刷時のインクの流れ出しを阻止するように働くためマージナルが抑制され、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防ぐことができ、印刷法による電子デバイス(配線、電極、絶縁材料、機能材料による機能素子や回路形成)への応用が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の「微細パターン形成用凸版」について説明する。図1は凸版のレリーフ上に、四角柱の突起が複数形成され碁盤の目状に配置された状態を示した図である。
図1(a)はレリーフの断面を示すものであり、3が突起で4が溝である。図1(b)はレリーフのインクが付着する面を示したものであり、3が突起で4が溝である。
図6、図7は、本発明のレリーフ上に突起が複数個形成され、レリーフ端部においてはその形状に沿った線部を有する突起を形成することを説明する図である。
図6(a)は碁盤の目配列で突起が四角柱でレリーフ端部の形状が直線であり、これと突起の配列方向が同じ場合の図である。図6(b)は突起の配列方向に対し、レリーフ端部の形状が斜め直線を一部含む状態を示す図である。この場合に於いて、斜め直線部分のレリーフ端部にかかった突起は、斜め直線部分で切り落とされた形状となる。この切り落とされた部分に相当する部分が、レリーフ端部の形状に沿った線部になる。図6(c)はレリーフ端部の形状が曲線を一部含む状態を示す図である。この曲線部にかかった突起は、レリーフ端部の曲線部分で切り落とされた形状になり、この部分がレリーフ端部の形状に沿った線部になる。図6(d)は突起が円柱の場合を示す図である。レリーフ端部にかかった突起は、レリーフ端部で切り落とされた形状となり、この部分がレリーフ端部の形状に沿った線分になる。図6(e)は曲線状のレリーフに突起が形成された状態を示す図である。レリーフの曲線に沿って突起が形成され、突起はレリーフ形状と一致しており、レリーフに沿った線部を有する。
【0011】
図7は突起の配列を工夫することで、インクの流れ出しをより効果的に抑制することを狙いとした配置を示す。
図7(a)は四角形(b)は円状の突起を千鳥状に配置した状態を示す例である。図7(c)、(d)は突起をパターン外側に流れ出そうとするインクをより阻止する方向に配列した状態を示す図である。図7(c)は突起形状が長方形であり、長辺がレリーフ端部の形状に沿った方向に配列した状態を示す。図7(d)は突起形状が円弧であり、円弧が円状のレリーフ端部の形状に沿った方向に配列した状態を示す。前記いずれの場合に於いても、レリーフ端部の突起の頂部周辺の形状がそのレリーフ端部の形状に沿った線部を有するように形成された状態を示している。
次に版の製作方法について述べる。パターンの形成方法は、(1)光により形成する方法、(2)型から複製する方法、(3)彫刻により形成する方法、がある。
【0012】
(1)光により形成する方法では感光性樹脂が使用可能であり、方法として次の方法が挙げられる。通常の感光性樹脂を用いた方法で、レリーフの形状に合わせ、微細突起に相当する部分において光を透過しそれ以外の部分では透過しないネガフィルムを準備する。露光前が液状の感光性樹脂を用いる場合、このネガフィルムをガラス板の表面に積層後、その上に液状の感光性樹脂を塗布し、その表面に透明なベースフィルムを積層し、更にその表面にガラス板を積層する。なお感光性樹脂層の厚みは所定の寸法になるよう設定する。次いでランプを用い、上側のガラス板とベースフィルムを介して紫外線を照射すると共に、下側のガラス板とネガフィルムを介して紫外線を照射する。画像露光用の照射光源は公知のものを使用可能である。
上記液状感光性樹脂からなる層の上面全体から入った光と、ネガフィルムの光を透過する部分を透過した光が所定量届いた部分が硬化される。硬化後上下のガラス板、ネガフィルムを取り除き、未硬化部分を洗浄除去し、レリーフ形成側に紫外線を照射し硬化を促進し、印刷用版とする。
別の方法としてレリーフ形成のため、感光性樹脂を硬化可能な波長のレーザー光源を用い、硬化に必要な光量を走査露光しても良い。常温で液状タイプでなく常温で固溶体状の感光性樹脂を用いる場合、加熱して所定の厚みに成形したのち、同様に画像露光以降の操作を行えばよい。さらに、上記はネガタイプの感光性樹脂を使用した際の製作方法であるが、ポジタイプの感光性樹脂をポジフィルムと共に用いることも可能である。
【0013】
(2)型から複製を作成する方法としては次の方法を挙げることができる。パターンに対応した型を作成し、樹脂にふさわしい方法で型取りする。方法としては、1)光硬化法、2)熱硬化法、を採用することができる。または加熱した型を樹脂に押し付け、パターンに相当する形状を付与する、3)熱転写法(冷却凝固法ともいう)、でも良い。1)には感光性樹脂、2)には室温で液体もしくは固溶体状の熱硬化性樹脂、3)には熱可塑性樹脂が使用可能である。型は、採用する加工方法、解像度により公知のものから選択すればよい。金属金型、Si型、石英型、SiC型、Ni電鋳型、樹脂型などが使用可能である。
【0014】
(3)彫刻により形成する方法としては、次の方法を挙げることができる。
架橋されたゴム系材料や、硬化された熱硬化性樹脂、同じく硬化された光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などに対応可能である。固体の版材料を彫刻する方法としては、レーザーによる彫刻方式を挙げることができる。現実的には必要とする形状の寸法に応じレーザーを使い分ければよい。炭酸ガスレーザー、VAG3倍波もしくは4倍波レーザー、さらにはエキシマレーザーなどを解像度や彫刻性により選定して彫刻することができる。この方法を用いれば、レリーフ頂部表面と溝部の表面自由エネルギーが異なる組み合わせの版も作ることができる。レリーフ先端とその下とで異なる材料を積層する、もしくは異なる材料の塗布やプラズマ処理などで表層と下の層で表面自由エネルギーの異なる組み合わせを作り、レーザーで下の層まで達するよう彫刻する方法を採ることもできる。
【0015】
本発明の材料には、上記のように室温で固体、高温で流動性を有する熱可塑性樹脂、室温で粘凋、もしくは固溶体状の感光性樹脂、熱硬化性樹脂を可塑性などを用いて版に成型することができる。樹脂の種類について特に制約は無い。版として使用する形態における力学的物性、例えば硬度、ヤング率、反発弾性、引張強伸度や表面張力、耐溶剤性などが所望する印刷に適するように選択、設計すればよい。
ネガタイプの感光性樹脂としては、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系、光二量化反応系などが適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系で説明する。
【0016】
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用し得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤、重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
プレポリマーとしては重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有するプレポリマーと光重合開始剤、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体を含むラジカル重合性樹脂組成物で、例えばプレポリマーとして、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂およびこれらの各種変性物などを少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。例えばこのうちの感光性樹脂組成物としては特開昭52−90804号、特公昭48−19125号、特開昭49−109104号、特公昭48−41708号を始め多数の公知文献に記載されている感光性樹脂を例示できる(後述文献参照)。
【0017】
モノマーとしては重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体としては、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N‘−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等やフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31-36記載の材料を用いることができる。
