説明

微細加工粉除去装置及び微細加工装置並びに微細加工粉除去方法

【課題】被加工物の加工中に生じる微細加工粉を、スループットの低下を招くことなく探針や加工痕から確実且つ効率良く除去すること。
【解決手段】探針3aを利用して被加工物Mを液体W内で加工しながら、加工時に生じる微細加工粉を除去する装置であって、被加工物が載置されるステージ6と、探針を有するプローブ3と、ステージとプローブとを相対的に移動させて、探針により被加工物を加工させる移動手段7とを有する加工装置4と、探針を間に挟むように液体内に配置された第1の電極11及び第2の電極12と、両電極の間に電圧を印加させて微細加工粉を液体内で移動させる電圧印加手段9とを有する微細加工粉除去装置5とを備えている微細加工装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探針を利用してフォトマスク等の被加工物を加工(例えば、切削加工)する際に生じる微細加工粉を除去する微細加工粉除去装置、及び該微細加工粉除去装置を有する微細加工装置、並びに微細加工粉除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーの進歩によりナノマシンや電子デバイス、メモリ等の微小領域の先端技術が注目を集めており、その加工技術の向上が要求されている。こうした微細加工手段の1つとして、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を用いた方法が注目されている。この走査型プローブ顕微鏡は、半導体プロセスのように大量生産としての加工技術には至っていないものの、装置自体はシンプルで且つ比較的低価格でありながら、ナノスケールの高い加工精度を有している装置である。そのため、次世代の高密度メモリやナノエレクトロニクス、ナノマシン等における基礎的なデバイスの試作技術やマスク修正等に用いられていくことが注目されている。
【0003】
この走査型プローブ顕微鏡を用いた加工技術において最もシンプルなものとして、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)のプローブを用いて表面を直接スクラッチ(切削加工)する方法が知られている。
【特許文献1】特開2005−266650号公報
【特許文献2】特開2004−318091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では以下の課題が残されている。
即ち、従来の手法は、被加工物をプローブで直接スクラッチする機械的な切削加工であるために、微細な切削紛、即ち、ナノスケールの微細加工粉が必ず生じてしまう。ところがこの加工粉は、切削時に帯電する性質を有しているので、プローブの探針や切削加工痕の周辺等に容易に再付着するものであった。
ここで、切削加工痕若しくはその周辺に微細加工粉が付着してしまうと、該微細加工粉が邪魔となって切削加工痕が視認することができないので、その後の追加工ができなかったり、再現性の高い加工ができなくなったりする等の不具合が生じていた。
【0005】
そこで、このような不具合を極力なくすため、加工後にクリーニングを行って微細加工粉を除去する場合がある。ところがこのクリーニングは、ドライアイスクリーナを用いた物理的な除去方法やウェット洗浄を利用した除去方法が一般的であるが、いずれの方法であっても被加工物を一旦加工装置から取り外した後、別の装置に移し変える必要がある。そのため、手間がかかり、スループットが低下する問題があった。また、この問題に加えて、ドライアイスクリーナ装置は高価であり、ウェット洗浄は時間がかかるという不都合もあった。
しかも、このようなクリーニングを行ったとしても、微細加工粉を除去できない場合もあり、クリーニングを行う前の上記不都合を解消できない恐れもあった。特に、被加工物がガラス上に形成されたフォトマスクである場合には、微細加工粉が残ると透過率の低下を招いてしまうものであった。
【0006】
一方、微細加工粉が探針に付着した場合には、刃先として使用する探針が微細加工粉に覆われてしまうので、徐々に削れなくてなってしまう。特に、ダイヤモンド探針を使用している場合に、鉄系の微細加工粉が付着すると化学変化が生じて直ちに削れなくてなってしまう。また、微細加工粉が酸化を促進する場合にも、摩耗が進んでやはり削れなくなってしまう。
【0007】
上述したように、微細加工粉が探針や切削加工痕に付着してしまうことによって、加工精度の著しい低下や切れ味の低下等、様々な不都合を引き起こされていた。そのため、加工プロセスにおいては、不都合の多いクリーニングに代る新たな方法によって微細加工紛を除去することが求められている。しかしながら、原子間力顕微鏡を利用した加工プロセス中に、加工中に発生する微細加工粉を除去する有効な手立てはいまだ見出されていない。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、被加工物の加工中に生じる微細加工粉を、スループットの低下を招くことなく探針や加工痕から確実且つ効率良く除去することができる微細加工粉除去装置、及び該微細加工粉除去装置を有する除去加工装置、並びに、微細加工粉除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の微細加工装置は、探針を利用して被加工物を液体内で加工しながら、加工時に生じる微細加工粉を除去する微細加工装置であって、前記被加工物が載置されるステージと、前記探針を有し、該探針が前記被加工物に対向するように配置されたプローブと、前記ステージと前記プローブとを相対的に移動させて、前記探針により前記被加工物を加工させる移動手段とを有する加工装置と、前記探針を間に挟むように前記液体内に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加させて、前記微細加工粉を前記液体内で移動させる電圧印加手段とを有する微細加工粉除去装置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、探針を利用して被加工物を液体内で加工しながら、加工時に生じる微細加工粉を電気泳動により除去する微細加工粉除去方法であって、前記被加工物上に、前記探針を有するプローブを配置すると共に、探針を間に挟んだ状態で第1の電極及び第2の電極を配置し、少なくとも探針、第1の電極及び第2の電極を前記液体に浸した液中環境を前記被加工物上に作りだす液中設定工程と、該液中設定工程後、前記プローブを利用したAFM観察により前記被加工物を観察して、前記加工を行う位置を特定すると共に特定した位置に前記探針を位置させる位置決め工程と、該位置決め工程後、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加する電圧印加工程と、該電圧印加工程後、前記探針と前記被加工物とを相対的に移動させて、探針を利用して被加工物を加工する加工工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、まず、加工装置と微細加工粉除去装置とを組み合わせた後、液中設定工程を行う。即ち、被加工物をステージ上に載置した後、該被加工物に対向するように探針を有するプローブを配置する。また、この探針を間に挟むように第1の電極及び第2の電極をそれぞれ配置する。次いで、例えば、液体を被加工物上に吐出する等して、少なくとも探針、第1の電極及び第2の電極を液体に浸した液中環境を被加工物上に作りだす。
なお、この液中設定工程を行う際に、上述したようにスポイト等を利用して液体を被加工物上に吐出することで液中環境を作り出しても構わないし、液体が貯留されたセル等を利用して液中環境を作り出しても構わない。
【0012】
この液中設定工程が終了した後、移動手段によりステージとプローブとを相対的に移動させて、プローブを利用して被加工物を液中でAFM観察する。そして、この観察により加工を行う位置や範囲を特定する。次いで、再度移動手段によりステージとプローブとを相対的に移動させて、先ほど特定した位置に探針を位置させる位置決め工程を行う。
【0013】
この位置決め工程が終了した後、電圧印加手段によって第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加する電圧印加工程を行う。これにより、液中内の第1の電極と第2の電極との間には、電界が形成される。そして、電界が形成された後、加工工程を開始する。例えば、探針を被加工物に押し付けながら移動させることで、被加工物の表面を所定範囲だけ切削加工(スクラッチ加工)する。この場合には、被加工物の不要部分を削って修正(マスク修正)することができる。このように、探針を利用して被加工物を加工する。
【0014】
この加工時に生じたナノスケールの微細な切削紛(微細加工粉)は、液中環境下であるために、探針及び被加工物の表面上から離間して液中内に浮遊した状態となる。更にこの浮遊した微細加工粉は、帯電した状態となっている。
そのため、微細加工粉は、液中に浮遊したと同時に両電極間に形成された電界によって電気泳動現象により液体内を移動し始める。つまり、加工によって次々と発生する微細加工粉は、液中に一旦浮遊した後、第2の電極に引き寄せられるように主として電気泳動によって(以下「電気泳動によって」と表記する)移動し始める。よって、加工時に生じる微細加工粉を、探針及び加工痕から確実且つ速やかに離間させることができると共に、第2の電極側に積極的に集めて収集することができる。即ち、加工を行っている地点から、微細加工粉を速やかに除去することができる。
【0015】
従って、微細加工粉が加工中に探針や加工痕に付着してしまうことを防止することができる。その結果、微細加工粉の影響を受けずに加工することができ、正確な追加工や再現性の高い加工を行うことができると共に、加工精度の向上化を図ることができる。また、探針への付着も防止できるので、切れ味の低下や摩耗等を防止でき、探針の耐久性を向上することができる。
また、従来のクリーニングとは違って、被加工物を別の装置に移し変えることなく加工と同時に微細加工粉の除去を行えるので、除去作業を効率良く行うことができ、スループットの低下を防止することができる。
【0016】
上述したように本発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法によれば、被加工物の加工中に生じる微細加工粉を、スループットの低下を招くことなく探針や加工痕から確実且つ効率良く除去しながら、加工を行うことができる。
【0017】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記第1の電極が、前記第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記電圧印加工程の際、前記第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置された前記第1の電極を利用して、電圧を印加することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、第2の電極に微細加工粉を移動させる場合、第1の電極が第2の電極を中心として、円弧状又は環状に配置されているので、両電極に電圧を印加して電界を形成したときに、電気力線を第2の電極を中心とする1箇所に集中させることができる。よって、微細加工粉を単に第2の電極側に移動させるのではなく、1箇所に集中的に収集することができる。しかも、第1の電極と第2の電極との距離を、第1の電極上に沿った各位置で同じにすることができるので、同じ強さの電界を第1の電極と第2の電極との間に均一に形成することができる。よって、微細加工粉が液体のどこに浮遊したとしても、ムラなく同じ速度で速やかに移動させることができる。その結果、加工時に生じた微細加工粉を、より効率良く移動させて、第2の電極側に収集することができる。
【0020】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記液体が内部に貯留され、貯留された液体に浸かるように少なくとも前記探針、前記第1の電極及び前記第2の電極が収容される液体セルを備えていることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記液中設定工程の際、前記被加工物を前記液体が内部に貯留された液体セル内に収容すると共に、該液体に浸かるように、少なくとも前記探針、前記第1の電極及び前記第2の電極をそれぞれ配置することを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、液中設定工程を行う際に、液体が貯留された液体セルを利用して液中環境を作りだすことができる。即ち、被加工物を液体セル内に収容した状態でステージ上に載置する。そして、液体セル内に貯留されている液体内に浸かるように、少なくとも探針及び両電極をそれぞれ配置する。このように、液体セルを利用するだけで、簡単且つ確実に液中環境を作りだすことができるので、作業効率を向上することができる。
