説明

微細気泡を利用する水処理方法及び水処理装置

【課題】RO膜の薬液洗浄頻度を少なくすることにより、RO膜の劣化及び水処理効率の低下を極力抑制すること。
【解決手段】RO膜装置によるろ過運転時に、RO膜装置の濃縮水の一部を循環経路へと導く。循環経路では、第二ポンプによって濃縮水を加圧し、さらに空気を混入し、スタティックミキサーを利用して被処理水と空気とを撹拌することによって被処理水中に微細気泡を発生させる。その後、微細気泡を含む濃縮水を、被処理水を第一ポンプによって加圧し、RO膜装置に被処理水を給水する給水経路に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の造水設備等に用いられる逆浸透膜を備えた水処理方法及び水処理装置であって、被処理水中に微細気泡を発生させることを特徴とする水処理方法及び水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、逆浸透膜(RO膜)を利用した水処理装置(造水設備)は、海水淡水化設備、超純水製造設備、工業用水製造設備など、様々な分野で利用されている。逆浸透膜としては、例えば、スパイラル型膜モジュールが一般的に利用されるが、逆浸透膜を長期間使用する場合、被処理水中の不純物によって膜表面が詰まるため、膜の洗浄が必要となる。
【0003】
ここで、RO膜を利用する水処理装置においては、精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)を利用する水処理装置の膜洗浄として用いられている、被処理水の透過側(二次側)から原水側(一次側)へ洗浄液や空気を供給し、膜表面の汚れを剥離させる洗浄方法、いわゆる逆洗(逆洗浄)を行うことができない。
【0004】
そこで、RO膜を洗浄する場合には、原水側において表面流速を上げて汚れを落とすフラッシングや、次亜塩素酸ソーダ等の薬剤で汚れを溶かす薬品洗浄が利用されている。また、洗浄時に微細気泡を供給してRO膜を洗浄する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、塩類を含む原水中に微細気泡を発生させ、微細気泡を含む原水をRO膜分離することにより、操作圧を低くしてもRO膜に充分な有効圧を作用させ、効率的に水を透過させる脱塩処理方法が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−263501号公報
【特許文献2】特開2008−307522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RO膜を薬品洗浄すれば膜表面の汚れが除去され、フラックスが回復するものの、薬品洗浄のたびにRO膜装置の運転を停止し、薬品洗浄を行わなければならない。また、薬品洗浄後、RO膜装置の処理水に薬品が混入することを防止するために洗浄運転を行う必要もあり、通常運転までの復帰に時間がかかるという問題がある。
【0008】
さらに、薬品洗浄に用いられる薬剤によりRO膜が劣化し、RO膜の寿命を縮めるおそれもある。
【0009】
一方、特許文献1に開示されているように、RO膜洗浄時に微細気泡を用いる場合であっても、微細気泡によるRO膜の洗浄運転中は通常の運転を行うことはできない。また、薬品洗浄と比較して洗浄時間を短縮することが可能性であるものの、RO膜の洗浄頻度は薬液洗浄を行うRO膜装置と変わらないため、頻繁に洗浄操作を行う必要があるという問題点があった。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、RO膜の薬液洗浄頻度を少なくすることにより、RO膜の劣化を極力抑制し、RO膜の長寿命化を図ることが出来る水処理装置及びその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、RO膜によるろ過運転時に、被処理水に空気を混入してスタティックミキサーによって撹拌し、被処理水に微細気泡を含ませてRO膜に供給することにより、RO膜表面の汚れ付着抑制効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
具体的に、本発明は、
被処理水を逆浸透膜装置によって処理する水処理方法であって、
逆浸透膜装置によるろ過運転時に、逆浸透膜装置の濃縮水経路を分岐して、濃縮水の一部を循環経路へと導き、