【0018】
開始剤としてはこれらをエチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行うときは、公知の光重合開始剤を用いることが反応効率上好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド,1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(Oベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。
【0019】
熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。
具体的には、東レリサーチセンター調査研究事業部編、「フォトポリマー技術の新展開」東レリサーチセンター刊、1993年3月10日、p.頁35、山岡亜夫監修、「フォトポリマーの基礎と応用」シーエムシー出版、2003年3月27日、第4章製版材料とフォトレジスト、や松井真二他監修、「ナノインプリントの開発と応用」、シーエムシー出版刊、2005年8月31日、p.50、p.151、記載の材料を用いることができる。同じくp.158、p.159、記載のフッ素変性したフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートや含フッ素のエポキシ系の感光性樹脂を用いることもできる。
また少なくとも未加硫ゴムと重合性二重結合を有する単量体、重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号、特開昭47−37521号)や、発インク性とのバランスが必要だが、ジアルキルシリコン系樹脂の使用も可能である。
【0020】
熱可塑性樹脂としてはポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、変性ポリフェ二レンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、フッ素系樹脂ではフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ノルボルネン共重合体等のフッ素化ポリオレフィン、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ビニルエーテル樹脂や、これ以外にも熱により加工できるものであれば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.113−397、各論 1.重合型樹脂 2.縮合型樹脂 記載の熱可塑性樹脂を使用しても良い。
【0021】
熱硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート、不飽和メタクリレート、樹脂及びこれらの各種変性を少なくとも1種と、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体に熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物や、エポキシに硬化剤を添加した樹脂組成物、シリコン系のポリジメチルシロキサン系樹脂を使用しても良い。
フッ素系樹脂では架橋材や、熱によりラジカルの発生する重合開始剤を含むフッ素モノマーや含フッ素オリゴマーを用いた熱硬化性樹脂を使用しても良い。これ以外にも三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.240−397各論 2.縮合型樹脂 記載の熱硬化性樹脂を使用しても良い。
ゴム系材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ブチル、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、スチレンブタジエン、ニトリル、アクリル、エピクロルヒドリン、クロロプレン、ウレタン、二トリル、シリコン、フッ素系ゴムを使用しても良い。以上に記した方法や材料を用いることにより、本発明に係る印刷用凸版を製版することができる。
【0022】
次に印刷機について説明する。印刷機は市販されている図9に示す方式のものを用いることができる。これは一例であり、この方式に限定されるもではない。
印刷は以下のようにして行う。図9に示した方式の印刷機を使用し、凹凸を設けたアニロックスプレート11上にインクを置き、ドクターブレード12を13の方向に引くことによりインクが計量され、アニロックスプレート11に版14を接触させた後分離すると、レリーフ上に形成された突起間の溝部と突起の上面にインクが付着する。この状態で基板5に押し付けインクを転写する。その後、インクのレベリングが進み均一化する。図10は版の部分を拡大して示したものであり、(a)の印刷機のアニロックスプレート上に展開されたインクが、(b)、(c)に示すように版のレリーフに供給され、(c)から(f)に示すように基板に転写されパターンが形成されるまでを示した図である。図10(a)は印刷機のアニロックスプレート上にインクが展開された状態と、インクが供給される前の版13を示す。
【0023】
次にインクをレリーフへ転写するため図10(b)に示すようにインクの展開されたアニロックスプレートに版のレリーフ先端を押し付ける。この時、インクはレリーフ先端に形成された突起間の溝と突起先端に移行する。図10(c)はインクが版のレリーフ先端部へ供給された状態と印刷される基板を示す。その後インクを基板へ転写させるため、図10(d)に示すようにレリーフ先端部を基板へ押し付ける。図10(e)は版のレリーフが基板から離れインクが基板へ転写された状態を示す。さらに図10(f)は基板上でインクのレベリングが進みパターンが形成された状態を示す。以上の方法にて印刷によりパターンが形成される。
【0024】
本実施形態によれば、レリーフ上へ突起を設けることにより、押し付けた時に発生するレリーフ外側へのインクの流れが阻止されるため、マージナルの発生を低減させることができる。レリーフ端部においてはその形状に沿った線部を有する突起が配置されるため、パターンの再現性も向上する。
次に突起の形状について述べる。平面形状は円形もしくは三角形、四角形、六角形、それ以上の多角形や直線、曲線で形成された形状を用いることができるが、インクを溜める溝の容積や、インク転写用のアニロックスプレート等との組合わせによるモワレや斑、インクのアニロックスプレートからの転写性、印刷後のレベリングの状況、インクの基板への転写効率を勘案して決めればよい。また突起側壁は傾斜していても良い。傾斜を付けることによりインクの転写効率が向上するというという利点がある。これらの構成や突起の配置間隔(溝の幅)、深さを変えることでインクの量を調整することもできる。もちろん一つのパターン内でこれらの構成を変えてもよい。
【0025】
配列に関しては碁盤の目 図6(a)、(b)のほか千鳥配列 図7(a)、(b)を採ることも可能である。例えば千鳥配列図7(a)、(b)では突起距離がより均等化することでレベリング性向上が、隣り合う突起が碁盤の目配列と比較しずれるため、その方向へのインクの流れの抑制に効果があると考えられる。
突起頂部の大きさに関しては形成するパターンサイズにもよるが、一例を挙げると、パターンの線状のレリーフの幅方向に並ぶ個数はエッジやパターン内部の均一性を考慮すると少なくとも2個以上、好ましくは3個以上が良い。例えば50μm幅のラインであれば、3個以上並べる場合ピッチを20μmとし、溝と頂部の幅を等しくすれば、突起の幅は10μmとなる。同様に25μm幅のラインの場合で突起を3個並べる場合はピッチは10μmで突起は5μmとなる。なお突起のレリーフ長手方向の大きさは幅方向と同等を基本とするが、必ずしも同等にする必要は無い。突起の大きさや突起の間隔は、要求されるパターンの幅や厚み、インク粘度、インクのレベリング性、濃度や版上に乗せるインク量、マージナルの状況などの条件を勘案して調整すればよく、上記範囲に限られるものではない。
【0026】
なお製版方法は必要とされるパターンサイズや突起の大きさにより選択すればよい。