【0023】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、貯留した前記液体を前記液体セルから外部に排出すると共に、新たな液体を液体セル内に供給する液体排出供給手段を備えていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記加工工程後、前記液体を前記液体セル内から外部に排出すると共に、新たな液体を液体セル内に供給する液体排出供給工程を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、加工工程が終了した後、必要に応じて、液体排出供給手段により、液体セル内に貯留した液体を外部に排出することで、第2の電極側に収集された微細加工粉を適宜排出することができる。また、新たな液体を液体セル内に供給することで、液体の入れ換えも行うことができ、容易に次の加工に備えることができる。
このように液体排出供給工程を行うことで、複数箇所を加工する場合や、加工が長時間に至る場合であっても、微細加工粉の影響を極力受けずに加工し続けることができる。
【0026】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記液中設定工程の際、少なくとも前記探針、前記第1の電極及び前記第2の電極が浸かるように、前記液体を前記被加工物上に吐出することを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る微細加工粉除去方法においては、液中設定工程の際に、プローブ、第1の電極及び第2の電極をそれぞれ配置した後に、これらプローブ及び両電極に向けてピペット等により液体を吐出する。これにより、少なくとも探針及び両電極の周囲は、液体に包まれた状態となり、加工が行われる領域だけを液中環境にすることができる。
特に、加工を行う探針及び両電極の周囲だけを最小限の範囲で液中環境にできるので、液体を無駄にすることなく効率良く使用でき、低コスト化を図ることができる。また、加工を行う最小限の範囲だけを液中環境にできるので、専用のセルを用意する等の特別な準備が不要であり、構成の簡略化を図ることができる。従って、加工をより簡便に行うことができる。
【0028】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、先端側が前記液体内に浸漬されるように配置された中空状のマイクロノズルを有し、該マイクロノイズを介して基端側から液体を吸引する液体吸引手段を備えていることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記加工工程後、先端側が前記液体内に浸漬されるように配置された中空状のマイクロノズルを介して、基端側から液体を吸引する液体吸引工程を備えていることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、加工工程が終了した後、必要に応じて液体吸引手段のマイクロノズルにより液体を吸引することで、第2の電極側に収集された微細加工粉を適宜排出することができる。よって、複数箇所を加工する場合や、加工が長時間に至る場合であっても、液体吸引工程を行うことで微細加工粉の影響を極力受けずに加工し続けることができる。
【0031】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記マイクロノズル内には、少なくとも前記液体内に浸漬される先端側に前記第2の電極が収納されていることを特徴とするものである。
【0032】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記マイクロノズル内には、少なくとも前記液体内に浸漬される先端側に前記第2の電極が収納されていることを特徴とするものである。
【0033】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、少なくとも液体内に浸漬されるマイクロノズル内の先端側に第2の電極が収納されているので、第2に電極側に微細加工粉が移動する場合には加工時に生じた微細加工粉がマイクロノズルの先端に向かって移動してくる。つまり、液体と共に微細加工粉を吸引するマイクロノズルの先端に微細加工粉を集中的に収集することができる、従って、より効率良く微細加工粉を吸引して排出することができる。
【0034】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記被加工物に近接した位置に配置され、被加工物との間で前記液体を貯留して液中環境を作りだす一体型セルを有し、少なくとも前記プローブ、前記第1の電極及び前記第2の電極が、貯留された前記液体に浸かるように前記一体型セルに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0035】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記液中設定工程の際、少なくとも前記プローブ、前記第1の電極及び前記第2の電極が取り付けられた一体型セルを前記被加工物に近接した位置に配置した後、プローブ、第1の電極及び第2の電極が浸かるように被加工物との間に前記液体を貯留して液中環境を作りだすことを特徴とするものである。
【0036】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、液中設定工程を行う際に、一体型セルを利用して液中環境を作りだすことができる。即ち、プローブ、第1の電極及び第2の電極がそれぞれ取り付けられた一体型セルを、被加工物に近接した位置に配置した後、一体型セルと被加工物との間に液体を吐出する。すると、吐出された液体は、表面張力によって一体型セルと被加工物にとの間に留まった状態となる。これにより、少なくとも探針及び両電極の周囲は、液体に浸された状態となり、加工が行われる領域だけを液中環境にすることができる。
特に、加工を行う探針及び両電極の周囲だけを最小限の範囲で液中環境にできるので、液体を無駄にすることなく効率良く使用でき、低コスト化を図ることができる。
【0037】
また、液体は、一体型セルと被加工物との間に留まっているので、大気に接する面積を極力なくすことができる。そのため、液体の蒸発を防止でき、加工に時間がかかったとしても液中環境を確実に維持することができる。よって、加工時における微細加工粉の除去の信頼性を高めることができる。
また、一体型セルにプローブ及び両電極がそれぞれ取り付けられているので、加工中にプローブと両電極との相対位置関係がすれてしまうことがない。そのため、電界をより安定した状態で形成することができ、電気泳動により微細加工粉をより安定して移動させることができる。
【0038】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記一体型セルに形成された供給路及び排出路を有し、該排出路を介して貯留した前記液体を前記一体型セルから外部に排出すると共に、供給路を介して新たな液体を一体型セル内に供給する液体排出供給手段を備えていることを特徴とするものである。
【0039】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記加工工程後、前記一体型セルに形成された排出路を介して前記液体を一体型セル内から外部に排出すると共に、一体型セルに形成された供給路を介して新たな液体を一体型セル内に供給する液体排出供給工程を備えていることを特徴とするものである。
【0040】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、加工工程が終了した後、必要に応じて液体排出供給手段により、排出路を介して液体を外部に排出することで、第2の電極側に収集された微細加工粉を液体と一緒に適宜排出することができる。また、供給路を介して新たな液体を供給することで、液体の入れ換えも行うことができ、容易に次の加工に備えることができる。
このように液体排出供給工程を行うことで、複数箇所を加工する場合や、加工が長時間に至る場合であっても、微細加工粉の影響を極力受けずに加工し続けることができる。
【0041】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記排出路内には、前記第2の電極が収納されていることを特徴とするものである。
【0042】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記排出路内には、前記第2の電極が収納されていることを特徴とするものである。
【0043】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、排出路内に第2の電極が収納されているので、加工時に生じた微細加工粉が排出路に向かって移動してくる。つまり、液体と共に微細加工粉を外部に排出する排出路に微細加工粉を集中的に収集することができる、従って、より効率良く微細加工粉を排出することができる。
【0044】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明のいずれかの微細加工装置において、前記探針が、基端側がレバー部によって片持ち状態に支持され、前記レバー部の撓みを測定する変位測定手段と、前記変位測定手段による測定結果に基づいて、前記探針と前記被加工物との距離を、前記レバー部の撓みが一定となるように前記移動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0045】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明のいずれかの微細加工粉除去方法において、前記探針が、前記レバー部によって片持ち状態に支持されており、前記加工工程を行う際、前記探針と前記被加工物との距離を、前記レバー部の撓みが一定となるように制御しながら加工を行うことを特徴とするものである。
【0046】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、同じ力で探針を被加工物に押し付けた状態で加工することができる。即ち、加工工程を行う際に、変位測定手段が、レバー部の撓みを測定し、測定結果を制御手段に知らせている。そして、制御手段は、送られてきた測定結果に基づいて、移動手段を適宜制御して、探針と被加工物との距離をレバー部の撓みが一定となるようにしている。これにより、常に同じ力で探針を被加工物に押し付けた状態で加工することができる。よって、加工時のムラをなくして正確な加工を行うことができる。
【0047】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明の微細加工装置において、前記レバー部及び前記ステージの少なくともいずれか一方を、前記被加工物の表面に対して水平なXY方向及び垂直なZ方向の少なくともいずれか一方の方向に加振させる加振手段を備え、前記変位測定手段が、前記レバー部の振動状態を測定し、前記制御手段が、前記変位測定手段による測定結果に基づいて、前記探針と前記被加工物との距離を、前記レバー部の振動状態が一定となるように前記移動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0048】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明の微細加工粉除去方法において、前記加工工程を行う際、前記レバー部又は前記被加工物の少なくともいずれか一方を、被加工物の表面に水平な方向及び垂直な方向の少なくともいずれか一方の方向に向けて振動させると共に、振動状態が一定となるように制御しながら加工を行うことを特徴とするものである。