第二ポンプにより濃縮水を加圧した後で空気を混入し、スタティックミキサーを利用して濃縮水と空気とを撹拌することによって濃縮水中に微細気泡を発生させた後、
被処理水を第一ポンプにより加圧して逆浸透膜に供給する給水経路へと、微細気泡を含む濃縮水を供給した後、循環経路内の微細気泡を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給する、
ことを特徴とする水処理方法に関する。
【0013】
また、本発明は、
被処理水を処理する逆浸透膜装置と、
逆浸透膜装置に被処理水を供給する給水経路と、
給水経路の被処理水を加圧する第一ポンプと、
逆浸透膜装置の濃縮水経路から分岐し、逆浸透膜装置の上流で給水経路に接続される循環経路とを有し、
ここで、前記循環経路は、
濃縮水を加圧する第二ポンプと、
加圧された濃縮水に空気を混入するための空気投入手段と、
濃縮水と混入した空気とを撹拌し、微細気泡を含む濃縮水とするスタティックミキサーとを順に備え、
循環経路から給水経路へと微細気泡を含む濃縮水を供給した後、循環経路内の微細気泡を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給する、水処理装置に関する。
【0014】
RO膜を用いる膜分離装置では、被処理水は、RO膜による処理に適する圧力に加圧された後、RO膜分離装置の一次側に供給される。このとき、RO膜装置の濃縮水の一部を加圧して空気を混入させ、濃縮水と空気とをスタティックミキサーによって撹拌することにより、濃縮水中に微細気泡(マイクロバブル)が発生する。
【0015】
微細気泡を含んだ濃縮水を、RO膜装置に被処理水を給水する給水経路に供給することにより、RO膜分離装置に適度なボイド率(気液二相流の中で気体の占める体積比率)で微細気泡を含有する被処理水を供給することが可能となる。その結果、通常運転時におけるRO膜の汚れを防止し、RO膜の薬液洗浄回数を削減することが可能となり、RO膜分離装置の処理効率を高めることができる。
【0016】
逆浸透膜装置へと供給される微細気泡を含む被処理水のボイド率は、0.01%以上1%以下であることが好ましい。
【0017】
ボイド率が0.01%未満では、逆浸透膜装置へと供給される処理水に含まれる微細気泡が少なすぎるため、RO膜の汚れを有効に防止することができない。一方、ボイド率が10%を超えると、被処理水に含まれる微細気泡が多すぎるため、気泡流として存在せず、スラグ流になるため洗浄効果が無い。なお、RO膜装置内で気泡が溜まることを防止して処理効率を低下させず、膜の手前で気泡同士が合一することを防止するためには、ボイド率は1%以下とすることが理想的である。従って、被処理水中のボイド率は、0.01%以上10%以下とすることが好ましく、0.01%以上1%以下とすることがより好ましい。
【0018】
なお、ここでいうボイド率は、RO膜分離装置に供給される際の被処理水のボイド率、すなわち、実際にRO膜分離装置によって処理される被処理水のボイド率を意味する。
【0019】
濃縮水経路に気液分離器を設けて、濃縮水中の気泡を取り除くことが好ましい。
【0020】
給水経路の給水圧は1.0MPa以上3.0MPa以下であり、循環経路から給水経路に供給する際の微細気泡を含む濃縮水の圧力が、給水経路内の圧力よりも5kPa以上100kPa以下の範囲で高くなるように、第二ポンプの出力を調節し、濃縮水の圧力を調節することが好ましい。
【0021】
低圧RO膜分離装置の場合、被処理水は1.0MPa以上3.0MPa以下の圧力範囲に加圧されるが、RO膜分離装置の濃縮水の一部を循環経路内で第二ポンプによって加圧する場合には、スタティックミキサー通過後の循環経路の圧力が給水経路の配管を流れる被処理水に比べて、少なくとも5kPa以上高い圧力となるように濃縮水の一部を加圧することにより、微細気泡を含む濃縮水を給水経路に供給し、微細気泡を含まない被処理水と混合することが容易となる。また、微少の差圧があるために給水経路の配管を流れる被処理水と合流する際に給水経路の配管断面の全面にわたって混合されるため、混合後の被処理水中で微細気泡が偏ることなく混合される。
【0022】
なお、スタティックミキサー通過後の循環経路を流れる濃縮水の圧力が、給水経路を流れる被処理水の圧力よりも低い場合、逆流が起こる可能性もある。一方で、循環経路を流れる濃縮水の圧力が給水経路を流れる被処理水の圧力に比べて大きすぎる場合、給水経路の配管と循環経路の配管とを合流させた際に逆流する可能性があり、第一ポンプの負荷が増大するため好ましくない。