またレリーフ頂部に形成された突起間に形成された溝の好ましい容積は、容積率{レリーフ上の溝容積/(レリーフ上の溝深さ×レリーフ面積)}で表すと0.1から0.9が良い。この値が小さすぎると通常の凸版構造に近くなり、大きすぎると殆どが溝となり、凸構造の占める割合が少なくなり、突起が脆弱化する。そのためインクが印刷時にレリーフの外側へ流動する動きを抑制する効果が期待できない。
図8はよりマージナルをより抑制するため、レリーフ先端部に乗せるインク量をレリーフの周辺部ほど少なくするための工夫を示した図である。図8(a)はレリーフ先端の突起を周辺部ほど大きくし、溝の間隔を狭くすることでここに溜まるインク量を中央部より減らす工夫を示した図である。突起の大きさを一定とし、突起と突起の間隔を外側ほど小さくする方法でも良い。さらに、図8(b)は突起間に形成する溝の深さをレリーフ周辺部ほど浅くし、ここに溜まるインク量を中央部より減らす工夫を示した図である。
【0027】
マージナルをより抑制するため、版構成として本発明に多層構成を組合わせても良い。
図11は多層構成を示す図である。(a)は単層版を示す。(b)は硬度差を設けた2層構成の多層版を示す。(c)は(b)と同じ構成であるがレリーフ先端(レリーフ先端とレリーフ側面の角度)が鋭角に構成された版を示す。(d)はショルダー角(基部層とレリーフ側面の角度)を示す。即ち、凸版のレリーフの多層化 図11(b)、或いはレリーフ層と基部層という多層化を併用しても良い。版から転写されたインク皮膜の均一性を高めるにはインクが着肉するレリーフ上部を低硬度(低圧縮モジュラス)とする。但し、低硬度にすると、印刷時のドットゲインが大きくなる傾向があるため、低硬度層の厚みは印刷実験により最適化する必要がある。逆に、インク着肉性は十分であるがドットゲインが大きい場合、マージナルをより抑制するため、レリーフ上部層の硬度を下部層より高めに設定し、印圧による応力を下部層でより多く吸収することで対応できる場合がある。あまり硬度を低くしすぎると印圧吸収効果が過剰に作用しインクの転移が低下することが見られるため、硬度差の最適化が必要である。
【0028】
マージナルを抑制する方法としては、レリーフ上部層のショルダーを鋭角的、図14(c)にする技術が適用出来る。型に未硬化樹脂を流し込んで版を作成するプロセスにおいては、元の型のレリーフ形状を多段に加工すればよい。支持体の下に柔軟な層を設ける手段もあるが、印圧吸収効果は前記方法に比べ低い傾向にある。レリーフの断面形状は傾倒を防ぐためには基部に近いレリーフ形状は富士山のように拡がった、即ちショルダー角、図11(d)の小さい単層版か下層部ショルダー角の小さい多層レリーフ構成が好ましいと考えられる。
次に微細突起の効果に加え、レリーフ頂部表面と溝内部の表面自由エネルギーを違える方法を併用し、マージナルを低減させる方法について説明する。
【0029】
溝部表面自由エネルギーよりレリーフ頂部表面のそれを下げ、頂部表面へインクを濡れ難くした場合(図4)、インクは溝部へ溜まり(図4(a))、頂部表面には殆ど無い状態となる。この状態で基板へ押し付けると溝内部のインクが基板へ押し付けられる(図4(b))が、頂部表面にインクが殆ど無いため過大な印圧で押し付けない限りレリーフ外へ流れ出すインクを押さえることができる。版が基板から離れた後(図4(c))、図4(d)のようにインクがレベリングする。
レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーより溝部のそれを下げ、溝部へインクを濡れ難くした場合(図5)、インクは頂部表面に付着し溝内部へは殆ど付着しない。(図5(a)) この状態で基板へ押し付けて印刷すると、押し圧によりインクが広がり、過剰なインクは溝部へ入り込み(図5(b))、レリーフの外側へ流れ出しが抑制される。溝内部がインクがはじくように構成されていれば、版が離れるときにインクは基板側へ移り溝内部へは残らない。そのため繰り返し印刷を行うことができる。版が基板から離れた後、図5(c)、図5(d)、のようにインクはレベリングする。
【0030】
次に突起の配列について説明する。配列に関しては碁盤の目(図6(a)(b))のほか千鳥配列(図7(a)、(b))を採ることも可能である。例えば千鳥配列図7(a)、(b)では突起間距離がより均等化することでレベリング性向上が、隣り合う突起が碁盤の目配列と比較しずれるため、ずれた方向へのインクの流れの抑制に効果的である。また図10(c)、(d)のように配列することで外側へのインクの流れを抑制することができる。
更に本発明では印刷方式として、樹脂版によるフレキソ方式を例に挙げて説明したが、典型的なフレキソ印刷のみならず他の凸版印刷方式、例えば凸版オフセット印刷方式の凸版についても同様に実施可能である。
【0031】
以上に記した方法でマージナルが抑制されることにより、より近接したパターンを独立して形成できるようになる。図3は従来技術と本実施形態のパターン再現性を比較する拡大図である。従来はマージナルによりパターン同士を近づけると、パターンとパターンが繋がってしまう場合があったが(図3(a))、本実施形態ではマージナルの低減により繋がりを抑制し(図3(b))、実施しない場合と比較しパターン間隔をより狭めることができる。以上の結果から明らかなように、本発明によれば、周囲へのインクのはみ出しが抑制され、マージナルが押さえられる。従って、パターンとパターンの間隔をより狭くすることが可能となる。
次に、上述した印刷版によりデバイスを形成する方法について、TFTを例として説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンを作成する。インクとしては金属微粒子を分散したものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に形成したパターン上の所定の位置に合わせ、TFTのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。印刷版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版は変更する。
【0032】
インクとしては高分子の樹脂材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料などが使用可能である。次に所定の位置にソース電極、ドレイン電極、とこれらに接続される配線を形成する。次にソース、ドレイン電極に跨るように半導体のパターンを形成する。インクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系などの有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。材料としては高分子の樹脂材料などを溶剤に溶解したものが使用可能である。
尚、本発明の凸版は、上記TFTに用いる場合を含め、配線、電極、絶縁膜、シール材や、EL発光材料、半導体材料、カラーフィルターなどの機能性材料などの印刷に用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、エレクトロニクス,フォトニクス,バイオエレクトロニクス等に関連する微細パターン作成を凸版印刷法で実施する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】印刷用版を示す図である。(a)レリーフ断面を示す。(b)レリーフ先端を示す。
【図2】凸版印刷に使用する凸版印刷版と転写時の課題を示す図である。(a)凸版印刷版を示す。(b)インクを基板へ押し付けた状態を示す。(c)基板へ転写されたインクを示す。
【図3】マージナルのパターンへの影響を示す図である。(a)マージナルが大きいためパターンが繋がった状態を示す図である。(b)マージナルが改善されパターンが分離された状態を示す図である。
【図4】頂部部表面の表面自由エネルギーを低くしインクをはじくようにした時のパターン形成過程を示す図である。(a)インクを版に供給した時状態を示す。(b)版を基板へ押し付けた時状態を示す。(c)インクが基板へ転写した時の状態を示す。(d)インクが基板上でレベリングしたときの状態を示す。
【図5】溝内部の表面自由エネルギーを低くしインクが溝へ入らないようにした時のパターン形成過程を示す図である。(a)インクを版に供給した時状態を示す。(b)版を基板へ押し付けた状態を示す。(c)インクが基板へ転写した時の状態を示す。(d)インクが基板上でレベリングしたときの状態を示す。