【0049】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、加工工程を行う際に、加振手段がレバー部又はステージの少なくともいずれか一方を、被加工物の表面に水平なXY方向(横振動)又は垂直なZ方向(縦振動)の少なくともいずれか一方の方向に、所定の周波数で振動させる。つまり、被加工物の表面を連続的に擦りながら、或いは、連続的に叩きながら、或いは、両方を行いながら加工を行う。また、この際変位測定手段は、レバー部の振動状態の測定を行っている。そして、制御手段は、変位測定手段による測定結果に基づいて、レバー部の振動状態(例えば、振動振幅)が一定となるように移動手段を制御する。その結果、探針を単に被加工物に押し付けるだけではなく、上述した方向に振動を加えた状態で加工することができる。
【0050】
よって、加工時に生じる微細加工粉をさらに細かくすることができる。そのため、微細加工粉は、より軽量になると共に帯電性が向上する。従って、微細加工粉をさらに素早く浮遊させた後、電気泳動により移動させることができ、探針や被加工物への付着をより確実に防止することができる。また、探針を振動させることで、同じ押し付け力であっても加工性能を高めることができ、作業性を向上させることができる。
特に、横振動と縦振動とを同時に行うことで、楕円振動加工を行うことができ、微細加工粉を上方に巻き上げ易くなる。従って、微細加工粉をさらに容易に移動させることができる。また、XY方向に横振動させる場合には、単にX方向若しくはY方向に振動させるのではなく、XY方向にシンクロさせた状態で振動させることも可能である。こうすることでポリッシュ効果を期待することができるので好ましい。
【0051】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明のいずれかの微細加工装置において、前記電圧印加手段が、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧のいずれかを印加することを特徴とするものである。
【0052】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明のいずれかの微細加工粉除去方法において、前記電圧印加工程の際に、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧のいずれかを印加することを特徴とするものである。
【0053】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、電圧印加工程の際、電圧印加手段が、第1の電極と第2の電極との間に直流電圧、交流電圧、パルス電圧のいずれかを選択して電圧印加を行う。よって、被加工物、液体の種類や加工の状況等に応じて適宜電圧を使い分けることができ、使い易さが向上する。特に、交流電圧、パルス電圧を使用することで、液体の電気分解を生じさせないで、高電圧を印加することができる。
【0054】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明のいずれかの微細加工装置において、前記探針が、ダイヤモンド、Si及びSiNのいずれかから形成されていることを特徴とするものである。
【0055】
この発明に係る微細加工装置においては、探針がダイヤモンド、Si、SiNのいずれかから形成されている。特に、探針をダイヤモンドで形成することで、被加工物がどのような材料から形成されていたとしても、鋭い切れ味で確実に加工することができる。また、探針の耐久性を向上することができる。
【0056】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明のいずれかの微細加工装置において、前記探針が、前記第1の電極を兼ねていることを特徴とするものである。
【0057】
この発明に係る微細加工装置においては、探針が第1の電極を兼ねているので、加工によって生じた微細加工紛を強い電界の中に確実且つ直ちに入れることができ、より速やかに電気泳動により移動させることができる。また、探針とは別に第1の電極を設ける必要がないので、構成の簡略化を図ることができる。
【0058】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明のいずれかの微細加工粉除去方法において、前記液中設定工程の際、前記液体として界面活性剤を含有する液体を用いることを特徴とするものである。
【0059】
この発明に係る微細加工粉除去方法においては、液体内に界面活性剤が含有されているので、被加工物の表面や微細加工粉の表面には親水基を外側にした状態で界面活性剤が結合する。そのため、電気泳動による移動中等に微細加工粉が被加工物の表面に接触したり、微細加工粉同士が接触したりしても、互いの親水基が反撥しあって接着することがない。従って、探針や被加工物への付着をより確実に防止しながら、微細加工粉を第2の電極側に移動させることができる。
なお、帯電性をより強くする置換基を親水基側に備え、電界の影響を受け易くされた界面活性剤が好ましく用いられる。また、微細加工粉の性質に鑑み、液体の性質や、印加する電圧や、採用する界面活性剤を適宜選択することで、微細加工粉を第1の電極又は第2の電極に選択的に、より確実に移動させることが可能となる。
【0060】
また、本発明の微細加工装置は、上記本発明のいずれかの微細加工装置において、前記被加工物に電気接続された参照電極を備え、前記電圧印加手段が、前記第1の電極と前記第2の電極と前記参照電極とにそれぞれ電気接続されたポテンショスタットを有し、前記被加工物表面を参照電極電位としながら前記電圧を印加することを特徴とするものである。
【0061】
また、本発明の微細加工粉除去方法は、上記本発明のいずれかの微細加工粉除去方法において、前記液中設定工程の際に、前記被加工物に電気接続された参照電極を用意し、前記電圧印加工程の際に、前記被加工物表面を参照電極電位としながら前記電圧を印加することを特徴とするものである。
【0062】
この発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法においては、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加する際に、ポテンショスタットにより被加工物表面を参照電極電位としているので、微細加工粉が電気泳動している最中に被加工物に電流が流れることがない。従って、被加工物として、電気化学反応が生じ易い金属サンプルや半導体サンプルを用いたとしても、被加工物表面に電気化学的な影響(腐食等)を何ら与えずに加工を行うことができる。そのため、使用できる被加工物の種類を増やすことができ、使い易さを向上することができる。
【0063】
また、本発明の微細加工粉除去装置は、探針を利用して被加工物加工する加工装置に組み合わされて使用され、加工時に生じる微細加工粉を液体内で除去する微細加工粉除去装置であって、前記探針を間に挟むように前記液体内に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加させて、前記微細加工粉を前記液体内で移動させる電圧印加手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0064】
この発明に係る微細加工粉除去装置においては、第1の電極及び第2の電極が液体内において探針を間に挟んだ状態で配置されている。即ち、探針、第1の電極及び第2の電極は、共に液中環境下に置かれている。両電極を配置した後、電圧印加手段によって第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して、両電極間に電界を形成する。
【0065】
この後、探針を利用して加工装置により被加工物の加工(例えば、探針により被加工物を切削加工する等)を行う。すると、この加工時に生じたナノスケールの微細な切削紛(微細加工粉)は、液中環境下であるために、探針及び被加工物の表面上から離間して液中内に浮遊した状態となる。更にこの浮遊した微細加工粉は、帯電した状態となっている。
そのため、微細加工粉は、液中に浮遊したと同時に両電極間に形成された電界によって電気泳動現象により液体内を移動し始める。つまり、加工によって次々と発生する微細加工粉は、液中に一旦浮遊した後、第2の電極に引き寄せられるように主として電気泳動によって(以下「電気泳動によって」と表記する)移動し始める。よって、加工時に生じる微細加工粉を、探針及び加工痕から確実且つ速やかに離間させることができると共に、第2の電極側に積極的に集めて収集することができる。即ち、加工を行っている地点から、微細加工粉を速やかに除去することができる。
【0066】
従って、微細加工粉が加工中に探針や加工痕に付着してしまうことを防止することができる。その結果、微細加工粉の影響を受けずに加工することができ、正確な追加工や再現性の高い加工を行うことができると共に、加工精度の向上化を図ることができる。また、探針への付着も防止できるので、切れ味の低下や摩耗等を防止でき、探針の耐久性を向上することができる。
また、従来のクリーニングとは違って、被加工物を別の装置に移し変えることなく加工と同時に微細加工粉の除去を行えるので、除去作業を効率良く行うことができ、スループットの低下を防止することができる。
【0067】
上述したように本発明に係る微細加工粉除去装置によれば、被加工物の加工中に生じる微細加工粉を、スループットの低下を招くことなく探針や加工痕から確実且つ効率良く除去することができる。
また、本発明に係る微細加工粉除去装置によれば、加工時の環境が液中でなくても、微細加工粉を移動させる際に液中環境であれば、上述したと同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
また、本発明の微細加工粉除去装置は、上記本発明の微細加工粉除去装置において、前記第1の電極が、前記第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置されていることを特徴とするものである。
【0069】
この発明に係る微細加工粉除去装置においては、第2の電極に微細加工粉を移動させる場合、第1の電極が第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置されているので、両電極に電圧を印加して電界を形成したときに、電気力線を第2の電極を中心とする1箇所に集中させることができる。よって、微細加工粉を単に第2の電極側に移動させるのではなく、1箇所に集中的に収集することができる。しかも、第1の電極と第2の電極との距離を、第1の電極上に沿った各位置で同じにすることができるので、同じ強さの電界を第1の電極と第2の電極との間に均一に形成することができる。よって、微細加工粉が液体のどこに浮遊したとしても、ムラなく同じ速度で速やかに移動させることができる。その結果、加工時に生じた微細加工粉を、より効率良く移動させて、第2の電極側に収集することができる。
【0070】
また、本発明の微細加工粉除去装置は、上記本発明の微細加工粉除去装置において、先端側が前記液体内に浸漬されるように配置された中空状のマイクロノズルを有し、該マイクロノイズを介して基端側から液体を吸引する液体吸引手段を備えていることを特徴とするものである。
【0071】
この発明に係る微細加工粉除去装置においては、加工が終了した後、必要に応じて液体吸引手段のマイクロノズルにより液体を吸引することで、第2の電極側に収集された微細加工粉を適宜排出することができる。よって、複数箇所を加工する場合や、加工が長時間に至る場合であっても、微細加工粉の影響を極力受けずに加工し続けることができる。
【0072】
また、本発明の微細加工粉除去装置は、上記本発明の微細加工粉除去装置において、前記マイクロノズル内には、少なくとも前記液体内に浸漬される先端側に前記第2の電極が収納されていることを特徴とするものである。
【0073】
この発明に係る微細加工粉除去装置においては、少なくとも液体内に浸漬されるマイクロノズル内の先端側に第2の電極が収納されているので、第2に電極側に微細加工粉が移動する場合には、加工時に生じた微細加工粉がマイクロノズルの先端に向かって移動してくる。つまり、液体と共に微細加工粉を吸引するマイクロノズルの先端に微細加工粉を集中的に収集することができる、従って、より効率良く微細加工粉を吸引して液体と一緒に排出することができる。
【0074】
また、本発明の微細加工粉除去装置は、上記本発明のいずれかの微細加工粉除去装置において、前記電圧印加手段が、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧のいずれかを印加することを特徴とするものである。
【0075】