【0023】
また、混合される際の圧力差により、循環経路を流れる濃縮水中に溶解していた気体が圧力低下により発泡し、合一して粗大気泡を発生する可能性もあるため、スタティックミキサー通過後の循環経路を通る濃縮水の圧力は、給水経路を流れる被処理水の圧力に比べて100kPa以下の圧力となるように、第二ポンプの出力を調節して被処理水を加圧することが好ましい。
【0024】
本発明の水処理装置は、逆浸透膜装置の上流に給水経路の圧力を測定する第一圧力測定器を設け、循環経路内のスタティックミキサーの下流に、循環経路の圧力を測定する第二圧力測定器を設け、第二圧力測定器と第一圧力測定器との差圧が5kPa以上100kPa以下となるように、第二ポンプにより濃縮水を加圧することが好ましい。
【0025】
本発明の水処理装置は、循環経路内に、給水経路への微細気泡を含む濃縮水の供給量を調整する流量調整手段をさらに備えることが好ましい。
【0026】
流量調整手段を備えることにより、給水経路に微細気泡を含む濃縮水を供給する際に、返送後の被処理水のボイド率を適正範囲に調整することが可能となる。なお、流量調整手段とは、例えば、流量計及び流量調整弁との組み合わせのように、給水経路への供給量を制御できる公知の手段を意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、RO膜の薬品洗浄による洗浄頻度を低くすることができるため、薬品洗浄にかかるコストを低減することができる。また、洗浄頻度を低くすることで薬品によってRO膜が劣化することを抑制し、RO膜の長寿命化を図ることができる。さらに、RO膜による被処理水の処理効率も高い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に類似する参考例1の水処理装置の概略構成図である。
【図2】特許文献1に開示されている水処理装置の概略構成図である。
【図3】本発明に類似する水処理装置(参考例2)の概略構成図である。
【図4】本発明の水処理装置(実施例1)の概略構成図である。
【図5】本発明の水処理装置(実施例2)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されない。
【0030】
(参考例1)
本発明に類似する水処理装置の概略構成図を、図1に示す。参考例1の水処理装置は、第一ポンプ1、給水経路2、RO膜装置3、循環経路4、第二ポンプ5、コンプレッサー6(空気投入手段)、スタティックミキサー7を備えている。
【0031】
また、給水経路2及び循環経路4にはそれぞれ第二圧力計50(第二圧力測定装置)及び第一圧力計51(第一圧力測定装置)が備えられており、第一ポンプ1、第二ポンプ5、コンプレッサー6、第二圧力計50及び第一圧力計51はそれぞれ制御装置52と電気的に接続されている。
【0032】
原水(被処理水)は、給水経路2に設けられた第一ポンプ1によって加圧し、RO膜装置3へと供給される。RO膜装置3の透過水は、処理水経路8を経て系外に給水される。一方、RO膜装置3の濃縮水は、濃縮水経路9を経て排水される。なお、本発明における原水は、工場排水、河川水、湖沼水等の淡水又は塩分濃度が低い水であることが好ましく、通常、前処理として凝集沈澱処理や膜処理(MF膜やUF膜)により一次処理された水が用いられる。
【0033】
給水経路2には循環経路4が接続されており、第一ポンプ1によって加圧された原水の一部は、循環経路4へと供給される。循環経路4へと供給された原水は、第二ポンプ5によってさらに加圧される。循環経路4から給水経路2へと後述する微細気泡を含む原水を返送するためには、循環経路4内の圧力損失以上に循環経路4内の原水を加圧する必要があるためである。
【0034】
なお、循環経路4へ供給される割合(循環経路4を流れる水量/分岐前の給水経路2を流れる水量)は20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。循環経路4へ供給される水量が多くなると第二ポンプ5を大きくしなければならず、また配管径も大きくなるからである。
【0035】