【図6】レリーフ端部に於いて形状に沿った線部を有する微小突起が配置されたことを説明する図である。(a)配列方向とレリーフ端部の方向が一致している場合を示す。(b)パターンの一部が配列方向に対し斜めの直線で構成され突起を横切る場合を示す。(c)パターンの一部が曲線で構成され突起を横切る場合を示す。(d)配列方向とレリーフ端部の方法が一致し、パターンの端部が突起を横切る場合を示す。(e)曲線状パターンに突起を配列した場合を示す。
【図7】千鳥配列を示す図である。(a)突起が四角形の場合の千鳥配列を示す。(b)突起が円形の場合の千鳥配列を示す。(c)直線で構成されたパターンに於いてインクが外側へ流れ難いよう配列した状態を示す。(d)曲線で構成されたパターンに於いてインクが外側へ流れ難いよう配列した状態を示す。
【図8】レリーフ周辺のインク密度を下げるため溝幅もしくは溝深さで調整した例を示す図である。(a)周辺部の溝幅を狭くした場合を示す。(b)周辺部の溝深さを浅くした場合を示す。
【図9】印刷機を示す図である。
【図10】印刷工程を示す図である。図はいずれも断面を示す。(a)印刷機のアニロックスプレート上にインクが展開された状態を示す。(b)インクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態を示す(c)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態を示す。(d)は版を基板へ押し付けた状態を示す。(e)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態を示す。(f)はインクがレベリングした時の状態を示す。
【図11】レリーフ断面形状を示す図である。(a)単層版を示す。(b)多層版の硬度差を設けた2層構造を示す。(c)多層版のショルダー差を設けた2層構造を示す。(d)ショルダー角を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 版ベース部
2 レリーフ
3 レリーフ先端に設けられた突起
4 溝
5 基板(被印刷物)
6 インク
7 マージナル(頂面よりはみ出したインク)
8 マージナルが無い場合のパターン
9 印刷機の印刷基板を載せるベース
10 印刷されたパターン
11 アニロックスプレート
12 ドクターブレード
13 ドクターブレード移動方向
14 版
15 版胴
16 版胴の移動方向
17 ショルダー角
18 突起のレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った線部
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷などの凸版印刷に使用する凸版印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネル、回路のパターン形成などで微細なサイズのものは一般的にフォトリソ法が用いられてきた。印刷法はフォトリソ法と比較し、処理速度が速い、プロセスに関わる廃棄物が少ない、材料の利用効率が高いなどコスト低減が期待されているが要求に答えきれていなかった。
図2は、凸版印刷に使用する凸版印刷版と課題を示す図である。従来より、レリーフ10の先端にインク6を付着し印刷基板に加圧転写する凸版印刷法が広く普及している。このような凸版の代表例として、版に樹脂材料を使用したフレキソ印刷法を挙げることができる。版が樹脂であるため、加工が比較的容易であること、版材に柔軟性があるため基板へのダメージ、重ね刷り時に於いて先に形成されたパターンへ与えるダメージが低減されること、凸版であるため非画像部にインクが付着しないことなどの特長がある。電子デバイスへの応用を想定した場合は、これらの特長は有利に働く。
【0003】
しかしながら、微細パターンを印刷形成するための手段としては凸版及び凸版印刷法は殆ど使用されていなかった。その主な理由は、マージナル7の発生というこの方法特有の問題があり、微細パターンを正確に形成することが難しかったからである。凸版印刷方式においてはインクの転写(図2(b))を行う工程で印圧を加えなければならないが、印刷版のレリーフ2と基板5に挟まれたインクが、レリーフ先端からその周囲にはみ出し、所定の寸法を維持することが困難になる。このように印刷されたパターンの方が印刷版のパターンより大きくなった部分をマージナル7という。更にパターンが微細になりパターン間の距離が小さくなると、マージナル7により隣のパターンと繋ってしまうという問題が発生する。(図3(a)) 特に配線や電極など導電性パターンを形成する場合、パターンが繋がることはショートを発生させることになり、正常に機能させることができなくなるという問題があった。
【特許文献1】特許第3475498号公報
【特許文献2】特開2002−117755号公報
【特許文献3】特開2002−178654号公報
【特許文献4】特開2004−237545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今までにマージナルを減らすために以下のような方法が提案されてきた。しかしながら、マージナル防止のため版の凸部でインクを固めた後、固化したインク成分を粘着物質を介して基板に転写する方法(特許文献1参照)では、電子デバイスなどにおいて先に形成されたパターンと後から形成されたパターン相互間で、電気的接続を必要とする場合、相互の導通性低下が、また、絶縁層との積層では界面でのトラップ発生によるデバイス特性への影響が、更には強度的に脆弱な薄膜の転写に於いては転写時のストレスにより膜中へクラックが入る問題が考えられる。版の凸部の周囲に障壁を設ける方法も提案されている(特許文献2参照)が、インクの粘度が低い場合はワークへの押し付けが不均等になり、既にパターンがある場合、段差により障壁で押さえきれずに流れ出す問題が懸念される。
【0005】
上記問題に対して、版の凸部に窪みを設け(特許文献3参照)ここに余剰インクを収容する方法も提案されている。しかしながら、繰り返し印刷を行う場合は、余剰インクを収容するためには窪みにインクが無いという条件を満たす必要があるが、インクの残留に不安があり、繰り返し印刷の際、効果の持続性低下が懸念される。版の凸部上に微小突起や凸状を設ける方法も提案されている(特許文献4参照)が、微小突起の場合、その形状がエッジ部分に沿った形状でなく、基板上に形成されるパターンエッジの再現性に不安がある。
そこで、本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、表示パネルにおける配線、電極、絶縁材料、機能材料や電子回路の配線形成に最適な印刷版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の版は、版のレリーフ上に供給されたインクを被印刷体へ転写する印刷用凸版に於いて、前記レリーフ上に突起が複数個形成され、前記複数の突起のうち前記レリーフ端部の突起の頂部周辺の形状がそのレリーフ端部の形状に沿った線部を有することを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に係る請求項2の版は、請求項1に記載の印刷用凸版於いて、前記線部は直線、または曲線を有することを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に係る請求項3の版は、請求項1または2のいずれに記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ端部以外の突起の頂部周辺の形状が、該端部の突起と同じ形状もしくは異なる形状であることを特徴とする印刷用凸版である。
【0007】
本発明に係る請求項4の版は、請求項1から3のいずれかひとつに記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ頂部表面と前記レリーフ溝部の表面自由エネルギー差が5×10−2mJ/m2以上であることを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に関わる請求項5の版は、請求項4に記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ頂部表面がインクをはじき前記レリーフ溝部がインクにより濡れる組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に関わる請求項6の版は、請求項4に記載の印刷用凸版於いて、前記レリーフ頂部表面がインクに濡れ前記レリーフ溝部がインクをはじく組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版である。