この発明に係る微細加工粉除去装置においては、電圧印加手段が、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加する際に、直流電圧、交流電圧、パルス電圧のいずれかを選択して電圧印加を行う。よって、被加工物、液体の種類や加工の状況等に応じて適宜電圧を使い分けることができ、使い易さが向上する。特に、交流電圧、パルス電圧を使用することで、液体の電気分解を生じさせないで、高電圧を印加することができる。
【0076】
また、本発明の微細加工粉除去装置は、上記本発明のいずれかの微細加工粉除去装置において、前記被加工物に電気接続された参照電極を備え、前記電圧印加手段が、前記第1の電極と前記第2の電極と前記参照電極とにそれぞれ電気接続されたポテンショスタットを有し、前記被加工物表面を参照電極電位としながら前記電圧を印加することを特徴とするものである。
【0077】
この発明に係る微細加工粉除去装置においては、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加する際に、ポテンショスタットにより被加工物表面を参照電極電位としているので、微細加工粉が電気泳動している最中に被加工物に電流が流れることがない。従って、被加工物として、電気化学反応が生じ易い金属サンプルや半導体サンプルを用いたとしても、被加工物表面に電気化学的な影響(腐食等)を何ら与えずに加工を行うことができる。そのため、使用できる被加工物の種類を増やすことができ、使い易さを向上することができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明に係る微細加工粉除去装置によれば、被加工物の加工中に生じる微細加工粉を、スループットの低下を招くことなく探針や加工痕から確実且つ効率良く除去することができる。
また、本発明に係る微細加工装置及び微細加工粉除去方法によれば、被加工物の加工中に生じる微細加工粉を、スループットの低下を招くことなく探針や加工痕から確実且つ効率良く除去しながら、加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る微細加工粉除去装置及び微細加工装置並びに微細加工粉除去方法の第1実施形態を、図1から図4を参照して説明する。
なお、本実施形態では、試料2上にクロムを蒸着した金属膜Mを被加工物として説明する。また、試料2側を三次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明する。また、探針3aを利用した加工の一例として、金属膜Mの表面を切削加工(スクラッチ加工)する場合を例に挙げて説明する。なお、試料2上に金属膜Mが蒸着されたものは、フォトマスク等として使用される。
【0080】
本実施形態の微細加工装置1は、図1及び図2に示すように、探針3aを利用して金属膜Mを超純水等の液体W内で切削加工しながら、加工時に生じるナノスケールの微細な加工粉(微細加工粉D)を除去する装置であって、加工装置4と、微細加工粉除去装置5とから構成されている。
上記加工装置4は、金属膜Mが蒸着された試料2を載置する試料ステージ(ステージ)6と、レバー部3bの先端に探針3aを有するプローブ3と、試料ステージ6とプローブ3とを、金属膜Mの表面に平行なXY方向及び金属膜Mの表面に垂直なZ方向に相対的に移動させる移動手段7と、レバー部3bの撓みを測定する変位測定手段8と、切削加工時に後述するファンクションジェネレータ9を作動させた状態で、変位測定手段8による測定結果に基づいて、探針3aとレバー部3bとの距離をレバー部3bの撓みが一定となるように移動手段7を制御する制御手段10とを備えている。
【0081】
また、上記微細加工粉除去装置5は、探針3aを間に挟むように液体W内に配置された第1の電極11及び第2の電極12と、第1の電極11と第2の電極12との間に電圧を印加させて、電気泳動により微細加工粉Dを液体W内で移動させるファンクションジェネレータ(電圧印加手段)9とを備えている。
【0082】
また、本実施形態の微細加工装置1は、液体Wが内部に貯留され、貯留された液体Wに浸かるように少なくとも探針3a、第1の電極11、第2の電極12が収容される液槽(液体セル)15を備えている。この液槽15は、上部が開口した断面コ形形状に形成されており、XYZステージ16に固定された試料ステージ6上に載置されている。そして試料2は、容易に動かないようにこの液槽15の底面に保持されている。
【0083】
上記XYZステージ16は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる圧電素子であり、ドライブ回路17から電圧が印加されると、その電圧印加量及び極性に応じて、XY方向及びZ方向の3方向に対して微小移動するようになっている。これにより、プローブ3と試料ステージ6とを、上述したようにXY方向及びZ方向に相対的に移動させることができるようになっている。即ち、XYZステージ16及びドライブ回路17は、上記移動手段7を構成している。
【0084】
上記レバー部3bは、基端側が本体部3cによって片持ち状に支持されている。つまり、プローブ3は、探針3a、レバー部3b及び本体部3cで構成されている。また、本実施形態のプローブ3は、レバー部3b及び本体部3cがシリコンやシリコンナイトライド等により一体的に形成されており、レバー部3bの先端にダイヤモンドから形成された探針3aが固着されている。但し、この場合に限られず、例えばシリコン支持層と、SiOからなる酸化層と、シリコン活性層との3層を熱的に貼り合わせたSOI基板からプローブ3を一体的に形成しても構わないし、その他の材料や手法で形成しても構わない。
【0085】
また、プローブ3は、本体部3cを介してホルダ本体18の下面に固定された斜面ブロック19にワイヤ等により着脱自在に固定されている。この際プローブ3は、斜面ブロック19によって金属膜Mの表面に対してレバー部3bが所定角度傾くように固定されている。また、プローブ3は、少なくとも探針3a部分が液体Wに浸かるようにホルダ本体18によって設置位置が調整されている。これにより金属膜M及び探針3aは、共に完全に液体Wに浸漬された状態となり、金属膜M及び探針3aの周囲に液中環境を作りだすことができる。つまり、本実施形態では、液槽15を利用することで、少なくとも探針3a、第1の電極11及び第2の電極12を液体Wに浸した液中環境を金属膜M上に作り出している。
【0086】
上記ホルダ本体18は、液槽15の開口を略塞ぐ大きさに形成されている。また、ホルダ本体18は、光学的に透明な材料より形成されており、後述する半導体レーザ光源20から照射されたレーザ光Lを透過させてレバー部3bの裏面側に形成された図示しない反射面に導くと共に、反射面で反射したレーザ光Lを再度透過させて後述するレーザ受光部22に導くことができるようになっている。
【0087】
ホルダ本体18の上方には、レーザ光Lを照射する半導体レーザ光源20と、照射されたレーザ光Lの一部をレバー部3bの反射面に向けて反射させるビームスプリッタ21と、レバー部3bの反射面で反射されてホルダ本体18を透過したレーザ光Lを受光するレーザ受光部22とが、図示しない架台に取り付けられている。レーザ受光部22は、例えば、4分割フォトディテクタであり、レーザ光Lの入射位置に基づいて、レバー部3bの撓み変化を検出している。そして、レーザ受光部22は、検出したレバー部3bの撓み変化をDIF信号として図示しないプリアンプに出力している。
即ち、これら半導体レーザ光源20、ビームスプリッタ21及びレーザ受光部22は、上記変位測定手段8を構成している。
【0088】
また、プリアンプに出力されたDIF信号は、該プリアンプによって増幅された後、演算回路23a及び制御回路23bからなるZ電圧フィードバック回路23に送られる。Z電圧フィードバック回路23は、DIF信号が常に一定となるようにドライブ回路17をフィードバック制御する。これにより、移動手段7が作動したときに、探針3aと金属膜Mとの距離を、レバー部3bの撓みが一定となるように制御することができるようになっている。
【0089】
また、Z電圧フィードバック回路23には、パーソナルコンピュータ等の制御部24が接続されている。この制御部24は、Z電圧フィードバック回路23により変化させる信号に基づいて金属膜Mの表面の形状データを取得し、表面形状観察を行うことができるようになっている。
また、本実施形態では、切削加工時においても上述したフィードバック制御が同様に行われる。つまり、制御部24は、AFM観察を行うときと、切削加工を行うときとにおいて、同様のフィードバック制御により高さ制御を行うようになっている。即ち、これらZ電圧フィードバック回路23及び制御部24は、上記制御手段10を構成している。
なお、この制御手段10は、上述した各構成品を総合的に制御する機能を有している。また、制御手段10は、観察時ではなく、切削加工を行うときにだけファンクションジェネレータ9を作動させるように制御している。
【0090】
第1の電極11及び第2の電極12は、共にロッド状に形成されており、図2に示すように、液体Wに浸された状態で探針3aを間に挟むように取り付けられている。具体的には、探針3aを間に挟んで互いに平行状態となるように取り付けられている。これら両電極11、12は、ファンクションジェネレータ9に電気的に接続されており、所定の電圧が印加される。
ファンクションジェネレータ9は、制御部24からの指示を受けて、両電極11、12間に直流電圧、交流電圧又はパルス電圧のいずれかの電圧を選択して印加できるようになっている。
【0091】
次に、このように構成された微細加工装置1により、微細加工粉Dを電気泳動により除去しながら、試料2上に蒸着された金属膜Mの表面を所定範囲だけ削って、不要な欠陥部分を切削加工する微細加工粉除去方法について説明する。なお、本実施形態では、切削加工中、両電極11、12に対して直流電圧を印加する場合を例に挙げて説明する。
【0092】
本実施形態の微細加工粉除去方法は、金属膜Mの表面上にプローブ3を配置すると共に、探針3aを間に挟んだ状態で第1の電極11及び第2の電極12を配置し、少なくともこれら探針3a及び両電極11、12を液体Wに浸した液中環境を金属膜M上に作りだす液中設定工程と、該液中設定工程後、プローブ3を利用したAFM観察により金属膜Mの表面を観察して切削加工を行う位置を特定すると共に、特定した位置に探針3aを位置させる位置決め工程と、該位置決め工程後、第1の電極11及び第2の電極12に所定の電圧を印加して両電極11、12間に電界を形成させる電圧印加工程と、該電圧印加工程後、レバー部3bの撓みが一定となるように探針3aと金属膜Mとの距離を制御しながら金属膜Mの表面を所定範囲だけ切削加工する加工工程とで行う方法である。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0093】
まず、加工装置4と微細加工粉除去装置5とを組み合わせた後、液槽15を利用して上記液中設定工程を行う。即ち、金属膜Mが蒸着された試料2を、液体Wが内部に貯留された液槽15内に収容した後、該液槽15を試料ステージ6上に載置する。そして、液槽15に貯留されている液体W内に探針3aが浸かるようにホルダ本体18を調整してプローブ3を設置すると共に、探針3aを間に挟むように両電極11、12を設置する。これにより、金属膜M、探針3a及び両電極11、12は、図1に示すように、共に完全に液体Wに浸された状態となり液中環境下に置かれる。
【0094】
この液中環境設定が終了した後、半導体レーザ光源20、ビームスプリッタ21及びレーザ受光部22の位置をそれぞれ調整する。即ち、半導体レーザ光源20から照射したレーザ光Lが、ビームスプリッタ21で角度を変えた後、ホルダ本体18を透過してレバー部3bの反射面に入射するように、また、反射面で反射したレーザ光Lが再度ホルダ本体18を透過してレーザ受光部22に確実に入射するように位置調整を行う。
この位置調整後、半導体レーザ光源20からレーザ光Lを照射させると共に、レバー部3bの反射面で反射したレーザ光Lをレーザ受光部22で検出しておく。その後、移動手段7により探針3aと金属膜Mとが接近するようにXYZステージ16をZ方向に微小移動させる。この移動によって金属膜Mと探針3aとが徐々に近づくと、探針3aが原子間力を受けて徐々に撓み始める。すると、反射面で反射されるレーザ光Lの角度が変化して、レーザ受光部22に入射するレーザ光Lの入射位置が変化する。そして、レバー部3bの撓みが決められた値に達したときに、移動手段7を停止する。これにより、探針3aを金属膜Mの表面の近傍に確実に位置させることができる。