第二ポンプ5は、スタティックミキサー7通過後の循環経路4を流れる被処理水の圧力が、給水経路2を流れる被処理水の圧力に比べて5〜100kPa低い圧力となる様に、循環経路4内の原水を加圧することが好ましい。本発明の水処理装置では、第二ポンプ5は、第一ポンプ1で加圧された給水経路2の被処理水の一部を取り出して、再度給水経路2に返水する構造であるため、スタティックミキサー7での圧力損失分を加圧すれば足りるため、ポンプの動力は小さくてすむ。
【0036】
なお、上記圧力調整は給水経路2に設けられた第一圧力計51、循環経路4に設けられた第二圧力計50の測定値から、制御装置52が差圧を算出し、第二ポンプ5の出力を制御することにより行われる。
【0037】
第二ポンプ5によってさらに加圧された原水には、循環経路4に設けられたコンプレッサー6によって空気が混入される。その後、スタティックミキサー7によって原水と空気とが撹拌され、原水中に混入された空気が微細気泡となる。なお、空気投入手段としては、エゼクターを用いることもできる。
【0038】
コンプレッサー6も制御装置52と電気的に接続されており、第二ポンプ5の出力に合わせて、制御される。具体的には、第二ポンプ5を通過した被処理水の圧力よりもコンプレッサー6から吐出される空気圧が高くなるように制御され、循環経路4に空気が供給される。
【0039】
ここで、原水と空気とを撹拌して微細気泡を発生させる手段として、特許文献1ではエゼクター、特許文献2ではコンプレッサー及びインジェクターを使用しているが、本発明ではスタティックミキサー7を使用する。エゼクター等の加圧溶解式の微細気泡発生装置では、溶解させる空気量に応じて気泡が発生するため、充分な微細気泡を発生させることが困難である。つまり、従来技術においては、加圧下で一度水中に完全に気体(空気)を溶解させた後、被処理水を減圧させることで被処理水中に溶解している気体が溶解しきれず気泡となる作用を利用しているため、単にエゼクターで空気を入れただけでは水中に溶解しない気体は粗大なまま残存する。このため、この粗大気泡を除去しない限り、微細気泡のみを得ることは困難である。
【0040】
また、コンプレッサー等で導入した空気が全て微細気泡にならないため、後述するボイド率を調整することが非常に困難な上に、無駄な動力がかかり、また、十分な量の微細気泡も発生させることができない。
【0041】
これに対して、参考例1ではスタティックミキサー7を使用することにより、充分な微細気泡を発生させうる。これは、コンプレッサー6で導入した空気が全てスタティックミキサー7で微細化されるためである。このため、コンプレッサー7を通じて被処理水中に供給した空気の量と微細気泡の量がリンクしており、一定サイズ以下の微細気泡を十分に得られると共に、ボイド率を調整することが容易である。
【0042】
微細気泡を含む原水は、循環経路4から給水経路2へと返送される。このとき、返送後の給水経路2内の原水、換言すれば、RO膜装置3へと実際に供給される原水のボイド率は、0.01%以上1%以下となるように調整することが好ましい。
【0043】
循環経路4内の原水圧力は、給水経路2内の原水圧力よりも高いため、給水経路2へと返送された原水中の微細気泡は、循環経路4内よりも圧力が若干低下することにより、ボイド率が変化する。このため、返送後の給水経路2内の原水のボイド率が0.01%以上1%以下となるように、循環経路4から給水経路2へと返水量を、流量計及び流量調整弁等の流量調整手段(図示せず)によって調整することが好ましい。
【0044】
RO膜装置3へと供給された微細気泡を含む原水は、微細気泡によってRO膜表面の汚れ付着が防止され、同じ原水量を処理してもRO膜の目詰まりが起こりにくくなる。その結果、RO膜の薬液洗浄頻度が低下し、原水処理効率を従来よりも高く維持することが可能となる。
【0045】
ここで、特許文献1に開示されている脱塩処理装置の概略構成図を、図2に示す。この装置では、原水を経路12に設けられたポンプ11によって加圧し、気泡生成装置13によって原水に空気を混入させ、微細気泡を含む原水を、RO膜装置15によって処理する。
【0046】
図2の装置では、原水の全量に空気を混入させているため、RO膜装置15への供給水として好ましいボイド率を調整することは極めて困難である。また、原水の全量を気泡生成装置15に供給するため、微細気泡を発生させるための動力も大きくならざるを得ない。
【0047】