【0008】
本発明に関わる請求項7の版は、請求項4に記載の印刷用凸版に、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも小さいことを特徴とする印刷用凸版である。
本発明に関わる請求項8の版は、請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも大きいことを特徴とする印刷用凸版である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷版を用いてパターン形成を行えば、凸版のレリーフ先端に設けた突起が印刷時のインクの流れ出しを阻止するように働くためマージナルが抑制され、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防ぐことができ、印刷法による電子デバイス(配線、電極、絶縁材料、機能材料による機能素子や回路形成)への応用が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の「微細パターン形成用凸版」について説明する。図1は凸版のレリーフ上に、四角柱の突起が複数形成され碁盤の目状に配置された状態を示した図である。
図1(a)はレリーフの断面を示すものであり、3が突起で4が溝である。図1(b)はレリーフのインクが付着する面を示したものであり、3が突起で4が溝である。
図6、図7は、本発明のレリーフ上に突起が複数個形成され、レリーフ端部においてはその形状に沿った線部を有する突起を形成することを説明する図である。
図6(a)は碁盤の目配列で突起が四角柱でレリーフ端部の形状が直線であり、これと突起の配列方向が同じ場合の図である。図6(b)は突起の配列方向に対し、レリーフ端部の形状が斜め直線を一部含む状態を示す図である。この場合に於いて、斜め直線部分のレリーフ端部にかかった突起は、斜め直線部分で切り落とされた形状となる。この切り落とされた部分に相当する部分が、レリーフ端部の形状に沿った線部になる。図6(c)はレリーフ端部の形状が曲線を一部含む状態を示す図である。この曲線部にかかった突起は、レリーフ端部の曲線部分で切り落とされた形状になり、この部分がレリーフ端部の形状に沿った線部になる。図6(d)は突起が円柱の場合を示す図である。レリーフ端部にかかった突起は、レリーフ端部で切り落とされた形状となり、この部分がレリーフ端部の形状に沿った線分になる。図6(e)は曲線状のレリーフに突起が形成された状態を示す図である。レリーフの曲線に沿って突起が形成され、突起はレリーフ形状と一致しており、レリーフに沿った線部を有する。
【0011】
図7は突起の配列を工夫することで、インクの流れ出しをより効果的に抑制することを狙いとした配置を示す。
図7(a)は四角形(b)は円状の突起を千鳥状に配置した状態を示す例である。図7(c)、(d)は突起をパターン外側に流れ出そうとするインクをより阻止する方向に配列した状態を示す図である。図7(c)は突起形状が長方形であり、長辺がレリーフ端部の形状に沿った方向に配列した状態を示す。図7(d)は突起形状が円弧であり、円弧が円状のレリーフ端部の形状に沿った方向に配列した状態を示す。前記いずれの場合に於いても、レリーフ端部の突起の頂部周辺の形状がそのレリーフ端部の形状に沿った線部を有するように形成された状態を示している。
次に版の製作方法について述べる。パターンの形成方法は、(1)光により形成する方法、(2)型から複製する方法、(3)彫刻により形成する方法、がある。
【0012】
(1)光により形成する方法では感光性樹脂が使用可能であり、方法として次の方法が挙げられる。通常の感光性樹脂を用いた方法で、レリーフの形状に合わせ、微細突起に相当する部分において光を透過しそれ以外の部分では透過しないネガフィルムを準備する。露光前が液状の感光性樹脂を用いる場合、このネガフィルムをガラス板の表面に積層後、その上に液状の感光性樹脂を塗布し、その表面に透明なベースフィルムを積層し、更にその表面にガラス板を積層する。なお感光性樹脂層の厚みは所定の寸法になるよう設定する。次いでランプを用い、上側のガラス板とベースフィルムを介して紫外線を照射すると共に、下側のガラス板とネガフィルムを介して紫外線を照射する。画像露光用の照射光源は公知のものを使用可能である。
上記液状感光性樹脂からなる層の上面全体から入った光と、ネガフィルムの光を透過する部分を透過した光が所定量届いた部分が硬化される。硬化後上下のガラス板、ネガフィルムを取り除き、未硬化部分を洗浄除去し、レリーフ形成側に紫外線を照射し硬化を促進し、印刷用版とする。
別の方法としてレリーフ形成のため、感光性樹脂を硬化可能な波長のレーザー光源を用い、硬化に必要な光量を走査露光しても良い。常温で液状タイプでなく常温で固溶体状の感光性樹脂を用いる場合、加熱して所定の厚みに成形したのち、同様に画像露光以降の操作を行えばよい。さらに、上記はネガタイプの感光性樹脂を使用した際の製作方法であるが、ポジタイプの感光性樹脂をポジフィルムと共に用いることも可能である。
【0013】
(2)型から複製を作成する方法としては次の方法を挙げることができる。パターンに対応した型を作成し、樹脂にふさわしい方法で型取りする。方法としては、1)光硬化法、2)熱硬化法、を採用することができる。または加熱した型を樹脂に押し付け、パターンに相当する形状を付与する、3)熱転写法(冷却凝固法ともいう)、でも良い。1)には感光性樹脂、2)には室温で液体もしくは固溶体状の熱硬化性樹脂、3)には熱可塑性樹脂が使用可能である。型は、採用する加工方法、解像度により公知のものから選択すればよい。金属金型、Si型、石英型、SiC型、Ni電鋳型、樹脂型などが使用可能である。
【0014】
(3)彫刻により形成する方法としては、次の方法を挙げることができる。
架橋されたゴム系材料や、硬化された熱硬化性樹脂、同じく硬化された光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などに対応可能である。固体の版材料を彫刻する方法としては、レーザーによる彫刻方式を挙げることができる。現実的には必要とする形状の寸法に応じレーザーを使い分ければよい。炭酸ガスレーザー、VAG3倍波もしくは4倍波レーザー、さらにはエキシマレーザーなどを解像度や彫刻性により選定して彫刻することができる。この方法を用いれば、レリーフ頂部表面と溝部の表面自由エネルギーが異なる組み合わせの版も作ることができる。レリーフ先端とその下とで異なる材料を積層する、もしくは異なる材料の塗布やプラズマ処理などで表層と下の層で表面自由エネルギーの異なる組み合わせを作り、レーザーで下の層まで達するよう彫刻する方法を採ることもできる。
【0015】
本発明の材料には、上記のように室温で固体、高温で流動性を有する熱可塑性樹脂、室温で粘凋、もしくは固溶体状の感光性樹脂、熱硬化性樹脂を可塑性などを用いて版に成型することができる。樹脂の種類について特に制約は無い。版として使用する形態における力学的物性、例えば硬度、ヤング率、反発弾性、引張強伸度や表面張力、耐溶剤性などが所望する印刷に適するように選択、設計すればよい。
ネガタイプの感光性樹脂としては、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系、光二量化反応系などが適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系で説明する。
【0016】
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用し得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤、重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