【0095】
次いで、この状態を維持しながら、制御部24からドライブ回路17に指示をだして、XYZステージ16をXY方向に微小移動させると共に、プローブ3を利用して金属膜Mの表面を液中でAFM観察する。
つまり、金属膜Mの表面の凹凸に応じてレバー部3bが撓もうとするので、レーザ受光部22に入射するレーザ光L(反射面で反射したレーザ光L)の位置が変化する。レーザ受光部22は、この変化に応じたDIF信号をプリアンプに出力する。出力されたDIF信号は、プリアンプによって増幅された後、Z電圧フィードバック回路23に送られる。Z電圧フィードバック回路23は、DIF信号が常に一定となるように(つまり、レバー部3bの撓みが常に一定となるように)、XYZステージ16をZ方向に微小移動させるようにドライブ回路17をフィードバック制御する。これにより、レバー部3bの撓みが一定となるように、金属膜Mの表面と探針3aとの距離を制御した状態で走査を行うことができる。そして制御部24は、Z電圧フィードバック回路23により変化させる信号に基づいて、金属膜Mの表面の形状データ等を取得することで表面形状を観察することができる。
【0096】
次いで、制御部24は、このAFMの観察結果から切削加工が必要な金属膜Mの欠陥部分の位置や範囲を特定する。そして、制御部24は、移動手段7によりXYZステージ16を適宜3次元方向に動かして、先ほど特定した位置に探針3aを接触させて位置決めさせる位置決め工程を行う。
この位置決め工程が終了した後、制御部24は加工工程を行う準備として、ファンクションジェネレータ9を作動させる。ファンクションジェネレータ9は、制御部24からの指示を受けると、両電極11、12に直流電圧を印加する電圧印加工程を行う。これにより、第1の電極11と第2の電極12との間には、電界が形成される。この電界が形成された後、加工工程を開始する。
【0097】
まず、制御部24は、移動手段7によりXYZステージ16をZ方向に微小移動させて、探針3aを金属膜Mの表面に対して押し付けさせる。この際、AFM観察を行う前と同様にレバー部3bの撓みを測定しながら金属膜Mと探針3aとを接近させる。そして、制御部24は、変位測定手段8による測定結果に基づいて、レバー部3bの撓み量が予め決められた撓み量に達した時点でXYZステージ16の作動を一旦停止させる。これにより、探針3aを金属膜Mの表面に対して、所定の力で押し付けることができる。
【0098】
次いで、制御部24は、ドライブ回路17に指示をだしてXYZステージ16をXY方向に微小移動させる。つまり、金属膜Mの表面に所定の力で押し付けた探針3aを移動させる。これにより、探針3aを利用して金属膜Mの表面を削り落とすことができる。そして、探針3aを適宜XY方向に移動させることで、金属膜Mの欠陥部分を切削加工(スクラッチ加工)することができる。即ち、マスク修正を行うことができる。
なお、この加工工程を行う際に制御部24は、AFM観察時と同様に変位測定手段8による測定結果に基づいて、レバー部3bの撓みが一定となるように移動手段7を制御している。つまり、レバー部3bの撓みが一定となるようにXYZステージ16を適宜Z方向に高さ制御しながら走査を行わせている。これにより、常に同じ力で金属膜Mの表面に押し付けた探針3aを利用して切削加工することができるので、切削量のムラをなくして正確な切削加工を行うことができる。
【0099】
特に、液中環境で切削加工を行っているので、切削加工時に発生した微細加工粉Dは、探針3a及び金属膜Mの表面上から離間して液中内に浮遊した状態となる。また、この浮遊した微細加工粉Dは、図3に示すように帯電した状態となっている。そのため、微細加工粉Dは、図3及び図4に示すように、液中に浮遊したと同時に両電極11、12間に形成された電界によって液中を電気泳動現象により移動し始める。つまり、切削加工によって次々と発生する微細加工粉Dは、液中に一旦浮遊した後、第2の電極12に引き寄せられるように電気泳動により移動し始める。よって、切削加工で発生した微細加工粉Dを、探針3a及び切削加工痕から確実且つ速やかに離間させることができると共に、第2の電極12側に積極的に集めて収集することができる。即ち、切削加工を行っている地点から、微細加工粉Dを速やかに除去することができる。
【0100】
従って、従来のものとは異なり、微細加工粉Dが切削加工中に探針3aや金属膜Mの切削加工痕に付着してしまうことを防止することができる。その結果、微細加工粉Dの影響を受けずに切削加工し続けることができ、正確な追加工や再現性の高い切削加工を行うことができると共に、加工精度の向上化を図ることができる。また、探針3aへの付着も防止できるので、切れ味の低下や摩耗等を防止でき、耐久性を向上することができる。
また、従来のクリーニングとは違って、金属膜Mが蒸着された試料2を別の装置に移し変えることなく加工と同時に微細加工粉Dの除去を行えるので、除去作業を効率良く行うことができ、スループットの低下を防止することができる。
【0101】
更に、液中環境内で電気泳動により微細加工粉Dを移動させるので、切削加工中、液体Wに揺らぎや対流等が生じることを極力防止することができる。そのため、探針3aと金属膜Mとの押し付け力だけに起因させて、レバー部3bを撓ませることができる。つまり、切削加工中に押し付け力以外の要因でレバー部3bを撓ませることを防止することができる。よって、確実に一定の押し付け力で切削加工を行うことができる。このことからも、加工精度の向上化を図ることができる。
【0102】
また、液槽15内に金属膜Mが蒸着された試料2を浸漬するだけで、簡単且つ確実に液中環境を作り出せるので、液中設定工程に手間がかかることはない。よって、液中設定工程にかける時間を短縮でき、作業効率を向上することができる。
また、探針3aがダイヤモンドから形成されているので、鋭い切れ味で確実に切削加工を行うことができ、切削加工の信頼性が向上する。更には、探針3aの耐久性を向上することができる。なお、探針3aはダイヤモンドに限られず、SiやSiNから形成しても構わない。
【0103】
なお、上記実施形態において、図5に示すように、液槽15に貯留した液体Wを外部に排出する排出路15aと、新たな液体Wを外部から内部に供給する供給路15bとを形成しても構わない。この際、排出路15aには例えば吸引ポンプP1等が接続され、供給路15bには例えばシリンジポンプP2等が接続される。これら、排出路15a、供給路15b、吸引ポンプP1及びシリンジポンプP2は、貯留した液体Wを液槽15から外部に排出すると共に、新たな液体Wを液槽15に供給する液体排出供給手段25を構成している。
【0104】
このように構成することで、加工工程後、必要に応じて貯留されていた液体Wを排出すると共に、新たな液体Wを供給する液体排出供給工程を行うことができる。
つまり、切削加工が終了した後、必要に応じて排出路15aを介して液槽15内に貯留された液体Wを排出することで、第2の電極12側に収集した微細加工粉Dを液体Wと一緒に排出することができる。また、供給路15bを介して新たな液体Wを液槽15内に供給することで、液体Wの入れ換えも行うことができ、容易に次の切削加工に備えることができる。
このように、液体排出供給工程を行うことで、適宜収集した微細加工粉Dを排除できるので、切削加工が複数箇所ある場合や、切削加工が長時間に至る場合であっても、微細加工粉Dの影響を受けずに切削加工し続けることができる。
【0105】
また、上記実施形態では、第1の電極11及び第2の電極12を共にロッド状の電極とし、両電極11、12を平行に並ぶように配置したが、両電極11、12の形状及び向きや探針3aと両電極11、12との位置関係は、この場合に限定されるものではない。少なくとも、液体W内で探針3aを間に挟むように配置すれば、どのように設計しても構わない。
例えば、図6に示すように、第1の電極11を円弧状に形成し、第2の電極12を中心として第1の電極11を配置しても構わない。更には、図7に示すように、第1の電極11を環状(リング状)に形成し、第2の電極12を中心として第1の電極11を配置しても構わない。
【0106】
こうすることで、電圧印加工程により両電極11、12に電圧を印加して電界を形成したときに、電気力線を第2の電極12を中心とする1箇所に集中させることができる。よって、微細加工粉Dを単に第2の電極12側に移動させるのではなく、1箇所に集中的に収集することができる。しかも、第1の電極11と第2の電極12との距離を、第1の電極11上に沿った各位置で同じにすることができる、即ち、半径Rを保つことができるので、同じ強さの電界を第1の電極11と第2の電極12との間に均一に形成することができる。
よって、微細加工粉Dが液体Wのどこに浮遊したとしても、ムラなく同じ速度で速やかに移動させることができる。その結果、切削加工時に発生した微細加工粉Dをより効率良く移動させて第2の電極12側に収集することができる。
【0107】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る微細加工粉除去装置及び微細加工装置並びに微細加工粉除去方法の第2実施形態を、図8を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、液槽15に貯留された液体W内に金属膜Mが蒸着された試料2を浸漬することで液中環境を作り出したが、第2実施形態では、切削加工を行う最小限の範囲だけを液中環境にすることができる点である。
【0108】
即ち、本実施形態の微細加工装置30は、図8に示すように、液槽15を使用せずに、基端側に図示しないシリンジポンプが接続されたピペット等の液体吐出装置31を利用して液中環境を作り出している。なお、本実施形態における第1の電極11及び第2の電極12は、第1実施形態と同様にロッド状に形成されている。
【0109】
本実施形態の微細加工装置30の場合には、液中設定工程の際、金属膜M上にプローブ3及び両電極11、12を配置した後に、これらプローブ3及び両電極11、12に向けて、液体吐出装置31により適量の液体Wを吐出する。すると、吐出された液体Wは、図8に示すように、少なくとも探針3a及び両電極11、12を内部に含んだ状態で表面張力により金属膜Mの表面に保持された状態となる。なお、図8では、液滴状となった場合を図示している。これにより少なくとも探針3a及び両電極11、12の周囲は液体Wに包まれた状態となり、切削加工が行われる領域だけを液中環境にすることができる。
特に、切削加工を行う探針3a及び両電極11、12の周囲だけを最小限の範囲で液中環境にできるので、液体Wを無駄にすることなく効率良く使用でき、低コスト化を図ることができる。また、切削加工を行う最小限の範囲だけを液中環境にできるので、専用のセルを用意する等の特別な準備が不要であり、構成の簡略化を図ることができる。従って、切削加工をより簡便に行うことができる。
【0110】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る微細加工粉除去装置及び微細加工装置並びに微細加工粉除去方法の第3実施形態を、図9から図11を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、第1の電極11及び第2の電極12が共にロッド状に形成されていたのに対し、第3実施形態では、第1の電極11を環状に形成し、第2の電極12を略中心として第1の電極11を配置している点である。
更に異なる点は、第2実施形態では液体吐出装置31により液体Wを単に吐出するだけであったが、第3実施形態では液滴状となった液体Wを適宜吸引することができる点である。
【0111】
即ち、本実施形態の微細加工装置40は、図9に示すように、先端側が液体W内に浸漬させるように配置された中空状のマイクロノズル41を有し、該マイクロノズル41を介して基端側から液体Wを吸引する液体吸引装置42(液体吸引手段)を備えている。
マイクロノズル41は、図10に示すように、例えば微細な中空ガラス管から作製されており、基端側にはチューブ43を介して注射器44が取り付けられている。よって、この注射器44のピストン部44aを基端側に移動させることで、液体Wをマイクロノズル41内に吸引することができる。
即ち、これらマイクロノズル41、チューブ43及び注射器44は、上記液体吸引装置42を構成している。なお、チューブ43及びマイクロノズル41内を予め液体Wで満たしておくと吸引し易くなるので好ましい。
【0112】