これに対して、図1に示した参考例1の水処理装置では、原水の一部を循環経路4へと抜き出し、スタティックミキサー7を用いて微細気泡を含む原水を調製し、給水経路2に返送する構成としているため、給水経路2への返水量を調整することにより、RO膜装置3に供給する原水のボイド率を好適範囲に制御することが可能である。
【0048】
また、参考例1の水処理方法は、既存の設備に対しても循環経路を設けることにより、容易に適用することができる。
【0049】
(参考例2)
本発明の水処理装置に類似する別の水処理装置の概略構成図を、図3に示す。RO膜装置による原水の処理は、図1の水処理装置と同じであるため、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0050】
図3の水処理装置では、原水を直接循環経路26へと取り込み、第二ポンプ27によって第一ポンプ21よりも高い圧力にまで原水を加圧する。その後、コンプレッサー28を用いて原水に空気を混入させ、スタティックミキサー29を用いて原水と空気を撹拌することにより、微細気泡を発生させる。
【0051】
図3の水処理装置は、参考例1の水処理装置と同様の効果が得られるが、第二ポンプ27は第一ポンプ21よりも加圧動力が大きくなければならないため、第一ポンプ1によって加圧された原水を、第二ポンプ5でスタティックミキサー29での圧力損失分以上に加圧するだけで足りる図1の水処理装置よりも、第二ポンプ27の消費電力が大きくなる。
【0052】
(実施例1)
本発明の水処理装置の概略構成図を、図4に示す。RO膜装置による原水の処理は、図1の水処理装置と同じであるため、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0053】
図4の水処理装置では、原水に空気を混入して微細気泡を発生させるのではなく、RO膜装置の濃縮水を回収し、濃縮水に微細気泡を含ませて原水に混合する。濃縮水系路35から排出されるRO膜装置33の濃縮水の一部は、循環経路37へと取り込まれ、第二ポンプ36によって加圧される。その後、コンプレッサー38を用いて加圧された濃縮水に空気を混入させ、スタティックミキサー29を用いて原水と空気を撹拌することにより、微細気泡を発生させる。
【0054】
RO膜装置33の濃縮水は、給水経路31の原水圧力が1.0MPa以上3.0MPaの場合、RO膜装置の段数にもよるが、例えば、0.5MPa〜2.5MPaの圧力がある。このため、図4の水処理装置では、第二ポンプ36の加圧動力が小さくてすむという利点を有する。
【0055】
循環経路37から給水経路31への給水量と、濃縮水経路35から循環経路37への吸水量とを流量調整手段(図示せず)によって調整することにより、RO膜装置33へと実際に供給される被処理水(原水と濃縮水との混合水)中のボイド率を好適範囲に制御することが可能となる。
【0056】
なお、図4の水処理装置では、RO膜装置33の濃縮水にも微細気泡が含まれるため、濃縮水と共に微細気泡も回収される。このため、定常運転時にはコンプレッサー38を用いて混入させる空気量も少なくてすみ、コンプレッサー38は小型でも足りる。
【0057】
(実施例2)
本発明の別の水処理装置の概略構成図を、図5に示す。濃縮水経路35に気液分離器40を備えること以外、図4の水処理装置と同じであるため、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0058】
図5の水処理装置では、濃縮水経路35にサイクロン、静置分離等の気液分離器40が備えられている。濃縮水経路35から排水される濃縮水の圧力は、RO膜装置33の供給水よりも低くなるため、濃縮水中の微細気泡は、供給水中の微細気泡よりも大きくなる。気泡が大きくなると、第二ポンプ36内でキャビテーションが発生する畏れがあるが、濃縮水経路35に気液分離器40を設けることにより、濃縮水中の大きな気泡を取り除くことが可能である。
【0059】
なお、図5では、気液分離器40は濃縮水経路35に設けられているが、循環経路37の第二ポンプ36上流側に設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の水処理装置及び水処理装置は、飲料水製造、各種廃水処理等の分野で有用である。
【符号の説明】
【0061】
1,21,32:第一ポンプ
2,12,22,31:給水経路
3,15,23,33:RO膜装置
4,26,37:循環経路