プレポリマーとしては重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有するプレポリマーと光重合開始剤、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体を含むラジカル重合性樹脂組成物で、例えばプレポリマーとして、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂およびこれらの各種変性物などを少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。例えばこのうちの感光性樹脂組成物としては特開昭52−90804号、特公昭48−19125号、特開昭49−109104号、特公昭48−41708号を始め多数の公知文献に記載されている感光性樹脂を例示できる(後述文献参照)。
【0017】
モノマーとしては重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体としては、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N‘−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等やフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31-36記載の材料を用いることができる。
【0018】
開始剤としてはこれらをエチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行うときは、公知の光重合開始剤を用いることが反応効率上好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド,1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(Oベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。
【0019】
熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。
具体的には、東レリサーチセンター調査研究事業部編、「フォトポリマー技術の新展開」東レリサーチセンター刊、1993年3月10日、p.頁35、山岡亜夫監修、「フォトポリマーの基礎と応用」シーエムシー出版、2003年3月27日、第4章製版材料とフォトレジスト、や松井真二他監修、「ナノインプリントの開発と応用」、シーエムシー出版刊、2005年8月31日、p.50、p.151、記載の材料を用いることができる。同じくp.158、p.159、記載のフッ素変性したフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートや含フッ素のエポキシ系の感光性樹脂を用いることもできる。
また少なくとも未加硫ゴムと重合性二重結合を有する単量体、重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号、特開昭47−37521号)や、発インク性とのバランスが必要だが、ジアルキルシリコン系樹脂の使用も可能である。
【0020】
熱可塑性樹脂としてはポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、変性ポリフェ二レンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、フッ素系樹脂ではフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ノルボルネン共重合体等のフッ素化ポリオレフィン、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ビニルエーテル樹脂や、これ以外にも熱により加工できるものであれば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.113−397、各論 1.重合型樹脂 2.縮合型樹脂 記載の熱可塑性樹脂を使用しても良い。
【0021】
熱硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート、不飽和メタクリレート、樹脂及びこれらの各種変性を少なくとも1種と、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体に熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物や、エポキシに硬化剤を添加した樹脂組成物、シリコン系のポリジメチルシロキサン系樹脂を使用しても良い。
フッ素系樹脂では架橋材や、熱によりラジカルの発生する重合開始剤を含むフッ素モノマーや含フッ素オリゴマーを用いた熱硬化性樹脂を使用しても良い。これ以外にも三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.240−397各論 2.縮合型樹脂 記載の熱硬化性樹脂を使用しても良い。
ゴム系材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ブチル、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、スチレンブタジエン、ニトリル、アクリル、エピクロルヒドリン、クロロプレン、ウレタン、二トリル、シリコン、フッ素系ゴムを使用しても良い。以上に記した方法や材料を用いることにより、本発明に係る印刷用凸版を製版することができる。
【0022】
次に印刷機について説明する。印刷機は市販されている図9に示す方式のものを用いることができる。これは一例であり、この方式に限定されるもではない。
印刷は以下のようにして行う。図9に示した方式の印刷機を使用し、凹凸を設けたアニロックスプレート11上にインクを置き、ドクターブレード12を13の方向に引くことによりインクが計量され、アニロックスプレート11に版14を接触させた後分離すると、レリーフ上に形成された突起間の溝部と突起の上面にインクが付着する。この状態で基板5に押し付けインクを転写する。その後、インクのレベリングが進み均一化する。図10は版の部分を拡大して示したものであり、(a)の印刷機のアニロックスプレート上に展開されたインクが、(b)、(c)に示すように版のレリーフに供給され、(c)から(f)に示すように基板に転写されパターンが形成されるまでを示した図である。図10(a)は印刷機のアニロックスプレート上にインクが展開された状態と、インクが供給される前の版13を示す。
【0023】
次にインクをレリーフへ転写するため図10(b)に示すようにインクの展開されたアニロックスプレートに版のレリーフ先端を押し付ける。この時、インクはレリーフ先端に形成された突起間の溝と突起先端に移行する。図10(c)はインクが版のレリーフ先端部へ供給された状態と印刷される基板を示す。その後インクを基板へ転写させるため、図10(d)に示すようにレリーフ先端部を基板へ押し付ける。図10(e)は版のレリーフが基板から離れインクが基板へ転写された状態を示す。さらに図10(f)は基板上でインクのレベリングが進みパターンが形成された状態を示す。以上の方法にて印刷によりパターンが形成される。
【0024】
本実施形態によれば、レリーフ上へ突起を設けることにより、押し付けた時に発生するレリーフ外側へのインクの流れが阻止されるため、マージナルの発生を低減させることができる。レリーフ端部においてはその形状に沿った線部を有する突起が配置されるため、パターンの再現性も向上する。
次に突起の形状について述べる。平面形状は円形もしくは三角形、四角形、六角形、それ以上の多角形や直線、曲線で形成された形状を用いることができるが、インクを溜める溝の容積や、インク転写用のアニロックスプレート等との組合わせによるモワレや斑、インクのアニロックスプレートからの転写性、印刷後のレベリングの状況、インクの基板への転写効率を勘案して決めればよい。また突起側壁は傾斜していても良い。傾斜を付けることによりインクの転写効率が向上するというという利点がある。これらの構成や突起の配置間隔(溝の幅)、深さを変えることでインクの量を調整することもできる。もちろん一つのパターン内でこれらの構成を変えてもよい。
【0025】
配列に関しては碁盤の目 図6(a)、(b)のほか千鳥配列 図7(a)、(b)を採ることも可能である。例えば千鳥配列図7(a)、(b)では突起距離がより均等化することでレベリング性向上が、隣り合う突起が碁盤の目配列と比較しずれるため、その方向へのインクの流れの抑制に効果があると考えられる。