更に本実施形態の第2の電極12は、細い金属線等からなり、マイクロノズル41内に該マイクロノズル41の基端側から先端側に亘って収納されている。この際、第2の電極12は、先端側がマイクロノズル41の先端近傍に位置し、基端側がファンクションジェネレータ9に接続されている。
【0113】
このように構成された微細加工装置40により、金属膜Mの切削加工を行う場合には、第1の電極11が第2の電極12を中心として環状に形成されているので、電気力線を第2の電極12を中心として1箇所に集中させることができる。よって、微細加工粉Dを単に第2の電極12側に移動させるのではなく、1箇所に集中的に収集することができる。
しかも、第2の電極12はマイクロノズル41内に収納されていると共に、その先端がマイクロノズル41の先端近傍に位置しているので、図11に示すように、切削加工時に発生した微細加工粉Dがマイクロノズル41の先端に向かって移動してくる。よって、マイクロノズル41内、若しくは、マイクロノズル41の先端開口付近に微細加工粉Dを集中的に収集することができる。
【0114】
また、第1の電極11が第2の電極12を略中心に環状に形成されているので、第1の電極11と第2の電極12との距離を第1の電極11上に沿った各位置で同じにすることができ、第1の電極11と第2の電極12との間に同じ強さの電界を均一に形成することができる。従って、微細加工粉Dが液中のどこに浮遊したとしても、ムラなく同じ速度で速やかにマイクロノズル41の先端に向けて移動させることができる。このことからも、微細加工粉Dを効率良くマイクロノズル41の先端に集中的に収集することができる。
【0115】
次いで、切削加工が終了した後、金属膜M上から液滴状の液体Wを回収する液体吸引工程を行う。即ち、必要に応じて注射器44のピストン部44aをマイクロノズル41の基端側に向かって移動させる。これにより、マイクロノズル41内に液体Wを吸引することができると共に、マイクロノズル41の先端に集中的に収集した微細加工粉Dを液体Wと一緒に排出することができる。なお、液体吐出装置31を利用して新たな液体Wを供給することで、液体Wの入れ換えも行うことができ、容易に次の切削加工に備えることができる。
このように、適宜収集した微細加工粉Dを排出できるので、切削加工が複数箇所ある場合や、切削加工が長時間に至る場合であっても、微細加工粉Dの影響を受けずに切削加工し続けることができる。
【0116】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る微細加工粉除去装置及び微細加工装置並びに微細加工粉除去方法の第4実施形態を、図12を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第4実施形態と第3実施形態との異なる点は、第3実施形態では、プローブ3、第1の電極11及び第2の電極12が、それぞれ別々に配置されていたのに対し、第4実施形態では、プローブ3、第1の電極11及び第2の電極12が、それぞれ一体型セル51に取り付けられて一体的に構成されている点である。
【0117】
即ち、本実施形態の微細加工装置50は、図12に示すように、金属膜Mの表面に近接した位置に配置され、金属膜Mとの間で液体Wを貯留して液中環境を作りだす一体型セル51を備えている。
この一体型セル51は、円柱状に形成されており、金属膜Mの表面に対向する対向面に環状の溝部51aが形成されている。そのため、この対向面の略中心部分には、周囲が溝部51aで囲まれた突起部51bが形成されている、なお、突起部51bは、先端側が対向面と面一となっている。また、一体型セル51には、外部から溝部51a内に液体Wを供給する供給路51cが形成されている。また、この供給路51cには、液体Wを送り出すシリンジポンプ等の供給部52が取り付けられている。これにより、供給路51cを介して溝部51a内に液体Wが供給されるようになっている。なお、供給された液体Wは、表面張力により金属膜Mと一体型セル51との間に保持され、貯留された状態となる。
【0118】
また、突起部51bには、供給された液体Wを外部に排出するための排出路51dが形成されている。即ち、これら供給路51c、排出路51d及び供給部52は、貯留された液体Wを一体型セル51の外部に排出すると共に、新たな液体Wを一体型セル51に供給する液体排出供給手段53を構成している。
【0119】
また、上記排出路51d内には、細い金属線からなる第2の電極12が収納されている。また、環状に形成された第1の電極11は、排出路51d内に収納された第2の電極12を略中心として配置されるように、溝部51aの内周面に取り付けられている。また、本実施形態のプローブ3に関しても同様に、溝部51aの内周面に取り付けられている。よって、プローブ3、第1の電極11及び第2の電極12は、それぞれ貯留された液体Wに浸かるように一体型セル51に取り付けられている。
【0120】
このように構成された微細加工装置50の場合には、液中設定工程を行う際、プローブ3、第1の電極11及び第2の電極12が取り付けられた一体型セル51を金属膜M上に近接させた後、供給路51cを介して供給部52から溝部51a内に液体Wを供給する。すると供給された液体Wは、溝部51a内を満たすと共に、表面張力によって金属膜Mの表面と一体型セル51との間に保持されて留まった状態となる。これにより、少なくとも探針3a及び両電極11、12の周囲は、液体W内に浸された状態となり、加工が行われる領域でだけを液中環境にすることができる。特に、加工を行う最小限を範囲で液中環境にできるので、液体Wを無駄にすることなく効率良く使用でき、低コスト化を図ることができる。
【0121】
上述した液中設定工程が終了した後、電圧印加工程及び加工工程を行う。本実施形態においても、第3実施形態と同様に、第1の電極11が環状に形成されて第2の電極12を略中心として配置されているので、切削加工時に生じる微細加工粉Dを排出路51dの内部に収納されている第2の電極12に集中的に収集することができる。つまり、微細加工粉Dを排出路51dの開口付近に集中的に収集することができる。
【0122】
次いで、加工工程が終了した後、必要に応じて排出路51dを介して貯留された液体Wを排出することで、第2の電極12側に収集された微細加工粉Dを液体Wと一緒に排出することができる。この際、上述したように排出路51dの開口付近に微細加工粉Dが集中して収集されているので、効率良く微細加工粉Dを排出することができる。なお、供給路51cを介して新たな液体Wを溝部51a内に供給することで、液体Wの入れ換えも行うことができ、容易に次の切削加工に備えることができる。
このように、適宜収集した微細加工粉Dを排出できるので、切削加工が複数箇所ある場合や、切削加工が長時間に至る場合であっても、微細加工粉Dの影響を受けずに切削加工し続けることができる。
【0123】
特に、本実施形態においては、一体型セル51の溝部51a内に液体Wの大部分が貯留された状態となっているので、外気に接する面積を極力なくすことができる。そのため、液体Wの蒸発を防止でき、切削加工に時間がかかったとしても液中環境を確実に維持することができる。よって、切削加工時における微細加工粉Dの除去の信頼性を高めることができる。
また、一体型セル51にプローブ3及び両電極11、12がそれぞれ取り付けられているので、切削加工中にプローブ3と両電極11、12との相対位置関係がずれてしまうことがない。そのため、切削加工中に電界をより安定した状態で形成することができ、電気泳動により微細加工粉Dをより安定に移動させることができる。
【0124】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0125】
例えば、上記各実施形態では、加工装置4と微細加工粉除去装置5とからなる微細加工装置1(30、40、50)を例に挙げて説明したが、微細加工粉除去装置5を加工装置4に組み合わせて使用すれば、微細加工粉除去装置5だけであっても、加工時に生じる微細加工粉Dを除去するという本発明の目的を達成することができる。
【0126】
また、上記各実施形態では、被加工物の一例として、試料2上に蒸着したクロムからなる金属膜Mを例に挙げたが、金属膜Mに限定されるものではない。例えば、シリコン基板や、モリブデンシリコン膜を被加工物としても構わない。また、金属膜Mであってもクロムに限定されるものではない。
また、液体Wとして超純水を用いた場合を例に挙げて説明したが、超純水に限られず各種の溶液を用いて良く、被加工物に応じて適宜変更して構わない。
また、金属膜Mの加工の一例として、スクラッチ加工を行う場合で説明したが、この場合に限られるものではなく、微細加工粉Dが生じる加工であれば適用可能である。
【0127】
また、上記各実施形態では、第1の電極11及び第2の電極12に電圧を印加する際に、ファンクションジェネレータ9が直流電圧を印加した場合を例に挙げたが、直流電圧に限定されるものではない。
例えば、交流電圧やプラス電圧を印加しても構わない。つまり、被加工物や液体Wの種類に応じて、直流電圧、交流電圧又はパルス電圧を適宜使い分ければ良い。特に、ファンクションジェネレータ9を利用することで、各種の電圧を印加できるので、使い易さが向上する。また、交流電圧やパルス電圧を使用することで、液体Wの電気分解を生じさせずに高電圧を印加することができる。
【0128】
また、液体W内に界面活性剤Fを含有させても構わない。界面活性剤Fが含有された液体Wを使用した場合には、図13及び図14に示すように、金属膜Mの表面や切削加工時に発生した微細加工粉Dの表面に、親水基fを外側にした状態で界面活性剤Fが結合する。そのため、電気泳動による移動中等に、微細加工粉Dが金属膜Mの表面に接触したり、微細加工粉D同士が接触したりしても、互いの親水基fが反撥しあって付着し難くなる。従って、探針3aや金属膜Mへの付着をより確実に防止しながら、微細加工粉Dを第2の電極12側に移動させることができる。
【0129】
また、上記各実施形態では、試料2側を三次元方向に移動させる試料スキャン方式を例にして説明したが、この方式に限られず、プローブ3側を三次元方向に移動させるプローブスキャン方式にしても構わない。この場合においても、スキャン方式が異なるだけで、試料スキャン方式と同様の作用効果を奏することができる。なお、試料2側及びプローブ3側を共に三次元方向に移動できるように構成しても構わない。
【0130】
また、上記各実施形態では、変位測定手段8がレーザ光を利用した光てこ方式によりレバー部3bの撓みを測定したが、光てこ方式に限定されるものではない。例えば、レバー部3b自身に変位検出機構(例えば、ピエゾ抵抗素子等)を設けた自己検知方式によりレバー部3bの撓みを測定するように構成しても構わない。特に、第4実施形態で説明した一体型セル51を用いる場合には、自己検知方式にすることが好ましい。
【0131】
また、上記各実施形態では、切削加工を行う際に探針3aを単に金属膜Mの表面に押し付けた状態で行っていたが、レバー部3bを振動させた状態で切削加工を行っても構わない。つまり、レバー部3b又は試料ステージ6の少なくともいずれか一方側を、金属膜Mの表面に平行なXY方向又は金属膜Mの表面に垂直なZ方向の少なくともいずれか一方の方向に向けて、所定の周波数で振動させる加振源(加振手段)60を備えても構わない。
具体的には、図15に示すように、ホルダ本体18の下面と斜面ブロック19との間に縦振動用の加振源60を取り付ける。これにより、レバー部3bは、本体部3c及び斜面ブロック19を介して加振源60から伝わってきた振動を受けて、Z方向に所定の周波数で振動する。
【0132】
また、このように加振源60を設ける場合には、Z電圧フィードバック回路23の前に、図示しないプリアンプで増幅されたDIF信号を直流変換してZ電圧フィードバック回路23に出力する交流−直流変換回路61を設ける。また、変位測定手段8は、反射面で反射したレーザ光Lの入射位置からレバー部3bの振動状態の測定を行う。そして、制御部24が、変位測定手段8による測定結果に基づいて、レバー部3bの振動状態(例えば、振動振幅)が一定となるように金属膜Mと探針3aとの距離をフィードバック制御すれば良い。
【0133】
このように加振源60を設けた場合には、加工工程を行う際に、図16に示すように、レバー部3bをZ方向に振動させて、金属膜Mの表面を連続的に叩きながら切削加工することができる。そのため、切削加工時に生じる微細加工粉Dは、さらに細かくなって軽量になると共に帯電性が向上する。よって、微細加工粉Dをさらに素早く浮遊させた後、電気泳動により移動させることができ、探針3aや金属膜Mへの付着をより確実に防止することができる。また、探針3aを振動させることで、同じ押し付け力であっても切削力を高めることができるので、切削加工の作業性を向上させることができる。