5,27,36:第二ポンプ
6,28,38:コンプレッサー
7,29,39:スタティックミキサー
8,16,24,34:処理水経路
9,17,25,35:濃縮水経路
11:ポンプ
13:気泡生成装置
14:経路
40:気液分離器
50:第二圧力計
51:第一圧力計
52:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を逆浸透膜装置によって処理する水処理方法であって、
逆浸透膜装置によるろ過運転時に、逆浸透膜装置の濃縮水経路を分岐して、濃縮水の一部を循環経路へと導き、
第二ポンプにより濃縮水を加圧した後で空気を混入し、スタティックミキサーを利用して濃縮水と空気とを撹拌することによって濃縮水中に微細気泡を発生させた後、
被処理水を第一ポンプにより加圧して逆浸透膜に供給する給水経路へと、微細気泡を含む濃縮水を供給した後、循環経路内の微細気泡を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給する、
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記逆浸透膜装置へと供給される前記微細気泡を含む被処理水のボイド率が0.01%以上1%以下である、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記濃縮水経路に気液分離器を設けて濃縮水中の気泡を取り除く、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記給水経路の給水圧が1.0MPa以上3.0MPa以下であり、
前記循環経路から前記給水経路に供給する際の微細気泡を含む濃縮水の圧力が、前記給水経路内の圧力よりも5kPa以上100kPa以下の範囲で高くなるように、第二ポンプの圧力を調節する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
被処理水を処理する逆浸透膜装置と、
逆浸透膜装置に被処理水を供給する給水経路と、
給水経路の被処理水を加圧する第一ポンプと、
逆浸透膜装置の濃縮水経路から分岐し、逆浸透膜装置の上流で給水経路に接続される循環経路とを有し、
ここで、前記循環経路は、
濃縮水を加圧する第二ポンプと、
加圧された濃縮水に空気を混入するための空気投入手段と、
濃縮水と混入した空気とを撹拌し、微細気泡を含む濃縮水とするスタティックミキサーとを順に備え、
循環経路から給水経路へと微細気泡を含む濃縮水を供給した後、循環経路内の微細気泡を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給する、水処理装置。
【請求項6】
前記逆浸透膜装置へと供給される微細気泡を含む被処理水のボイド率が0.01%以上1%以下である、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記濃縮水経路に濃縮水中の気泡を取り除く気液分離器をさらに備える、請求項5又は6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記逆浸透膜装置の上流に前記給水経路の圧力を測定する第一圧力測定器を有し、
前記循環経路内の前記スタティックミキサーの下流に、前記循環経路の圧力を測定する第二圧力測定器を有し、
前記第二圧力測定器と前記第一圧力測定器との差圧が5kPa以上100kPa以下となるように、第二ポンプによりさらに濃縮水を加圧する、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記循環経路内に、前記給水経路への前記微細気泡を含む濃縮水の供給水量を調整する流量調整手段をさらに備える、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−13900(P2013−13900A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233849(P2012−233849)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2009−214936(P2009−214936)の分割
【原出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】