突起頂部の大きさに関しては形成するパターンサイズにもよるが、一例を挙げると、パターンの線状のレリーフの幅方向に並ぶ個数はエッジやパターン内部の均一性を考慮すると少なくとも2個以上、好ましくは3個以上が良い。例えば50μm幅のラインであれば、3個以上並べる場合ピッチを20μmとし、溝と頂部の幅を等しくすれば、突起の幅は10μmとなる。同様に25μm幅のラインの場合で突起を3個並べる場合はピッチは10μmで突起は5μmとなる。なお突起のレリーフ長手方向の大きさは幅方向と同等を基本とするが、必ずしも同等にする必要は無い。突起の大きさや突起の間隔は、要求されるパターンの幅や厚み、インク粘度、インクのレベリング性、濃度や版上に乗せるインク量、マージナルの状況などの条件を勘案して調整すればよく、上記範囲に限られるものではない。
【0026】
なお製版方法は必要とされるパターンサイズや突起の大きさにより選択すればよい。
またレリーフ頂部に形成された突起間に形成された溝の好ましい容積は、容積率{レリーフ上の溝容積/(レリーフ上の溝深さ×レリーフ面積)}で表すと0.1から0.9が良い。この値が小さすぎると通常の凸版構造に近くなり、大きすぎると殆どが溝となり、凸構造の占める割合が少なくなり、突起が脆弱化する。そのためインクが印刷時にレリーフの外側へ流動する動きを抑制する効果が期待できない。
図8はよりマージナルをより抑制するため、レリーフ先端部に乗せるインク量をレリーフの周辺部ほど少なくするための工夫を示した図である。図8(a)はレリーフ先端の突起を周辺部ほど大きくし、溝の間隔を狭くすることでここに溜まるインク量を中央部より減らす工夫を示した図である。突起の大きさを一定とし、突起と突起の間隔を外側ほど小さくする方法でも良い。さらに、図8(b)は突起間に形成する溝の深さをレリーフ周辺部ほど浅くし、ここに溜まるインク量を中央部より減らす工夫を示した図である。
【0027】
マージナルをより抑制するため、版構成として本発明に多層構成を組合わせても良い。
図11は多層構成を示す図である。(a)は単層版を示す。(b)は硬度差を設けた2層構成の多層版を示す。(c)は(b)と同じ構成であるがレリーフ先端(レリーフ先端とレリーフ側面の角度)が鋭角に構成された版を示す。(d)はショルダー角(基部層とレリーフ側面の角度)を示す。即ち、凸版のレリーフの多層化 図11(b)、或いはレリーフ層と基部層という多層化を併用しても良い。版から転写されたインク皮膜の均一性を高めるにはインクが着肉するレリーフ上部を低硬度(低圧縮モジュラス)とする。但し、低硬度にすると、印刷時のドットゲインが大きくなる傾向があるため、低硬度層の厚みは印刷実験により最適化する必要がある。逆に、インク着肉性は十分であるがドットゲインが大きい場合、マージナルをより抑制するため、レリーフ上部層の硬度を下部層より高めに設定し、印圧による応力を下部層でより多く吸収することで対応できる場合がある。あまり硬度を低くしすぎると印圧吸収効果が過剰に作用しインクの転移が低下することが見られるため、硬度差の最適化が必要である。
【0028】
マージナルを抑制する方法としては、レリーフ上部層のショルダーを鋭角的、図14(c)にする技術が適用出来る。型に未硬化樹脂を流し込んで版を作成するプロセスにおいては、元の型のレリーフ形状を多段に加工すればよい。支持体の下に柔軟な層を設ける手段もあるが、印圧吸収効果は前記方法に比べ低い傾向にある。レリーフの断面形状は傾倒を防ぐためには基部に近いレリーフ形状は富士山のように拡がった、即ちショルダー角、図11(d)の小さい単層版か下層部ショルダー角の小さい多層レリーフ構成が好ましいと考えられる。
次に微細突起の効果に加え、レリーフ頂部表面と溝内部の表面自由エネルギーを違える方法を併用し、マージナルを低減させる方法について説明する。
【0029】
溝部表面自由エネルギーよりレリーフ頂部表面のそれを下げ、頂部表面へインクを濡れ難くした場合(図4)、インクは溝部へ溜まり(図4(a))、頂部表面には殆ど無い状態となる。この状態で基板へ押し付けると溝内部のインクが基板へ押し付けられる(図4(b))が、頂部表面にインクが殆ど無いため過大な印圧で押し付けない限りレリーフ外へ流れ出すインクを押さえることができる。版が基板から離れた後(図4(c))、図4(d)のようにインクがレベリングする。
レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーより溝部のそれを下げ、溝部へインクを濡れ難くした場合(図5)、インクは頂部表面に付着し溝内部へは殆ど付着しない。(図5(a)) この状態で基板へ押し付けて印刷すると、押し圧によりインクが広がり、過剰なインクは溝部へ入り込み(図5(b))、レリーフの外側へ流れ出しが抑制される。溝内部がインクがはじくように構成されていれば、版が離れるときにインクは基板側へ移り溝内部へは残らない。そのため繰り返し印刷を行うことができる。版が基板から離れた後、図5(c)、図5(d)、のようにインクはレベリングする。
【0030】
次に突起の配列について説明する。配列に関しては碁盤の目(図6(a)(b))のほか千鳥配列(図7(a)、(b))を採ることも可能である。例えば千鳥配列図7(a)、(b)では突起間距離がより均等化することでレベリング性向上が、隣り合う突起が碁盤の目配列と比較しずれるため、ずれた方向へのインクの流れの抑制に効果的である。また図10(c)、(d)のように配列することで外側へのインクの流れを抑制することができる。
更に本発明では印刷方式として、樹脂版によるフレキソ方式を例に挙げて説明したが、典型的なフレキソ印刷のみならず他の凸版印刷方式、例えば凸版オフセット印刷方式の凸版についても同様に実施可能である。
【0031】
以上に記した方法でマージナルが抑制されることにより、より近接したパターンを独立して形成できるようになる。図3は従来技術と本実施形態のパターン再現性を比較する拡大図である。従来はマージナルによりパターン同士を近づけると、パターンとパターンが繋がってしまう場合があったが(図3(a))、本実施形態ではマージナルの低減により繋がりを抑制し(図3(b))、実施しない場合と比較しパターン間隔をより狭めることができる。以上の結果から明らかなように、本発明によれば、周囲へのインクのはみ出しが抑制され、マージナルが押さえられる。従って、パターンとパターンの間隔をより狭くすることが可能となる。
次に、上述した印刷版によりデバイスを形成する方法について、TFTを例として説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンを作成する。インクとしては金属微粒子を分散したものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に形成したパターン上の所定の位置に合わせ、TFTのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。印刷版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版は変更する。
【0032】
インクとしては高分子の樹脂材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料などが使用可能である。次に所定の位置にソース電極、ドレイン電極、とこれらに接続される配線を形成する。次にソース、ドレイン電極に跨るように半導体のパターンを形成する。インクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系などの有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。材料としては高分子の樹脂材料などを溶剤に溶解したものが使用可能である。
尚、本発明の凸版は、上記TFTに用いる場合を含め、配線、電極、絶縁膜、シール材や、EL発光材料、半導体材料、カラーフィルターなどの機能性材料などの印刷に用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、エレクトロニクス,フォトニクス,バイオエレクトロニクス等に関連する微細パターン作成を凸版印刷法で実施する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】印刷用版を示す図である。(a)レリーフ断面を示す。(b)レリーフ先端を示す。