【0134】
なお、図15では、ホルダ本体18と斜面ブロック19との間に加振源60を設けた場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、試料ステージ6とXYZステージ16との間に加振源60を設け、試料2及び金属膜M側をZ方向に振動させても構わない。この場合であっても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0135】
また、加振源60としては、レバー部3bをZ方向に振動に振動させる縦振動用のものに限られず、レバー部3bをXY方向に振動させる横振動用のものを取り付けても構わない。この場合には、図17に示すように、金属膜Mの表面を探針3aで連続的に擦りながら切削加工を行うことができる。この場合においても上記と同様の作用効果を奏することができる。
なお、このようにXY方向に横振動させる場合には、単にX方向若しくはY方向に振動させるのではなく、XY方向にシンクロさせた状態で振動させることも可能である。こうすることでポリッシュ効果を期待できるのでより好ましい。
【0136】
更には、縦振動用の加振源60と横振動用の加振源60を同時に2つ取り付け、両方の動作(横振動+縦振動)を行いながら切削加工を行っても構わない。特に、横振動と縦振動とを同時に行うことで、楕円振動切削加工を行うことができ、微細加工粉Dを上方に巻き上げ易くなる。従って、微細加工粉Dをさらに容易に移動させることができる。
【0137】
なお、加振源60を取り付けた場合には、金属膜Mの表面の観察する際に、加振源60の作動を停止させてAFMで観察しても構わないし、切削加工時と同様に加振源60を作動させて振動モードAFMで観察を行っても構わない。
【0138】
また、レバー部3bを振動させて切削加工を行う場合、上述した加振源60を利用した振動ではなく、超音波振動子で発生させた超音波振動をレバー部3bに伝え、超音波振動切削を行っても構わない。こうすることで、切削加工時に発生する微細加工粉Dのサイズをさらに微細化して軽量化を図ることが可能である。従って、電気泳動によって微細加工粉Dをより効率良く移動させて処理することができ、より好ましい方法である。
【0139】
また、上記各実施形態では、プローブ3、第1の電極11及び第2の電極12をそれぞれ設けた場合を説明したが、この場合に限られず、例えば、図18に示すように、探針3aが第1の電極11を兼ねるように構成しても構わない。
この場合においては、探針3aが第1の電極11を兼ねているので、加工によって生じた微細加工粉Dを強い電界の中に確実且つ瞬時に入れることができ、より速やかに電気泳動により移動させることができる。また、探針3aとは別に第1の電極11を設ける必要がないので、構成の簡略化を図ることができる。
【0140】
また、上記各実施形態において、ポテンショスタットを利用して金属膜Mの表面電位を参照電極電位としながら加工を行っても構わない。具体的には、図19に示すように、金属膜Mに電気接続された参照電極70を配置する。なお、この参照電極70は、液体Wに直接触れないようになっている。そして、参照電極70、第1の電極11及び第2の電極12は、ファンクションジェネレータ9に接続されたポテンショスタット71にそれぞれ電気接続されている。また、この場合のファンクションジェネレータ9は、第1の電極11と第2の電極12との間に電圧を印加する際に、金属膜Mの表面電位を参照電極電位としながら電圧を印加するようになっている。なお、この場合には、第1の電極11が作用極として機能すると共に、第2の電極12が対極として機能する。
【0141】
このよう構成することで、第1の電極11と第2の電極12との間に電圧を印加して微細加工粉Dを電気泳動させるための電界を形成する際に、金属膜Mの表面電位を参照電極電位にできるので、電気泳動中に金属膜Mに電流が流れることがない。従って、試料2上にクロムを蒸着してなる金属膜Mはもちろんのこと、その他電気化学反応が生じ易い金属サンプルや半導体サンプルを被加工物として用いたとしても、これら被加工物表面に電気化学的な影響(腐食等)を何ら与えずに加工を行うことができる。また、使用できる被加工物の種類を増やすことができ、使い易さを向上することができる。
【0142】
(実施例)
次に、上記第3実施形態に基づいて、実際に金属膜Mの切削加工を行った場合の実施例について、従来の方法で行った切削加工と比較しながら図20から図22を参照して説明する。なお、以下の条件で切削加工を行った。
まず、試料2上にクロムを蒸着した金属膜Mを被加工物とした。また、金属膜Mの表面を20μ×20μmの範囲で切削加工した。また、探針3aを金属膜Mの表面に押し付ける力、即ち、加工荷重を400μNに設定した。
【0143】
初めに、上記条件のもと、図20(a)に示すように、従来の方法により大気中にて切削加工を行った。この場合には、図20(b)に示すように、切削加工を行った加工痕及びその周辺に大量の微細加工粉Dが付着していたことが確認された。
次に、上記条件に加え、図21(a)に示すように、切削加工を行う領域を液滴状の液体W(1%の界面活性剤Fを含有する超純水)で包み、液中環境下で切削加工を行った。
この場合には、図21(b)に示すように、微細加工粉Dが液中に浮遊し、しかも界面活性剤Fの影響を受けるので、上述した大気中に比べると切削加工痕及びその周辺に付着した微細加工粉Dの数は減少したが、依然多数の微細加工粉Dが残っているのが確認された。
【0144】
これに対し、上記液中条件に加え、図22(a)に示すように、上述した第3実施形態に基づいて切削加工を行った。即ち、環状に形成した第1の電極11と、該第1の電極11の略中心に配置した第2の電極12との間に電圧を印加しながら切削加工を行った。なお、両電極11、12をAu電極とした。また、直流2.5Vの電圧を両電極11、12に印加した。
この場合には、図22(b)に示すように、切削加工痕及びその周辺に微細加工粉Dをほとんど確認できず、微細加工粉Dが除去できたことが確認された。
これらの結果から、本発明に係る微細加工粉除去装置及び微細加工装置並びに微細加工粉除去方法の効果が確認でき、微細加工粉Dを除去しながらマスク修正等の切削加工を行うことができるという、従来にはない有利な効果を確認することができた。
【0145】
また、図23に示すように、上述した第3実施形態の場合において両電極11、12を用いない場合であっても、液体吸引装置42を備えることで、微細加工粉Dの影響を極力抑えながら切削加工を行うことが可能である。即ち、切削加工後、液体吸引装置42で液滴状の液体Wを吸引することで、液体W内に浮遊した微細加工粉Dを液体Wと一緒に排出することができる。
特に、切削加工後に速やかに液体吸引装置42を作動させることで、微細加工粉Dが液中を浮遊している段階で排出することができる。また、切削加工中であっても、切削加工を一時的に停止させた状態で適宜液体Wを吸引することで、発生した微細加工粉Dを効率良く排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明に係る微細加工装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示すプローブ及び両電極の拡大斜視図である。
【図3】図1に示す微細加工装置により、金属膜の表面を切削加工している際の微細加工粉の状態を示す拡大図である。
【図4】図2に示す状態から、金属膜の表面を切削加工したときの微細加工粉の動きを示した図である。
【図5】図1に示す微細加工装置の変形例を示す図であって、液槽に供給路及び排出路が形成された微細加工装置を示す図である。
【図6】図1に示す微細加工装置の変形例を示す図であって、第1の電極が円弧状に形成され、第2の電極を略中心に配置されている状態を示す斜視図である。
【図7】図1に示す微細加工装置の変形例を示す図であって、第1の電極が環状に形成され、第2の電極を略中心に配置されている状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る微細加工装置の第2実施形態を示す図であって、プローブ及び両電極周辺の斜視図である。
【図9】本発明に係る微細加工装置の第3実施形態を示す図であって、プローブ及び両電極周辺の斜視図である。
【図10】図9に示す微細加工装置を構成する液体吸引装置の構成図である。
【図11】図9に示す微細加工装置により、金属膜の表面を切削加工している際の微細加工粉の状態を示す拡大図である。
【図12】本発明に係る微細加工装置の第4実施形態を示す図であって、一体型セルの断面図である。
【図13】界面活性剤を含有する液体を利用して本発明に係る微細加工装置により切削加工を行っているときの、金属膜表面及び微細加工粉の状態を示す図である。
【図14】図13に示す金属膜表面及び微細加工粉の拡大図である。
【図15】本発明に係る微細加工装置の変形例を示す図であって、レバー部を所定周波数で加振させる加振源を備えた微細加工装置の構成図である。
【図16】図15に示す加振源により、レバー部を金属膜の表面に垂直な方向に加振させながら切削加工を行っている状態を示す図である。
【図17】図15に示す加振源により、レバー部を金属膜の表面に平行な方向に加振させながら切削加工を行っている状態を示す図である。
【図18】本発明に係る微細加工装置の変形例を示す図であって、探針が第1の電極を兼ねている微細加工装置の構成図である。
【図19】本発明に係る微細加工装置の変形例を示す図であって、ポテンショスタットを有する微細加工装置の構成図である。
【図20】実際に切削加工を行った実施例を説明するための図であって、(a)は大気中で切削加工を行う従来の方法で切削加工を行っている状態を示す斜視図であり、(b)は切削加工後の切削加工痕及びその周辺の状態を示した斜視図である。
【図21】実際に切削加工を行った実施例を説明するための図であって、(a)は界面活性剤を含む液体中で切削加工を行っている状態を示す斜視図であり、(b)は切削加工後の切削加工痕及びその周辺の状態を示した斜視図である。
【図22】実際に切削加工を行った実施例を説明するための図であって、(a)は本発明に係る装置により、界面活性剤を含む液体W中で両電極間に電圧を印加させながら切削加工を行っている状態を示す斜視図であり、(b)は切削加工後の切削加工痕及びその周辺の状態を示した斜視図である。
【図23】本発明に係る第3実施形態の変形例であって、両電極の代わりに液体吸引装置を加えた状態で切削加工を行っている状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0147】
D 微細加工粉
F 界面活性剤
M 金属膜(被加工物)
W 液体
1、30、40、50 微細加工装置
3 プローブ
3a 探針
3b レバー部
4 加工装置
5 微細加工粉除去装置
6 試料ステージ(ステージ)
7 移動手段
8 変位測定手段
9 ファンクションジェネレータ(電圧印加手段)
10 制御手段
11 第1の電極
12 第2の電極
15 液槽(液体セル)
15a 液槽の排出路
15b 液槽の供給路
25、53 液体排出供給手段
41 マイクロノズル
42 液体吸引装置(液体吸引手段)
51 一体型セル
51c 一体型セルの供給路
51d 一体型セルの排出路
60 加振源(加振手段)
71 ポテンショスタット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探針を利用して被加工物を液体内で加工しながら、加工時に生じる微細加工粉を電気泳動により除去する微細加工粉除去方法であって、
前記被加工物上に、前記探針を有するプローブを配置すると共に、探針を間に挟んだ状態で第1の電極及び第2の電極を配置し、少なくとも探針、第1の電極及び第2の電極を前記液体に浸した液中環境を前記被加工物上に作りだす液中設定工程と、
該液中設定工程後、前記プローブを利用したAFM観察により前記被加工物を観察して、前記加工を行う位置を特定すると共に特定した位置に前記探針を位置させる位置決め工程と、
該位置決め工程後、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加する電圧印加工程と、
該電圧印加工程後、前記探針と前記被加工物とを相対的に移動させて、探針を利用して被加工物を加工する加工工程とを備えていることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微細加工粉除去方法において、
前記電圧印加工程の際、前記第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置された前記第1の電極を利用して、電圧を印加することを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細加工粉除去方法において、
前記液中設定工程の際、前記被加工物を前記液体が内部に貯留された液体セル内に収容すると共に、該液体に浸かるように、少なくとも前記探針、前記第1の電極及び前記第2の電極をそれぞれ配置することを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項4】
請求項3に記載の微細加工粉除去方法において、
前記加工工程後、前記液体を前記液体セル内から外部に排出すると共に、新たな液体を液体セル内に供給する液体排出供給工程を備えていることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の微細加工粉除去方法において、
前記液中設定工程の際、少なくとも前記探針、前記第1の電極及び前記第2の電極が浸かるように、前記液体を前記被加工物上に吐出することを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項6】
請求項5に記載の微細加工粉除去方法において、
前記加工工程後、先端側が前記液体内に浸漬されるように配置された中空状のマイクロノズルを介して、基端側から液体を吸引する液体吸引工程を備えていることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項7】
請求項6に記載の微細加工粉除去方法において、
前記マイクロノズル内には、少なくとも前記液体内に浸漬される先端側に前記第2の電極が収納されていることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の微細加工粉除去方法において、
前記液中設定工程の際、少なくとも前記プローブ、前記第1の電極及び前記第2の電極が取り付けられた一体型セルを前記被加工物に近接した位置に配置した後、プローブ、第1の電極及び第2の電極が浸かるように被加工物との間に前記液体を貯留して液中環境を作りだすことを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項9】
請求項8に記載の微細加工粉除去方法において、
前記加工工程後、前記一体型セルに形成された排出路を介して前記液体を一体型セル内から外部に排出すると共に、一体型セルに形成された供給路を介して新たな液体を一体型セル内に供給する液体排出供給工程を備えていることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項10】
請求項9に記載の微細加工粉除去方法において、
前記排出路内には、前記第2の電極が収納されていることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の微細加工粉除去方法において、
前記探針は、前記レバー部によって片持ち状態に支持されており、
前記加工工程を行う際、前記探針と前記被加工物との距離を、前記レバー部の撓みが一定となるように制御しながら加工を行うことを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項12】
請求項11に記載の微細加工粉除去方法において、
前記加工工程を行う際、前記レバー部又は前記被加工物の少なくともいずれか一方を、被加工物の表面に水平な方向及び垂直な方向の少なくともいずれか一方の方向に向けて振動させると共に、振動状態が一定となるように制御しながら加工を行うことを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の微細加工粉除去方法において、
前記電圧印加工程の際に、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧のいずれかを印加することを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の微細加工粉除去方法において、
前記液中設定工程の際、前記液体として界面活性剤を含有する液体を用いることを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の微細加工粉除去方法において、
前記液中設定工程の際に、前記被加工物に電気接続された参照電極を用意し、
前記電圧印加工程の際に、前記被加工物表面を参照電極電位としながら前記電圧を印加することを特徴とする微細加工粉除去方法。
【請求項16】
探針を利用して被加工物を液体内で加工しながら、加工時に生じる微細加工粉を除去する微細加工装置であって、
前記被加工物が載置されるステージと、前記探針を有し、該探針が前記被加工物に対向するように配置されたプローブと、前記ステージと前記プローブとを相対的に移動させて、前記探針により前記被加工物を加工させる移動手段とを有する加工装置と、
前記探針を間に挟むように前記液体内に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加させて、前記微細加工粉を前記液体内で移動させる電圧印加手段とを有する微細加工粉除去装置と、
を備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項17】
請求項16に記載の微細加工装置において、
前記第1の電極は、前記第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置されていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の微細加工装置において、
前記液体が内部に貯留され、貯留された液体に浸かるように少なくとも前記探針、前記第1の電極及び前記第2の電極が収容される液体セルを備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項19】
請求項18に記載の微細加工装置において、
貯留した前記液体を前記液体セルから外部に排出すると共に、新たな液体を液体セル内に供給する液体排出供給手段を備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項20】
請求項16又は17に記載の微細加工装置において、
先端側が前記液体内に浸漬されるように配置された中空状のマイクロノズルを有し、該マイクロノイズを介して基端側から液体を吸引する液体吸引手段を備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項21】
請求項20に記載の微細加工装置において、
前記マイクロノズル内には、少なくとも前記液体内に浸漬される先端側に前記第2の電極が収納されていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項22】
請求項16又は17に記載の微細加工装置において、
前記被加工物に近接した位置に配置され、被加工物との間で前記液体を貯留して液中環境を作りだす一体型セルを有し、
少なくとも前記プローブ、前記第1の電極及び前記第2の電極が、貯留された前記液体に浸かるように前記一体型セルに取り付けられていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項23】
請求項22に記載の微細加工装置において、
前記一体型セルに形成された供給路及び排出路を有し、該排出路を介して貯留した前記液体を前記一体型セルから外部に排出すると共に、供給路を介して新たな液体を一体型セル内に供給する液体排出供給手段を備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項24】
請求項23に記載の微細加工装置において、
前記排出路内には、前記第2の電極が収納されていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項25】
請求項16から24のいずれか1項に記載の微細加工装置において、
前記探針は、基端側がレバー部によって片持ち状態に支持され、
前記レバー部の撓みを測定する変位測定手段と、
前記変位測定手段による測定結果に基づいて、前記探針と前記被加工物との距離を、前記レバー部の撓みが一定となるように前記移動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項26】
請求項25に記載の微細加工装置において、
前記レバー部及び前記ステージの少なくともいずれか一方を、前記被加工物の表面に対して水平なXY方向及び垂直なZ方向の少なくともいずれか一方の方向に加振させる加振手段を備え、
前記変位測定手段が、前記レバー部の振動状態を測定し、
前記制御手段が、前記変位測定手段による測定結果に基づいて、前記探針と前記被加工物との距離を、前記レバー部の振動状態が一定となるように前記移動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項27】
請求項16から26のいずれか1項に記載の微細加工装置において、
前記電圧印加手段は、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧のいずれかを印加することを特徴とする微細加工装置。
【請求項28】
請求項16から27のいずれか1項に記載の微細加工装置において、
前記探針は、ダイヤモンド、Si及びSiNのいずれかから形成されていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項29】
請求項16から28のいずれか1項に記載の微細加工装置において、
前記探針は、前記第1の電極を兼ねていることを特徴とする微細加工装置。
【請求項30】
請求項16から29のいずれか1項に記載の微細加工装置において、
前記被加工物に電気接続された参照電極を備え、
前記電圧印加手段は、前記第1の電極と前記第2の電極と前記参照電極とにそれぞれ電気接続されたポテンショスタットを有し、前記被加工物表面を参照電極電位としながら前記電圧を印加することを特徴とする微細加工装置。
【請求項31】
探針を利用して被加工物を加工する加工装置に組み合わされて使用され、加工時に生じる微細加工粉を液体内で除去する微細加工粉除去装置であって、
前記探針を間に挟むように前記液体内に配置された第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加させて、前記微細加工粉を前記液体内で移動させる電圧印加手段とを備えていることを特徴とする微細加工粉除去装置。
【請求項32】
請求項31に記載の微細加工粉除去装置において、
前記第1の電極は、前記第2の電極を中心として円弧状又は環状に配置されていることを特徴とする微細加工粉除去装置。
【請求項33】
請求項31に記載の微細加工粉除去装置において、
先端側が前記液体内に浸漬されるように配置された中空状のマイクロノズルを有し、該マイクロノイズを介して基端側から液体を吸引する液体吸引手段を備えていることを特徴とする微細加工粉除去装置。
【請求項34】
請求項33に記載の微細加工粉除去装置において、
前記マイクロノズル内には、少なくとも前記液体内に浸漬される先端側に前記第2の電極が収納されていることを特徴とする微細加工粉除去装置。
【請求項35】
請求項31から34のいずれか1項に記載の微細加工粉除去装置において、
前記電圧印加手段は、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧のいずれかを印加することを特徴とする微細加工粉除去装置。
【請求項36】
請求項31から35のいずれか1項に記載の微細加工粉除去装置において、
前記被加工物に電気接続された参照電極を備え、
前記電圧印加手段は、前記第1の電極と前記第2の電極と前記参照電極とにそれぞれ電気接続されたポテンショスタットを有し、前記被加工物表面を参照電極電位としながら前記電圧を印加することを特徴とする微細加工粉除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−12656(P2008−12656A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147138(P2007−147138)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】