【図2】凸版印刷に使用する凸版印刷版と転写時の課題を示す図である。(a)凸版印刷版を示す。(b)インクを基板へ押し付けた状態を示す。(c)基板へ転写されたインクを示す。
【図3】マージナルのパターンへの影響を示す図である。(a)マージナルが大きいためパターンが繋がった状態を示す図である。(b)マージナルが改善されパターンが分離された状態を示す図である。
【図4】頂部部表面の表面自由エネルギーを低くしインクをはじくようにした時のパターン形成過程を示す図である。(a)インクを版に供給した時状態を示す。(b)版を基板へ押し付けた時状態を示す。(c)インクが基板へ転写した時の状態を示す。(d)インクが基板上でレベリングしたときの状態を示す。
【図5】溝内部の表面自由エネルギーを低くしインクが溝へ入らないようにした時のパターン形成過程を示す図である。(a)インクを版に供給した時状態を示す。(b)版を基板へ押し付けた状態を示す。(c)インクが基板へ転写した時の状態を示す。(d)インクが基板上でレベリングしたときの状態を示す。
【図6】レリーフ端部に於いて形状に沿った線部を有する微小突起が配置されたことを説明する図である。(a)配列方向とレリーフ端部の方向が一致している場合を示す。(b)パターンの一部が配列方向に対し斜めの直線で構成され突起を横切る場合を示す。(c)パターンの一部が曲線で構成され突起を横切る場合を示す。(d)配列方向とレリーフ端部の方法が一致し、パターンの端部が突起を横切る場合を示す。(e)曲線状パターンに突起を配列した場合を示す。
【図7】千鳥配列を示す図である。(a)突起が四角形の場合の千鳥配列を示す。(b)突起が円形の場合の千鳥配列を示す。(c)直線で構成されたパターンに於いてインクが外側へ流れ難いよう配列した状態を示す。(d)曲線で構成されたパターンに於いてインクが外側へ流れ難いよう配列した状態を示す。
【図8】レリーフ周辺のインク密度を下げるため溝幅もしくは溝深さで調整した例を示す図である。(a)周辺部の溝幅を狭くした場合を示す。(b)周辺部の溝深さを浅くした場合を示す。
【図9】印刷機を示す図である。
【図10】印刷工程を示す図である。図はいずれも断面を示す。(a)印刷機のアニロックスプレート上にインクが展開された状態を示す。(b)インクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態を示す(c)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態を示す。(d)は版を基板へ押し付けた状態を示す。(e)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態を示す。(f)はインクがレベリングした時の状態を示す。
【図11】レリーフ断面形状を示す図である。(a)単層版を示す。(b)多層版の硬度差を設けた2層構造を示す。(c)多層版のショルダー差を設けた2層構造を示す。(d)ショルダー角を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 版ベース部
2 レリーフ
3 レリーフ先端に設けられた突起
4 溝
5 基板(被印刷物)
6 インク
7 マージナル(頂面よりはみ出したインク)
8 マージナルが無い場合のパターン
9 印刷機の印刷基板を載せるベース
10 印刷されたパターン
11 アニロックスプレート
12 ドクターブレード
13 ドクターブレード移動方向
14 版
15 版胴
16 版胴の移動方向
17 ショルダー角
18 突起のレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った線部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
版のレリーフ上に供給されたインクを被印刷体へ転写する印刷用凸版に於いて、前記レリーフ上に突起が複数個形成され、前記複数の突起のうち前記レリーフ端部の突起の頂部周辺の形状がそのレリーフ端部の形状に沿った線部を有することを特徴とする印刷用凸版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷用凸版に於いて、前記線部は直線、または曲線を有することを特徴とする印刷用凸版。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ端部以外の突起の頂部周辺の形状が、該端部の突起と同じ形状もしくは異なる形状であることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかひとつに記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面と前記レリーフ溝部の表面自由エネルギー差が5×10-2mJ/m2以上であることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面がインクをはじき前記レリーフ溝部がインクにより濡れる組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面がインクに濡れ前記レリーフ溝部がインクをはじく組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項7】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも小さいことを特徴とする印刷用凸版。
【請求項8】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも大きいことを特徴とする印刷用凸版。
【請求項1】
版のレリーフ上に供給されたインクを被印刷体へ転写する印刷用凸版に於いて、前記レリーフ上に突起が複数個形成され、前記複数の突起のうち前記レリーフ端部の突起の頂部周辺の形状がそのレリーフ端部の形状に沿った線部を有することを特徴とする印刷用凸版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷用凸版に於いて、前記線部は直線、または曲線を有することを特徴とする印刷用凸版。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ端部以外の突起の頂部周辺の形状が、該端部の突起と同じ形状もしくは異なる形状であることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかひとつに記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面と前記レリーフ溝部の表面自由エネルギー差が5×10-2mJ/m2以上であることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面がインクをはじき前記レリーフ溝部がインクにより濡れる組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面がインクに濡れ前記レリーフ溝部がインクをはじく組み合わせであることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項7】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも小さいことを特徴とする印刷用凸版。
【請求項8】
請求項4に記載の印刷用凸版に於いて、前記レリーフ頂部表面の表面自由エネルギーは前記レリーフ溝部の表面自由エネルギーよりも大きいことを特徴とする印刷用凸版。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
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【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−927(P2008−927A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170561(P2006−170561)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
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